説明

立体映像表示装置、立体映像撮像装置および立体映像表示方法

【課題】製作者に表示データ内の個々の被写体像の視差を容易かつ正確に把握させる。
【解決手段】立体映像表示装置106は、水平視差を有する2つの映像データ150を取得する映像データ取得部110と、2つの映像データを合成して表示データ152を生成する合成部112と、垂直方向に延長された2つの縦線画像158a、158bを表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて2つの縦線画像を水平方向にそれぞれ独立して移動する線画像重畳部132と、2つの縦線画像間の視差に関する視差情報160を導出する視差情報導出部136と、導出された視差情報を縦線画像が重畳された表示データにさらに重畳する視差情報重畳部138と、縦線画像および視差情報が重畳された表示データを表示する表示部116とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像を知覚させるための表示データを表示する立体映像表示装置、立体映像撮像装置および立体映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ上に、水平視差(両眼視差)を有する2つの映像を提示し、観察者に対してあたかも被写体像が立体的に存在するように知覚させる立体映像の技術が脚光を浴びている。かかる技術で用いられる2つの映像は、異なる光軸(視点)それぞれにおいて撮像された映像、または、異なる光軸で撮像したのに相当するCG(Computer Graphics)の映像である。かかる2つの映像に含まれる被写体像の遠近方向の結像位置は、被写体像の2つの映像間における視差の大小によって定まる。
【0003】
このように被写体像の2つの映像間の視差を調整すれば被写体像の遠近方向の結像位置を変化させることができるが、視差を大きくとり過ぎて、被写体像が過渡に飛び出して結像されたり、過渡に引き込まれて結像されると、観察者の目に負担がかかる場合がある。そこで、2つの映像を製作する製作者(作業者)は、撮像により、またはCG等の製作により生成された映像データを、その都度、立体映像を知覚させるための表示データに加工して立体映像表示装置に表示し、被写体像の視差が適切な範囲に保たれているかどうか確認していた。しかし、多くの場合、製作者は、立体映像表示装置に定規を当てたり、自己の経験や勘に基づいて視差の大小を判断しなければならなく、相当の手間と労力を費やしていた。
【0004】
そこで、テンプレートの役目を担うガイドを映像に重畳し、撮像者に左右の映像データの視差を確認させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−322725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ガイドが固定的に配置され、視差の導出を試みる被写体像がその固定されたガイドと重なるのは稀であり、製作者は、離隔するガイドを目安にして被写体像の映像データ間の視差を目視で推定することしかできなかったため、視差が適切な範囲に保たれているか否かを正確に把握することは困難であった。また、視差が有るか無いか程度は把握できるものの、2つの映像データが合成された表示データでは被写体像の水平方向の相対位置を視認するのは難しく、その視差が飛び出し側の視差なのか引き込み側の視差なのかを把握することができなかった。さらに、小型のモニタやビューファインダ等の比較的小さな画面では、視差を視認するための基準に乏しく、視差の抽出には困難を極めていた。このような目視による視差の導出では、視差を正確に特定できないばかりか、製作者は、ガイドと視差との比較作業を通じて多大な時間と労力を費やしていた。
【0007】
また、製作者は、撮像により、またはCG等の製作により生成された映像データを、小型のモニタやビューファインダに表示して、その採否を簡略的に判断することとなるが、その映像データは、そもそも、映画館の大型スクリーンに表示される目的で製作されている場合がある。このように表示データを表示する表示画面の大きさが異なると、それに伴って視差も変化し、小型のモニタと、大型スクリーンとで立体感が異なってしまうことになる。表示データの水平方向の表示幅に対する視差の比率に表示画面の倍率を乗じれば、任意の表示画面における視差を見積もることもできるが、表示データの視差を正確に導出できない以上、任意の表示画面における視差を見積もることもできなかった。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、製作者に表示データ内の個々の被写体像の視差を容易かつ正確に把握させることが可能な、立体映像表示装置、立体映像撮像装置および立体映像表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像表示装置は、水平視差を有する2つの映像データを取得する映像データ取得部と、2つの映像データを合成して表示データを生成する合成部と、垂直方向に延長された2つの縦線画像を表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて2つの縦線画像を水平方向にそれぞれ独立して移動する線画像重畳部と、2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出する視差情報導出部と、導出された視差情報を縦線画像が重畳された表示データにさらに重畳する視差情報重畳部と、縦線画像および視差情報が重畳された表示データを表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
2つの縦線画像は2つの映像データにそれぞれ対応付けられ、立体映像表示装置は、2つの縦線画像のうち一方の縦線画像を移動する間、その一方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成部に合成させる合成制限部をさらに備えてもよい。
【0011】
線画像重畳部は、さらに、水平方向に延長された横線画像を表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて横線画像を垂直方向に移動してもよい。
【0012】
視差情報は、2つの縦線画像間の視差と表示データの水平方向の表示幅との比であってもよい。
【0013】
視差情報は、表示部と観察者との距離に対する、表示部と2つの縦線画像間の視差を有する被写体像が結像される位置との距離の比であってもよい。
【0014】
視差情報導出部は、2つの縦線画像間の視差と共に2つの縦線画像の水平方向の相対位置も特定して視差情報を導出してもよい。
【0015】
