説明

空調機システム

【課題】室内機のグループ化の操作が容易で、かつ、個別リモコンが設置されていない室内機であってもグループ化が可能な空調機システムを提供する。
【解決手段】個別指定された状態を点滅で知らせる電源ランプを室内機に備え、グループ設定処理を開始/終了させるグループ設定開始/終了手段と、室内機の電源ランプが点滅している間に個別指定された室内機をグループに従属させるか否かを選択する室内機選択手段とをグループリモコン12に備え、10秒毎に室内機を個別指定すると共に、この個別指定された室内機のアドレスをグループリモコン12へ送信する個別指定手段を室外機に備える。そして、室外機10は、グループ設定処理の開始から終了されるまでの間、室内機を順次個別指定し、同個別指定された室内機は電源ランプを点滅させ、ユーザーはこの点滅状態の間にグループに属する室内機をグループリモコン12で選択・アドレス登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機を備えた空調機システムに係わり、より詳細には、複数の室内機を選択して1つのグループとして運転するグループの設定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機システムにおいて複数の室内機を1つのグループとして設定するためにはいくつかの方法が有った。
例えば、室内機の設置時に、各室内機の場所と、そのアドレスとを建物の図面に書き込んでおき、グループ化が必要な時には、建物の図面から必要な室内機のアドレスを抽出し、そのアドレスを集中管理装置や室内機のグループ管理が可能なリモコンに登録する。
【0003】
この方法は二つの問題点がある。1つ目は、図面と室内機のアドレスとを常に最新の状態に管理するため、責任者を決めて日常的に管理を行う必要がある。このため、室内機の追加や修理などにより、アドレスの自動設定機能を用いて、アドレスを再割り当てした場合、全ての機器のアドレスが変更になる場合があり、その都度、図面を更新する必要があった。
【0004】
また、2つ目としては、アドレスを用いてグループ化の操作を行うため、グループ化の操作を実施する場合は慣れた操作者でないとシステムに混乱が生じる可能性があり、不慣れな人には操作が難しいという問題が有った。
【0005】
これらの問題点を解決した方法としては、特許文献1に示すように、集中管理装置からグループ化の期間中である旨の指示を全ての室内機に通知し、この期間中において、特定の操作、例えば電源を投入した室内機だけを同じグループとして集中管理装置に登録する方法がある。
【0006】
この方法は室内機のアドレスに関係なく、操作を行った室内機だけを同じグループとして認識するため、アドレスが不明であっても操作が可能であり、また、グループ化の設定操作が通常の操作、例えば室内機の電源オンであるため設定操作が簡単である。
【0007】
しかしながら、このためには室内機とペアで使用可能な個別リモコンなどの操作機器が必要であるが、そもそも、グループ化を前提とした空調機システムでは、コスト削減のため、すべての室内機に個別リモコンが設置されているとは限らず、個別リモコンがない室内機では特許文献1に示す方法が使用できなかった。さらに、この方式では、グループ化を行う期間中はグループ化予定以外の室内機も電源をオフとする必要があり、他の室内機が運転中の場合は、該当するユーザに不快感を与えてしまう場合があった。
【0008】
特に、貸ホールやホテルの宴会場などでは、グループ化を行うために室内機を全て一旦停止させることができない。また、これらの宴会場のように予約に合わせて室内の間仕切りで部屋の広さを頻繁に変更し、これに合わせてグループ化を行うような用途においては、空調機システムの設置時において、グループリモコンのみが設置され、個別リモコンは設置されていない場合が多い。このため、個別リモコンが設置されていなくても簡単に操作できるグループ設定機能を備えた空調機システムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−130779号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決し、室内機のグループ化の操作が容易で、かつ、個別リモコンが設置されていない室内機であってもグループ化が可能な空調機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するため、請求項1に係わる発明は、室外機と、複数の室内機と、同複数の室内機をグループとして運転指示するリモコンとを備えた空調機システムであって、
個別指定されていることを操作者に報知する個別指定報知手段を前記複数の室内機の各々に備え、
