説明

立体形状データ変換方法、それを記述したコンピュータプログラムおよび立体形状データ変換装置

【課題】内部表面形状を含む表面形状モデルのポリゴンデータのB−repsデータへの変換について、ポリゴンデータが大容量である場合でも、簡単な操作で内部表面形状を画面上に表示することができる。
【解決手段】入れ子構造的に複数層の表面形状を有する表面形状モデルのポリゴンデータPDをその最外層の表面形状から順次的に表示手段6の画面に表示しながら、各層の表面形状についてポリゴンデータを順次的にB−repsデータ化することで、ポリゴンデータのB−repsデータBDへの変換を行うについて、ポリゴンを画面上に表示するか否かを示す属性である表示属性をポリゴンごとに記述したデータ構成でポリゴンデータを構成するものとし、そして表面形状の順次表示は、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンの表面形状の表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面形状を表す表面形状モデルの作成技術に関し、特に表面形状モデルを記述しているポリゴンデータを操作性や利用性の高いB−repsデータに変換する立体形状データ変換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の立体形状を計測してその表面形状を記述するデータ(表面形状モデル)を生成するには、X線CT装置、表面計測プローブ、レーザ計測機、CCDカメラなどの3次元計測装置(3次元ディジタイザ)が用いられる。これらの3次元計測装置のなかで、X線CT装置は局所的なセルの集合であるビットマップデータを出力し、それ以外の装置は局所的な点の集合である点群データを出力する。これらビットマップデータや点群データは、表面形状についての局所的な情報を持つだけで大域的な情報(位相幾何学的な情報)を持っていない。一方、表面形状を記述するデータ形式として、一般の3次元CADにおけるデータ形式がある。このCADにおけるデータ形式は、「B−reps」(Boundary-representations:境界表現)と呼ばれ、大域的な情報を持っており、操作性や利用性においてビットマップデータや点群データよりも優れている。こうしたことから、3次元計測装置による計測で得られたビットマップデータや点群データをB−repsデータに変換して操作性や利用性を高めることが広く行われている。
【0003】
ビットマップデータや点群データをB−repsデータに変換する方法としては、ビットマップデータや点群データが表している立体形状の表面から幾何学的な特徴面(平面や円筒面などといった幾何学的に定義された面)を抽出した後、残りの表面上に自由曲面を作成する方法がある(例えば特許文献1)。この方法で例えばビットマップデータの表面形状モデルをB−repsデータによる表面形状モデルに変換するには、表示装置の画面上にビットマップデータの表面形状モデルを表示し、これを利用者が見ながら対話的に操作を行ってB−repsデータを作成するのが一般的である。
【0004】
ここで、画面上にビットマップデータなどによる表面形状モデルを表示する際には「ポリゴンデータ」と呼ばれるデータ形式を用いるのが一般的である。したがってビットマップデータや点群データのB−repsデータへの変換は、ポリゴンデータのB−repsデータへの変換としてなされるのが通常である。ポリゴンデータは、表面形状モデルを記述する代表的なデータ形式のであり、微小な3角形面の集合として構成される。ビットマップデータからポリゴンデータを作成する手法としては例えば特許文献2に開示の例などがあり、点群データからポリゴンデータを作成する手法としては例えば非特許文献1に記載の例などがある。
【0005】
ところで、X線CT装置は、対象物が内部構造を有するつまり入れ子構造的に複数層の表面形状を有する場合に、その内部構造についても立体形状を計測して表面形状データを得ることができ、対象物について、より有効な表面形状モデルを得ることができる。こうしたX線CT装置による表面形状モデルでは、それを画面上に表示しての対話的操作の際に内部構造の表面形状(以下、これを仮に「内部表面形状」と呼ぶ)が外部構造の表面形状(以下、これを仮に「外部表面形状」と呼ぶ)により隠された状態にある。このためX線CT装置による表面形状モデルについて、その表面形状モデルを画面上に表示した対話的操作で内部表面形状もB−repsデータに変換するには、外部表面形状で隠されている内部表面形状を画面上に順次表示できるようにする必要がある。
