説明

突起物を配設した包丁及び製造法。

【課題】
包丁の刃板面に薄切りしているときの野菜が付着するのを防止すること。
【解決手段】
包丁の刃板面1に突起物5を配設して、薄切り野菜との接触面積を小さくし、剥離効果を持たせて切り離れ性を向上させ、薄切り野菜が刃板面1に付着することを防止できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、あるいは業務用で使用される包丁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、包丁は調理で食材を切断するために使用されているが、特に水分を多く含む食材の切断では、包丁の刃板面に切断された食材が密着してしまい切断作業を行い難くしていた。
【0003】
これを改善する為に、包丁の刃板面に穴を開けたものや、刃板面の取っ手側から切先側にかけて凸条部を設けたもの(文献1)、刃板面に設けた穴にプラスチック原料を注入し、加熱成型で付着防止具と刃板面に一体成型させたもの(文献2)、刃板面に造形模様である複数の凸部と複数の凸条部等を設けたもの(文献3)、刃板面に切り離れさせるガイド部材を磁力で取り付けたもの(文献4・文献5)、刃板面にビニール製粘着テープを張ったものやクリップを有した側面が緩やかにカーブした長方形の板を包丁の補助具として取り付けたもの(文献6)、刃板面に穴を設け、この穴を利用して刃板面に密着させた合成樹脂板の表面に多数の凹凸を設けたもの(文献7)、ロール圧延処理により刃板面となる鋼板の表面に凹凸のエンボス模様を形成し、それから包丁に加工したもの(文献8)などがある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−300060
【特許文献2】特開平11−076641
【特許文献3】特開平11−042376
【特許文献4】特開平07−299260
【特許文献5】特開2002−000970
【特許文献6】特開2005−021537
【特許文献7】特開2001−293266
【特許文献8】特開2003−190669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
包丁の切り離れを改善する方法として、従来の方法にはいくつか有るが実効性、衛生面、生産コスト面、等で納得の行くものは無かった。
【0006】
包丁の刃板面に穴を開けたものは、刃板面の強度を損なうため板厚を増やす必要があり、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、穴を形成するのにプレスによるものは金型を必要とし製造原価が高くなる、更に、穴の内面に食材の切りカスが付着しやすく、一度汚れが付着すると簡単に落ちないので衛生面にも問題がある。
【0007】
刃板面の取っ手側から切先側にかけて凸条部を設けたものは、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、突起部を形成するのにプレスによるものは金型を必要とし製造原価が高くなる、ハンマーによる手打加工の方法もあるが、これも原価が高くなるなど問題がある。
【0008】
刃板面に設けた穴にプラスチック原料を注入し、加熱成型で付着防止具と刃板面に一体成型させたものは、包丁の厚みが増し、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、使用しているうちに刃板面と付着防止具の隙間に食材の切りカスが入り、これを取り除く事が出来ないので衛生面にも問題がある、また、付着防止具が使用中に外れるなどの不具合がある。
【0009】
刃板面に造形模様である複数の凸部と複数の凸条部等を設けたものは、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、突起部を形成するのにプレスによるものは金型を必要とし製造原価が高くなる、ハンマーによる手打加工の方法もあるが、これも原価が高くなるなど問題がある。
【0010】
刃板面に切り離れさせるガイド部材を磁力で取り付けたものは、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、使用しているうちに刃板面と付着防止具の隙間に食材の切りカスが入り、衛生面にも問題がある、いくら強力な磁石でも使用中にずれたり、落下するなどの不具合がある。
【0011】
刃板面にビニール製粘着テープを張ったものは、それにより包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、使用中にテープがめくれて食材の切りカスが付着しやすく、衛生面にも問題がある。
【0012】
クリップを有した側面が緩やかにカーブした長方形の板を包丁の補助具として取り付けたものは、使用中にずれたり、外れたりして連続使用に耐えない不具合がある。
【0013】
刃板面に穴を設け、この穴を利用して刃板面に密着させた合成樹脂板の表面に多数の凹凸を設けたものは、合成樹脂板が包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、また、刃板面と合成樹脂板の隙間に食材の切りカスが付着しやすく、一度汚れが付着すると簡単に落ちないので衛生面にも問題ある、また、合成樹脂板が使用中に取れるなどの不具合がある、また、合成樹脂板の表面部に設けた凹凸部が磨耗して、切り離れ効果を失ってしまうなどの不具合がある。
【0014】
ロール圧延処理により刃板面となる鋼板の表面に凹凸のエンボス模様を形成し、それから包丁に加工したものは、圧延機に合わせたロールに凹凸のエンボス模様を形成する必要があり、一度形成した模様は簡単に変更出来ない、また、細かい模様をロール上に作ることには限度があり、設備面でコストが高くなってしまう、また、前工程で鋼板の表面に凹凸のエンボス模様を作っているので、縦断面がくさび形に加工したときに刃先に向かうに従い凹凸のエンボス模様の凹凸差が小さくなり場合によっては無くなってしまいきり離れ効果を失ってしまう不具合がある。
【0015】
そこで、本発明は従来の方法にこれらの問題点を見つけ、これらを解決したもので切り離れ性に優れた、包丁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、刃板面に突起物を設けたものである。
【0017】
