説明

穿孔工具

【課題】ゲージを備えていない構成で所望の深さまで穿孔したことをユーザが認識することができる穿孔工具の提供。
【解決手段】軸流ファン22Aの下方にはエア流路20aが形成されている。エア流路20aは、その一端20bがファン室に開口し、他端20cはハンドル部10の前部10Bにおいて先端側へ向けてハンドル部10外方へ開口している。エア流路20aは、エア流路20a内においてエアが流れる方向に直交する断面で切ったエア流路20aの断面積は168mmであり、その一端20bから他端20cに至るまで一定である。エア流路20aは、その一端20bから下方へ延出する下方延出部20dと、当該下方延出部20dから先端側へ緩やかに曲がる屈曲部20eと、屈曲部20eから先端側の方向へ延出し他端20cに至る先端方向延出部20fとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穿孔工具に関し、特に先端工具により被穿孔材が穿孔された深さを測定可能な穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からドリルビットを回転させると共にドリルビットに打撃力を加えて被穿孔材を穿孔するハンマドリル等の穿孔工具が知られている。穿孔工具は打撃力を発生させるために、モータと、シリンダと、シリンダ内に配置されたピストンと、モータの回転力をピストンの往復運動に変換する運動変換機構と、ピストンにより駆動される打撃子と、打撃子が衝突する中間子とを備えている。また、穿孔工具の先端部には先端工具が装着され、打撃子が中間子に衝突することにより、中間子を介して打撃力が先端工具に伝達されるように構成されている。また、モータの回転力が先端工具に伝達されて先端工具はその軸心を中心として回転するように構成されている。
【0003】
また、穿孔工具には先端工具の延出方向に平行に延出するゲージが設けられている。先端工具が被穿孔材に対して穿孔してゆき、所望の深さまで穿孔したときにゲージの延出端が被穿孔材の表面に当接することで、所望の深さまで穿孔したことを穿孔工具のユーザは認識することができるように構成されている。このようなハンマドリルは、例えば特開2009−241229号公報(特許公報1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−241229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の穿孔工具ではゲージが設けられていたため、穿孔の際にゲージが邪魔になることがある。例えば、ゲージが邪魔にならないように、ゲージに代えて赤外線センサからなる距離センサを設け、距離センサから被穿孔材までの距離を測定することが考えられるが、距離センサを実際に用いて穿孔した深さを認識しようとしても、穿孔に伴い粉塵が舞い上がり、距離センサで正確に穿孔の深さを測定することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、ゲージを備えていない構成で所望の深さまで穿孔したことをユーザが認識することができる穿孔工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、先端部と後端部とを有し被穿孔材に対して穿孔する先端工具を該先端部に支承可能なハウジングと、回転力を出力する出力軸を有し、該ハウジングに収容されたモータと、該モータにより発生した回転力を該先端工具に伝達する回転伝達部と、該ハウジングに設けられ該被穿孔材の表面までの距離を測定可能な距離センサと、を備え、該モータの出力軸にはファンが該出力軸と一体回転可能に設けられ、該ハウジングにはエア流路が形成され、該エア流路は、該ハウジングの外表面において該距離センサに隣接する位置において開口し、該エア流路に流入した該ファンからのエアを該開口から該ハウジング外部へ吹き出し可能であり、該エア流路は、該開口から吹き出されるエアを、該距離センサと、該被穿孔材の一部であって該距離センサによって距離が測定される部分とを結ぶ仮想直線に沿って該被穿孔材に至るまで流すように構成されている穿孔工具を提供している。
【0008】
