説明

空調設備

【課題】露点温度の演算式に入力される値を計測するセンサ数が室内数の増加に伴って増えるのを抑制する空調設備を提供する。
【解決手段】室内11〜13をそれぞれ冷房する温調パネル14〜16と、温調パネル14〜16の冷房温度を定める制御手段17と、吸込口18、19を介して吸込ダクト20に取込んだ室内11〜13の空気を室外に排出して室内換気を行う換気装置21とを有する空調設備10において、吸込ダクト20に取込まれ混ざり合った室内11〜13の空気の温度及び湿度を計測する温湿度検出手段72を備え、制御手段17は、温湿度検出手段72の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度を基に判定対象温度を算出し、温調パネル14〜16の冷房温度が判定対象温度以下であるのを検知した際に、温調パネル14〜16の冷房温度を、設定温度から、判定対象温度より高い結露防止温度に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の換気と温調パネルによる室内の冷房を行う空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において床暖房を行う温調パネルの設置が進む中、床暖房用の温調パネルを用いて床冷房も行えるようにした設備が見受けられようになっており、その具体例が特許文献1に記載されている。特許文献1では、温調パネル(床温調パネル)に供給される熱媒を暖めることによって床暖房を行い、温調パネルに供給される熱媒を冷やすことによって床冷房を行う旨記載されている。
床冷房がなされる室内は、露点温度が上がると温調パネルによって冷やされている床が結露するという問題が生じる。
【0003】
そこで、特許文献1では、温調パネルから送り出された熱媒の温度が、露点温度推定値よりも低いときには、温調パネルへの熱媒の供給を停止して床の結露を防止するようにしている。
なお、温調パネルは床ではなく室内空間に配置してもよく、この場合温調パネルは直接室内の空気を冷やし、あるいは暖めることになる。
また、建築基準法の改正により、シックハウス対策として、一般家庭の住宅においては、0.5回/h以上の換気を行う換気装置の設置が義務付けられ、特許文献2に記載されているような換気装置が住宅に設けられるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336804号公報
【特許文献2】特開2002−39579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、室内機に設けられた室内湿度センサと室外機に設けられた室外湿度センサにより検知した湿度から露点温度推定値を計算するので、室内湿度センサが設けられた室内機を設置していない室内については、結露の防止制御がなされないという問題があった。
そして、住宅の全室に室内湿度センサが設けられた室内機を設置しようとすると、必要となる室内湿度センサが増加し、室内湿度センサを接続する配線も複雑となるという問題もあった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、露点温度の演算式に入力される値を計測するセンサ数が室内数の増加に伴って増えるのを抑制する空調設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る空調設備は、室内を冷房する温調パネルと、前記温調パネルの冷房温度を定める制御手段と、吸込口を介して吸込ダクトに取込んだ前記室内の空気を室外に排出して室内換気を行う換気装置とを有する空調設備において、前記吸込ダクトに取込まれ混ざり合った前記室内の空気の温度及び湿度を計測する温湿度検出手段を備え、前記制御手段は、該温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度を基に判定対象温度を算出し、前記制御手段に定められた設定温度で冷房を行っている前記温調パネルの冷房温度が該判定対象温度以下であるのを検知した際に、該温調パネルの冷房温度を、前記設定温度から、前記判定対象温度より高い結露防止温度に変更する。
【0007】
本発明に係る空調設備において、前記温調パネルが前記結露防止温度で冷房を行っている状態で、前記制御手段が、該温調パネルの前記設定温度より低い前記判定対象温度を算出した際には、該温調パネルの冷房温度を該設定温度に戻すのが好ましい。
【0008】
本発明に係る空調設備において、前記温調パネルが前記結露防止温度で冷房を行っていることを、前記制御手段は、該制御手段に信号接続された表示手段に表示させるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る空調設備において、前記換気装置は、前記吸込ダクトが連結された筐体を有し、前記温湿度検出手段は、前記筐体に設けられるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る空調設備において、前記温調パネルは床に配置され床冷房を行うのが好ましい。
