説明

空調制御システム

【課題】身体の状態に合わせた室内空調環境を作りだす空調制御システムを得ること。
【解決手段】空気調和機の空調制御を行う空調制御システム1であって、睡眠中の人である就寝者の生体情報を定期的に取得する生体情報取得部2と、前記生体情報を記憶するための生体情報記憶部3と、前記生体情報記憶部3に記憶された生体情報に基づいて、就寝者の生体情報の変化を算出する睡眠状態検出部4と、空気調和機の空調対象の室内状態を検出する室内状態検出部5と、前記生体情報の変化および前記室内状態に基づいて、空気調和機の制御目標値を決定する制御目標値決定部6と、前記制御目標値に基づいて空気調和機の制御を行う空調設定値制御部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時の生体情報の変化に基づいて室内の温湿度などを制御して就寝者の睡眠環境を向上させる空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸、心拍、体動などの生体状態を非接触で取得する方法として、ドップラレーダセンサーを用いた装置が知られている。ドップラレーダセンサーを用いた生体状態取得装置として、例えば、下記特許文献1において、マイクロ波を人体に向けて送信し、その送信波と人体からの反射波の波長の変化であるドップラ信号の周波数を求め、その周波数から人の脈拍数、あるいは呼吸数を演算する技術が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献1で開示されているこの種の生体状態取得装置で得られた生体状態情報を用いて、就寝者の睡眠深度を推定する技術や、自律神経機能の状態を推定する技術、さらに、生体状態情報に基づいて各種機器を制御する技術が下記特許文献2、3において開示されている。
【0004】
また、下記特許文献1〜3等の技術を用いて測定した生体状態情報より、RechtschaffenとKalesが提唱した睡眠深度を6段階に分類する国際判断基準に準拠した睡眠段階を推定し、推定した睡眠段階に応じて各種機器を制御する技術が下記特許文献4において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−71825号公報(第3頁)
【特許文献2】特開2006−263032号公報(第6〜8頁、図1)
【特許文献3】特開平05−92040号公報(第2頁、第3頁、図1)
【特許文献4】特開2005−253847号公報(第10頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術(特許文献4)によれば、各々の時点の生体状態情報より推定した睡眠段階に対応した目標値を空調機に送信しており、空調機の目標値は睡眠深度が変わったことを検知した後でなければ変更されない。そのため、睡眠段階が移り変わる区間に集中的に冷却するような制御を行う必要がある場合、対応した制御を行うことができなかった。また、空調機の空調容量が小さいとき、室内の空調環境が目標値の状態になるまでに遅延時間が発生し、室内の空調環境が目標値の状態になるまでの間は身体の状態に対して不適当な空調状態となり、就寝者において、寒すぎる・暑すぎるといった不快感を与え、中途覚醒を招いてしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体情報の変化量を検知することで、睡眠段階の移り変わりを認識することができ、空調機の目標値を変更して身体の状態に合わせたきめ細かい室内空調環境を作りだすことが可能な空調制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、空気調和機の空調制御を行う空調制御システムであって、睡眠中の人である就寝者の生体情報を定期的に取得する生体情報取得手段と、前記生体情報を記憶するための生体情報記憶手段と、前記生体情報記憶手段に記憶された生体情報に基づいて、就寝者の生体情報の変化を算出する睡眠状態検出手段と、空気調和機の空調対象の室内状態を検出する室内状態検出手段と、前記生体情報の変化および前記室内状態に基づいて、空気調和機の制御目標値を決定する制御目標値決定手段と、前記制御目標値に基づいて空気調和機の制御を行う空調設定値制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体状態が変化している区間に集中的に空調することが可能であり、身体の状態に合わせたきめ細かい室内空調環境を作りだすことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来の空調制御システムの制御状態を示す図である。