先端部と後端部とを有し被穿孔材に対して穿孔する先端工具を先端部に支承可能なハウジングと、回転力を出力する出力軸を有し、ハウジングに収容されたモータと、モータにより発生した回転力を先端工具に伝達する回転伝達部と、ハウジングに設けられ被穿孔材の表面までの距離を測定可能な距離センサと、を備え、モータの出力軸にはファンが出力軸と一体回転可能に設けられ、ハウジングにはエア流路が形成され、エア流路は、ハウジングの外表面において距離センサに隣接する位置において開口し、エア流路に流入したファンからのエアを開口からハウジング外部へ吹き出し可能であり、エア流路は、開口から吹き出されるエアを、距離センサと、被穿孔材の一部であって距離センサによって距離が測定される部分とを結ぶ仮想直線に沿って被穿孔材に至るまで流すように構成されているため、被穿孔材に対する先端工具の穿孔により生じた粉塵であって距離センサと被穿孔材の表面との間に飛散している粉塵を、エア流路の開口から吹き出されるエアによって、被穿孔材の表面の方向へ吹き飛ばすことができる。このため、距離センサから、距離センサと被穿孔材の表面との間に飛散している粉塵までの距離を、誤って距離センサから被穿孔材の表面までの距離であるとして検出してしまうことを防止することができる。このため、距離センサから被穿孔材までの距離を正確に検出することができる。
【0009】
ここで、該エア流路は、該開口から該仮想直線に平行な位置関係をなして延びる吹き出し方向延出流路部を有することが好ましい。
【0010】
エア流路は、開口から仮想直線に平行な位置関係をなして延びる吹き出し方向延出流路部を有するため、吹き出し方向延出流路部においてエアが流れることにより、開口から吹き出されるエアの方向を仮想直線に沿った方向として、エアを勢い良く流すことができる。
【0011】
また、該開口をなす該エア流路の一端に対する他端は、該ハウジング内において該ファンに対向し、該エア流路内においてエアが流れる方向に直交する断面で切った該エア流路の断面積は、該エア流路の一端から他端に至るまで一定であることが好ましい。
【0012】
開口をなすエア流路の一端に対する他端は、ハウジング内においてファンに対向し、エア流路内においてエアが流れる方向に直交する断面で切ったエア流路の断面積は、エア流路の一端から他端に至るまで一定であるため、エア流路を流れるエアに対して抵抗が生ずることを防ぐことができ、開口から離間して位置する被穿孔材の表面にまでエアを到達させることができる。
【0013】
また、該距離センサは赤外線センサからなることが好ましい。距離センサは赤外線センサからなるため、赤外線センサが用いられた穿孔工具において被穿孔材に対する先端工具の穿孔深さを正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より本発明は、ゲージを備えていない構成で所望の深さまで穿孔したことをユーザが認識することができる穿孔工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による穿孔工具を示す側面図。
【図2】本発明の実施の形態による穿孔工具を示す正面図。
【図3】本発明の実施の形態による穿孔工具を示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態による穿孔工具のエア流路を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施の形態による穿孔工具を示す回路図。
【図6】本発明の実施の形態による穿孔工具の距離センサにより距離を測定した際に、被穿孔材の穿孔により生じた粉塵に影響を受けずに距離を測定した様子を示すグラフ。
【図7】従来の穿孔工具の距離センサにより距離を測定した際に、被穿孔材の穿孔により生じた粉塵により距離を誤って測定した様子を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による穿孔工具の実施の形態について図1乃至図7を参照しながら説明する。図1〜図3に示すように、穿孔工具1はロータリーハンマドリルであり、ハンドル部10と、モータハウジング20と、ギヤハウジング60とによりハウジングが構成されている。以下の説明では図1における左側を穿孔工具1の後端側、右側を穿孔工具1の先端側と定義し、図1における上側を穿孔工具1の上側、下側を穿孔工具1の下側と定義して説明する。ハウジングの先端と後端とを結ぶ方向におけるハウジングの長さ、即ち図1における左右方向における長さは30cm〜40cm程度である。
【0017】
