説明

空間光変調器

【課題】全ての制御可能ピクセルの有効利用を図り、ページ当たりのデータ量及びデータ転送レートを増大できるようにする。
【解決手段】中央に位置する信号光エリア10と、該信号光エリアの外周に位置する参照光エリア12とを具備している同軸ホログラム記録システム用の空間光変調器において、信号光エリアは、オン・オフ切り替えできる多数の制御可能ピクセルが縦横に規則的に配列された構造とし、他方、参照光エリアは、前記制御可能ピクセルと同一サイズであるがオンかオフのいずれかに固定されている多数のダミーピクセルが縦横に規則的に配列され、オンのダミーピクセルとオフのダミーピクセルがランダムに位置して固定パターンが形成される構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ホログラム記録システムで用いる空間光変調器に関し、更に詳しく述べると、多数の制御可能ピクセルからなる信号光エリアの外周に、それらと同一サイズにピクセル加工した多数のダミーピクセルからなる参照光エリアを配置した空間光変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラム記録システムでは、信号光パターンによって空間的に変調された信号光と、参照光パターンによって生成された参照光とを干渉させて、その干渉縞を記録する。従って記録すべき情報は、信号光パターンとして空間光変調器の信号光エリアに形成される。このようなホログラム記録では、記録容量の増大とデータ転送速度の高速化の両方を同時に必要とし、そのため空間光変調器の1フレームには、できる限り多くのビット数を表示できるようにすることが望ましい。
【0003】
ホログラム記録システムの一形式として同軸ホログラム記録システムがあることは、従来公知である。これは、同軸上に信号光と参照光を配置する形式のホログラム記録システムであり(例えば、特許文献1など参照)、記録ヘッドの小型化が可能であり、光ディスクなどで周知のサーボシステムを利用できることから、実現性が高いとされている。しかし、従来の同軸ホログラム記録システムでは、空間光変調器上に多数の制御可能ピクセルを形成し、その制御可能エリアを、信号光パターンを表示させる信号光エリアと参照光パターンを表示させる参照光エリアに二分して用いている。そのため、空間光変調器の本来の性能(ページデータ量やデータ転送レート)が実質半減してしまう欠点があった。
【0004】
ところで、空間光変調器の一種に、ファラデー素子の磁気光学効果を利用して電流駆動によって外部磁界を切り替えてピクセルをオン・オフ制御する方式がある。この種の磁気光学空間光変調器は、高速応答性を呈しうるという非常に有用な特徴があるが、電流駆動のために各ピクセルの直近に微細配線を形成する必要がある。1ページ分のデータ量を増大するためにピクセル数を増やすと、必然的に微細配線も長くなるため、電気抵抗が大きくなり、消費電力が増大するばかりでなく、発熱によりファラデー素子の磁気光学特性が劣化する問題が生じる。電流駆動方式の磁気光学空間光変調器の例は、例えば特許文献2等に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−200394号公報
【特許文献2】特開2006−154727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、全ての制御可能ピクセルの有効利用を図り、ページ当たりのデータ量及びデータ転送レートを増大できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、中央に位置する信号光エリアと、該信号光エリアの外周に位置する参照光エリアとを具備している同軸ホログラム記録システム用の空間光変調器において、信号光エリアは、オン・オフ切り替えできる多数の制御可能ピクセルが縦横に規則的に配列された構造であり、他方、参照光エリアは、前記制御可能ピクセルと同一サイズであるがオンかオフのいずれかに固定されている多数のダミーピクセルが縦横に規則的に配列され、オンのダミーピクセルとオフのダミーピクセルがランダムに位置して固定パターンが形成される構造であることを特徴とする空間光変調器である。ここで空間変調器は、磁気光学方式の他、マイクロミラー方式あるいは液晶方式など、任意の形式であってよい。
【0008】
典型的な例として、全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルが、基板上に育成した磁気光学結晶からなるファラデー素子を含んでおり、全ての制御可能ピクセルが、それぞれ該制御可能ピクセル直近に配置した微細電線への通電制御による印加磁界可変手段を具備している構造の磁気光学空間光変調器がある。
【0009】
