説明

突然変異型抗CD22抗体および免疫複合体

組換え免疫毒素は、細菌または植物毒素に融合した抗体のFvドメインからなる融合タンパク質である。RFB4(Fv)-PE38は、B細胞およびB細胞悪性腫瘍に発現しているCD22を標的化する免疫毒素である。本発明は、RFB4と比較して、CD22抗原に結合する改良された能力を有する抗体および抗体断片を提供する。本発明の抗体および抗体断片により作製された免疫毒素は、CD22発現癌細胞に対する改良された細胞毒性を有する。これらの抗体をキメラ毒素分子内に組み入れた組成物は、このような癌の成長および増殖を阻害するための医薬品および方法において用いることができる。これに加えて、本発明は、単一アミノ酸突然変異を有する形のシュードモナス体外毒素A(「PE」)の細胞毒性を高める方法、ならびにこのような突然変異体PEの組成物、それらをコードする核酸、および突然変異体PEの使用のための方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年11月25日出願の米国仮特許出願第60/525,371号からの恩典および優先権を主張し、その内容は参照として組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
該当なし
【0003】
コンパクトディスクにより提出された配列表、表、またはコンピュータプログラムリスト付録の参照
該当なし
【0004】
発明の背景
血液悪性腫瘍は大きな公衆衛生の問題である。米国では、2000年には、50,000例を超える非ホジキンリンパ腫および30,000例を超える白血病が新たに発生したと推定されており(Greenlee, R. T. et al., CA Cancer J. Clin., 50:7-33 (2000))、またこれら疾患により45,000人以上が死亡したと予想されている。それ以上の患者が、慢性疾患に関係した病的状態を抱えながら生活している。残念なことに通常の治療法は、高いパーセンテージの患者に長期の完全寛解を誘導できない。
【0005】
過去数年間、これら悪性腫瘍を治療する代替治療法として免疫毒素が開発されている。免疫毒素は、元来は、植物または細菌の毒素に抗体を化学的に結合させて作られる。抗体が標的細胞に発現している抗原に結合すると、毒素が内部に移行してタンパク質合成を停止し、アポトーシスを誘導して細胞を殺す(Brinkmann, U., Mol. Med. Today, 2:439-446 (1996))。
【0006】
血液悪性腫瘍は、腫瘍細胞への到達が容易であること、また標的抗原が強く発現していることから、免疫毒素治療にとって有望な標的である(Kreitman, R. J. and Pastan, I., Semin. Cancer Biol., 6:297-306 (1995))。これら抗原の一つはCD25である。CD25を標的とする免疫毒素LMB-2(抗Tac(Fv)-PE38)の臨床試験は、この薬物がよく許容されること、また実質的な抗腫瘍活性を有することを示した(Kreitman, R.J. et al., Blood, 94:3340-3348 (1999); Kreitman, R.J. et al., J. Clin. Oncol., 18:16222-1636 (2000))。ヘアリーセル白血病患者一例で完全な反応が観察され、ヘアリーセル白血病、慢性リンパ細胞白血病、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病および成人T細胞白血病の患者で部分反応が見られた。
【0007】
免疫毒素の標的として用いられている別の抗原は、B細胞リンパ腫および白血病の60〜70%に発現している系列制限B細胞抗原のCD22である。CD22は、B細胞発生の初期段階には、細胞表面に存在しておらず、また幹細胞では発現していない(Tedder, T. F. et al., Annu. Rev. Immunol., 5:481-504 (1997))。脱糖鎖化したリシンAに結合された抗CD22抗体、RFB4、またはそのFab断片を含有する免疫毒素を用いて臨床試験が行われた。これらの試験では、実質的な臨床反応が観察されている;しかしながら重症の一部の例では、致死的である血管漏洩症候群がその投与量を制限している(Sausville, E. A. et al., Blood, 85:3457-3465 (1995); Amlot, P. L. et al., Blood 82:2624-2633 (1993); Vitetta, E. S. et al., Cancer Res., 51:4052-4058 (1991))。
【0008】
別の方法として、RFB4抗体を用いて、単鎖型のFv断片を38kDaの断端型のシュードモナス(Pseudomonas)体外毒素(exotoxin)A(PE38)に融合した組換え免疫毒素が作製されている。PE38は、PEの転移ドメインおよびADPリボシル化ドメインを含有しているが、細胞結合部分は含んでいない(Hwang, J. et al., Cell, 48:129-136 (1987))。RFB4(Fv)-PE38はCD22陽性細胞に対し細胞毒性である(Mansfield, E. et al., Biochem. Soc. Trans., 25:709-714 (1997))。単鎖型Fv免疫毒素を安定化し、また臨床開発にとってより適したものにするために、VHおよびVLのフレームワーク領域内にシステイン残基が組み込まれ(Mansfield, E. et al., Blood, 90:2020-2026 (1997))、分子RFB4(dsFv)-PE38が作られた。
【0009】
RFB4(dsFv)-PE38は、患者由来の白血病細胞を殺し、リンパ腫を異種移植されたマウスに完全寛解を誘導することができる(Kreitman, R. J. et al., Clin. Cancer Res., 6:1476-1487 (2000); Kreitman, R. J. et al., Int. J. Cancer, 81:148-155 (1999))。RFB4(dsFv)-PE38(BL22)は、National Cancer Instituteでの第I相臨床試験において、血液悪性腫瘍患者を対象に評価を受けた。プリン類似体耐性ヘアリーセル白血病の16例の患者がBL22で処置を受け、11例(86%)が完全寛解を得た。
【0010】
これらの結果は、BL22がプリン類似体耐性HCL患者に高い完全寛解率を引き出すことができ、そして免疫毒素が、進行した悪性腫瘍の患者に臨床的便益を提示できる初めての薬物であることを示している(Kreitman, R. J., et al., N Engl J Med, 345(4):241-7 (2001))。
【0011】
HA22は、最近開発されたBL22の改良型である。この免疫毒素を産生するために、抗体RFB4の結合領域に突然変異を誘導し、抗体ファージディスプレイを用いて重鎖CDR3内の突然変異によってCD22により良く結合する変異体ファージを単離した。HA22では、抗体の可変領域重鎖(「VH」)のCDR3内の残基SSYはTHWに突然変異していた。親抗体であるRFB4に比べると、HA22は様々なCD22陽性細胞株に対し5〜10倍高い細胞毒性活性を有しており、またCLLおよびHCL患者由来の細胞に対しては最大50倍、より細胞毒性である(Salvatore, G., et al., Clin Cancer Res, 8(4):995-1002 (2002));共願の第PCT/US02/30316号、国際公開公報第WO 03/027135号も参照されたい)。
【0012】
BL22は、大量にCD22を発現しているHCLのような悪性腫瘍によく効くと考えられている。しかしながら、細胞が少量のCD22しか発現していない慢性リンパ細胞白血病(CLL)では、活性は極めて低いことが示されている。上記のように、HA22をベースとした免疫毒素は、BL22よりもCLLの患者の細胞に対し、より強く細胞毒性である。しかしながら、CLL細胞のCD22の密度が低い場合は、HA22に対するものよりもCD22に対して、より高い親和性を有する抗体を開発し、CLL細胞への標的性を改良することが望ましいだろう。
【0013】
残念なことに、結合親和性に影響する要素は多面的であり、親和性が改良された突然変異scFvを獲得することは容易ではない。抗体-抗原結晶構造は、結合にどの残基が関係するかを示すことができるが、大部分の抗体について原子解像構造データは得られていない。さらにはこのようなデータが入手できた場合でも、どの残基、および、どの突然変異が抗原結合活性の高い抗体を生ずるか予測することは、一般的には不可能である。
【0014】
たとえ免疫毒素が標的細胞の表面に強固に結合したとしても、標的細胞の死は約束されてはいない。一般的に用いられる毒素(例えば、ジフテリアトキシン、ゲロニン(gelonin)、リシン、およびPE)は、リボソームのレベルで作用し、タンパク質合成を不活性化する。それゆえに、細胞死を起こすためには、毒素をリボソームまで正しく導かなければならない。これには、特異的細胞表面受容体を標的とする免疫毒素の場合、適当な細胞内小胞への受容体介在エンドサイトーシスと、それに続く毒素の小胞膜を通過した細胞質への移動が関係している。細胞内への誘導が不十分な場合、例えば免疫毒素がリソゾームへ移動すると、標的化毒素の利用度は大きく低下する(Thrush, G.R., et al., Annu Rev Immunol, 14:49-71 (1996))。
【0015】
したがって、CD22に対するBL22またはHA22のような抗体の親和性を上げることに加えて、別の方法でCLL細胞に対する免疫毒素の細胞毒性を高めれば、毒素部分の細胞毒性を上げることになるだろう。上記の如くBL22の臨床試験は、非特異的毒性を下げるために先端部を切った形のシュードモナス体外毒素A(「PE」)を毒素部分として用いており、臨床試験では、PEは別の標的化薬物と一緒に用いられた。治療薬でのPEの有用性を考慮すると、PEの毒性をさらに改良することは有益であろう。しかし、PEがその毒性を発揮する様態は複雑であり、その毒性を改良することを難しくしている。
【0016】
PEの結晶学的構造(Allured, V.S., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 83(5):1320-4 (1986))および多くの機能研究に基づいて、BL22は下記の段階に従って血中の標的細胞を殺すと考えられている。まず血中においてカルボキシ末端のリジン残基が取り除かれる(Hessler, J.L., et al., Biochemistry, 36(47):14577-82 (1997))。次に、免疫毒素のFv部分が標的細胞の表面にあるCD22に結合し、分子は細胞内区画内に移行し、そこでプロテアーゼであるフリンが毒素をPEのアミノ酸279位と280位の間で切断する(Chiron, M.F., et al., J Biol Chem, 269(27):18167-76 (1994); Ogata, M., et al., J Biol Chem, 265(33):20678-85 (1990))。続いて、位置265位および287位のシステインを結合しているジスルフィド結合が還元され、2つの断片になる。次に、カルボキシル末端のREDL配列がKDELリサイクリング受容体に結合し、ドメイン2の一部とドメイン3の全てを含む断片が網状ゴルジ体を経由して小胞体(ER)に運ばれる(Kreitman, R.J., et al., Semin Cancer Biol, 6(5):297-306 (1995))。ひとたびそこに運ばれると、アミノ酸280位〜313位は、おそらくはERに前から存在している小孔を利用して、毒素の細胞質ゾルへの移動を若干促進する(Theuer, C.P., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 90(16):7774-8 (1993); Theuer, C., et al., Biochemistry, 33(19):5894-900 (1994))。細胞質ゾルでは、PEのドメインIII内に位置するADPリボシル化活性が伸長因子2を触媒的に不活性化し、タンパク質合成を阻害して細胞死を招く。
【0017】
本発明は、これらの困難な問題のいくつかについて、解決法を提供する。
【発明の開示】
【0018】
発明の概要
第一群の態様では、本発明はCD22に特異的に結合する、改良された抗体を提供する。抗体は、アミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって、順番にCDR1、2および3と名付けられた3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、このとき該CDR1はSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、抗体VLのCDR1は、SEQ ID NO:7の配列を有する。さらに、いくつかの態様では、抗体VLのCDR2は、SEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有する。
【0019】
抗体は、アミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含むことができ、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、またCDR3はSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、CDR3はSEQ ID NO:16の配列を有する。いくつかの態様では、VH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。抗体は、例えばscFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。
【0020】
別の群の態様では、本発明は、(a)CD22に特異的に結合する抗体であって、アミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近い相補性決定領域(CDR)に向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変軽鎖(VL)を有し、このときCDR1はSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する抗体;および(b)治療部分または検出可能な標識、を含むキメラ分子を提供する。治療部分または検出可能な標識は、抗体に結合または融合できる。いくつかの態様では、キメラ分子のCDR2は、SEQ ID NO:11の配列を有し、CDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。キメラ分子の抗体部分は、アミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近い相補性決定領域(CDR)に向かって順番に、CDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変重鎖(VH)をさらに含むことができ、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、またCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、またVH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。治療部分は、例えば、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームでよい。いくつかの態様では、治療部分は、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、あるいはボツリヌス菌毒素A〜Fからなる群より選択される細胞毒素である。いくつかの態様では、PEは、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される。いくつかの態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンの置換基を有している。好ましい態様では、位置490位の置換基はアラニンである。
【0021】
態様のさらに別の群では、本発明は、前節に記載のいずれかのキメラ分子、および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0022】
態様のさらに別の群では、本発明は、CD22に特異的に結合する抗体であって、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、CDRはアミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられており、このときCDR1は、SEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する抗CD22抗体の、CD22+癌細胞の増殖を阻害する医薬品の製造のための使用を提供する。いくつかの態様では、CDR2はSEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。抗体は、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含むことができ、CDRはアミノ酸末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、ここでCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、かつCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、該VH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。抗体は、治療部分または検出可能な標識に結合できる。抗体を治療部分に結合する場合、治療部分は、例えば、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームでよい。いくつかの態様では、治療部分は細胞毒素である。いくつかの態様では、細胞毒素は、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、あるいはボツリヌス菌毒素A〜Fからなる群より選択される。細胞毒素がPEの場合、PEは、例えばPE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。いくつかの好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有している。好ましい態様では、アラニンが位置490位のアルギニンから置換されている。
【0023】
態様のさらに別の群では、本発明は、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)をコードし、CDRはアミノ酸に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられ、この時CDR1は、SEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択された配列を有する、単離された核酸を提供する。いくつかの態様では、CDR2はSEQ ID NO:11の配列を有し、そしてCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。核酸は、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらにコードすることができ、CDRはアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、そしてCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、また該コードされた抗体のVH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。いくつかの態様では、核酸は、scFV、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される抗体をコードする。いくつかの態様では、核酸は、治療部分または検出可能な標識であるポリペプチドをさらにコードする。核酸が治療部分をコードする場合、成分は、例えば、薬物または細胞毒素でよい。それが細胞毒素の場合、それは、例えばシュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片または突然変異体(「PE」)でよい。PEは、例えば、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。いくつかの好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有している。好ましい態様では、アラニンが位置490位のアルギニンから置換されている。
【0024】
よりさらなる態様では、本発明は前節に記載の単離された核酸の一つを含む、好ましくはプロモータに作動可能に連結している発現ベクターを提供する。
【0025】
態様の別の群では、本発明は、CD22+癌細胞をキメラ分子と接触させることにより該細胞の増殖を阻害する方法であって、該キメラ分子が以下を含む、方法を提供する:(a)CD22に結合し、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、CDRはアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、このときCDR1は、SEQ ID NO:7、8、9および10よりなる群から選ばれる配列を有する抗体、ならびに、(b)該細胞の増殖を阻害する治療部分。いくつかの態様では、該VLのCDR2は、SEQ ID NO:11の配列を有し、また該VLのCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。いくつかの態様では、抗体は、3つの相補性決定領域(CDR)を含むVH鎖を含み、CDRは、アミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、かつCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの方法では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、かつ該VH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。治療部分は、例えば、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素が付加されたリポソームでよい。治療部分が細胞毒素の場合、細胞毒素は、例えば、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、あるいはボツリヌス菌毒素A〜Fでよい。PEは、例えば、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRでよい。細胞毒素がPEの場合、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有してもよい。好ましい態様では、アラニンがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置のアルギニンから置換されている。
【0026】
態様のよりさらに別の群では、本発明は、生物サンプル中のCD22+癌細胞の存在を検出するための方法を提供する。方法は以下の段階を含み、標識の存在を検出することがサンプル中にCD22+癌細胞が存在することを示す:(a)生物サンプルの細胞を以下を含むキメラ分子と接触させる段階:(i)CD22に特異的に結合し、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、CDRはアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、ここでCDR1は、SEQ ID NO:7、8、9および10よりなる群から選ばれる配列を有し、下記(ii)に結合または融合している、抗体、(ii)検出可能な標識;ならびに、(b)該標識の有無を検出する段階。いくつかの態様では、該抗体の該VLのCDR2はSEQ ID NO:11の配列を有し、かつ該抗体のVLのCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。いくつかの態様では、抗体は、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含み、CDRはアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられており、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、かつCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。
【0027】
態様のさらに別の群では、本発明はキットを提供する。キットは、(a)容器、ならびに(b)以下を含むキメラ分子を含む:(i)3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、このときCDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択された配列を有し、下記(ii)に結合もしくは融合している、抗CD22抗体、および(ii)検出可能な標識または治療部分。いくつかの態様では、抗体のVLのCDR2は、SEQ ID NO:11の配列を有し、かつ抗体のVLのCDR3はSEQ ID NO:12の配列を有する。いくつかの態様では、抗体は、アミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番に、それぞれCDR1、2および3と名付けられた3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含み、このときCDR1はSEQ ID NO:13の配列を有し、CDR2はSEQ ID NO:15の配列を有し、かつCDR3は、SEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する。いくつかの態様では、VL鎖はSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖はSEQ ID NO:21の配列を有する。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。治療部分は、例えば、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素が付加されたリポソームでよい。
【0028】
態様のさらに別の群では、本発明は、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体を提供するが、このときPEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する。PEは、例えばPE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。いくつかの好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する。
【0029】
本発明は、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)と結合または融合したターゲティング部分を含むキメラ分子であって、このときPEがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有するキメラ分子をさらに提供する。PEは、例えば、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。いくつかの好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する。いくつかの態様では、ターゲティング部分は抗体である。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。
【0030】
本発明は、前節に記載の任意のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物をさらに提供する。
【0031】
態様のさらに別の群では、本発明は、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)をコードする単離された核酸であって、このときPEがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する単離された核酸を提供する。PEは、例えば、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する。核酸は、さらにターゲティング部分をコードできる。ターゲティング部分は抗体であり得る。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。
【0032】
本発明はさらに、プロモータに作動可能に連結している、前節に記載の任意の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0033】
よりさらなる態様では、本発明は、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)に結合または融合したターゲティング部分の使用であって、このとき該PEがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有し、該ターゲティング部分により標的化される細胞の増殖を阻害する医薬品の製造のための使用を提供する。PEは、例えば、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EまたはPE38QQRでよい。いくつかの好ましい態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する。いくつかの好ましい形態では、ターゲティング部分は抗体である。抗体は、例えば、scFv、dsFV、FabまたはF(ab')2でよい。
【0034】
よりさらに別の態様では、本発明は、標的分子を保持する細胞の増殖を阻害する方法を提供する。方法は、細胞をキメラ分子と接触させる段階を含む方法であって、キメラ分子は、a)標的分子に結合するターゲティング部分、および(b)シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)を含み、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有し、このとき細胞をキメラ分子と接触させる段階が該細胞の増殖を阻害する。いくつかの態様では、標的分子はサイトカイン受容体であり、かつターゲティング部分はその受容体に結合するサイトカインである。別の態様では、標的分子は抗原であり、かつターゲティング分子はその抗原に結合する抗体である。これら態様のいくつかでは、抗原は腫瘍関連抗原である。いくつかの態様では、PEは、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置に、アルギニンに代わってアラニンを有する。いくつかの態様では、標的分子はIL-13受容体であり、かつターゲティング分子はIL-13、IL-13受容体に結合する能力を保持する突然変異型IL-13、順序入替え型のIL-13、またはIL-13受容体の鎖に特異的に結合する抗体である。
【0035】
発明の詳細な説明