ハンドル部10は略U字状をなしており、その上部は、モータハウジング20の一部であって後述の電動モータ21を収容している部分20Aとプラスチックで一体成型され、ハンドル部10はモータハウジング20の一部をなしている。ハンドル部10の後部10A下部には、電源ケーブル11が取付けられていると共に、スイッチ機構12が内蔵されている。スイッチ機構12には、使用者によって操作可能なトリガ13が機械的に接続されている。電源ケーブル11はスイッチ機構12を図示せぬ外部電源に接続しており、トリガ13を操作することにより、スイッチ機構12と図示せぬ外部電源との接続と断続とが切換えられる。
【0018】
ハンドル部10の前部10Bには、後述の回路基板26と距離センサ14とが設けられている。距離センサ14は、ハンドル部10の前部10Bの上部に設けられており、後端部側から先端部側へと向かう方向において、距離センサ14に対向配置される図示せぬ被穿孔材Bと距離センサ14との間の距離を測定可能である。
【0019】
距離センサ14は、図3に示すようにその略全体が樹脂製のカバー14Aにより覆われている。カバー14Aはハンドル部10の前部10Bの上部に固定されている。距離センサ14は後述のようにマイコン(制御部110(図5))に電気的に接続されており、また、マイコン110は後述の電動モータ21に電気的に接続されている。また、距離センサ14は図示せぬ入力部の穴深さ設定ボタンに電気的に接続されており、図示せぬ穴深さ設定ボタンにおいては後述のように所望の穿孔深さを入力可能である。入力される穿孔深さの値は、より具体的には、3cm〜6cm程度である。距離センサ14は赤外線センサにより構成されており、赤外線の波長は850nm程度である。
【0020】
図3に示すように、モータハウジング20内には電動モータ21が収納されている。電動モータ21はACブラシレスモータにより構成されており、後述のマイコン110により回転の制御が行われる。電動モータ21は出力軸22を備えており出力軸22は回転駆動力を出力する。出力軸22の基部には軸流ファン22Aが出力軸22と同軸的に一体回転可能に設けられている。軸流ファン22Aを収容しているモータハウジング20の部分は、ファン室を画成する。また、モータハウジング20の一部であって軸流ファン22Aの周面に対向する部分には、モータハウジング20の内部と外部とを連通するエア排出口20y(図1)が形成されている。
【0021】
図3に示すように軸流ファン22Aの下方にはエア流路20aが形成されている。エア流路20aは、その一端20bがファン室に開口しており、他端20cはハンドル部10の前部10Bにおいて先端側へ向けてハンドル部10の内部から外方へ向けて開口している。エア流路20aは、その他端20cの開口から吹き出されるエア3を、距離センサ14と、被穿孔材Bの一部であって距離センサ14によって距離が測定される部分とを結ぶ仮想直線Xに沿って被穿孔材Bに至るまで流すように構成されている。具体的には、エア流路20aは、その一端20bから下方へ延出する下方延出部20dと、当該下方延出部20dから先端側へ緩やかに曲がる屈曲部20eと、屈曲部20eから先端側の方向へ延出し他端20cに至る先端方向延出部20fとを有している。エア流路20a内においてエア3が流れる方向に直交する断面で切ったエア流路20aの断面積は168mmであり、その一端20bから他端20cに至るまで一定である。先端方向延出部20fは吹き出し方向延出流路部に相当する。
【0022】
軸流ファン22Aが回転することにより、図4に示す矢印のように、モータハウジング20の後部に形成された空気流入口20xからのエア3が電動モータ21近傍に流れ、ファン室からエア流路20a内に流入し、下方延出部20d、屈曲部20eの順にエア3が流れ、先端方向延出部20fにおいてエア3は先端方向へ方向付けられ、そのままハンドル部10外方へ勢いよく吹き出される。そしてエア3は、先端側の方向へ流れ、先端工具により被穿孔材Bを穿孔することにより生じた粉塵であって距離センサ14と被穿孔材Bとの間に飛散している粉塵を、被穿孔材Bの方向へ向かって吹き流し、エア3は粉塵と共に被穿孔材Bに衝突する。
【0023】
