説明

立体格納庫

【課題】格納対象物のズレ、転倒が防止でき、かつ格納対象物が台車に乗せられ移動するような剛性の高い支持方式の移載にも適用できる立体格納庫を得る。
【解決手段】係合孔を有するコーナ金具53を備えた格納対象物11を格納する格納部と、格納対象物11を昇降テーブル上に載置して昇降移動するスタッカークレーンと、スタッカークレーンの昇降テーブル上に配置され、昇降テーブルと各格納部との間で格納対象物11の移載を行う移載手段とを備えた立体格納庫において、各格納部の載置棚に設けられて、移載手段による載置動作に伴い格納対象物11のコーナ金具53の係合孔に係合して格納対象物11を載置棚に係止する係止手段33を備え、係止手段33は、コーナ金具53に係止する一対の係止片部と、これら一対の係止片部と一体に形成された基部とを有し、基部が載置棚に水平方向に移動可能に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンテナなどの格納対象物を各格納部に格納する立体格納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナヤードにおけるコンテナの搬出入の際、一般的にはコンテナ同士を段積みにして載置することが行なわれている。
しかしながら、段積みした場合には、例えば下方に積まれたコンテナを先に取り出そうとすると、上方に積まれたコンテナを他の場所に移してから取り出すという作業が必要となり、作業効率が悪いという問題がある。
このような問題を解決するものとして、コンテナ同士を段積みにするのではなく、多数の棚を有するコンテナ建屋を建設して、棚の上にコンテナを載置する形式のものが提案されている。このような形式のものとして例えば以下のようなものがある。
【0003】
コンテナターミナルのコンテナヤード上に、コンテナ貯蔵棚を多数列に、かつ、コンテナ貯蔵棚間にコンテナの長手方向に延在するコンテナ移動用通路を形成するように2列1組にして対向配置してなるコンテナ貯蔵建屋と、コンテナ貯蔵建屋に沿ってコンテナ貯蔵建屋よりも上方に敷設したレール上に走行可能に搭載した天井クレーンと、天井クレーン上を横行するトロリから吊り下げられた吊りビームからなり、吊りビームにはコンテナを吊持し、左右に伸縮して地上の入出庫口と各コンテナ貯蔵棚との間でコンテナの受け渡しをする4隅にコンテナ把持用ツイストロック装置を有する伸縮式スプレッダを有してなることを特徴とするコンテナ貯蔵装置(特許文献1参照)。
【0004】
一方、コンテナを船舶で輸送する際には、コンテナ貯蔵建屋を用いることができないのでコンテナ同士を上下多段に積み重ねた状態で船舶に載置される。この場合において船舶の揺れに際してコンテナが荷崩れしないようにするため、上下のコンテナを連結する必要がある。
このコンテナ同士を連結するための連結具として、一般にフルオートマチック方式と呼ばれている装着方式の連結具が知られている。これは、積み重ねる側すなわち上になるコンテナ底に手作業で予め連結具の一端側を装着し、下になるコンテナに前記連結具の他端側を挿入することで上下のコンテナを自動的にロック状態で連結し、上側のコンテナを吊り上げるとロック状態が外れるようにして、コンテナの積載又は荷揚げをクレーンにより全て自動的に行なえるようにしたものである。
【0005】
このような、フルオートマチックのツイスト式コンテナ連結具の一例として、以下のものが提案されている。
上下に位置決用の突出部を設けた連結具本体に、突出部の端面に貫通する挿入孔を設け、その挿入孔に挿入された回転軸の上下端に上部コーン、下部コーンをそれぞれ設け、連結具本体内に回転軸を初期位置に引き戻すための弾性部材を備え、下方の突出部の一側に傾斜面、下部コーンには平面視で対角位置の一端又は両端に突起部、かつ両側面に複数の傾斜面を形成し、下方のコンテナへの積付時又は荷揚時には上記各傾斜面と突起部が下方のコンテナのコーナ金具の係合孔に対し当接し、滑りながら所定角度上部及び下部コーンが回転し、これにより係合孔に嵌合し、係脱されるように構成したツイスト式コンテナ連結具(特許文献2参照)。
【0006】