A. 高親和性抗CD22抗体の発見
本発明者らの研究室のこれまでの研究から、CD22に対し極めて高い親和性を有する形の抗CD22抗体RFB4が発見された。これらの研究では、RFB4抗体は、RFB4 VH CDR3(H-CDR3)内の残基に突然変異を誘導することによって改良が加えられた。Salvatore, G.ら、Clin Cancer Res, 8(4):995-1002 (2002)および共願の第PCT/US02/30316号、国際公開公報第03/027135号を参照。RFB4のこれら高親和性突然変異体は、H-CDR3の位置100、100Aおよび100Bにあるネイティブな配列SSYを、次の4つの配列のいずれか一つに突然変異させることで作られた:THW、YNW、TTWおよびSTY。最も親和性の高い突然変異体は、SSYからTHWへ変異したものである。免疫毒素に組み入れたとき、SSYから置換したTHWを有するRFB4 dsFvは、CD22保持癌慢性リンパ性白血病の細胞に対する細胞毒性活性を、ネイティブなSSY配列を有するRFB4 dsFvを用いて作られた同一免疫毒素に比べ50倍上昇させた。参照に便利なように、以下、用語「HA22」を用いてH-CDR3の“SSY”が“THW”に突然変異しているRFB4配列を表すが、時にはPE38細胞毒素に融合したdsFv型を特に表すこともある。どちらを意味しようとしているかは、文脈より明らかになるだろう。
【0036】
驚くべきことに、今回、高親和性抗体HA22がさらに改良でき、RFB4と比較した場合だけでなく、HA22と比較した場合でさえ、CD22抗原を保持する癌細胞に対し高い結合親和性を有する抗体および抗体断片が提供できることが発見された。さらに、新規の、より親和性の高い変種を用いて作られた免疫毒素は、HA22を用いて作られた免疫毒素よりも、より高い細胞毒性を有していた。したがって一つの局面では、本発明は、CD22を発現している癌細胞を検出するため、および攻撃するための重要で新規な試薬および作用物質を提供する。
【0037】
新規突然変異体は、「Kabat and Wu」抗体残基ナンバリングシステムに従ってナンバリングされた位置としての、RFB4のVL鎖のCDR1(「L-CDR1」)の位置30位および31位にある残基のアミノ酸配列が、野生型配列のセリン-アスパラギン(一文字コード「SN」)から、以下に変化している。
【0038】
(a)ヒスチジン-グリシン(「HG」、このL-CDR1突然変異体を含有するRFB4軽鎖と、「B5」と名付けられたTHW H-CDR3突然変異体を含有するRFB4重鎖とを組み合わせることによって作られた抗体)。
【0039】
(b)グリシン-アルギニン(「GR」、このL-CDR1突然変異体を含有するRFB4軽鎖と、「E6」と名付けられたTHW H-CDR3突然変異体を含有するRFB4重鎖とを組み合わせることによって作られた抗体)。
【0040】
(c)アルギニン-グリシン(「RG」、このL-CDR1突然変異体を含有するRFB4軽鎖と、「B8」と名付けられたTHW H-CDR3突然変異体を含有するRFB4重鎖とを組み合わせることによって作られた抗体)。
【0041】
(d)アラニン-アルギニン(「AR」、このL-CDR1突然変異体を含有するRFB4軽鎖と、「D8」と名付けられたTHW H-CDR3突然変異体を含有するRFB4重鎖とを組み合わせることによって作られた抗体)。
【0042】
RFB4 VL鎖のアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)、および鎖内の残基に関するKabatおよびWuによるナンバリングを図2に示す(各残基のKabat and Wu番号は、2つある番号縦列の2番目の列に記載されている)。
【0043】
新規突然変異体は、インビトロの親和性成熟試験の中で発見された。注目すべきことに、いくつかの最高の結合突然変異は、各コドンの二重または、時に三重突然変異により生じたが、これはB細胞の体細胞超突然変異でもめったに起こらない。上記のように、これら4つの突然変異体はそれぞれ、CD22に対し親抗体であるHA22に比べ高い親和性を有している。それらの相対親和性の順番は、低い親和性から高い親和性に向かって、B8、D8およびE6(ほぼ等しい)、およびB5である。
【0044】
驚くべきことに、RFB4の重鎖CDR3のTHW突然変異を、RFB4の軽鎖CDR1に新たに発見された突然変異と免疫毒素の中で組み合わせると、免疫毒素の細胞毒性は、HA22をベースとした免疫毒素の毒性のさらに2倍になった。下記実施例1の表5に示すように、これに対し、HA22重鎖のCDR1をインビトロで親和性成熟させて作った突然変異体は、得られた変異体から作った免疫毒素の毒性に何らの影響も与えず、全てのCDRが、抗体の親和性または抗体から作られた免疫毒素の細胞毒性を改良する形に突然変異できるわけではないことを証明した。
【0045】
上記L-CDR1突然変異体は、RFB4軽鎖のネイティブな配列(SEQ ID NO:4)へと置換でき、ネイティブな配列(SEQ ID NO:2)のRFB4重鎖と組み合わせて、親抗体のRFB4よりもCD22に対し高い親和性を持つ抗体を作り出すことができる。好ましくは、上記のL-CDR1突然変異体を、上記4つのH-CDR3突然変異体の一つと組み合わせてRFB4軽鎖の中で使用するが、このときH-CDR3の位置100、100Aおよび100Bのネイティブな配列SSYは、次の4つの配列の一つに突然変異する:THW、YNW、TTWおよびSTY。より好ましくは、上記L-CDR1突然変異体は、RFB4軽鎖の中で、H-CDR3の位置100、100Aおよび100Bのネイティブな配列SSYがTHWに突然変異しているRFB4重鎖と組み合わせて用いられる。
【0046】
当業者は、抗体の特異性および親和性を担うのが相補性決定領域(「CDR」)であり、一方フレームワーク領域は三次元の形状および分子の配置により広く関係するが、抗体の特異性および親和性にはそれほど影響を及ぼさないことを認めるだろう。当業者はさらに、例えば、抗原の結合または特異性に重大な影響を及ぼすことなしに、フレームワーク領域(可変軽鎖および重鎖それぞれに3つ存在する)に保存的な置換を行えることも承知している。
【0047】
それゆえに、RFB4抗体に、CD22への抗体結合能に大きな影響を及ぼすことなしに、フレームワーク領域内の変化のような変化を加えられることが認識されるだろう。このように、本発明のL-CDR1突然変異体の一つを含む抗体は容易に作ることができるが、それは本明細書に記載の例示的抗体の配列を寸分違わずに有するものではない。したがって、本発明の抗CD22抗体は、CD22と結合し、かつ、本明細書に記載の他のCDRまたは軽鎖の完全な配列を有するか否かに関わらず、本発明のL-CDR1突然変異体の一つをそれら軽鎖のCDR1として含む抗体を包含する。
【0048】
抗体のフレームワーク領域(非CDR領域)を操作して、マウスのようなヒト以外の動物の抗体の特定位置にある残基を、ヒト抗体の同一位置に一般的に存在する残基と交換することができる。これらの方法で作られた抗体は「ヒト化抗体」と呼ばれ、かつそれらが副作用を誘導するリスクが低く、かつ一般的に血中に長く留まることができることから好ましい。抗体をヒト化する方法は、当技術分野公知であり、例えば、米国特許第6,180,377号;第6,407,213号;第5,693,762号;第5,585,089号;および第5,530,101号に記載されている。さらにまた、可変領域のCDRは抗体の特異性を決定することから、上記CDRまたはFvを選択した抗体の中に移植し、または作製し、抗体にCD22特異性を付与することができる。例えば、マウスのようなヒト以外の動物の抗体から、相補性決定領域(CDR)、即ち抗原結合ループを、三次元構造が既知であるヒトの抗体のフレームワークに移植することができる(例えば、国際公開公報第98/45322号;国際公開公報第87/02671号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第0173494号;Jones, et al. Nature 321:522 (1986); Verhoeyen, et al., Science 239:1534 (1988), Riechmann, et al. Nature 332:323 (1988); およびWinter & Milstein, Nature 349:293 (1991)を参照されたい)。
【0049】
好ましい態様では、可変領域の軽鎖と重鎖は、フレームワーク領域内に組み込まれたシステイン間のジスルフィド結合によって結合し、ジスルフィド安定化Fvすなわち「dsFv」を形作る。dsFvの形成は、当技術分野で公知であり、かつ、例えば、Pastan、米国特許第6,558,672に開示されており、それは鎖間のジスルフィド結合の形成を容易にするためにフレームワーク領域内にシステインを組み込むことができる一連の位置を説明している。特に好ましい形態では、システインは、フレームワーク領域内に、RFB4 dsFvを創るのに用いられる位置で組み込まれる。背景技術の項で述べたように、ネイティブなRFB4配列から作製したdsFvであるRFB4 dsFVは、臨床試験に用いられ、CD22を発現している癌の細胞に細胞毒素を送り込むことに成功している。RFB4 dsFvは、VL鎖の位置100位(図2に示すKabatのナンバリングでの番号)にあるグリシンをシステインに置き換え、かつVH鎖の位置44位(図3に示すKabatナンバリングでの番号)のアルギニンをシステインに置き換えて作られる。RFB4 dsFvを構築するための材料と方法は、例えば、Kreitmanら、Clin. Cancer Res 6:1476-1487 (2000)およびKreitmanら、Intl J Cancer 81:148-155 (1999)に記載されている。
【0050】
本発明の突然変異型のRFB4のdsFvの生成にも、これらと同じ方法を用いることができる。一般的には、下記実施例に記載するように、大腸菌のような原核生物宿主細胞で、別々のプラスミドから二本の鎖を発現させ、結合させてから、封入体よりタンパク質を精製する。
【0051】
本発明の提供する抗体および抗体断片の持つ改良された親和性は、キメラ免疫複合体に組み込むことができ、キメラ免疫複合体の、CD22抗原を保持するB細胞を標的にする能力を高めることができる。免疫複合体は、例えば、放射性同位元素、蛍光成分またはレポーター酵素のような検出可能な標識を保持できる。これら標識された免疫複合体は、例えば、インビトロアッセイに用いて、生物サンプル中のCD22発現細胞の存在を検出できる。一般的には、生物サンプルは血液サンプルであるか、または血液サンプル由来のリンパ細胞を含むだろう。
【0052】
別のインビトロ使用の設定では、免疫複合体は、検出可能な標識よりもむしろ細胞毒素を保持する。このような免疫毒素は、血液サンプルもしくは患者由来のリンパ細胞培養体の除去に用いることができる。除去されたサンプルまたは培養体は、次に患者に再投与して、機能する白血球集団を追加免疫することができる。
【0053】
インビボ使用では、本発明の抗体または抗体断片を用いて作られた免疫毒素は、CD22抗原を保持する癌細胞の増大および増殖を阻害するのに用いることができる。背景技術の項で述べたように、親抗体であるRFB4を用いて作られた免疫毒素の臨床試験では、例示的なCD22発現癌ヘアリーセル白血病の患者において、患者の86%に完全寛解をもたらした。本発明の抗体および抗体断片が、親のRFB4およびHA22抗体より親和性が高く、またそれを用い得られた免疫毒素の細胞毒性が高いということは、より少量の免疫毒素を投与して、副作用の機会を減らしながら同一の治療効果を得られることを意味している。
【0054】
好ましい態様では、抗体は、scFVまたはdsFVである。scFVの構築体から産生された組換え免疫毒素の多くは、IgG-毒素化学的結合体の三分の一の大きさであり、また組成は均一である。scFvからIgG分子の定常部分が除かれたことで、霊長類を含む動物に注射した後の免疫毒素のクリアランスはより早くなり、また結合体の大きさが小さくなったことで、固形癌への薬物の浸透性が向上する。同時にこれらの特性は、免疫毒素が標的外の組織および抗原を極めて低レベルで発現している組織と相互作用する時間(IT)を短くすることによって、毒性成分に関係する副作用を小さくする。抗CD-22抗体からのジスルフィド安定化Fv(dsFv)の作製は、上記、およびFitzGeraldらの共願、国際公開公報第WO98/41641号に論じられており、これは参照として本明細書に組み込まれる。
【0055】
しかしながらこれらの便益は、IgGをscFvに転換した際に起こる抗原結合親和性の消失によって、若干相殺される(Reiter et al., Nature Biotechnol. 14:239-1245 (1996))。親和性を上げることがscFvの選択的な腫瘍への送達を向上することが示されており(Adams et al., Cancer Res. 58:485-490 (1998))、また腫瘍の画像化および処置でのそれらの有用性を高めるだろう。それゆえに、毒素およびその他治療薬のような作用分子を、それらが目的とする標的へ送達することについてそれら作用物質の効率を高めるために、scFvおよびその他ターゲティング部分(免疫複合体のdsFv、FabおよびF(ab')2)の親和性を上げることが望まれる。それゆえに、本発明の抗体の改良された親和性は、毒素、薬物、およびその他治療薬のCD22発現癌細胞への送達における重要な進歩である。
【0056】
B. より細胞毒性の高い形のシュードモナス体外毒素Aの発見
約15年間、シュードモナス体外毒素A(「PE」)は、免疫毒素のようなキメラ分子の毒性部分として研究されてきた。その研究は、細胞毒性活性を保持しながら、分子の非特異的毒性を低下または排除した、複数の突然変異型PEの開発として具現化されている。これら突然変異体の大部分は、端部が切断されており、これにより腫瘍浸透性が高くなっている。これら突然変異体のいくつかは、カルボキシル末端残基の修飾、またはプロテアーゼのフリンによる残基279位と280位の間の切断の必要条件の排除といった修飾も受けており、これが細胞毒性または活性を高くしている。
【0057】
驚くべきことに、今回、PEの毒性が分子中の単一アミノ酸の置換によって倍増できることが発見された。突然変異は、当技術分野で既に開発済みの、様々な形の修飾PE(例えば、PE40、PE38、PE37、PE35、PE4E、PE38QQRおよびPE38KDEL)に容易に組み込むことができ、それらの効力および活性を上げることができる。このことによって、所望の臨床結果を得るのに必要とされる、PEをベースとする免疫毒素の投与量を減らすことが可能となり、これが望ましくない副作用の可能性を下げるだろう。逆に、同一量のPEをベースとする免疫毒素を投与できるが、その時の効果はより強力である。したがって、本発明は、現在臨床試験中のRFB4 dsFv-PE構築体および上記のRFB4の各種突然変異体を用いて作られた構築体のような、PEをベースとする免疫複合体の効力を上げる、重要な新規手段を提供する。
【0058】
本発明の改良PEは、PE分子の位置490位にアルギニン(R)の突然変異を含む(便宜上、PEおよびその変異体での位置は、ネイティブなPE分子の配列を参考に記載する。当技術分野では、ネイティブなPEの613アミノ酸配列が周知であり、また、例えば米国特許第5,602,095号のSEQ ID NO:1に記載されている)。Rは、ヒドロキシルを含まない、脂肪族側鎖を有するアミノ酸に突然変異させられる。したがって、Rは、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)またはイソロイシン(I)に突然変異できる。好ましい態様では、置換基はG、AまたはIである。アラニンが最も好ましい。
【0059】
HA22免疫毒素と、R490A突然変異体を用いて作られた同様の免疫毒素(「HA22 R490A」)との比較は、HA22 R490A免疫毒素がHA22免疫毒素の標的細胞に対し、2〜3倍の細胞毒性を有していることを示した。実施例3を参照されたい。これに加えて、CD22発現ヒト腫瘍の異種移植体を保持した動物に対するHA22 R490AとHA22の効果を比較した。HA22 R490Aで処理した動物では、R490A突然変異体を用いずに作製した同一の免疫毒素で同一に処理された動物に比べ腫瘍の大きさは顕著に縮小した。実施例4を参照されたい。
【0060】
細胞毒性が変化したことは、これまでに作製された同一位置に置換基を含む突然変異体が、血中での分子半減期を変えるものの細胞毒性を変えることはなかったことを考えると、驚くべきことである。Brinkmannら、Proc Natl Acad Sci, USA 89:3065-3069 (1992)を参照されたい。本発明のPE突然変異体は、位置490位に突然変異を含まない同様のPE構築体に比べ、若干短い血中半減期を示す。R490A突然変異体を用いた免疫毒素で処理した動物では、腫瘍の大きさが、R490A突然変異体を用いずに作られた、同量の、同一の免疫毒素で処理された動物に比べて有意に縮小したことを考慮すれば、PE分子の細胞毒性の増加が、半減期の僅かな短縮よりも価値あることは明らかである。
【0061】
HA22に見られた結果がPEをベースとする免疫毒素に一般的に当てはまることを確認すべく研究を行った。メソテリン(Mesothelin)は膵臓癌および卵巣癌、そして中皮腫に強く発現している抗原である。SS1は、国際公開公報第WO 00/73346号として公開された、共願の国際出願第PCT/US00/14829号に記載されているように、メソテリンに対し高い親和性を持つ抗体である。SS1Pは、メソテリンに結合してメソテリン発現細胞を殺すSS1-PE免疫毒素である。実施例5に報告するように、R490A突然変異体を用いて作製されたSS1Pは、メソテリン発現細胞株に対する細胞毒性が、SS1Pそのものより2倍高かった。
【0062】
したがって、本明細書に開示されるようなR490の突然変異を用いることで、PEおよびその誘導体を毒性成分として用いるキメラ分子に高い細胞毒性を付与することができる。当業者は、様々なタイプの分子が、医療実施者が殺したい、または阻害したいと望むターゲティング細胞のベースになり得ることを承知している。上記考察から明らかなように、抗体は、ターゲティング作用物質の特に好ましいタイプの一つである。本発明のPEに結合された抗体のキメラ分子は、腫瘍関連抗原を保持する癌細胞の増殖を阻害することに関し、特に有用である。多数の腫瘍関連抗原が当技術分野で公知であり、例えば、メラノーマ抗原MART-1、gp100およびMAGE-1、結腸癌抗原「CEA」(癌胚抗原)、乳癌抗原HER-2、肺癌抗原L6(Kao et al., Clin Cancer Res. 9(7):2807-16 (2003))、卵巣癌抗原CA125、そして当然メソテリンも挙げられる。当技術分野で周知のように、標的としては、細胞表面上で利用できる状態にある抗原が好ましく、これはそれらへキメラ分子が結合することで細胞内へのPEの侵入が可能となり、細胞死を起こすことができるからである。
【0063】
別の好ましい態様では、キメラ分子のターゲティング一部分(portion)もしくは部分(moiety)は、これを用いてサイトカインの受容体を過剰発現している細胞に毒素をターゲティングできるサイトカイン、または受容体に対する抗体である。例えば、IL-13受容体は、神経膠腫のようなある種の癌細胞の外部に強く過剰発現されていること、そして腎臓細胞癌、カポジ肉腫およびホジキン(Hodgkin)病のような癌に対しオートクリン増殖因子として機能することが公知である。例えば、国際公開公報第01/34645号、国際公開公報第03/039600号および米国特許第6,518,061号を参照されたい。IL-13またはIL-13の各種突然変異体および順序入替え型は、側鎖にヒドロキシル基を含まない脂肪族アミノ酸へのR490突然変異を含むPE分子のような細胞毒素を、IL-13受容体を発現している細胞に対するターゲティング部分として用いることができる。同様に、IL-13受容体に対する抗体により、IL-13受容体を標的化し得る。IL-4とは結合しない、IL-13受容体に対して特異的な抗体もまた、このような方法での使用に適している。当技術分野で公知なように、例えばIL-13Rα2は、IL-4にも結合する結合体には含まれない。したがって、ヒトIL-13Rα2鎖を発現させて、それに対する抗体を作製するか、または鎖をコードするDNAをマウスに注射して、それをマウス内に発現させて抗体を作らせることができる。IL-4受容体がクローン化されていることも記しておかねばならない。したがって、IL-13受容体に対し作製されたいずれの抗体も、固定化されたIL-4受容体が詰められたカラムにIL-13受容体抗体を流すといった簡単な試験によって、それがIL-4受容体に結合するか容易に試験し、知ることができる。
【0064】
さらにまた、国際公開公報第01/34645号に論じられているように、順序入替え型を含む様々な形のIL-13、および受容体に対する抗体を用いて、R490変異を有するPE分子を、IL-13受容体を発現している肺の中の細胞に向けさせ、喘息およびアレルギー性鼻炎といった、IL-13が媒介または増悪化する疾患の症状を軽減または完治すること、および体内のその他の場所にある細胞に向けて、アトピー性皮膚炎および住血吸虫症での肝繊維症の症状を軽減または完治することができる。
【0065】
サイトカインに加えて、当技術分野では非常に多くのその他リガンドが公知であり、本発明のPE分子に標的細胞をターゲティングさせるのに用いることができる。例えば、トランスフェリンは、トランスフェリン受容体を発現している細胞に毒素をターゲティングさせる手段として用いられている。疾患に関係する細胞は、細胞表面上に特異的に発現している抗原、例えばHIV感染細胞のgp120、移植体対宿主疾患に関係するT細胞のCD25、あるいはCEA、CD30またはCD33のような癌細胞に発現している各種表面分子があれば、いずれの細胞も標的にできる。
【0066】
定義
単位、識別コードおよび記号は、国際単位系(SI)で認められている形で表示する。数値範囲は、範囲を画定する数字も含める。特に記載がない限り、核酸は左から右に、5'から3'の方向で書かれている;アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシルの方向に書かれている。本明細書に用いた見出しは、本発明の様々な局面または態様を制限するものではなく、それらは明細書全体を参照することで行われる。したがって、以下に定義する用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0067】
「CD22」は、Igスーパーファミリーに属する、系列限定B細胞抗原を指す。それはB細胞リンパ腫および白血病の60〜70%に発現しており、B細胞の発生初期段階または幹細胞の細胞表面には存在しない。例えば、Vaickusら、Crit. Rev. Oncol/Hematol. 11:267-297 (1991)を参照。
【0068】
本明細書で使用する抗体に関する用語「抗CD22」は、CD22に特異的に結合する抗体を指し、CD22に対し生成された抗体の参照も含む。好ましい態様では、CD22はヒトCD22のような霊長類CD22である。一つの好ましい態様では、抗体は、ヒトCD22をコードするcDNAを霊長類以外の哺乳動物に導入した後に動物によって合成されたヒトCD22に対し生成される。
【0069】
「RFB4」は、ヒトCD22に特異的に結合するマウスIgG1モノクローナル抗体を指す。RFB4は、Southern Biotechnology Associates, Inc.(Birmingham AL; Cat. No. 9360-01)、Autogen Bioclear UK Ltd.(Calne, Wilts, UK; Cat. No. AB147)、Axxora LLC.(San Diego, CA)のような複数の供給業者からRFB4の名前で市販されている。RFB4はB系列の細胞に極めて特異的であり、他の型の正常細胞とは検出可能な交叉反応性を有していない。Li et al., Cell. Immunol. 118:85-99 (1989)。RFB4の重鎖および軽鎖がクローン化されている。Mansfieldら、Blood 90:2020-2026 (1997)を参照されたく、これは参照として本明細書に組み入れられる。RFB4重鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2である。RFB4軽鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4である。各鎖の配列は、図1に記載されている。
【0070】
RFB4のCDRおよびフレームワーク領域の位置は、当技術分野で周知の各種定義、例えばKabat、Chothia、国際的ImMunoGeneTicsデータベース(ebi.ac.uk/imgt/のワールドワイドウェブ(World Wide Web)上で利用可能な“IMGT”)およびAbMを用いて決定できる(例えば、Chothia & Lesk, "Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins," J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987); Chothia C. et al., "Conformations of immunoglobulin hypervariable regions," Nature 342:877-883 (1989); Chothia C. et al., "Structural repertoire of the human VH segments," J. Mol. Biol. 227:799-817 (1992)を参照)。抗原連結部位の定義についても、以下に記載されている:Ruiz et al., "IMGT, the international ImMunoGeneTics database," Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000); およびLefranc, M.-P. "IMGT, the international ImMunoGeneTics database," Nucleic Acids Res. Jan 1;29(1):207-9 (2001); MacCallum et al., "Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography," J. Mol. Biol., 262 (5):732-745 (1996); Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153, (1991); Pedersen et al., Immunomethods, 1:126, (1992); およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction. Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996)。
【0071】
特に記載がない限り、本明細書でのRFB4重鎖または軽鎖のアミノ酸位置の参照は、最も広く用いられている抗体のナンバリングシステムである、“Kabat and Wu”システムでのアミノ酸番号によるものである。参照として本明細書に組み込まれる、Kabat, E.ら、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, U.S. Government Printing Office, NIH Publication No. 91-3242 (1991)を参照されたい。Chothia番号付けスキームは、Kabatスキームと同一であるが、構造的に異なる位置のCDR-L1およびCDR-H1に挿入がある。Kabat and Wuシステムにおける残基と一致する番号は、所与の重鎖または軽鎖中の残基について、その鎖のアミノ末端から数えた時に得られる番号とは必ずしも一致しないことに注意しなければならない。したがって、特定のVHまたはVLのアミノ酸残基の位置は、特定配列中のアミノ酸の番号を表しているのではなく、Kabat番号付けスキームを参照して付けられた位置を表している。図2および3は、RFB4軽鎖および重鎖の残基の連続番号と、それら残基のKabat and Wuによる番号付けとの関係を示している。便宜上、「Kabat and Wu」番号付けを、本明細書では「Kabat」番号付けと呼ぶことがある。
【0072】
突然変異体は、本明細書では通常の表示法で記載されている。したがって、例えば、用語「R490A」は、参照分子の位置490位にある「R」(アルギニン、標準的な一文字コードで表されている)が「A」(アラニン、標準的一文字コードによる)によって置き換えられていることを示す。一般的なアミノ酸の標準一文字コードは以下に記載されている。
【0073】
本明細書で使用する「抗体」とは、特定抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子に関連するものを含み、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。用語はまた、キメラ個体(例えばヒト化マウス抗体)、ヘテロ複合体抗体(例えば二重特異性抗体)、組換え体単鎖Fv断片(scFv)、およびジスルフィド安定型(dsFv)Fv断片(参照として本明細書に組み込まれる、共有された米国特許第5,747,654号を参照)のような、遺伝子工学により作られた形態も含む。用語「抗体」はさらに、抗体の抗原結合形態も含む(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、FvおよびrIgG。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL); Goldsby et al., eds., Kuby, J., Immunology, 4th Ed., W.H. Freeman & Co., New York (2000)も参照)。
【0074】
特定抗原と免疫学的に反応する抗体は、ファージまたは類似ベクターの組換え抗体ライブラリーを選択するような組換えの方法、例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989); およびVaughan et al., Nature Biotech. 14:309-314 (1996)を参照し、または抗原もしくは抗原をコードするDNAで動物を免疫することによって生成することができる。
【0075】
典型的には、免疫グロブリンは重鎖と軽鎖を有する。各重鎖と軽鎖は、定常領域と可変領域を含む(これら領域は「ドメイン」としても知られる)。軽鎖および重鎖は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域により隔てられる、「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は画定されている。Kabat and Wu、上記を参照されたい。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保存されている。構成する軽鎖と重鎖のフレームワーク領域が結合した抗体のフレームワーク領域は、CDRを三次元空間の中に配置しその向きを調整する。
【0076】
CDRは、抗原のエピトープに対する結合を主として担っている。各鎖のCDRは、一般的には、N末端から始まって順番にCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、また一般的には、特定のCDRが存在している鎖によって区別される。したがって、VH CDR3は、それが存在する抗体の重鎖の可変ドメイン内に位置し、一方VL CDR1は、それが存在する抗体の軽鎖可変領域のCDR1である。
【0077】
「VH」または「VH」とは、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」とは、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0078】
「単鎖のFv」または「scFv」という語句は、伝統的な二本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変領域が結合して一本鎖を形成している抗体を指す。典型的には、二本鎖の間にリンカーペプチドが挿入され、適当な巻戻しと活性結合部位の作製を可能にしている。
【0079】
「ジスルフィド結合」または「システイン−システインジスルフィド結合」という語句は、システインのイオウ原子が酸化してジスルフィド結合を形成する、2個のシステイン間の共有的相互作用を指す。ジスルフィド結合の平均結合エネルギーは、水素結合が1〜2kcal/molであるのに対し約60kcal/molである。
【0080】
「ジスルフィド安定化Fv」または「dsFv」という語句は、軽鎖と重鎖の間にジスルフィド結合がある免疫グロブリンの可変領域を指す。本発明との関連では、ジスルフィド結合を形成するシステインは、抗体鎖のフレームワーク領域内に存在し、抗体の立体構造を安定化するのに役立つ。一般的には、抗体は、フレームワーク内の、置換基が抗原結合を妨害しない位置にシステインを導入して作られる。
【0081】
「リンカーペプチド」という用語は、重鎖の可変ドメインを軽鎖の可変領域に間接的に結合するのに役立つ、抗体結合断片(例えばFv断片)内のペプチドに関連するものを含む。
【0082】
「親抗体」という用語は、親抗体と同一のエピトープに結合するが、より高い親和性を有する抗体またはその断片を得るために突然変異を誘導し、または変更を加える、関心対象の任意の抗体を意味する。
【0083】
「ホットスポット」という用語は、自然の変種が特に多い部位であるCDRのヌクレオチド配列部分、または可変ドメインのフレームワーク部分を意味する。CDRそのものが超可変性領域と考えられるが、突然変異はCDR全体に均一に分布しないことが分かっている。突然変異が集中する部位である特別な部位、すなわちホットスポットが特定されている。ホットスポットは、いくつかの構造的な特徴および配列によって特徴付けられている。これら「ホットスポットモチーフ」を用いて、ホットスポットを特定することができる。特によく特徴付けされている2つのコンセンサス配列は、テトラヌクレオチド配列のRGYWおよびセリン配列AGYであり、このときRはAもしくはG、YはCもしくはT、かつWはAもしくはTである。
【0084】
「免疫複合体」とは、抗体または抗原認識能力を保持しているその断片のようなターゲティング一部分または部分、ならびに治療部分または検出可能な標識のような作用分子を含む分子である。
【0085】
「免疫毒素」とは、治療部分が細胞毒素である免疫複合体である。
【0086】
「ターゲティング部分」とは、免疫複合体を関心対象の細胞に向けるための免疫複合体の一部分である。典型的には、ターゲティング部分は抗体、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2である。
【0087】
「毒素部分」とは、免疫毒素に関心対象の細胞に対する細胞毒性を付与する免疫毒素の一部分である。
【0088】
「治療部分」とは、治療作用物質として働くことを意図した免疫複合体の一部分である。
【0089】
「治療薬」という用語は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、サイトカイン、抗感染薬、酵素アクチベータもしくはインヒビター、アロステリック修飾剤、抗生物質、または患者に所望の治療効果をもたらすために投与されるその他作用物質として現在知られているか、または今後開発される化合物を包含する。治療薬は、毒素または放射性同位元素でもよく、この場合に意図される治療効果は、例えば癌細胞を殺すことである。
【0090】
「検出可能な標識」とは、免疫複合体に関しては、その存在を検出可能にする性質を有する、免疫複合体の一部分を意味する。例えば、免疫複合体は放射活性同位元素で標識してもよく、これは免疫複合体が存在する細胞を免疫組織化学アッセイで検出できるようにする。
【0091】
「作用部分」という用語は、ターゲティング部分が標的とする細胞に作用を及ぼすことを目的とするか、または免疫複合体の存在を同定できるようにすることを目的とする、免疫複合体の一部分を意味する。したがって、作用部分は、例えば治療部分、毒素、放射性標識、または蛍光標識でよい。
【0092】
「有効量」または「有効な量」または「治療有効量」という用語は、細胞のタンパク質合成を少なくとも50%阻害するか、または細胞を殺すといった所望の結果を生むのに十分な治療薬の投与量の表現を包含する。
【0093】
「毒素」という用語は、アブリン、リシン、シュードモナス体外毒素A(または「PE」)、ジスルフィド毒素(「DT」)、ボツリヌス毒素、またはその修飾毒素を含む。例えば、PEおよびDTは、肝臓毒性を通じて一般的に死に至らしめることもある強力な有毒化合物である。しかしながら、PEおよびDTは、毒素に元からあるターゲティング成分(例えばPEのドメインIaまたはDTのB鎖)を取り除き、かつ、抗体のような別のターゲティング部分と交換することによって、免疫毒素として使用するための形態に変更することができる。
【0094】
前節に示したように、本明細書で使用する、シュードモナス体外毒素A(「PE」)という用語は、変更されているが、細胞毒性機能は保持する形状を表すPEを包含する。したがって、PE分子は、PE38およびPE40として公知の断片のように、端部を切断し、細胞毒性ではあるが細胞には結合しないPEの断片を提供でき、または4つの残基がグルタミン酸に突然変異している“PE4E”と呼ばれる変種のように、非特異的結合を小さくする突然変異を有することができる。さらにまた、ネイティブなPEのC末端配列を変更した「PE38KDEL」と呼ばれる形状のもののように、または、ネイティブなPE配列の位置490位に対応するアルギニンをアラニン、グリシン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンに置換した本明細書で論じる形態のPEのように、PE配列の一部を変更して毒性を高めることもできる。
【0095】
「接触させる」という用語は、物理的に直接会合する配置を表すものを包含する。
【0096】
「発現プラスミド」とは、プロモータと作動可能に連結している、分子または関心物をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0097】
本明細書で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられ、またアミノ酸残基のポリマーを表すものを包含する。この用語は、天然アミノ酸ポリマーのみならず、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。用語はまた、タンパク質が機能を維持する保存的アミノ酸置換残基を含有するポリマーにも適用される。
【0098】
「残基」または「アミノ酸残基」または「アミノ酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(ひとまとめにして「ペプチド」)内に組み入れられるアミノ酸を表すものを包含する。アミノ酸は、天然のアミノ酸でよく、また特に限定されない限り、天然アミノ酸と同様の様式で機能できる天然アミノ酸の公知の類似体を包含してよい。
【0099】
本明細書に引用されるアミノ酸および類似体は、下表Aの略称によって表される。
【0100】
(表A)アミノ酸表記法