ギヤハウジング60は樹脂成型されて構成されており、モータハウジング20の先端側に設けられている。図3に示すようにギヤハウジング60内には、第1中間シャフト61が、出力軸22を延ばすように同軸的に配置され、軸受63により回転可能に支承されている。第1中間シャフト61の後端は出力軸22と連結されている。第1中間シャフト61の先端には第4ギヤ61Aが設けられている。また、ギヤハウジング60内には、出力軸22と平行に第2中間シャフト72が、軸受72Bによってその軸心を中心に回転可能に支承されている。第2中間シャフト72の後端部には、第4ギヤ61Aと噛合する第5ギヤ71が同軸固定されている。第2中間シャフト72の先端側にはギヤ部72Aが設けられ、後述する第6ギヤ73と噛合している。
【0024】
ギヤハウジング60内であって第2中間シャフト72の上方の位置には、シリンダ74が設けられている。シリンダ74は第2中間シャフト72と平行に延びて回転可能に支承されている。第6ギヤ73はシリンダ74の外周に固定され、上述したギヤ部72Aとの噛合により、シリンダ74はその軸心を中心として回転可能である。シリンダ74の先端側には工具保持部15が設けられており、後述の先端工具2が着脱自在に取付けられる。
【0025】
第2中間シャフト72の中間部分には、バネによって後端側へ付勢されるクラッチ76がスプライン係合されており、クラッチ76は、ギヤハウジング60に設けられた図示せぬチェンジレバによってハンマドリル・モードとドリルモードとを切換え可能である。クラッチ76の電動モータ21側には、回転運動を往復運動に変換する運動変換部80が第2中間シャフト72に回転可能に外装されている。運動変換部80の腕部80Aは、第2中間シャフト72の回転により穿孔工具1の前後方向に往復動作可能に設けられている。
【0026】
シリンダ74内にはピストン82が設けられている。ピストン82は、第2中間シャフト72と平行な方向に往復運動可能且つシリンダ74内で摺動可能に装着されている。ピストン82内には打撃子83が内装されており、シリンダ74内であってピストン82と打撃子83の間には空気室84が画成される。打撃子83の空気室側の反対位置には、中間子85がシリンダ74内にピストン82の運動方向に摺動可能に支承されている。中間子85の打撃子側反対位置には、図示せぬ先端工具2が位置している。よって打撃子83は中間子85を介して先端工具2を打撃可能である。
【0027】
先端工具2はドリルビットであり、その先端部に図1に示すようにドリル2Aを有しており、回転及びその軸方向へ往復動することにより図示せぬ被穿孔材Bに対して穿孔する。先端工具2は、工具保持部15に対して着脱可能であり、交換可能である。
【0028】
次に、図5を参照しながら穿孔工具1の制御回路について説明する。電動モータ21はインナーロータ型で、後述のFET回路部91に接続されている。電動モータ21は、一対のN極およびS極を含む永久磁石(マグネット)を埋め込んで構成された回転子(マグネットロータ)21Aと、回転子21Aの回転位置を検出するために60°毎に配置された3つの回転位置検出素子(ホールIC)21a、21b、21cと、回転位置検出素子21a、21b、21cからの位置検出信号に基づいて電気角120°の電流の通電区間に制御される固定子21Bとから構成される。
【0029】
FET回路部91は、3相ブリッジ形式に接続された6個のFET(以下、「トランジスタ」という。)Q1〜Q6から構成される。ブリッジ接続された6個のトランジスタQ1〜Q6の各ゲートは制御信号出力回路92に接続されている。これによって、6個のトランジスタQ1〜Q6は、制御信号出力回路92から入力されたスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、FET回路部91に印加される電源の直流電圧を電動モータ21の固定子21Bへ供給する。
【0030】
制御部110は、制御信号出力回路92と、電流検出回路93と、印加電圧設定回路94と、回転方向設定回路95と、距離センサ14と、回転角度検出回路98と、回転子位置検出回路99と電気的に接続されている。これらの回路は回路基板26上に設けられている。制御部110は、図示されていないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するためのCPU、制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を含むマイコンによって構成される。電流検出回路93は電動モータ21に流れている電流を検出するための回路であり、検出電流は制御部110に入力される。
【0031】