立体映像表示装置は、縦線画像間の視差が所定の閾値を越えれば、縦線画像を、閾値を越えたことを把握できる表示態様に変更する線画像変更部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像撮像装置は、略平行に並んだまたは撮像方向で交わる2つの光軸それぞれにおける2つの映像データを生成する撮像部と、2つの映像データを合成して表示データを生成する合成部と、垂直方向に延長された2つの縦線画像を表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて2つの縦線画像を水平方向にそれぞれ独立して移動する線画像重畳部と、2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出する視差情報導出部と、導出された視差情報を縦線画像が重畳された表示データにさらに重畳する視差情報重畳部と、縦線画像および視差情報が重畳された表示データを表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像表示方法は、水平視差を有する2つの映像データを取得し、2つの映像データを合成して表示データを生成し、水平方向に延長された横線画像を表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて横線画像を垂直方向に移動し、垂直方向に延長された2つの縦線画像を表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて2つの縦線画像のうち一方の縦線画像を水平方向に移動する間、その一方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成し、ユーザの操作入力に応じて2つの縦線画像のうち他方の縦線画像を水平方向に移動する間、その他方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成し、2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出し、導出した視差情報を、縦線画像を重畳した表示データにさらに重畳し、縦線画像および視差情報を重畳した表示データを表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明は、製作者に表示データ内の個々の被写体像の視差を容易かつ正確に把握させることが可能となり、製作者は、その視差を用いて所望する表示状態となるよう映像データを調整することができるので、観察者の眼に負担をかけることのない自然な立体感を有する立体映像を知覚させる映像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】立体映像製作システムの概略的な関係を示した機能ブロック図である。
【図2】立体映像表示装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】合成部の動作を説明するための説明図である。
【図4】線画像重畳部の動作を説明するための説明図である。
【図5】合成制限部の動作を説明するための説明図である。
【図6】視差情報導出部の動作を説明するための説明図である。
【図7】視差の水平方向の相対位置を説明するための説明図である。
【図8】視差の水平方向の相対位置を説明するための説明図である。
【図9】立体映像表示方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】立体映像撮像装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
(立体映像製作システム100)
図1は、立体映像製作システム100の概略的な関係を示した機能ブロック図である。立体映像表示システム100は、製作者10が水平視差を有する2つの映像データを生成するための装置、例えば、撮像のための立体映像撮像装置102やCG生成のためのコンピュータ104と、生成された映像データを表示する立体映像表示装置106とを含んでなる。このように立体映像製作システム100で製作された映像データは、例えば、映画館のスクリーン108等を通じて観察者12に提供され、観察者12は、偏光メガネ等を通じて提供された映像データを観察することができる。ここでは、理解を容易にするため、映像データを製作する者を製作者、その映像データを観察する者を観察者としているが、本実施形態が利用者によって限定されないのは言うまでもない。
【0022】
立体映像製作システム100では、被写体像の2つの映像データ間の視差を調整すれば被写体像の遠近方向の結像位置を変化させることができる。しかし、視差を大きくとり過ぎて、被写体像が過渡に飛び出して結像されたり、過渡に引き込まれて結像されると、観察者12の目に負担がかかる場合がある。そこで、製作者10は、生成した映像データを、その都度、立体映像表示装置106に表示し、被写体像の視差が適切な範囲に保たれているか確認し、視差が適切でなければ、適切な範囲に収まるよう映像データを調整する。
【0023】
本実施形態の立体映像表示装置106では、製作者10に、個々の被写体像の2つの映像データ間における視差を容易かつ正確に把握させることが可能となるので、製作者10は、その視差を用いて所望する表示状態となるよう映像データを調整することができ、観察者12の眼に負担をかけることのない自然な立体感を有する映像データを生成することができる。
【0024】
(立体映像表示装置106)
図2は、立体映像表示装置106の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図2に示すように、立体映像表示装置106は、映像データ取得部110と、合成部112と、OSD(On-Screen Display)重畳部114と、表示部116と、操作部118と、中央制御部120とを含んで構成される。図2中、実線はデータの流れを示し、破線は制御信号の流れを示している。
【0025】
映像データ取得部110は、立体映像を知覚するための、異なる光軸(視点)それぞれにおいて撮像された映像、または、異なる光軸で撮像したのに相当するCGの映像をデータ化した、水平視差を有する左右2つの映像データ(以下、左右を識別する必要がある場合には、それぞれを右眼用映像データ、左眼用映像データと表現する。)を、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子等の映像信号入力用の端子を通じて取得する。ここで、左右2つの映像データは独立して個々に取得されてもよいし、一体的なデータとして取得されてもよい。
【0026】
ここで、一体的なデータのフォーマット形式としては、2つの映像データを左右並置したLR独立方式、2つの映像データを水平方向に1/2圧縮して左右並置したサイドバイサイド方式、2つの映像データを垂直方向(鉛直方向)に1/2圧縮して上下並置したアバヴアンドビロウ方式、2つの映像データを時間方向に交互に配置したフレームシーケンシャル方式等が挙げられる。
【0027】
合成部112は、映像データ取得部110が取得した左右2つの映像データを合成して表示データを生成する。具体的に、合成部112は、後述するフォーマット判別部から出力された制御信号に応じて、映像データ取得部110が取得した2つの映像データを一旦分離し、表示部116の表示方式に応じて、分離された2つの映像データを合成する。表示方式としては、パッシブタイプの、ラインバイライン方式、チェッカーボード方式、アナグリフ方式、カラーコード3D方式、アクティブタイプのフレームシーケンシャル方式等が挙げられる。