【図2】図2は、空調制御システムの室内設置例を示す図である。
【図3】図3は、空調制御システムの構成例を示す図である。
【図4】図4は、睡眠開始から起床までの就寝者の状態の変化を示す図である。
【図5】図5は、空調制御テーブルの構成例を示す図である。
【図6】図6は、冷房運転時の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、生体情報が体動回数の場合の入眠検知の処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、冷房運転時の睡眠開始から起床までの睡眠状態の変化と空調制御による室内温度の変化を示す図である。
【図9】図9は、暖房運転時の睡眠開始から起床までの睡眠状態の変化と空調制御による室内温度の変化を示す図である。
【図10】図10は、空調制御システムの室内設置例を示す図である。
【図11】図11は、空調制御システムおよび空気調和機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる空調制御システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
まず、従来の空調制御システムにおける制御について簡単に説明する。従来の空調制御システムでは、各々の時点の生体状態情報より推定した睡眠段階に対応した目標値に基づいて空調制御を実施する。図1は、従来の空調制御システムの制御状態を示す図である。実線が就寝者の睡眠状態(上にあるほど浅い睡眠であり、下にあるほど深い睡眠である)を示し、破線が室内の温度変化(上にあるほど温度が高い状態)を示す。また、横軸は経過時間を示す。図1は、一晩の睡眠中の睡眠深度の変化と温度変化をイメージした図である。従来の空調制御システムでは、空調機の目標値は睡眠深度が変わったことを検知した後でなければ変更できないため、図1に示すように室内の空調環境が目標値の状態になるまでに遅延時間が発生することになる。そのため、本実施の形態では、室内の空調環境が目標値の状態になるまでの遅延を生じさせない空調制御システムについて説明する。
【0013】
図2は、本実施の形態に係る空調制御システムの室内設置例を示す図である。図2に示すように、空調制御システムは、室内に設置されている空気調和機100に内蔵されているシステムであり、就寝中の人である就寝者の生体情報を取得して空気調和機100の制御を行う。ここでは、空気調和機100は、就寝者が居る室内を空調対象とする。なお、図2中に示す生態情報取得部2および室内情報検出部5については後述する。
【0014】
つづいて、空調制御システムの構成について説明する。図3は、空調制御システム1の構成例を示す図である。空調制御システム1は、空気調和機100の前面に設置された生体センサーにより就寝者の生体情報を検出する生体情報取得部2と、検出された生体情報を記憶しておく生体情報記憶部3と、生体情報から睡眠の状態を算出する睡眠状態検出部4と、空気調和機100の前面に設置され、室内を監視して室内温湿度の状態を検出する室内状態検出部5と、就寝者の睡眠状態と空気調和機100の状態によって空気調和機100の制御目標値を決定する制御目標値決定部6と、空気調和機100を設定した制御目標値になるよう制御する空調設定値制御部7と、を備える。なお、図3では、本実施の形態に係る要部の構成のみを示しており、送風ファンや冷凍サイクルといった空気調和機に通常備わる各種構成部の図示は省略している。
【0015】
生体情報取得部2は、就寝者の睡眠を阻害しない無拘束型の生体センサーである。例えば、ドップラレーダセンサーや焦電センサー、サーモパイルセンサー、カメラのうち、少なくとも1つを含むものとする。生体情報取得部2は、就寝者の生体情報(体動や心拍、体表面温度など)を検知し、その生体情報を示す生体情報信号(体動信号や心拍信号など)を生体情報記憶部3に出力する。出力するタイミングとしては、生体情報取得部2は、所定時間T1秒(例えば、30秒)毎に1度、就寝者の生体情報を検知し、検知した生体情報信号を生体情報記憶部3に出力する。
【0016】
生体情報記憶部3は、メモリやそれに類似する記憶手段から構成され、生体情報取得部2および睡眠状態検出部4と接続する。生体情報記憶部3は、生体情報取得部2から出力された生体情報信号を、出力された時間と生体情報信号の内容(体動の回数や体動の大きさを表す電圧値、心拍の回数など)とを出力された順に記憶していく。
【0017】