【0101】
「保存的置換」とは、タンパク質に関する場合は、タンパク質の活性を実質的に変えない、タンパク質のアミノ酸組成の変更を指す。したがって、特定のアミノ酸配列の「保存的変更変種」とは、タンパク質の活性にとって重要でないアミノ酸のアミノ酸置換、または同様の性質(例えば酸性、塩基性、正もしくは負に電荷している、極性もしくは非極性等)を有する他のアミノ酸によるアミノ酸置換で、重要アミノ酸の置換であっても活性を実質的に変更しないものを指す。機能的に類似したアミノ酸を示す保存的置換の表は、当技術分野では周知である。表Bの六つの群それぞれには、互いが保存的置換となるアミノ酸が記載されている。
【0102】
(表B)
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
Creighton, PROTEINS, W.H.Freeman and Company, New York (1984)も参照されたい。
【0103】
ペプチドとの関係では、「実質的に類似する」という用語は、ペプチドが、参照配列に対して、10〜20アミノ酸の比較枠全体について少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列相同性を持つ配列を含むことを示している。配列相同性のパーセンテージは、最適にアラインメントをとった2つの配列を、比較枠全体について比較することによって決定され、このとき比較枠内にあるポリヌクレオチド配列部分は、参照配列(付加もしくは欠失を含まない)と比較して、2つの配列のアラインメントを最適にしたときに、付加もしくは欠損(即ちギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が占めている位置の数を決定して一致位置数を算出し、一致位置数を比較枠内にある位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列相同性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0104】
「結合する」「つなぐ」「接合する」または「連結する」という用語は、2つのポリペプチドを一つの連続するポリペプチド分子にすることを指す。本発明の関係では、この用語は、抗体成分を作用分子(EM)につなぐことを表すものを包含する。連結は、化学的方法または組換えによる方法のいずれでもできる。化学的方法は、抗体成分と作用分子とが共有結合して一つの分子を形成するような、二分子間の反応を指す。
【0105】
本明細書で使用する「組換え体」には、そのネイティブな状態において、タンパク質を発現できる外来性のDNAコピーを有していない細胞を用いて作られるタンパク質を表すものを包含する。細胞は、適切に単離された核酸配列が導入されることによって遺伝的に変更されているために、組換えタンパク質を産生する。用語はまた、異種核酸が導入されたことによって、またはネイティブな核酸を変更してその細胞にとって本来のものではない形にすることによって変更された細胞、または核酸、またはベクター、あるいはそのような変更を受けた細胞に由来する細胞を表すものも包含する。したがって、例えば、組換え細胞は、元来(非組換え体)の形の細胞内に存在しない遺伝子を発現するか、ネイティブな形に見られる遺伝子の突然変異体を発現するか、または他の場合には異常な発現をしているか、過小に発現しているか、または全く発現しないネイティブな遺伝子を発現する。
【0106】
本明細書で使用する「核酸」または「核酸配列」とは、単鎖または二本鎖型のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーに関するものを包含し、特に限定されない限りは、天然のヌクレオチドと同様の様式で核酸にハイブリダイゼーションする天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む。特に記載がない限り、個別の核酸配列は、その相補的配列および保存的変種、即ちコドンのゆらぎ(wobble)位置にある核酸、およびタンパク質に翻訳された時にアミノ酸の保存的置換を生ずる変種を包含する。
【0107】
本明細書で使用する場合、特定の核酸に関して、「コードする」とは、特定タンパク質への翻訳に関する情報を含む核酸を表すものを包含している。情報は、コドンを用いて指定されている。一般的には、アミノ酸配列は、「普遍的」遺伝子コードを用いて、核酸によってコード化されている。しかしながら、いくつかの植物、動物および真菌のミトコンドリア、細菌のMycoplasma capricolum(Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:2306-2309 (1985))または繊毛虫の大核(Macronucleus)に存在するような普遍的コードの変種を、これら生物の翻訳機構を用いて核酸を発現する場合には用いても良い。
【0108】
「インフレームで融合する」という語句は、結合した核酸配列が元来のポリペプチド鎖を含む単一鎖のタンパク質に翻訳されるように、ポリペプチドをコードしている2つまたはそれ以上の核酸配列を結合することを指す。
【0109】
本明細書で使用する「発現」とは、核酸からタンパク質への翻訳を表すものを含む。タンパク質は、発現したまま細胞内に留まってもよく、細胞表面膜の成分になってもよく、あるいは細胞外マトリックスまたは培地に分泌されてもよい。
【0110】
「宿主細胞」とは、発現ベクターの複製または発現を支えることができる細胞を意味する。宿主細胞は、大腸菌のような原核生物細胞でも、または酵母、昆虫、両生類もしくは哺乳動物細胞のような真核生物細胞でもよい。
【0111】
「ファージディスプレイライブラリー」という語句は、それぞれが、表面タンパク質とインフレームに組換え融合している外来DNAを含むバクテリオファージの集団を指す。ファージは、その表面のcDNAによってコードされる外来タンパク質をディスプレイする。細菌宿主、一般的には大腸菌内で複製した後、関心対象の外来cDNAを含むファージは、ファージ表面での外来タンパク質の発現によって選択される。
【0112】
「相同な」またはパーセント「相同性」とは、2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列と関係において、同一であるか、または一致が最も多くなるように比較してアラインメントを取ったときに、以下の配列比較アルゴリズムの一つ、もしくは目視検査により測定したとき、同一となるアミノ酸残基またはヌクレオチドが特定されたパーセンテージである、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。
【0113】
「実質的に相同である」という語句は、2つの核酸またはポリペプチドとの関係において、一致が最も多くなるように比較し、そしてアラインメントを取ったときに、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用い、または目視検査により測定したとき、少なくとも60%、より好ましくは65%、さらにより好ましくは70%、よりさらに好ましくは75%、さらに好ましくは80%、そして最も好ましくは90〜95%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基相同性を有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、実質的相同性は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたって、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、そして最も好ましくは、配列は少なくとも約150残基にわたり実質的に相同である。最も好ましい態様では、配列はコード領域の全長にわたって実質的に相同である。
【0114】
配列の比較では、一般的に一つの配列が参照配列となり、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列と参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列配位が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次に配列比較アルゴリズムは、試験配列について、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列に対するパーセント配列相同性を計算する。
【0115】
比較のための配列アラインメントの最適化は、例えば、以下により実施できる:Smith & Watermanの局所相同性アルゴリズム、Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)、Needleman & Wunschの相同性アラインメントアルゴリズム、J. Mol. Biol. 48:443 (1970)、Pearson & Lipmanの類似性に関する検索法、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)、これらアルゴリズムのコンピュータを用いた実行によって(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、または目視検査(一般的には、Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1995 Supplement)(Ausubel)を参照)。
【0116】
パーセント配列相同性および配列類似性の決定に適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschuel et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information(「ncbi.nlm.nih.gov/」のWeb上にある)から公的利用できる。このアルゴリズムは、問い合わせ配列中から、データベース配列中にある同一長のワードとアラインメントを取った時に、一致するか、または正の値である閾値スコアTを満たしているか、クエリー(query)配列中の長さWの短いワードを識別して、高スコアの配列の組み(HSP)をまず見つけ出すことを含む。Tは、近傍ワード(neighborhood word)スコア閾値に照会される(Altschul et al, 上記)。これら初期の近傍語のヒットを初期検索の核として、それらを含んだより長いHSPを探索する。次に、ワードヒットを、累積スコアを増やすことができる間、各配列に沿って両方向に伸ばしていく。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(一致残基対に与えられるスコア;常に>0)およびN(不一致残基に与えられるペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列については、スコア化マトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は、次の場合に停止する:累積アラインメントスコアが、その最大達成値からXまで減じた;1つまたは複数の負のスコアを持つ残基アラインメントが加えられた結果、累積スコアがゼロ以下になった;またはいずれかの配列が最後まで達した。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、ワード長(W) 11、期待値(E) 10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を初期設定値として用いている。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、ワード長(W)3、期待値(E)10、BLOSUM62スコア化マトリックスを初期値として用いている(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)。
【0117】
パーセント配列相同性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはさらに二配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の一つの計測値は、最小総確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が偶然に一致する確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸を比較した時の最小総確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照核酸に類似していると考えられる。
【0118】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に相同であることの更なる指標は、以下に示すように、第一の核酸がコードするポリペプチドが第二の核酸がコードするポリペプチドと免疫学的に交叉反応することである。したがって、2つのペプチドの違いが保存的な置換基のみである場合は、ポリペプチドは第二のポリペプチドと通常は実質的に相同である。2つの核酸配列が実質的に相同であることの別の指標は、以下記載のように、2つの分子が、厳密条件下で互いにハイブリダイゼーションし合うことである。
【0119】
「インビボ」という用語は、細胞を得た生物の体内を表すものを包含する。「エクソビボ」および「インビトロ」は、細胞を得た生物の体外を意味する。
【0120】
「悪性の細胞」または「悪性腫瘍」という語句は、侵襲性および/または転移可能な腫瘍または腫瘍細胞、即ち癌細胞を指す。
【0121】
本明細書で使用する「哺乳動物細胞」とは、ヒト、ラット、マウス、モルモット、チンパンジーまたはマカクを含む哺乳動物に由来する細胞に関係するものを包含する。細胞はインビボまたはインビトロで培養することができる。
【0122】
「選択的反応性」という用語は、抗原に関係して、抗体の、その抗原を保持する細胞または組織との全体または部分的な好ましい結合を指し、その抗原を欠く細胞または組織とは結合しない。もちろん、分子と非標的細胞もしくは組織との間に、ある程度の非特異的相互作用が起こることがあることが認識されている。それにもかかわらず、選択的反応は、抗原の特異的認識を通し媒介されるものとして識別されてもよい。選択的反応性の抗体は、抗原と結合するが、それらは低親和性で結合してもよい。一方、特異的結合は、抗体と抗原を保持する細胞との間には、抗体と抗原を欠く細胞との間の結合に比べより強い結合を生ずる。特異的結合は、一般的に、CD22を欠く細胞または組織に比べ、CD22を保持する細胞または組織に結合する抗体の量(単位時間あたり)を、2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、そして最も好ましくは100倍以上増加させる。このような条件下でのタンパク質への特異的結合は、特定タンパク質に対するその特異性で選択される抗体を必要とする。特定タンパク質と特異的に免疫応答する抗体の選択に適当な様々な免疫アッセイ形式がある。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、あるタンパク質に特異的に免疫応答するモノクローナル抗体の選択に、日常的に用いられている。特異的免疫応答性を決定するのに用いることができる免疫アッセイの形式および条件に関する説明については、Harlow & Lane, ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Publications, New York (1988)を参照されたい。
【0123】
「免疫学的反応条件」という用語は、特定エピトープに対し作製された抗体が、そのエピトープに対して、実質的に全てのその他エピトープへの結合に比べて検出可能な程度に強く結合できる、および/または実質的に占有的に結合できる状態を表すものを包含する。免疫学的反応条件は、抗体結合反応の様式に依存し、一般的には、免疫アッセイプロトコールに用いられるものであるか、またはインビボで遭遇する条件である。免疫アッセイの形式および条件については、Harlow & Lane、上記を参照されたい。好ましくは、本発明の方法に用いられる免疫学的反応条件は、生きている哺乳動物または哺乳動物細胞の内側で一般的である条件(例えば温度、浸透圧モル濃度、pH)を表すものを包含する「生理学的条件」である。いくつかの器官は、極端な条件に曝されることが分かっているが、生物内および細胞内の環境は、通常pH7(即ち、pH6.0〜pH8.0、より典型的にはpH6.5〜7.5)の付近にあり、主要な溶媒として水を含み、0℃より高く、50℃より低い温度で存在する。浸透圧モル濃度は、細胞の生存と増殖を支えることができる範囲内にある。
【0124】
RFB重鎖および軽鎖のアミノ酸残基のナンバリング
抗体の重鎖または軽鎖内のアミノ酸残基の位置は、当技術分野では、便宜的に、Kabat, E. et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, U.S. Government Printing Office, NIH Publication No. 91-3242 (1991)に記載の標準的なナンバリングの方法によって示されている。Johnson, G and Wu, T., Nuc. Acids Res. 29:205-206 (2001)も参照されたい。Kabatらのデータベースは、一般的には、当技術分野では「Kabat」または「Kabat and Wu」と呼ばれている。データベースは、現在契約サービスとしてオンライン上に維持されており、「www.」の後に「kabatdatabase.com」と入力することで見ることができる。RFB4の重鎖および軽鎖は、クローン化されている。Mansfield et al., Blood 90:2020-2026 (1997)を参照されたい。RFB4 VLおよびVH鎖のアミノ酸配列および各アミノ酸残基の位置のKabatナンバリングリストは、それぞれ登録番号038145および038146のKabatデータベース内に記載されている。図2は、RFB4 VL鎖(SEQ ID NO:4)のアミノ酸のナンバリングと、Kabat登録番号038145に記載されている対応するKabat位置との比較を示している;図3は、RFB4 VH鎖(SEQ ID NO:2)のアミノ酸とKabat登録番号038146に記載されているKabat位置との同様の比較を示している。
【0125】
抗体の結合および免疫アッセイ
A. 抗体の結合親和性
本発明の抗体は、それらの標的抗原に、親抗体であるRFB4およびBL22よりも高い親和性で結合する。抗体は、CD22の細胞外エピトープに結合する抗CD22抗体である。標的抗原に対する結合親和性は、一般的には、競合アッセイ、飽和アッセイ、またはELISAもしくはRIAのような免疫アッセイといった標準的な抗体−抗原アッセイによって測定または決定される。
【0126】
このようなアッセイを用い、抗体の解離定数を決定することができる。「解離定数」という語句は、抗原に対する抗体の親和性を指す。抗体の解離定数(KD=1/K、ここでKは親和定数)が<1μM、好ましくは<100nM、そして最も好ましくは<0.1nMのとき、抗体と抗原の間の結合に特異性がある。抗体分子は、一般的に低域のKDを有するだろう。KD = [Ab-Ag]/[Ab][Ag]であり、このとき[Ab]は抗体の平衡時の濃度を、[Ag]は抗原の平衡時の濃度を、そして[Ab-Ag]は平衡時の抗体−抗原複合体の濃度である。一般的に、抗原と抗体の間の結合相互作用は、静電引力、ファンデルワールス(Van der Waals)力および水素結合のような可逆的な非共有的会合を含む。結合特異性を画定するこの方法は、単一の重鎖および/または単鎖、CDR、重鎖および/または軽鎖の融合タンパク質または断片に応用され、もしそれらが単独または一緒になってCD22に結合すればCD22に対し特異的である。
【0127】
B. 免疫アッセイ
本発明の抗体は、任意の、多くの周知の免疫学的結合アッセイを用いて、検出および/または定量化できる(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号を参照)。一般的な免疫アッセイの概説については、METHODS IN CELL BIOLOGY, VOL. 37, Asai, ed. Academic Press, Inc. New York (1993); BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY 7TH EDITION, Stites & Terr, eds. (1991)も参照されたい。免疫学的結合アッセイ(または免疫アッセイ)は、抗体に特異的に結合し、また多くの場合抗体を固定化するリガンド(例えばCD22)を一般的に利用する。本発明の免疫アッセイに用いられる抗体は、上記に詳しく論じられている。
【0128】
免疫アッセイはまた、多くの場合、リガンドと抗体が形成する結合複合体に特異的に結合して標識する、標識物質を利用する。標識物質は、それ自体が抗体/分析物複合体、即ち抗CD22抗体を含む成分の一つであってもよい。または、標識物質は、抗体/CD22タンパク質複合体に特異的に結合する、別の抗体のような第三の成分でもよい。
【0129】
一つの局面では、標識物質が標識を保持する第二の抗CD22抗体である競合アッセイが考えられる。この場合2つの抗体は、固定されたCD22への結合を巡って競合する。または、非競合形式では、CD22抗体は標識を持たないが、抗CD22抗体を得た種、例えばマウスの抗体に対し特異的であり、また抗CD22抗体に結合する第二抗体を標識する。
【0130】
プロテインAまたはプロテインGのような、免疫グロブリン定常域に特異的に結合する別のタンパク質を標識物質として用いてもよい。これらタンパク質は、連鎖球菌細胞壁の通常の構成成分である。それらは、様々な種由来の免疫グロブリン定常域との間に、強い、非免疫的反応性を示す(一般的にKronval, et al., J. Immunol. 111:1401-1406 (1973); and Akerstrom, et al., J. Immunol. 135:2589-2542 (1985)を参照)。
【0131】
アッセイ全体を通じて、試薬を混合する毎に、その後インキュベーションおよび/または洗浄工程が必要になるだろう。インキュベーション工程は、約5秒から数時間まで様々であり、好ましくは約5分から約24時間までである。しかしながら、インキュベーション時間はアッセイの形式、抗体、溶液量、濃度等に依存するだろう。通常、アッセイは周囲温度で行われるが、10℃〜40℃といった温度範囲で実施することもできる。
【0132】
免疫アッセイの詳細は、実際に使用する形式により異なるが、抗体を含むサンプル中の抗CD22抗体を検出する方法は、一般的には、免疫学的反応条件の下でサンプルを特異的に反応する抗体と接触させて、CD22/抗体複合体を形成させる工程を含む。
【0133】
免疫複合体の産生
免疫複合体としては、これに限定されるものではないが、治療薬の抗体への共有結合が存在する分子が挙げられる。治療薬は、具体的な標的分子または標的分子を保持する細胞に向けられる特別な生物学的活性を有する作用物質である。当業者は、治療薬には、ビンブラスチン、ダウノマイシン等の各種薬物、ネイティブな、または修飾型のシュードモナス体外毒素またはジフテリア毒素のような細胞毒素、それ自体薬学的組成物を含有している封入薬物(例えばリポソーム)、125I、32P、14C、3Hおよび35Sのような放射活性物質および他の標識、ターゲティング部分およびリガンドが包含されることを認識するだろう。
【0134】
具体的な治療薬の選択は、具体的な標的分子もしくは細胞、および誘導を所望する生物学的効果に依存する。したがって、例えば、治療薬は、具体的な標的細胞を死滅させるために用いられる細胞毒素でもよい。逆に、致死的でない生物学的反応だけが所望される場合には、治療薬は非致死性の薬学的作用物質に結合させるか、または非致死的薬学的作用物質を含有するリポソームでもよい。
【0135】
本明細書で提供する治療薬および抗体を用いることで、当業者は、配列は異なるが、同一のEMもしくは抗体配列をコードする核酸のような、機能的に均等な核酸を含有する様々なクローンを容易に構築できる。したがって、本発明は、抗体ならびにその結合体および融合タンパク質をコードするタンパク質を提供する。
【0136】
A. 組換え法
本発明の核酸配列は、例えば適当な配列をクローニングすることを含む任意の好適な方法によって、またはNarangらのホスホトリエステル法、Meth. Enzymol. 68:90-99 (1979);Brownらのホスホジエステル法、Meth. Enzymol. 68:109-151 (1979);Beaucageらのジエチルホスホルアミダイト法、Tetra. Lett. 22:1859-1862 (1981);例えばNeedham-VanDevanterら、Nucl. Acids Res. 12:6159-6168 (1984)に記載の、例えば自動合成装置を用いての、Beaucage & Caruthersにより記載された固相ホスホルアミダイトトリエステル法、Tetra. Letts. 22(20):1859-1862 (1981);および米国特許第4,458,066号の固相支持体法のような方法を用いて直接化学合成することによって調製できる。化学合成は、単鎖のオリゴヌクレオチドを産生する。これを、相補的配列とハイブリダイゼーションすることにより、または単鎖を鋳型に用いたDNAポリメラーゼによる重合化によって、二本鎖DNAに転換できる。当業者は、DNAの化学合成が、約100塩基の配列に制限されているが、短い配列を連結することによってより長い配列が入手できることを認識するだろう。
【0137】
好ましい態様では、本発明の核酸配列は、クローニング技術によって調製される。適切なクローニングおよびシーケンシング技術の例、ならびに数多くのクローニングの訓練を通して、十分な技能指導を行う説明の例は、以下に見いだせる:Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (1989))、Berger and Kimmel (eds), GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES, Academic Press, Inc., San Diego CA (1987))、またはAusubel, et al. (eds.), CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing and Wiley-Interscience, NY (1987)。生物分野の試薬および実験装置の製造業者からの製品情報もまた有益な情報を提供する。このような製造業者としては、SIGMA chemical company (Saint Louis, MO), R&D systems (Minneapolis, MN), Pharmacia LKB Biotechnology (Piscataway, NJ), CLONTECH Laboratories, Inc. (Palo Alto, CA), Chem Genes Corp., Aldrich Chemical Company (Milwaukee, WI), Glen Research, Inc., GIBCO BRL Life Technologies, Inc. (Gaithersberg, MD), Fluka Chemica-Biochemika Analytika (Fluka Chemie AG, Buchs, Switzerland), Invitrogen, San Diego, CA and Applied Biosystems (Foster City, CA)、ならびに当業者に公知のその他多くの市販供給業者が挙げられる。
【0138】
ネイティブなEMまたは抗CD22抗体をコードしている核酸を修飾して、本発明のEM、抗体または免疫複合体を形作ることもできる。部位特異的突然変異誘導による修飾は、当技術分野で周知である。EMまたは抗CD22抗体をコードしている核酸は、インビトロの方法で増幅することができる。増幅方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベース増幅システム(TAS)、セルフサステインシーケンス複製システム(3SR)が挙げられる。様々なクローニング法、宿主細胞およびインビトロ増幅方法論が、当業者に周知である。
【0139】
好ましい態様では、免疫複合体は、抗CD22 scFv抗体をコードしているcDNAを、EMをコードしているcDNAを含むベクター内に挿入することによって調製される。挿入は、scFvおよびEMがインフレームで読み取られるように、即ち機能的Fv領域と機能的なEM領域とを含有する一つの連続するポリペプチドに読み取られるように作られる。特に好ましい態様では、ジフテリア毒素の断片をコードするcDNAは、毒素がscFvのカルボキシル末端に位置するようにscFvに連結される。さらに好ましい態様では、PEをコードしているcDNAは、毒素がscFvのアミノ末端に位置するようにscFvに連結される。
【0140】
ひとたび本発明のEM、抗CD22抗体、または免疫複合体をコードする核酸が単離され、クローン化されると、細菌、植物、酵母、昆虫および哺乳動物細胞のような組換え技術を用い作られた細胞で、所望のタンパク質を発現させることができる。当業者は、大腸菌、その他細菌宿主、酵母、ならびにCOS、CHO、HeLaおよびメラノーマ細胞株のような様々な高等真核生物細胞を含む、タンパク質発現に利用できる多くの発現システムを承知していることが予想される。原核細胞または真核細胞でのタンパク質発現のための各種方法を詳しく記載することはしない。簡単に述べると、本発明の単離されたタンパク質をコードする天然または合成核酸の発現は、一般的には、DNAまたはcDNAをプロモータ(構成的または誘導的のいずれか)に作動可能に連結した後、発現カセットに組み入れることによってなし遂げられる。カセットは、原核生物または真核生物での複製および組込みにとって好適である。一般的な発現カセットは、転写および翻訳ターミネータ、開始配列およびタンパク質をコードしているDNAの発現の制御に有用なプロモータを含んでいる。クローン化された遺伝子を高レベルに発現させるためには、少なくとも転写を指示する強力なプロモータ、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳ターミネータを含む発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌の場合、それは、T7、trp、lacまたはラムダプロモータのようなプロモータ、リボソーム結合部位、および、好ましくは、転写終止シグナルを含む。真核生物細胞の場合、制御配列としては、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスに由来するプロモータ、および、好ましくはエンハンサー、ならびにポリアデニル化配列を含むことができ、スプライスドナーおよびアクセプター配列を含んでもよい。本発明のカセットは、大腸菌の場合では、塩化カルシウム形質転換法またはエレクトロポレーション法、また哺乳動物細胞の場合はリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーションまたはリポフェクション法のような周知の方法によって、選択した宿主細胞内に移すことができる。カセットにより形質転換された細胞は、カセット内に含まれる遺伝子、amp、gpt、neoおよびhygのような遺伝子が付与する抗生物質耐性を利用して選択できる。
【0141】
当業者は、本発明のポリペプチド(即ち抗CD22抗体、PEまたはそれらの組合せから作られた免疫複合体)をコードしている核酸に、その生物学的活性を損なうことなく変更を加えられることを認識するだろう。いくつかの変更は、クローニング、発現またはターゲティング分子の融合タンパク質への組入れを容易にするために行われる。このような変更は、当業者にとって周知であり、またそのようなものとして、例えば終止コドン、開始を提供するためにアミノ末端に付加されたメチオニン、部位、便宜のため配置する制限部位を作るためにいずれかの末端に配置された追加のアミノ酸、または精製段階を補助するための追加のアミノ酸(例えば、ポリHis)が挙げられる。
【0142】