【0011】
本発明に係る空調設備において、前記制御手段は、前記温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度に所定温度を加えて前記判定対象温度を算出するのが好ましい。
【0012】
本発明に係る空調設備において、前記判定対象温度の算出にあたり前記露点温度に加えられる前記所定温度は設定によって変更可能であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る空調設備は、吸込口を介して吸込ダクトに取込まれ混ざり合った室内の空気の温度及び湿度を計測する温湿度検出手段を備え、制御手段は、温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度を基に判定対象温度を算出する。従って、結露防止を行う室内に温湿度検出手段を設置する必要はなく、温湿度検出手段の数が室内数の増加に伴って増えるのを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る空調設備において、温調パネルが結露防止温度で冷房を行っている状態で、制御手段が、温調パネルの設定温度より低い判定対象温度を算出した際に、温調パネルの冷房温度を設定温度に戻す場合、温調パネルは、床が結露するのを防止できる範囲で、居住者が求める設定温度による冷房を行うことが可能である。
【0015】
本発明に係る空調設備において、温調パネルが結露防止温度で冷房を行っていることを、制御手段が、表示手段に表示させる場合、居住者は温調パネルによる冷房の状態を容易に知ることができる。
【0016】
本発明に係る空調設備において、換気装置が、吸込ダクトが連結された筐体を有し、温湿度検出手段が筐体に設けられる場合、温湿度検出手段の取り付けを工場の生産ライン上で行うことができ、住宅での空調設備の設置作業を短縮可能である。仮に温湿度検出手段が吸込ダクトに取り付けられる場合、吸込ダクトは、一般的に設置現場である住宅によって調整が必要なため、温湿度検出手段の取り付けも住宅で行われることになり、空調設備の設置作業の工程が増えることになる。
【0017】
本発明に係る空調設備において、温調パネルが床に配置され床冷房を行う場合、温調パネルによって快適な温度環境を居住者に提供することができる。
【0018】
本発明に係る空調設備において、制御手段が、温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度に所定温度加えて判定対象温度を算出する場合、判定対象温度を温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度より高くでき、温調パネルの冷房による結露を安定的に防止することが可能である。
【0019】
本発明に係る空調設備において、判定対象温度の算出にあたり露点温度に加えられる所定温度が変更可能である場合、空調設備が設置される住宅によって、最適な判定対象温度を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る空調設備の説明図である。
【図2】同空調設備が備える温調パネルと室外機の接続を示す説明図である。
【図3】同空調設備の制御手段の信号接続を示す説明図である。
【図4】同空調設備の換気装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る空調設備10は、室内11〜13をそれぞれ冷房する温調パネル14〜16と、温調パネル14〜16の冷房温度を定める制御手段17と、複数の吸込口18、19を介して吸込ダクト20に取込んだ室内11〜13の空気を室外に排出して室内換気を行う換気装置21とを有している。以下詳細に説明する。
【0022】
空調設備10が設置された住宅22は、図1に示すように、温調パネル14〜16によって床冷房がそれぞれなされる室内11〜13を備えている。本実施の形態では、室内11がリビングダイニングキッチン、室内12、13がベッドルームであり、温調パネル14〜16は床冷房に加えて、床暖房を行うこともできる。
室内11、12には、室内機23、24がそれぞれ設けられ、室内11、12は、それぞれ室内機23、24によって冷暖房が行われる。室内13には、室内機が設置されておらず、室内13の冷暖房は温調パネル16による床冷暖房のみである。
【0023】
住宅22の屋外には、室内機23に循環回路27を介して接続された室外機25が設けられ、室内機23及び室外機25は、温調パネル14〜16及び換気装置21と共に空調設備10の主要部を構成している。
