説明

窓貼り用ポリエステルフィルムロール

【課題】 光学的な歪み・欠陥が少なく、明瞭な透過視認性を有する紫外線・赤外線遮蔽塗膜を表面に有するポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 厚さが12〜50μmのポリエステルフィルム基材の表面に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤および高分子バインダー樹脂からなる、厚さ1μm以上の塗布層を有するフィルムであり、350nmの分光光線透過率値が3%以下であり、550nmの分光光線透過率値が78%以上であり、960nmの分光光線透過率値が10%以下であり、フィルム巻き取り長さ1000m当たりのロール端部の耳上がり量が1mm以下であることを特徴とする窓貼り用ポリエステルフィルムロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓貼り用基材として好適なポリエステルフィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れ、コストパフォーマンスにも優れるため、各種の用途において基材フィルムとして使用されている。その用途の例として、自動車あるいは建物の窓貼り用フィルム基材がある。
【0003】
窓貼り用フィルム基材として、透明なポリエステルフィルムの表面に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤および高分子バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した塗料を塗布して加熱乾燥し、フィルムの表面に透明な塗膜を形成したポリエステルフィルムがある。
【0004】
紫外線および赤外線を有効に遮蔽するためには、塗布液中の紫外線吸収剤、赤外線吸収剤の含有量を多くすれば良いが、塗布加工性、塗膜のフィルムへの密着性等の特性の観点からその添加量は限られる。したがって、塗膜の厚さを厚くすることになるが、塗膜の厚さを厚くすると、塗布後の巻取りフィルムロールの端部に耳上がり現象が発生し、シワ、波打ち等のフィルム歪み、あるいは塗膜成分移着ブロッキング現象等が発生する。
【0005】
窓貼り用フィルムは、最終的には、種々の積層構成で商品化される。例えば、本発明のフィルムロールである表面に紫外線・赤外線吸収遮蔽層を設けたポリエステルフィルムを使用する場合においては、この遮蔽層の反対面側にハードコート塗膜を設けて耐擦傷性表面層を形成した後に、遮蔽層面側に粘着剤層および粘着剤離型カバーフィルムを設けたものがある。あるいは、紫外線・赤外線吸収遮蔽層を有するポリエステルフィルムとハードコート塗膜を有するポリエステルフィルムの両者をラミネート積層加工して、ラミネートフィルムのハードコート塗膜の反対面側に粘着剤層ならびに粘着剤離型カバーフィルムを設けたもの等が挙げられる。
【0006】
紫外線・赤外線遮蔽塗膜を有する透明フィルムの例(特許文献1)、あるいは、紫外線・赤外線遮蔽塗膜成分の例(特許文献2〜5)があるが、実際の商品に利用して好適に機能させるには、十分なものはまだ得られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平5―42622号公報
【特許文献2】特開平8―27371号公報
【特許文献3】特開2005―325292号公報
【特許文献4】特開2006―298989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、光学的な歪み、欠陥が少なく、明瞭な透過視認性を有する紫外線・赤外線遮蔽塗膜を表面に形成したポリエステルフィルムおよび巻取ロールを提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記実情に鑑み、検討を重ねた結果、特定の構成を有するフィルムロールによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、厚さが12〜50μmのポリエステルフィルム基材の表面に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤および高分子バインダー樹脂からなる、厚さ1μm以上の塗布層を有するフィルムであり、350nmの分光光線透過率値が3%以下であり、550nmの分光光線透過率値が78%以上であり、960nmの分光光線透過率値が10%以下であり、フィルム巻き取り長さ1000m当たりのロール端部の耳上がり量が1mm以下であることを特徴とする窓貼り用ポリエステルフィルムロールに存する。
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に用いる基材フィルムは、コスト的に安価で、かつ、広く工業用として利用されているポリエステルフィルムを使用する。ここにおけるポリエステルとは、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。
【0012】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的であり、かつ、コスト的に最も安価なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。
【0013】
また、ポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、通常30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。