組換え方法に加えて、本発明の免疫複合体、EMおよび抗体は、その全体または一部を、標準的なペプチド合成を用いても作ることができる。長さが約50アミノ酸未満である本発明のポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性の支持体に結合した後、配列中の残りのアミノ酸を順番に連続的に付加していくことでなし遂げられるだろう。固相合成の技術は、Barany & Merrifield, THE PEPTIDES: ANALYSIS, SYNTHESIS, BIOLOGY. VOL. 2: SPECIAL METHODS IN PEPTIDE SYNTHESIS, PART A. pp. 3-284; Merrifield, et al., J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2156 (1963)、およびStewart, et al., SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS, 2ND ED., Pierce Chem. Co., Rockford, Ill. (1984)に記載されている。より長いタンパク質は、短い断片のアミノ末端とカルボキシル末端を縮合することによって合成してもよい。カルボキシル末端を活性化してペプチド結合を形成する方法(例えばカップリング試薬N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる)は、当業者に公知である。
【0143】
B. 精製
ひとたび発現すれば、本発明の組換え免疫複合体、抗体および/または作用分子は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー等を含む当技術分野の標準的な手順に従って精製できる(一般的に、R. Scopes, PROTEIN PURIFICATION, Springer-Verlag, N.Y. (1982)を参照)。薬学的使用にとっては、少なくとも均質性約90〜95%の実質的に純粋な組成物が好ましく、均質性が98〜99%またはそれ以上のものが最も好ましい。ひとたび部分的または希望に応じた均質性まで精製された後は、治療目的に使用される場合でも、ポリペプチドは実質的に内毒素を含まなものとする。
【0144】
大腸菌のような細菌から単鎖抗体を発現させる方法、および/または単鎖抗体を含め、適当な活性型に巻き戻す方法は、記載され、また周知であり、そして本発明の抗体に応用可能である。参照として全体が本明細書に組み入れられている、Buchner et al., Anal. Biochem. 205:263-270 (1992); Pluckthun, Biotechnology 9:545 (1991); Huse et al., Science 246:1275 (1989)およびWard et al., Nature 341:544 (1989)を参照されたい。
【0145】
大腸菌またはその他細菌からの機能的異種タンパク質は封入体から単離されるために、強力な変性剤を用いて可溶化し、続いて巻き戻す必要がある場合が多い。可溶化の工程では、当技術分野において周知のように、還元剤を存在させてジスルフィド結合を切らなければならない。還元剤を含有する例示的バッファーは:0.1MトリスpH 8、6Mグアニジン、2mM EDTA、0.3M DTE(ジチオエリスリトール)である。ジスルフィド結合の再酸化は、参照として本明細書に組み入れられるSaxena et al., Biochemistry 9: 5015-5021 (1970)に記載されているように、還元および酸化型の低分子量のチオール試薬存在下で起こすことができ、特にBuchnerら、上記、に記載されている。
【0146】
復元は、一般的には変性および還元されたタンパク質を巻戻しバッファー中に希釈する(例えば100倍)ことによってなし遂げられる。例示的バッファーは、0.1Mトリス、pH 8.0、0.5M L-アルギニン、8mM酸化型グルタチオン(GSSG)および2mM EDTAである。
【0147】
二本鎖抗体の精製プロトコルの変形では、重鎖および軽鎖領域は別々に可溶化され、そして還元されてから、次に巻戻し溶液の中で一つに合わせられる。これら2つのタンパク質を、一方のタンパク質が他方のタンパク質に対し5倍を超えてモル過剰にならないモル比で混合すると、好ましい収率が得られる。酸化還元シャッフリング終了後、巻戻し溶液に過剰の酸化グルタチオンまたはその他酸化低分子化合物を加えることが望ましい。
【0148】
シュードモナス体外毒素およびその他毒素
毒素は、本発明の抗体と共に使用でき、免疫毒素を産生する。例示的毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素およびそのサブユニット、ならびにボツリヌス毒素A〜Fが挙げられる。これら毒素は、商業的供給業者(例えば、Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)から容易に入手できる。ジフテリア毒素は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)から単離される。リシンはヒマ(Ricinus communis)(トウゴマ)由来のレクチンRCA60である。この用語は、その毒性変種も参照する。例えば、米国特許第5,079,163号および第4,689,401号を参照されたい。ヒマ凝集素(RCA)は、それらの持つ、それぞれ約65および120kDの分子量に従ってRCA60およびRCA120と命名された二種類の形で生ずる(Nicholson & Blaustein, J. Biochim. Biophys. Acta 266:543 (1972))。A鎖は、タンパク質合成の不活性化と細胞の殺滅を担っている。B鎖は、リシンを細胞表面のガラクトース残基に結合させ、A鎖の細胞質内への移動を促進する(Olsnes, et al., Nature 249:627-631 (1974)および米国特許第3,060,165号)。
【0149】
アブリンは、トウアズキ(Abrus precatorius)由来の毒性レシチンを含む。毒性成分であるアブリンa、b、cおよびdは、約63〜67kDの分子量を有し、ジスルフィド結合した二本のポリペプチド鎖AおよびBから構成されている。A鎖はタンパク質合成を阻害する;B鎖(アブリンb)は、D-ガラクトース残基に結合する(Funatsu et al., Agr. Biol. Chem. 52:1095 (1988); および Olsnes, Methods Enzymol. 50:330-335 (1978)を参照されたい)。
【0150】
本発明の好ましい態様では、毒素はシュードモナス体外毒素A(「PE」)である。ネイティブなシュードモナス体外毒素A(PE)は、緑膿菌(Pseduomonas aeruginosa)が分泌する、活性の高い単量体タンパク質(分子量66kD)であり、真核生物細胞でのタンパク質合成を阻害する。ネイティブなPEの配列は、米国特許第5,602,095号のSEQ ID NO:1に記載されており、参照として本明細書に組み入れられる。作用の方法は、伸長因子2(EF-2)のADPリボシル化の不活性化である。体外毒素は、協力して働き細胞毒性を生ずる3つの構造ドメインを含有する。ドメインIa(アミノ酸1位〜252位)は、細胞結合を仲介する。ドメインII(アミノ酸253位〜364位)は、細胞質内への移動を担い、またドメインIII(アミノ酸400位〜613位)は伸長因子2のADPリボシル化を媒介する。ドメインIb(アミノ酸365位〜399位)の機能は、まだ未確定であるが、その大きな部分、アミノ酸365位〜380位を削除しても細胞毒性は失われない。Siegall et al., J. Biol Chem 264:14256-61 (1989)を参照されたい。
【0151】
本明細書で使用する「シュードモナス体外毒素」および「PE」という用語は、ネイティブなタンパク質から変更され、非特異的毒性が下げられているか、または排除されているPEを一般的に指す。このような変更としては、以下に限定されるものではないが、ドメインIaの排除、ドメインIb、IIおよびIII内の様々なアミノ酸の欠失、単独アミノ酸置換、およびKDEL(SEQ ID NO:5)およびREDL(SEQ ID NO:6)のような1つまたは複数の配列のカルボキシル末端への付加が挙げられる。Siegall et al., J. Biol. Chem. 264:14256-14261 (1989)を参照されたい。PEの細胞毒性断片は、引き続き標的細胞内でのタンパク質分解またはその他処理を伴う(例えば、タンパク質またはプレタンパク質として)、または伴わない、細胞毒性である断片を包含する。PEの細胞毒性断片としては、以下に論じるPE40、PE38およびその変種PE38QQRおよびPE38KDEL、ならびにPE35が挙げられる。好ましい態様では、PEの細胞毒性断片は、ネイティブなPEの持つ細胞毒性の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは少なくとも90%、さらに最も好ましくは95%を保持する。最も好ましい態様では、細胞毒性断片は、ネイティブなPEよりも細胞毒性である。
【0152】
好ましい態様では、PEは、多くは、米国特許第4,892,827号に開示されているようにドメインIaを削除することによって非特異的細胞結合を減らすか、または排除するように変更されてきたが、これは、例えばドメインIaの特定残基を突然変異することによってもなし遂げることができる。例えば、米国特許第5,512,658号は、ドメインIaは存在するが、位置57位、246位、247位および249位にあるドメインIaの塩基性残基が酸性残基(グルタミン酸、すなわち「E」)によって置換された突然変異型PEが、非特異的細胞毒性を大きく減じていることを開示している。この突然変異型のPEは、PE4Eと呼ばれることもある。
【0153】
PE40は、当技術分野でこれまでに記載されているような端部切断型のPE誘導体である。Pai et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:3358-62 (1991); およびKondo et al., J. Biol. Chem. 263:9470-9475 (1988)を参照されたい。PE35は、アミノ酸残基1位〜279位が欠失している、35kDのPEのカルボキシル末端断片であり、この分子は、ネイティブなPEの位置280位のmetから始まって、その後にアミノ酸281位〜364位および381位〜613位が続いている。PE35およびPE40は、例えば、米国特許第5,602,095号および第4,892,827号に開示されている。
【0154】
いくつかの好ましい態様では、細胞毒性断片PE38が用いられる。PE38は、PEの移動ドメインおよびADPリボシル化ドメインを含むが、細胞結合部分を含んでいない(Hwang, J. et al., Cell, 48:129-136 (1987))。PE38は、アミノ酸253位〜364位および381位〜613位から構成された、端部が切断されたPEのプロタンパク質であり、細胞内処理を受けて活性化され、細胞毒性型になる(例えば、米国特許第5,608,039号およびPastan et al., Biochim. Biophys. Acta 1333:C1-C6 (1997)を参照)。PE38の配列は、実施者により公知のPE配列から容易に決定できるが、便宜をはかるためにSEQ ID NO:22にも記載されている。当業者は、遺伝子コードの縮重性によって、PE38、PE38KDELのようなその変種、および本明細書で論ずるその他のPE誘導体が、多様な核酸配列でコードでき、そのいずれを発現しても所望のポリペプチドが得られることに気付くだろう。
【0155】
上記のように、ドメイン1bのいくつか、または全てを欠失してもよく、また残余部分をリンカーまたはペプチド結合によって直接連結することもできる。ドメインIIのアミノ部分のいくつかは欠失してもよい。またC末端は、ネイティブな配列の残基609位〜613位(REDLK(SEQ ID NO:7)を含むことができ、またはREDL(SEQ ID NO:6)もしくはKDEL(SEQ ID NO:5)のような、構築体の細胞質内への移動能力を維持することが知られている変種を含んでもよく、またこれらの配列を繰り返すこともできる。例えば、米国特許第5,854,044号;5,821,238号;および5,602,095号および国際公開公報第99/51643号を参照されたい。好ましい態様では、PEはPE4E、PE40またはPE38であるが、本発明の免疫毒素には、それが標的細胞内の移動およびEF2のリボシル化能力を保持しているのであれば、非特異的細胞毒性が排除または非標的細胞に対し重大な毒性が生じないレベルまで減じられている、いかなる形のPEも用いることができる。
【0156】
好ましい態様では、PE分子は、PE分子の位置490位に通常存在するアルギニンに代わって脂肪族アミノ酸の置換基を有するようにさらに変更される。置換アミノ酸としては、例えばG、A、V、LまたはIがある。G、AおよびIがより好ましい置換基であり、Aが最も好ましい。したがって、例えば、PE40、PE38、PE38KDEL、PE38QQR、PE4E、PE37またはPE35は、位置490位にG、AまたはIを持つように操作し、分子の細胞毒性を改良することができる。特に好ましい態様では、位置490位の残基は、アラニンに変更される。PE38の位置490位のRがアラニンに突然変異した例示的配列が、SEQ ID NO:23として記載されている。
【0157】
A. PEの保存的変更変種
PEの保存的変更変種またはその細胞毒性断片は、PE38のような関心対象のPEに対し、アミノ酸レベルで少なくとも80%の配列類似性、好ましくは少なくとも85%の配列類似性、より好ましくは少なくとも90%の配列類似性を、そして最も好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有する。
【0158】
「保存的変更変種」という用語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的変更変種は、相同または実質的に相同のアミノ酸配列をコードしている核酸配列を指すか、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合には、実質的に相同である核酸配列を指す。遺伝子コードの縮重性ゆえに、機能的に同一である、多数の核酸が所与のポリペプチドをコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。ゆえに、コドンによりアラニンが指定される全ての場所について、コードされたポリペプチドを変えることなしに、コドンを対応する記載のコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸変種は「サイレント変種」であり、保存的修飾変種の一種である。本明細書の、ポリペプチドをコードする全ての核酸は、核酸について可能である、全てのサイレント変種も記載する。当業者は、核酸中の各コドン(メチオニンに対する、通常唯一のコドンであるAUGを除く)は、機能的に同一の分子を生ずるように変更できることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変種は、各記載配列に暗示されている。
【0159】
アミノ酸配列に関して当業者は、コード配列中の単一アミノ酸、または少ないパーセンテージのアミノ酸が変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個別の置換、欠失または付加は、その変更がアミノ酸の化学的に類似するアミノ酸による置換を生ずる場合には「保存的変更変種」であることを認識するであろう。
【0160】
B. PEの細胞毒性のアッセイ
本発明に用いられるシュードモナス体外毒素は、当業者に周知のアッセイによって、細胞毒性が所望のレベルであるかアッセイできる。したがって、PEの細胞毒性断片、およびそのような断片の保存的変更変種も、細胞毒性について容易にアッセイできる。当技術分野に周知の方法によって、細胞毒性について多数の候補PE分子を同時にアッセイできる。例えば、候補分子のサブグループを、細胞毒性についてアッセイできる。正の反応を示した候補分子のサブグループをさらに小分けしていき、所望する細胞毒性断片が同定されるまでアッセイを続ける。このような方法によって、多数のPEの細胞毒性断片または保存的変種を迅速にスクリーニングできる。
【0161】
C. 他の治療部分
本発明の抗体は、表面にCD22を発現している細胞に、様々な診断または治療化合物を向けるのにも用いることができる。したがって、抗CD22 scFvのような本発明の抗体を、CD22を保持する細胞に直接送り込む薬物に、直接またはリンカーを介して取付けてもよい。治療薬としては、核酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸もしくは誘導体、糖タンパク質、放射性同位元素、脂質、炭水化物、または組換えウイルスといった化合物を挙げることができる。核酸の治療または診断成分としては、アンチセンス核酸、単鎖または二本鎖DNAに共有架橋結合するための誘導オリゴヌクレオチド、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0162】
または、抗CD22抗体に連結した分子は、薬物、核酸(例えばアンチセンス核酸)もしくはその他治療部分のような治療組成物を含有するリポソームもしくはミセルのような封入システムでもよく、これは循環系への暴露から保護されていることが好ましい。抗体を結合したリポソームを調製する手段は、当業者に周知である。例えば、米国特許第4,957,735号;およびConnor et al., Pharm. Ther. 28:341-365 (1985)を参照されたい。
【0163】
D. 検出可能な標識
本発明の抗体は、検出可能な標識に共有結合的または非共有結合的に連結していてもよい。このような使用に適した検出可能標識としては、分光光学的、光化学的、生物化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を挙げることができる。本発明において有用な標識としては、磁性ビーズ(例えばDYNABEADS)、蛍光色素(例えばフルオロセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、グリーン蛍光タンパク質等)、放射線標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAに一般的に用いられるその他の酵素)および金コロイドまたは着色されたガラス製もしくはプラスチック製(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズのような比色定量標識が挙げられる。
【0164】
このような標識を検出手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、放射線標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出でき、蛍光マーカーは、放射光を検知する光検出装置を用いて検知できる。酵素標識は、一般的には、酵素に基質を提供すること、および基質に対する酵素の作用から生じた反応産物を検出することによって検出され、また比色定量標識は、着色された標識を単純に目で確認することによって検出される。
【0165】
E. 抗体への結合
本発明の非組換えの態様では、作用分子、例えば治療、診断または検出成分は、当業者に公知の様々な手段を用いて、本発明の抗CD22抗体に連結される。本発明の抗CD22抗体には、共有結合および非共有結合の両方を用いることができる。
【0166】
抗体への作用分子の結合手順は、EMの化学的構造によって変わるだろう。ポリペプチドは、一般的に様々な官能基;例えばカルボキシル基(COOH)、遊離アミン(-NH2)またはメルカプト(-SH)基を含むが、これらは抗体の適当な官能基との反応に利用でき、作用分子の結合を生ずる。
【0167】
または、抗体を誘導化して追加の反応性官能基を露出または取付ける。誘導化は、Pierce Chemical Company, Rockford Illinoisから入手可能なもののような、任意の多数のリンカー分子を取付けることを包含する。
【0168】
本明細書で使用する「リンカー」とは、作用分子に抗体を結合させるのに用いられる分子である。リンカーは、抗体および作用分子の両方と共有結合を形成できる。好適リンカーは、当業者に周知であり、以下に限定されるものではないが、直鎖または分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが挙げられる。抗体および作用分子がポリペプチドの場合は、リンカーは構成的アミノ酸に、それらの側基(例えばシステインへのジスルフィド結合を通して)を介して結合できる。しかしながら、好ましい態様では、リンカーは末端アミノ酸のα炭素のアミノ基およびカルボキシル基に結合されるだろう。
【0169】
いくつかの状況では、免疫複合体がその標的部位に達した時点で、作用分子は抗体から遊離することが望まれる。それゆえに、これらの状況では、免疫複合体は、標的部位近くで開裂可能な結合を含む。作用分子を抗体から放出するリンカーの開裂は、標的細胞内または標的部位近くで免疫複合体が曝される酵素活性または状態によって促進されてもよい。標的部位が腫瘍の場合は、腫瘍部位の状態(例えば腫瘍関連酵素または酸性pHへの暴露)で開裂可能なリンカーが用いられるだろう。
【0170】
抗体への様々な放射性診断化合物、放射性治療化合物、薬物、毒素およびその他作用物質の取付けについて報告されている多くの方法を参考に、当業者は所与の作用物質を抗体に、またはその他ポリペプチドに取付けるのに好適な方法を決定できるだろう。
【0171】
薬学的組成物および投与
本発明の抗体および/または免疫複合体組成物(即ち本発明の抗CD22抗体に結合したPE)は、静脈投与または体腔への投与のような腸管外投与に特に有用である。
【0172】
投与のための組成物は、普通は薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解した抗体および/または免疫複合体の溶液を含む。様々な水性担体、例えば緩衝化食塩水等を用いることができる。これらの溶液は無菌であり、一般的には、望ましくない物質を含まない。これら組成物は、通常の、周知の滅菌技術によって滅菌できる。組成物には、必要に応じて、pH調整剤および緩衝化剤、毒性調整剤等のような薬学的に許容される補助物質、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を加えて生理学的条件に近づけることができる。これら組成物中の融合タンパク質の濃度は広範囲であり、選択する投与法および患者のニーズに応じて主に液体の容積、粘度、体重等に基づき選択されるだろう。
【0173】
したがって、本発明の典型的な薬学的免疫毒素組成物は、静脈投与の場合は、患者について1日あたり約0.1〜10mgであろう。患者について1日あたり0.1〜約100mgまでの投与量が用いられ得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるか、または自明であり、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE, 19TH ED., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania (1995)のような刊行物に詳しく記載されている。
【0174】
本発明の組成物は、治療処置のために投与できる。治療応用では、組成物は、疾患にかかった患者に、疾患およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に抑制するのに十分な量投与される。これを成し遂げるための量は、「治療有効量」として定義される。この使用に効果的な量は、疾患の重症度および患者の健康の全身状態に依存するだろう。化合物の有効量は、医師またはその他資格を持つ観察者が記すところの、症状の主観的軽減または客観的に識別できる改善をもたらす量である。
【0175】
単回または複数回用量の組成物は、患者によって求められる、また許容される投与量および頻度に応じて投与される。いずれの場合も、組成物は、患者を効果的に処置するのに十分な量の本発明のタンパク質を提供しなければならない。好ましくは、用量は一回に投与されるが、治療結果が達成されるか、または副作用により治療が中止されるまで、定期的に適用することもできる。一般的には、用量は、患者に対し受け入れ不可能な毒性を生じることなしに、疾患の症状および徴候を処置または軽減するのに十分なものである。
【0176】
本発明の免疫複合体組成物の制御放出非経口製剤は、インプラント、油性注射液、または粒子状システムとして作ることができる。タンパク質送達システムの概要を知るには、参照として本明細書に組み入れられる、Banga, A.J., THERAPEUTIC PEPTIDES AND PROTEINS: FORMULATION, PROCESSING, AND DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA, (1995)を参照されたい。粒子状システムとしては、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が挙げられる。マイクロカプセルは、治療タンパク質を中心核の形で含有する。マイクロスフェアの場合は、治療薬は粒子全体に分散している。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは一般的に、それぞれナノ粒子、ナノスフェアおよびナノカプセルと呼ばれる。毛細管の直径は約5μmであることから、ナノ粒子のみが静脈注射される。マイクロ粒子は、一般的には直径が100μm前後であり、皮下および筋肉内に投与される。例えば、いずれも参照として本明細書に組み入れられているKreuter, J., COLLOIDAL DRUG DELIVERY SYSTEMS, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, pp.219-342 (1994); およびTice & Tabibi, TREATISE ON CONTROLLED DRUG DELIVERY, A. Kydonieus, ed., Marcel Dekker, Inc. New York, NY, pp.315-339, (1992)を参照されたい。
【0177】
本発明の免疫複合体のイオン制御放出には、ポリマーを用いることができる。制御された薬物送達へ用いられる様々な分解性または非分解性のポリマーマトリックスが当技術分野で公知である(Langer, R., Accounts Chem. Res. 26:537-542 (1993))。例えば、ブロックコポリマーのpolaxamer 407は、低温では粘性ではあるものの流動性の液体として存在するが、体温では半固体となる。それは組換えインターロイキン2およびウレアーゼの製剤化および持続的送達にとって効果的な媒体であることが示されている(Johnston, et al., Pharm. Res. 9:425-434 (1992); およびPec, et al., J. Parent. Sci. Tech. 44(2):58-65 (1990))。または、ヒドロキシアパタイトは、タンパク質の制御放出向けのマイクロ担体として用いられている(Ijntema, et al., Int. J. Pharm. 112:215-224 (1994))。さらに別の局面では、リポソームが、脂質封入薬物の制御放出ならびに薬物のターゲティングのために用いられている(Betageri, et al., LIPOSOME DRUG DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA (1993))。治療タンパク質の制御送達については、様々なその他のシステムが公知である。例えば、それぞれ参照として本明細書に組み入れられている米国特許第5,055,303号、第5,188,837号、第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、第4,957,735および第5,019,369号、第5,055,303号;第5,514,670号;第5,413,797号;第5,268,164号;第5,004,697号;第4,902,505号;第5,506,206号;第5,271,961号;第5,254,342号および第5,534,496号を参照されたい。
【0178】
本発明の免疫毒素の各種使用対象には、融合タンパク質の毒作用により排除できる、特定のヒト細胞が原因となる各種疾患状態が含まれる。本発明の免疫毒素の好ましい応用の一つは、CD22を発現している悪性細胞の治療である。例示的悪性細胞としては、慢性リンパ細胞性白血病およびヘアリー細胞白血病が挙げられる。
【0179】
診断キットおよびインビトロ使用
別の態様では、本発明は生物サンプル中のCD22またはその免疫応答性断片(即ち、ひとまとめにして「CD22タンパク質」)を検出するためのキットを提供する。本明細書に使用する「生物サンプル」とは、CD22を含有する生物学的組織または液体のサンプルである。このようなサンプルとしては、以下に限定されるものではないが、生検の組織、血液および血液細胞(例えば白血球)が挙げられる。好ましくは、細胞はリンパ球である。生物サンプルはまた、組織学的目的のために採取された凍結切片のような組織片も包含する。生物サンプルは一般的に、多細胞真核生物、好ましくはラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、またはウサギのような哺乳動物から、より好ましくはマカク、チンパンジーまたはヒトのような霊長類から得る。最も好ましくは、サンプルはヒト由来である。
【0180】
キットは、本発明の抗CD22抗体を一般的に含む。いくつかの態様では、抗CD22抗体はscFvまたはdsFv断片のような抗22CD Fv断片である。
【0181】
これに加えて、キットは一般的には、本発明の抗体の使用方法(例えば、サンプル中の中皮細胞の検出に関する)を開示する取扱説明資料を含む。キットはまた、キットが目的とする具体的応用を容易にするための追加成分を含んでもよい。したがって、例えば、キットは標識を検出する手段(例えば酵素標識に関する酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、ヒツジ抗マウスHRPのような適当な二次標識等)を追加して含んでもよい。キットは、具体的方法の実施に一般的に用いられるバッファーおよびその他試薬を追加して含んでもよい。このようなキットおよび適当な内容物は、当業者には周知である。
【0182】
本発明の一つの態様では、診断キットは免疫アッセイを含む。上記のように、本発明の免疫アッセイの詳細は用いる具体的形式によって変わることがあるが、生物サンプル中のCD22を検出する方法は、一般的には生物サンプルを、免疫学的反応条件においてCD22と特異的に反応する本発明の抗体と接触させる段階を含む。抗体を免疫学的反応条件の下でCD22と結合させ、結合した抗体の存在を直接または間接的に検出する。
【0183】
本発明の抗体は親和性が高いことから、抗体は生物サンプル中のCD22の存在を検出するための診断薬およびインビトロアッセイとして特に有用である。例えば、本明細書に開示される抗体は、サンプルがCD22発現細胞を含有しているかどうかを判定する免疫組織学アッセイの免疫複合体のターゲティング部分として用いることができる。リンパ細胞中のCD22の検出は、患者がCD22発現細胞の存在を特徴とする癌に罹っていること、またはそのような癌の処置が、癌の根治に成功していないことを示すだろう。
【0184】
本発明に関する別の使用のセットでは、本発明の抗体によって方向付けされた免疫毒素を用いて、標的となった細胞を培養細胞集団から除去できる。このようにして、例えば、CD22を発現している癌に罹った患者からの培養細胞から、ターゲティング部分として本発明の抗体を用いた免疫毒素に培養物を接触させることで、癌細胞を除去することができる。
【0185】
実施例
実施例1
HA22は、最近BL22から改良、開発されたものであり、抗体の可変領域重鎖のCDR3(H-CDR3)中の残基SSYはTHWに突然変異している。HA22は、Salvatore, G. et al., Clin Cancer Res, 8(4):995-1002 (2002) および共願第PCT/US02/30316号、国際公開公報第03/027135号に詳しく記載されている。
【0186】
HA22の親和性をさらに改良できるかどうか調べるために、HA22の軽鎖CDR1(L-CDR1)内にあるファージディスプレイライブラリー(LibVL30/31)ターゲティングホットスポットを構築した。突然変異体ライブラリーLibVL30/31由来の10個のクローンの配列分析から、標的となったホットスポットがPCRによって無作為化されたことが示された(表1)。
【0187】
(表1)突然変異体ライブラリーLibVL30/31-3の配列分析