これに対し、室内機24に循環回路28を介して接続された室外機26と室内機24とは、空調設備10には属しておらず、空調設備10から独立して室内12の冷暖房を行う。
また、室内11〜13には、換気装置21の室内空気の吸込口18、19がそれぞれ設けられ、室内11〜13は、換気装置21によって室内空気が外気と入れ替えられる。
なお、室外機25と温調パネル14〜16は接続されているが、図1は室外機25と温調パネル14〜16の接続を省略して描かれている。また、換気装置21は、建築基準法で定められた24時間換気を行うもので、原則として住宅の居室を対象に換気を行う。
【0024】
室内機23と室外機25は、図2に示すように、冷媒H1(本実施の形態ではフロンR410A)が循環する循環回路27によって接続されている。
循環回路27は、室外機25に設けられた、圧縮機29、熱交換器30及び膨張弁31と室内機23に設けられた熱交換器32を接続してヒートポンプサイクルを形成し、このヒートポンプサイクルによって室内11の冷房及び暖房がなされる。
圧縮機29が運転を開始すると、循環回路27内の冷媒H1は循環回路27を循環する。膨張弁31は、室内11の冷暖房が効率的になされるように、循環回路27を循環する冷媒H1の流量を調整する。
【0025】
室内機23による冷暖房や温調パネル14〜16による床冷暖房が行なわれる際、熱交換器30、32は、一方が蒸発器として機能し、他方が凝縮器として機能する。熱交換器30、32のいずれが蒸発器となり、いずれが凝縮器となるかは、循環回路27を循環する冷媒H1の流れる方向によって決定され、循環回路27には、循環回路27を循環する冷媒H1の流れる方向を切り替える四方弁33が設けられている。
従って、熱交換器30、32は、四方弁33による冷媒H1の流れる方向の切り替えによって、凝縮器として機能していた方が蒸発器になり、蒸発器として機能していた方が凝縮器になる。
【0026】
室内機23による冷房運転時、熱交換器30、32は凝縮器及び蒸発器としてそれぞれ機能する。圧縮機29で圧縮された気体状の冷媒H1は、熱交換器30で放熱し凝縮して液体となった後に膨張弁31によって膨張され、熱交換器32を通過の際に室内空気から熱を吸収して蒸発し室内11の冷房を行う。
室内機23による暖房運転時、熱交換器30、32は蒸発器及び凝縮器としてそれぞれ機能し、循環回路27を循環する冷媒H1は、熱交換器30を通過の際に外気から吸収した熱を熱交換器32を通過の際に室内11に放熱することによって室内11を暖める。
【0027】
室内機23は、熱交換器32が設けられた筐体内に室内空気を取込んで室内に放出するクロスフローファン35を備えている。室内空気はクロスフローファン35の作動によって室内機23の筐体内に取り込まれ、熱交換器32内を流れる冷媒H1との間で熱交換され冷やされた後(あるいは、暖められた後)に室内に放出される。
【0028】
圧縮機29、膨張弁31、四方弁33及びクロスフローファン35には、図3に示すように、マイクロコンピュータからなる制御手段17が信号接続され、圧縮機29、膨張弁31、四方弁33及びクロスフローファン35は、制御手段17から送信される指令信号に従って作動する。
制御手段17には、コントローラ36が信号接続されており、コントローラ36から入力された冷房温度(暖房温度についても同じ)は、設定温度として制御手段17に記憶される。
制御手段17は、記憶している冷暖房温度の設定温度に応じて圧縮機29の回転数を調整し、圧縮機29から吐出される単位時間当たりの冷媒H1の量を調整する。
【0029】
室外機25には、図2に示すように、熱交換器30の熱交換を促進するプロペラファン37が設けられ、室外機25の筐体には、循環回路27に設けられた2つの開閉弁38が取り付けられている。開閉弁38は通常開いた状態であり、メンテナンス時に閉じられる。プロペラファン37は、図3に示すように、制御手段17に信号接続されている。
循環回路27には、図2、図3に示すように、制御手段17に接続された温度センサ39、40、41が設けられている。温度センサ39は、圧縮機29から吐出される冷媒H1の温度を計測するものであり、温度センサ40は熱交換器32内を流れている冷媒H1の温度を計測する。温度センサ41は熱交換器32と圧縮機29の間に配置され、冷房運転時には熱交換器32から送り出された冷媒H1の温度を計測し、暖房運転時には熱交換器32に流入前の冷媒H1の温度を計測する。
制御手段17は、温度センサ39、40、41の計測値を基にして圧縮機29の回転数や膨張弁31の開度を調整する。なお、本実施の形態では温度センサ39、40、41にサーミスタを用いている。
【0030】
循環回路27には、図2に示すように、熱交換器30と膨張弁31の間で循環回路27から分岐し熱交換器32と圧縮機29の間で循環回路27に合流する分岐路42が連結されている。