印加電圧設定回路94は、トリガ13の押込み量に応答して電動モータ21の印加電圧、すなわちPWM信号のデューティ比を設定するための回路である。回転方向設定回路95は、電動モータ21の正逆切替レバー13A(図5)による正方向回転または逆方向回転の操作を検出して電動モータ21の回転方向を設定するための回路である。回転子位置検出回路99は、3つの回転位置検出素子21a、21b、21cの出力信号に基づいて回転子21Aと固定子21Bとの関係位置を検出するための回路である。回転角度検出回路98は、単位時間内にカウントされる回転子位置検出回路99からの検出信号の数に基づいて電動モータ21の回転角度を検出する回路である。
【0032】
制御信号出力回路92は、制御部110からの出力に基づいてトランジスタQ1〜Q6にPWM信号を供給する。PWM信号のパルス幅の制御によって各電機子巻線へ供給する電力を調整して設定した回転方向への電動モータ21の回転数を制御することができる。
【0033】
以上の構成の穿孔工具1の電動モータ21の駆動時には、電動モータ21の回転出力は第1中間シャフト61、第4ギヤ61A、及び第5ギヤ71を介して第2中間シャフト72に伝わる。第2中間シャフト72の回転は、ギヤ部72Aと第6ギヤ73との噛合によりシリンダ74に伝わり、先端工具2に回転力が伝えられる。クラッチ76をハンマドリル・モードに移動させると、クラッチ76が運動変換部80と結合し、第2中間シャフト72の回転駆動力が運動変換部80に伝わる。運動変換部80では回転駆動力がピストンピン81を介してピストン82の往復運動に変換される。ピストン82の往復運動により打撃子83とピストン82との間に画成された空気室84中の空気の圧力は上昇及び低下を繰り返し、打撃子83に打撃力を付与する。打撃子83が前進して中間子85の後端面に衝突し、中間子85を介して打撃力が図示せぬ先端工具2に伝達される。このようにしてハンマドリル・モードでは図示せぬ先端工具2に回転力と打撃力が同時に付与される。
【0034】
クラッチ76がドリルモードにあるときは、クラッチ76は第2中間シャフト72と運動変換部80との接続を断ち、第2中間シャフト72の回転駆動力のみがギヤ部72A、第6ギヤ73を介してシリンダ74に伝達される。よって、図示せぬ先端工具2には回転力のみが付与される。
【0035】
ハンマドリル・モード又はドリルモードにより被穿孔材Bに対して穿孔が行われているときには、被穿孔材Bの一部であって先端工具2により穿孔されている部分は先端工具の回転によって粉末状となり、粉塵となって舞い上がる。そして、粉塵は、距離センサ14と被穿孔材Bとの間において飛散する。
【0036】
このとき、電動モータ21の軸流ファン22Aの回転によりエア流路20aを流れエア流路20aの他端20cの開口から吹き出されたエア3は、先端工具により被穿孔材Bを穿孔することにより生じた粉塵であって距離センサ14と被穿孔材Bとの間に飛散している粉塵を、被穿孔材Bの方向へ向かって吹き流し、エア3は粉塵と共に被穿孔材Bに衝突する。このため、距離センサ14と被穿孔材Bとの間に大量の粉塵が飛散した状態となって距離センサ14と粉塵との間の距離を、距離センサ14と被穿孔材Bとの間であると誤って認識して検出してしまうことを防止することができる。このため、距離センサ14から被穿孔材Bまでの距離を正確に検出することができる。
【0037】
また、エア流路20aは、開口から仮想直線Xに平行な位置関係をなして延びる吹き出し方向延出流路部たる先端方向延出部20fを有するため、先端方向延出部20fにおいてエア3が流れることにより、開口から吹き出されるエア3の方向を仮想直線Xに沿った方向として、エア3を勢い良く流すことができる。
【0038】
また、開口をなすエア流路20aの一端20bに対する他端20cは、ハウジング内において軸流ファン22Aに対向し、エア流路20a内においてエア3が流れる方向に直交する断面で切ったエア流路20aの断面積は、エア流路20aの一端20bから他端20cに至るまで一定であるため、エア流路20aを流れるエア3に対して抵抗が生ずることを防ぐことができ、開口から離間して位置する被穿孔材Bの表面にまでエア3を到達させることができる。
【0039】
また、距離センサ14は赤外線センサからなるため、赤外線センサが用いられた穿孔工具1において被穿孔材Bに対する先端工具の穿孔深さを正確に検出することができる。
【0040】