【0006】
内部表面形状の表示については、これまで2つの手法が主なものとして知られている。第1の方法では、画面上に表示されている外部表面形状のうちから切断する面を利用者が指定し、またそこにおける切断方向を利用者が指定し、これにより表面形状モデルつまりポリゴンデータを切断して内部表面形状を露出させることで表示する。図7に、第1の方法で内部表面形状を表示する例を示す。図7の(a)は、表示されているポリゴンデータに切断面とその切断方向を指定する状態を示しており、図中に黒線で示した矩形領域が指定面の切断方向を表わしている。図7の(b)、(c)は、(a)の条件で内部表面形状を露出させて表示した例を示している。
【0007】
第2の方法は、画面上に表示されているポリゴンデータの部分領域を利用者が選択し、その選択された部分領域を非表示にして内部表面形状を表示する方法である。図8に、第2の方法で内部表面形状を表示する例を示す。図8の(a)は、表示されているポリゴンデータに非表示とする部分領域を指定する状態を示しており、図中に示す黒線が選択された非表示部分領域を表わしている。図8の(b)、(c)は、(a)の条件で内部表面形状を露出させて表示した例を示している。
【0008】
【特許文献1】特開2002−230056号公報
【特許文献2】特開昭62−37782号公報
【非特許文献1】「Modeling scattered function data on curved surfaces」(C.Bajaj/G.Xu)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した幾何学的な特徴面に着目してポリゴンデータをB−repsデータに変換する手法は有効性が高い。しかし、X線CT装置による表面形状モデルのように内部表面形状を含む表面形状モデルについてそのポリゴンデータをB−repsデータに変換する場合に課題を残している。すなわち内部表面形状を含む表面形状モデルについては、表示装置の画面上に表面形状モデルを表示して対話的に変換処理を行う場合に、上述のように外部表面形状で隠されている内部表面形状を表示させる必要があり、この内部表面形状表示処理に関して課題を残している。
【0010】
具体的にいうと、上記第1の方法は、利用者の簡単な操作で内部表面形状を画面上に表示することを可能とするものの、対象物の構造が複雑になると内部表面形状の全体を画面上に表示することが困難になって内部表面形状のB−repsデータを作成できない場合が起こり得るという問題を抱えている。一方、上記第2の方法は、対象物の構造が複雑であっても非表示部分領域を適切に選択すれば、内部表面形状の全体を画面上に表示することが可能である。しかし、内部構造が複雑でかつ大容量であるポリゴンデータの場合に、非表示部分領域の選択操作が非常に煩雑なものとなり、現実的には実行不可能になるという問題を抱えている。すなわち、構造が複雑でかつ大容量のポリゴンデータに対しては、内部表面形状を簡単に画面上に表示することができなくなり、内部表面形状のB−repsデータを作成できない場合が起こり得るという問題である。
【0011】
本発明は、上記のような事情を背景になされたものであり、内部表面形状を含む表面形状モデルのポリゴンデータのB−repsデータへの変換について、ポリゴンデータが記述する対象物の構造が複雑でしかもポリゴンデータが大容量である場合でも、簡単な操作で内部表面形状を画面上に表示することができるようにし、このことにより内部表面形状も含む表面形状モデルを効率的にB−repsデータに変換することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記目的のために、入れ子構造的に複数層の表面形状を有する表面形状モデルのポリゴンデータをその最外層の表面形状から順次的に表示装置の画面に表示しながら、各層の表面形状についてポリゴンデータを順次的にB−repsデータ化することで、前記ポリゴンデータのB−repsデータへの変換を行う立体形状データ変換方法において、ポリゴンを画面上に表示するか否かを示す属性である表示属性をポリゴンごとに記述したデータ構成で前記ポリゴンデータを構成するものとし、そして前記表面形状の順次表示は、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかを前記ポリゴンデータから検索し、その検索に基づいて前記ポリゴンの表示属性を設定して更新したポリゴンデータにより次の表面形状の表示を行うことでなすようにされていることを特徴としている。
