説明

窒化ホウ素

【課題】本発明はa)窒化ホウ素並びにb)UV−A及びUV−B波長領域の光線を吸収する、1種もしくは複数の皮膚科学的に適合性の物質、から成る有効成分組み合わせ物の使用に関する。
【解決手段】前記組み合わせ物は皮膚の外因性裂傷及び老化の症状の処置および予防のため、そして皮膚に対する近赤外線並びに紫外線の損傷効果の処置および予防のための化粧品または皮膚科学的調製物生成のために使用される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、とりわけ感受性の皮膚、及び特に外因性因子による裂傷した皮膚もしくは老化した皮膚の手入れ及び保護のための有効成分として窒化ホウ素粉末を含んで成る化粧品及び皮膚科学的調整物、並びに化粧品及び皮膚科学的皮膚手入れの分野におけるこれらの有効成分及びこれらの有効成分の組み合わせの使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品の皮膚の手入れは主として、環境の影響(例えば、埃、化学薬品、微生物)に対する、そして身体に内在する物質(例えば、水分、生来の脂肪、電解質)の喪失に対するバリヤーとしての皮膚の本来の機能が強化または回復されることを意味すると理解される。
【0003】
この機能の損傷は毒性またはアレルギー性物質の吸収増加あるいは、毒性またはアレルギー性皮膚反応をもたらす微生物による攻撃を誘起する可能性がある。
【0004】
とりわけ角質層の水結合能が低下する裂傷或は老化皮膚の症例では、例えば、再生的新生がより緩徐な速度で起る。従って、皮膚はしなやかでなく、乾燥し、ひび割れになる(「生理学的に」乾燥した皮膚)。その結果バリヤーの損傷がもたらされる。皮膚は有害な環境の影響(例えば、微生物、トキシンおよびアレルゲンの侵入)に感受性が強まる。その結果、毒性またはアレルギー性の皮膚反応をもたらす可能性がある。
【0005】
病理学的に乾燥した、感受性の皮膚の症例においては、バリヤーの損傷が先験的に存在する。表皮の細胞間脂質が欠陥性になるか、または不適切な量または組成で形成される。
その結果、角質層の透過性が増加し、吸湿性物質および水の喪失に対する皮膚の防護が不適切になる。
【0006】
外因性因子(例えばUV光線或は近赤外線および化学的有害物)は蓄積効果をもち、例えば内因性の老化過程を加速または補助することができる。
表皮および真皮においては、例えば下記の構造的損傷および機能的障害、
1)赤外線による熱障害
2)可視的な血管拡張(毛細管拡張症、クペロシス(cuperosis))、
3)薄弱および皺の形成、
4)局所的色素沈着亢進、色素沈着低下および異常色素沈着
5)機械的ストレスに対する感受性増加(例えば裂傷)
が、皮膚においてとりわけ外因性因子の結果として起こり、損傷の程度および質よりずっと広範囲のものである。
【0007】
本発明は、UV光線および近赤外線により誘起された損傷、とりわけ1)〜5)の項に挙げた症状の処置に関する。
【0008】
皮膚のUV用製品自体は知られている。それらは、例えばメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t−ブチルメトキシジゲンゾイルメタンまたは酸化チタンを含んで成る。
しかし、構造的損傷に対するそれらの効果は限定される。更に、製品開発において、酸化的崩壊に対して適当な程度に有効成分を安定化する点にかなりの困難が存在する。
【0009】
本発明は、皮膚中の有害な酸化過程に対して有効な防護を有するが、しかしまた、有害な酸化過程に対して化粧品調製物自体の防護のためまたは化粧品調製物の成分の防護のための化粧品調製物に関する。
【0010】
更に有利な態様においては、本発明は光線感受性の皮膚、とりわけ光線皮膚病の予防および処置のために役立つ有効成分組み合わせ物および調製物に関する。
【0011】
皮膚に対する太陽光線の紫外線部分の有害効果は概括的に知られている。290nm未満の波長をもつ(UVC領域)光線は地球の大気層中のオゾン層により吸収されるが、290nmと320nmの間(UVB領域)の光線は紅斑、軽い日焼けまたはより重症もしくはより軽症の熱傷を誘起する。太陽光線の最大紅斑活性は308nmの近位の比較的狭い領域として与えられる。
【0012】
