説明

空調制御システム及び空調制御方法

【課題】
コンピュータやサーバ等の精密動作が要求され、かつそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却する空調制御システムを提供する。
【解決手段】
空調制御システム、複数台の電子機器のジョブを管理するジョブ管理プログラムが搭載された第1のクライアントサーバ20と、この第1のクライアントサーバから出力された複数台の電子機器の電力情報に基づいて必要冷熱量を求め複数台の空調機を運転制御する情報を出力する第2のクライアントサーバ40と、第1、第2のクライアントサーバからの情報が入力される統合管理サーバ10と、統合管理サーバからの指令に基づいて空調機を運転制御する制御盤60とを備える。統合管理サーバには入力された電子機器の電力情報と必要冷熱量とに基づいて空調機を運転制御したときの電子機器設備内の温度分布と気流とを求める環境最適化プログラム94が搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子機器を有する設備の空調制御システム及び空調制御方法に係り、特にデータセンタ等の大規模な電子機器設備に好適な空調制御システム及び空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタ等においては、電子機器を稠密に配置して面積効率を高めることが進められており、その結果電子機器からの発熱量が1.0〜1.5kW/mにも及んでいる。このため、電子機器をより少ない電力で速やかに冷却する必要が生じている。
【0003】
特許文献1には、1以上の室外機で複数の部屋を空調する空調システムが記載されている。この公報では、消費エネルギーを十分に低減するために、空調システムは同一の部屋に配備される複数の室内機を有し、室外機から供給される室外供給熱量と、複数の室内機の仕様情報と、各室内機からの要求と、空調システムの全電力量とから、室内機の稼働台数を決定し、稼働台数を超えた室内機の運転を停止している。
【0004】
特許文献2には、電子機器の稼働状況と連携して空調機を制御して省エネと環境の両立を図るために、電子機器の冷却システムは、サーバールームに設置された複数のサーバラックに複数のサーバを収容し、サーバラックごとの各サーバの発熱状況をモニタリングしている。そして、いくつかのサーバーラックごとに温度制御ゾーンを設定し、各温度制御ゾーンに空調機を対応させ、温度制御ゾーンごとの空調機の運転条件を変えている。
【0005】
また、特許文献3には、空調室内の気層の上下方向の温度分布を測定し、その温度分布と空調機の噴出し温度との関係から、ファジー制御で送風量を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−220345号公報
【特許文献2】特開2009−193427号公報
【特許文献3】特開平8−159542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、データセンタのような電子機器が多数稠密に配置されている場合であって、動作不全を回避するために空調すべき温度の精度が高く要求される施設を冷却する場合には、複数配置された冷却手段をフルパワーに近い状態でこれまでは運転していた。しかしながら環境問題や消費動力の低減のために、これらをより効率的に運転して省エネルギー化を図ることが要求される。
【0008】
上記特許文献1に記載の空調システムでは、電子機器のような精密な機器の発熱を対象にしているのではないので、自身が発熱する被冷却体を所定温度まで低下させることについては十分考慮されていない。つまり、この公報では一般の環境要因による負荷であり、ある程度負荷の予測ができる場合について省エネルギー化を図るものではない。
【0009】
また、特許文献2に記載の電子機器の冷却システムは、データセンタのような電子機器について所定温度までの冷却を図ったものであり、負荷についての詳細なデータを利用可能な点で、従来よりも省エネルギー化が進められている。しかしながら、この特許文献2に記載のものにおいても更なる省エネルギー化が求められており、より能動的な負荷データの取得が重大な課題となっている。
【0010】
さらに、特許文献3に記載の空調機では、空調エリアにおける上下方向の温度分布の解消を早期に図るものである。この方式を稠密にサーバ等が配置されたデータセンタのような高発熱密度領域に適応する場合には、温度センサの配置等で制約を受けるので、必ずしも電子機器装置に必要とされる効果を発揮できない。