任意の駆動方式の空間光変調器において、全ての制御可能ピクセルの背面にミラーが装着され、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみに背面にミラーが装着されている構造とすることで、ミラーの装着されているダミーピクセルは「オン」に、ミラーの無いダミーピクセルは「オフ」になり、固定パターンの参照光エリアを形成できる。ここで、信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と「同数」とは、必ずしも厳密な意味での同数である必要はない。「同数」に近いほど、偏りのない干渉縞を記録することができるということであり、「ほぼ同数」ということである。
【0010】
磁気光学空間光変調器の場合には、全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルの背面にミラーを装着し、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみが制御可能ピクセルよりも保磁力が大きいファラデー素子を有し、他のダミーピクセルは制御可能ピクセルと保磁力が同等もしくはそれ以下となるように設定されているファラデー素子を有している構成でもよい。保磁力の大きいダミーピクセルのファラデー素子の保磁力は、制御可能ピクセルのファラデー素子の保磁力の2倍程度に設定する。保磁力が大きいダミーピクセルは常に「オン」、保磁力が小さいダミーピクセルは常に「オフ」となることから、保磁力の程度によってパターンが決まる参照光エリアを形成できる。保磁力の大きなダミーピクセルは、例えば該ダミーピクセル周辺の基板部分を削って段差を設けた構造にすることで実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空間光変調器は、制御可能ピクセル全てを信号光エリアとして使用することで制御可能ピクセルの有効利用を図ることができる。空間光変調器のもつフレームレート×ピクセル数の全てが信号ビット(制御可能ピクセル)に割り当てられるため、ページ当たりのデータ量が増大し、データ転送レートの増大が期待できる。また本発明に係る空間光変調器では、参照光エリアはオン・オフ固定の多数のダミーピクセルで構成され、参照光エリアは記録から再生まで常に同じパターンであるため、安定した記録・再生が行える。その理由は、空間光変調器で実際に記録再生するには、参照光は記録時と再生時に全く同じパターンのときに高いSN比が得られるためである。
【0012】
更に本発明では、制御可能ピクセル全てを信号光エリアとして使用し、信号光エリアの周囲の参照光エリアはオン・オフ固定の多数のダミーピクセルで構成するので、特に、電流駆動方式の磁気光学空間光変調器の場合には、ダミーピクセルには微細配線を設ける必要がないために該微細配線が長大化することは無く、そのため電気抵抗が増大することもなく、消費電力の増大を抑えることができ、発熱による特性劣化の恐れも生じない。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係る空間光変調器の一実施例を示す説明図である。これは同軸ホログラム記録システム用の空間光変調器であり、Aに示すように、中央に位置する信号光エリア10と、該信号光エリア10の外周に間隙を空けて位置する参照光エリア12とを具備している。本発明では、信号光エリア10は、オン・オフ切り替えできる多数の制御可能ピクセルが縦横に規則的に配列された構造であり、他方、参照光エリア12は、前記制御可能ピクセルと同一サイズであるがオンかオフのいずれかに固定されている多数のダミーピクセルが縦横に規則的に配列された構造である。ここで、制御可能ピクセル及びダミーピクセルの寸法は、例えば縦横16μm程度の正方形とし、ピクセル間隔を2μm程度に設定している。
【0014】
この実施例では、信号光エリア10を矩形状としており、例えば128×128ピクセルの信号光エリア10は2mm角程度の大きさになる。その周囲に配置する参照光エリアは、1.4mm幅程度の円環状でよい。全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルは、基板上に育成された磁気光学結晶からなるファラデー素子を含んでいる。なお、これは電流駆動方式の例であり、全ての制御可能ピクセルは、それぞれピクセル直近に配置した微細電線への通電制御による印加磁界可変手段を具備している。それに対して全てのダミーピクセルは印加磁界可変手段を具備していない(ピクセル直近に微細電線は配置されていない)。
【0015】