UVB光線を遮蔽するための数々の化合物が知られており、これらには3−ベンジリデンカンファー、4−アミノ安息香酸、ケイ皮酸、サリチル酸、ベンゾフェノンおよび更に2−フェニルベンズイミダゾールの誘導体がある。
【0013】
約320nmと約400nmの間の領域の光線は光線感受性皮膚の症例において反応を誘起することができるので、その間の領域、UVA領域に対して有効なフィルター物質をもつこともまた重要である。UVA光線は結合組織の弾性繊維およびコラーゲン繊維の損傷をもたらし、それが皮膚の早期裂傷に導き、そして数々の光線毒性および光線アレルギー反応の一因と見なすことができる。UVB光線の有害な効果はUVA光線により増強されることができる。
従って、UVA領域の光線を遮蔽するために、あるジベンゾイルメタン誘導体が使用されるが、その光線安定性は不適切である。
【0014】
赤外線は、可視(かし)光線(390〜750nm)より長い750〜106nmの波長を有する電磁波で、熱線とも呼ばれている。自然界では、太陽放射線が50%以上を占めるが、地上に存在する発熱体からも放射される。太陽放射線の50%近くは、成層圏で水蒸気や二酸化炭素などに吸収される。地球そのものも発熱体であり、3000〜5000nmの赤外線を放射している。
【0015】
赤外線は、その波長により大きく近赤外線(きんせきがいせん)(750〜3000nm)と遠赤外線(えんせきがいせん)(3000〜106nm)に分けられる。赤外線は、生体への影響として、主に眼障害や皮膚障害、熱中症を引き起こす。皮膚への透過吸収は、近赤外線(とくに、750〜1500nm)で最も大きく、深さ30mmにも達する。
【0016】
従って、本発明の目的は、光線感受性の皮膚(とりわけ光線皮膚病、好ましくは、PLD)の予防および処置のために役立つ化粧品及び皮膚科学的有効成分および調製物、並びに光線遮蔽調製物を提供することであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、先行技術の欠点を回避するための方法を発見することが課題である。
とりわけ、紫外線対策に加え、近赤外線の皮膚障害及び熱障害と関連する損傷を排除する効果並びに予防は恒久的で、持続的で二次効果の危険をもたないものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に従うと、外因性因子による皮膚裂傷の症状の処置および予防のための、そして皮膚に対する紫外線及び近赤外線の有害効果の処置および予防のための化粧品または皮膚科学的調製物の調製のための、
(1)窒化ホウ素および
(2)近赤外線及びUV−A域またはUV−B域の光線吸収をもたらす1種もしくは複数の皮膚科学的に適合性の物質の有効成分組み合わせ物の使用により排除される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に従う有効成分組み合わせ物、およびこのような有効成分組み合わせ物を含んで成る化粧品または皮膚科学的調製物はすべての点で極めて満足な調製物である。
本発明に従う調製物が先行技術の調製物よりも、
−熱障害を予防する、
−皮膚のバリヤー特性をよりよく維持または回復する、
−皮膚の乾燥をより良く抑制する、
−色素障害をより良く抑制する、
−皮膚裂傷及び老化をより良く抑制する、そして
−環境の影響から皮膚をより良く保護する、
ことは当業者により予知されることができなかった。
【0020】
本発明に従って使用される窒化ホウ素粉末配合の有効成分組み合わせ物、或は本発明に従って使用される有効成分組み合わせ物を有効量含有する化粧品または局所用皮膚科学的調製物の使用は、驚くべきことに個々の成分に関して相乗的効果を有する。
【0021】
窒化ホウ素粉末は、白い黒鉛とも呼ばれる鱗片状結晶構造のファインセラミックで、高温潤滑・離型性、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、化学安定性等に優れ他の材料にない機能を有する。このため産業素材として化粧品用、各種工業品用などの幅広い分野で使用される。窒化ホウ素は、特性を活かした用途開発に期待が膨らむ未来型の産業素材である。
【0022】
そのため、窒化ホウ素粉末はファンデーションなどの粉状化粧品に、カバー力や滑り明るさのコントロールをよくするために入れられる微粉末粒子として利用されている。