【0011】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためのものであり、コンピュータやサーバ等の精密動作が要求され、かつそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却する空調システム及び空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、複数台の電子機器が収容された電子機器設備を複数台の空調機で空調する空調制御システムであって、前記複数台の電子機器のジョブを管理するジョブ管理手段が搭載された第1のクライアントサーバと、この第1のクライアントサーバから出力された前記複数台の電子機器の電力情報に基づいて必要冷熱量を求め前記複数台の空調機を運転制御する情報を出力する第2のクライアントサーバと、前記第1のクライアントサーバおよび第2のクライアントサーバからの情報が入力される統合管理サーバと、この統合管理サーバからの指令に基づいて前記複数台の空調機を運転制御する制御盤とを備え、前記統合管理サーバには入力された複数台の電子機器の電力情報と必要冷熱量とに基づいて前記複数台の空調機を運転制御したときの前記電子機器設備内の温度分布と気流とを求める環境最適化手段が搭載されており、この環境最適化手段を用いて得られた温度分布が予め定められた許容範囲内になるように前記複数台の空調機の運転制御指令を前記制御盤に出力することとした。
【0013】
また上記目的を達成するために本発明は、複数台の電子機器が収容された電子機器設備を複数台の空調機で空調する空調制御方法であって、前記複数台の電子機器のジョブを管理するジョブ管理手段が搭載された第1のクライアントサーバを用いて前記複数台の電子機器の電力情報を求めるステップと、この第1のクライアントサーバが求めた複数台の電子機器の電力情報に基づいて第2のクライアントサーバが前記複数台の電子機器を空調するのに必要な必要冷熱量を求め、前記複数台の空調機を運転制御する情報を統合管理サーバに出力するステップと、かつ前記第1のクライアントサーバおよび第2のクライアントサーバからの情報に基づいて前記統合管理サーバが前記制御盤に運転指令を指示するステップとを備え、かつ前記統合管理サーバが前記制御盤に運転指令するステップでは、前記複数台の電子機器の電力情報と必要冷熱量とに基づいて前記複数台の空調機を運転制御したときに、前記電子機器設備内の温度分布と気流とを求める環境最適化プログラムを用いて得られた温度分布が、予め定められた許容範囲内になるように前記複数台の空調機の運転制御指令を前記制御盤に出力することとした。
【0014】
そしてこれらの装置および方法において、前記必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和であってもよく、必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和のいずれか大きい方としてもよく、前記空調機へ流入する空気の温度を検出する還気温度センサと、流出する空気の温度を検出する給気温度センサと、空調機が備えるファンの周波数を検出する手段とを各空調機に設け、前記第2のクライアントサーバまたは前記統合管理サーバは、前記還気温度センサと給気温度センサと周波数検出手段の出力から現在の冷熱量を演算し、前記必要冷熱量を、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和と、前記演算された現在の冷熱量との中で最大のものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器自体からの発熱量を電子機器の動作内容から推測できるので、空調システムは、コンピュータやサーバ等の過熱による誤動作を防止し、かつそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る空調制御システムの一実施例のブロック図。
【図2】本発明に係る空調制御システムが空調制御する電子機器設備の一例の上面図。
【図3】図2に示した電子機器設備の側面図。
【図4】本発明に係る空調制御システムの一実施例の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る空調制御システム100のブロック図であり、図2はこの空調制御システム100が配置されるサーバルームの平面図である。図3は、図2に示したサーバルームの一部の縦断面図であり、空調機類と空気の流れを模式的に示した図である。
【0018】
図1において、四角で囲んだものはハードウエアであり、角丸の四角で囲んだものはソフトウエアである。また、左上角を欠いたものはデータを示している。ソフトウエアは実線で結んだハードウエアに搭載されている。統合管理サーバ10は、本発明の空調制御システム100を統括するもので、ジョブ管理クライアントサーバ20および電力管理クライアントサーバ20、電力管理サーバ30、空調効率管理サーバ40とそれぞれLANやインターネット等の通信手段を用いてネット接続されている。
【0019】
