説明

立体可変式の衛生用マスク

【課題】マスクを長時間、使用しても、その口当て部の立体形状が保持されると共に、その立体形状が使用者の顔の大きさに簡単に調整することができる立体可変式の衛生用マスクを提供することを課題としている
【解決手段】 口当て部1と、その口当て部1の両側に設けられている耳掛け部2とからなり、口当て部1は、三層の不織布を重ね合わせてなる不織布体3の上下方向の中央に、左右に細長く延びる折り畳み部6を形成し、その折り畳み部6の中に形状保持部材4を収容すると共に、両端同士を重ね合わせて、不織布体3の周縁をヒートシール5をすることによって、折り畳み部6と形状保持部材4の両端同士が溶着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平状のマスクを立体形状に変形させることができる立体可変式の衛生用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
このような立体可変式衛生用マスクでは、立体形状に変形した口当て部は口当て部に張り力を持たせることでその立体形状が保持される。
【0003】
特許文献1には、マスクの口当て部に折り畳み部(ひだ部)を形成することが開示されている。この折り畳み部を上下に引っ張ると、折り畳み部の折りたたみ線が断面V字状に拡がって左右に延び(特許文献1の図3、図4参照)、口当て部には張り作用が得られる。したがって、立体形成された口当て部はその形状が保持される。
【0004】
特許文献2は、口当て部が左右の扁平のシート部材を合掌形態に重ね合わせて、縦長に延びるその一辺を接合しているものを開示している。この接合部分は、シートを左右に開けたとき、口当て部の中央の縦方向に位置する。また、この接合部は硬くなっている。そのため、口当て部の中心の縦方向には張り作用が得られる。したがって、立体形成されたマスクの口当て部は、その形状が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−55035号公報
【特許文献2】特開2007−54381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の立体型のマスクは、折り畳み部(ひだ部)の開き具合を調整することにより上下寸法の調整はできるが、口当て部が湿気たりすると、前記折り畳み線の張り作用が弱まる。したがって、口当て部は呼吸などで湿気ると、口当て部の立体形状が崩れ易くなる。
【0007】
特許文献2の立体型マスクは、マスクの中央の上下方向が接合されて固くなっているので、湿気には影響され難い。そのため、立体形成された口当て部が湿気てもその形状は崩れ難くなっている。しかし、このマスクは、口当て部の立体形状、あるいは大きさを自由に調整することができない。
【0008】
本発明は長時間、使用しても、その口当て部の立体形状が保持されると共に、その立体形状を使用者の顔の大きさに合わせるように調整することができる立体可変式の衛生用マスクを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の立体可変式の衛生用マスク(請求項1)は、複数枚の不織布を重ね合わせた状態で左右方向に細長く延びる折り畳み部を有する扁平状の口当て部と、その口当て部の両側に有する耳に装着するための引っ掛け部とからなる立体可変式の衛生用マスクにおいて、前記折り畳み部の中に可撓性を有する形状保持部材を収容していることを特徴としている。
【0010】
このような折り畳み部の間に左右方向に延びるスリット状の袋を形成し、このスリット状の袋の中に前記形状保持部材を収容しているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このようなマスクは、前記形状保持部材を収容する折り畳み部が口当て部の上下方向における中央部に設けられているのが好ましい(請求項3)
【0012】
また、前記折り畳み部が上下に複数、並設され、前記形状保持部材が隣接する折り畳み部の中にそれぞれ収容されているのが好ましい(請求項4)。
【0013】
さらに、前記形状保持部材は、その両端が折り畳み部の両端に固着されているのが好ましい(請求項5)。
【0014】
また、前記口当て部の上端に、当該上端を鼻へ沿わせるための可撓性を有する支持部材を設けているのが好ましい(請求項6)。
【0015】
また、前記折り畳み部にスリット状の袋を形成し、このスリット状の袋の中に前記形状保持部材を収容しているのが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の立体可変式の衛生用マスク(請求項1)は、複数枚の不織布を重ね合わせた状態で左右方向に細長く延びる折り畳み部を有して成る扁平状の口当て部と、その口当て部の両側に有する耳に装着するための引っ掛け部とからなっているので、口当て部は折り畳み部を上下方向に引っ張って、拡げることによって、立体的に形成するのが可能になっている。また、折り畳み部の引っ張り具合を加減することによって、口当て部の立体形状の大きさを調整可能にしている。この発明では、前記折り畳み部の中に可撓性を有する形状保持部材が収容されているので、口当て部は張り作用を有している。そのため、立体形成された口当て部はその立体形状をより確実に保持することが可能になっている。したがって、本発明の衛生用マスクの口当て部は、折り畳み部と形状保持部材の各作用が相俟って、使用者の顔に応じた大きさの立体形状に形成、かつ、調整することができると共に、その立体形状をより確実に保持することができる。
【0017】