【0188】
ファージディスプレイライブラリーのサブトラクティブバイオパンニングおよびFACS分析
免疫応答の体細胞突然変異を模擬するために、高親和性ファージをCD22+Daudi細胞およびCD22-MCF7細胞に対しスクリーニングにかけた。
【0189】
サブトラクティブパンニング(subtractive panning)をCD22陰性MCF7細胞について行い、Daudi細胞については濃縮を行った。細胞(1×107個)を沈殿させ、1mlの冷ブロッキングバッファーに再懸濁させた。ライブラリーのファージ(〜1×1012個)を細胞懸濁液に加え、混合液をゆっくり、4℃で90分間回転した。最後の工程で、Daudi細胞をPBS/EDTA/ブロッキングバッファーで16回洗浄した。各洗浄には、氷上での15分間のインキュベーションが含まれた。次に結合したファージを溶出した(pH1.5)(表2)。オフレート(off-rate)選択の全持続時間は約4時間であった。結合ファージの蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を用いて、各バイオパンニング(biopanning)後の高結合体の濃縮度をモニタリングした。我々の知る限りでは、これが、バイオパンニングによるポリクローナルファージ抗体プール中の高結合体濃縮の定量的モニタリングへFACSを使用した最初の報告である。3回目のバイオパンニングの後、32個の個別クローンからモノクローナルscFvを調製し、ELISAを用いて組換え単鎖CD22β-Fcへの、またフローサイトメトリーによりDaudi細胞上のネイティブなCD22(αβ)へのそれらの結合能力を試験した(表3)。
【0190】
(表2)結合ファージの濃縮