分岐路42には、分岐路42を流れる冷媒H1を減圧する膨張弁43と温調パネル14〜16に供給される熱媒H2(本実施の形態では不凍液)を冷やす、あるいは暖める水熱交換器44が設けられている。
【0031】
膨張弁43は全閉式の電子膨張弁であり、制御手段17に信号接続され(図3参照)、制御手段17から送信される指令信号によって分岐路42を流れる冷媒H1の流量調整をし、あるいは、分岐路42に冷媒H1が供給されないようにする。
水熱交換器44には、熱媒H2が循環する循環回路45が接続され、水熱交換器44は循環回路27を循環する冷媒H1と循環回路45を循環する熱媒H2との間で熱交換する。循環回路45に取り付けられ、制御手段17に信号接続された循環ポンプ46は、熱媒H2を循環回路45に循環させ、循環回路45に接続されている温調パネル14〜16に水熱交換器44で熱交換された熱媒H2を供給する。
また、循環回路45には、熱媒H2を貯留する給水タンク47が設けられている。
【0032】
温調パネル14は、水熱交換器44を通過した熱媒H2が流入するパネル内回路14aを備えており、パネル内回路14aを流れる熱媒H2によって、室内11を床冷房あるいは床暖房する。温調パネル15、16も、パネル内回路14aと同様の作用を奏するパネル内回路15a、16aをそれぞれ備えている。
温調パネル14〜16は、循環回路45によって並列に接続されている。循環回路45を循環する熱媒H2の流れる方向に沿って温調パネル14の下流側には、図3に示すように制御手段17に信号接続された、開閉弁49及び温度センサ50が設けられている。
【0033】
制御手段17は、温調パネル14の床冷房を制御する際の基準となる床冷房温度(冷房温度)を記憶しており、床冷房運転の際には、温調パネル14の床冷房温度と温度センサ50によって計測される熱媒H2の温度を比較し、必要に応じて開閉弁49を開閉する。
具体的には、温度センサ50による計測温度を補正した温度が、温調パネル14の床冷房温度より低温になると開閉弁49を閉めて温調パネル14による床冷房のレベルを下げ、開閉弁49の閉状態を所定時間継続した後に開閉弁49を開く。ここで、温度センサ50による計測温度を補正した温度を用いるのは、温度センサ50の計測温度と温調パネル14によって冷やされる床の温度との差を補正するためである。
【0034】
図2に示すように、温調パネル15の下流側にも開閉弁51及び温度センサ52が設けられ、温調パネル16の下流側にも開閉弁53及び温度センサ54が設けられている。そして、制御手段17は、温調パネル15、16の各床冷房温度を記憶しており、それぞれの床冷房温度を基準にして温調パネル15、16による床冷房を制御する。なお、開閉弁51、53及び温度センサ52、54は、それぞれ開閉弁49及び温度センサ50と同様の構成及び機能を備えているので、詳しい説明は省略する。開閉弁49、51、53には、開度調整が可能な比例弁を用いることができる。
なお、床冷房の調整をするために設けられる温度センサの配置は、本実施の形態の温度センサ50、52、54の配置に限定されず、例えば、床冷房中の熱媒H2の流れに沿って、温調パネル14〜16の上流側の循環回路45が分岐する地点の上流側に温度センサを設けてもよい。
また、制御手段17は、温調パネル14〜16それぞれについて床冷房温度に加えて床暖房温度も記憶している。
【0035】
制御手段17は、温調パネル14〜16による床冷房運転を同時に行っている際には、温調パネル14〜16の各床冷房温度のうち最も低温の床冷房温度を基準にして、圧縮機29の回転数を決定する。従って、循環回路45を循環する熱媒H2は、水熱交換器44を通過し最も低温の床冷房温度に応じた温度となって温調パネル14〜16に送られる。
水熱交換器44には、熱媒H2の入り側と出側にそれぞれ、熱媒H2の温度を計測する温度センサ55、55aが設けられ、温度センサ55、55aは、図3に示すように、制御手段17に信号接続されている。制御手段17は、温度センサ55、55aの各計測温度から循環回路45を循環する熱媒H2の温度を検出し、圧縮機29の回転数や膨張弁43の開度を調整する。
【0036】
温調パネル14〜16の床冷房温度(床暖房温度についても同じ)の設定温度は、コントローラ36からの入力操作によって変更される。なお、本実施の形態では、コントローラが1つであるが、温調パネル14〜16に対してそれぞれ別個のコントローラを設けてもよい。
室外機25の筐体には、循環回路45に設けられた2つの開閉弁56が取り付けられている。開閉弁56は通常開いた状態であり、メンテナンス時に閉じられる。
【0037】
また、室内11〜13を換気する換気装置21は、図1、図4に示すように、複数の吸込口18、19が形成され、筐体58に連結された吸込ダクト20を有している。