前記操作者の指示によりグループ設定処理の開始指示データを出力するグループ設定開始手段と、前記個別指定報知手段を用いて個別指定されていることを前記操作者に報知した前記室内機を前記グループに従属させるか否かを前記操作者の指示により選択する室内機選択手段とを前記リモコンに備え、
前記室内機を個別指定する個別指定データを所定の時間毎に送信する個別指定手段を前記室外機、又は前記リモコンに備え、
前記グループ設定開始手段は前記個別指定手段に対して前記開始指示データを出力し、同開始指示データを受けた前記個別指定手段は前記室内機に対して前記個別指定データを順次出力すると共に、個別指定している前記室内機の識別データを前記室内機選択手段に出力し、
前記個別指定データを受けた前記室内機は前記個別指定報知手段により個別指定されていることを前記操作者に報知し、
前記室内機選択手段は前記操作者の指示により、前記識別データと対応する前記個別指定された室内機をグループに従属させるか否かを選択することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係わる発明は、前記個別指定報知手段は前記室内機に備えられた、表示機器や音の出力機器や風向板などのうち、少なくとも1つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の手段を用いることにより、本発明による空調機システムによれば、
請求項1に係わる発明は、室内機が個別指定されたことを操作者が認識し、操作者が室内機選択手段を用いてグループ化したい室内機(個別指定された)の候補を選択するため、従来技術で必要であった個別リモコンが無い室内機であってもグループ化したい室内機の候補を選択できる。また、各室内機のアドレスを操作者が知らなくてもグループ化したい室内機の選択ができるため操作が簡単である。
【0014】
請求項2に係わる発明は、個別指定報知手段が室内機に備えられた表示機器や音の出力機器や風向板などを用いているため、操作者が確実に認識できる。また、すでに室内機に備えられた装置を使用するため、個別指定報知手段を新規の機器を追加しないで安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による空調機システムの実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明による空調機システムで使用されるグループリモコンの正面図である。
【図3】本発明による空調機システムの室内機のブロック図である。
【図4】本発明による空調機システムの室外機のブロック図である。
【図5】本発明による空調機システムのグループリモコンのブロック図である。
【図6】本発明による空調機システムの動作を説明する室内機が配置された部屋の見取り図である。
【図7】本発明による空調機システムにおけるグループリモコンの動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明による空調機システムにおける室外機の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明による空調機システムにおける室内機の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明による空調機システムのブロック図である。この空調機システムは複数の冷媒系統A、冷媒系統B・・・で構成されている。
冷媒系統Aは室外機10と、この室外機10に図示しない冷媒管で接続された6台の室内機20〜室内機70とで構成されている。また、この冷媒系統A内の室内機をグループ化して制御するグループリモコン11と、グループリモコン12とが備えられている。本実施例では複数の室内機をグループ化して一斉に制御可能なグループ機能を備えたリモコンをグループリモコンと呼称する。
【0018】
また、冷媒系統Bには室外機80と、図示しないが冷媒系統Aと同様な複数の室内機やグループリモコンが備えられている。そして、空調機システムには、このシステム内のすべての機器を制御する集中管理装置1が備えられており、この集中管理装置1とシステム内のすべての機器は通信線2で接続されている。従って空調機システム内の各機器は相互に通信を行うことができる。
【0019】
空調機システムでは任意の機器と通信を行うため各機器固有のアドレスを備えている。例えば集中管理装置1は#99であり、室外機10は#00、室外機80は#10、室内機20から室内機70まで順に#01から#06が、また、グループリモコン11は#07、グループリモコン12は#08、がそれぞれ割り当てられている。
【0020】
このアドレスの割り当ては集中管理装置1を除いて各冷媒系統毎に実施される。例えば冷媒系統Aの場合、空調機システムの設置時に、室外機10に備えられている図示しないスイッチで自身のアドレス『#00』が設置業者によって設定される。次に室外機10は、室外機10内に備えられている通信スイッチ14を開放する。そして同報送信機能を用いて各室内機にアドレス設定モードへの移行指示を送信する。この指示は通信スイッチ14が開放になっているため、室外機10と同一の冷媒系統に接続されている室内機やグループリモコンにのみに送信される。
【0021】
このアドレス設定モードへの移行指示を受信した各室内機やグループリモコンはアドレス設定モードに移行し、例えば1マイクロ秒を最小カウンタ値とするフリーランニングカウンタから読み出した値の下2桁の00〜99を1〜10秒の時間値に対応させて変換した遅延時間だけ経過した後、この下2桁の値を仮アドレスとして室外機10へ送信する。この室外機10はこの仮アドレスで各室内機を区別できるため、全ての室内機の仮アドレスが決定した後、実際に管理する実アドレスを仮アドレスで指定した室内機へ送信し、以降はこの実アドレスを用いて通信する。なお、実アドレスは空調機システムで固有の値とするため、室外機10のアドレスと組み合わせた値が用いられる。この実施例では室外機10のアドレス#00の下1桁を同一冷媒系統内の連番としている。
このように各冷媒系統内の室外機がその冷媒系統内の機器のアドレスを記憶しているため、本実施例では同一冷媒系統内における室内機のグループ化を説明する。ただし、この冷媒系統内の機器のアドレスを他の冷媒系統の機器へ送信することで、冷媒系統を越えたグループ管理が可能である。
【0022】
次に図2を用いて、グループリモコン12について説明する。なお、グループリモコン11もアドレス値以外はグループリモコン12と同じである。
最初にグループリモコン12の表示部12aの表示内容について説明する。なおこの図は全ての表示項目を示しており、室内機の運転状態に従って、これらの表示項目のうち、必要な表示項目だけが選択的に表示される。
【0023】
表示部12aには、各室内機を制御するために必要な設定温度を表示する3桁の数値表示部12fと、複数の文字ブロックが表示できるようになっている。文字ブロックは各ブロック毎に表示の点灯/消灯が可能であり、これが点灯しているときに、文字ブロックで表される機能が有効であることを示す。文字ブロックは現在運転中のモードを示す『冷房』、『暖房』、『除湿』、そしてグループ番号12bの『1』〜『8』である。また、風量の逆台形マークは風量の大きさを示しており、最大の大きさの時が最大の風量であることを示している。さらに、グループ番号は室内機をまとめて制御するグループの識別番号を示している。
【0024】
次にグループリモコン12の操作について説明する。
グループリモコン12は、複数のキーからなるキー操作部12cを備えており、これらのキーを操作することで電源オン/オフや運転モードの切換、風量の変更、設定温度の変更、室内機のグループ化など、各種運転指示や設定を行うことができる。上下キー12eは温度設定に使用される設定温度や風量、水平風向板の各アップ/ダウンを指示するキーである。また、運転モードキー12gは運転モードを切り換えるキーであり、運転モードキー12gを押下する毎に『冷房』、『暖房』、『除湿』の文字ブロックが切り換えられて表示され、いずれか1つの運転モードを選択可能である。
【0025】
運転指示を与えるグループを指定する場合は、『グループ』キー12hを押下する。このキーを1回押下する毎にグループ番号12bが1、2、3・・・8、1、2・・と順次点灯するため、希望の番号が表示されるまでキーの押下を行う。この状態で表示されたグループに対して指示を与えることができる。
【0026】
一方、指定したグループ番号に室内機を登録する場合は、まず最初に『設定』キー12dを押下し、次に『グループ』キー12hを押下する。そして運転指示を与えるグループを指定する場合と同様に『グループ』キー12hを必要回数だけ押下する。この時、選択されたグループ番号12bは点滅を繰り返しており、グループの設定中であることが確認できるようになっている。
【0027】
設定したいグループ番号12bが点滅したら、『グループ』キー12hを3秒以上長押しする。この結果、空調機システムはグループ設定モードになり、各室内機は順次、自身の電源ランプを所定時間だけ点滅させる。この時、『グループ』キー12hを押下すると、電源ランプが点滅していた室内機をグループ番号12bのグループとして登録できる。グループ化したい全ての室内機を選択したら『グループ』キー12hを3秒以上長押しする。この結果、グループリモコン12はグループの設定を終了し、このグループに対して操作が可能になると共に、各空調機システムはグループ設定モードを完了して通常の運転に復帰する。なお、グループ設定動作については後で詳細に説明する。
【0028】
このように電源ランプの点滅は、グループ化に無関係な室内機にとっては、グループ化の作業が目立ちにくいので便利であるが、反面、グループ化の室内機を見つける場合には見つけにくいという欠点もある。このような場合は、グループリモコン12の操作要員と電源ランプの点滅を確認する要員とを分けて作業するとよい。操作要員一人で行う場合は電源ランプの点滅でなく、代わりにブザー音を用いるとよい。この場合、グループ化したい室内にある室内機のブザーの鳴動を操作要員が確認したら『グループ』キー12hを押下して鳴動している室内機をグループに登録するようにする。この実施例では電源ランプを用いる例を説明する。
【0029】
図3は室内機20のブロック図である。このブロック図は他の室内機と同じ構成であるため、室内機20を代表として説明し、他の室内機についての説明は省略する。
【0030】
図3に示すように室内機20は、図示しない赤外線リモコンから送信される赤外線信号を受信するリモコン受信部21と、室内の温度を検知する室温センサ27と、室温センサ27の検知信号を入力する室温センサ入力部25と、入力した指示に従って電源ランプやフィルタ清掃ランプを点灯するランプ表示部22と、送風ファンモータ23と、上下風向板の角度調節を行う上下風向板用ステッピングモータ24と、通信線2を介して他の機器と通信を行う通信部29と、これらを制御する室内機制御手段である室内機制御部26とを備えている。
【0031】
図4は室外機10のブロック図である。このブロック図は他の室外機と同じ構成であるため、室外機10を代表として説明し、他の室内機についての説明は省略する。
【0032】
室外機10は、圧縮機モータ17と、これを駆動する圧縮機駆動部16と、通信線2を介して他の機器と通信を行う通信部15と、集中管理装置1側と同一冷媒系統内との通信線2を開閉する通信スイッチ14と、種々のデータを記憶する記憶部19と、これらを制御する室外機制御手段である室外機制御部18とを備えている。なお、記憶部19には前述したアドレスの自動設定により設定された同一冷媒系統内の各室内機やグループリモコンのアドレス(実アドレス)が記憶されている。
なお、実際の構成には以上の他に、冷媒の循環方向を切り換える四方弁や、室外機ファンモータや、電子膨張弁などが備えられているが、本発明と直接的な関係がないため図示と説明とを省略する。
【0033】
図5はグループリモコン12のブロック図である。
このブロック図は他のグループリモコンと同じ構成であるため、グループリモコン12を代表として説明し、他のグループリモコンについての説明は省略する。
【0034】
グループリモコン12は、種々の指示操作を受け付けるキー操作部12cと、指示された操作の内容や、室内機の設定状態を表示する表示部12aと、種々のデータを記憶する記憶部12kと、通信線2を介して他の機器と通信を行う通信部12iと、これらを制御するリモコン制御部12jとを備えている。なお、記憶部12kにはグループ番号毎に設定された室内機のアドレスが格納されている。
【0035】
以上説明した各機器を用いて冷媒系統A内の室内機を選択して指定したグループに登録する空調機システムの動作を説明する。
図6は室外機10を除いた冷媒系統A内の機器が同一の室内に配置された例を説明する室内の見取り図である。
【0036】
室内には室内機20から室内機70の6台の室内機が配置され、室内の左右の壁にはグループリモコン11とグループリモコン12とがそれぞれ設けられている。この室内にはアコーディオンカーテンからなる間仕切りが備えられており、広い室内が必要な場合は間仕切りを取ることにより1つの室内とし、少人数の会合などの場合は間仕切りを設けることにより、最適な部屋の広さにするようになっている。
【0037】
このように部屋の広さが変更になる場合、変更された部屋に含まれる室内機を1つのグループとして温度管理を行う。このため、間仕切りを設けた場合、室内機20と室内機50とを例えばグループ1としてグループリモコン12に設定する。一方、室内機30、室内機40、室内機60、室内機70をグループ2としてグループリモコン11に設定する。さらに、間仕切りを設けない場合は、室内全体の室内機をグループ3として、グループリモコン11、もしくは、グループリモコン12に設定する。
【0038】
次に図1、図2、及び図6とを用いてグループ1を設定する場合の動作について説明する。グループ1用のグループリモコンとしてグループリモコン12を用いる。
まず最初にユーザーは、図2に示すグループリモコン12の『設定』キー12dを押下し、次に『グループ』キー12hを押下する。そして『グループ』キー12hを必要回数だけ押下する。この時選択されているグループ番号12bは点滅を繰り返しており、グループの設定中であることが確認できるようになっている。このように『グループ』キー12hを必要回数だけ押下して今回設定するグループ1のグループ番号が点滅するようにする。
【0039】
グループ1のグループ番号12bが点滅したら、『グループ』キー12hを3秒以上長押しする。この時、図1に示すようにグループリモコン12から同一の冷媒系統に存在する室外機10に(1)『グループ設定開始』の開始指示データが送信される。このデータを送信する構成がグループ設定開始手段である。
【0040】
これを受信した室外機10は自身が管理している同一冷媒系統内の室内機のアドレスを順次指定しながら、一定間隔(10秒間隔)で(2)『電源ランプ点滅』の指示、つまり、個別指定データを送信する。同時に『グループ設定開始』の指示を送信したグループリモコン12に(3)『電源ランプ点滅中室内機のアドレス』の識別データを送信する。この室内機のアドレスに対する個別指定データの送信、及びグループリモコン12への識別データの送信を室外機制御部18が実行する構成が個別指定手段である。
そしてグループリモコン12はこの識別データ(個別指定された室内機のアドレス)を受信して記憶部12kに一時的に記憶しておく。このアドレスが現在、電源ランプが点滅している室内機のアドレスである。
【0041】
このように室外機10は、内部に記憶している同一冷媒系統内の室内機のアドレスが小さい順から大きい順に従って一定間隔で個別指定データをこのアドレスと対応する室内機へ送信する。同時にこの指示を送信した宛先のアドレスである識別データをグループリモコン12へ送信する。なお、個別指定データを受信した室内機は、電源ランプの点滅を開始する。この室内機制御部26が電源ランプを点滅させる構成が個別指定報知手段である。室内機は、指示を受信してから一定時間(10秒間)だけ電源ランプの点滅を行い、この時間が経過した後は、通常の状態、つまり、運転中であれば常時点灯し、運転停止中であれば消灯する。
【0042】
なお、この実施例では個別指定報知手段による報知方法を電源ランプの点滅としているが、これに限るものでなく、人間が認識可能なものならどのようなものでもよい。例えば、他のランプの点滅やブザー音、音声合成や、特定方向に向いた風向板などであってもよい。
【0043】
このようにして各室内機は順次、自身の電源ランプを点滅させる。ユーザーはこの時、グループ化したい室内機である室内機20の電源ランプ20a、もしくは、室内機50の電源ランプ50aのいずれかの点滅を確認したら、それぞれの電源ランプが点滅中に『グループ』キー12hを押下する。
【0044】
グループリモコン12は、グループ設定開始以降に室外機10から送信された『電源ランプ点滅中室内機のアドレス』で示されるアドレスをグループ1の対象室内機の仮のアドレスとして一時的に記憶部12kに記憶する。そして、ユーザーがグループ化したい室内機の電源ランプ点滅中のタイミングで『グループ』キー12hを押下すると、グループリモコン12は、対象室内機のアドレスをグループ1の候補として登録する。
なお、ここで仮アドレスとしている理由は、グループ設定のキャンセル操作が行われた場合、この仮アドレスを消去するためである。従ってキャンセル操作の場合、前回設定されているグループのアドレスは保護される。
【0045】
このように、順次選択した室内機に対する『電源ランプ点滅』の指示送信、及びグループリモコン12への『電源ランプ点滅中室内機のアドレス』送信を、室外機制御部18が実行することにより個別指定され、個別指定された室内機が自身の電源ランプを点滅して個別指定されたことを表している時、『電源ランプ点滅中室内機のアドレス』で示される室内機を意図するグループの候補とするか否かを操作者の指示によりリモコン制御部12jが選択して、グループ化する室内機のアドレスの記憶部12kへ記憶する構成が室内機選択手段である。
【0046】
一方、室外機10は、電源ランプが点滅する室内機をそのアドレス順に指定するため、グループ1のグループを設定する場合、ユーザーはアドレス#01の室内機の電源ランプの点滅が終了してからアドレス#04の室内機50の点滅が開始するまで、アドレス#02の室内機30とアドレス#03の室内機40の点滅が終了する間の20秒間だけ待つ必要があるが、同一冷媒系統内の室内機の台数は多くても数十台であり、また、グループ対象の室内機の選択を完了すればそれ以降の処理は中断できるため、実質的には長くても数分間で作業を完了できる。
【0047】
そしてグループ化したい全ての室内機を選択、つまり、この場合、室内機20と室内機50との選択を完了したら『グループ』キー12hを3秒以上長押しする。これを検知したグループリモコン12は、グループの候補として記憶していた室内機のアドレスを現在指定しているグループ番号のグループとして正式に登録する。その後室外機10に対して(4)『グループ設定終了』の終了指示データを送信する。
【0048】
このグループリモコン12から『グループ設定終了』の終了指示データを送信する構成がグループ設定終了手段である。これを受信した室外機10は、同報通信を用いてすべての室内機に対して(5)『電源ランプ点滅中止』の指示を送信する。これを受信した電源ランプ点滅中の室内機は電源ランプの点滅を中止し、電源ランプを点滅させた以前のランプ状態に戻す。
【0049】
(4)『グループ設定終了』の終了指示データを送信したグループリモコン12は、グループの設定処理を完了し、点滅させていたグループ番号12bを点灯状態にして通常の運転操作を受け付ける。なお、グループ1とする室内機以外の室内機を誤って選択した場合は、グループ設定終了のために押下する『グループ』キー12hの3秒以上の長押しを行わないで、『設定』キー12dを押下することで、室内機のアドレス候補を正式登録せずにキャンセル(記憶部12kから削除)することができる。
【0050】
なお、グループリモコン12で電源ランプが点滅している室内機をグループに登録するため電源ランプ点滅中のタイミングで『グループ』キー12hを押下した時、電源ランプ点滅中の室内機に対して『グループ選択中』の指示を送信し、これを受信した室内機は電源ランプ点滅のパターンを変更して、室外機10から(5)『電源ランプ点滅中止』の指示が送信されるまでパターン変更された電源ランプ点滅を継続するようにしてもよい。
【0051】
つまり、グループの選択が指示された室外機の電源ランプがまだ選択されていない点滅と異なるパターンで継続的に点灯されるため、同じグループに選択された室内機をユーザーが実際の場所で確認できるため、確実な選択ができる。もし、グループ化していない室内機(電源ランプが点滅していない)がある場合は追加で登録操作が可能である。もし、グループ化予定以外の室内機が点滅していたら、グループ設定操作をキャンセルし、最初からグループの設定操作をやり直すことで対応できる。
【0052】
以上説明したように、各室内機の個別指定状態をユーザーが認識し、この状態である間に室内機選択手段を用いてグループ化したい室内機20や室内機50を選択するため、従来技術で必要であった個別リモコンが無い室内機20や室内機50であってもグループ化したい室内機の候補を選択できる。また、グループ化したい室内機が個別選択された状態でグループリモコン12のキーを押下するだけで室内機の選択ができるため操作が簡単である。
【0053】
また、個別指定報知手段が室内機20に備えられた表示機器(本実施例では電源ランプ)や音の出力機器や風向板などであるため、ユーザーが確実に認識できる。また、すでに室内機20に備えられた装置を使用するため、個別指定報知手段を新規の機器を追加しないで安価に実現できる。
【0054】
次に、グループ設定に関する各機器の動作を図7、図8、図9に示すフローチャートを用いて説明する。これらの図に記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を、また、YはYesを、NはNoをそれぞれ表している。図7はグループリモコン12のリモコン制御部12j、図8は室外機10の室外機制御部18、図9は室内機20の室内機制御部26、のそれぞれ制御フローチャートを示している。
【0055】
図7においてグループリモコン12のリモコン制御部12jは、まず最初にユーザーによるキー操作があるか確認する(ST1)。ユーザーによるキー操作がある場合(ST1−Y)、次にグループ設定中か確認する(ST2)。前述したように、『設定』キー12d、『グループ』キー12hが連続して押下された場合はグループ設定中となり、グループの各種設定を行うことができる。
【0056】
グループ設定中でない場合(ST2−N)、グループリモコン12を用いて室内機を運転制御する操作であるため、キー操作に対応して運転開始、運転停止、温度設定などの指示を各室内機へ送信する(ST4)。そしてST1へジャンプする。
【0057】
一方、グループ設定中である場合(ST2−Y)、キー操作に対応して下記の(1)〜(5)の処理のうち1つを実施(ST3)してからST1へジャンプする。なお、ST3内には3つの手段が含まれている。各手段は各処理のステップと対応するプログラムをリモコン制御部12jが実行することで実現される。
【0058】
(1)グループ設定開始の処理(グループ設定開始手段)
『設定』キー12d、『グループ』キー12hが連続して押下された以降の操作で『グループ』キー12hが長押し(3秒以上)された場合はグループ設定の開始の指示操作であるため、同一の冷媒系統A内の室外機10に対して、『グループ設定開始』の指示(開始指示データ)を送信する。
【0059】
(2)グループ設定終了の処理(グループ設定終了手段)