【0013】
また本発明では上記のような立体形状データ変換方法について、ポリゴンの表示属性を「非表示」とするサーフェスを選択することができるようにしている。
【0014】
また本発明では、上記のような立体形状データ変換方法を実行するについて、当該方法を実行するための手順が記述されているコンピュータプログラムを介在させるものとしている。
【0015】
本発明では上記目的のために、入れ子構造的に複数層の表面形状を有する表面形状モデルのポリゴンデータをその最外層の表面形状から順次的に表示装置の画面に表示しながら、各層の表面形状についてポリゴンデータを順次的にB−repsデータ化することで、前記ポリゴンデータのB−repsデータへの変換を行うようにされた立体形状データ変換装置において、ポリゴンを画面上に表示するか否かを示す属性である表示属性をポリゴンごとに記述したデータ構成で前記ポリゴンデータを構成するようにされ、また前記表面形状の順次表示は、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンの表示属性を「非表示」にして更新したポリゴンデータにより次の表面形状の表示を行うことでなすようにされ、そしてそのために、前記サーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかを前記ポリゴンデータから検索し、その検索に基づいて前記ポリゴンの表示属性を設定して前記ポリゴンデータの更新を行うポリゴンデータ更新手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
また本発明では上記のような立体形状データ変換装置について、ポリゴンの表示属性を「非表示」とするサーフェスを選択するためのサーフェス選択手段を備えるものとしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンまたは含まれないポリゴンのいずれかをポリゴンデータから検索し、その検索に基づいてポリゴンの表示属性を設定して更新したポリゴンデータにより次の表面形状の表示を行うことで表面形状の順次表示をなすようにしている。このため表面形状の順次表示について、利用者はサーフェスに含まれるポリゴンまたは含まれないポリゴンの検索条件を入力する操作を行うだけで済ませることができる。したがって本発明によれば、ポリゴンデータが記述する対象物の構造が複雑でしかもポリゴンデータが大容量である場合でも、簡単な操作で入れ子構造における各層の内部表面形状を画面上に順次表示することを可能となり、このことにより内部表面形状を含む表面形状モデルを効率的にB−repsデータに変換することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1に第1の実施形態による立体形状データ変換装置のシステム構成を示す。本実施形態における立体形状データ変換装置は、入力されたポリゴンデータPDからB−repsデータBDを作成して、これを出力する。そのために、ポリゴン記憶手段1、入力手段2、B−reps生成手段3、B−reps記憶手段4、ポリゴンデータ更新手段5、および表示手段6を備えている。
【0019】
ポリゴン記憶手段1は、メモリやハードディスクで構成され、入力されたデータを記憶し、必要時に出力する機能を持つ。ポリゴン記憶手段1が記憶するポリゴンデータPDは、対象物の表面形状モデルを微小な3角形面(ポリゴン)の集合として記述するデータである。このようなポリゴンデータPDは、上記の従来におけるポリゴンデータ作成手法によりビットマップデータや点群データから作成されるのが通常である。
【0020】
ポリゴンデータPDは、各ポリゴンの頂点座標や各ポリゴンの表示属性つまり当該ポリゴンを画面上に表示するかどうかを示す属性を記述したデータ構成とされている。すなわちポリゴンデータPDは、例えば次のようなデータ構成となる。