筐体58内には、吸込ダクト20を介して筐体58内に取込んだ空気を筐体58外に排出する排気路59が形成されている。この排気路59の一側には吸込ダクト20が接続され、排気路59の他側には排気路59を通過した空気を屋外に送り出す排気ダクト60が接続されている。排気路59内には、図3、図4に示すように、制御手段17に信号接続されたファン61が設置され、ファン61は、室内11〜13の空気を、吸込口18、19吸込ダクト20、排気路59及び排気ダクト60を介して屋外に排出する。
吸込ダクト20は、吸込口18が形成された分岐路と吸込口19が形成された分岐路を有し、吸込ダクト20の空気の流れに沿って、この2つの分岐路が合流する地点の下流側で、筐体58に連結されているので、吸込口18、19から吸込ダクト20に取込まれた空気は吸込ダクト20内で混ざり合った後に排気路59に流入する。この吸込口18、19から取込まれ、吸込ダクト20内で混ざり合った空気を、以下「集合空気」ともいう。
【0038】
また、筐体58には、図1、図4に示すように、筐体58内に形成された給気路62と屋外とを接続する吸気ダクト63が連結されている。吸気ダクト63は給気路62の一側に連結され、給気路62の他側には、吸気ダクト63を介して給気路62内に取込まれた外気を室内11〜13に送る吹出ダクト64が連結されている。
吹出ダクト64は、図1に示すように、吹出ダクト64内の空気の流れに沿って、上流端が筐体58に接続され、その下流側で複数(本実施の形態では2つ)に分岐している。分岐路の一方には、室内11に外気を供給する吹出口64aが形成され、分岐路の他方には、室内12に外気を供給する吹出口64bと室内13に外気を供給する吹出口64cが形成されている。そして、給気路62には、図3、図4に示すように、制御手段17に信号接続されたファン65が設置されている。
ファン65は、制御手段17からの指令信号によって作動し、外気を、吸気ダクト63、給気路62及び吹出ダクト64を介して室内11〜13に供給する。
【0039】
本実施の形態では、吹出口64aは室内11のリビング側にあり、吸込口18は室内11のキッチン側に配置されているので、屋外から送られる外気は、リビングに供給され、室内11から屋外に排出される空気はキッチン側で吸取られて屋外に送られる。
また、吹出口64b、64cは室内12、13にそれぞれ設けられ、吸込口19は、室内12、13がある2階の廊下73に配置されている。そして、室内12(室内13についても同じ)と廊下73は、室内12と廊下73を仕切る扉が閉じられていても、その扉の下部に形成された開口部を介して空気が行き来する状態にある。従って、屋外からの外気は室内12、13に供給され、室内12、13に滞留していた空気は廊下73に移動して、吸込口19、吸込ダクト20、排気路59及び排気ダクト60を通って屋外に排出される。
このような空気の流れにしているのは、屋外から取込まれた新鮮な外気を居住者が多く時間を過ごす空間に供給し、屋内で滞留している空気を居住者が多くの時間を過ごさない空間に移動し屋外に排出するという設計思想に基づくものである。
【0040】
換気装置21は、図4に示すように、湿度調整を行うデシカントロータ66と温度調整を行う顕熱交換ロータ67を筐体58内に備えている。
デシカントロータ66は、排気路59、給気路62を流れる空気が貫流するように波板状、ハニカム状等の積層体でできており、表面が吸湿材によって覆われ、給気路62及び排気路59を遮るように配置されている。デシカントロータ66は、周知の電動モータから駆動力を与えられて回転し、給気路62と排気路59の相対湿度が高い側から低い側に水分を移動させる。
本実施の形態では、吸湿材に高分子系吸収材が用いられているが、シリカゲルやゼオライトを用いることも可能である。
【0041】
排気路59には、2つの熱交換器68、69が設けられ、給気路62にも2つの熱交換器70、71が設けられている。熱交換器68、70は、圧縮機が設けられ、冷媒が循環する図示しない循環回路によって接続され、熱交換器68、70の一方は蒸発器として機能し、他方は凝縮器として機能する。熱交換器68、70のうちいずれを蒸発器とし、いずれを凝縮器とするかは、循環回路を循環する冷媒の流れる方向によって決定される。
熱交換器69、71も、熱交換器68、70の関係と同じ関係を有しており、一方が凝縮器として機能し、他方が蒸発器として機能する。
【0042】
デシカントロータ66の表面に付着されている吸湿材は、加温されることによって吸湿材に吸着した水分を放出し、繰り返し使用可能となって水分を吸着可能な状態に再生する。
熱交換器68、69が凝縮器として機能するとき、熱交換器68は、水分を吸着しているデシカントロータ66の吸湿材を加温し水分を吸着可能な状態にする。なお、熱交換器69は、熱交換器69、71が設けられた循環回路を循環している冷媒を確実に凝縮させるために設けられている。
そして、熱交換器71は、凝縮器として機能しているときに、デシカントロータ66の吸湿材を加温し水分を吸着可能な状態にする。