睡眠状態検出部4は、入眠フラグ判定部41と、入眠検出部42と、睡眠状態算出部43と、から構成されており、生体情報記憶部3および制御目標値決定部6と接続する。入眠フラグ判定部41は、就寝者が入眠(入眠の状態に関しては後述する)しているかどうかを示す入眠フラグ411(入眠到達時にフラグONとなり、入眠未到達時はフラグOFFのままである。また、初期値はOFFとする)を含み、入眠フラグ411がOFFであるとき、入眠していないと判断し、入眠の判定を行う入眠検出部42へ処理を移行する。また、入眠フラグ判定部41は、入眠フラグ411がONであるとき、入眠は終わったと判断し、睡眠状態の判定を行う睡眠状態算出部43へ処理を移行する。
【0018】
ここで、睡眠状態について説明する。図4は、睡眠開始から起床までの就寝者の状態の変化を示す図である。具体的には、睡眠開始から起床までの就寝者の睡眠状態の変化と、深部体温(直腸温度)の変化と、体動回数の変化と、を示す。まず、睡眠は、一般的に眠りの浅いREM(Rapid Eye Movement)睡眠と、眠りの深いノンREM睡眠とに大別される。更に細かく睡眠状態が定義されており、覚醒、REM睡眠、睡眠深度1、2、3、4の6つの状態が定義されている。睡眠深度1、2、3、4はノンREM睡眠を更に4つの段階に分けたものであり、ノンREM睡眠のなかでは睡眠深度1が最も眠りが浅く、睡眠深度4が最も眠りが深い。本稿では、睡眠深度1、2を浅睡眠、睡眠深度3、4を深睡眠と称する。
【0019】
図4に示すように、就寝者が睡眠を開始すると、深部体温が下降し、最初の深睡眠に到達する。これを入眠とし、入眠以降、次に目覚めるまでの間には深睡眠、浅睡眠、REM睡眠と睡眠が浅くなるように移行し、その後、REM睡眠、浅睡眠、深睡眠と睡眠が深くなるように移行するという睡眠サイクルが通常約90分周期で繰り返される。なお、図4に示すように、多くの場合、体動が多いときには覚醒に近く、体動が少ないときは深い睡眠である。
【0020】
図3の睡眠状態検出部4の説明に戻る。入眠検出部42は、入眠フラグ411がOFFである場合に、就寝者が入眠したかどうかの判定を行う。就寝者が睡眠を開始してから初めて深睡眠の状態になった場合に入眠フラグ411をONにし、その後は入眠したかどうかの判定を行わないものとする。
【0021】
睡眠状態算出部43は、入眠フラグ411がONである場合に、就寝者の睡眠状態の判定を行う。睡眠状態算出部43は、生体情報記憶部3に記憶されている生体情報に基づいて就寝者の睡眠状態の判定を行い、睡眠状態が浅くなっている(深睡眠、浅睡眠、REM睡眠のように移行している)ことを示す浅睡眠信号、睡眠状態が深くなっている(REM睡眠、浅睡眠、深睡眠のように移行している)ことを示す深睡眠信号、または、睡眠状態が安定していることを示す安定睡眠信号、の少なくともいずれかの睡眠状態信号を定期的に制御目標値決定部6に出力する。
【0022】
室内状態検出部5は、室内温度検出部51と、室内湿度検出部52と、から構成され、制御目標値決定部6と接続する。室内温度検出部51は、サーミスターやそれに類似するものから構成されており、室内温度を検出し、その温度を示す温度検出信号を制御目標値決定部6に出力する。室内湿度検出部52は、湿度センサーやそれに類似するものから構成されており、室内湿度を検出し、その湿度を示す湿度検出信号を制御目標値決定部6に出力する。
【0023】
制御目標値決定部6は、睡眠状態検出部4からの睡眠状態信号、室内状態検出部5から現在の室内状態を示す各検出信号(温度、湿度)、および空調設定値制御部7からの空調機設定値を受信し、その受信した信号に応じて、省エネで快適な睡眠環境を提供するための室内環境の目標値の決定を行う。制御目標値決定部6は、図5に示す運転モード(冷房運転や暖房運転など)に応じて睡眠状態の変化の状態毎の目標値(目標温度や目標湿度)を指定した空調制御テーブルを記憶している。制御目標値決定部6は、省エネ性や快適性を考慮して設定された空調制御テーブルに基づいて、空調設定値制御部7に対する目標値(設定温度や設定湿度)を変更する。そして、空調設定値制御部7に対して、空気調和機100を変更後の目標値に制御するための空調制御信号を送信する。
【0024】
図5は、空調制御テーブルの構成例を示す図である。空調制御テーブルは、運転モードと、受信信号と、目標温度(℃)と、目標湿度(%)と、から構成される。例えば、運転モードが「冷房運転」のときに「深睡眠信号」を受信した場合、目標温度を「初期設定温度−1.0」(℃)とし、目標湿度を「60」(%)とすることを示す。
【0025】
空調設定値制御部7は、制御目標値決定部6から空調制御信号を受信し、変更された目標値に基づいて、空気調和機100の吹出し温度や加湿・除湿、室外圧縮機の回転数などを制御し、室内の温湿度が目標値になるよう環境を構築する。
【0026】
なお、各ブロックはマイクロコンピュータを含む電子回路で処理され、空調制御システム1全体を制御する。