【0028】
ラインバイライン方式は、表示部116の表示面に、偏光特性が異なる2種類の偏光フィルタを隔行で(水平ライン毎に)交互に配置し、一方の偏光フィルタが配置された奇数ラインに右眼用映像データを、他方の偏光フィルタが配置された偶数ラインに左眼用映像データを表示させる方式である。チェッカーボード方式は、偏光特性が異なる2種類の偏光フィルタをラインではなく画素毎に配置した方式である。アナグリフ方式は、右眼用映像データおよび左眼用映像データをそれぞれ異なる色、例えば赤と青で表し、観察者12に赤と青のカラーフィルタが施された色メガネで映像データを右眼および左眼に排他的に視認させる方式である。カラーコード3D方式は、アナグリフ方式における2つの色を青色とアンバー系の色に代えて色の再現性を高めた方式である。フレームシーケンシャル方式は、右眼用映像データと左眼用映像データを交互に表示部116に表示し、排他的に開閉する電子シャッタを通じて、右眼用映像データを観察者12の右眼にのみ、左眼用映像データを観察者12の左眼にのみ視認させる方式である。
【0029】
図3は、合成部112の動作を説明するための説明図である。例えば、映像データ取得部110が、図3(a)に示すような、2つの映像データが一体化されたサイドバイサイド方式の映像データ150を取得した場合、合成部112は、まず、図3(b)のように、映像データ150を右眼用映像データ150aと左眼用映像データ150bとに分離し、図3(c)のように、右眼用映像データ150aから奇数ラインの映像データを抽出し、左眼用映像データ150bからは偶数ラインの映像データを抽出すると共に、水平方向に画像を2倍に拡大し、最後に、右眼用映像データ150aの奇数ラインと左眼用映像データ150bの偶数ラインとを合成して、図3(d)のようなラインバイライン方式の表示データ152を生成する。ここでは、説明の便宜のためライン総数を8としているが、実際のライン総数は走査線数分(例えば1080本)あるので、当該表示データ152をそのまま裸眼で観察すると被写体像が視差を伴って重畳されているように錯覚する。
【0030】
観察者12は、偏光特性が異なる2つの偏光フィルタが左右に設けられた偏光メガネを通じて上記の表示データ152を観察し、右眼用映像データ150aを右眼のみで視認し、左眼用映像データ150bを左眼のみで視認する。したがって、観察者12は、被写体像を表示部116より飛び出し側または引き込み側で結像して立体映像を知覚することができる。
【0031】
OSD重畳部114は、例えば、キャラクタジェネレータで構成され、後述する線画像重畳部や視差情報重畳部から送信された横線画像、縦線画像、視差情報や表示部116の表示状態を示すOSD等を表示データ152に重畳する。具体的には、線画像重畳部や視差情報重畳部から、横線画像、縦線画像、視差情報に相当する画面中の位置(座標)とその画素データとを受信し、表示データ152のその位置に画素データを重畳している。
【0032】
表示部116は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、後述する表示制御部の制御信号に応じて、OSD重畳部114により横線画像、縦線画像、視差情報が重畳された表示データ152を表示する。また、表示部116は、表示データ152の表示方式に対応して様々な表示態様に設定される。例えば、ラインバイライン方式の表示データ152を表示することが想定される場合、表示部116には、上述したように、偏光特性が異なる2種類の偏光フィルタが隔行で(水平ライン毎に)交互に配置される。観察者12は、このような偏光フィルタが施された表示部116を、偏光メガネを通じて観察することで、表示部116に表示されたラインバイライン方式の表示データ152を立体映像として知覚することができる。また、フレームシーケンシャル方式の表示データ152が想定される場合、表示部116は、通常の1/2の周期で右眼用映像データ150aと左眼用映像データ150bを時分割かつ交互に表示する。
【0033】
操作部118は、電源スイッチを含む操作キー、十字キー、ジョイスティック、表示部116の表示面に重畳されたタッチパネル等で構成され、製作者10の操作入力を受け付ける。また、遠隔操作のためのリモートコントローラが設けられる場合、当該リモートコントローラも操作部118として機能する。
【0034】
中央制御部120は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、立体映像表示装置106全体を管理および制御する。また、本実施形態において、中央制御部120は、フォーマット判別部130と、線画像重畳部132と、合成制限部134と、視差情報導出部136と、視差情報重畳部138と、表示制御部140と、線画像変更部142としても機能する。
【0035】
フォーマット判別部130は、映像データ取得部110が取得した2つの映像データが独立して個々に取得されたものか、または、一体的なデータとして取得されたものかを判定し、また、一体的なデータとして取得されたものであれば、さらに、そのフォーマット形式がLR独立方式、サイドバイサイド方式、アバヴアンドビロウ方式、フレームシーケンシャル方式等のいずれの方式であるかを判定して、その判定結果を合成部112に出力する。合成部112は、かかる判定結果によって2つの映像データのフォーマット形式を把握し、そのフォーマット形式に基づいて2つの映像データを分離する。また、フォーマット判別部130は、映像データ取得部110が取得した2つの映像データを自動判定せず、製作者(ユーザ)の操作入力に応じて選択されたフォーマット形式を合成部112に出力するとしてもよい。
【0036】
線画像重畳部132は、OSD重畳部114を通じて、水平方向に延長された横線画像と垂直方向に延長された2つの縦線画像とを表示データに重畳する。そして、線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて横線画像を画面垂直方向に、2つの縦線画像を画面水平方向にそれぞれ独立して移動する。
【0037】
図4は、線画像重畳部132の動作を説明するための説明図である。ここでは、製作者10が表示データ152中の任意の被写体像154の映像データ150a、150b間における視差を導出している。線画像重畳部132は、図4(a)のように表示データ152に横線画像156と縦線画像158a、158bとを所定の開始位置に重畳する。続いて、線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて横線画像156を垂直方向に移動し、図4(b)の如く、視差の導出を所望する被写体像154に位置させる。
【0038】