図1のBは、信号光エリアを上面から透視的に表したものであり、図面を簡略化するために便宜的に4×4のピクセル構成で描いてある。制御可能ピクセル20は、ファラデー効果により入射光に対して磁化方向に応じた偏光方向の回転を与える微小なファラデー素子(磁気光学結晶)22を有している。これら多数のファラデー素子22は、互いに離間した状態で縦横2次元的に配列され、各ファラデー素子22に沿って縦横方向に微細電線(駆動ライン)が設けられる。この微細電線を流れる駆動電流によって発生する磁界を利用し、複数の微細電線を同時に流れる駆動電流により発生する合成磁界によって、各ファラデー素子の磁化方向が個別に(独立に)制御されるように構成されている。
【0016】
X側の駆動ライン(横方向)24は、X方向に配列されているファラデー素子の周縁上を真っ直ぐに延び、またY側の駆動ライン(縦方向)26は、Y方向に配列されているファラデー素子の周縁上を真っ直ぐに延びており、それらX側とY側の駆動ラインによって各ファラデー素子を、その中心を除いて「井」の字状に囲むように配線されている。具体的には、X側の駆動ライン24とY側の駆動ライン26は、各ファラデー素子22上を、外縁がファラデー素子の周辺に沿ってそれぞれ往復で1/2周するように、従って各ファラデー素子はX側とY側とで合計1周回するように配線される。
【0017】
ファラデー素子の両側に配置された2本のX側の駆動ライン及び2本のY側の駆動ラインは、対をなし、それぞれ一方の端部で短絡されてループが形成されており、X側及びY側で各駆動ラインの短絡部がファラデー素子配列領域の両側に交互に現れるようにしている。従って、1つのX側の駆動ラインを選択すると、そのX側の駆動ラインの下方に位置するファラデー素子に対して往復で1/2周する。Y側の駆動ラインについても同様である。このように短絡部を振り分けて配置すると、ファラデー素子及びファラデー素子間隙が狭くなっても、容易に駆動部を配置することが可能となる。選択されたX側の駆動ラインと選択されたY側の駆動ラインに同時に電流Iが流れると、それらが交わる位置のファラデー素子の周りを電流Iが丁度1周することになり、両駆動ラインから発生する磁界の方向がファラデー素子中心で一致する。この合成磁界によって、ファラデー素子は合成磁界方向に磁化される。
【0018】
図1のCは、その断面図である。ファラデー素子(磁気光学結晶)は、例えばGGG基板上に液相エピタキシャル成長させたBi置換希土類鉄ガーネット膜からなる。以下、製造工程の一例について簡単に説明する。
(a)基板30に多数のファラデー素子22を縦横規則的に埋設する。具体的には、例えばGGG基板上に、フォトレジストにより正方格子状のパターニングを行い、イオンミリングでフォトレジストが付着していない多数の矩形微細領域(ピクセル形成箇所)を掘り込み、表面に残っているフォトレジストを除去する。ピクセル形成箇所が掘り込まれた表面構造の基板の上に、Bi置換鉄ガーネット薄膜を液相エピタキシャル法により育成し、その後、ギャップ位置上のBi置換鉄ガーネット薄膜が除去されるまで表面を研磨する。これによって、基板30の凹部にファラデー素子22が埋設され、ファラデー素子間が仕切り壁32によって完全に磁気的分離された状態が得られる。
(b)次に、全てのファラデー素子22の上に、スパッタ法や蒸着法などによりAl膜でミラー34を形成する。
(c)SiO2 絶縁膜36を形成後、ファラデー素子22の外縁に沿って横方向に、スパッタ法、蒸着法、あるいはメッキ法などによりCu膜を形成し、X側の駆動ライン24を配線する。駆動ラインは、Cuの他、AuやAlなどで作製してもよい。
(d)同様に、SiO2 絶縁膜38を形成後、ファラデー素子22の外縁に沿って縦方向に、スパッタ法、蒸着法、あるいはメッキ法などによりCu膜を形成し、Y側の駆動ライン26を配線する。この駆動ラインも、Cuの他、AuやAlなどで作製してもよい。
【0019】
このようにすることで、X側の駆動ライン24及びY側の駆動ライン26が、各ファラデー素子22を「井」の字に囲むようにファラデー素子22の上に形成された構造の磁気光学式空間光変調器が得られる(図1のB参照)。X側の駆動ライン及びY側の駆動ラインを流れる電流の向きは、各駆動ラインを流れる電流によって発生する磁界の向きが制御対象のファラデー素子に同じ向きに印加されるようにする。X側の2本の駆動ライン(1つのループ)の通電のみでは、発生する磁界は磁性膜の保磁力を超えることはできず、X側の2本の駆動ライン(1つのループ)とY側の2本の駆動ライン(1つのループ)への同時通電によってはじめて磁気飽和するように各電流値を設定する。これによって、制御対象のファラデー素子のみの磁化方向を独立に制御できることになる。電流が、制御対象のファラデー素子の周囲を1周することで磁化反転を起こさせるので、1本の駆動ラインを流れる電流値を半減でき、その点でも制御対象のファラデー素子以外のファラデー素子における不必要な磁化反転を防止できる。
【0020】
このような磁気光学式空間光変調器では、入射光は、GGG基板30及びファラデー素子22を透過し、ミラー34で反射し、再びファラデー素子22及びGGG基板30を透過して出射する。光の経路を矢印で示す。入射光が、ファラデー素子22を往復する際、そのファラデー効果によって偏光方向の回転が与えられる。