なお、熱交換器70は、給気路62を流れる外気を暖めたり、冷やしたりするために設けられたものであり、デシカントロータ66の吸湿材の再生には用いられない。
【0043】
また、顕熱交換ロータ67も、デシカントロータ66と同様に、排気路59、給気路62を流れる空気が貫流するように波板状、ハニカム状等の積層体でできており、給気路62を屋外から室内11〜13に向かって進行する外気の流れに沿ってデシカントロータ66の下流側で、給気路62及び排気路59を遮るように配置されている。
顕熱交換ロータ67は、周知の電動モータを動力源にして回転し、給気路62内を流れる外気と排気路59内を流れる室内空気において温度が高い側から吸熱し、温度が低い側に放熱する。
【0044】
このように、換気装置21には、ファン61、65に加えて、デシカントロータ66、顕熱交換ロータ67及び熱交換器68〜71が設けられているので、換気装置21は、室内11〜13に対して換気と同時に、除湿冷却を行ったり、保湿加温を行ったりすることができる。
室内11〜13に対して換気と共に除湿冷却を行う場合、熱交換器68、69は凝縮器として機能し、熱交換器70、71は蒸発器として機能する。吸気ダクト63を介して給気路62内に取り込まれた外気は、熱交換器71によって冷却され、デシカントロータ66によって除湿された後に、顕熱交換ロータ67及び熱交換器70を順に通過して更に冷却され、吹出ダクト64を介して室内11〜13に流入する。
【0045】
そして、吸込ダクト20を介して排気路59内に取込まれた室内空気は、顕熱交換ロータ67及び熱交換器68を順に通過して昇温した後に、デシカントロータ66及び熱交換器69を通過し、排気ダクト60を介して屋外に排出される。
室内空気が排気路59内を流れる際、顕熱交換ロータ67は給気路62で吸熱した熱を排気路59内を流れる室内空気に対して放熱し、デシカントロータ66は給気路62で吸収した水分を排気路59内を流れる室内空気に対して放出する。
【0046】
一方、室内11〜13に対して換気と共に保湿加温を行う場合、熱交換器68、69は蒸発器として機能し、熱交換器70、71は凝縮器として機能する。
吸気ダクト63を介して給気路62内に取り込まれた外気は、熱交換器71、顕熱交換ロータ67及び熱交換器70によって暖められ、デシカントロータ66によって加湿され、吹出ダクト64を介して室内11〜13に流入する。
吸込ダクト20を介して排気路59内に取込まれた室内空気は、顕熱交換ロータ67で吸熱され、熱交換器68、69で更に吸熱され、デシカントロータ66で吸湿された後、排気ダクト60を介して屋外に排出される。
【0047】
また、換気装置21の筐体58には、排気路59に温湿度検出手段の一例である温湿度センサ72が設けられている。温湿度センサ72は、排気路59内の空気の流れに沿って、顕熱交換ロータ67の上流側に配置されているので、複数の吸込口18、19から取込まれ、吸込ダクト20内で混ざり合った集合空気は、排気路59内で温度及び湿度が変化する前に、温湿度センサ72によって温度及び湿度が計測される。
【0048】
制御手段17は、図3に示すように、温湿度センサ72に信号接続され、温湿度センサ72で計測された集合空気の温度及び湿度を、温湿度センサ72から取得することができる。
制御手段17には温度及び湿度が入力されると露点温度を出力する演算回路が設けられている。制御手段17は、この演算回路を用いて温湿度センサ72の計測温度及び計測湿度から露点温度を求め、求められた露点温度を基に必要に応じて温調パネル14〜16による床冷房の冷房レベル(冷房強度)を調整する。この床冷房の冷房レベルの調整は、温調パネル14〜16によって冷やされている室内11〜13の床が結露するのを防止するために行われる。
【0049】
制御手段17は、温調パネル14〜16のうち少なくとも1つが床冷房を行っている際に、予め定められた時間間隔で温湿度センサ72の計測温度及び計測湿度から露点温度を求め、この露点温度を基に判定対象温度を算出する。そして、制御手段17は、判定対象温度を算出する度に、床冷房を行っている温調パネル14〜16について、床冷房温度と算出された判定対象温度とを比較する。
そして、その比較結果、床冷房を行っている温調パネル14〜16の全てについて床冷房温度が判定対象温度より高いことを検知した際には、制御手段17が予め定めていた設定温度で床冷房を行っている温調パネル14〜16について、その状態、即ち、設定温度で床冷房温度を行っている状態を維持する。
【0050】
一方で、床冷房を行っている温調パネル14〜16について判定対象温度と床冷房温度を比較した結果、設定温度によって床冷房を行っている温調パネル14〜16の中に、床冷房温度が判定対象温度以下のものがあるのを検知した際には、該当する温調パネル14〜16(即ち、判定対象温度以下の床冷房温度で床冷房を行っている温調パネル14〜16)の冷房温度を、設定温度から判定対象温度より高い結露防止温度に変更する。