ポリゴン1=(頂点1の座標(X1,Y1,Z1),頂点2の座標(X2,Y2,Z2),
頂点3の座標(X3,Y3,Z3),表示属性)
ポリゴン2=(頂点1の座標(X1,Y1,Z1),頂点2の座標(X2,Y2,Z2),
頂点3の座標(X3,Y3,Z3),表示属性)

ポリゴンn=(頂点1の座標(X1,Y1,Z1),頂点2の座標(X2,Y2,Z2),
頂点3の座標(X3,Y3,Z3),表示属性)
表示属性に関しては、例えば、ポリゴンを画面上に表示する場合(「表示」とする場合)に表示属性=1、画面上に表示しない場合(「非表示」とする場合)に表示属性=0とする。
【0021】
入力手段2は、キーボードやマウスなどで構成され、ポリゴンデータPDからB−repsデータBDを作成して出力するまでの処理に必要なコマンドなどを利用者が入力するのに機能する。すなわち利用者は、この入力手段2を介してB−reps生成コマンドCD1やポリゴンデータ更新コマンドCD2などのコマンドを入力する。
【0022】
B−reps生成手段3は、ポリゴンデータPDとB−reps生成コマンドCD1を受け、B−repsデータBDを作成してB−reps記憶手段4に送る機能を持つ。B−repsデータBDは、上記の従来におけるB−repsデータ作成手法により作成されるのが通常である。
【0023】
B−reps記憶手段4は、メモリやハードディスクで構成されており、B−repsデータBDを記憶し、また必要なときに出力する機能を持つ。
【0024】
ポリゴンデータ更新手段5は、後述するようにして順次更新されて行くポリゴンデータPDの表示ごとになされるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータBDに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかをポリゴンデータPDから検索し、その検索に基づいてポリゴンデータPDを更新する機能を持つ。具体的には、ポリゴンデータ更新コマンドCD2とポリゴンデータPDとB−repsデータBDを受けて、ポリゴンデータPDにおけるポリゴンからサーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかを検索し、その検索に基づいて表示属性を変更してポリゴンデータPDを更新する。
【0025】
こうしたポリゴンデータの更新は、ポリゴンデータPDから内部表面形状に属するポリゴンを検索し、その検索に基づいてポリゴンデータPDを更新する、つまりポリゴンデータPDにおけるポリゴンから内部表面形状に属するポリゴンを内部ポリゴンとして検索し、その検索に基づいて表示属性を変更してポリゴンデータPDを更新する、と言い換えることもできる。なお、後の説明から分かるように、内部表面形状は、B−repsデータへの変換処理の進行にしたがって順次交代して行くものであり、あるパスで内部表面形状であった表面形状は次のパスでは外部表面形状となる。ここで、「パス」とは、後述するように、入れ子構造で複数層の表面形状を含むポリゴンデータPDに対してステップP4からステップP6までの処理を1つの層の表面形状ごと適用する過程を意味している。
【0026】
表示手段6は、ポリゴン記憶手段1からポリゴンデータPDを、B−reps記憶手段4からB−repsデータBDを、それぞれ取り出して(入力して)、利用者に視覚的に表示する機能を持つ。ポリゴンデータPDについては、表示属性の値が1であるポリゴンのみを選択的に表示する。すなわち表示属性=1のポリゴンによる表面形状だけが表示手段6の画面に表示され得る。ただし、外部表面形状で隠されている内部表面形状は、そのポリゴンの表示属性が1であっても実際には表示されない(画面上に現れない)ことになる。
【0027】
以上が立体形状データ変換装置の構成である。次に、立体形状データ変換装置で実行される立体形状データ変換方法の実施形態について説明する。本実施形態の立体形状データ変換方法における処理は、図2にその流れを示すように、ステップP1〜ステップP7の7つの処理過程を含む。
【0028】