【0021】
参照光エリアは、図1のDに示すように、前記制御可能ピクセルと同一サイズであるがオンかオフのいずれかに固定されている多数のダミーピクセル40からなる。ここでも、図面を簡略化するために4×4のピクセル構成で描いてある。これらのダミーピクセル40もファラデー素子22を含んでいるが、オンかオフのいずれかに固定されており、可変する必要がないため、X側の駆動ライン及びY側の駆動ラインは設けられていない。断面を図1のEに示す。ファラデー素子(磁気光学結晶)22は、Bi置換希土類鉄ガーネット膜であり、GGG基板30上に液相エピタキシャル成長によって成膜したものを利用している。ダミーピクセルにおけるファラデー素子の製造工程は、上記の制御可能ピクセルにおけるファラデー素子の製造工程と同じであり、それらのファラデー素子は同時に基板に形成することになる。
【0022】
参照光エリアでは、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみに背面にミラー34を装着する(選ばれていないダミーピクセルの背面にはミラーは設けない)。具体的には、ランダムに形成したパターンを用いて、蒸着あるいはスパッタにより、選ばれたピクセル領域のみにAl膜を形成してミラー34とする。そしてSiO2 絶縁膜36を形成する。これらミラーの形成及び絶縁膜の形成も、信号光エリアと同時に実施する。
【0023】
ところで、1フレームの画面生成の際、特にピクセルを1つずつ順繰りに反転させて高速表示を行う電流駆動方式の磁気光学空間光変調器では、1フレームのピクセル数は最小限であることが望ましい。微細電線に電流を流し続けるため発熱が大きく、磁気特性の劣化や断線の恐れ等の問題が生じるからである。しかし本発明では、データ生成に必要なエリア(信号光エリア)のピクセルのみを駆動するため(参照光エリアのピクセルは駆動しないため)、1フレームのピクセル数は最小限となり、より高速でフレームの切り替えができ、発熱の問題も解消できる。
【0024】
このような空間光変調器を用いた同軸ホログラム記録の原理を図2に示す。システム的には、空間光変調器50からの光が、対物レンズ52を通して記録材料54を照射するような構成である。信号光エリアのパターンによって空間的に変調された信号光と、参照光エリアのパターンで形成された参照光は、対物レンズ52を経て、広がりのあるビームが重なり干渉縞を形成し、記録材料54に記録される。従って本発明では、信号光エリアのパターンは記録すべき情報によって変化するが、参照光エリアのパターンは固定であり、変化しない。前記の実施例では、参照光エリアにおいて、ミラーを付着したダミーピクセルはオンピクセル(白ピクセル)、ミラーの無いダミーピクセルはオフピクセル(黒ピクセル)となる。オンピクセルを前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数とほぼ同数とし、それらをランダムに配置することで、偏りのない干渉縞を記録することができる。
【0025】
なお上記の実施例では、中央に位置する信号光エリアを矩形状とし、該信号光エリアの外周に位置する参照光エリアを円環状としているが、そのような形状に限定されるものではない。信号光エリアを円形状としてもよいし、参照光エリアを矩形枠状にしてもよい。図3に示す例は、信号光エリア60を矩形状とし、参照光エリア62を矩形枠状にしたものである。信号光エリア60と参照光エリア62の間は無反射部64とする。無反射部64を設けることで、信号光エリアへの光の漏れ込みが少なくなり、高コントラストで低SN比が得られる。この無反射部は、ピクセルの無い領域でもよいし、ファラデー素子が配列されているものの背面にミラーが無い領域でもよい。
【0026】
また上記の実施例では、参照光エリアを形成している多数のダミーピクセルのうち、一部にはミラーを設け、残りにはミラー無しとすることで、ランダムにオンかオフのいずれかに固定されて不変のパターンが形成されるようにしているが、磁気特性を変えるなど他の手法もある。例えば、全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルの背面にミラーを装着するが、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみが制御可能ピクセルよりも保磁力が大きいファラデー素子を有し、他のダミーピクセルは制御可能ピクセルと保磁力が同等となるように設定したファラデー素子を有する構成もある。一部のダミーピクセルのファラデー素子の保磁力を大きくすれば、当該ダミーピクセルのみが常にオンの状態となり、他のダミーピクセルはオフの状態にすることができる。前記の実施例でいえば、前者はミラーがある場合に相当し、後者はミラーが無い場合に相当することになる。