ジョブ管理クライアントサーバ20は後述するジョブ管理を制御するもので、ジョブ要求24が入力されると、そのジョブ要求にこたえるべく、ジョブ管理プログラム22を用いて、電子機器の動作を管理する。その際、電力計80が検出した電力データ82および温度センサ類85が検出した詳細を後述する各部温度データB1とを用いて、ジョブを管理する。
【0020】
電力管理クライアントサーバ30は、各部温度データB1や電力データ82から、電力管理プログラム32を用いて、効率的な電力運用となるよう、統合管理サーバ10に電力使用状況及び管理指針を出力する。
【0021】
空調効率管理クライアントサーバ40は、詳細を後述する空調効率演算プログラム42に従い、各部温度データB1と空調機類データA1とを用いて、空調効率の最適化を図る。ここで、統合管理サーバ10には、上記各クライアントサーバ20〜40から各種設定が入力されるので、統合管理サーバ10はこれら各種設定データを予め定めた基準で統合して、電力使用の最適化を図る。そして、入出力機器50を介して監視制御盤60に空調機類70の設定指示を出力する。監視制御盤60は、統合管理サーバ10からの指示にしたがって、監視プログラム62を用いて空調機類70の各部に動作指示を出力する。なお、監視制御盤60からは空調機類70の運転状況を示す監視データ64が、入出力機器50からは空調制御システム100の運転状況を示すログデータ56が出力される。
【0022】
入出力機器50には、さらに入出力プログラム90とそのプログラム90に関連して、エネルギ最適化プログラム92及び環境最適化プログラム94も格納されている。エネルギ最適化プログラム92は、データベース化されて記憶手段に記憶された空調機類70の特性データ96や、空調機類70の初期設定のための初期設定データ95等を参照して、演算し、ログデータ93を出力する。環境最適化プログラム94は、データベース化されて記憶手段に記憶された温度センサ85の配置状況等のセンサ設定データ97を参照して、環境負荷が最小になるように空調機類70の運転方法を演算する。
【0023】
なお、本実施例では入出力機器50にこれら各プログラム90,92,94を格納しているが、統合管理サーバ10や監視制御盤60が入出力機能を持ち、これらプログラムを格納させてもよい。この図1は、各機能の説明を容易にするための図である。
【0024】
次に、図2及び図3を用いて、実際に空調制御システム100が適用される電子機器施設の例について説明する。図2はデータセンタの一部であり、多数のサーバ(電子機器)がサーバラックに搭載されたサーバールーム200の例である。サーバールーム200には、壁面に沿って複数(図では相対向する面に各2台)の空調機111〜114が配置されている。各空調機111〜114には、それぞれサーバルーム200内から吸込む空気の温度を検出する還気温度センサ131〜134と、各空調機111〜114から吐出される空調された空気温度を検出する給気温度センサ121〜124が取り付けられている。
【0025】
サーバールーム200は各空調機111〜114に対応して、実質的にゾーン化されており、空調機111はゾーン171を主として空調し、空調機112はゾーン172を空調する。各空調機111〜114の空調された空気は、床下通路153を通って、各ゾーン171〜174に供給される。各ゾーン171〜174には、それぞれ複数列(図では2列)に複数台(図では7台)のサーバラック182が配置されており、このサーバラックは上下方向に複数の棚で分かれている。各棚には、サーバ181が載置されている。したがって、多数のサーバがサーバルーム200には配置されており、これら各サーバからの発熱を速やかにかつ効率的にサーバルーム200から排出することが必要になっている。
【0026】
図2は、このサーバルーム200の一部を模式的に示した断面図である。壁際に配置される空調機71はいわゆるパッケージ型の空調機であり、床面155と床下壁面156間に形成される床下通路153へ仕切り壁152の間から、空調した空気161を送風ファンで送風する。床面はグレーティング154になっており、空調された空気162が床下通路153を流れる間に、グレーティング154の隙間からサーバー室内への上方気流165,166が形成される。
【0027】
床面155には、上述したようにサーバラック182が配置されており、グレーティング154から流出した空調空気165,166はサーバラック182に搭載されたサーバ181と熱交換して温度上昇し、上昇気流163,164を形成する。この上昇気流163,164は、壁際に配置された空調機71の設置空間を仕切る仕切り壁151の間から、吸込み流れ167となり、空調機71が備える熱交換器で冷却水や冷媒と熱交換して、空調空気を形成する。以下、このサイクルを繰り返して、サーバ181を所定温度以下に冷却する。
【0028】