上記のツイスト式コンテナ連結具における連結動作を概説する。連結直前状態では、連結具の下部コーンの中心は下方コンテナのコーナ金具の係合孔中心よりわずかにずれているが、下部コーンの下部に横方向へコンテナを横ずれさせるために設けられている傾斜面により案内されてコンテナの重量によりわずかに横移動する。そして、さらに下方へ卸すと下部コーンの対角線上の両突起及び平面視での傾斜面により案内されて下部コーンは所定角度だけ連結具本体に対して回転しながらコーナ金具の係合孔端面に当接し、滑りながら係合孔に嵌合、挿通され、下部コーンが係合孔の金具より下になると弾性部材により下部コーン、回転軸、上部コーンは一体で回転して初期位置へ戻り、係合孔に係合される。
【特許文献1】特開2001−335116号公報
【特許文献2】特開2006−76636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたコンテナ貯蔵装置においては、コンテナはコンテナ貯蔵棚に載置されるだけであり、コンテナとコンテナ貯蔵棚とを連結具などによって連結することは行なわれていない。このため、コンテナ貯蔵建屋を屋外に設置した場合、コンテナ貯蔵棚に載置されたコンテナが強風を受けるとコンテナがコンテナ貯蔵棚の正しい載置位置からずれたり、傾動したり、あるいは転倒することが考えられる。また、屋内、屋外を問わず地震の際にも同様にコンテナがずれたり、傾動したり、あるいは転倒することが考えられる。コンテナがずれ等により、例えばトロリの走行エリアにコンテナの一部がはみだすとトロリの走行を邪魔し、トロリが走行できなくなってしまう。
また、トロリを自動運転するには、コンテナが所定位置にあることを前提にして、コンテナの所定箇所を把持するようにすることが一般的であるので、コンテナが所定位置からずれるとコンテナの把持ができなくなることも考えられる。
このように、コンテナを棚に載置する方式を採用する場合には、コンテナを棚に載置したときに正しい位置からコンテナがずれたり、傾動したり、あるいは転倒しないようにコンテナを棚に連結する必要がある。
【0008】
そこで、コンテナを棚に連結する手段が必要となり、このコンテナを棚に連結する手段として、本明細書の「背景技術」で紹介したコンテナ同士を連結するコンテナ連結具を用いることが考えられる。
しかしながら、上記の特許文献2に記載されたフルオートマチックのツイスト式コンテナ連結具をコンテナと棚との連結に適用しようとすると、以下のような問題が生ずる。
【0009】
コンテナ同士を連結する場合には、上記連結動作の概説で述べたように、積み重ねられる上方のコンテナが、下部コーンの下部に設けられた傾斜面により案内されてわずかに横移動する。この横移動は、載置されるコンテナがワイヤなどによって吊り下げられるワイヤ懸垂式の場合にはワイヤの捩れや揺れ等によって移動が簡単に行われるので特に問題がない。
しかし、コンテナ貯蔵棚のような格納部にコンテナを格納する場合において、コンテナの格納効率を高めるには各コンテナ格納部のスペース、たとえば格納部の高さを低く設定するのが好ましく、格納部の高さを低く設定すると、コンテナの移載に際してコンテナをワイヤなどで吊り上げることが難しくなる。
そのため、コンテナを台車から直接コンテナ載置棚に受け渡すことが考えられるが、この場合には、コンテナを例えば昇降シリンダを備えたジャッキのような剛性の高い支持手段で支持して移載することになる。この場合には、移載に際してコンテナを移動させることができないので、ジャッキ側に過大な荷重が作用してしまい好ましくない。
そこで、コンテナの支持部を工夫して積み移しの際にコンテナのみを少し移動できるような支持構造にしなければならないが、このような複雑な支持構造にするにはコストがかかるという問題がある。
【0010】
本発明の解決すべき課題をまとめると以下のようになる。
コンテナを台車に設けた昇降シリンダのように剛性の高い支持手段で支持して受け渡す場合であっても、コンテナを格納部の棚に移載する動作によってコンテナを自動的に棚に連結できるようにするにはどうすべきか。
また、棚に連結されたコンテナを棚から取り出す場合にも、同様に台車に設けた昇降シリンダのように剛性の高い支持手段で支持し、かつ自動的に連結を外して取り出すことができるようにするにはどうすべきか。
そして、棚に載置されたコンテナを棚との連結を自動的に外して取り出すとしても、強風や地震などによってコンテナが傾動、転倒する動作をする場合には連結が外れないようにしなければならず、これを実現するにはどうすればよいか。
なお、このような課題は格納対象物がコンテナの場合に限られるものではなく、種々の格納物についても同様に解決すべき課題である。