次に、線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて一方の縦線画像(右眼用縦線画像)158aを水平方向に移動し、図4(c)の如く、被写体像154の視差の導出を所望する部分(例えばエッジ)に位置させる。最後に、線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて他方の縦線画像(左眼用縦線画像)158bを水平方向に移動し、図4(d)の如く、被写体像154の視差の導出を所望する、縦線画像158aが位置する部分と異なる部分(例えばエッジ)に位置させる。こうして、一方の縦線画像158aと他方の縦線画像158bとが、2つの映像データ150a、150bそれぞれにおける同一の被写体像154の同一の部分を示すこととなる。このとき、線画像重畳部132は、横線画像156、縦線画像158aおよび縦線画像158bそれぞれを他と容易に識別させるため、互いに異なる表示態様で表すとしてもよい。例えば、縦線画像158aを破線で表示させた場合、縦線画像158bを一点鎖線で表示させたり、横線画像156、縦線画像158a、158bそれぞれを異なる色で表示させたりすることもできる。
【0039】
このように、視差の導出を所望する被写体像154の2つの映像データ150a、150bそれぞれにおける所定の部分に縦線画像158a、158bを位置させることで、目視ではなく電子的に視差を読み取ることが可能となり、視差の正確な値を把握することができる。また、線画像重畳部132は、縦線画像158a、158bを移動する前に、その水平基準となる横線画像156を適切な位置に配置することで、製作者10は、正確かつ容易に所望する水平位置に両縦線画像158a、158bを重ねることができ、より正確な視差を導出することが可能となる。
【0040】
しかし、上述したように、表示データ152には右眼用映像データ150aと左眼用映像データ150bとがライン毎に交互に配されており、被写体像154が左右眼いずれの映像データに含まれるかを視認するのは難しい。そこで、本実施形態では、さらに合成制限部134によって縦線画像158a、158bの操作性を高める。
【0041】
合成制限部134は、線画像重畳部132で重畳される2つの縦線画像158のうち1の縦線画像158を移動する間、その1の縦線画像158に対応付けられている映像データのみを合成部112に合成させる。具体的に、合成制限部134は、一方の縦線画像158aを移動する間、縦線画像158aに対応付けられている右眼用映像データ150aのみを合成部112に合成させ、左眼用映像データ150bを排除する。かかる左眼用映像データ150bの排除は、例えば、左眼用映像データ150bが合成されるタイミングで、左眼用映像データ150bの代わりに単色画素(例えば、黒色画素)を合成することで実現できる。
【0042】
図5は、合成制限部134の動作を説明するための説明図である。上述したように、線画像重畳部132は、表示データ152に横線画像156と縦線画像158a、158bとを重畳する。線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて横線画像156を垂直方向に移動し、視差の導出を所望する被写体像154に位置させる。
【0043】
このとき、移動対象である一方の縦線画像158aは、表示データ152に合成された2つの映像データ150a、150bのうち、右眼用映像データ150aに対応付けられ、他方の縦線画像158bは、左眼用映像データ150bに対応付けられているとする。合成制限部134は、移動可能な縦線画像として一方の縦線画像158aが選択されている間、図5(a)の如く、その一方の縦線画像158aに対応付けられている右眼用映像データ150aのみを合成部112に合成させる。すなわち、本来であれば、右眼用映像データ150aと左眼用映像データ150bとを合成する合成部112に左眼用映像データ150bを合成させないように制限する。したがって、製作者10は、右眼用映像データ150aのみに基づいて、縦線画像158aを移動できるので、縦線画像158aを、視差を求めるのに適した部分に位置させることが可能となる。
【0044】
続いて、線画像重畳部132が、製作者10の操作入力に応じて他方の縦線画像158bを水平方向に移動している間、合成制限部134は、図5(b)の如く、その他方の縦線画像158bに対応付けられている左眼用映像データ150bのみを合成部112に合成させる。したがって、製作者10は、左眼用映像データ150bのみに基づいて、縦線画像158bを移動できるので、縦線画像158bを、縦線画像158a同様、視差を求めるのに適した部分に位置させることが可能となる。
【0045】
このような合成制限部134の構成により、左右2つの映像データ150a、150bが合成され、2つの映像データ150a、150bを区別できない場合においても、縦線画像158の移動時には他の映像データを一時的に排除でき、1の映像データに基づいて縦線画像158を移動できるので、製作者10は、正確かつ迅速に所望する位置に縦線画像158を移動することができる。
【0046】
また、横線画像156上の任意の画素にエッジが含まれる場合において、線画像重畳部132は、縦線画像158a、158bを移動する際、そのエッジを含む画素を検知し、縦線画像158a、158bがその位置で移動速度が落ち短時間停滞するとしてもよい。こうすることで、製作者10による微調整に頼ることなく自動的にエッジ部分を特定することが可能となる。
【0047】
また、ここでは、横線画像156と縦線画像158a、158bとの1の組合せについて言及したが、かかる場合に限らず、線画像重畳部132は、横線画像156と縦線画像158a、158bの組合せを複数設け、それぞれの組合せについて、表示データ152への重畳と、移動を実行することができる。この場合、各組合せを識別するため、それぞれ異なる表示態様、例えば互いに異なる色系統(赤系統、青系統、緑系統等)で横線画像156と縦線画像158a、158bとを表してもよい。こうして、各組合せの視認性を高め、製作者10は、より快適な操作性で複数の被写体像154の視差を連続して導出することが可能となる。
【0048】
ここで、表示部116のフォーマット形式がフレームシーケンシャル方式であった場合、合成制限部134は、線画像重畳部132で重畳される2つの縦線画像のうち一方の縦線画像158aを移動する間、その一方の縦線画像158aに対応付けられている映像データのみをシーケンシャルに並べる。したがって、フレームシーケンシャル方式では、通常、合成制限部134が、2つの映像データ150a、150bを時間方向に通常の1/2の周期で交互に配置しているところ、一方の縦線画像158を移動している間は、右眼用映像データ150aのみを通常の周期で配置し、左眼用映像データ150bを排除する。
【0049】
視差情報導出部136は、線画像重畳部132により位置づけられた縦線画像158a、158b間の視差を求め(数値化し)、その視差に関する視差情報を導出する。視差情報重畳部138は、導出された視差情報を、横線画像156、縦線画像158a、158bが重畳された表示データ152にさらに重畳する。表示制御部140は、横線画像156、縦線画像158a、158bおよび視差情報が重畳された表示データ152を表示部116に表示させる。視差情報は、視差に相当する画素数でもよいし、縦線画像158a、158b間の視差と表示部116に表示データ152が表示された場合の水平方向の表示幅との比であってもよい。