ステップP1(ポリゴンデータ読み込み過程)では、ポリゴン記憶手段1を用いてポリゴンデータPDを読み込む。このポリゴンデータPDの読込みでは、ポリゴンデータPDにおける全てのポリゴンの表示属性を1に設定して初期化することで初期化ポリゴンデータPD1を生成する。ここで、後の説明からわかるように、ポリゴンデータPDは処理の進行にしたがって順次更新されて行く。すなわちポリゴンデータPD1は、これで記述される表面形状モデルが有する内部構造の多層性における層数nに応じて繰り返されるパスごとにポリゴンデータPD2、ポリゴンデータPD3、…、ポリゴンデータPDi、…、ポリゴンデータPDnというように順次更新されて行く。したがってポリゴンデータPDはポリゴンデータPDiということになる。
【0029】
ステップP2(初期化ポリゴンデータ表示過程)では、表示手段6を用いてポリゴンデータPDを画面上に表示する。この表示では、ポリゴンデータPDにおけるポリゴンのうちの表示属性=1のポリゴンが選択的に表示される。ただ、上述のように、外部表面形状で隠されている内部表面形状は、そのポリゴンが表示属性=1であっても実際には表示されない。
【0030】
ステップP3(初期化ポリゴンデータからのB−repsデータ生成過程)では、B−reps生成手段3を用いてポリゴンデータPDからB−repsデータBDを作成する。B−repsデータBDの作成は上述の手法で行なわれる。具体的には、表示手段6の画面上に表示されているポリゴンデータPDつまり表面形状モデルを見ながら利用者が対話的な操作で幾何学的特徴面の抽出などを行ってB−repsデータを作成する。したがってB−repsデータBDの作成では、表面形状モデルにおける表面形状のうちで画面上に表示されている表面形状つまり外部表面形状についてのみ行われ、この時点で外部表面形状である面についてのみB−repsデータが作成される。このためB−repsデータBDは、ポリゴンデータPDの更新にしたがって順次更新されて行く。すなわちB−repsデータBDは、ポリゴンデータPD1に基づくB−repsデータBD1、ポリゴンデータPD2に基づくB−repsデータBD2、ポリゴンデータPD3に基づくB−repsデータBD3、…、ポリゴンデータPDiに基づくB−repsデータBDi、…、ポリゴンデータPDnに基づくB−repsデータBDnというように順次更新されて行く。したがってB−repsデータBDはB−repsデータBDiということになる。
【0031】
ステップP4(ポリゴンデータ更新過程)では、ポリゴンデータ更新手段5がポリゴンデータ更新処理を行う。ポリゴンデータ更新処理における処理の流れを図3に示す。この処理は、ステップP8〜ステップP14の7つの処理過程を含む。
【0032】
ステップP8(サーフェス登録過程)では、B−repsデータBDに記述されているサーフェスをサーフェスリストに登録する。
【0033】
ステップP9(ポリゴン選択パラメータ設定過程)では、入力手段2を用いて、ポリゴン選択パラメータを決定するための入力を行う。ポリゴン選択パラメータは、ポリゴンデータPDから非表示ポリゴンを選択するために必要となるパラメータであり、ポリゴンとサーフェスの内包関係を判定するために用いる後述のような距離しきい値が記述されている。
【0034】
ステップP10(ポリゴン表示属性初期化過程)では、ポリゴンデータPDにおける全てのポリゴンの表示属性を1に設定する。なお、このポリゴン表示属性初期化過程は、ステップP1のポリゴンデータ読み込み過程でポリゴンデータPDにおける全てのポリゴンの表示属性を1に設定してあることから、省略することもできる。
【0035】
ステップP11(ポリゴン内包関係判定過程)では、ポリゴンとサーフェスの内包関係をポリゴンデータPDにおける全てのポリゴンについて判定する。ポリゴンとサーフェスの内包関係の判定は、ポリゴンのサーフェスに対する距離がポリゴン選択パラメータに記述の距離しきい値以下か否かで行われる。ポリゴンがサーフェスに内包される、すなわち当該ポリゴンのサーフェスに対する距離が距離しきい値以下であり、サーフェスの近傍にあると判定されれば、ステップP12(ポリゴン表示属性設定過程)において、当該ポリゴンの表示属性を0に設定し、ステップP14(内部ポリゴン検索処理済判定過程)に進む。一方、当該ポリゴンがサーフェスに内包されない、すなわち当該ポリゴンのサーフェスに対する距離が距離しきい値より大きく、サーフェスの近傍にないと判定されれば、ステップP13(内包関係判定処理済判定過程)に進み、サーフェスリストに含まれる全てのサーフェスに対して内包関係を判定したか否かを判断し、その判断結果が否定的であれば、ステップP11に戻ってステップP12までを残りのサーフェスについて繰り返し、その判断結果が肯定的になればステップP14に進む。
