説明

空間競合検出装置とその検出方法

【課題】 人間系の判断を排除して、厳密かつ安定した空間の管理及び競合の検出を実現する。
【解決手段】 競合検出の対象とする空間を決定して複数のセクタに分割し(S11)、全ての移動物体の移動経路について、経由ポイントの座標、速度及び時刻を設定し(S12)、設定された移動経路の各区間を位置ベクトルとし、このベクトルとセクタを構成する面との交叉の有無を判定し、交叉した面を含むセクタを移動物体が通過に使用するセクタとして検出する(S13)。この結果を基に、[経路ID][開始時刻][終了時刻][使用セクタ]をキーとするテーブルに仮登録する(S14)。上記テーブルをデータストレージのデータベースに登録し、同一セクタが同一時間帯に使用されるか否かを判定する(S15)。競合があった場合は、競合の警告を行い(S16)、競合がなければ、移動物体のデータを空間使用テーブルに本登録する(S17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や車両等の移動物体が空間を使用する際に、他の移動物体との競合の有無を検出する空間競合検出装置とその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空機管制システムにおいては、飛行経路を地図に重ねた透明なシート等に時間又は種別毎に描き、これらを重ね合わせて、目視により使用空間が競合するか否かの判定を行っていた。このように従来の空間競合の検出方式では、数値的な判定ではなく人間系の判定を主としている。このため、従来方式では煩雑な作業が多く、また、厳密な判定が行えないことにより必要以上の時間的・空間的な安全マージンをとらざるを得ず、空間の有効利用が行えなかった。
【0003】
尚、この種の競合判定方法が特許文献1に提示されている。この文献1による方法では、3次元空間を格子状に分割し、各格子点に座標情報とその格子点が特定の領域内に含まれるかどうかを表すパラメータを持った情報テーブルを設定し、他の領域が新たに設定された場合に、その領域に含まれる格子点を検出し、格子点におけるパラメータの値が、事前に設定された領域との競合を判別するようにしている。
【特許文献1】特開2002−373400公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来の空間競合の検出方式では、数値的な判定ではなく人間系の判定を主としているため、煩雑な作業が多く、また、厳密な判定が行えないことにより必要以上の時間的・空間的な安全マージンをとらざるを得ず、空間の有効利用が行えなかった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、移動物体の移動情報について簡単な設定入力を行うだけで数値的な競合判定が可能で、時間的・空間的な安全マージンを軽減することができ、空間の有効利用を飛躍的に高めることのできる空間競合検出装置とその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、移動物体の移動情報に基づいて空間競合を検出する処理を行うサーバと、このサーバにアクセスして前記移動物体の競合検出要求、移動情報の設定入力を行う端末装置と、前記サーバに接続され、前記サーバの演算処理に用いられる空間使用状況を登録する空間使用状況テーブルを格納するデータストレージとを具備し、前記サーバは、前記移動物体毎に移動情報に基づいて競合検出の対象とする空間を決定し、セクタに分割して、セクタ番号により移動物体が通過する移動経路と使用時間帯を前記空間使用状況テーブルに登録し、同一時間帯に一致するセクタ番号の有無を判定することで空間競合を検出する処理手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、移動物体の移動情報について簡単な設定入力を行うだけで数値的な競合判定が可能で、時間的・空間的な安全マージンを軽減することができ、空間の有効利用を飛躍的に高めることのできる空間競合検出装置とその検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1は本発明に係る空間競合検出装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、11は管理サーバ、12はデータストレージ、131,132,…,13nはユーザ端末コンピュータ(以下、PC)である。各PC131〜13nはそれぞれLANまたはWAN等のネットワーク14を介して管理サーバ11に接続され、管理サーバ11にアクセスして競合検出要求、移動情報の入力設定を行う。
【0010】
上記管理サーバ11は、アプリケーションとして競合検出、運動計算、経路設定、空間管理のプログラムが組み込まれており、データストレージ12に対象空間を分割したセクタ毎の情報を格納するテーブルを生成し管理する機能を有する。