【0050】
図6は、視差情報導出部136の動作を説明するための説明図である。ここでは、説明の便宜のため、表示データ152を省略し、表示データ152に重畳される、横線画像156と、縦線画像158a、158bと視差情報160とを示す。視差|Δx|は、画面左端から縦線画像158aまでの水平方向の距離Rと、画面左端から縦線画像158bの水平方向の距離Lとを用いて|Δx|=|L−R|から導出される。また、縦線画像158a、158b間の視差と表示幅との比Δxrは、表示幅Xを用いてΔxr=|Δx|/X×100(%)から導出される。そして、視差情報重畳部138は、横線画像156、縦線画像158a、158bの表示位置を回避した位置に、導出された視差情報160である視差|Δx|または比Δxrを重畳する。また、立体映像表示装置106と大型のスクリーン108とで表示画面の大きさが異なっているとしても、表示データ152の解像度が等しい場合、比Δxrと画素は比例関係になるので、視差|Δx|を画素数で示すこともできる。
【0051】
製作者10は、かかる数値化された視差情報160を参照することによって、視差を容易かつ正確に把握することができ、当該映像データ150を表示する予定の例えば大型のスクリーン108に表示すると、どの程度の立体感を得られるかを予測することが可能となる。
【0052】
また、視差情報導出部136は、縦線画像158a、158b間の視差|Δx|と共に縦線画像158a、158bの水平方向の相対位置(視差の方向(Δxの符号))も特定して視差情報160を導出し、視差情報重畳部138は、その水平方向の相対位置も表示データに重畳してもよい。以下に水平方向の相対位置について説明する。
【0053】
図7および図8は、視差の水平方向の相対位置を説明するための説明図である。ここで、図7(a)、(c)は上面視で表され、図7(a)は撮像時の被写体174の相対位置を、図7(c)は観察時の結像位置を示している。図7(a)のように、輻輳角を伴う立体映像撮像装置102で撮像された左右2つの映像データ150a、150bでは、遠近方向の位置によって被写体像154が視差を生じることは既に述べた通りであるが、その遠近方向の被写体174(図7中174a、174b、174c)の位置によって左右2つの映像データに出現する相対位置が異なる。
【0054】
例えば、輻輳点(表示時には表示部116の表示面の位置(遠近位置)となる点)172に存在する被写体174aの被写体像154aは図7(b)のように、左右2つの映像データ150a、150bで視差が生じないが、輻輳点172より立体映像撮像装置102側に存在する被写体174bの被写体像154bは、図7(b)に示すように左眼用映像データ150bの出現位置より右眼用映像データ150aの出現位置が画面左側に推移する。また、輻輳点172より立体映像撮像装置102と逆側に存在する被写体174cの被写体像154cは、図7(b)に示すように左眼用映像データ150bの出現位置より右眼用映像データ150aの出現位置が画面右側に推移する。
【0055】
このような左右2つの映像データ150a、150bを立体映像表示装置106で表示すると、立体映像を知覚させるための偏光メガネを装着した製作者10に対して、図7(c)のように、被写体像154aは、立体映像表示装置106自体の遠近位置で結像され、被写体像154bは、立体映像表示装置106より製作者10側に飛び出すように結像され、被写体像154cは、立体映像表示装置106より製作者10と逆側に引き込むように結像される。本実施形態では、製作者10が被写体像154の結像位置を把握できるように、視差情報導出部136は、縦線画像158a、158bの水平方向の相対位置、すなわち、右眼用映像データに対応付けられた縦線画像158aが、左眼用映像データに対応付けられた縦線画像158bの左右いずれに位置しているかも特定する。
【0056】
具体的に、視差情報導出部136は、縦線画像158aが縦線画像158bより左に位置していれば、すなわち、図6において視差の方向も含む視差ベクトルΔx=L−R>0となれば、その被写体像154は飛び出して知覚されるので、視差情報160に飛び出すことを示す符号「+」を追加、または符号を追加しないものとし、縦線画像158aが縦線画像158bより右に位置していれば、すなわち、図6において視差ベクトルΔx=L−R<0となれば、その被写体像154は引き込むように知覚されるので、視差情報に引き込むことを示す符号「−」を視差情報160に追加する。また、視差ベクトルΔx=0の場合には符号を追加しない、または仮に符号「+」を追加するとする。そして、視差情報重畳部138は、その水平方向の相対位置を示す符号も表示データ152に重畳する。
【0057】
したがって、縦線画像158aが縦線画像158bより左に位置することとなる図7(b)の被写体像154bについては、図8(a)のように、符号「+」が並記された視差情報160が表示データ152に重畳され、縦線画像158aが縦線画像158bより右に位置することとなる図7(b)の被写体像154cについては、図8(b)のように、符号「−」が並記された視差情報160が表示データ152に重畳される。このように構成することで、製作者10は、偏光メガネ等を装着しなくても、導出対象である被写体像154が飛び出して結像されるか引き込むように結像されるか容易に把握することが可能となる。また、上述したように縦線画像158a、158bは、それぞれ映像データと対応付けられ、その対応付けられた映像データに基づいてのみ移動されるので、製作者10は、縦線画像158a、158bを位置させる被写体像154を間違えることはなく、高い信頼性をもって被写体像154の遠近位置を把握することができる。
【0058】
また、視差情報160は、表示部116と観察者12との距離に対する、表示部116と縦線画像158a、158b間の視差を有する被写体像154が結像される位置との距離の比であってもよい。
【0059】
人の眼の間隔の平均値をΔk、製作者10と表示部116との距離をdとすると、表示部116から、縦線画像158a、158b間の視差を有する被写体像154が結像される位置までの距離Δdは、視差ベクトルΔxを用いて、Δd=Δx×d/(Δx+Δk)となる。したがって、表示部116と観察者12との距離dに対する、表示部116と縦線画像158a、158b間の視差を有する被写体像154が結像される位置との距離Δdの比Δd/dは、Δx/(Δx+Δk)で表される。かかる比を用いることによって、製作者10は、どの程度の立体感を得られるかを容易に予測することが可能となる。
【0060】
以上のように、視差情報導出部136や視差情報重畳部138は、視差情報160を導出して表示データ152に重畳するが、その導出および重畳するタイミングに制限はなく、線画像重畳部132が機能してから、すなわち、横線画像156や縦線画像158a、158bの移動中からその位置に応じて随時視差情報160を導出し、表示データ152に重畳するとしてもよい。
【0061】