【0014】
本発明で用いるポリエステルは、溶融重合反応で得られたものであっても、また溶融重合後、チップ化したポリエステルを固相重合したものであってもよい。
【0015】
本発明に用いるポリエステルフィルムは、単層構造のフィルムであっても、異種のポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、各ポリエステル層の何れかに、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤等を配合してもよい。
【0016】
通常、ポリエステルフィルムは、製膜したフィルムを傷あるいは歪みを発生させることなく適正に巻取るため、さらには、種々の加工において、トラブルなく連続的な加工が適正に為されるように、フィルムに適度の滑り性を付与することが必要で、この場合、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを添加するが、配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。この場合、添加粒子の種類、粒径あるいは添加量によって、フィルムの透明性は変化する。添加する粒子の粒径が小さく、また、添加量が少ないほど、より透明なフィルムが得られるが、逆に、透明性を上げすぎるとフィルムの滑り性が悪くなり、フィルムロールとして正常な巻取りができなくなり、種々のトラブルが発生しやすくなる。添加する粒子の量は、粒径(沈降法)に応じて異なるが1〜2μmの粒子の場合は10〜500ppmの範囲が望ましい。
【0017】
本発明に用いるポリエステルフィルム基材の製造方法の例として、ポリエチレンテレフタレートフィルムの例を示すが、使用するポリエステル、あるいは、添加粒子により製造条件は異なり、本発明は必ずしもこれに限定されない。また、粒子あるいは各種添加剤の添加は、ポリエステル重合段階からポリエステル樹脂の押出機への供給段階までの任意の段階で実施しうる。
【0018】
まず、常法にしたがって、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールのエステル交換により、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを減圧下、280℃に加熱して重合反応を進めポリエステル原料を得る。
【0019】
このポリエステル原料を、押出機を用いて、口金から溶融シートとして押出し、冷却キャスティングドラム上にキャスティングし冷却固化して未延伸シートを得る。この未延伸シートを、縦延伸ニップロールにより一段目の縦延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向にテンターで横延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜6倍、好ましくは3.5〜5倍である。引き続き、130℃〜250℃の範囲の温度で30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0020】
本発明の用途においてはポリエステルフィルム基材の厚さは12〜50μmの範囲が窓貼り用として必要な厚みである。
【0021】
ポリエステルフィルム基材に各種塗布加工すると、可視光線の透過性が落ちるため、ポリエステルフィルム基材の波長550nmにおける分光光線透過率は90%以上であることが望ましい。
【0022】
また、ポリエステルフィルム基材は、紫外線・赤外線遮蔽塗膜に対して、易接着性を有する易接着ポリエステルフィルムが望ましい。この易接着性塗料の成分としては、特開平11−198329号公報に記載されているようなポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂と架橋剤成分のメラミン系樹脂等の組み合わせでなるものが例示され、これをポリエステルフィルムの製膜ライン内で塗布するインラインコート法にて、乾燥後塗布量として、0.05〜0.3g/mの範囲に設けたものが適当である。
【0023】
本用途における紫外線・赤外線遮蔽塗膜成分としては、次のようなものが挙げられる。すなわち、紫外線吸収剤については、市販の各種化合物を利用できるが、その有効性、組み合わせの点で、ベンゾフェノン系化合物、もしくは、ベンゾトリアゾール系化合物が望ましい。
【0024】
ベンゾフェノン系化合物としては、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−2’−ジヒドロキシ−4.4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等が挙げられる。
【0025】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミノフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0026】
赤外線吸収成分については、ジイモニウム塩系化合物が好適に使用でき、下記一般式のものが挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
上記式において、基Rは、それぞれ独立して、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、フェニルアルキレン基またはアルコキシ基から選ばれる置換基を示し、Rはフルオロ基またはフッ化アルキル基を示す。