【0027】
つづいて、本実施の形態における空調制御システムの空調制御動作について説明する。最初に、運転モードが冷房運転の場合について説明する。図6は、冷房運転時の制御動作を示すフローチャートである。
【0028】
まず、空調制御システム1が起動されると、入眠フラグ判定部41は、入眠フラグ411をOFFにする(ステップS1)。
【0029】
つぎに、制御目標値決定部6が、空調設定値制御部7から現在の空気調和機100の目標値(設定温度、設定湿度)である空調機設定値を取得し、これを初期設定値として記憶する(ステップS2)。
【0030】
つぎに、生体情報取得部2は、就寝者の生体情報(例えば、体動回数)を検出して取得し(ステップS3)、生体情報記憶部3に入力して、生体情報記憶部3が生体情報を記憶する(ステップS4)。
【0031】
入眠フラグ判定部41は、入眠フラグを確認し(ステップS5)、入眠フラグがOFFのとき(ステップS5:No)、入眠検出部42が、生体情報記憶部3に記憶されている就寝者の生体情報に基づいて、評価指数を算出し入眠を判定する(ステップS6〜S11)。図7は、生体情報が体動回数の場合の入眠検知の処理を示すフローチャートである。
【0032】
具体的に、入眠検出部42は、生体情報記憶部3に記憶されている生体情報から、最新の生体情報(ここでは体動回数の情報)を取得し(ステップS6)、生体情報の値を確認する(ステップS7)。例えば、使用する生体情報が体動回数の情報であった場合、評価指数(体動回数の情報の場合は体動評価指数)は生体情報取得部2が取得した最新の体動回数であり、体動回数が0回の場合、すなわち、生体情報取得部2が前のデータ取得後から最新のデータ取得までに体動が1度も発生しなかった場合(ステップS7:Yes)、体動評価指数Acのカウントを1増加させる(ステップS8)。
【0033】
そして、入眠検出部42は、体動評価指数Ac=10かどうかを確認する(ステップS9)。図4に示すように、多くの場合、体動が多いときには覚醒に近く、体動が少ないときは深い睡眠である。そのため、入眠検出部42は、体動評価指数Acが規定された一定値以上、例えば、体動評価指数Ac=10になったときに「就寝者が入眠した」と判断する。ここでは、体動評価指数Ac=10ではないとして(ステップS9:No)、ステップS3に戻って、再度生体情報検出を行う処理を繰り返す(ステップS3〜S8)。
【0034】
そして、入眠検出部42は、再度体動評価指数Ac=10かどうかを確認する(ステップS9)。ここでは、体動評価指数Ac=10、すなわち、規定の期間で体動がなかったとして(ステップS9:Yes)、入眠検出部42は、「就寝者が入眠した」と判断し、入眠フラグ411をONにする(ステップS10)。
【0035】
なお、入眠検出部42は、体動評価指数Acが一定値、例えば、Ac=10になる前に1度でも体動を検出した場合(ステップS7:No)、体動評価指数Acの値を0にリセットする(ステップS11)。そして、ステップS3に戻って、再度生体情報検出を行う処理を繰り返す(ステップS3〜S8)。
【0036】
入眠フラグ判定部41が入眠フラグを確認した結果、入眠フラグがONのとき(ステップS5:Yes)、睡眠状態算出部43が、生体情報記憶部3に記憶されている就寝者の生体情報を取得し、取得した生体情報を用いて生体情報の変化量を計算し、現在の睡眠の状態を判定する(ステップS12〜S18)。
【0037】
具体的に、睡眠状態算出部43は、生体情報記憶部3に記憶されている生体情報から、過去n個分(例えば10個)の生体情報を取得し(ステップS12)、その変化量を計算する(ステップS13)。生体情報の変化量を算出する方法として、例えば、使用する生体情報が体動回数の情報であった場合、生体情報取得部2が取得した現時点から10個前までの体動回数をxi(i=0,1,2,…,9:x0が最新の情報で、iが増える毎に過去の情報となる)、各体動回数の取得時間をyi(i=0,1,2,…,9:y0が最新の情報で、iが増える毎に過去の情報となる)としたとき、以下に示す公知である体動回数を要素とした回帰直線の傾きを導出する式(1)を用いて体動情報の変化量(微分係数)を算出する(ステップS13)。
【0038】
【数1】

【0039】
睡眠状態算出部43は、算出した生体情報の変化量が条件X1、例えば「変化量が負である」という条件を満たした場合(ステップS14:Yes)、就寝者が深睡眠に移行していると判定し、制御目標値決定部6に深睡眠に移行していることを示す深睡眠信号を送信する(ステップS15)。
【0040】
深睡眠信号を受信した制御目標値決定部6は、睡眠状態算出部43からの深睡眠信号と、室内状態検出部5から定期的に受信している室内状態情報に基づいて、目標値の設定を行い、空気調和機100に対する制御目標値の変更が必要かどうかを判断する。