空調機71が備える熱交換器は、圧縮機を運転しない場合には、サーバルーム200内の温度上昇した空気と冷却塔76で潜熱を奪われた冷却水とが熱交換する、いわゆるフリークーリング用として作用する。また、圧縮機を運転する場合には、凝縮器として作用する熱交換器内で、冷媒と冷却塔76を経た冷却水が熱交換し、蒸発器として作用する熱交換器でサーバールーム200内の温度上昇した空気と冷媒とが熱交換する。このため、冷却水が冷却塔76を循環するための配管74,75が設けられている。
【0029】
上述したように、空調機71の吸込み側付近には還気温度センサ72が、吐出側の近辺には給気温度センサ73が配置されている。これらセンサ72,73が検出した温度情報は、LAN等の通信回線66を介して監視制御盤60に送られる。一方、監視制御盤からはLAN等の通信回線65を介して空調機71へ運転制御指令が送信される。
【0030】
ここで本発明では環境最適化を図るために、各サーバラック182の下段および上段近傍に温度センサ86〜89を配置している。これら温度センサ86〜89の上方も、LAN等の通信回線を介して監視制御盤60に送られている。なお、本実施例では監視制御盤に温度データを集めているが、別置きのクライアントサーバや統合管理サーバ10に送信するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0031】
次にこのように構成した空調制御システムにおいて、環境負荷と空調効率の両立を図った本発明の空調システムの運用方法の一例を、図4に示したフローチャートを用いて説明する。初めに、ユーザからのジョブ要求24が出されると、サーバを用いた演算や制御を実行するために、ジョブプログラムが実行される。そこで、ジョブ管理クライアントサーバ20は、ジョブの最適化を図る。
【0032】
このジョブの最適化については、例えば特開2009-252056号公報に記載された方法を用いる。この方法ではジョブ内容に応じて、2種の処理方針を設定する。(1)ジョブに優先度がある場合:複数のサーバにジョブを割り当てる際に優先順位指標を導き、各サーバに割り当てるジョブを決定する。(2)各サーバの消費電力を考慮して最小電力になるように、サーバにジョブを割り当てる(ステップ410)。これらのいずれにおいても、サーバの配置情報や環境情報を含む位置情報とから、消費電力を求めている(ステップ420)。
【0033】
ここで配置情報には、各サーバ181の位置座標または識別データと、サーバ間の接続構成データとを含む。また、環境情報は、サーバの稼動データと動作特性データ、周辺環境の監視データを含み、例えば電力、温度、湿度、流量、流れ方向、定格出力、定格性能等である。動作特性データは、給電損失特性や消費電力特性である。これらはデータベース化されている。
【0034】
ジョブ割り当てが決定したので、空調管理クライアントサーバー40を用いて発熱量または冷却負荷を求める。これには、例えば特開2010−78218号公報に記載の方法を用いる。この方法では、感度解析を利用するので、シミュレータで感度解析情報を作成しておく。初めに各空調機111〜114の吐出温度(給気温度)を変化させたときに、各サーバ181への空調空気の流入温度と流出温度がどのように変化するか、および各サーバ181から流出する空調空気の温度温度を変化させたときに各空調機111〜114への還気温度がどのように変化するかを実測またはシミュレータで求めておく(ステップ430)。
【0035】
現在の各サーバ181への流入空調空気温度と許容最大流入空調空気温度との偏差の二乗和を評価関数として、最小となるときの各空調機111〜114の給気温度(給気温度センサ121〜124が検出する温度)を求める(ステップ440)。この値が想定値から十分に差があるとき、またはリアルタイムでの演算として時々刻々更新したいとき等は、ここで演算をやめ(ステップ450)、各空調機111〜114にそのような給気温度となるような設定を統合管理サーバ10に送信する。
【0036】
さらなる消費電力管理をしたいときには、各空調機111〜114を最適運転状態により近い状態で運転させる。すなわち、各空調機111〜114の給気温度(吐出温度)がステップ430でも止めた温度になる運転点であって、最も消費電力が小さい運転点に圧縮機の運転を変更する(ステップ460)よう統合管理サーバ10に送信する。
【0037】
さらに消費電力を低減する(ステップ470)ためには、各サーバ181のうち、現在休止しているもの、電源は入っているがジョブを実行していないものを選別し、これらの影響を上記評価から省いて各空調機111〜114の運転点を決定する(ステップ480)。このように実際にジョブを実行しているサーバ181のみの温度管理をすることにより、消費電力をよりいっそう低減できる。
【0038】
ところで、上記各ステップを実行しただけでは、発熱物であり冷却対象であるサーバ181を運転可能な最高温度に近づけて消費電力を低減する点では、相当の効果が得られる。しかしながら、環境負荷を低減する点では、さらなる改善が求められている。そこで、環境負荷をも考慮して、各温度センサ86〜89の情報をも加味して、サーバルーム200内の気流や温度分布を環境最適化プログラム94を用いて演算する(ステップ490)。