【0029】
これらの例としては、ビス[ビス(フルオロスルホニル)イミド酸]N,N,N,N−テトラキス(P−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、ビス(トリフロロメタンスルホニル−フルオロスルホニルイミド酸)N,N,N,N−テトラキス(P−ジブチルアミノフェニル)−P−フェニレンジイモニウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸N,N,N,N−テトラキス(P−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビスヘキサフルオロアンチモン酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(ペルフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸}−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリクロロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド酸−N,N,N’,N’−テトラキス{p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム等があげられる。
【0030】
塗料に使用する高分子バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の各種塗料用の樹脂、あるいはこれらにイソシアネート系反応硬化性樹脂等を添加したものを利用できる。
【0031】
塗布加工用塗料については、これらの紫外線吸収剤成分、赤外線吸収剤成分および高分子バインダー樹脂をMEK、トルエン、酢酸エチル、ジオキサン、γ−ブチロラクトン等の混合溶剤に常温あるいは加温下で溶解して、塗布塗料を調整する。
【0032】
塗布方式については、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法、ダイコート法などの任意の塗布方法を適宜、単独または組み合わせて適用できる。
【0033】
巻取り長1000mあたりの巻取りロール端部の耳上がり量を1mm以下とするにあたっては、塗膜の塗布加工時にフィルム両端域の塗布量を少なくして塗布加工し、かつ、その箇所をスリット除去して巻取る。
【0034】
厚さが12〜50μmのポリエステルフィルムに塗膜を設ける場合、塗膜が厚いと塗布液はフィルム端部域に厚く塗布されやすく、塗布巻取りロールの耳部が盛り上がり、耳上がり現象が発生する。耳上がりロールを長時間保管すると、この耳上がり歪みに起因して、フィルムにシワ、波打ち等の歪み、あるいはブロッキング現象が発生する。これらの欠陥が発生すると、商品価値が低下するばかりでなく、顧客サイドで行われる貼り合わせの加工、あるいは塗布加工の工程でトラブル要因となる。
【0035】
本用途の基材フィルムとしては、表面が平滑で、かつ、透明性の良いポリエステルフィルムが必要であり、かつ、紫外線および赤外線遮蔽効果の点で塗膜厚さを1μm以上、好ましくは、1〜4μmにするが、好適に長尺の塗布フィルムロールを得るには通常の塗布加工ではトラブルを招く。巻取りロールの耳上がり量については、1mm以下であれば、大きなトラブルは起こらないが、1mmを超えると長尺の塗布フィルムロールを好適に得ることが難しくなる。
【0036】
本発明では、巻取りロールの耳上がりに起因するトラブルの回避について検討の結果、塗布加工時にコーターヘッド部で耳部相当域の塗布液を掻き落とすと共に、耳部域をスリット除去して、塗布加工ロールとして仕上げることで、本発明のフィルムロールを得ることができることを見いだした。
【0037】
基材フィルム表面への塗布液供給がグラビアロール等の塗布ロールを介して行われる場合は、幅方向のフィルム端部から20mm域に相当する塗布ロール表面の塗布液を金属あるいはプラスチックドクターにより部分的に多く掻き落とし、フィルム端部域への塗布液付着量を少なくする。また、塗布液を口金から吐出し、基材フィルム表面に直接塗布する場合は、口金の吐出液幅をフィルム幅より片側20mm程度狭くし、フィルム端部域への塗布液付着量を少なくする。
【0038】
ワイヤーバーコーターでは、基材フィルム表面の塗布液は、所定線径のワイアーバーで掻き落とし、最終的に塗布液量を定量化するが、その際に、塗布液は幅方向に流延する。リバースコーター、リバースグラビアコーター等においても、同様に、塗布液流延現象があるので、フィルム端部の塗布液は完璧には軽減除去されにくい。
【0039】
そのため、これらの手段に加えて、コーターライン塗布ヘッド塗布液定量化部の直後域において、フィルムに塗布された液を、幅方向フィルム端部から10mm域に亘って、プラスチックブレードあるいはプラスチック不織布等で接触掻き落としを行うことが必要である。
【0040】
塗布フィルム巻取りロールの耳あがりをさらに緩和するには、コーター巻取部にオシレーションをかけて耳部の厚塗布部を分散させることが望ましい。
【0041】
このような手段を用いて、塗布フィルム巻取りロール端部の耳上がりは緩和されるが、巻取った長尺ロールの長時間保管時におけるフィルムの歪み欠陥発生を抑えるには、塗布加工後、速やかに、フィルム両端の耳部域をスリット加工除去し、フィルムロールの巻きズレ、巻き歪み等が無いロールに仕上げて保管することが望ましい。これらのことを効率的に達成するには、コーターラインの巻取部直前域に耳落としスリット設備を設置し、耳部をコーターラインにおけるインラインスリットして巻取ることが望ましい。