【0041】
なお、室内状態検出部5は、各検出部で検知した室内情報を各検出信号によって定期的に制御目標値決定部6に送信するものとする。具体的には、定期的(例えば1分毎)に、室内温度検出部51が室内温度を検出し、室内湿度検出部52が室内湿度を検出し、検出したそれぞれの値を制御目標値決定部6に送信する。
【0042】
ここで、就寝者が深睡眠状態にあるとき、身体の温度調節機能が低下するため、この状態のときに体が暑く感じた場合、代謝により体温の調節ができず、不調をきたしてしまう。そのため、空調制御システム1としては、深睡眠状態では暑く感じないよう設定温度を低くすることが望ましい。
【0043】
室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信した制御目標値決定部6は、冷房運転モードおよび深睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度−1.0℃、目標湿度を60%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。このとき、室内温度が目標温度より低い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定値制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。なお、空調制御信号には、設定温度や設定湿度の他、風向、風量、風速などの情報を含めてもよい。
【0044】
また、睡眠状態算出部43は、算出した生体情報の変化量が条件X2、例えば「変化量が正である」という条件を満たした場合(ステップS14:No,ステップS16:Yes)、就寝者が浅睡眠に移行していると判定し、制御目標値決定部6に浅睡眠に移行していることを示す浅睡眠信号を送信する(ステップS17)。
【0045】
ここで、就寝者が浅睡眠状態にあるとき、身体は覚醒状態に近く、温度変化に敏感な状態であるため、この状態のときに寒すぎた場合、不快に感じて起きてしまう。そのため、空調制御システム1としては、浅睡眠状態では、寒さによる不快を感じないよう設定温度を高めに設定することが望ましい。
【0046】
浅睡眠信号を受信した制御目標値決定部6は、同様に室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信し、冷房運転モードおよび浅睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度+2.0℃、目標湿度を50%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。このとき、室内温度が目標温度より低い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定値制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。
【0047】
また、睡眠状態算出部43では、算出した生体情報の変化量が条件X1、X2のどちらも満たさない、例えば、0である場合(ステップS14:No、ステップS16:No)、安定睡眠状態にあると判定し、制御目標値決定部6に安定睡眠状態であることを示す安定睡眠信号を送信する(ステップS18)。
【0048】
ここで、就寝者が安定睡眠状態にあるとき、より省エネ性を高めるために設定温度を高く設定するものとする。このとき、設定温度が高くとも不快に感じないよう、空調制御システム1としては、設定湿度を低く設定することが望ましい。
【0049】
安定睡眠信号を受信した制御目標値決定部6は、同様に室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信し、冷房運転モードおよび安定睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度+2.0℃、目標湿度を50%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。このとき、室内温度が目標温度より低い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定値制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。
【0050】
なお、制御目標値決定部6では、制御目標値に変更がない場合、すなわち最新の制御目標値が前回と同じ場合、空調設定値制御部7に対して空調制御信号を送信しない。