【0011】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、格納対象物を棚に載置して格納する格納庫において、格納対象物のズレ、傾動、転倒が防止でき、かつ格納対象物が台車に乗せられ移動するような剛性の高い支持方式の積み移しにもコストアップすることなく適用できる立体格納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る立体格納庫は、縁付き係合孔を有するコーナ金具を備えた格納対象物を格納する格納部と、前記格納対象物を昇降テーブル上に載置して昇降移動するスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前記昇降テーブル上に配置され、前記昇降テーブルと各格納部との間で格納対象物の移載を行う移載手段とを備えたものにおいて、各格納部の載置棚に設けられて、前記移載手段による載置動作に伴い前記格納対象物のコーナ金具の係合孔に係合して前記格納対象物を前記載置棚に係止する係止手段を備え、該係止手段は、前記コーナ金具に係止する一対の係止片部と、これら一対の係止片部と一体に形成された基部とを有し、該基部が前記載置棚に水平方向に移動可能に設置されていることを特徴とするものである。
【0013】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、係止片部は係止用斜面部と係止解除用斜面部を有し、前記係止用斜面部は格納対象物が下降する際にコーナ金具に当接して係止片部がコーナ金具に係止する方向に係止手段を移動させる機能を有し、前記係止解除用斜面部は格納対象物が載置棚から上方に上げられる際にコーナ金具に当接して係止片部とコーナ金具との係止が外れる方向に係止手段を移動させる機能を有することを特徴とするものである。
上記(2)の発明によれば、格納対象物が移載手段によって載置棚から上方に上げられる際には係止片部とコーナ金具との係止がはずれるが、強風、地震によってコンテナに傾動、転倒させる力が作用してもコーナ金具と係止片部との係止が外れることがない。この点を以下に説明する。
風力、地震などにより格納対象物に転倒力が加わるとコーナ金具の片側が浮き上がろうとする。この時、係止片部の係止解除用斜面部をコーナ金具の縁部が押し上げ、係止片部の係止解除用斜面部に水平分力を発生させる。この水平分力が係止片部を水平方向に移動させようとするが、一対の係止片部の残りの(反対側の)係止片部が他方のコーナ金具により下方向に押しつけられているので、係止片部は水平方向に移動できず、結局転倒力が働いたとしても係止が外れることがない。
【0014】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、係止片部は、格納対象物が下降する際にコーナ金具に当接して係止片部がコーナ金具に挿入可能な位置に係止手段を移動させる機能を有する案内用斜面部を有することを特徴とするものである。
【0015】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のものにおいて、移載手段が、格納対象物を支持して昇降できる昇降支持手段を搭載し、昇降テーブルと各格納部との間を移動可能な台車であることを特徴とするものである。
【0016】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のものにおいて、格納対象物がコンテナであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、各格納部の載置棚に設けられて、移載手段による載置動作に伴い格納対象物のコーナ金具の係合孔に係合して前記格納対象物を前記載置棚に係止する係止手段を備え、該係止手段は、前記コーナ金具に係止する一対の係止片部と、これら一対の係止片部と一体に形成された基部とを有し、該基部が前記載置棚に水平方向に移動可能に設置されているので、格納対象物の下降動作に伴って係止手段が水平方向に移動して係止片部が格納対象物を係止し、格納対象物の下降動作の過程において格納対象物側には水平方向の大きな荷重が作用しない。
したがって、格納対象物が台車によって支持されるような剛性の高い支持構造であっても移載動作が可能となり、支持構造を複雑化する必要がない。