【0191】
サブトラクティブバイオパンニングで濃縮された個々のファージ抗体を、フローサイトメトリーによりDaudi細胞について分析した(表3)。
【0192】
(表3)Daudi細胞に対するモノクローナルファージFACS分析および突然変異ファージの配列

【0193】
4つの突然変異体ファージ抗体(B5、E6、B8およびD8、斜線部分)は、元来の分子(HA22)に比べ、CD22陽性細胞に対しより高い親和性を有した。それらの相対親和性(高いものから低いものへの順番で)はB5>E6〜D8>B8である。高い結合体(斜線部分)には、主に塩基性アミノ酸(アルギニンおよびヒスチジン)が選択されていることは注目に値する。
【0194】
興味深いことに、いずれのコドンについても、第一と第二位置が二重突然変異して(または三重変異さえもある)、変化抗体に複数の突然変異したホットスポット残基が生じていたが、このようなことはB細胞の体細胞突然変異のプロセスではほとんど起こらない。例えば、ネイティブなマウス抗体のAGC-AAG(Ser-Asn)が変異体B5においてCAC-GGC(His-Gly)に変化することは、5つのヌクレオチド点突然変異に関係し、その場合第一および第二位置にある4つのヌクレオチド全てが突然変異している。体細胞突然変異のプロセスでのホットスポット突然変異には、個々のコドンについて、1ヌクレオチドの点突然変異だけが関係することが多いと報告されていることから(また表6に示すデータからも支持される)、インビボでこのような劇的な突然変異は起こりそうもない。これまでの研究において、Salvatoreらは、ファージディスプレイ技術を利用して、H-CDR3領域内のAGT-AGC-TAC(Ser-Ser-Tyr)部位がACG-CAC-TGG(Thr-His-Trp)に突然変異した高結合体(HA22)を得ている。第一および第二の位置の二重突然変異のみで、ヒスチジンが存在するようになった。この観察は、インビトロホットスポットをベースとした抗体の変化が、インビボのホットスポットをベースとした体細胞突然変異に比べ有利であることを示唆している。このことは、より高い結合親和性にとって好ましいホットスポット突然変異のいくつかがインビボでは起こらない理由を説明しているかもしれない。
【0195】
結合親和性に加えて、突然変異体ファージの特異性についても、MCF7細胞へのそれらの結合を測定することによって調べた。CD22陰性MCF7細胞を用いて試験した場合には、いくつかの突然変異体(例えばB5)は、HA22に比べ低い非特異的結合を示し(表4)、サブトラクティブパンニングが、元来の分子に比べ非特異的結合が低い突然変異体を濃縮できることを示している。
【0196】
(表4)MCF7細胞に対するモノクローナルファージFACS分析

【0197】
細胞毒性活性(IC50)
選択したファージより得た単鎖Fv(scFv)分子をT7発現ベクターにサブクローニングし、scFvを端断型シュードモナス体外毒素A(PE38)に融合させた。発現および精製後、細胞毒性の活性(IC50)を測定するために、組換え免疫毒素を複数のCD22陽性細胞株を用いて試験した。サブトラクティブパンニング形式は、複数の変種免疫毒素を成功裏に変化させ、それらの元来の分子(HA22)(表5)に比べて活性(IC50)を2倍、また元来のBL22に比べて8倍(IC50)高くした。
【0198】
(表5)3種類のCD22陽性細胞株に対する、選択されたRFB4(scFv)-PE38突然変異体の、ng/mlで表した細胞毒性活性(IC50)。細胞を免疫毒素と16時間インキュベーションし、タンパク質合成を測定した。(注記:H11およびE12は、ファージライブラリーLibVH30/31ターゲティングH-CDR1由来の突然変異体である。ND:実施せず)。

【0199】
CDRに共通するホットスポットは、インビトロ抗体評価のための良い候補になるだろう。
【0200】
(表6)RFB4の共通および非共通ホットスポット

注記:ホットスポット(A/G-G-C/T-A/TまたはA-G-C/T)は太字にしてある。軽鎖のCDR2領域にはホットスポットはない。生殖細胞配列との比較は、重鎖のCDR3領域については不可能である。
【0201】
表6に示すように、軽鎖のCDRならびに重鎖CDR1および2領域は、5つのDNAホットスポットを含んでいる。そのうちの3つは、それらの生殖細胞配列とは異なり(この比較の目的のため、「非共通」配列と呼ぶ)、また2つは生殖細胞配列と同一である(ここでは、この2つの配列を「共通」な配列と呼ぶ)。この研究では、2つのファージディスプレイライブラリーが作られた。その一つ、LibVL30/31はL-CDR1、AGC-AAT(Ser30-Asn31)の共通ホットスポットを標的にし、他方のLibVH30/31は、非共通のホットスポットであるH-CDR1、AGT-ATC(Ser-Ile)を標的にした。データは、LibVL30/31が、元来の分子より親和性の高い突然変異体を成功裏に複数生じたこと、またそれから作られた免疫毒素が高い活性を示したことを表している。しかしLibVH30/31から濃縮された、選択結合体(表5のH11およびE12)で有意に高い親和性を示すものはなく、またそれらから作られた免疫毒素は、高い細胞毒性活性を示さなかった。
【0202】
これらの結果は、共通ホットスポット配列(特にCDR1および2にあるものについて)が、インビトロの抗体評価の良い候補であることを示唆している。CDR3は、大きな体細胞突然変異挿入を持つ。RFB4の重鎖CDR3のホットスポットモチーフを目標にしたこれまでの研究は、元来の抗体よりも高い親和性を有する突然変異体(HA22)を得た。このホットスポットモチーフ(AGT-AGC-TACまたはSer-Ser-Tyr)は、多くの無関係な抗体の同一部位にも見出されており(例えばGenBankのAY182711、AF178590)、このホットスポットモチーフが体細胞突然変異挿入後に変化しないことを示唆している。この仮説はまた、我々の研究室で以前に行われた別のホットスポットをベースとしたインビトロ抗体成熟の研究からも支持されている(例えばSSおよび変化型SS1抗メソテリン(mesothelin)抗体)。非共通ホットスポット残基とは異なり、共通ホットスポットモチーフは、(1)劇的な変化が制限されている可能性があること、または(2)選択圧力が小さいことから、インビボで突然変異してない。いくつかの共通ホットスポットは抗原と直接接触しない可能性があるため、選択圧力はインビボ評価にとって十分なほど高くない。しかし、より厳密なインビトロ選択やより劇的な変化の潜在性は、大きく異なる抗体親和性成熟の展望を提供する。
【0203】
実施例2
本実施例は、実施例3に報告する研究での材料および方法を記載する。
【0204】
部位特異的突然変異誘導
突然変異は、二段階の重複PCR法を用い、RFB4(VH-GTHW(SEQ ID NO:))-PE38プラスミドDNAを鋳型にして導入した。突然変異部位(太字)ならびに制限エンドヌクレアーゼ部位SalIおよびEcoRI(下線部分)を含んだ突然変異誘導プライマーは次の通りである:
プライマーA

