説明

窓枠サッシの取付構造

【課題】地震発生時においても、開口部周辺の窓枠サッシやパネルの変形や損失を防ぐことができる窓枠サッシの取付構造を提供する。
【解決手段】上下左右方向に隣接するALC壁パネルにより形成される開口部において、開口部上方パネル2の下側小口面2aと窓枠サッシ上枠8a、開口部下方パネル3の上側小口面3aと窓枠サッシ下枠8bとのそれぞれの隙間Sの室外側寄りにバックアップ材11を介装し、さらに、開口部上方パネル2のパネル取付アングル5aと窓枠サッシ上枠8a、前記開口部下方パネルのパネル取付アングル5bと窓枠サッシ下枠8bとのそれぞれのバックアップ材11より室内側の空間にのみモルタル10が介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下左右方向に隣接するALC壁パネルにより形成される開口部に、窓枠サッシを取付固定する取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALCパネル(以下、パネルという。)から成る建物壁面に形成された開口部に窓枠サッシを取り付ける開口部の構造として、特許文献1が知られている。
すなわち、図4に示すパネル壁面において、開口部4は、その両脇となる左右パネル1、上方パネル2および下方パネル3がそれぞれ縦長に並設されることにより形成され、それら左右パネルの上下、また、上方パネル2の上側および下方パネル3の下側が、上下に架設された建物躯体Kに固定された定規アングル7にそれぞれ取り付けられている。
【0003】
そして、左右パネル1における開口部側の長辺小口面1cには縦補強鋼材5cがそれぞれ配設されており、その縦補強鋼材5cに、上方パネル2と下方パネル3が取り付けられるパネル取付用アングル5(上方パネル取付アングル5aおよび下方パネル取付アングル5b)がそれぞれ固定されている。
また、図3および図4に示すように、前記左右パネル1は定規アングル7、に、上方パネル2および下方パネル3はパネル取付アングル5に、それぞれイナズマプレート6を介して通常の取付方法で固定されている。
【0004】
さらに、図3に示すように、壁パネルにより形成された開口部4に窓枠サッシ8が取り付けられており、具体的には、窓枠サッシ8のサッシ上枠8aとサッシ下枠8bが、それぞれの連結部材12を介して上方パネル取付アングル5aと下方パネル取付アングル5bとにそれぞれ取り付けられている。
また、上方パネル2の下側小口面2aと窓枠サッシ上枠8a、そして、下方パネル3の上側小口面3aと窓枠サッシ下枠8bとのそれぞれの隙間Sの全空間に渡って、水密性を確保する目的でモルタル10が充填されている。
そして、水切り板9の先端垂下片9aとモルタル10の表面との間にシーリング材14が充填されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−183269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の窓枠サッシ8の上方パネル2および下方パネル3への取付構造には、以下の問題点があった。
すなわち、上方パネル2の下側小口面2aと窓枠サッシ上枠8a、そして、下方パネル3の上側小口面3aと窓枠サッシ下枠8bとのそれぞれの隙間Sの全空間に渡ってモルタル10が充填されているため、窓枠サッシ8と上方パネル2および下方パネル3とが完全に固着して一体化されてしまう。
【0007】
これにより、地震発生時における建物躯体の変位に対して、上方パネル2や下方パネル3がそれぞれ個別にロッキング追従できないため、結果として、上下のパネルや窓枠サッシに破損が発生することになる。
さらに、水切り板9の先端垂下片9aとモルタル10面との間へのシーリング材14の充填は、開口部周囲のパネルがロッキングしないためにシーリング材14が切れたりモルタル10の内部にクラックが発生してしまい、そこから雨水が室内に進入するという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、ALC壁パネルにより形成される開口部に窓枠サッシを取り付けても、その開口部の上方パネルおよび下方パネルがそれぞれ個別にロッキング可能となる窓枠サッシの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、
上下左右方向に隣接するALC壁パネルにより形成される開口部に、窓枠サッシの上下枠が固定部材を介して上下方向のALCパネルの取付アングルに固定されている窓枠サッシの取付構造において、
前記開口部上方パネルの下側小口面と窓枠サッシ上枠、そして、前記開口部下方パネルの上側小口面と窓枠サッシ下枠とのそれぞれの隙間の室外側寄りにバックアップ材が介装されているとともに、
前記開口部上方パネルのパネル取付アングルと前記窓枠サッシ上枠、そして、前記開口部下方パネルのパネル取付アングルと前記窓枠サッシ下枠とのそれぞれのバックアップ材より室内側の空間にのみモルタルが介在するように充填されている窓枠サッシの取付構造を採用した。
さらに、