【0036】
ステップP14では、ポリゴンデータPDに記述されている全てのポリゴンに対して、サーフェスリストに含まれるサーフェスとの内包関係を判定したか否かを判断し、その判断結果が否定的であれば、ステップP10に戻ってステップP13までを残りのポリゴンについて繰り返し、その判断結果が肯定的となれば処理を終了する。
【0037】
以上のようなポリゴンデータ更新処理により、B−repsデータBDに記述されているサーフェスの近傍にあるポリゴンつまりサーフェスに含まれるポリゴンはその表示属性が0とされ、サーフェスの近傍にないポリゴンつまりサーフェスに含まれないポリゴンはその表示属性が1のままとされてポリゴンデータPDの更新がなされる。
【0038】
図2に戻る。ステップP5(ポリゴンデータ表示更新過程)では、表示手段6によりポリゴンデータPDの表示の更新がなされる。すなわちポリゴンデータ更新過程を経て更新されたポリゴンデータPDの表示を行う。この更新表示では、ポリゴンデータPDで記述される表面形状モデルの多層構造(表面形状の入れ子構造)における1つの層の表面形状が表示される。すなわち表面形状モデルが第1層の内部に第2層、第3層、…、第i層、…、第n層というように複数の層を含む多層構造であれば、表示更新ごとに第2層、第3層、…、第i層、…、第n層それぞれの表面形状が順に外部表面形状として表示されることになる。例えば図7の表面形状モデルの場合、(c)に見られるように、筒状の構造体Paの内部に筒状の構造体Pbが設けられており、構造体Pa、Pbはそれぞれある厚みを持ち、それぞれ表面と裏面を持っている。この表面形状モデルの場合は、構造体Paと構造体Pbにだけ着目すると、構造体Paの表面が第1層の表面形状となり、構造体Paの裏面が第2層の表面形状となり、構造体Pbの表面が第3層の表面形状となり、構造体Pbの裏面が第4層の表面形状となる。
【0039】
ステップP6(更新ポリゴンデータからのB−repsデータ生成過程)では、ポリゴンデータ更新過程で更新されたポリゴンデータPDからB−reps生成手段3を用いてB−repsデータBDを作成する。すなわちステップP5で更新表示されたポリゴンデータPDを見ながら利用者が対話的な操作で幾何学的特徴面の抽出などを行ってB−repsデータを作成する。上述のように、ステップP5の更新表示では第i層の表面形状だけが外部表面形状(これは第i層の上の層の表面形状に対しては内部表面形状となる)として表示されているので、この第i層の表面形状に対してB−repsデータが作成され、B−repsデータBDiが生成される。
【0040】
ステップP7(B−repsデータ生成済み判定過程)では、ポリゴンデータPDに含まれる全ての表面形状つまり第1層〜第n層の全ての表面形状に対してB−repsデータを生成する処理を終えたか否かを判定する。その判定が否定的な場合はステップP4からステップP6までの処理を繰り返す。一方、ステップP6で判定が肯定的になった場合、もしくは判定が否定的であっても利用者がB−repsデータBDを生成する処理を打ち切ると判断した場合は処理を終了する。
【0041】
以上が、立体形状データ変換装置による立体形状データ変換処理である。図4に、内部構造を有するポリゴンデータに対して、本実施形態による処理を施す場合の表面形状の表示の例を示す。図4の(a)は、内部構造を有するポリゴンデータがその第1層の表面形状について表示されている例である。このようなポリゴンデータに対して、本実施形態による対象物内部の表面形状表示方法を適用した。具体的には、まずステップP2で表示されるポリゴンデータ((a)の表示状態)に対してB−repsデータを作成した。図4の(b)がその結果である。次に、図4の(a)のポリゴンデータと、図4の(b)のB−repsデータを用いて内部ポリゴンを検索することでポリゴンデータの更新を行い、その更新後のポリゴンデータを表示させた。図4の(c)と(d)がその結果である。
【0042】