およびプライマーB

およびプライマーC

およびプライマーD


【0205】
まずPCR反応を、プライマーAおよびDまたはプライマーBおよびCを用いて増幅した。第一反応のPCRプロフィールは次の通りであった:95℃、1分間の変性、58℃、1.3分間のアニーリング、および74℃、2分間の伸長を30サイクル後、72℃、5分間の最後のインキュベーションが続いた。各第一反応液の一部(0.01ml)を一つにまとめ、プライマーCおよびDのみ使用する第二PCRに直接用いた。第二反応のPCRプロフィールは次の通りであった:96℃、1分間の変性、60℃、1分間のアニーリング、および72℃、2分間の伸長を30サイクル後、72℃、5分間の最後のインキュベーションが続いた。この反応は、突然変異を含む1,000塩基対の産物を生じた。この方法を用いて増幅したDNAを、次にInvitrogen T/AクローニングベクターpCR II(Invitrogen, San Diego, CA)に、それ以上精製せずにクローニングして、大腸菌 DH5αに形質転換し、ブルー・ホワイトスクリーニング法を用いて同定した。陽性クローンを、プライマーCおよびDを用いて配列決定した。SalIおよびEcoRIエンドヌクレアーゼでプラスミドを消化し、突然変異を起こした挿入体をpCR IIから取り出し、断片を同じ消化を受けたVH-PE38プラスミドに連結した。
【0206】
HA22(R490A)の発現および精製
ここでの研究に用いた免疫毒素は、ジスルフィド安定化Fvとして作られた。二本の鎖を、システインを用いてジスルフィド結合するように作り、別々に大腸菌に発現させ、封入体から精製する前に結合させた(これらの研究では、重鎖を毒素部分との融合タンパク質として発現した)。具体的には、他の免疫毒素についてこれまで記載されているように(Reiter, Y., et al., Biochemistry, 33(18):5451-9 (1994))、免疫毒素は大腸菌BL21(λDE3)に発現させ、封入体に蓄積させた。封入体をリゾチームで処理し、2.5% Triton X-100および0.5M NaClを用いたホモジナイゼーションおよび遠心分離によって4回洗浄し、続いてTriton X-100およびNaClを含まないTEバッファーを用いて濯ぎ、かつホモジナイゼーション、および遠心分離を4回行った。封入体タンパク質は、グアニジン−ジチオエリスリトール溶液に溶解し、変性および還元した。RFB4(VH-GTHW (SEQ ID NO:29))-PE38(R490A)を67mg、またはRFB4(VL)を33mg、それぞれ10mg/mlのタンパク質濃度で含む還元溶液を一つにまとめてから、L-アルギニンおよび酸化型グルタチオンを含むレドックスバッファーに100倍希釈して変性させた(Mansfield, E., et al., Blood, 90(5):2020-6 (1997))。タンパク質は、10℃で40時間かけて再び折り畳んだ。再び折り畳んだタンパク質を、0.1M尿素を含む20mMトリス、pH7.4で透析し、沈殿した凝集物を遠心分離により取り除いた。つぎに、タンパク質を、20mMトリス、pH7.4で洗浄した10mlのQ-Sepharose(Pharmacia, Piscataway, NJ)にかけ、0.3M NaClを含有する20mMトリス、pH7.4で溶出した。次にQ-Sepharose精製タンパク質を20mMトリス、pH7.4で5倍に希釈してから10mlのMono-Q(Pharmacia)カラムに載せ、直線勾配を用いて溶出してタンパク質を得た。濃縮Mono-Q精製タンパク質を、次にSuperose-12(Pharmacia)カラムに載せ、PBSで溶出してタンパク質6mgを得た(全組換えタンパク質の6%)。最終体内毒素含有量は0.86EU/mgタンパク質であった。タンパク質濃度は、Bradfordアッセイ(Coomassie Plus; Pierce, Rockford, IL)により決定した。
【0207】
細胞毒性アッセイ
HA22(R490A)の特異的細胞毒性は、96ウエルプレートでのタンパク質合成阻害アッセイ(トリチウム標識されたロイシンの細胞質タンパク質への取り込みの阻害)によって測定した。細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)、50μg/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、および2mMのL-グルタミンを含有するRPMI 1640において維持した。細胞毒性アッセイでは、200μlの培地に含まれる1.5×104細胞を96ウエルのプレートに播いた。Daudi、CA46、Raji、JD38およびA431細胞を用いた細胞毒性実験では、免疫毒素をPBS/0.2% BSAに連続希釈し、20μlを細胞に加えた。プレートを20時間、37℃でインキュベーションしてから、20μlのPBS/0.2%BSA中の1μCi/ウエルの[3H]ロイシンを用いて、4時間、37℃にてパルスした。三重測定したサンプルの値を平均し、毒素を加えないコントロールと比較した取り込み(%)を計算することによって、タンパク質合成の阻害を決定した。未処理のコントロール培養に対し[3H]ロイシンの取り込みを50%低下させる免疫毒素の濃度をIC50と定義した。
【0208】
細胞生存率アッセイ
HA22(R490A)処理による細胞増殖の阻害は、生細胞由来の酵素にるテトラゾリウム塩のホルマザンへの還元に基づく標準的なWSTアッセイで測定した。吸光度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)測定装置を用いて450nmで測定し、650nmの吸光度でバックグランドを補正し、そして生存率は未処理コントロールに対するパーセンテージとして表した。
【0209】
CA46細胞を、96ウエルプレートに、8,000細胞/ウエルで播いた。HUVEC(ヒト臍帯静脈上皮細胞(human umbilical vein endothelial cells))を、ウシ脳抽出物を加えた内皮細胞増殖培地(EGM)で増殖させたが、これらは共にClonetics Corp.(San Diego, CA)から購入した。細胞を96ウエルプレートに、3,000細胞/ウエルで播いた。免疫毒素を培地に連続希釈し、10μlを細胞に加えた。プレートを、40時間または72時間(HUVEC)、37℃でインキュベーションした。次にプレートの各ウエルにWST-8(2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩)溶液を5μl加え、細胞を4時間、37℃でインキュベーションした。450nmおよび650nmの光学密度は、ELISA測定装置を用いて測定した。三重測定したサンプルの値を平均し、毒素を加えないコントロールと比較したパーセント生存率を計算することによって生存率を決定した。バックグランド活性を補正するために、細胞を、10μg/mLのシクロヘキシミド(Sigma)存在下に培養した。これを、次の式を用いて計算した:(免疫毒素なしの細胞吸光度/シクロヘキシミドと共に培養した細胞の吸光度)/(免疫毒素存在下に培養した細胞の吸光度/シクロヘキシミドと共に培養した細胞の吸光度)。
【0210】
SS1P(R490A)の調製
490位の突然変異体(R490A)は、PCRをベースとする部位特異的突然変異導入によって構築した。この方法を用いて増幅したDNAを、次にそれ以上精製せずにInvitrogen T/AクローニングベクターpCR IIにクローニングし、大腸菌 DH5αに形質転換して、ブルー・ホワイトスクリーニング法を用いて同定した。突然変異を起こした挿入体は、プラスミドをSalIおよびEcoRIエンドヌクレアーゼで消化することによってpCR IIから取り出し、断片を同じように消化したSSVH-PE38プラスミドに連結した。
【0211】
ここでの研究に用いた免疫毒素は、二本の鎖を別々に大腸菌に発現させて、封入体から精製する前に結合させたdsFvとして作られた(これらの研究では、重鎖を毒素部分との融合タンパク質として発現した)。免疫毒素は、大腸菌 BL21(λDE3)に発現させ、封入体に蓄積させ、これは他の免疫毒素についてこれまで記載されているように(Reiter, Y., et al., Biochemistry, 33(18):5451-9 (1994))、SSVH-PE38(R490A)またはSS1(VL)を発現した。
【0212】
細胞毒性アッセイ
SS1P(R490A)およびSS1Pの特異的細胞毒性は、二種類の中皮陽性癌細胞株、完全長中皮cDNAをトランスフェクションされた類表皮腫細胞株であるA431/K5、およびA1847を対象に、タンパク質合成阻害アッセイを用いて評価した。細胞(1.5×104個)の入った培地200μlを96ウエルのプレートに播いた。24時間後、免疫毒素をPBS/0.2% BSAに連続希釈し、20μlを細胞に加えた。プレートを20時間、37℃でインキュベーションしてから、20μlのPBS/0.2% BSA中の1μCi/ウエルの[3H]ロイシンで、2時間、37℃にてパルスした。三重測定したサンプルの値を平均し、毒素を加えないコントロールと比較した取り込み(%)を計算することによって、タンパク質合成の阻害を決定した。未処理のコントロール培養に対し[3H]ロイシンの取り込みを50%低下させる免疫毒素の濃度をIC50と定義した。
【0213】
細胞生存率アッセイ
A431/K5またはA1847細胞を、96ウエルプレートに8,000細胞/ウエルで播いた。24時間後、免疫毒素を培地に連続希釈し、10μlを細胞に加えた。プレートを40時間、37℃でインキュベーションした。10μlのWST-8(2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩)溶液を、100μl培地/ウエルに加えて、1時間、37℃でインキュベーションした。450nmおよび650nmの光学密度を、ELISA測定装置を用いて測定した。三重測定したサンプル値を平均し、毒素を加えていないコントロールのウエルと比較したパーセント生存率を計算することによって、生存率を決定した。
【0214】
非特異的毒性アッセイ
0日目に、メスのSwissマウス(5〜6週齢、体重18〜22g)に、様々な量の免疫毒素を含む、0.2% HSAを含有する0.2mlのPBSを尾静脈に単回投与した。2週間にわたって、動物の死亡率を観察した。
【0215】
薬物動態
NIH Swissマウスの尾静脈に、BL22またはHA22、またはHA22(R490A)を10μg注射した。尾静脈から、血液サンプルを様々な時間に採取した。血液中のITの濃度は、ELISA法によって測定した。精製した免疫毒素を用いて、標準曲線を作製した。
【0216】
ELISA
血清中の免疫毒素のレベルは、次のELISAを用いて測定した。マイクロタイタープレートをCD22-Fcタンパク質(5μg/ml)のPBS溶液50μlを用いて、4℃で一晩コーティングした。プレートを、3% PBSを含有するPBSバッファーを用いて、室温で2時間ブロッキングした後、PBST(0.05% Tween-20を含有するPBS)で5回洗浄した。標準物質およびサンプルを、1%の正常マウス血清を含むリン酸緩衝化食塩水(PBS)に1/100、1/500および1/1000に希釈した。希釈した標準物質またはサンプル100μlを、コーティング済みELISAプレートに加え、4℃で一晩インキュベーションした。プレートをPBSTで5回洗浄した後、1:250に希釈したHRP標識抗PE抗体50μlと3時間、室温でインキュベーションした。PBSTで5回洗浄した後、TMBを用いて10分間発色させ、光学密度(OD)を450nmおよび650nmについて読み取った。開発段階に実施したアッセイは、三重測定で行った。
【0217】
抗腫瘍活性
ITの抗腫瘍活性は、CA46細胞を保持するSCIDマウスで決定した。細胞(1×107個)を、0日目にSCIDマウス(4〜5週齢、体重16〜18g)に皮下注射した。腫瘍移植後第6日までに、腫瘍は動物の中で〜100mm3の大きさになった。第6日から開始して、動物を、0.2mlのPBS/0.2%HSAに希釈した各ITを静脈内注射して処理した。治療は隔日に行い(QOD×3;第6日、8日および10日目)。各治療群は8または10匹の動物からなった。腫瘍は、2または3日ごとにノギスを使って測定し、腫瘍の体積は次式を用いて計算した:
腫瘍の体積(cm3)=長さ×(幅)2×0.4
【0218】
統計学
2つのデータ群間の統計分析については、両側スチューデントt検定(two-tailed Student's t test)を行った。0.05未満のP値を有意とした。
【0219】
実施例3
本実施例は、R490A突然変異を起こしたPEを用いて行った実験の結果について記載する。
【0220】
HA22は、CD22に対し高い親和性を有し、またCD22を発現するB細胞悪性腫瘍由来の細胞の殺滅に極めて活性のある組換え免疫毒素である。本研究の最終目的は、タンパク質分解消化に対して耐性であり、また望ましくは、その結果として、細胞内での非特異的なタンパク質分解を受けないか、または血液中での分解が小さいがゆえに、高い抗腫瘍活性を有するHA22の突然変異体を作ることである。これまでの研究は、ネイティブなPEのドメイン3のアルギニン490位を欠失させてタンパク質分解消化部位を破壊すると、マウス血液中のPEの半減期が延長した。位置490位の突然変異が引き起こすタンパク質構造の変化を最小限にとどめるために、R490は、ネイティブなPEを用いてこれまでに行われてきた欠失以外のアラニンに突然変異した(Brinkmann, U., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 89(7):3065-9 (1992))。
【0221】
免疫毒素の調製および特徴付け
免疫毒素HA22およびHA22(R490A)ならびにその他免疫毒素は、前記実施例に記載のようにして構築し、精製した。本研究の目的に関しては、作製した全ての免疫毒素は、VLをジスルフィド結合によってVH-PE38に結合させた、ジスルフィド結合免疫毒素であった。これらタンパク質を作るために、2つの構成要素をそれぞれ別に大腸菌に発現させ、復元前に組み合わせた。復元されたジスルフィド結合免疫毒素は、次にイオン交換(Q-Sepharose、Mono-Q)およびゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Superose-12)によって精製した。精製されたHA22(R490A)タンパク質の最終収率は出発封入体タンパク質の6%であり、HA22の場合は8%である。図4Aは、Suberose-12ゲル濾過カラムからのHA22(R490A)の溶出プロフィールを示す。クロマトグラムは、分子量63kDaのタンパク質と予想される位置である画分11〜15に溶出する一つのピークがあることを示している。高分子の凝集物は検出されなかった。図4Bは、ピーク画分(画分12)のSDS-PAGE分析を示す。HA22(R490A)は、非還元ゲルを、予想分子量63kDaの一本のバンドとして移動する。還元条件では、この一本のバンドは二本に別れ、それらはVLおよびVH-PE38に対応する。このことは、dsFv免疫毒素が正しく単量体に折り畳まれていることを示している。他の免疫毒素は、これまでに記載されたもの(Kreitman, R.J., et al., Int J Cancer, 81(1):148-55 (1999))と同様の様式で調製され、その純度はHA22(R490A)と同等であった。
【0222】
HA22(R490A)の細胞毒性
HA22、HA22(R490A)、およびBL22の細胞毒性活性は、複数のCD22陽性B細胞リンパ腫細胞株(Daudi、CA46およりRaji)および一種類のCD22陰性上皮癌細胞株(A431)を対象に、タンパク質合成阻害アッセイを用いて評価した。これらの値を、HA22の元となった免疫毒素のBL22の活性と比較した(表7)。図5に示し、表7に要約されているように、HA22(R490A)は、DaudiおよびCA46細胞に対して、HA22に比べ約2倍の活性であり、Raji細胞に対しては3倍の活性であった。BL22は、これら細胞株に対し、いずれの免疫毒素よりもはるかに活性が低い。免疫毒素は、CD22陰性のA431細胞についても試験され、約1000倍毒性が低いことが見出され、これら免疫毒素がCD22発現細胞に対し極めて特異的であることが示された。
【0223】
細胞生存率アッセイ
免疫毒素の活性は、WST-8を特異的基質とする細胞生存率アッセイを用いてCA46細胞についても評価した(Bai, et al., Free Radic. Biol. Med 30:555-562 (2001))。結果は、未処理のコントロール細胞のパーセンテージとして表される(図5C)。細胞生存率を50%阻害するのに必要なHA22(R490A)、HA22またはBL22の濃度は、それぞれ0.18ng/ml、0.32ng/mlおよび1.3ng/mlであった。これら3種類の免疫毒素間の活性差の大きさは、上記タンパク質合成アッセイの阻害に関する用量反応関係と同一であった。
【0224】
特異性をさらに評価するために、HA22(R490A)が内皮細胞死を誘導するか検証した。内皮細胞は、CD22は発現していないが、いくつかの免疫毒素の有毒副作用において役割を果たす可能性があることから選ばれた(Vitetta, E.S., Cancer J, 6 Suppl 3:S218-24 (2000))。内皮細胞株HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞、例えばCambrex BioScience Baltimore Inc., Baltimore, MDより市販されている)を、HA22(R490A)、HA22、BL22、HB21(Fv)-PE40またはLMB-7で処理した。HB21(Fv)-PE40は、多くのタイプの細胞で発現しているトランスフェリン受容体を標的とし、HUVEC細胞に細胞毒性であると予想されていた。LMB7は、HUVEC細胞で発現していることが既に示されているLeY抗原(Mansfield, E., et al., Bioconjug Chem, 7(5):557-63 (1996))を標的とする。図6に示すように、HA22(R490A)、HA22またはBL22のいずれもHUVECの生存率を下げなかった。しかしながら、予想通り、HB21(Fv)-PE40およびLMB7は共に細胞に対し、細胞毒性であった。これらの結果も、HA22(R490A)の特異性を確認している。
【0225】
マウス研究
HA22(R490A)は、CD22陽性細胞株に対し、HA22と比べより細胞毒性であることから、その抗腫瘍活性をHA22のものと比較した。これを実施する前に、マウスに対するそのLD50を決定し、この新規免疫毒素がマウスに対し強い毒性を持っていないことを確認した。5匹以上からなるマウスの群に、様々な用量のHA22(R490A)、HA22またはBL22を単回静脈内注射して投与し、2週間観察を行った。表8は、毒性データを示す。HA22およびHA22(R490A)は、約1.3mg/kgのLD50の、非常によく似た動物毒性を有している。BL22は、若干毒性が強く、1.25mg/kgの用量で全てのマウスが死亡した。殆ど全ての死亡は、処理後72時間以内に起こった。これらのデータは、R490A突然変異体が、マウス毒性に殆ど影響しないことを示している。
【0226】
薬物動態
抗腫瘍活性の別の重要パラメータは、血中に免疫毒性が残留して、腫瘍細胞と相互作用できる時間の長さである。HA22(R490A)およびその他免疫毒素のマウス血液中でのt1/2を決定するために、マウスに10μgのBL22、HA22またはHA22(R490A)の単回用量を静脈内投与した。各作用物質を注射した後、様々な時間で尾静脈より血液サンプルを採取し、ELISAを用いて各免疫毒素の血漿レベルを測定した。図7は、90分間のHA22およびHA22(R490A)の血漿濃度プロフィールを示す。各データポイントは、4匹の動物からのサンプルの平均である。HA22の血漿半減期は21.9分であったのに対し、HA(R490A)の半減期は18.8分であった(表9)。BL22の半減期はより長く、27.7分であった。したがって、R490Aの突然変異は、半減期を僅かに短縮する。
【0227】
(表7)各種細胞株に対するBL22および突然変異体ITの、ng/mlで表した細胞毒性活性(IC50)

細胞毒性データはIC50として与えられるが、それは細胞と24時間インキュベーションした後の、コントロールと比較した、タンパク質合成を50%阻害する免疫毒素の濃度である。
【0228】
(表8)HA22およびHA22(R490A)の、マウスにおける非特異的毒性

0日目に、メスのSwissマウス(5〜6週齢、体重18〜22g)に、様々な量の免疫毒素を含む、0.2% HSAを含有する0.2mlのPBSを尾静脈に単回注射した。2週間にわたって、動物の死亡率を観察した。
【0229】
(表9)マウスにおける免疫毒素の薬物動態