【0039】
気流の演算により、サーバールーム200内の各部の温度が、予め定めた上限温度を超えた熱溜りを発生するか否かを判断できる(ステップ500)。これにより、熱溜まりの発生を抑制できるとともに、万が一熱溜りが発生すると予測されるときには、空調機の冷力の増大とか、ジョブの変更等により局部的な温度上昇によるサーバ181の異常高温化を回避できる。(ステップ520)。なお、熱溜りのないときだけ空調機を運転する(ステップ510)ことにすれば、消費電力は低減できる。
【0040】
上記実施例では、サーバ181が発生する熱負荷すなわち空調機の必要冷熱量を、(1)ジョブ管理クライアントサーバ20が割り当てるジョブ稼働状況(演算値)から求める場合(ステップ420)、(2)ステップ420を、実際のジョブの稼動によるサーバ181の発熱状態(消費電力)を検出して求めるように変更する場合のいずれかを示した。この中で後者の方法を利用すれば、必要な冷熱量(熱負荷量)を直接消費電力という形で得られるので、負荷量の取得が容易でありリアルタイムに空調機を制御できる利点がある。負荷変動が大きいときには有効である。
【0041】
さらに、ジョブ管理クライアントサーバ20のジョブ稼動計画に基づいて、必要冷熱量(負荷量)を予測することもできる。これは将来大きな負荷変動が予測される場合に事前に対処する意味で、効果的である。空調機を用いてサーバを冷却する場合、空調機に冷却条件の変更信号を入力してから実際にサーバが所定温度になるまでにはどうしても時間遅れが生じる。これまでの経験では、場合によっては5分ほどの遅れが生じている。従来は、このような時間遅れが発生するので負荷変動に対応できず、過大な冷却容量で冷却しており消費電力が増大していた。
【0042】
上記実施例によれば、時間遅れ分をカバーすることが可能になるので省エネルギーとなる。この場合、予測した必要冷熱量とサーバ181の発熱状態(消費電力)から求めた必要冷熱量のいずれか大きい方を、必要冷熱量として図4のステップ420を置き換え、統合管理サーバ10が空調機類70を運転すれば、サーバ181に過大な負荷が加わることなく、電力量を低減できる。
【0043】
さらに、各空調機111〜114の還気温度と給気温度の差に、各空調機111〜114への流入空気量をかけたものを熱負荷とみなすこともできるので、この空調機の処理熱量と現在のサーバ181の消費電力(実測値)、ジョブ管理クライアントサーバ20が求めた将来の各サーバの消費電力の予測値との3者の中でもっとも大きいものを冷熱負荷としてステップ420を置き換えれば、図4の手順に従って最適運転ができる。したがって、上記3者の中で、最も大きい値を所定時間間隔で求めて空調機類を制御することにより、サーバ181へ過大負荷を加えることく信頼性が高く、かつ消費電力を低減できる。ここで、流入空気量は、空調機71が有する送風ファン77をインバータ制御の送風ファンとすれば、インバータの周波数とファン特性データとから求めることが可能になる。
【0044】
上記実施例では、多数のサーバを有するデータセンタの冷房空調を例にとり説明したが、本発明はデータセンタの冷房空調に限るものではなく、発熱部を多く含む施設の空調に適用できる。また、空調機としてパッケージ型空調機を用いた例を説明したが、ファンコイルユニットを備える吸収式冷凍機等を用いた場合にも同様に適用できる。
【0045】
また、上記実施例では、空調機の最適運転状態、すなわち最小消費電力で所定の空調性能が得られる運転状態にするために、空調機の運転状態の演算に必要な必要冷熱量を、変動する複数の因子を取り上げ、その中から最も安全な運転状態に寄与する因子に基づいて演算したので、電気機器施設に含まれる電子機器の障害発生の一因である室内温度上昇を抑制できる。また、空調機の運転状態を負荷に合わせて低減できるので、省エネルギーであり、環境負荷も低減できる。
【符号の説明】
【0046】
10…統合管理サーバ、20…ジョブ管理クライアントサーバ(第1のクライアントサーバ)、22…ジョブ管理手段(プログラム)、24…ジョブ要求、30…電力管理クライアントサーバ、32…電力管理手段(プログラム)、40…空調効率管理クライアントサーバ(第2のクライアントサーバ)、42…空調効率演算手段(プログラム)、50…入出力機器、52…初期設定データ、54…ログデータ、60…監視制御盤、62…監視プログラム、64…監視データ、65,66…通信回線、70…空調機類、71…空調機、72…還気温度センサ、73…給気温度センサ、74、75…冷却水配管、76…冷却塔、77…送風ファン、80…電力計、82…電力データ、85〜89…温度センサ、90…入出力管理プログラム、92…エネルギ最適化手段(プログラム)、93…ログデータ、94…環境最適化手段(プログラム)、95…初期設定データ、96…空調機