また、一対の係止片が基部によって一体化されているので、強風や地震などによってコンテナを転倒させる力が作用しても係止が外れることがなく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るコンテナ格納庫の一部を示す斜視図、図2はコンテナ格納庫においてコンテナを移載する台車の説明図であり、台車が後述するコンテナ格納部に移動した状態を示している。
本発明の要部はコンテナ格納庫におけるコンテナ載置棚29の構造にあるが、これを説明する前提としてコンテナ格納庫全体の構造を図1、図2に基づいて概説する。
【0019】
本実施の形態に係るコンテナ格納庫1は、図1、図2に示すようにスタッカークレーン3による自動倉庫システムと同様のシステムで構成される。このシステムは上下昇降及び水平移動可能なスタッカークレーン3の両側に多段棚式のコンテナ格納部5を設けたものであり、クレーン本体7を水平移動させるとともに、コンテナ11を載せた昇降テーブル9を昇降させることにより、昇降テーブル9に載せたコンテナ11を所定のコンテナ格納部5側方に位置せしめ、コンテナ11をコンテナ格納部5(以下、単に「格納部5」という場合あり)に移載格納できるようになっている。
【0020】
コンテナ格納部5及び昇降テーブル9には両者間を、台車13を移動させるためのレール15が設けられ、このレール15上を台車13が移動することでコンテナ11を昇降テーブル9からコンテナ格納部5へ移載できるようになっている。
昇降テーブル9の前後左右の位置には、昇降テーブル9をコンテナ格納部5側に正確に位置決めするための出没可能な位置決めピン(図示なし)が設けられ、この位置決めピンをコンテナ格納部5の底部上面等に係合させることにより昇降テーブル9を所定の位置に位置決めできるようになっている。
【0021】
台車13は矩形状のフレーム体から構成され、その両側のフレーム部材19に車輪21が取り付けられている。台車13の両側フレーム部材19には昇降シリンダ23が設定され、この昇降シリンダ23の各シリンダロッド25に移載対象物を支持するための受座27が設けられている。
台車13の両側フレーム部材19側部にはラック(図示なし)が固定され、一方、昇降テーブル9には、台車13の前後左右位置で前記ラックと噛合すべきピニオン(図示なし)とそれを駆動するモータが設けられている。
【0022】
図3はコンテナ格納部5におけるコンテナ載置棚29の後辺部31(コンテナを載置した際にコンテナの奥側の短辺が載置される辺部であり、昇降テーブル9の移動路から遠い辺部である。)の説明図であり、載置されるコンテナ11の一部を合わせて示したものである。また、図4は図3の丸で囲んだA部の拡大図、図5は図4の矢視A−A断面図である。
以下、図3〜図5に基づいてコンテナ載置棚29の後辺部31および該後辺部31に設けられるコンテナ係止手段33について説明する。
コンテナ載置棚29の後辺部31には、図3〜図5(特に図5参照)に示すように、幅方向に延びるスライド溝35が形成されている。そして、このスライド溝35に、コンテナ載置動作に伴い該コンテナ11のコーナ金具53の係合孔55に係合して前記コンテナ11をコンテナ載置棚29に係止するコンテナ係止手段33が図中左右方向にスライド可能に設けられている。
また、コンテナ載置棚29の後辺部31の両端部には、図3、図4に示すように、上方に突出するスットパ片部34が設けられており、このストッパ片部34はコンテナ載置棚29に載置されたコンテナ11がずれてコンテナ載置棚29からはみだすのを防止する機能を有する。なお、ストッパ片部34はコンテナ載置棚29の図示しない前辺部の両端部にも設けられている。
【0023】
コンテナ係止手段33は、スライド溝35に設置された状態においてスライド溝35から上方に突出する左右の係止片部37と、これら係止片部37を支持してスライド溝35に挿入される板状の基部39とを備えている。
左右の係止片部37は同一形状であり、これら2つの係止片部37の間隔は、コンテナ11の両側に設けられるコーナ金具53の係合孔55の間隔と同一幅に設定されている。
以下、コーナ金具53の形状および係止片部37の形状について説明する。
【0024】
コーナ金具53は、図4に示すように、垂直断面がロ字状の金具の下部にロ字の幅よりも狭い幅の係合孔55を有している。係合孔55の幅がロ字の幅よりも狭いので、係合孔55の左右に縁部を有する形状となっている。