【0042】
塗布後の保管ロールについては、ロール端断面あるいは表面層よりの吸湿による吸湿シワをなくすため、アルミラミフィルム等の防湿性フィルムで包装し、保管することがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0043】
本発明のポリエステルフィルムは、光学的な歪みが少なく、明瞭な透過視認性を有する紫外線・赤外線遮蔽窓貼り用基材フィルムとして好適に使用され、工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を実施例および比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。本発明における各種特性の評価方法は以下のとおりである。
【0045】
(1)耳上がり量
所定長巻取った試料フィルムロールの端部について、ロール平坦部よりの盛り上がり量をスケールで測定する。耳上がり量は巻長1000mあたりの耳上がり量(mm/1000m)で示す。
【0046】
(2)分光光線透過率
試験片をフィルム全幅にわたり平均するように5枚採取し、分光光度計により各波長での透過率を測定し、その平均値を求める。
【0047】
(3)基材厚さおよび塗膜厚さ
塗布前フィルムの試験片をフィルム全幅にわたり平均するように5枚採取し、JIS法マイクロメーターにて厚さを測定し、その平均値を基材厚さとする。塗布後、フィルムの試験片をフィルム全幅にわたり平均するように5枚採取し、JIS法マイクロメーターにて厚さを測定し、その平均値を塗布フィルム厚さとする。塗布フィルム厚さから基材厚さを減じた値を塗膜厚さとする。
【0048】
(4)フィルム歪み
フィルムロールより、フィルムを巻きほぐして、フィルムにテンションがかからない状態で目視検査し、波状・横段状、縦筋状等のシワ・歪みの発生の程度を検査する。
〇:軽微であり、実用上許容できる
△:許容限界にあり、箇所によっては問題がある
×:シワ・歪みの程度が著しく、実用上問題があり、許容できない
【0049】
(5)ブロッキング
フィルムロールよりフィルムを巻きほぐして、ロール下巻部を含めて検査し、塗膜移着現象(塗膜移着跡、剥離音の発生等)を検査する。
〇:特に異常が認められない
△:軽度の移着・ブロッキング現象が認められる
×:移着・ブロッキング現象が顕著であり許容できない
【0050】
(6)塗膜密着性
塗布膜面にカッター刃で碁盤目状の切り込みをいれ、その上にセロハン粘着テープを指で強く貼り付けた後、急激にセロハン粘着テープを剥がして、塗膜の剥がれをみる。
〇:塗膜の剥がれが殆ど無く許容できる
△:部分的に塗膜剥がれがみられる(やや悪い)
×:塗膜剥がれが著しく許容できない
【0051】
実施例及び比較例において用いた塗布液の調整は以下のとおりである。
塗布液−1
以下の塗料材料A1〜D1を固形分重量比でA1/B1/C1/D1=5/12/28/7になるようにMEK/ジオキサン/γ−ブチロラクタムの重量比1:2:2の混液に溶かし、固形分17wt%の塗布液−1を作成した。
A1:ビス[ビス(フルオロスルホニル)イミド]N,N,N,N−テトラキス(P−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム
B1:2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン
C1:東レ(株)製ポリエステル樹脂:ケミット−1294
D1:日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL
【0052】
塗布液−2
以下の塗料原液A2〜C2を固形分重量比でA2/B2/C2=5/29/1になるようにMEK/ジオキサン/γ−ブチロラクタムの重量比1:2:2の混液に溶かして、固形分17wt%の塗布液-2を作成した。
A2:日本カーリット(株)製サンバリヤーインキN1−A(ジイモニウム化合物:9wt%溶液)
B2:日本カーリット(株)製サンバリヤーインキN1−B(ポリエステル樹脂バインダーおよびベンゾフェノン化合物:30wt%溶液)
C2:日本カーリット(株)製サンバリヤーインキN1−C(イソシアネート樹脂:75wt%溶液)
【0053】
塗布液−3
以下の塗料材料A3〜D3を固形分重量比でA3/B3/C3/D3=5/15/30/8になるようにMEK/ジオキサン/γ−ブチロラクタムの重量比1:2:2の混液に溶かし、固形分18wt%の塗布液-3を作成した。
A3:ビス[ビス(フルオロスルホニル)イミド]N,N,N,N−テトラキス(P−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム
B3:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
C3:東レ(株)製ポリエステル樹脂:ケミット−1294
D3:日本ポリウレタン工業(株)製コロネートL
【0054】
実施例1:
幅1020mm、厚さ23μmの製膜インライン塗布易接着性・高透明ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製 T600E25N)に前記の塗布液−1をワイヤーバーコーターで塗布した。グラビアロールを介してフィルム表面へ塗布液を塗布するに際し、フィルム両端部の各々のフィルム端から20mm域までの液をグラビアロール塗布ロールに設置したドクターブレードで掻き落とし、フィルム端部域への付着塗布液量を少なくした。塗布液をワイアーバーで定量化掻き落としを行った直後に、フィルム端部より10mm域までの塗布液部分を250μm厚ポリエステルフィルムブレードで接触掻き落としを行いフィルム両端域の塗布液量を少なくした。この塗布フィルムを温度130℃のドライヤーに通し、ドライヤーを出た塗布液乾燥後の塗布フィルムついて、コーターライン内で両端10mmをスリット除去し、巻取って、塗膜厚さ約2μm、幅1000mm、長さ3000mのロールとして巻取った。
【0055】
実施例2:
実施例1と同じ基材フィルムに前記の塗布液−2をリバースグラビアコーターにて塗布した。グラビア塗布ロールを介してドクターブレードで定量に掻き落とし、フィルムに塗布された液を、フィルム端部より10mm域までの塗布液部分を250μm厚ポリエステルフィルムブレードで接触掻き落としを行い、フィルム両端域の塗布液量を少なくした塗布フィルムを温度130℃のドライヤーに通した。ドライヤーを出た乾燥後のフィルムを、巻取部でオシレーション量5mm範囲のオシレーションをかけて耳上がりを緩和させて巻取り後、すぐさまにスリッターにかけて、両端10mmをスリット除去し、塗膜厚さ約2μm、幅1000mm、長さ3000mのロールとして仕上げた。
【0056】
実施例3:
実施例1と同様にして、幅1020mm、厚さ38μ厚の製膜インライン塗布易接着性・高透明ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製 T600E38)ならびに塗布液−2を使用して、塗膜厚さ約2μm、幅1000mm、長さ3000mの巻取りロールを得た。
【0057】
実施例4:
実施例1と同様にして、幅1020mm、厚さ25μ厚の製膜インライン塗布易接着性・高透明ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製 T600E25N)ならびに塗布液−3を使用して、塗膜厚さ約2μm、幅1000mm、長さ3000mの巻取りロールを得た。
【0058】
比較例1:
実施例1において、フィルム端部の塗布液掻き取りと、フィルム両端部スリット除去をすることなく、通常とおり塗布加工した。均一巻取りが困難であり、1000mで加工を止めて乾燥後の塗膜厚さ約2μm、幅1020mm、長さ1000mの巻取りロールを得た。
【0059】
比較例2:
実施例2において、フィルム端部の塗布液掻き取りを行わずに通常とおり塗布加工した。均一巻取りが困難であり、1000mで加工を止めた。得られた塗布フィルムを、1週間後に耳部のスリット加工を行い、乾燥後の塗膜厚さ2μm、幅1000mm、長さ1000mの巻取りロールを得た。
【0060】
比較例3:
実施例1において、塗布量を少なくし、フィルム端部の塗布液掻き取りを行わず、また、フィルム両端部のスリット除去をすることなく、通常とおり塗布加工し、乾燥後の塗膜厚さ約0.5μm、幅1020mm、長さ3000mの巻取りロールを得た。
【0061】
比較例4:
実施例1と同様にして、1020mm幅、厚さ12μmの汎用ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製H100−12)を使用して、乾燥後の塗膜厚さ約2μm、幅1000mmの3000m長のロールを得た。得られた塗布フィルムは熱シワ歪みが大きかった。
【0062】
比較例5:
実施例2において、フィルム端部の塗布液掻き取りを行わず、通常とおり塗布加工した。均一巻取りが困難であり、1000mで加工を止めた。得られた塗布フィルムを、1週間後に耳部のスリット加工を行い、乾燥後の塗膜厚さ2μm、幅1000mm、長さ1000mの巻取りロールを得た。
【0063】
実施例1〜4,比較例1〜5に関する、窓貼りフィルムとしての適用性を評価した結果を下記表1にまとめて示す。
【0064】
【表1】

【0065】
得られたポリエステルフィルムおよびフィルムロールの評価結果は、表2に示すとおりであり、実施例1〜4のポリエステルフィルムロールについては、満足する結果を得られた。一方、比較例1〜5においては、塗布加工、特性、フィルム歪みを含め、満足し得る結果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のフィルムは、例えば、各種の窓貼り用基材フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが12〜50μmのポリエステルフィルム基材の表面に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤および高分子バインダー樹脂からなる、厚さ1μm以上の塗布層を有するフィルムであり、350nmの分光光線透過率値が3%以下であり、550nmの分光光線透過率値が78%以上であり、960nmの分光光線透過率値が10%以下であり、フィルム巻き取り長さ1000m当たりのロール端部の耳上がり量が1mm以下であることを特徴とする窓貼り用ポリエステルフィルムロール。

【公開番号】特開2009−202446(P2009−202446A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47488(P2008−47488)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】