冷房温度を結露防止温度にした温調パネル14〜16は、制御手段17によって、結露防止温度を基準とした床冷房の制御がなされる。
従って、温調パネル14〜16は、通常、制御手段17が定めている設定温度を床冷房温度にして冷房運転を行い、設定温度が判定対象温度以下になったときに、結露防止温度による冷房運転に切り替わることになる。
【0051】
ここで、温湿度センサ72の計測温度及び計測湿度から求めた露点温度(以下、「集合空気の露点温度」ともいう)に、所定温度を加えて、あるいは所定温度を減じて判定対象温度を算出することや、集合空気の露点温度をそのまま判定対象温度にすることができ、これらのうちどの手法を採用して判定対象温度を導出するかは、吸込口の配置位置や温調パネルが設けられている室内に室内機が設けられているかによって選ぶことができる。
【0052】
室内機による冷房が行われない空間(本実施の形態では廊下73)に一部又は全ての吸込口が配置され、かつ、温調パネル及び室内機が全ての室内に設けられている住宅では、室内機による冷房が行われている場合、通常、集合空気は温調パネル及び室内機が設けられている室内より高温となる。
このため、集合空気の露点温度より低い温度を判定対象温度にすること、即ち、集合空気の露点温度から所定温度を減じた温度を判定対象温度にすることができる。
但し、温調パネルが設けられている室内全てにおいて室内機による冷房が行われていない場合、集合空気と温調パネルが設けられている室内の温度に差がなくなる。しかしながら、温調パネルによって設定温度による床冷房を行うことよりも結露を発生させないことを優先する必要があり、集合空気の露点温度に所定温度を加えた温度を判定対象温度にするのが好ましい。
【0053】
室内機による冷房が行われる空間(本実施の形態では室内11)に全ての吸込口が配置され、かつ、温調パネルのみが設けられている室内(本実施の形態では室内13がこれに当たる)がある住宅では、通常、集合空気は、室内機による冷房効果によって、温調パネルのみが設けられている室内より低温になる。
このため、結露を発生させないためには、集合空気の露点温度より高い温度を判定対象温度にすること、即ち、集合空気の露点温度に所定温度を加えた温度を判定対象温度にすることが必要である。
【0054】
上記以外の住宅、即ち、集合空気の温度が、温調パネルが設けられている室内の温度に対して高くなるか低くなるかが、室内機による冷房の状態によって決まる住宅では、集合空気の露点温度より高い温度を判定対象温度にすること、即ち、集合空気の露点温度に所定温度を加えた温度を判定対象温度にすることによって、安定的に結露を防止することが可能になる。
以上のことから、結露を確実に防止するという観点では、集合空気の露点温度に所定温度加えた温度を判定対象温度にすることが望ましいといえる。
【0055】
判定対象温度の算出にあたり集合空気の露点温度に加えられる、あるいは集合空気の露点温度から減じられる所定温度は、コントローラ36からの入力操作による設定によって変更可能であり、その所定温度をαとすると、本実施の形態では、αが0℃<α≦9℃である。
また、結露防止温度は、判定対象温度にβ℃を加えた温度であり、βは0℃以上5℃以下の範囲で、コントローラ36からの入力操作によって設定できる。
これにより、メンテナンス者は、床冷房時に床に結露が生じるか否かを実際に確かめながらα及びβを、コントローラ36からの操作によって変更することができる。
【0056】
制御手段17は、温調パネル14〜16のうち少なくとも1つが結露防止温度で床冷房を行っている状態のときにも、温湿度センサ72によって計測される集合空気の温度及び湿度を取得し、その取得した値から判定対象温度を算出する演算処理を、予め定められた時間間隔で行う。
そして、制御手段17は、判定対象温度を算出する度に、その算出された判定対象温度と結露防止温度で床冷房を行っている温調パネル14〜16の設定温度とを比較し、判定対象温度が設定温度より低いことを検知した際に、その温調パネル14〜16の冷房温度を結露防止温度から設定温度に戻す。
このような制御を行うことによって、制御手段17は、空調設備10に属していない室内機24によって冷房がなされる室内12についても、床が結露するのを防止することができる。
【0057】
また、制御手段17は、温調パネル14〜16のうち少なくとも1つが結露防止温度で床冷房を行っている際には、コントローラ36に、温調パネル(温調パネル14〜16)が結露防止温度で床冷房を行っている旨を表示させる。
コントローラ36は、ディスプレイを備え、このディスプレイに、結露防止温度で床冷房を行っている温調パネル14〜16を表示する。