前記窓枠サッシはALCパネル外壁面から離れて室内側寄りに奥付け取付されており、かつ、前記下方パネルの室内側の上側小口部に、前記上側取付アングルが収納されてパネル幅方向に深さ10mm〜30mmの切り欠き部が設けられていることを好ましい条件とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ALC壁パネルにより形成される開口部に窓枠サッシを取り付けても、地震発生時における建物躯体の変位に対して、その開口部の上方パネルおよび下方パネルがそれぞれ個別にロッキング可能となり、それらパネルの破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。なお、符号は従来例と同一のものはその符号を付した。
図1は、本発明において、上下左右方向に隣接するパネルにより形成される開口部4への窓枠サッシ8の取付構造の一実施形態を示す縦断面図である。また、図2は、本発明において、他の実施形態を示す縦断面図である。
【0011】
図1に示す窓枠サッシの取付構造は、図4において開口部4の両脇となる各1枚の左右パネル1と、各3枚の上方パネル2および下方パネル3とがそれぞれ縦長に並設されて開口部4が形成されており、その開口部4に窓枠サッシ8が取り付けられたものである。
そして、各左右パネル1における開口部側の長辺小口面1cには縦補強鋼材5cがそれぞれ配設されており、その縦補強鋼材5cに、上方パネル2と下方パネル3を取り付けるパネル取付用アングル5(上方パネル取付アングル5aおよび下方パネル取付アングル5b)がそれぞれ固定されている。
【0012】
左右パネル1、上方パネル2および下方パネル3は、図3および図4に示すように、建物躯体Kに溶接固定された定規アングル7またはパネル取付アングル5(5a、5b)に、イナズマプレート6を介して各パネル(1,2,3)がそれぞれ個別にロッキングできるように従来と同様の方法により取り付けられている。
また、窓枠サッシ8が取り付けられる上方パネル2または下方パネルにおいても、図1に示すように、イナズマプレート6の一方片でパネル取付アングル5(5a、5b)を挟持させるとともに、他方片に設けられた貫通孔を挿通させたボルトをパネル内の埋設アンカーに螺合させて、取付アングル5(5a、5b)にそれぞれのパネル(2,3)が取り付けられている。
【0013】
窓枠サッシ上枠8aおよび下枠8bは、図1に示すように、固定部材12を介して上方パネル2または下方パネル3のパネル取付アングル5(5a、5b)にそれぞれ溶接固定されている。
開口部4の上方パネル2の下側小口面2aと窓枠サッシ上枠8aとの隙間S、および、開口部4の下方パネル3の上側小口面3aと窓枠サッシ下枠との隙間Sに、バックアップ材11がそれぞれ介装されている。
そして、図1に示すように、隙間Sにおいてバックアップ材11より室内側であって、開口部4の上方パネル2のパネル取付アングル5aと窓枠サッシ上枠8aとの隙間Sa、および、開口部4の下方パネル3のパネル取付アングル5bと窓枠サッシ下枠8bとの隙間Saにのみ、それぞれモルタル10が介在するように充填されている。
【0014】
このように、本発明の窓枠サッシの取付構造において、上方下方パネル2、3の小口面2a、3aと窓枠サッシの上下枠8a、8bとの隙間Sにバックアップ材11が介在されており、そのバックアップ材11より室内側であって、かつ、窓枠サッシ枠8(8a、8b)とパネル取付アングル5(5a、5b)との隙間Saにのみモルタル10が介在するように充填されている一方で、バックアップ材11より室外側の窓枠サッシ枠8(8a、8b)とパネル小口面2a、2bとの隙間Sbにはモルタルが全く充填されていない。
この窓枠サッシの取付構造によれば、窓枠サッシ8と上方下方パネル2、3のそれぞれの小口面2a、3aとがモルタルにより固着して一体化されていないため、地震発生時における建物躯体の変形に対して、開口部4の上方パネル2および下方パネル3がそれぞれ個別にロッキングして追従することが可能となる。これにより、窓枠サッシ8への変形の負荷低減や開口部を形成する上下左右方向のパネルの破損を防止することができるようになる。
【0015】
さらに、従来、図3に示すように、水切り板9の先端垂下片9aとモルタル10の表面との間にシーリング材14が充填されていたものと比較して、水切り板9の先端垂下片9aと下方パネル3の外壁面との間でシーリングできるようになるため、高い水密性を確保できるようになる。
このとき、水切り板9の先端垂下片9aを下方に単に延ばして外壁面との間でシーリングするも考えられるが、建物の外観意匠上好ましくない。
【0016】
また、本発明は、図2に示すような、パネル外壁面から離れて室内側寄りに窓枠サッシが奥付け取付されている窓枠サッシの取付構造に採用することにより、その効果を一層発揮することができる。
この窓枠サッシが奥付け取付されている窓枠サッシの取付構造について説明する。
この取付構造において、前述の実施形態と主に異なる点は、図2に示すように、下方パネル3の室内側の上側小口部に、パネル幅方向に渡って上側取付アングル5bが収納されて深さX(パネル長さ方向への寸法)10mm〜30mmの切り欠き部3aが設けられていることにある。
【0017】
そして、図2に示すように、下方パネル3の切り欠き部3b内の底面に上側取付アングル5bが当接して収納されるとともに、下方パネル3の上側小口面3aと窓枠サッシ下枠8bとの隙間Sに、バックアップ材11が介装されている。
さらに、図2に示すように、隙間Sにおいてバックアップ材11より室内側であって、開口部4の下方パネル3のパネル取付アングル5bと窓枠サッシ下枠8bとの隙間Saにのみ、モルタル10が介在するように充填されている。
【0018】