【0011】
上記構成において、図2を参照してその処理動作の第1の実施例を説明する。
(A1)対象空間の設定
競合検出の対象とする空間を決定し、セクタに分割する(ステップS11)。
(A2)各移動経路の設定
全ての移動物体の移動経路を設定する。設定は移動物体が経由するポイントの座標、速度及び時刻を設定することにより行う(ステップS12)。
(A3)使用セクタの検出
ステップS12で設定された移動経路を構成する各区間を位置ベクトルとし、このベクトルとセクタを構成する面との交叉の有無を判定し、交叉した面を含むセクタを移動物体が通過に使用するセクタとして検出する(ステップS13)。
(A4)空間使用状況テーブルへの仮登録
上記の結果を基に、[経路ID][開始時刻][終了時刻][使用セクタ]をキーとするテーブル(以下、空間使用状況テーブルと呼ぶ)に仮登録する(ステップS14)。
(A5)競合の判定
上記テーブルをデータストレージ12のデータベースに登録し、同一セクタが同一時間帯に使用されるか否かを判定する(ステップS15)。
競合があった場合は、競合の警告を行い、(A2)項(ステップS12)に戻る(ステップS16)。
(A6)空間使用状況テーブルへの本登録
競合がなければ、移動物体のデータを空間使用テーブルに本登録する(ステップS17)。
(A7)新規設定経路
さらに新規設定経路の有無を判断し(ステップS18)、新規設定経路がある場合は、(2)項(ステップS12)に戻り、新規設定経路がない場合は終了する。
【0012】
上記第1の実施例において、セクタ競合判定を行う場合の概念図を図3に示し、空間使用状況テーブル(仮登録時)の一例を図4に示す。この例では、仮登録時において、空間使用状況テーブルには、予め地形等の障害物が登録されている。ここで、新規に飛行経路Aと飛行経路Bが仮登録された場合、同一時間帯で同一の使用セクタが指定されると、直ちに競合の警告が出されるため、仮登録の段階で競合回避を行うことが可能となる。
【0013】
次に、図5を参照して処理動作の第2の実施例を説明する。
(B1)対象空間の設定
競合検出の対象とする空間を決定し、セクタに分割する(ステップS21)。
(B2)移動経路の設定
移動物体の経路として、移動物体が経由するポイントの座標、速度及び時刻を設定する(ステップS22)。
(B3)使用セクタの検出
(B2)項(ステップS22)で設定された移動経路を構成する各区間を位置ベクトルとし、このベクトルとセクタを構成する面との交叉の有無を判定し、交叉した面を含むセクタを移動物体が通過に使用するセクタとして検出する(ステップS23)。
(B4)空間使用状況テーブルへの登録
上記の結果を基に、[経路ID][開始時刻][終了時刻][使用セクタ]をキーとするテーブル(以下、空間使用状況テーブルと呼ぶ)に登録する(ステップS24)。
(B5)新規移動経路の設定
さらに新規設定経路の有無を判断し(ステップS25)、新規設定経路が存在する場合、新規移動経路の設定を行う(ステップS26)。新規設定経路がない場合は、終了とする。
【0014】
(B6)同一時間帯の使用セクタの抽出
(B5)項(ステップS26)で新規に作成した移動経路と同一時間帯に使用されるセクタを、空間使用状況テーブルを検索することにより抽出する(ステップS27)。
【0015】
(B7)競合の判定
(B6)項(ステップS27)で抽出されたセクタと(B5)項(ステップS26)で作成した移動経路の競合を判定する(ステップS28)。判定の方法は、(B3)項(ステップS23)と同様とする。競合があった場合は、警告を表示し経路の修正を行う(ステップS29)。また、競合がなければ、(B4)項(ステップS24)に戻り、この経路を空間使用状況テーブルへ登録する。
【0016】
上記第2の実施例において、セクタ競合判定を行う場合の概念図を図6に示し、空間使用状況テーブル(仮登録時)の一例を図7に示す。この例でも、仮登録時において、空間使用状況テーブルには、予め地形等の障害物が登録されている。ここで、既に飛行経路Aが予約登録された状態で新規に飛行経路Bを作成する場合、飛行経路Aの予約されたセクタと新規経路のベクトルとの交叉を判定し、交叉があれば競合があると判断する。交叉がなければその後、新規経路Bが使用するセクタを空間使用状況テーブルに登録する。本実施例においても、同一時間帯で同一の使用セクタがあると直ちに競合の警告が出されるため、仮登録の段階で競合回避を行うことが可能となる。
【0017】
上記第1及び第2の実施例それぞれ処理によれば、空間をセクタに分割して、セクタ番号により移動物体が通過する移動経路を管理するため、数値的な管理を実現することが可能となり、これによって人間系の判断を排除して、厳密かつ安定した空間の管理及び競合の検出が可能になる。
【0018】