係止片部37は、図4に示すように、正面の形状が、頂部41が尖った三角形のヨットの帆のような形状をしている。より詳細に説明すると、係止片部37は、頂部41から図中左斜め下方に傾斜する第1傾斜面43(本発明の案内用斜面部に相当する)と、第1傾斜面43の下端部に連続して形成されて右斜め下方に傾斜する第2傾斜面45(本発明の係止解除斜面部に相当する)と、第2傾斜面45の下端部に連続して鉛直下方に延びる第1垂直面47と、頂部41から鉛直下方に延びるように形成された第2垂直面49と、第2垂直面49の下端側から連続して形成されて右斜め下方に傾斜する第3傾斜面51(本発明の係止用斜面部に相当する)と、を備えている。そして、第2傾斜面45が係止部として機能する。
また、第1傾斜面43の下端と第2垂直面49との幅Wと、第1垂直面47と第3傾斜面51の下端との幅Wと、が同一に設定され、これらがそれぞれ係合孔55の幅Wと略同一に設定されている。もっとも、係止片部37は係合孔55に挿入される必要があるので、係合孔55の幅Wの方が幅W、Wよりも若干だけ大きく設定されている。
【0025】
係止片部37に形成された上記第1〜第3傾斜面51の機能を説明する。第1傾斜面43は、コンテナ11を載置する際に、コーナ金具53の係合孔55の図中左縁下部57に当接して係止手段を係合孔55に挿入可能な位置まで移動させる機能を有する。
第3傾斜面51は、コンテナ11を載置する際に、係合孔55の図中右縁下部59に当接して係止手段を係止方向に移動させる機能を有する。
第2傾斜面45は、コンテナ11を持ち上げる際に、係合孔55の図中左縁上部61に当接して、係止手段を係止解除方向に移動させる機能を有する。
【0026】
上記のように構成されたコンテナ格納庫1におけるコンテナ格納動作の概要を説明する。
昇降テーブル9上の台車13に昇降シリンダ23の受座27を介してコンテナ11を載置し、クレーン本体7を所定のコンテナ格納部5のある列まで移動させ、さらにその列において昇降テーブル9を目的とする格納部5の位置に昇降させる。
この昇降テーブル9を所定の格納部5に対して上下方向で正確に位置決めするため、位置決めピンをテーブル側部から突出させ、格納部5の底部に係合させる。
この状態で昇降シリンダ23によりコンテナ11を持ち上げ、さらにピニオンを駆動させることによって台車13を格納部5の方向に走行させる。台車13が格納部5側に移動したら昇降シリンダ23を駆動してコンテナ11を下降させ、その下面を格納部5内の載置部上に載置する。
【0027】
このコンテナ11を載置する際におけるコンテナ係止手段33の動作を図6〜図9に基づいて説明する。図6〜図9の各図においては、図中の左端の部分の丸で囲んだA部を拡大して示す拡大図を付している。
図6に示すように、コンテナ11を台車13で支持して格納部5へ搬入し、コンテナ11のコーナ金具53の係合孔55に係止片部37の頂部41が挿入可能な位置になるように位置調整する。図6に示す状態では係合孔55の右縁と第2垂直面49とが当接する位置になっており、この位置関係になるのが理想的であるが、仮にこのような位置関係になくても係止片部37の頂部41が係合孔55に挿入可能な位置にあればよい。なぜなら、係止片部37の頂部41が係合孔55に挿入できる位置にあれば、コンテナ11が下降する際に第1傾斜面43と係合孔55の図中右側の縁下部が当接し、その状態でさらにコンテナ11が下降すると、この第1傾斜面43の作用により係止手段全体が図中右方向にスライドして係止片が係合孔55に挿入可能な位置関係になるからである。
係止片部37が係合孔55に挿入可能な位置関係になった状態でコンテナ11を下降させると、係合孔55に係止片部37の頭部が挿入される。図7は、この係止片部37の頭部が係合孔55に挿入されている状態を示している。
【0028】
この状態からコンテナ11をさらに下降させると、係合孔55の図中右側の縁下部が係止片部37の第3傾斜面51に当接する。当接した状態からさらにコンテナ11を下降させると、第3傾斜面51が縁下部に押されることにより係止手段全体が図中左方向に移動する。係止手段全体が図中左方向に移動することで、係止片部37の第2傾斜面45すなわち係止部がコーナ金具53の左側縁部に係止してコンテナ11をロック状態にする。
その後、台車13を昇降テーブル9側に移動させ、コンテナ11の移載が完了する。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、コンテナ11の下降動作に伴って係止手段側が左右に移動してコンテナ11を係止するので、コンテナ下降動作の過程においてコンテナ11側には水平方向の大きな荷重が作用しない。したがって、コンテナ11が台車13によって支持されるような剛性の高い支持構造であっても移載動作が可能となり、支持構造を複雑化する必要がない。
【0030】
次に、コンテナ11を持ち上げる際の動作について説明する。
図9に示す状態からコンテナ11を真っ直ぐ上に持ち上げると、図8に示すように、係止片部37の第2傾斜面45が係合孔55の左縁上部61に当接する。この状態でさらにコンテナ11を上方に移動させると、第2傾斜面45の作用により係止手段全体が図中右方向に移動する。そして、第2傾斜面45の上端部が係止孔の縁部を過ぎると、係止が外れて係合孔55から係止片部37が抜け出し、コンテナ11は上方に移動する。
このように、コンテナ11を持ち上げる際においても、コンテナ係止手段33が移動することにより係止が自動的に解除され、しかもその際にコンテナ11側には過大な荷重が作用しないので、コンテナ11が台車13によって支持されるような剛性の高い支持構造であっても支持構造を複雑化することなくコンテナ11の持ち上げが可能である。
【0031】
また、上記のようにコンテナ11を昇降シリンダ23によって真っ直ぐ上に持ち上げる際にはロックが解除されるが、強風や地震によってコンテナにこれを傾動させる力が作用してもロックが外れることはない。この点を以下に詳細に説明する。
発明者の研究によると、風や地震の影響によってコンテナ11に作用する力はコンテナ11を水平に保って真っ直ぐ上に持ち上げるような場合はほとんどなく、コンテナ11の片側辺を支点として傾動させようとする場合がほとんどである。したがって、このようなコンテナ11の片側を支点として傾動させる力に対してロックが外れないようにすればよい。
この点、コンテナ11をロックした状態において、仮に強風、地震によってコンテナ11の片側が浮き上がろうとし、一方の係止片部37がコンテナ11のコーナ金具53により上方向に引き上げられようとしても、両側の係止片部37が基部39によって一体になっているので、他方の係止片部37がコンテナ11のコーナ金具53により下方向に押さえつけられているかぎり、前記一方の係止片も水平方向に移動できない。したがって、コーナ金具53により上方向に引き上げられようとしている係止片部37の係止が外れることはなく、コーナ金具53の孔から抜け出ることはない。
このように、コンテナ11が強風、地震の影響などによって浮き上がろうとしても、一体となった一対の係止片部37の相互作用によってそれを確実に防止できるのである。
【0032】
また、上記の説明においてはコンテナ載置棚29の後辺部31にコンテナ係止手段33を設けた例を示したが、これはコンテナが強風、地震によって傾動するのはコンテナの長辺側を支点とすると考えられるところ、後辺部31はコンテナ11の短辺側に相当し、短辺側が両方同時に浮き上がろうとすることはほとんど考えられないので、強風、地震によってロック解除される危険がほとんどなく最も好ましいからである。
【0033】
なお、上記の説明においては格納する対象物がコンテナの場合を例に挙げたが、これはコンテナの場合にはコンテナ自体に係合孔55を有するコーナ金具が設けられているので、典型的な例として例示したのであり、本発明は格納対象物がコンテナの場合に限定されるものではない。
もっとも、格納対象物の移載動作に伴って係止手段が格納対象物を係止し、また係止解除するためにはコンテナのコーナ金具と同様の金具が格納対象物に設けられている必要がある。このようなものの例としては、コンテナのコーナ金具と同様のコーナ金具を有するパレットが挙げられる。
したがって、本発明は、このようなパレットに格納対象物を固定して格納する場合にも適用できる。即ち、本発明の格納対象物はコンテナのように格納対象物自体にコーナ金具を有するもの、コーナ金具を有するパレットに固定された種々の物品を含むのである。
【0034】
また、上記の説明においてはコンテナ載置棚29の後辺部31にコンテナ係止手段33を設けた例を示したが、コンテナ係止手段33を設ける位置として、コンテナ載置棚29の前辺部や側辺部を排除するものではない。