【0023】
窒化ホウ素粉末は無機質の粉末であり、熱的化学的安定性にすぐれ、微細粒子の特性を生かしたナノテクノロジー原料として注目されている。付着性、カバー力、スライド感に優れ、油ぬれ、水濡れすることなく、安定した感触を持つ。パウダーとしての質感を軽くする為、ポリスチレン粉末の表層に板状窒化ホウ素粉末を付着させた複合粉末は、ファンデーションやポイントメイクに使われる。光を拡散させる性質を利用して、ソフトフォーカスに仕上げられる利点がある。
【0024】
このように、窒化ホウ素粉末は化粧品に使用されているが、潤滑性、光沢性、離型性としての効果が注目されている。しかし、窒化ホウ素粉末の赤外線の吸収、耐熱性の効果を生かした化粧品開発はいまだ行なわれていない。また、UV製品に於いても窒化ホウ素粉末の特性は注目されていない。
【0025】
本発明に従う窒化ホウ素粉末配合の調製物は、近赤外線及びUV−A並びにUV−B領域のUV光線を吸収する物質を含んで成り、そこでフィルター物質の総量は、近赤外線及び全領域の紫外線から毛髪または皮膚を遮蔽する有効な化粧品調製物の総量に基づいて、例えば0.01重量%〜30重量%含んで成る化粧品及び皮膚科学的調整物でなければならない。それらはまた毛髪または皮膚のための熱障害及び日焼け止め組成物として使用することができる
【発明の効果】
【0026】
本発明に従う有効成分組み合わせ物、及びこのような有効成分組み合わせ物を含んで成る化粧品または皮膚科学的調製物はすべての点で極めて満足な調製物と確信する。
特に窒化ホウ素粉末配合による調製物は、近赤外線及びUV−A並びにUV−B領域のUV光線を吸収する物質を含んで成り、毛髪または皮膚のための熱障害及び日焼け止め組成物として期待できる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
下記の実施例は本発明を制約することなく、具体的に示すことが意図される。
与えられる数字は別記されない限り、重量%を表わす。
エタノール 55%
窒化ホウ素 1%
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 2%
t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 8%
水 10%
ベタイン 2%
PCA−Na 3%
ソルビトール 4%
セリン 3%
グリシン 3%
グルタミン酸 1%
アラニン 1%
リシン 1%
アルギニン 2%
トレオニン 1%
プロリン 3%
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、皮膚、とりわけ感受性の皮膚、および特に老化した皮膚また外因性因子による裂傷した皮膚の手入れおよび保護のための有効成分を含んで成る化粧品および皮膚科学的調製物、並びに化粧品および皮膚科学的皮膚手入れの分野におけるこれらの有効成分およびこれらの有効成分の組み合わせ物の使用、に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性因子による皮膚裂傷或いは老化症状の処置及び予防のため、そして皮膚に対する紫外線並びに近赤外線の有害効果の処置及び予防のための、化粧品または皮膚科学的調整物の調整を目的に、a)窒化ホウ素、並びにb)UV−A域及びUV−B域の光線吸収をもたらす1種もしくは複数の皮膚科学的に適合する物質の有効成分組み合わせ物の使用。
【請求項2】
調整物の総重量に基づいて0.001重量%〜10重量%の窒化ホウ素粉末を含んで成ることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
近赤外線及びUV−A域並びにUV−B域の光線吸収を示す皮膚科学的適合性物質の群から選択される1種もしくは複数の物質を0.001重量%〜30重量%含んで成ることを特徴とする、請求項1記載の使用。

【公開番号】特開2011−20983(P2011−20983A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181906(P2009−181906)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(505308179)有限会社健康の駅 (10)
【Fターム(参考)】