【0051】
空調設定値制御部7は、制御目標値決定部6から空調制御信号を受信し、空調制御信号で指示された目標温度および目標湿度に基づいて空気調和機100を制御する。図8は、冷房運転時の睡眠開始から起床までの睡眠状態の変化と空調制御による室内温度の変化を示す図である。生体情報の変化により空調を行った場合の生体状態および室内温度の変化を示す。図8では、実線が就寝者の睡眠状態(上にあるほど浅い睡眠であり、下にあるほど深い睡眠)、破線が室内の温度変化(上にあるほど温度が高い状態)、一点鎖線が空調設定温度の変化(上が初期設定温度+2.0℃、下が初期設定温度−1.0℃、黒丸が電源のON/OFFを示す。)を示す。また、横軸が経過時間であり、一晩の睡眠中の睡眠深度の変化と温度変化を示す。図8に示すように、空調制御システム1では、リアルタイムに睡眠状態にあった室内温度の変化が可能になり、より快適な睡眠を得ることができる。ここで、湿度の変化は図示していないが、温度の変化と同様に変化する。
【0052】
つぎに、運転モードが暖房運転の場合について説明する。運転モードが暖房運転であった場合、ステップS1からステップS18までの各ステップは冷房運転の場合と同様である。そのため、詳細な説明については省略し、異なる部分について説明する。
【0053】
ステップS15において、睡眠状態算出部43が深睡眠信号を送信した場合、制御目標値決定部6は、室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信し、暖房運転モードおよび深睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度−1.0℃、目標湿度を45%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。ここで、暖房運転の場合、使用時は外気温が寒い時期(例えば冬季)を想定しているため、室内温度が目標温度より高い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。
【0054】
つぎに、ステップS17において、睡眠状態算出部43が浅睡眠信号を送信した場合、制御目標値決定部6は、室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信し、暖房運転モードおよび浅睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度+2.0℃、目標湿度を40%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。ここで、室内温度が目標温度より高い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。
【0055】
つぎに、ステップS18において、睡眠状態算出部43が安定睡眠信号を送信した場合、制御目標値決定部6は、室内状態検出部5から室内情報を各検出信号によって受信し、暖房運転モードおよび安定睡眠信号受信という条件から、自身が保持している空調制御テーブル(図5参照)に基づいて、目標温度を初期設定温度+2.0、目標湿度を40%に設定し、目標値の変更を指示する空調制御信号を空調設定値制御部7に送信する。ここで、室内温度が目標温度より高い場合、空気調和機100の電源をOFFにする旨を空調制御信号に含めて空調設定制御部7に送信し、室内温度を目標温度に近づけるようにする。
【0056】
図9は、暖房運転時の睡眠開始から起床までの睡眠状態の変化と空調制御による室内温度の変化を示す図である。生体情報の変化により暖房空調を行った場合の生体状態及び室内温度の変化を示す。図9では、実線が就寝者の睡眠状態(上にあるほど浅い睡眠であり、下にあるほど深い睡眠)、破線が室内の温度変化(上にあるほど温度が高い状態)、一点鎖線が空調設定温度の変化(上が初期設定温度+2.0℃、下が初期設定温度−1.0℃、黒丸が電源のON/OFFを示す。)を示す。また、横軸が経過時間であり、一晩の睡眠中の睡眠深度の変化と温度変化を示す。図9に示すように、空調制御システム1では、リアルタイムに睡眠状態にあった室内温度の変化が可能になり、より快適な睡眠を得ることができる。ここで、湿度の変化は図示していないが、温度の変化と同様に変化する。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態では、空調制御システム1において、睡眠状態検出部4が、取得した生体情報から就寝者の生体情報の変化を検知し、制御目標値決定部6が、生体情報の変化に基づいて空気調和機100の空調制御を行うための目標温度等を決定することとした。これにより、就寝者の睡眠状態の変化に対して室内温度等をリアルタイムに変化させることができ、就寝者がより快適な睡眠を得ることができる。
