説明

空間安定装置

【課題】従来の空間安定装置は、出力角度を使用する制御ループの精度を向上させるために、分解能の高い角度センサを使用する必要があり、コスト高になってしまう。
【解決手段】本発明による空間安定装置は、制御手段11が、角速度センサ7の出力角速度(θ/t)を積分することで変化角度(Δθ)を求め、角度センサ8の出力角度(θ)が1単位変化する間の角度を変化角度(Δθ)によって補間するとともに、前記出力角度(θ)が1単位変化する毎に前記変化角度(Δθ)をリセットする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に取り付けられ目的検出部の姿勢を安定させる空間安定装置に関し、特に、角速度検出手段の出力角速度(θ/t)を積分することで変化角度(Δθ)を求め、角度検出手段の出力角度(θ)が1単位変化する間の角度を変化角度(Δθ)によって補間することで、高価な角度センサを使用しなくても出力角度の分解能を向上させることができ、制御精度を向上させつつ、コスト増大を小さく抑えることができる新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の空間安定装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている装置が挙げられ、図3に示すように構成されている。図3は、従来の空間安定装置を示す構成図である。図において、航空機や車両等の移動体(図示せず)に固定された固定部1には、この固定部1に対して回転自在なアウタジンバル2が取り付けられ、このアウタジンバル2には、該アウタジンバル2に対して回転自在なインナジンバル3が取り付けられ、これらアウタジンバル2及びインナジンバル3によってジンバル機構4が構成されている。前記インナジンバル3には、例えば可視カメラ、赤外線カメラ、及びレーダアンテナ等のペイロード5が取り付けられており、ペイロード5の視軸線6はジンバル機構4の動作によりジンバル2,3の回転軸周りに移動可能とされている。前記インナジンバル3にはジンバル2,3の回転軸周りの回転角速度を検出する角速度センサ7が取り付けられ、前記ジンバル機構4の軸部には、各ジンバル2,3間の相対的な回転角度を検出する角度センサ8、前記固定部1に対して前記アウタジンバル2を回転させるアウタトルカ9、及び前記アウタジンバル2に対して前記インナジンバル3を回転させるインナトルカ10が取り付けられ、これらトルカ9,10の動作は制御手段11によって制御される。
【0003】
次に、従来装置の動作について説明する。前記移動体の運動により外乱が生じた場合、その外乱による角速度が前記角速度センサ7によって検出され、この角速度センサ7の出力角速度(θ/t)が制御手段11に入力される。このとき、出力角速度(θ/t)が打ち消されるように前記制御手段11によってインナトルカ10が駆動され、前記ペイロード5の視軸線6がインナジンバル3の回転軸周りについて慣性空間内で動くことなく空間安定される。一方で、インナジンバル3が駆動された際に各ジンバル2,3間の相対的な回転角度が前記角度センサ8によって検出され、この角度センサ8の出力角度(θ)が前記制御手段11に入力されるとともに、出力角度(θ)が0となるように前記制御手段11によってアウタトルカ9が駆動される。すなわち、前記出力角速度(θ/t)を打ち消すインナループに内在するドリフトによって前記インナジンバル3が動いてしまっても、アウタジンバル2がインナジンバル3に追従して動き、両ジンバル2,3が各々勝手な方向に向いてしまうことが防がれている。この出力角度(θ)を0とするアウタループも間接的に空間安定させる動きがあり、結果的にペイロード5の空間安定精度を向上させる副次的機能もある。なお、この従来例では説明を簡単にするために、視軸線6を1つの回転軸周りに移動可能とする1軸のジンバル機構4を示しているが、アジマス及びエレベーションの2軸機構や、ヨウ、ピッチ、及びロールの3軸機構でも同様に適用できる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−361121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の空間安定装置では、出力角度を使用する制御ループの精度を向上させるために分解能の高い角度センサを使用すると、コスト高になってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高価な角度センサを使用しなくても出力角度の分解能を向上させることができ、制御精度を向上させつつ、コスト増大を小さく抑えることができる空間安定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空間安定装置は、ジンバル機構に取り付けられたペイロードの姿勢を安定させる空間安定装置であって、前記ジンバル機構に支持され前記ジンバル機構の回転軸周りの回転角速度を検出する角速度検出手段と、前記ジンバル機構の軸部に取り付けられ前記軸部の回転角度を検出する角度検出手段と、前記角度検出手段とともに前記軸部に取り付けられ前記ジンバル機構を駆動する駆動手段と、前記角速度検出手段及び前記角度検出手段の出力に基づいて前記駆動手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記角速度検出手段の出力角速度を積分することで変化角度を求め、前記角度検出手段の出力角度が1単位変化する間の角度を前記変化角度によって補間する構成である。
また、前記制御手段は、前記出力角度が1単位変化する毎に前記変化角度をリセットする構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空間安定装置によれば、制御手段は、角速度検出手段の出力角速度を積分することで変化角度を求め、角度検出手段の出力角度が1単位変化する間の角度を変化角度によって補間するので、高価な角度センサを使用しなくても出力角度の分解能を向上させることができ、制御精度を向上させつつ、コスト増大を小さく抑えることができる。