ところで、上述したように、被写体像154が過渡に飛び出して結像されたり、過渡に引き込んで結像されると、観察者12の目に負担がかかる場合がある。そこで、製作者10は、生成された映像データ150をすぐに表示し、その場で、その映像データ150に含まれる任意の被写体像154の2つの映像データ150a、150b間の視差が適切な遠近距離内にあるか否かを確認して、適切でなければ、撮像状態を調整するのが望ましい。そこで、本実施形態では、線画像変更部142を設けて所望する状態で適切に映像データ150が生成されているか否かを製作者10に直感的かつ迅速に把握させる。
【0062】
線画像変更部142は、縦線画像158a、158b間の視差が所定の閾値を越えれば、すなわち、被写体像154の、2つの映像データ150a、150b間の相対位置を含む視差ベクトルΔxが第1閾値以上(Δx>0かつ視差|Δx|≧|第1閾値|)または第2閾値以下(Δx<0かつ視差|Δx|≧|第2閾値|)であれば、縦線画像158a、158bを、閾値を越えたことを把握できる表示態様に変更する。ここで、第1閾値は、例えば、表示データ152の表示幅の+20%であり、第2閾値は、例えば、表示データ152の表示幅の−2%である。
【0063】
具体的に、線画像変更部142は、縦線画像158a、158bの線種、線幅、色を変更したり、また、その縦線画像158a、158b自体を点滅させたり、縦線画像158a、158bの近くに警告を促す指標、例えば「!」等の記号を追加する。このとき、縦線画像158a、158bによる視差導出対象の被写体像154が特定できる場合には(例えば、縦線画像158a、158b両方が接触している被写体像154)、その導出対象となる被写体像154自体の表示態様を変化させてもよい。
【0064】
かかる構成により、製作者10は、視差情報導出部136によって数値化された視差情報160を視認して、その値が閾値を越えているか否か判断しなくても、表示態様が変化していないことをもって、所望する状態で適切に生成されていることを迅速かつ直感的に把握することができるので、所望する表示状態となる映像データ150を容易に製作でき、観察者12の目に負担をかけない自然な立体映像を知覚させることが可能となる。したがって、製作者10は、安心して当該映像データ150を観察者12に提供することが可能となる。
【0065】
以上、説明した立体映像表示装置106では、表示部116のフォーマット形式としてラインバイライン方式およびフレームシーケンシャル方式を挙げたが、かかる場合に限らず、チェッカーボード方式、アナグリフ方式、カラーコード3D方式等にも適用することが可能である。さらに、立体映像を知覚するための加工を施していない表示部116に、サイドバイサイド方式、アバヴアンドビロウ方式等による2つの映像データ150a、150bを分離することなく、そのままの態様で表示し、2つの映像データ150a、150bのいずれにも横線画像156を連動させて重畳し、さらに、一方の映像データに一方の縦線画像158aを他方の映像データに他方の縦線画像158bを重畳することでも、表示データ152内の個々の被写体像154の視差を容易かつ正確に把握させることが可能となる。
【0066】
また、上述した立体映像表示装置106では、合成部112やOSD重畳部114がハードウェアで構成される例を挙げているが、かかる場合に限られず、すべての映像処理を中央制御部120内のソフトウェアで実行し、横線画像156、縦線画像158a、158bおよび視差情報160が重畳された最終的な表示データ152を表示部116に表示させるとしてもよい。
【0067】
(立体映像表示方法)
また、上述した立体映像表示装置106を用いた立体映像表示方法も提供される。図9は、立体映像表示方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0068】
立体映像表示装置106の映像データ取得部110が、視差を有する2つの映像データ150a、150bを取得すると(S200におけるYES)、合成部112は、2つの映像データ150a、150bを合成して表示データを生成する(S202)。そして、線画像重畳部132は、製作者10の操作入力に応じて、横線画像156、縦線画像158a、158bのうち移動する線画像を選択する(S204)。
【0069】
選択された線画像が横線画像156であれば(S206におけるYES)、線画像重畳部132は、横線画像156を垂直方向に移動させる製作者10の操作入力が有るか否か判断し(S208)、製作者10の操作入力が有れば(S208におけるYES)、重畳対象となる横線画像156をその操作入力に応じて垂直方向に所定量移動し(S210)、製作者10の操作入力がなければ(S208におけるNO)、重畳対象となる横線画像156に対して何ら処理を実行しないことで横線画像156の前回位置を維持する。そして、線画像重畳部132は、このように重畳位置が決定された横線画像156と共に、前回位置が維持された縦線画像158a、158bを表示データ152に重畳する(S212)。当該立体映像表示方法は、2つの映像データ150a、150bを取得する度に繰り返されるので(S200におけるYES)、製作者10は、横線画像156を垂直方向に移動させる操作入力を所定の時間継続することで、横線画像156を所望する位置に移動することが可能となる。
【0070】
また、選択された線画像が横線画像156ではなく(S206におけるNO)、選択された線画像が縦線画像158a、158bのうち一方の縦線画像158aであれば(S214におけるYES)、線画像重畳部132は、縦線画像158aに対応付けられている右眼用映像データ150aのみを合成部112に合成させる(S216)。そして、線画像重畳部132は、縦線画像158aを水平方向に移動させる製作者10の操作入力が有るか否か判断し(S218)、製作者10の操作入力が有れば(S218におけるYES)、製作者10の操作入力に応じて重畳対象となる縦線画像158aを水平方向に所定量移動し(S220)、製作者10の操作入力がなければ(S218におけるNO)、重畳対象となる縦線画像158aに対して何ら処理を実行しないことで縦線画像158aの前回位置を維持する。そして、線画像重畳部132は、重畳位置が決定された縦線画像158aと共に、前回位置が維持された、横線画像156、縦線画像158bを表示データ152に重畳する(S212)。上述したように、当該立体映像表示方法は、2つの映像データ150a、150bを取得する度に繰り返されるので(S200におけるYES)、製作者10は、縦線画像158aを水平方向に移動させる操作入力を所定の時間継続することで、縦線画像158aを所望する位置に移動することが可能となる。
【0071】
また、選択された線画像が横線画像156および縦線画像158aでなければ(S206およびS214におけるNO)、すなわち縦線画像158bであれば、線画像重畳部132は、縦線画像158bに対応付けられている左眼用映像データ150bのみを合成部112に合成させる(S222)。そして、線画像重畳部132は、縦線画像158bを水平方向に移動させる製作者10の操作入力が有るか否か判断し(S224)、製作者10の操作入力が有れば(S224におけるYES)、製作者10の操作入力に応じて重畳対象となる縦線画像158bを水平方向に所定量移動し(S226)、製作者10の操作入力がなければ(S224におけるNO)、重畳対象となる縦線画像158bに対して何ら処理を実行しないことで縦線画像158bの前回位置を維持する。そして、線画像重畳部132は、重畳位置が決定された縦線画像158bと共に、前回位置が維持された、横線画像156、縦線画像158aを表示データ152に重畳する(S212)。ここでも、製作者10は、縦線画像158bを水平方向に移動させる操作入力を所定の時間継続することで、縦線画像158bを所望する位置に移動することが可能となる。