特性データ、97…センサ設定データ、100…空調制御システム、111〜114…空調機、121〜124…給気温度センサ、131〜134…還気温度センサ、151,152…仕切り壁、153…油化したチャンバ、154…グレーティング、155…床面、156…床下壁面、161〜167…気流、171〜174…空調ゾーン、181…サーバ(電子機器)、182…サーバラック、200…サーバルーム、A1…空調機類データ、B1…温度データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の電子機器が収容された電子機器設備を複数台の空調機で空調する空調制御システムであって、前記複数台の電子機器のジョブを管理するジョブ管理手段が搭載された第1のクライアントサーバと、この第1のクライアントサーバから出力された前記複数台の電子機器の電力情報に基づいて必要冷熱量を求め前記複数台の空調機を運転制御する情報を出力する第2のクライアントサーバと、前記第1のクライアントサーバおよび第2のクライアントサーバからの情報が入力される統合管理サーバと、この統合管理サーバからの指令に基づいて前記複数台の空調機を運転制御する制御盤とを備え、かつ前記統合管理サーバには、入力された前記複数台の電子機器の電力情報と必要冷熱量とに基づいて前記複数台の空調機を運転制御したときの前記電子機器設備内の温度分布と気流とを求める環境最適化手段が搭載されており、当該環境最適化手段を用いて得られた温度分布が予め定められた許容範囲内になるように前記複数台の空調機の運転制御指令を前記制御盤に出力することを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和であることを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和のいずれか大きい方としたことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記空調機へ流入する空気の温度を検出する還気温度センサと、流出する空気の温度を検出する給気温度センサと、空調機が備えるファンの周波数を検出する手段とを各空調機に設け、前記第2のクライアントサーバまたは前記統合管理サーバは、前記還気温度センサと給気温度センサと周波数検出手段の出力から現在の冷熱量を演算し、前記必要冷熱量を、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和と、前記演算された現在の冷熱量との中で最大のものとしたことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項5】
複数台の電子機器が収容された電子機器設備を複数台の空調機で空調する空調制御方法であって、前記複数台の電子機器のジョブを管理するジョブ管理手段が搭載された第1のクライアントサーバを用いて前記複数台の電子機器の電力情報を求めるステップと、この第1のクライアントサーバが求めた前記複数台の電子機器の電力情報に基づいて第2のクライアントサーバが前記複数台の電子機器を空調するのに必要な必要冷熱量を求め、前記複数台の空調機を運転制御する情報を統合管理サーバに出力するステップと、前記第1のクライアントサーバおよび第2のクライアントサーバからの情報に基づいて前記統合管理サーバが前記制御盤に運転指令を指示するステップとを備え、かつ前記統合管理サーバが前記制御盤に運転指令するステップでは、前記複数台の電子機器の電力情報と必要冷熱量とに基づいて前記複数台の空調機を運転制御したときに、前記電子機器設備内の温度分布と気流とを求める環境最適化手段を用いて得られた温度分布が予め定められた許容範囲内になるように、前記複数台の空調機の運転制御指令を前記制御盤に出力することを特徴とする空調制御方法。
【請求項6】
前記必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和であることを特徴とする請求項5に記載の空調制御方法。
【請求項7】
前記必要冷熱量は、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和のいずれか大きい方としたことを特徴とする請求項5に記載の空調制御方法。
【請求項8】
前記第2のクライアントサーバまたは前記統合管理サーバが、前記各空調機に備えられた還気温度センサと給気温度センサと周波数検出手段の出力から現在の冷熱量を演算し、前記必要冷熱量を、前記複数台の電子機器が実際に消費している消費電力の総和と、前記第1のクライアントサーバに入力されたジョブ計画からこの第1のクライアントサーバが予測する各電子機器の将来の消費電力の総和と、前記演算された現在の冷熱量との中で最大のものとしたことを特徴とする請求項5に記載の空調制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate