説明

空調用エアダクトの接続方法および接続構造

【課題】発泡シートにより筒状に形成された発泡エアダクトと、硬質材料により筒状に形成されたハードエアダクトとを気密性高く接続し、両者の接続部から空気が漏れることを防止する。
【解決手段】ハードエアダクト40として先端部外周面に突起42を有するものを用い、ハードエアダクトの突起が設けられた部分を発泡エアダクト10内に挿入するとともに、上記突起を発泡エアダクトの内周面に食い込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の空調用エアコンなどに接続される空調用エアダクト(通風管)の接続方法および接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、室内の空調のため、エアコンで適当な温度に調整した空気をエアダクトを用いて室内に導いている。従来、このエアダクトには、金属や硬質プラスチックの成型品あるいはそれらの複合品が使用されていたが、自動車内の比較的狭い空間に上記エアダクトを通すため、エアダクトの断熱が不十分となり、エアコンからの空気がエアダクトを通過する間に空気の温度が変化してしまうという問題があった。そこで、上記問題を解決するため、発泡体により形成された断熱性の高いエアダクトが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上述した発泡体により形成された発泡エアダクトは、自動車内のHVAC(換気空調設備)側や噴き出し口側において、硬質材料により形成されたハードエアダクトと接続されることがある。従来、上記のような発泡エアダクトとハードエアダクトとの接続構造として、特許文献3のものが提案されている。特許文献3の接続構造は、発泡エアダクトが弾性変形してハードエアダクトに密着した状態で両ダクトを嵌合させるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−181334号公報
【特許文献2】EP 0445592 A2
【特許文献3】特開2002−144846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した発泡エアダクトとハードエアダクトとの接続構造の重要な課題は、接続部から空気が漏れないことである。しかし、特許文献3の接続構造は、図5に示す構造以外は発泡エアダクトの内周面とハードエアダクトの外周面との接触面積が小さく、柔軟な発泡エアダクトでは気密性が十分に維持できず、接続部から空気が漏れるという問題があった。また、特許文献3の接続構造は、発泡エアダクトの端部を特殊な形状に成型するもので、成型技術的に難易度が高いという問題があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、発泡エアダクトとハードエアダクトとを気密性高く接続することができ、したがって両者の接続部から空気が漏れることを効果的に防止することができるとともに、発泡エアダクトの端部を特殊な形状に加工する必要がない空調用エアダクトの接続方法および接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、発泡シートにより筒状に形成された発泡エアダクトと、前記発泡エアダクトに比べ硬質な材料により筒状に形成されたハードエアダクトとの接続方法であって、前記ハードエアダクトとして先端部外周面に突起を有するものを用い、前記ハードエアダクトの突起が設けられた部分を前記発泡エアダクト内に挿入するとともに、前記突起を前記発泡エアダクトの内周面に食い込ませることを特徴とする空調用エアダクトの接続方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記目的を達成するため、前記発泡シートにより筒状に形成された前記発泡エアダクトと、前記発泡エアダクトに比べ硬質な材料により筒状に形成された前記ハードエアダクトとの接続構造であって、前記ハードエアダクトは先端部外周面に突起を有し、前記ハードエアダクトの突起が設けられた部分が前記発泡エアダクト内に挿入されているとともに、前記突起が前記発泡エアダクトの内周面に食い込んでいることを特徴とする空調用エアダクトの接続構造を提供する。
【0009】
本発明の接続構造では、ハードエアダクトの突起が設けられた部分が発泡エアダクト内に挿入されているとともに、突起が発泡エアダクトの内周面に食い込んでいるので、突起と発泡エアダクトの内周面とが気密性高く密着する。したがって、発泡エアダクトとハードエアダクトとが気密に接続され、接続部から空気が漏れることが効果的に防止される。また、突起は先端部外周面の周方向に連続して有してもよく、不連続に有してもよいが、周方向に連続して形成して挿入することによりさらに高く気密に接続することができる。
【0010】
本発明において、ハードエアダクトの突起の形状に限定はなく、発泡エアダクトの内周面に食い込んで発泡エアダクトの内周面に気密に密着するものであればどのようなものであってもよい。好適な突起としては、後述する実施形態に示すように、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が直角である三角形のものが挙げられる。突起をこのような形状にすると、接続時に発泡エアダクトにハードエアダクトを容易に挿入できるとともに、接続後に発泡エアダクトからハードエアダクトを抜けにくくすることができる。
【0011】
発泡エアダクトの発泡シートは、伸び率が50%以上、特に80〜150%であることが好ましく、これにより接続後に発泡エアダクトがハードエアダクトを覆うように広がるという効果を得ることができる。また、発泡エアダクトの発泡シートは、圧縮応力が50%圧縮で1500kPa以下、特に200〜600kPaであることが好ましく、これにより接続工程において発泡エアダクトにハードエアダクトを容易に挿入することができるという効果を得ることができる。さらに、発泡エアダクトの発泡シートは、24時間後の圧縮永久ひずみが50%以下、特に2〜10%であることが好ましく、これにより接続時にハードエアダクトの突起部で広がった発泡エアダクトの挿入口が復元し、ハードエアダクトに密着することによってエアー漏れを防止するほか、ハードエアダクトの突起部に発泡エアダクトが食い込むことによってハードエアダクトの抜けを防止する効果を得ることができる。
【0012】
また、本発明では、ハードエアダクトと発泡エアダクトとの接続部形状は相互に相似形となっており、相互に嵌合して接続後は密着状態を保持する形状となっている。具体的には、ハードエアダクトの外径eに対する発泡エアダクトの内径bの割合b/eが0.8〜1.0であり、発泡エアダクトの壁部の厚さaとハードエアダクトの突起の高さdとの関係が1/5a≦d≦3aであることが好ましい。両エアダクトの寸法を上記のようにすると、発泡エアダクトの素材および構成を調整して創出した収縮性と、ハードエアダクトの突起物の形状とを組み合わせることによって、発泡エアダクトとハードエアダクトとを確実に気密に接続することができる。
【0013】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明において、発泡エアダクトを形成する発泡シートとしては、特に限定されるものではないが、独立気泡構造を有する発泡ポリエチレンシートや発泡ポリプロピレンシート、特に架橋発泡ポリエチレンシートや架橋発泡ポリプロピレンシート等の発泡ポリオレフィンシートを好適に用いることができる。また、上記架橋発泡ポリオレフィンシートとしては、例えば、化学架橋方式により製造されたものでもよく、電子線架橋方式により製造されたものでもよい。
【0014】
発泡エアダクトにおいて、発泡シートの発泡倍率は、5〜40倍、特に8〜20倍であることが好ましい。発泡倍率が5倍未満であると、エアダクトの特徴である軽量化効果が損なわれるほか、熱伝導率が高くなり、断熱効果の低下によって結露が発生しやすくなる。一方、発泡倍率が40倍を超えると、軽量化や断熱効果は上昇するが、剛性が低下し、自動車への実装に対しての信頼性が低下することがある。
【0015】
発泡エアダクトにおいて、発泡シートの独立気泡の気泡径は、0.2〜2.0mm、特に0.7〜1.2mmであることが好ましい。独立気泡の気泡径が0.2mm未満であると、気泡壁が薄くなるとともに、剛性の低下と表面層の表皮強度の低下が生じ、ダクト成型時に2枚のシートが接触しやすくなり、接触した場合に表皮が材破してしまう問題が起こることがある。一方、独立気泡の気泡径が2.0mmを超えると、断熱特性が損なわれ、結露を誘発させることがある。
【0016】
発泡エアダクトの製造方法に限定はないが、前記特許文献2(EP 0445592 A2)に記載された方法を好適に採用することができる。特許文献2の方法は、下記(1)〜(4)の工程からなる、圧力および熱の適用下に依然として変形の可能な熱可塑性または弾性プラスチックフォームから中空体を製造する方法である。
(1)プラスチックフォームからなる1個または2個以上の部分を、プラスチックフォームの軟化温度よりも高い温度に加温後、割り型に入れる。
(2)割り型を閉じることにより、上記部分をそれらのへりに沿って互いに接合させて、それらの部分の間の中間空間を少なくともかなりの程度まで密閉する。
(3)加圧下の流体を上記部分の間の中間空間へ導入することにより、それらの部分を割り型の壁に押し付け、形を整える。
(4)上記部分が冷却された後、成型物を脱型する。
【0017】
上述した特許文献2の方法においては、前記割り型を閉じることによって、前記部分をそれらのへりに沿って互いに融着させることができる。また、前記部分として、実質的に平らなプレート状プラスチックフォームを使用することができる。さらに、割り型に入れるときの前記部分の温度を130〜200℃、好ましくは150〜170℃とすることができる。
【0018】
発泡エアダクトを特許文献2の方法によって製造する場合、発泡シートとして、特許文献2の方法による加工前の密度が30〜250kg/m、加工前の厚さが3〜15mmの発泡シートを使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、発泡エアダクトに比べ硬質な材料であるハードエアダクトの材質としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質プラスチックや、アルミニウム等の金属、あるいはそれらの複合品が挙げられる。また、ハードエアダクトを硬質プラスチックで形成する場合、ハードエアダクトの成型方法としては、射出成型、ブロー成型等が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る空調用エアダクトの接続方法および接続構造によれば、発泡エアダクトとハードエアダクトとが気密に接続され、接続部から空気が漏れることが効果的に防止されるとともに、発泡エアダクトの端部を特殊な形状に加工する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1および図2は本発明に係る空調用エアダクトの接続方法および接続構造の一実施形態を示す模式的断面図であり、図1は接続前の図、図2は接続後の図である。図中、10は発泡シートにより筒状に形成された発泡エアダクト、40は硬質材料により筒状に形成されたハードエアダクトを示す。
【0022】
発泡エアダクト10は、図3に示すように、独立気泡構造を有する2枚の発泡ポリオレフィンシート12、14を、前述した特許文献2の方法により接合して筒状に形成したものである。発泡ポリオレフィンシート12、14のへりの部分16、18は互いに融着されている。本例において、発泡ポリオレフィンシート12、14の伸び率は120%、圧縮応力は50%圧縮で300kPa、24時間後の圧縮永久ひずみは3%である。上記発泡ポリオレフィンシートの伸び率、50%圧縮応力、24時間後の圧縮永久ひずみの測定値は、JIS K 6767「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準拠して得られたデータを用いている。なお、エアダクトを1枚の発泡ポリオレフィンシートから成型する場合は、融着箇所は1箇所となる。
【0023】
ハードエアダクト40は、高密度ポリエチレンを用いてブロー成型により成型したもので、先端部外周面の周方向に連続した突起42が形成されている。この突起は、図4に示すように、断面形状が先方側内角xが鋭角、後方側内角yが直角の三角形のものである。なお、先方側内角xは10〜80°、後方側内角yは90°以上であることが適当である。
【0024】
また、本例において、ハードエアダクトの外径eに対する発泡エアダクトの内径bの割合b/eは0.8〜1.0、発泡エアダクトの壁部の厚さaとハードエアダクトの突起の高さdとの関係は1/5a≦d≦3aである。
【0025】
本例において、発泡エアダクト10とハードエアダクト40とを接続する場合、図1、図2に示すように、ハードエアダクト10の先端部の突起42が設けられた部分を発泡エアダクト10内に挿入するとともに、突起42を発泡エアダクト10の内周面に食い込ませる。これにより、発泡エアダクト10のハードエアダクト40が挿入された部分が広がってハードエアダクト40を気密に覆い、発泡エアダクト10とハードエアダクト40とが気密に接続される。
【0026】
本発明において、ハードエアダクト40の他の好適な突起としては、図5〜図9に示すものを挙げることができる。図5の突起44は、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が直角の三角形で、先方側の辺45に切り欠き46が設けられたものである。図6の突起48は、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が直角の三角形で、先方側の辺50が内方に湾曲しているものである。図7の突起52は、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が鈍角の三角形で、先方側の辺54が内方に湾曲し、後方側の辺56が外方に湾曲しているものである。図8の突起58は、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が直角の三角形で、先方側の辺60が外方に湾曲しているものである。図9の突起62は、断面形状が先方側内角が鋭角、後方側内角が鈍角の三角形で、先方側の辺64が外方に湾曲し、後方側の辺66が内方に湾曲しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る空調用エアダクトの接続方法および接続構造の一実施形態を示す接続前の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る空調用エアダクトの接続方法および接続構造の一実施形態を示す接続後の模式的断面図である。
【図3】本発明に用いる発泡エアダクトの一例を示す断面図である。
【図4】ハードエアダクトの突起を示す説明図である。
【図5】ハードエアダクトの一例を示す断面図である。
【図6】ハードエアダクトの一例を示す断面図である。
【図7】ハードエアダクトの一例を示す断面図である。
【図8】ハードエアダクトの一例を示す断面図である。
【図9】ハードエアダクトの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 エアダクト
12、14 発泡ポリオレフィンシート
16、18 へりの部分
40 ハードエアダクト
42、44、48、52、58、62 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡シートにより筒状に形成された発泡エアダクトと、前記発泡エアダクトに比べ硬質な材料により筒状に形成されたハードエアダクトとの接続方法であって、前記ハードエアダクトとして先端部外周面に突起を有するものを用い、前記ハードエアダクトの突起が設けられた部分を前記発泡エアダクト内に挿入するとともに、前記突起を前記発泡エアダクトの内周面に食い込ませることを特徴とする空調用エアダクトの接続方法。
【請求項2】
前記発泡シートは、伸び率が50%以上、圧縮応力が50%圧縮で1500kPa以下、24時間後の圧縮永久ひずみが50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の空調用エアダクトの接続方法。
【請求項3】
前記ハードエアダクトの外径eに対する前記発泡エアダクトの内径bの割合b/eが0.8〜1.0であり、前記発泡エアダクトの壁部の厚さaと前記ハードエアダクトの突起の高さdとの関係が1/5a≦d≦3aであることを特徴とする請求項1または2に記載の空調用エアダクトの接続方法。
【請求項4】
前記発泡シートにより筒状に形成された前記発泡エアダクトと、前記発泡エアダクトに比べ硬質な材料により筒状に形成された前記ハードエアダクトとの接続構造であって、前記ハードエアダクトは先端部外周面に突起を有し、前記ハードエアダクトの突起が設けられた部分が前記発泡エアダクト内に挿入されているとともに、前記突起が前記発泡エアダクトの内周面に食い込んでいることを特徴とする空調用エアダクトの接続構造。
【請求項5】
前記発泡シートは、伸び率が50%以上、圧縮応力が50%圧縮で1500kPa以下、24時間後の圧縮永久ひずみが50%以下であることを特徴とする請求項4に記載の空調用エアダクトの接続構造。
【請求項6】
前記ハードエアダクトの外径eに対する前記発泡エアダクトの内径bの割合b/eが0.8〜1.0であり、前記発泡エアダクトの壁部の厚さaと前記ハードエアダクトの突起の高さdとの関係が1/5a≦d≦3aであることを特徴とする請求項4または5に記載の空調用エアダクトの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−262896(P2009−262896A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118508(P2008−118508)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】