また、前記制御手段は、前記出力角度が1単位変化する毎に前記変化角度をリセットするので、出力角速度の誤差の積分による蓄積を小さく抑えることができ、制御精度をより向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1による空間安定装置の全体としての構成は、従来の空間安定装置の構成と同様であるので、従来例と同一部分は同一の符号を付すとともにその説明を省略し、従来例とは異なる部分についてのみ説明する。図1は、本発明の実施の形態1による空間安定装置の制御手段11のハードウェア構成を示すブロック図である。図において、制御手段11は、第1及び第2入力回路15,16、ラッチ回路17、割り込み発生回路18、A/D変換器19、内部バス20、MPU21、ROM22、及びRAM23から構成されている。
【0010】
前記第1入力回路15には前記ジンバル機構4の軸部の回転角度を検出する前記角度センサ8が接続され、この角度センサ8の出力角度(θ)はラッチ回路17及び割り込み発生回路18に入力される。このラッチ回路17は前記出力角度(θ)をラッチするとともに、前記割り込み発生回路18は前記出力角度(θ)が1単位変化した際にリセット信号18aを出力する。具体的には、前記角度センサ8としては出力角度(θ)をデジタル信号として直接出力する絶対値エンコーダが使用され、出力角度(θ)が例えば12ビット分解能で出力される場合は、出力角度(θ)が1ビット、すなわち約0.08789°(=360°/212)変化する毎にリセット信号18aが出力される。なお、前記角度センサ8としては例えばレゾルバ等の他のセンサを用いることもでき、レゾルバを用いる場合には前記制御手段11にレゾルバ/デジタル変換器がさらに設けられる。前記第2入力回路16には前記ジンバル機構4の回転軸周りの回転角速度を検出する角速度センサ7が接続され、この角速度センサ7の出力角速度(θ/t)は前記A/D変換器19でデジタル信号に変換される。この角速度センサ7としては、ジャイロ等が用いられる。
【0011】
前記内部バス20は、ラッチ回路17、割り込み発生回路18、A/D変換器19、MPU21、ROM22、及びRAM23間を接続している。MPU21は、ROM22に格納されたプログラム、前記出力角度(θ)、及び前記出力角速度(θ/t)に基づいて演算処理を行い、前記ジンバル機構4を駆動するアウタトルカ9及びインナトルカ10の動作を制御する指令信号21aを出力する。RAM23は、前記MPU21の演算結果等の情報を一時記憶する。なお、この実施の形態では、角速度検出手段は角速度センサ7によって構成され、角度検出手段は角度センサ8によって構成され、駆動手段はアウタトルカ9及びインナトルカ10によって構成されている。
【0012】
次に、図2は、図1の制御手段11のソフトウェア構成を示すブロック図である。図において、前記MPU21は、前記出力角速度(θ/t)を積分することで前記出力角度(θ)が1単位変化する間の変化角度(Δθ)を求めるとともに、前記ラッチ回路17にラッチされている前記出力角度(θ)に前記変化角度(Δθ)を加算することで補間角度(θ+Δθ)を求め、この補間角度(θ+Δθ)と前記出力角速度(θ/t)とに基づいて前記指令信号21aを出力し前記トルカ9,10の動作を制御する。すなわち、制御手段11は、前記出力角度(θ)の1ビット(約0.08789°)間の角度を前記変化角度(Δθ)によって補間することで、検出する角度の分解能を向上させる。従って、分解能が高い絶対値エンコーダや、複速にして分解能を向上させたレゾルバ等の高価な角度センサを不要とし、制御精度を向上させつつ、コスト増大を小さく抑えることができる。
【0013】
また、前記割り込み発生回路18は前記出力角度(θ)が1単位変化した際にリセット信号18aを出力し、前記MPU21はリセット信号18aを検出した際に求めた前記変化角度(Δθ)をリセットする。すなわち、制御手段11は、前記出力角度(θ)が1単位変化する毎に前記変化角度(Δθ)をリセットすることで、前記出力角速度(θ/t)の誤差の積分による蓄積を小さく抑える。従って、補間角度(θ+Δθ)の精度を向上でき、制御精度をより向上できる。
【0014】
なお、実施の形態の空間安定装置の構成は、従来の空間安定装置の構成と同様であると説明したが、本発明の適用対象は、従来装置の構造及び制御のみに限定されず、角度センサと角速度センサとが用いられており、出力角度が1単位変化する間の角度を補間することが有用な構造及び制御であればよい。また、複数の角度センサによって角度検出手段が構成され、複数の角速度センサによって角速度検出手段が構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1による空間安定装置の制御手段のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御手段のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図3】従来の空間安定装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0016】
4 ジンバル機構
5 ペイロード
7 角速度センサ(角速度検出手段)
8 角度センサ(角度検出手段)
9,10 トルカ(駆動手段)
11 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンバル機構(4)に取り付けられたペイロード(5)の姿勢を安定させる空間安定装置であって、
前記ジンバル機構(4)に支持され前記ジンバル機構(4)の回転軸周りの回転角速度を検出する角速度検出手段(7)と、
前記ジンバル機構(4)の軸部に取り付けられ前記軸部の回転角度を検出する角度検出手段(8)と、
前記角度検出手段(8)とともに前記軸部に取り付けられ前記ジンバル機構(4)を駆動する駆動手段(9,10)と、
前記角速度検出手段(7)及び前記角度検出手段(8)の出力に基づいて前記駆動手段(9,10)の動作を制御する制御手段(11)と
を備え、
前記制御手段(11)は、前記角速度検出手段(7)の出力角速度(θ/t)を積分することで変化角度(Δθ)を求め、前記角度検出手段(8)の出力角度(θ)が1単位変化する間の角度を前記変化角度(Δθ)によって補間することを特徴とする空間安定装置。
【請求項2】
前記制御手段(11)は、前記出力角度(θ)が1単位変化する毎に前記変化角度(Δθ)をリセットすることを特徴とする請求項1記載の空間安定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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