グループ設定開始の処理が実施されてから押下された『グループ』キー12hの長押し(3秒以上)はグループ設定終了の指示操作であるため、同一の冷媒系統A内の室外機10に対して、『グループ設定終了』の指示(終了指示データ)を送信する。
その後、ユーザーにより選択されて記憶部12kに記憶している該当グループに属する室内機の仮アドレス(グループ候補の室内機アドレス、つまり、識別データ)を同一グループとして取り扱う正式なアドレスとして記憶部12kに登録する。
【0060】
(3)設定グループ選択中の処理
『設定』キー12d、『グループ』キー12hが連続して押下された以降の操作で『グループ』キー12hが押下された場合は、グループを識別するグループ番号の選択であるため、グループ』キー12hの押下毎に表示部12aのグループ番号12bを『1』から順に『2』、『3』・・・と移動させて点滅表示させる。
【0061】
(4)室内機の選択処理(室内機選択手段)
グループ設定開始からグループ設定終了の処理中における『グループ』キー12hの押下は、現在、電源ランプ点滅中の室内機のアドレスをグループとして選択する指示操作であるため、室外機10から受信して一時的に記憶部12kに記憶している最新の室内機アドレスをグループ化対象の室内機の仮アドレス(グループ候補の室内機アドレス)として記憶部12kに追加して記憶する。
【0062】
(5)グループ設定キャンセル処理
グループ設定開始以降で『設定』キー12dが押下された場合は、グループ設定のキャンセル指示であるため、室外機10へ『グループ設定終了』の指示を送信し、記憶部12kに記憶している今回のグループ設定操作に関する全データを破棄する。
【0063】
一方、ユーザーによるキー操作がない場合(ST1−N)、次にグループ設定中であるか確認する(ST5)。グループ設定中とはグループ設定開始の操作が行われた後、グループ設定終了の操作が行われる直前までを示す。グループ設定中でない場合(ST5−N)、ST1へジャンプする。グループ設定中である場合(ST5−Y)、室外機10から『電源ランプ点滅中室内機アドレス』を受信したか確認する(ST6)。『電源ランプ点滅中室内機アドレス』を受信していない場合(ST6−N)、ST1へジャンプする。
『電源ランプ点滅中室内機アドレス』を受信した場合(ST6−Y)、受信した室内機のアドレスを一時的に記憶部12kに記憶する(ST7)。そしてST1へジャンプする。
【0064】
次に、図8を用いて室外機10の処理を説明する。図8において室外機制御部18はまず最初に、受信データがあるか確認する(ST11)。受信データがある場合(ST11−Y)、受信データは『グループ設定開始』の指示か確認する(ST12)。
【0065】
受信データが『グループ設定開始』の指示でない場合(ST12−N)、受信データは『グループ設定終了』の指示か確認する(ST14)。受信データが『グループ設定終了』の指示の場合(ST14−Y)、各室内機へ『電源ランプ点滅中止』の指示を同報送信する(ST16)。そしてST11へジャンプする。
【0066】
受信データが『グループ設定終了』の指示でない(ST14−N)、グループ設定処理以外の指示、例えば電源のオン/オフや運転モードの切り替えなどの運転指示であるため、受信したデータに従って運転を実施する(ST15)。そしてST11へジャンプする。
【0067】
一方、受信データがない場合(ST11−N)、前回の『電源ランプ点滅』指示の送信から10秒経過したか確認する(ST17)。前回の『電源ランプ点滅』指示の送信から10秒経過していない場合(ST17−N)、ST11へジャンプする。
【0068】
前回の『電源ランプ点滅』指示の送信から10秒経過した場合(ST17−Y)、電源ランプを点滅させる次の室内機のアドレスを記憶部19から抽出する(ST18)。そして、指定されたアドレスの室内機へ『電源ランプ点滅』の指示を送信すると共に、『グループ設定開始』の指示を行ったグループリモコン12へ『電源ランプ点滅中室内機アドレス』を送信する(ST19)。このST19のステップと対応するプログラムを室外機制御部18が実行することで個別指定手段が実現される。
【0069】
そして次に現状の運転を継続して制御し(ST20)、ST11へジャンプする。なお、現状の運転とは指示されている運転を継続するという意味であり、運転が停止状態の場合はその状態を継続することである。
【0070】
一方、受信データが『グループ設定開始』の指示である場合(ST12−Y)、『電源ランプ点滅』の指示を送信するため、記憶部19に記憶している同一冷媒系統内の室内機で一番小さな値のアドレスを記憶部19から抽出する(ST13)。そしてST19へジャンプする。
【0071】
次に図9を用いて室内機20の処理を説明する。