【0027】
例えば、信号光エリアの制御可能ピクセルの保磁力を16000A/m(200Oe)程度に設定し、参照光エリアのダミーピクセルの保磁力を24000〜40000A/m(300〜500Oe)に分布するようにしておいて、32000A/m(400Oe)程度の外部磁界を前もって印加しておけば、ほぼ半数のダミーピクセルがオンピクセルとして固定される。その後、制御可能ピクセルは、駆動ラインからの磁界によって20000A/m(250Oe)程度の磁界でオン・オフの制御ができる。
【0028】
ダミーピクセルの保磁力を大きくするには、例えば、該ダミーピクセル周辺の基板部分を削って僅かに段差を設けることで実現できる。段差を設けるには、イオンミリング等で基板を加工すればよい。保磁力の大きなダミーピクセルは、図4のAに示すようにして形成する。基板30に埋設されているファラデー素子(磁気光学結晶)32(a)にマスク60を施し、イオンミリング等で基板30を削り(b)、マスクを除去し(c)、ファラデー素子32にミラー(反射膜)34を設け(d)、絶縁膜36で覆う(e)。それに対して保磁力が相対的に大きくないダミーピクセルは、図4のBに示すように、基板を削ることなく(工程(b)〜(c)を省略し)ファラデー素子32にミラー(反射膜)34を設け(d)、絶縁膜36で覆う(e)ことで形成できる。
【0029】
本発明は、制御可能ピクセルからなる信号光エリアの周囲に、ダミーピクセルからなる参照光エリアが位置する構成なので、製造時には信号光エリアのみをエラーが発生しないように製作すればよいし、フォトリソグラフィのプロセスでは部分的にピクセル加工するよりもある程度の広い範囲にわたって同じピクセル加工を施した方が、作業が容易であるし品質も揃う。従って、制御可能ピクセルとダミーピクセルの両方を同時に製作することで、歩留まりの向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る空間光変調器の一実施例を示す説明図。
【図2】同軸ホログラム記録の原理説明図。
【図3】本発明に係る空間光変調器の他の実施例を示す説明図。
【図4】保磁力の異なるピクセルの製作工程の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
10 信号光エリア
12 参照光エリア
20 制御可能ピクセル
22 ファラデー素子
24 X側の駆動ライン
26 Y側の駆動ライン
40 ダミーピクセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に位置する信号光エリアと、該信号光エリアの外周に位置する参照光エリアとを具備している同軸ホログラム記録システム用の空間光変調器において、
信号光エリアは、オン・オフ切り替えできる多数の制御可能ピクセルが縦横に規則的に配列された構造であり、他方、参照光エリアは、前記制御可能ピクセルと同一サイズであるがオンかオフのいずれかに固定されている多数のダミーピクセルが縦横に規則的に配列され、オンのダミーピクセルとオフのダミーピクセルがランダムに位置して固定パターンが形成される構造であることを特徴とする空間光変調器。
【請求項2】
全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルは、基板上に育成された磁気光学結晶からなるファラデー素子を含んでおり、全ての制御可能ピクセルは、それぞれ該制御可能ピクセル直近に配置した微細電線への通電制御による印加磁界可変手段を具備している請求項1記載の空間光変調器。
【請求項3】
全ての制御可能ピクセルの背面にミラーが装着され、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみに背面にミラーが装着されてオンピクセルになっている請求項1又は2記載の空間光変調器。
【請求項4】
全ての制御可能ピクセル及び全てのダミーピクセルの背面にミラーが装着され、前記信号光エリアでオン状態にある制御可能ピクセル数と同数のランダムに選ばれたダミーピクセルのみが制御可能ピクセルよりも保磁力が大きいファラデー素子を有し、他のダミーピクセルは制御可能ピクセルと保磁力が同等もしくはそれ以下となるように設定されているファラデー素子を有しており、保磁力が大きいダミーピクセルがオンピクセルとなる請求項2記載の空間光変調器。
【請求項5】
保磁力の大きなダミーピクセルは、そのファラデー素子周辺の基板部分を削ることによって、該ファラデー素子の表面が、その周囲の基板表面よりも高くなるような段差を設けた構造になっている請求項4記載の空間光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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