本発明は、峰にエッジを設けたものである。
【0018】
本発明は、突起物の頭頂が刃板面の面位置となるように配設したものである。
【0019】
本発明は、突起物のそれぞれの寸法範囲を、外径を1.0から4.0mm、高さを0.15から0.35mm、各突起物の前後左右の間隔を2.0から10.0mmにし、それぞれを適宜に組み合わせて使用する。
【0020】
本発明は、突起物の頭頂を研磨し面取りを行い接触面積を小さくしている。
【0021】
本発明は、以上のことから、薄切り野菜が包丁に付着しない効果がある。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明について、従来の包丁は刃板面が平らであるため薄切り野菜が付着して切断作業がし難いという不具合があったが、本発明は、刃板面に突起物を配設した構造により、小さな面積の突起物の頭頂が薄切り野菜と接触することから薄切り野菜が付着する事がない。
【0023】
請求項2記載の発明について、刃板部の峰にエッジを設けることにより、刃板部の強度を増し、曲がりを防止する働きがある。
【0024】
請求項3記載の発明について、従来の切り離れの良い包丁として考案されているものは、刃板面上に一体成形した凸部、または、凸条部を設けるか、あるいは別物を作って種々の方法で取り付けているが、これらの方法は刃板面の面位置より飛び出た形態をなしているので包丁本来の機能である切り込みを阻害してしまう、本発明は配設した突起物の頭頂が刃板面の面位置になるため包丁本来の機能である切り込みを阻害せず、軽くらくに切り込みが出来る、また、本発明の突起物は刃板面に一体に形成されているため、別物を取り付けたものと違い使用中に外れるなどの不具合がない。
【0025】
請求項4記載の発明について、刃板面に配設する突起物の外径、高さ、各突起物の前後左右の間隔などの寸法範囲に関するものであるが、この範囲内で包丁の板厚に合った寸法を実験的に選んで決定すれば、薄切り野菜が突起物に接触する面積を小さくする事が出来、確実に切り離れ効果が得られる、また、穴明き包丁や別物を取り付けた包丁は、これらの穴や刃板面と別物を取り付けた隙間に食材の切りカスが入ってしまい、これをきれいに取り除く事が出来ないなどの衛生面の問題もあった、本発明は、小さい突起物で配設されているので、包丁を使用した後の洗い、拭き取りが簡単確実に出来、また、突起物は刃板面に一体に形成されているため、食材のカスが入り込むところがなく、この点においても衛生的である。
【0026】
請求項5記載の発明について、本発明の製造に関するもので、エッチング加工、レーザー加工、放電加工等により刃板面に突起物を残すように突起物周辺を掘り下げ突起物を形成することから高価な金型等を必要としないので、生産数量が少なくとも任意の形状の突起物を安価に作る事が出来る、また、突起物の頭頂の角を研磨して面取りをすることにより更に薄切り野菜などに接触する面積を小さく出来るので剥離効果が大きくなって切り離れ性が良くなる。
【0027】
従来の穴明き加工、凸部加工、凸条部加工、梨地加工、エンボス加工、別物取り付け等で切り離れ効果を出していると言われる包丁は、薄切り野菜などに接触する面積が大きく実用的効果は得られていないのが現実である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を図2、図3にもとづいて説明する。
【0029】
実施の一例として従来の包丁製造方法の直接型抜方式をもとにエッチング加工を使用した例について説明する、鋼板をプレスで包丁の輪郭に打ち抜き中子のリベット穴をあける、次に焼き入れ、ひずみ取り、自働研削盤で刃板部の縦断面がくさび形(図3)になるように削る(ここまでが従来の包丁製造方法)、次に本発明の工程に移り、図2のように刃板部Bの峰4にエッジ6の巾を5mm取り、刃先2から10mmのところまでに突起物5をエッチング加工で形成するとして、前記10mmの位置の板厚が0.6mmとすると突起物5の高さを0.25mm、外径を1.5mm、突起物5の前後左右の間隔を3mmとした突起物5をエッチング加工で配設する、このときの突起物5の寸法は薄切りする食材の太さ、大きさによっても微妙に変わるので、どの辺に食材の最大公約数を置くかを決めて突起物5の寸法を決める事になる、次に突起物5の頭頂5−aの角をスコーライトホイルやヤスリで研磨し面取りをする(ここまでが本発明の工程)、次に再度従来の包丁製造方法に移り仕上げ工程に入る、水研ぎ、刃付け、取っ手付けを行い完成させる、実施例の説明で使用したエッチング加工は、突起物5の寸法を種々変更して実験するにあたりパターンの原版代がプレスの金型費とは比べものにならないほど安価で、手軽に作成でき実験結果が良好ならそのパターンの原版は半永久的に使用できる事、エッチング加工の温度が40度から60度と低く加工物に熱の影響が出ない事などのメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例の突起物の配設状態を示した図
【図2】本発明の一実施例の峰にエッジを設けた状態を示した図
【図3】本発明の一実施例の刃板部の一縦断面図と一部を拡大して示した図
【符号の説明】
【0031】
A 取っ手部
B 刃板部
1 刃先
2 刃板面
2−a 刃板面の面位置
3 切っ先
4 峰
5 突起物
5−a 頭頂
6 エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取っ手部と刃板部を有し、前記刃板部の刃板面に突起物を配設した包丁。
【請求項2】
刃板部の峰にエッジを設けた請求項1に記載の包丁。
【請求項3】
突起物の頭頂が刃板面の面位置となる包丁。
【請求項4】
突起物のそれぞれの寸法は、外径を1.0から4.0mm、高さを0.15から0.35mm、各突起物の前後左右の間隔を2.0から10.0mmとした範囲内で配設した請求項1、請求項2の包丁。
【請求項5】
突起物の各寸法を請求項4の各範囲内で決め、エッチング加工、レーザー加工、放電加工のいずれかを使い刃板面を突起物を残して掘り下げ、出来た突起物の頭頂を研磨し面取りし剥離効果を持たせた、包丁及び製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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