以上のようなに、立体形状データ変換装置では、入れ子構造で複数層の表面形状を含むポリゴンデータをB−repsデータに変換するために各層の表面形状を順次表示させる処理について、利用者はポリゴン選択パラメータの入力操作を行うだけで済ませることができる。すなわちポリゴンデータが記述する対象物の構造が複雑でしかもポリゴンデータが大容量である場合でも、簡単な操作で入れ子構造における各層の表面形状(内部表面形状)を画面上に順次表示することを可能とし、このことにより内部表面形状も含む表面形状モデルを効率的にB−repsデータに変換することが可能となる。
【0043】
以下では、第2の実施形態について説明する。図5に、第2の実施形態による立体形状データ変換装置のシステム構成を示す。本実施形態における立体形状データ変換装置は、ポリゴン記憶手段1、入力手段2、B−reps生成手段3、B−reps記憶手段4、ポリゴンデータ更新手段5、表示手段6、サーフェス選択手段7、選択サーフェス記憶手段8を備えている。これらの機能手段の内のポリゴン記憶手段1、入力手段2、B−reps生成手段3、B−reps記憶手段4、ポリゴンデータ更新手段5、表示手段6は、第1の実施形態による立体形状データ変換装置におけるそれらと同一である。すなわち本実施形態の立体形状データ変換装置は、第1の実施形態による立体形状データ変換装置に、サーフェス選択手段7と選択サーフェス記憶手段8を付加した構成となっている。
【0044】
第1の実施形態による立体形状データ変換装置では、ポリゴンデータ更新過程における内部ポリゴンの選択においてB−repsデータBDに記述されている全てのサーフェスを対象とている。すなわちポリゴンデータ表示更新過程では、全てのサーフェスついてそれに含まれるポリゴンを表示させないものとしている。しかしながら、表面形状モデルの内部構造の状態によっては、B−repsデータBDに記述されているサーフェスのうち、利用者が指定したサーフェスに含まれるポリゴンのみを非表示にし、それ以外のポリゴンを画面上に表示した状態で内部表面形状のB−repsデータを作成するようにした方が都合のよい場合もある。例えば、外部表面形状と内部表面形状が近接するような領域では、外部表面形状と内部表面形状を同時に表示した方が、それらの構造関係をより適切に把握することができ、そうすることで内部表面形状に対してより簡単にB−repsデータを作成することができるようになる場合がある。このような場合には、必要に応じて特定のサーフェスについてはその近傍にあるポリゴンを表示できるようにする、つまりサーフェスについてポリゴンの表示と非表示を選択できるようにする必要がある。こうした機能要求に応えるのが本実施形態の立体形状データ変換装置におけるサーフェス選択手段7と選択サーフェス記憶手段8である。
【0045】
サーフェス選択手段7は、サーフェス選択コマンドCD3とB−repsデータBDを受けて、選択サーフェスデータSDを生成し、これを選択サーフェス記憶手段8に送る。選択サーフェスデータSDは、ポリゴンを非表示とするものとして利用者が選択したサーフェスを記述するデータである。
【0046】
選択サーフェス記憶手段8は、メモリやハードディスクで構成されており、選択サーフェスデータSDを記憶し、また必要時に出力する機能を持つ。
【0047】
図6に、ポリゴンデータ更新手段5でなされるポリゴンデータ更新処理の流れを示す。この処理は、ステップP8a〜ステップP14aの7つの処理過程を含む。ステップP8a (選択サーフェス登録過程)では、選択サーフェスデータSDに記述されているサーフェスをサーフェスリストに登録する。ステップP8aに続くステップP9a〜ステップP14aは、第1の実施形態におけるステップP9〜ステップP14に対応しており、それらついて説明したのと同一の処理を行う。
【0048】
本実施形態では、第1の実施形態と同様な効果が得られるのに加えて、表面形状モデルの内部構造の状態に応じて、より適した処理を行えるようになるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、大容量かつ複雑な内部表面形状を有するポリゴンデータについても簡単な操作でB−repsデータへの変換を可能とするものであり、B−repsデータが利用される設計や解析の分野などにおいて有用なものとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態による立体形状データ変換装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態による立体形状データ変換装置で実行される立体形状データ変換処理の流れを示す図である。