室内機制御部26は、まず最初に受信データがあるか確認する(ST31)。受信データがある場合(ST31−Y)、次に受信データは室内機の運転指示か確認する(ST32)。受信データが室内機の運転指示である場合(ST32−Y)、運転に関する指示、例えば電源のオン/オフや設定温度の変更、運転モードの変更などであるため、受信した運転指示に従って空調運転を行う(ST38)。そしてST31へジャンプする。
【0072】
受信データが室内機の運転指示でない場合(ST32−N)、受信データは『電源ランプ点滅』の指示か確認する(ST33)。受信データが『電源ランプ点滅』の指示である場合(ST33−Y)、電源ランプ点滅を開始する(ST39)。そしてST31へジャンプする。なお、このST33とST39とのステップと対応するプログラムを室内機制御部26が実行することで個別指定報知手段が実現される。
【0073】
受信データが『電源ランプ点滅』の指示でない場合(ST33−N)、受信データは『電源ランプ点滅中止』の指示か確認する(ST34)。受信データが『電源ランプ点滅中止』の指示でない場合(ST34−N)、処理が不要なデータであるため、何もしないでST31へジャンプする。受信データが『電源ランプ点滅中止』の指示である場合(ST34−Y)、電源ランプ点滅を中止して点滅以前の状態、つまり、常時点灯か、消灯かの状態に復帰させる(ST40)。そしてST31へジャンプする。
【0074】
一方、受信データがない場合(ST31−N)、電源ランプ点滅開始から10秒経過したか確認する(ST35)。電源ランプ点滅開始から10秒経過した場合(ST35−Y)、電源ランプ点滅を中止して点滅以前の状態に復帰させる(ST36)。そしてST31へジャンプする。電源ランプ点滅開始から10秒経過していない場合(ST35−N)、現在の運転を継続し(ST37)、そしてST31へジャンプする。
【0075】
なお本実施例では個別指定手段を室外機に備えているが、これに限るものでなく、同じ冷媒系統内のすべての室内機のアドレスを記憶したグループリモコンに備えていてもよい。これにより、本実施例で必要な『電源ランプ点滅中室内機のアドレス』送信を省略することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 集中管理装置
2 通信線
10、80 室外機
11、12 グループリモコン
12a 表示部
12b グループ番号
12c キー操作部
12d 設定キー
12e 上下キー
12f 数値表示部
12g 運転モードキー
12h グループキー
12i 通信部
12j リモコン制御部
12k 記憶部
14 通信スイッチ
15 通信部
16 圧縮機駆動部
17 圧縮機モータ
18 室外機制御部
19 記憶部
21 リモコン受信部
22 ランプ表示部
23 送風ファンモータ
24 上下風向板用ステッピングモータ
25 室温センサ入力部
26 室内機制御部
27 室温センサ
29 通信部
20、30、40、50、60、70 室内機
20a、50a 電源ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、複数の室内機と、同複数の室内機をグループとして運転指示するリモコンとを備えた空調機システムであって、
個別指定されていることを操作者に報知する個別指定報知手段を前記複数の室内機の各々に備え、
前記操作者の指示によりグループ設定処理の開始指示データを出力するグループ設定開始手段と、前記個別指定報知手段を用いて個別指定されていることを前記操作者に報知した前記室内機を前記グループに従属させるか否かを前記操作者の指示により選択する室内機選択手段とを前記リモコンに備え、
前記室内機を個別指定する個別指定データを所定の時間毎に送信する個別指定手段を前記室外機、又は前記リモコンに備え、
前記グループ設定開始手段は前記個別指定手段に対して前記開始指示データを出力し、同開始指示データを受けた前記個別指定手段は前記室内機に対して前記個別指定データを順次出力すると共に、個別指定している前記室内機の識別データを前記室内機選択手段に出力し、
前記個別指定データを受けた前記室内機は前記個別指定報知手段により個別指定されていることを前記操作者に報知し、
前記室内機選択手段は前記操作者の指示により、前記識別データと対応する前記個別指定された室内機をグループに従属させるか否かを選択することを特徴とする空調機システム。
【請求項2】
前記個別指定報知手段は前記室内機に備えられた、表示機器や音の出力機器や風向板などのうち、少なくとも1つを用いて報知することを特徴とする請求項1記載の空調機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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