なお、コンテナ係止手段33をコンテナ載置棚29の前辺部に設ける場合には台車13がコンテナ係止手段33を乗り越える工夫をすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫に用いる台車の説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫の格納部の説明図である。
【図4】図1の一部を拡大して示す拡大図である。
【図5】図4の矢視A−A断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫におけるコンテナ移載動作の説明図である(その1)。
【図7】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫におけるコンテナ移載動作の説明図である(その2)。
【図8】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫におけるコンテナ移載動作の説明図である(その3)。
【図9】本発明の一実施の形態に係るコンテナ格納庫におけるコンテナ移載動作の説明図である(その4)。
【符号の説明】
【0036】
1 コンテナ格納庫
3 スタッカークレーン
5 コンテナ格納部
7 クレーン本体
9 昇降テーブル
11 コンテナ
13 台車
15 レール
19 フレーム部材
21 車輪
23 昇降シリンダ
25 シリンダロッド
27 受座
29 コンテナ載置棚
31 前辺部
33 コンテナ係止手段
35 スライド溝
37 係止片部
39 基部
41 頂部
43 第1傾斜面
45 第2傾斜面
47 第1垂直面
49 第2垂直面
51 第3傾斜面
53 コーナ金具
55 係合孔
57 左縁下部
59 右縁下部
61 左縁上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁付き係合孔を有するコーナ金具を備えた格納対象物を格納する格納部と、前記格納対象物を昇降テーブル上に載置して昇降移動するスタッカークレーンと、該スタッカークレーンの前記昇降テーブル上に配置され、前記昇降テーブルと各格納部との間で格納対象物の移載を行う移載手段とを備えた立体格納庫において、
各格納部の載置棚に設けられて、前記移載手段による載置動作に伴い前記格納対象物のコーナ金具の係合孔に係合して前記格納対象物を前記載置棚に係止する係止手段を備え、該係止手段は、前記コーナ金具に係止する一対の係止片部と、これら一対の係止片部と一体に形成された基部とを有し、該基部が前記載置棚に水平方向に移動可能に設置されていることを特徴とする立体格納庫。
【請求項2】
係止片部は係止用斜面部と係止解除用斜面部を有し、前記係止用斜面部は格納対象物が下降する際にコーナ金具に当接して係止片部がコーナ金具に係止する方向に係止手段を移動させる機能を有し、前記係止解除用斜面部は格納対象物が載置棚から上方に上げられる際にコーナ金具に当接して係止片部とコーナ金具との係止が外れる方向に係止手段を移動させる機能を有することを特徴とする請求項1に記載の立体格納庫。
【請求項3】
係止片部は、格納対象物が下降する際にコーナ金具に当接して係止片部がコーナ金具に挿入可能な位置に係止手段を移動させる機能を有する案内用斜面部を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の立体格納庫。
【請求項4】
移載手段が、格納対象物を支持して昇降できる昇降支持手段を搭載し、昇降テーブルと各格納部との間を移動可能な台車であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の立体格納庫。
【請求項5】
格納対象物がコンテナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の立体格納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−1144(P2010−1144A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162693(P2008−162693)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】