次に穿孔工具1の効果を確認するための試験を行った。試験では、本実施の形態における穿孔工具1を本発明品とし、エア流路20aが形成されていない点のみにおいて構成が異なりこれ以外の構成は穿孔工具1と同一である穿孔工具を従来品とした。そして本発明品、従来品それぞれにより被穿孔材Bに対して穿孔を行い、距離センサ14によって距離センサ14と被穿孔材Bとの間の距離の測定を行い、結果を穿孔時間に対する被削材たる被穿孔材Bまでの距離として図6、図7のグラフに表した。試験に使用した本発明品、従来品の軸流ファン22Aの外径は48mm、軸流ファン22Aの回転数は22,000/min、本発明品のエア流路20aにおいてエアが流れる方向に直交する面で切った断面積は168mmである。
【0041】
本発明品で穿孔を行った場合には、図6のグラフに示すように、所望の穿孔深さである300mmに到達するまでに、穿孔時間が経過するにつけて被削材までの距離も徐々に小さくなっている。これに対して従来品では、図7のグラフにおいて○で囲まれた部分に示すように、穿孔時間が略7秒ぐらいのときに被削材までの距離が一時的に200mmに落込んでいる。これは、距離センサ14から、距離センサ14と被削材との間に飛散している粉塵までの距離を検出してしまったためである。これでは、正しく距離センサ14から被削材までの距離を測定することはできないことが分かる。
【0042】
本発明の穿孔工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、エア流路は本実施の形態の形状や寸法に限定されない。
【0043】
また、本実施の形態では穿孔工具1はロータリーハンマドリルであったが、ロータリーハンマドリルに限定されない。被穿孔材Bに対して穿孔する工具であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のハンマドリルは、被穿孔材に対して先端工具によって所望の深さまで穿孔する穿孔工具の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・穿孔工具 2・・・先端工具 10・・・ハンドル部 14・・・距離センサ 15・・・工具保持部 20・・・モータハウジング 20f・・・先端方向延出部 21・・・電動モータ 22・・・出力軸 22A・・・軸流ファン 20a・・・エア流路 60・・・ギヤハウジング 60A・・・ギヤハウジングの先端部 110・・・マイコン X・・・仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と後端部とを有し被穿孔材に対して穿孔する先端工具を該先端部に支承可能なハウジングと、
回転力を出力する出力軸を有し、該ハウジングに収容されたモータと、
該モータにより発生した回転力を該先端工具に伝達する回転伝達部と、
該ハウジングに設けられ該被穿孔材の表面までの距離を測定可能な距離センサと、を備え、
該モータの出力軸にはファンが該出力軸と一体回転可能に設けられ、
該ハウジングにはエア流路が形成され、該エア流路は、該ハウジングの外表面において該距離センサに隣接する位置において開口し、該エア流路に流入した該ファンからのエアを該開口から該ハウジング外部へ吹き出し可能であり、
該エア流路は、該開口から吹き出されるエアを、該距離センサと、該被穿孔材の一部であって該距離センサによって距離が測定される部分とを結ぶ仮想直線に沿って該被穿孔材に至るまで流すように構成されていることを特徴とする穿孔工具。
【請求項2】
該エア流路は、該開口から該仮想直線に平行な位置関係をなして延びる吹き出し方向延出流路部を有することを特徴とする請求項1記載の穿孔工具。
【請求項3】
該開口をなす該エア流路の一端に対する他端は、該ハウジング内において該ファンに対向し、該エア流路内においてエアが流れる方向に直交する断面で切った該エア流路の断面積は、該エア流路の一端から他端に至るまで一定であることを特徴とする請求項1記載の穿孔工具。
【請求項4】
該距離センサは赤外線センサからなることを特徴とする請求項1記載の穿孔工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171038(P2012−171038A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34199(P2011−34199)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】