したがって、本実施形態による空間競合検出装置によれば、空間を小空間に分割したセクタで管理することにより効率的な管理を行い、移動物体の経路を構成する位置ベクトルとセクタを構成する面との交叉の有無を判定することにより、使用するセクタの判別が可能となる。また、この使用セクタに時刻の情報を付加してデータベース管理することにより、空間競合検出を行うことができる。さらに新規に発生した移動物体が所望する移動経路と予約された空間との競合の判定も行うことができる。
【0019】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る空間競合検出装置の一実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】上記実施形態の装置の第1の実施例による処理動作を説明するためのフローチャート。
【図3】上記第1の実施例において、セクタ競合判定を行う場合の概念図。
【図4】上記第1の実施例において、空間使用状況テーブル(仮登録時)の一例を示す図。
【図5】上記実施形態の装置の第2の実施例による処理動作を説明するためのフローチャート。
【図6】上記第2の実施例において、セクタ競合判定を行う場合の概念図。
【図7】上記第2の実施例において、空間使用状況テーブルの一例を示す図。
【符号の説明】
【0021】
11…管理サーバ、12…データストレージ、131,132,…,13n…ユーザ端末コンピュータ、14…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の移動情報に基づいて空間競合を検出する処理を行うサーバと、
このサーバにアクセスして前記移動物体の競合検出要求、移動情報の設定入力を行う端末装置と、
前記サーバに接続され、前記サーバの演算処理に用いられる空間使用状況を登録する空間使用状況テーブルを格納するデータストレージとを具備し、
前記サーバは、前記移動物体毎に移動情報に基づいて競合検出の対象とする空間を決定し、セクタに分割して、セクタ番号により移動物体が通過する移動経路と使用時間帯を前記空間使用状況テーブルに登録し、同一時間帯に一致するセクタ番号の有無を判定することで空間競合を検出する処理手段を備えることを特徴とする空間競合検出装置。
【請求項2】
前記処理手段は、新規に複数の移動経路について競合検出要求があったとき、それぞれの移動経路で使用するセクタを前記テーブルに仮登録し、同一時間帯で同一の使用セクタが指定されるときには競合の警告を出し、同一時間帯で同一使用セクタがないとき本登録することを特徴とする請求項1記載の空間競合検出装置。
【請求項3】
前記処理手段は、新規に移動経路について競合検出要求があったとき、その移動経路で使用するセクタを求め、既登録の移動経路の同一時間帯で使用するセクタを検索し、同一時間帯で同一の使用セクタが検出されるときには競合の警告を出し、同一時間帯で同一使用セクタがないとき本登録することを特徴とする請求項1記載の空間競合検出装置。
【請求項4】
前記テーブルに、予め障害物について使用セクタを登録しておくことを特徴とする請求項1記載の空間競合検出装置。
【請求項5】
移動物体の移動情報に基づいて空間競合を検出する処理を行う空間競合検出方法において、
前記移動物体毎に移動情報に基づいて競合検出の対象とする空間を決定し、セクタに分割して、セクタ番号により移動物体が通過する移動経路と使用時間帯を前記空間使用状況テーブルに登録し、同一時間帯に一致するセクタ番号の有無を判定することで空間競合を検出することを特徴とする空間競合検出方法。
【請求項6】
新規に複数の移動経路について競合検出要求があったとき、それぞれの移動経路で使用するセクタを前記テーブルに仮登録し、同一時間帯で同一の使用セクタが指定されるときには競合の警告を出し、同一時間帯で同一使用セクタがないとき本登録することを特徴とする請求項5記載の空間競合検出方法。
【請求項7】
新規に移動経路について競合検出要求があったとき、その移動経路で使用するセクタを求め、既登録の移動経路の同一時間帯で使用するセクタを検索し、同一時間帯で同一の使用セクタが検出されるときには競合の警告を出し、同一時間帯で同一使用セクタがないとき本登録することを特徴とする請求項5記載の空間競合検出方法。
【請求項8】
前記テーブルに、予め障害物について使用セクタを登録しておくことを特徴とする請求項5記載の空間競合検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−21027(P2008−21027A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190768(P2006−190768)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】