このように、この窓枠サッシが奥付け取付されている窓枠サッシの取付構造において、下方パネル3の小口面3aまたは切り欠き部3bと窓枠サッシの下枠8bとの隙間Sにバックアップ材11が介在されており、そのバックアップ材11より室内側であって、かつ、窓枠サッシ下枠8bと下方パネル取付アングル5bとの隙間Saにのみモルタル10が介在するように充填されている一方で、バックアップ材11より室外側の窓枠サッシ下枠8bと下方パネル小口面2bとの隙間Sbにはモルタルが全く充填されていない。
【0019】
なお、上方パネル2の下側小口部は、前述の実施形態と同等切り欠き部を設けなくても、この下方パネル3と同様に切り欠き部を設けてもどちらでも良い。
この窓枠サッシの取付構造によれば、窓枠サッシ8と上方下方パネル2、3のそれぞれの小口面2a、3aとがモルタルにより固着して一体化されていないため、地震発生時における建物躯体の変位に対して、開口部4の上方パネル2および下方パネル3がそれぞれ個別にロッキングして追従することが可能となる。これにより、窓枠サッシ8への変形の負荷低減や開口部を形成する上下左右方向のパネルの破損を防止することができるようになる。
【0020】
さらに、図2に示すように、下方パネル3の小口部に切り欠き部3bが設けてあると、固定部材12を介して窓枠サッシ下枠8bと下方パネル3のパネル取付アングル5bとを溶接する際の作業スペースが広くなり好ましい。
また、下方パネル3の切り欠き部3bに下方パネル取付アングル5bが収納されるため、結果的に、パネル高さ(長さ)を上方へ延ばしてパネル室外側の幅方向に延びる突条部3cを窓枠サッシ下枠8bの水切り板9の直下まで近接させることが可能となる。
これにより、従来、図3に示すように、水切り板9の先端垂下片9aとモルタル10の表面との間にシーリング材14が充填されていたものと比較して、水切り板9の先端垂下片9aと下方パネル3の平らな外壁面との間でシーリングできるようになるため、高い水密性を確保できるとともに、建物躯体の変形や作業性の悪さ起因する施工不良などによりシーリング材が切れたりする不具合がなくなる。
なお、この窓枠サッシが奥付け取付される窓枠サッシの取付構造は、通常、図2に示すように、パネル外壁面および開口部4を形成する左右パネル1の長辺小口面1cの室外側にタイル13を貼着して窓枠サッシ8付近における重厚感を演出するタイル張り仕上げに採用される。
【0021】
また、下方パネル取付アングル5bと同様に、切り欠き部3bの内部にバックアップ材11が嵌った状態で所定位置に介装されるようになるため、バックアップ材11の脱落が発生しなくなるため好ましい。
【0022】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、地震発生時においても、開口部周辺の窓枠サッシやパネルの破損を防ぐことができるため、経済的な貢献は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の窓枠サッシの取付構造の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】本発明の窓枠サッシの取付構造の他の実施形態を示す縦断面図。
【図3】従来例における窓枠サッシの取付構造を示す縦断面図。
【図4】開口部におけるALCパネルの取付構造を示す正面図。
【符号の説明】
【0025】
1 左右パネル
1c 長辺小口面
2 上方パネル
2a 下側小口面
3 下方パネル
3a 上側小口面
3b 切り欠き部
3c 突条部
X 切り欠き深さ
4 開口部
5 パネル取付アングル
5a 上方パネル取付アングル
5b 下方パネル取付アングル
5c 縦補強鋼材
6 イナズマプレート
7 定規アングル
8 窓枠サッシ
8a サッシ上枠
8b サッシ下枠
9 水切り板
9a 先端垂下片
10 モルタル
11 バックアップ材
12 固定部材
13 タイル
14 シーリング部材
K 建物躯体
S 隙間
Sa バックアップ材より室内側の隙間
Sb バックアップ材より室外側の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下左右方向に隣接するALC壁パネルにより形成される開口部に、窓枠サッシの上下枠が固定部材を介して上下方向のALCパネルの取付アングルに固定されている窓枠サッシの取付構造において、
前記開口部上方パネルの下側小口面と窓枠サッシ上枠、そして、前記開口部下方パネルの上側小口面と窓枠サッシ下枠とのそれぞれの隙間の室外側寄りにバックアップ材が介装されているとともに、
前記開口部上方パネルのパネル取付アングルと前記窓枠サッシ上枠、そして、前記開口部下方パネルのパネル取付アングルと前記窓枠サッシ下枠とのそれぞれのバックアップ材より室内側の空間にのみモルタルが介在するように充填されていることを特徴とする窓枠サッシの取付構造。
【請求項2】
前記窓枠サッシはALCパネル外壁面から離れて室内側寄りに奥付け取付されており、かつ、前記下方パネルの室内側の上側小口部に、前記上側取付アングルが収納されてパネル幅方向に深さ10mm〜30mmの切り欠き部が設けられている請求項1記載の窓枠サッシの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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