【0058】
なお、本実施の形態において、睡眠状態算出部43は、現在の睡眠状態を示す睡眠状態信号を定期的に制御目標値決定部6に出力しているが、これに限定するものではない。例えば、睡眠状態算出部43は、睡眠状態(睡眠が浅くなっている状態、深くなっている状態、安定している状態)が変わるタイミングでその睡眠状態の変化を示す睡眠状態変化信号を制御目標値決定部6に出力するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態において、生体情報記憶部3についてはメモリを想定しているが、これに限定せず、情報を記憶できる媒体であればよく、例えば、SDカードやUSBメモリ、ハードディスク等でもよい。
【0060】
また、本実施の形態において、入眠検出部42は、入眠判断時に1度でも体動を検出した場合、体動無し回数Acを0にリセットしているが、これに限定せず、リセットせずに体動無し回数を積算していき、一定値(例えば50など)以上になった場合に入眠と判定してもよい。
【0061】
また、前記生体情報の変化は、その時点での体動回数と直前の体動回数との差を取り、過去n回分(例えば10回分)のうち、差が負である回数をカウントしてもよい。この場合、差が負である回数が一定回数以上(例えば7回以上)であれば、深睡眠へと移行している状態であり、差が正である回数が一定回数以上(例えば7回以上)であれば、浅睡眠へと移行している状態であり、どちらの条件でもなければ安定した睡眠の状態であると判断してもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、一例として、記憶する生体情報が体動回数の場合について説明したが、生体情報取得部2が検出した生体情報であればよく、例えば、呼吸情報、心拍リズム、体表面平均温度、体表面部分温度であってもよく、また、複数の生体情報を用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、空調制御システム1が空気調和機100に内蔵された場合について説明したが、空調制御システムが空気調和機の外部にあってもよい。図10は、本実施の形態に係る空調制御システムの室内設置例を示す図である。図2と異なり、空調制御システム1aは、空気調和機100aの外部に設置されている。この場合、図11に示すように、空気調和機100aは、空調設定値制御部7と、制御信号送受信部8と、を含む。図11は、空調制御システム1aおよび空気調和機100aの構成例を示す図である。空調制御システム1aは、空調設定値制御部7を備えていない点が図3の空調制御システム1と異なるが、その他の構成は同一であるため、詳細な説明については省略する。空気調和機100aでは、制御信号送受信部8が、空調制御システム1a内の制御目標値決定部6と接続する。この場合、接続する方法は、有線または無線のどちらで接続されていても問題ない。
【0064】
また、本実施の形態では、一例として、温度および湿度の制御について説明したが、温度や湿度だけでなく、風向や風量といった気流の制御も同様に行うことが可能である。
【0065】
なお、就寝者の睡眠段階の移り変わりに基づいて空気調和機の制御を行う場合について説明したが、これに限定するものではない。上記で説明した制御を、例えば、扇風機やストーブ、ヒータ等の冷暖房機器に適用して室内の温度等を制御することも可能である。また、図10、11に示すように空調制御システムを外部に設置して、複数の機器を組み合わせて室内の温度等を制御するようにしてもよい。
【0066】
また、就寝者の睡眠段階の移り変わりに基づいて室内の温度や湿度を制御する場合について説明したが、これに限定するものではなく、同様の制御に基づいて温度等以外の他の室内の状態を制御することも可能である。例えば、照明機器に上記で説明した制御を適用して、就寝者の睡眠段階の移り変わりに基づいて室内の明るさを制御してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、1a 空調制御システム
2 生体情報取得部
3 生体情報記憶部
4 睡眠状態検出部
41 入眠フラグ判定部
411 入眠フラグ
42 入眠検出部
43 睡眠状態算出部
5 室内状態検出部
51 室内温度検出部
52 室内湿度検出部
6 制御目標値決定部
7 空調設定値制御部
8 制御信号送受信部
100、100a 空気調和機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の空調制御を行う空調制御システムであって、