*曲線下面積
【0230】
実施例4
本実施例は、ヒト腫瘍異種移植片を保持する動物に対する、R490A突然変異誘導PEの作用を調べる実験の結果を示す。
【0231】
抗腫瘍活性
向上したインビトロ細胞毒性活性が、高い抗腫瘍活性に翻訳されるかどうか判定するために、SCIDマウスで増殖するCA46細胞の腫瘍異種移植片を用いて、HA22(R490A)およびHA22を比較した。0日目に、CA46細胞(1×107個)をSCIDマウスの側腹に移植した。6日目、腫瘍が〜100mm3の大きさになった時点で、隔日、3回、動物にHA22またはHA22(R490A)を300μg/kg(n=10)または150μg/kg(n=8)を静脈注射した。図8に示すように、HA22(R490A)またはHA22による処理は、コントロールに比べ腫瘍の大きさを小さくした。10日目までに、300μg/kgのHA22(R490A)を投与されたマウスでは、腫瘍の大きさは85mm3に縮小したが、一方300μg/kgのHA22で処理されたマウスでは、腫瘍の大きさは126mm3であった。150μg/kgのHA22(R490A)による処理では、18日目の腫瘍の大きさは平均で358mm3であったが、一方、HA22で処理された腫瘍は平均で592mm3と有意に大きかった(図8A)。抗腫瘍活性は、用量にも依存した;両方の免疫毒素において、150μg/kgは300μg/kgよりも効果は小さかった。処理無しでは、CA46腫瘍は急速に増殖し、動物を犠牲にした22日目までには2,000mm3を超える大きさに達した。処理10日目(p=0.0006)および16日目(p=0.0003)に150μg/kg;ならびに処理14日目(p=0.00068)および18日目(p=0.00096)に300μg/kgのHA22を投与されたマウスとHA22(R490A)を投与されたマウスとの間に、腫瘍の大きさについて有意な差(P<0.001、スチューデントt検定)が見出された。
【0232】
表10は、これら各用量レベルの動物毒性を示している。死亡例はなく、何匹かに体重の減少があった。300μg/kgでは、HA22(R490A)処理を受けた10匹のマウスのうち2匹が、またHA22処理を受けたマウス10匹中3匹が、初回注射から4日間の間、若干の体重減少を経験した(5%未満)。マウスは、最終注射後2〜4日で体重が増え始め、14日目までには開始時の体重に戻った。体重については、HA22(R490A)処理群とHA22群の間に有意差は見られなかった。これに対し、150μg/kg用量では、免疫毒素処理群の体重曲線はコントロール(未処理)群のものに極めて近かった。したがって、抗腫瘍作用は、動物の健康不良によるものではない。データは、HA22(R490A)がHA22に比べ高い抗腫瘍活性を有することを示している。
【0233】
(表10)SCIDマウスに投与されたHA22およびHA22(R490A)の毒性

【0234】
実施例5
本実施例は、PEがR490A突然変異を含む第二免疫毒素について行った実験の結果を記載する。
【0235】
免疫毒素SS1P
メソテリンは、膵臓および卵巣癌ならびに中皮腫に強く発現する抗原である。SS1Pは、メソテリンに結合し、メソテリン発現細胞を殺す、PEをベースとした免疫毒素である。R490A突然変異が、上皮癌における免疫毒素標的の細胞毒性活性も上げるかどうか判定するために、R490A突然変異をSS1Pに導入してSS1P(R490A)を産生した。両方の免疫毒素を調製し、2種類のメソテリン発現細胞株について試験した。表11のデータは、SS1P(490A)が、2種類のメソテリン発現細胞株に対しSSIPに比べ有意に活性であり、活性が約2倍上昇していることを示している。
【0236】
(表11)SS1PおよびSS1P(R490A)の細胞毒性

細胞毒性アッセイは、示した濃度の免疫毒素で処理した20時間後に、細胞への[3H]ロイシンの取り込みを測定することで実施した。IC50は、タンパク質合成を50%阻害する濃度である。
*は50%細胞生存率を示す。細胞生存率は、WST-8法により測定した。結果は、免疫毒素がない場合のコントロール値に対するパーセンテージとして表した。
【0237】
特定の例を示してきたが、上記の記載は例示であり、制限するものではない。この明細書を吟味することで、本発明の多くの変形が当業者に明らかになるだろう。それゆえに、本発明の範囲は、上記の記載の参照から画定せず、あらゆる範囲の均等物を加え、添付の請求項を参照して画定されるべきである。
【0238】
本明細書に引用した全ての刊行物および特許は、参照として、全ての目的に関し、個々の刊行物または特許文献が個々に示されているのと同じ範囲でそのまま全体が組み入れられる。本明細書内の各種参照の引用は、具体的な参照が本発明の「先行技術」と見なせることを認めるものではない。
【0239】







【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】RFB4軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)、ならびに、RFB4重鎖の可変領域のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図である。CDRはIMGTプログラム(Lefranc, Nucl. Acids Res. 29:207-209, 2001;また「http://」と入力し、続いて「imgt.cines.fr」と入力することによって、オンラインで見ることができる)を用いて割り付け、下線を付けた(番号は付けていないが、各鎖のCDR1、2および3は、それぞれの鎖の中に、小さい番号から順番に示す)。DNAホットスポット(A/G-G-C/T-A/TおよびA-G-C/T)を強調した。
【図2】Kabatデータベースの登録番号038145の印刷物であり、RFB4軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)および各アミノ酸残基に対応するKabat位置番号を示している図である。
【図3】Kabatデータベースの登録番号038146の印刷物であり、RFB4重鎖の可変領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)および各アミノ酸残基に対応するKabat位置番号を示している図である。
【図4】図4Aは、Superose-12ゲル濾過カラムクロマトグラフィーからの、精製HA22(R490A)免疫毒素の溶出プロフィールを示す図である。(A)の下部の番号は、クロマトグラム上に付けられた分画番号である。図4Bは、非還元条件および還元条件でのHA22(R490A)のSDS-PAGEを表す図である。HA22(R490A)は、実施例2記載のように調製し、溶出画分#12を4%〜20%のポリアクリルアミドゲルで分析した。レーン:レーンM:分子量標準物質;レーン1:非還元条件;およびレーン2:精製HA22(R490A)免疫毒素を、DTT含有SDSサンプルバッファー内で5分間煮沸して還元した。ゲルはクマシーブルーで染色した。非還元状態でのdsFv免疫毒素の移動は、Mr〜63,000を示し、レーン2は、それが還元状態では、VL鎖(Mr〜12,000)およびVH-PE38融合タンパク質(Mr〜51,000)に解離することを示している。
【図5】図5Aおよび5Bは、タンパク質合成の阻害を示す図であり、図5Cは3つの免疫毒素構築物:BL22、HA22およびHA22(R490A)のうちの一つと接触させたCD22陽性細胞の細胞生存率を示す図である。図5AおよびBでは、タンパク質合成の阻害は、示した濃度の免疫毒素で処理した20時間後の、細胞内へ取り込まれた[3H]ロイシンのパーセントとして測定された。図5A:CA-46細胞、図5B:Daudi細胞。タンパク質合成の阻害(50%)は、毒素非存在下の取り込みレベルと、10μg/mlのシクロヘキシミド存在下の取り込みレベルの中間である。図5C:CA-46細胞を、免疫毒素と共に40時間インベーションしてから、WST-8を4時間加えた。ホルマザンの産生は、OD 450nmおよび650nmで測定した。3つの図全てについて、記号は次の通りである:○、BL22;□、HA22;および△、HA22(R490A)。各点について、三回のサンプル値の平均をとった。
【図6】各種免疫毒素に接触させたHUVEC細胞の細胞生存アッセイを示す図である。HUVEC(3×103細胞/ウエル)を、各種濃度の免疫毒素と72時間インキュベーションした。細胞の生存率は、実施例2に記載のWST転換アッセイにより測定した。アッセイは、他の細胞受容体を対象とする免疫毒素が、BL22、HA22およびHA22(R490A)と比較して、HUVEC細胞に対し毒性がより強いことを示している。結果は、免疫毒素インキュベーションなしでの生存率(%)として示しており、かつ三回の値の平均を表している。説明:○、BL22;□、HA22;△、HA22(R490A);◇、HB21Fv-PE40;およびX、LMB-7。
【図7】マウスにおけるHA22(R490A)の薬物動態を示す図である。正常、メスSwissマウスに、10μgのHA22(●)またはHA22(R490A)(▽)を静脈注射した。血液サンプルを、示した時点で採取した。各免疫毒素の血中濃度を、ELISAによって測定した。
【図8】HA22およびHA22(R490A)の抗腫瘍活性を示す図。両図:CA46細胞を、0日目にSCIDマウスの皮下に移植した。図8A:6日目、腫瘍が>100mm3に増殖した時点で、8匹または10匹の群を観察(■)するか、または0.2mlのPBS/0.2% HSAに希釈したHA22(●)もしくはHA22(R490A)(▽)を静脈注射した。治療は、一日おきに(6、8および10日目;矢印で示したように)、150μg/kg QOD×3を用いて行った。図8B:300μg/kg QOD×3のHA22(●)で治療したマウスの抗腫瘍活性は、未治療(■)または300μg/kg QOD×3(▽)のHA22(R490A)で治療したマウスの反応と対照的であった。治療は、一日おきに(6、8および10日目;矢印で示したように)行った。これら投与量では、死亡例は観察されなかった。両図:誤差バーは、各群のマウスの平均値からの標準偏差を示している。各投与量でのHA22とHA22(R490A)との比較は、統計学的に有意であった(P=0.01〜0.001)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD22に特異的に結合する抗体であって、アミノ末端に最も近い相補性決定領域(CDR)からカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する、抗体。
【請求項2】
CDR1がSEQ ID NO:7の配列を有する、請求項1記載の抗CD22抗体。
【請求項3】
さらにCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項1記載の抗CD22抗体。
【請求項4】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有する、請求項1記載の抗CD22抗体。
【請求項5】
アミノ末端に最も近い相補性決定領域(CDR)からカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変重鎖(VH)をさらに含み、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
CDR3がSEQ ID NO:16の配列を有する、請求項5記載の抗体。
【請求項7】
VH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項5記載の抗体。
【請求項8】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項1記載の抗体。
【請求項9】
以下を含む、キメラ分子:
(a)CD22に特異的に結合する抗体であって、アミノ末端に最も近い相補性決定領域(CDR)からカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDR1が、SEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する、抗CD22抗体;ならびに
(b)治療部分または検出可能な標識。
【請求項10】
さらにCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項9記載のキメラ分子。
【請求項11】
抗体が、アミノ末端に最も近い相補性決定領域(CDR)からカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にCDR1、2および3と名付けられた3つのCDRを含む可変重鎖(VH)をさらに含み、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項9記載のキメラ分子。
【請求項12】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項9記載のキメラ分子。
【請求項13】
治療部分が、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームからなる群より選択される、請求項9記載のキメラ分子。
【請求項14】
作用成分が細胞毒素である、請求項13記載のキメラ分子。
【請求項15】
細胞毒素が、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素、またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス(Pseudomonas)体外毒素(exotoxin)Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、およびボツリヌス菌毒素A〜Fからなる群より選択される、請求項14記載のキメラ分子。
【請求項16】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項15記載のキメラ分子。
【請求項17】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンの置換基を有する、請求項15記載のキメラ分子。
【請求項18】
SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置の置換基がアラニンである、請求項17記載のキメラ分子。
【請求項19】
請求項9記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項20】
請求項10記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項21】
請求項11記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項22】
請求項12記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項23】
請求項14記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項24】
請求項17記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項25】
CD22に特異的に結合する抗体の使用であって、抗CD22抗体が3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する、CD22+癌細胞の増殖を阻害する医薬品の製造のための使用。
【請求項26】
さらにCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項25記載の使用。
【請求項27】
抗体が3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含み、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項25記載の使用。
【請求項28】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項25記載の使用。
【請求項29】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項25記載の使用。
【請求項30】
抗体が治療部分または検出可能な標識に結合または融合している、請求項29記載の使用。
【請求項31】
治療部分が、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームからなる群より選択される、請求項30記載の使用。
【請求項32】
治療部分が細胞毒素である、請求項31記載の使用。
【請求項33】
細胞毒素が、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、およびボツリヌス菌毒素A〜Fからなる群より選択される、請求項32記載の使用。
【請求項34】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項33記載の使用。
【請求項35】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、請求項33記載の使用。
【請求項36】
アラニンがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンから置換されている、請求項35記載の使用。
【請求項37】
3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)をコードする単離された核酸であって、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する、核酸。
【請求項38】
さらにCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項37記載の核酸。
【請求項39】
3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらにコードし、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項37記載の核酸。
【請求項40】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつ、コードされた抗体のVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項37記載の核酸。
【請求項41】
scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される抗体をコードする、請求項37記載の核酸。
【請求項42】
さらに治療部分または検出可能な標識であるポリペプチドをコードする、請求項37記載の核酸。
【請求項43】
さらに治療部分が、薬物または細胞毒素である、請求項42記載の核酸。
【請求項44】
さらに細胞毒素が、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)である、請求項43記載の核酸。
【請求項45】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項44記載の核酸。
【請求項46】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、請求項44記載の核酸。
【請求項47】
アラニンがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンから置換されている、請求項44記載の核酸。
【請求項48】
作動可能にプロモーターに連結している請求項37記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項49】
作動可能にプロモーターに連結している請求項38記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項50】
作動可能にプロモーターに連結している請求項39記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項51】
作動可能にプロモーターに連結している請求項40記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項52】
作動可能にプロモーターに連結している請求項44記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項52】
作動可能にプロモーターに連結している請求項46記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項53】
CD22+癌細胞を、以下を含むキメラ分子と接触させることにより、該細胞の増殖を阻害するための方法であって、治療部分が該細胞の増殖を阻害する、方法:
(a)CD22に結合する抗体であって、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有する、抗体;ならびに
(b)治療部分。
【請求項54】
さらにVLのCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつ該VLのCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
抗体が3つの相補性決定領域(CDR)を含むVH鎖を含み、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項53記載の方法。
【請求項56】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
抗体が、scFv、dsFv、Fab、またはF(ab')2からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項58】
治療部分が、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項59】
治療部分が細胞毒素である、請求項53記載の方法。
【請求項60】
細胞毒素が、リシンA、アブリン、リボトキシン、リボヌクレアーゼ、サポリン、カリケアマイシン、ジフテリア毒素またはその細胞毒性断片もしくは突然変異体、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)、およびボツリヌス菌毒素A〜Fからなる群より選択される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、請求項60記載の方法。
【請求項63】
アラニンがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンから置換されている、請求項62記載の方法。
【請求項64】
以下の段階を含む、生物サンプル中のCD22+癌細胞の存在を検出するための方法であって、標識の存在を検出することが該サンプル中にCD22+癌細胞が存在することを示す、方法:
(a)該生物サンプルの細胞を、
(i)CD22に特異的に結合する抗体であって、3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有し、下記(ii)に結合もしくは融合している、抗体、および
(ii)検出可能な標識
を含むキメラ分子と接触させる段階;ならびに
(b)該標識の有無を検出する段階。
【請求項65】
さらに抗体のVLのCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつ抗体のVLのCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項64記載の方法。
【請求項66】
抗体が3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖(VH)をさらに含み、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項64記載の方法。
【請求項67】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項64記載の方法。
【請求項68】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項64記載の方法。
【請求項69】
以下を含むキット:
(a)容器、ならびに
(b)(i)3つの相補性決定領域(CDR)を含む可変軽鎖(VL)を有し、該CDRがアミノ末端に最も近いCDRからカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられ、該CDR1がSEQ ID NO:7、8、9および10からなる群より選択される配列を有し、下記(ii)に結合もしくは融合している、抗CD22抗体、および
(ii)検出可能な標識または治療部分
を含むキメラ分子。
【請求項70】
さらに、抗体のVLのCDR2がSEQ ID NO:11の配列を有し、かつ抗体のVLのCDR3がSEQ ID NO:12の配列を有する、請求項69記載のキット。
【請求項71】
抗体が、アミノ末端に最も近い相補性決定領域(CDR)からカルボキシル末端に最も近いCDRに向かって順番にそれぞれCDR1、2および3と名付けられる3つのCDRを含む可変重鎖(VH)をさらに含み、
該CDR1がSEQ ID NO:13の配列を有し、
該CDR2がSEQ ID NO:15の配列を有し、かつ
該CDR3がSEQ ID NO:15、16、17、18および19からなる群より選択される配列を有する、請求項69記載のキット。
【請求項72】
VL鎖がSEQ ID NO:20の配列を有し、かつVH鎖がSEQ ID NO:21の配列を有する、請求項71記載のキット。
【請求項73】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項69記載のキット。
【請求項74】
治療部分が、細胞毒素、薬物、放射性同位元素、または薬物もしくは細胞毒素を付加されたリポソームからなる群より選択される、請求項69記載のキット。
【請求項75】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体。
【請求項76】
PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項75記載のPE。
【請求項77】
SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する、請求項75記載のPE。
【請求項78】
シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)に結合もしくは融合しているターゲティング部分を含むキメラ分子であって、該PEはSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、キメラ分子。
【請求項79】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項78記載のキメラ分子。
【請求項80】
PEがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する、請求項78記載のキメラ分子。
【請求項81】
ターゲティング部分が抗体である、請求項78記載のキメラ分子。
【請求項82】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項81記載のキメラ分子。
【請求項83】
請求項78記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項84】
請求項79記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項85】
シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)をコードする単離された核酸であって、該PEはSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、核酸。
【請求項86】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項85記載の単離された核酸。
【請求項87】
PEがSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する、請求項85記載の単離された核酸。
【請求項88】
核酸がさらにターゲティング部分をコードする、請求項85記載の単離された核酸。
【請求項89】
ターゲティング部分が抗体である、請求項88記載の単離された核酸。
【請求項90】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項89記載の単離された核酸。
【請求項91】
作動可能にプロモーターに連結している請求項85記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項92】
作動可能にプロモーターに連結している請求項86記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項93】
作動可能にプロモーターに連結している請求項87記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項94】
作動可能にプロモーターに連結している請求項88記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項95】
ターゲティング部分により標的化される細胞の増殖を阻害する医薬品の製造のための、シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)に結合もしくは融合している該ターゲティング部分の使用であって、該PEはSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有する、使用。
【請求項96】
PEが、PE35、PE38、PE38KDEL、PE40、PE4EおよびPE38QQRからなる群より選択される、請求項95記載の使用。
【請求項97】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置にアラニンを有する、請求項95記載の使用。
【請求項98】
ターゲティング部分が抗体である、請求項95記載の使用。
【請求項99】
抗体が、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2からなる群より選択される、請求項98記載の使用。
【請求項100】
細胞を以下を含むキメラ分子と接触させる段階を含む、標的分子を保持する細胞の増殖を阻害する方法であって、PEはSEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わって、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを有し、該細胞の該キメラ分子との接触が該細胞の増殖を阻害する、方法:
(a)該標的分子に結合するターゲティング部分;および
(b)シュードモナス体外毒素Aまたはその細胞毒性断片もしくは突然変異体(「PE」)。
【請求項101】
標的分子がサイトカイン受容体であり、かつターゲティング部分が該受容体に結合するサイトカインである、請求項100記載の方法。
【請求項102】
標的分子が抗原であり、かつターゲティング分子が該抗原に結合する抗体である、請求項100記載の方法。
【請求項103】
抗原が腫瘍関連抗原である、請求項102記載の方法。
【請求項104】
PEが、SEQ ID NO:24の位置490位に対応する位置でアルギニンに代わってアラニンを有する、請求項100記載の方法。
【請求項105】
標的分子がIL-13受容体であり、かつターゲティング分子がIL-13、IL-13受容体結合能を保持する突然変異型IL-13、順序入替え型IL-13、またはIL-13受容体の鎖と特異的に結合するがIL-4受容体とは結合しない抗体である、請求項100記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−536905(P2007−536905A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541725(P2006−541725)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039617
【国際公開番号】WO2005/052006
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506178335)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】