【図3】第1の実施形態による立体形状データ変換装置におけるポリゴンデータ更新処理の流れを示す図である。
【図4】第1の実施形態による立体形状データ変換装置で内部表面形状を表示する具体的な例を示す図である。
【図5】第2の実施形態による立体形状データ変換装置の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態による立体形状データ変換装置におけるポリゴンデータ更新処理の流れを示す図である。
【図7】ポリゴンデータで記述された表面形状モデルも内部表面形状を従来の手法の一つで表示する例を示す図である。
【図8】ポリゴンデータで記述された表面形状モデルも内部表面形状を従来の手法の他の一つで表示する例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
5 ポリゴンデータ更新手段
7 サーフェス選択手段
BD B−repsデータ
P4 ポリゴンデータ更新過程
P5 ポリゴンデータ表示更新過程
P6 更新ポリゴンデータからのB−repsデータ生成過程
PD ポリゴンデータ
SD 選択サーフェスデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子構造的に複数層の表面形状を有する表面形状モデルのポリゴンデータをその最外層の表面形状から順次的に表示手段の画面に表示しながら、各層の表面形状についてポリゴンデータを順次的にB−repsデータ化することで、前記ポリゴンデータのB−repsデータへの変換を行う立体形状データ変換方法において、
ポリゴンを画面上に表示するか否かを示す属性である表示属性をポリゴンごとに記述したデータ構成で前記ポリゴンデータを構成するものとし、そして前記表面形状の順次表示は、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかを前記ポリゴンデータから検索し、その検索に基づいて前記ポリゴンの表示属性を設定して更新したポリゴンデータにより次の表面形状の表示を行うことでなすようにされていることを特徴とする立体形状データ変換方法。
【請求項2】
ポリゴンの表示属性を「非表示」とするサーフェスを選択することができるようにされている請求項1に記載の立体形状データ変換方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の立体形状データ変換方法を実行するための手順を記述したコンピュータプログラム。
【請求項4】
入れ子構造的に複数層の表面形状を有する表面形状モデルのポリゴンデータをその最外層の表面形状から順次的に表示手段の画面に表示しながら、各層の表面形状についてポリゴンデータを順次的にB−repsデータ化することで、前記ポリゴンデータのB−repsデータへの変換を行うようにされた立体形状データ変換装置において、
ポリゴンを画面上に表示するか否かを示す属性である表示属性をポリゴンごとに記述したデータ構成で前記ポリゴンデータを構成するようにされ、また前記表面形状の順次表示は、前の表面形状の表示におけるB−repsデータ化で生成されたB−repsデータに記述されているサーフェスに含まれるポリゴンの表示属性を「非表示」にして更新したポリゴンデータにより次の表面形状の表示を行うことでなすようにされ、そしてそのために、前記サーフェスに含まれるポリゴンかまたは含まれないポリゴンのいずれかを前記ポリゴンデータから検索し、その検索に基づいて前記ポリゴンの表示属性を設定して前記ポリゴンデータの更新を行うポリゴンデータ更新手段を備えていることを特徴とする立体形状データ変換装置。
【請求項5】
ポリゴンの表示属性を「非表示」とするサーフェスを選択するためのサーフェス選択手段を備えている請求項4に記載の立体形状データ変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−148966(P2007−148966A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345181(P2005−345181)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】