前記折り畳み部の間に左右方向に延びるスリット状の袋を形成し、このスリット状の袋の中に前記形状保持部材を収容している場合(請求項2)、形状保持部材はこの袋の内面に密着した状態で収容される。したがって口当て部が立体形成されたとき、折りたたみ部と形状保持部材は一層、密着するので、その口当て部の立体形状はより確実に保持される。
【0018】
前記形状保持部材を収容する折り畳み部が口当て部の上下方向における中央部に設けられている場合(請求項3)、立体形成された口当て部は、その中央において張り力が作用するので、その形状はさらに崩れ難くなっている。また、形状は安定する。したがって、マスクの使用時、口当て部とこの口当て部の中央が対面する口もととの間に形成される空間は長時間の使用においても保持される。
【0019】
また、前記折り畳み部が上下に複数、並設され、前記形状保持部材が隣接する折り畳み部の中にそれぞれ収容されている場合(請求項4)、前記の口当て部の張り力は強度を増す。また、口当て部の立体形状は一層、安定する。したがって、口当て部と口もととの間に形成される空間はより確実に保持される。
【0020】
さらに、前記形状保持部材の両端が折り畳み部の両端に固着されている場合(請求項5)、形状保持部材と口当て部とは一体となる。そのため、湾曲形成された形状保持部材の両端は口当て部の両端で支持される。したがって、立体形成された口当て部は型崩れが防止されるので、その形状は長時間保持される。
【0021】
また、前記口当て部の上端に当該上端を鼻へ沿わせるための可撓性支持部材を設けている場合(請求項6)、口当て部は上端を鼻に係止することが可能になっている。そのため、口当て部は顔面および口元に安定し易くなる。したがって、立体形成された口当て部と口元との間に生じる空間はより確実に保持される。
【0022】
また、前記口当て部の下端に、当該下端を顎へ沿わせるための可撓性を有する支持部材を設けている場合(請求項7)、口当て部は一層、顔面および口元に安定し易くなる。したがって、立体形成された口当て部と口元との間に生じる空間はより確実に保持される。また、立体形成された口当て部は、長時間の使用においてもその形状は一層、保持される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のマスクの一部を切り欠いた正面図である。
【図2】図1のマスクの中央縦断面の略図である。
【図3】図1のAA線の拡大断面図である。
【図4】図1のBB線の拡大断面略図である。
【図5】図1の形状保持部材の正面図である。
【図6】図1のマスクを立体形成した使用状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明のマスクAを示す。そのマスクAは、口当て部1と、その口当て部1の両側に設けられている耳掛け部2とからなっている。
【0025】
口当て部1は、図2および図3に示すように表面側の不織布3a、中間の不織布3b、裏面側の不織布3cの三層を重ね合わせてなる不織布体3と、この口当て部1の中に収容されている形状保持部材4とからなっている。上記中間層の不織布3bは抗菌性を有している。
なお、上記不織布体の総数は、この実施形態に限るものではない。また、抗菌性不織布の枚数も上記に限るものではない。抗菌性の不織布は備えているのが好ましいが、なくてもよい。
【0026】
口当て部1は、図1に示すように前記不織布体3の上下方向における中央を水平に折り畳んで周縁をヒートシール5をすることによって、折り畳み部6を形成している。折り畳み部6は複数個、設けているが、図4に示すように、上下対称に設けるのが好ましい。しかして、折り畳み部6は両端がヒートシール5をされて、中央は溶着されていないので、上下方向に拡げるのが可能になっている。
【0027】
折り畳み部6は、口当て部1の上辺と下辺を外側方向に引っ張ることによって、均等に開くので、上下対称の立体形状を簡単に、かつ、確実に得ることができる(図6参照)。また、この形状から原状の扁平状態へと戻すこともできる。
このように口当て部1は、折り畳み部6が上下対称に開いて展開するので、好体裁の外観を呈する。しかし、折り畳み方向を一方向に揃えて形成したものであってもよい。
【0028】
形状保持部材4は、合成樹脂製のもので、可撓性を有している。図5に示すように幅は3mm前後の幅狭で、厚みが1mm前後の肉薄のもので、図1に示すように長さは口当て部1の横幅と同じ長さになっている。この形状保持部材4は山形に折り曲げたり、あるいは凸状に曲げたりして立体形成するのが可能になっている。また、立体形成された形状を保持することも可能になっている。そして、原状の扁平状態へ復帰させることも可能になっている。
【0029】
形状保持部材4は、図1乃至図3に示すように、折り畳み部6の中に収容されている。詳しくは、口当て部1の中央に位置する折り畳み部6aの中心に折り畳み部6aの折りたたみ線と並行に配置し(図1参照)、かつ、中間層の不織布3bと裏面側の不織布3cの間に挿入して(図2参照)その両端を口当て部1の両側端に重ねる。形状保持部材4は、口当て部1の周縁が前述のとおりヒートシール5されるときに、両端が口当て部1の両端に溶着される(図3参照)。
【0030】
さらに、形状保持部材4は、その上辺のすぐ上と下辺のすぐ下において、三層の不織布3a、3b、3cがヒートシール5aされているので、スリット状の袋7の中に収容された形態となっている。しかして形状保持部材4は折り畳み部6a、また、袋7と一体になるので、口当て部1の上下方向に移動することは防止され、また、定位置に常設されているので、屈曲、また、湾曲が簡単、かつ確実に行える。そのため、口当て部1は確実、かつ、迅速に立体形成することができると共に、その中央の張り作用は確実、かつ安定しているので、簡単に形崩れすることは防止される。たとえば口当て部1の表面中央が押されたり、また、口当て部が呼吸などで湿気ても口当て部の中央の張り作用によって、全体的な型崩れが防止される。