【0072】
線画像重畳部132によって、横線画像156、縦線画像158a、158bが表示データ152に重畳されると(S212)、視差情報導出部136は、縦線画像158a、158b間の視差に関する視差情報160を導出し(S228)、視差情報重畳部138は、導出された視差情報160を横線画像156、縦線画像158a、158bが重畳された表示データ152にさらに重畳し(S230)、表示部116は、横線画像156、縦線画像158a、158bおよび視差情報160が重畳された表示データ152を表示する(S232)。ここでは、2つの映像データ150a、150bが取得される度に、製作者10の操作入力に応じて各線画像が繰り返し移動され、製作者10は、表示データ152を通じて視差情報160を視認することが可能となる。また、ここでは、製作者10の操作入力の受付契機を映像データ150の取得タイミングとしたが、かかる場合に限られず、製作者10の操作入力を割り込み処理することで、その操作入力を各線画像の移動に反映することもできる。
【0073】
このように、立体映像表示装置106を用いた立体映像表示方法によっても、製作者10に表示データ152内の個々の被写体像154の視差を容易かつ正確に把握させることが可能となる。
【0074】
(立体映像撮像装置102)
上述した実施形態では、立体映像表示装置106が、映像データ取得部110が取得した映像データ150を表示データ152として表示部116に表示し、製作者10は、表示部116の表示を確認する例を説明した。ここでは、その映像データ150を生成する立体映像撮像装置102に当該立体映像表示装置106の機能を設けることで、立体映像撮像装置102だけで完結的に映像データ150を確認することができる。
【0075】
図10は、立体映像撮像装置102の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図10に示すように、立体映像撮像装置102は、2つの撮像部310と、データ処理部312と、合成部112と、OSD重畳部114と、表示部116と、操作部118と、映像保持部314と、中央制御部316とを含んで構成される。また、中央制御部316は、フォーマット判別部130と、線画像重畳部132と、合成制限部134と、視差情報導出部136と、視差情報重畳部138と、表示制御部140と、線画像変更部142と、撮像制御部320と、記憶制御部322としても機能する。上述した実施形態における構成要素として既に述べた、合成部112と、OSD重畳部114と、表示部116と、操作部118と、フォーマット判別部130と、線画像重畳部132と、合成制限部134と、視差情報導出部136と、視差情報重畳部138と、表示制御部140と、線画像変更部142とは、実質的に機能が同一なので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する、撮像部310と、データ処理部312と、映像保持部314と、撮像制御部320と、記憶制御部322とを主に説明する。
【0076】
撮像部310は、撮像レンズ340と、焦点調整に用いられるフォーカスレンズ342と、露光調整に用いられる絞り(アイリス)344と、撮像レンズ340を通じて入射した光束を電気データ(映像データ)に光電変換する撮像素子346と、後述する撮像制御部320の制御信号に応じてフォーカスレンズ342、絞り344および撮像素子346をそれぞれ駆動させる駆動部348とを含んで構成され、略平行に並んだまたは撮像方向で交わる2つの光軸それぞれにおける2つの映像データ150a、150bを生成する。
【0077】
データ処理部312は、撮像部310から受信した映像データに、R(Red)G(Green)B(Blue)処理(γ補正や色補正)、エンハンス処理、ノイズ低減処理等の映像信号処理を施し、処理後の映像データ150を合成部112に出力する。かかる映像データ150は、合成部112やOSD重畳部114を通じて表示データ152となり、ビューファインダ等、比較的画面サイズの小さい表示部116で表示される。製作者10は、表示部116に表示された映像を視認しつつ操作部118を操作することで、被写体像を所望する位置および占有面積で捉えることが可能となる。
【0078】
映像保持部314は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、不揮発性RAM等で構成され、後述する記憶制御部322の制御信号に応じて、中央制御部316から送信された映像データ150を保持する。また、映像保持部314は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)やBD(Blu-ray Disc)といった光ディスク媒体や、ポータブルメモリカード等、着脱可能な記憶媒体に映像データを保持させる装置として構成されてもよい。このとき、映像データ150をM−JPEG(Motion JPEG)やMPEG(Moving Picture Experts Group)−2、H.264などの所定の符号化方式で符号化することもできる。
【0079】
中央制御部316の撮像制御部320は、製作者10の操作入力に応じて撮像部310を制御する。例えば、撮像制御部320は、適切な映像データ150が得られるように、フォーカスレンズ342、絞り344および撮像素子346を駆動部348に駆動させる。
【0080】
記憶制御部322は、製作者10が映像データ150を生成している間、データ処理部312から送信された映像データ150を映像保持部314に記憶する。
【0081】
このような立体映像撮像装置102は、小型化、軽量化のニーズを受けて、表示部116も小型化される傾向にある。したがって、表示部116から2つの映像データ150a、150bの視差を把握するのは極めて困難となる。本実施形態では、このような立体映像撮像装置102においても線画像重畳部132や視差情報重畳部138によって、正確な視差を導出することができる。また、線画像変更部142によって、製作者10は、その視差が適切な遠近距離内にあるか否かを迅速かつ直感的に把握することが可能となり、撮像部310間の距離を調整する等の調整処理を行って、観察者12の目に負担をかけない自然な立体映像を知覚させることができる。こうして、製作者10は、安心して当該映像データ150を観察者12に提供することが可能となる。
【0082】
また、ここでは、立体映像撮像装置102が2つの撮像部310を設けて映像データ150を生成する例(2眼カメラ)を挙げて説明したが、ミラー等の光学的手法を用いて1つの被写体を2つの視点から同時に撮像させる立体映像撮像用アダプタを1の撮像部310の光学経路前方に位置させて2つの映像データを1の映像データに一体化させて取得することも可能である。