就寝中の人である就寝者の生体情報を定期的に取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報を記憶するための生体情報記憶手段と、
前記生体情報記憶手段に記憶された生体情報に基づいて、就寝者の生体情報の変化を算出する睡眠状態検出手段と、
空気調和機の空調対象の室内状態を検出する室内状態検出手段と、
前記生体情報の変化および前記室内状態に基づいて、空気調和機の制御目標値を決定する制御目標値決定手段と、
前記制御目標値に基づいて空気調和機の制御を行う空調設定値制御手段と、
を備えることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記生体情報取得手段は、就寝者の眠りを妨げることなく就寝者の生体情報を取得可能な非拘束型のセンサーとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記生体情報は、就寝者の呼吸、体動、心拍、体表面温度の少なくともいずれか1つを含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記睡眠状態検出手段は、前記生体情報に基づいて、就寝者が入眠したかどうかを判断する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記睡眠状態検出手段は、前記生体情報が体動の場合、体動回数が規定の期間、所定値以下だった場合に入眠したと判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記睡眠状態検出手段は、前記生体情報が体動の場合、体動回数が所定値以下のときを規定の回数カウントした場合に入眠したと判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項7】
前記睡眠状態検出手段は、就寝者が入眠した場合に、前記生体情報記憶手段に記憶されている最新の生体情報を含む連続した所定の個数の生体情報に基づいて、生体情報の変化量を示す睡眠状態評価指数を算出し、睡眠状態評価指数に基づく睡眠状態信号を前記制御目標値決定手段に送信する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項8】
前記睡眠状態評価指数は、前記生体情報を変数とする時間変化量により与えられる関数値とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の空調制御システム。
【請求項9】
前記室内状態は、室内の温度、湿度の少なくともいずれか1つを含む、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項10】
前記制御目標値決定手段は、前記睡眠状態信号および前記室内状態に基づいて空気調和機の制御目標値を決定し、空気調和機の制御目標値の変更が必要かどうかを判断する、
ことを特徴とする請求項7、8または9に記載の空調制御システム。
【請求項11】
前記制御目標値決定手段は、制御目標値の変更が必要と判断した場合、前記睡眠状態信号に基づいて、空気調和機を変更後の目標値に制御するための空調制御信号を前記空調設定値制御手段へ出力する、
ことを特徴とする請求項10に記載の空調制御システム。
【請求項12】
前記制御目標値決定手段は、目標値の変更が必要ないと判断した場合、空気調和機を変更後の目標値に制御するための空調制御信号を前記空調設定値制御手段へ出力しない、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の空調制御システム。
【請求項13】
前記制御目標値決定手段は、空気調和機の現在の運転モードおよび睡眠状態信号に対応する制御目標値を記憶した空調制御テーブルを備える、
ことを特徴とする請求項10、11または12に記載の空調制御システム。
【請求項14】
前記空調制御信号は、設定温度、設定湿度、風向、風量、風速の少なくともいずれか1つを含む、
ことを特徴とする請求項11または13に記載の空調制御システム。
【請求項15】
前記空調設定値制御手段は、前記空調制御信号を受けて空気調和機の空調制御を行う、
ことを特徴とする請求項11、13または14に記載の空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−159250(P2012−159250A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19894(P2011−19894)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】