【0031】
したがって、図5に示すように立体形成された口当て部1は、上下方向の中央部と形状保持部材4が非常に安定した状態で一体化しているので、その中央は確かな張り力を得ている。そのため、立体形成された口当て部1は、その張り力によって、外観を美しく保持することができる。
【0032】
また、上記の不織布3a、3b、3cの三層は、図1に示すように口当て部の上下方向の中央における全幅がヒートシール5aされているので、裏面側の不織布3cは折り畳み部6が拡げられた状態においても、他の2層の不織布3a、3bと一体化するのが可能になっている。したがって、マスク装着時において、裏面側の不織布3cが口に吸い寄せられたりして、唇に接触するという不快感は防止される。
【0033】
また、図6に示すように、口当て部1とその上下方向の中央辺りが対面する口もとMとの間には空間Sが形成される。また、その空間Sは、前記形状保持部材4による張り作用によって確実に保持される。さらに、口当て部1は口もとMに接触するのが防止されるが、特に女性の場合、口紅が付着するのが防止される。したがって、この衛生用マスクは非常に衛生的である。
【0034】
上記空間Sは非常に安定した状態で保持されているので、口Mは常に動かし易くなっている。したがって、マスクを装着した状態でも、明確な発音で喋ることが可能になっているので、敢えて、マスクをとって喋るなどの煩雑さはない。
【0035】
さらに、図6において二点鎖線で示すように、隣接する折り畳み部6の中に、前記形状保持部材4と同じものを同じ要領で収納されるものが好ましい。この場合は、さらに口当て部と口もととの間に形成される空間を一層、確実に保持することができる。
【0036】
耳掛け部2は、弾力性を有する細紐でなっている。細紐はゴム紐が好ましい。ゴム紐は口当て部の端が頬に優しく接触し、また、頬の動きにも対応して伸縮するので、上記のように立体形成された口当て部は、口の動きにも柔軟に対応するので、その立体形状を確実に保持することができる。しかし、弾力性のない細紐であっても、口当て部が頬に密着しやすいものであれば、ゴム紐でなくてもよい。
【0037】
前記実施形態のほかに、図6の2点鎖線で示すように隣接する折り畳み部6bの中に前記と同じ要領で形状保持部材4を設けてもよい。この場合、口当て部1の立体形状はさらに、確かな状態で保持される。
【0038】
また、図6の二点鎖線で示すように、前記実施形態の口当て部2の上端に、当該上端を鼻に沿わせるための可撓性を有する支持部材10を設けても良い。また、下端を顎に沿わせるための可撓性を有する支持部材11を設けても良い。こられの支持部材は、前記形状保持部材と同じ素材のものが好ましい。また、その両端は、前記形状保持部材と同じように口当て部の両端に溶着されているのが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 口当て部
2 耳掛け部
3 不織布体
3a 不織布(表面側)
3b 不織布(中間層)
3c 不織布(裏面側)
4 形状保持部材
5 ヒートシール
5a ヒートシール
6 折り畳み部
6a 折り畳み部
7 袋
A マスク
M 口元
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の不織布を重ね合わせた状態で左右方向に細長く延びる折り畳み部を有する扁平状の口当て部と、その口当て部の両側に有する耳に装着するための引っ掛け部とからなる立体可変式の衛生用マスクにおいて、前記折り畳み部の中に可撓性を有する形状保持部材を収容している立体可変式の衛生用マスク。
【請求項2】
前記折り畳み部の間に左右方向に延びるスリット状の袋を形成し、このスリット状の袋の中に前記形状保持部材を収容している請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。
【請求項3】
前記形状保持部材を収容する折り畳み部が口当て部の上下方向における中央部に設けられている請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。
【請求項4】
前記折り畳み部が上下に複数、並設され、前記形状保持部材が隣接する折り畳み部の中にそれぞれ収容されている請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。
【請求項5】
前記形状保持部材は、その両端が折り畳み部の両端に固着されている請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。
【請求項6】
前記口当て部の上端に、当該上端を鼻へ沿わせるための可撓性を有する支持部材を設けている請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。
【請求項7】
前記口当て部の下端に、当該下端を顎へ沿わせるための可撓性を有する支持部材を設けている請求項1記載の立体可変式の衛生用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−36574(P2011−36574A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188771(P2009−188771)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(509231271)有限会社順皇堂 (1)
【出願人】(509231282)有限会社シードジャパン (1)
【Fターム(参考)】