本実施の形態では、コントローラ36を結露防止温度で床冷房を行っている旨を表示する表示手段にしているが、制御手段17に信号接続された電灯(例えばLED)を室内11〜13に設け、この電灯を、結露防止温度で床冷房を行っている旨を表示する表示手段にしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、温調パネルは、床ではなく室内空間に設置して、室内空間を直接冷やしたり暖めたりするものでもよい。また、換気装置には、除湿冷却や保湿加温を行えない換気機能のみを備えたものを用いることができる。そして、温湿度センサの代わりに温度センサ及び湿度センサの2種類のセンサを用いて集合空気の温度及び湿度をそれぞれ計測してもよい。また、温湿度センサは、試験により同等の効果を示す位置や、より条件的に厳しい場所(たとえば洗面所や配管の付近など)に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10:空調設備、11〜13:室内、14:温調パネル、14a:パネル内回路、15:温調パネル、15a:パネル内回路、16:温調パネル、16a:パネル内回路、17:制御手段、18、19:吸込口、20:吸込ダクト、21:換気装置、22:住宅、23、24:室内機、25、26:室外機、27、28:循環回路、29:圧縮機、30:熱交換器、31:膨張弁、32:熱交換器、33:四方弁、35:クロスフローファン、36:コントローラ、37:プロペラファン、38:開閉弁、39〜41:温度センサ、42:分岐路、43:膨張弁、44:水熱交換器、45:循環回路、46:循環ポンプ、47:給水タンク、49:開閉弁、50:温度センサ、51:開閉弁、52:温度センサ、53:開閉弁、54:温度センサ、55、55a:温度センサ、56:開閉弁、58:筐体、59:排気路、60:排気ダクト、61:ファン、62:給気路、63:吸気ダクト、64:吹出ダクト、64a、64b、64c:吹出口、65:ファン、66:デシカントロータ、67:顕熱交換ロータ、68〜71:熱交換器、72:温湿度センサ、73:廊下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を冷房する温調パネルと、前記温調パネルの冷房温度を定める制御手段と、吸込口を介して吸込ダクトに取込んだ前記室内の空気を室外に排出して室内換気を行う換気装置とを有する空調設備において、
前記吸込ダクトに取込まれ混ざり合った前記室内の空気の温度及び湿度を計測する温湿度検出手段を備え、前記制御手段は、該温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度を基に判定対象温度を算出し、前記制御手段に定められた設定温度で冷房を行っている前記温調パネルの冷房温度が該判定対象温度以下であるのを検知した際に、該温調パネルの冷房温度を、前記設定温度から、前記判定対象温度より高い結露防止温度に変更することを特徴とする空調設備。
【請求項2】
請求項1記載の空調設備において、前記温調パネルが前記結露防止温度で冷房を行っている状態で、前記制御手段が、該温調パネルの前記設定温度より低い前記判定対象温度を算出した際には、該温調パネルの冷房温度を該設定温度に戻すことを特徴とする空調設備。
【請求項3】
請求項1又は2記載の空調設備において、前記温調パネルが前記結露防止温度で冷房を行っていることを、前記制御手段は、該制御手段に信号接続された表示手段に表示させることを特徴とする空調設備。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調設備において、前記換気装置は、前記吸込ダクトが連結された筐体を有し、前記温湿度検出手段は、前記筐体に設けられることを特徴とする空調設備。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調設備において、前記温調パネルは床に配置され床冷房を行うことを特徴とする空調設備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調設備において、前記制御手段は、前記温湿度検出手段の計測温度及び計測湿度から求められる露点温度に所定温度を加えて前記判定対象温度を算出することを特徴とする空調設備。
【請求項7】
請求項6記載の空調設備において、前記判定対象温度の算出にあたり前記露点温度に加えられる前記所定温度は設定によって変更可能であることを特徴とする空調設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96627(P2013−96627A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239145(P2011−239145)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【出願人】(502025473)エイチ・アール・ディー・シンガポール プライベート リミテッド (8)
【Fターム(参考)】