【0083】
さらに、コンピュータを立体映像表示装置106や立体映像撮像装置102として機能させる立体映像表示プログラムおよび立体映像撮像プログラムや、その立体映像表示プログラムおよび立体映像撮像プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD、DVD、BD等の記録媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、上述した実施形態においては、各機能部が立体映像表示装置106単体内で処理されているが、その機能部を別体の装置で実現し、合わせて本願の目的を達成するとしてもよい。例えば、合成部112による映像データ150の分離や合成機能を別体の3Dコンバータで実現したり、線画像重畳部132の機能を別体のプロジェクタ等で実現し、そのプロジェクタと同期して合成制限部134が映像データの合成を制限する、すなわち、プロジェクタを通じて縦線画像158aを投光しているときには右眼用映像データ150aのみを合成し、縦線画像158bを投光しているときには左眼用映像データ150bのみを合成するとしてもよい。
【0086】
なお、本明細書の立体映像表示方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、立体映像を知覚させるための表示データを表示する立体映像表示装置、立体映像撮像装置および立体映像表示方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
102 …立体映像撮像装置
106 …立体映像表示装置
110 …映像データ取得部
112 …合成部
116 …表示部
132 …線画像重畳部
134 …合成制限部
136 …視差情報導出部
138 …視差情報重畳部
142 …線画像変更部
150(150a、150b) …映像データ
152 …表示データ
154 …被写体像
156 …横線画像
158(158a、158b) …縦線画像
160 …視差情報
310 …撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平視差を有する2つの映像データを取得する映像データ取得部と、
前記2つの映像データを合成して表示データを生成する合成部と、
垂直方向に延長された2つの縦線画像を前記表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて前記2つの縦線画像を水平方向にそれぞれ独立して移動する線画像重畳部と、
前記2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出する視差情報導出部と、
導出された前記視差情報を縦線画像が重畳された表示データにさらに重畳する視差情報重畳部と、
前記縦線画像および前記視差情報が重畳された表示データを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
前記2つの縦線画像は前記2つの映像データにそれぞれ対応付けられ、
前記2つの縦線画像のうち一方の縦線画像を移動する間、その一方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成部に合成させる合成制限部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
前記線画像重畳部は、さらに、水平方向に延長された横線画像を前記表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて前記横線画像を垂直方向に移動することを特徴とする請求項1または2に記載の立体映像表示装置。
【請求項4】
前記視差情報は、前記2つの縦線画像間の視差と前記表示データの水平方向の表示幅との比であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記視差情報は、前記表示部と観察者との距離に対する、前記表示部と前記2つの縦線画像間の視差を有する被写体像が結像される位置との距離の比であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記視差情報導出部は、前記2つの縦線画像間の視差と共に前記2つの縦線画像の水平方向の相対位置も特定して視差情報を導出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項7】
前記縦線画像間の視差が所定の閾値を越えれば、前記縦線画像を、前記閾値を越えたことを把握できる表示態様に変更する線画像変更部をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の立体映像表示装置。
【請求項8】
略平行に並んだまたは撮像方向で交わる2つの光軸それぞれにおける2つの映像データを生成する撮像部と、
前記2つの映像データを合成して表示データを生成する合成部と、
垂直方向に延長された2つの縦線画像を前記表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて前記2つの縦線画像を水平方向にそれぞれ独立して移動する線画像重畳部と、
前記2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出する視差情報導出部と、
導出された前記視差情報を縦線画像が重畳された表示データにさらに重畳する視差情報重畳部と、
前記縦線画像および前記視差情報が重畳された表示データを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする立体映像撮像装置。
【請求項9】
水平視差を有する2つの映像データを取得し、
前記2つの映像データを合成して表示データを生成し、
水平方向に延長された横線画像を前記表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて前記横線画像を垂直方向に移動し、
垂直方向に延長された2つの縦線画像を前記表示データに重畳し、ユーザの操作入力に応じて前記2つの縦線画像のうち一方の縦線画像を水平方向に移動する間、その一方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成し、ユーザの操作入力に応じて前記2つの縦線画像のうち他方の縦線画像を水平方向に移動する間、その他方の縦線画像に対応付けられている映像データのみを合成し、
前記2つの縦線画像間の視差に関する視差情報を導出し、
導出した前記視差情報を、前記縦線画像を重畳した表示データにさらに重畳し、
前記縦線画像および前記視差情報を重畳した表示データを表示することを特徴とする立体映像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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