説明

立体画像表示システムおよび視差画像生成装置

【課題】所定の観察位置からの視線方向に関わらず、立体画像を観察者に認識させたい。
【解決手段】視差画像を表示することにより観察者に立体画像を認識させる立体画像表示システムにおいて、それぞれの画素または領域が、視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心とする対称図形の接線方向または平行な方向に視差を持つ視差画像を表示する。視差画像内の画素PX1、PX2は、視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置PVを中心として当該画素PX1、PX2を通る円C1を描いた場合の、当該画素PX1、PX2を通る点の接線方向DP1、DP2に視差を持ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差画像を表示することにより観察者に立体画像を認識させる立体画像表示システムおよび視差画像を生成する視差画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の両眼は数cmほど離れているため、右眼と左眼で得られる像には位置ずれがある。人間の脳はこの位置ずれを一つの手がかりとして奥行きを認識している。逆にいえば、この両眼に写すべき像の位置ずれ量を調整することにより、脳に擬似的に奥行きを認識させることができる。この両眼視差を利用して、平面画像を立体画像として脳に認識させる様々な手法が実用化されている。大別するとメガネ方式と裸眼方式があり、メガネ方式にはシャッターメガネ方式、偏光メガネ方式、アナグリフメガネ方式などがあり、裸眼方式にはパララックスバリア方式、レンチキュラレンズ方式などがある。
【0003】
図1は、従来技術に係る、平面表示領域10内に表示される視差画像の視差の方向DP1、DP2と観察者Hからの視線方向DVを模擬的に描いた図(その1)である。図1では、平面表示領域10が地面に対して水平に形成されている。平面表示領域10内には所定の位置ずれ量を持つ右眼用画像および左眼用画像(以下適宜、両者を総称して視差画像という)が時間的または空間的に分割されて表示される(たとえば、特許文献1参照)。ここでは、平面表示領域10内に表示される視差画像の視差の方向について議論するため、視差画像の表示方式については限定しない。平面表示領域10はディスプレイであってもよいし、スクリーンであってもよいし、床や天井であってもよい。
【0004】
図1の例では、平面表示領域10内に表示される視差画像の視差の方向DP1、DP2はすべての画素で同一方向であり、平面表示領域10の長手方向に対して平行な方向に設定されている。ここで、視差画像の視差の方向とは、右眼用画像と左眼用画像との対応する画素同士または領域同士を通る線の方向を指す。この視差の方向と、観察者Hの右眼視点VRと左眼視点VLとを通る線の方向(以下適宜、両眼間の方向という)とが平行または略平行のとき、観察者Hは視差画像を立体画像と認識することができる。逆に、両者の方向が平行または略平行の関係にないとき、観察者Hは視差画像を立体画像と認識することができない。ここで、平行な関係にないというのは、右眼視点、左眼視点および注視点の3点を含む平面と直交する視差成分があることを意味する。
【0005】
図1の例では、所定の観察位置にいる観察者Hが視線方向DVを向いているときの両眼間の方向と、視差の方向とが平行しており、観察者Hは立体画像を認識することができる。視差画像が地平面に対して垂直または略垂直に表示される場合、通常、観察者の観察位置または視線方向が変わっても両眼間の方向は大きく変わることがない。通常、観察者は地平面に対して垂直または略垂直な画像を、頭を大きく傾けて見ないためである。したがって、地面に対して垂直または略垂直に視差画像が表示される場合、視差の方向がすべての画素で一定であっても、大きな問題は発生しない。
【特許文献1】特開平10−56654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、視差画像が地平面に対して水平または略水平に表示される場合、観察者の視線方向によって、両眼間の方向が大きく変化する。とくに、視差画像のサイズが大きい場合、大きく変化する。
【0007】
図2は、従来技術に係る、平面表示領域10内に表示される視差画像の視差の方向DP1、DP2と観察者Hからの視線方向DVを模擬的に描いた図(その2)である。図2は、図1における観察者Hの視線方向DVが、観察者Hからみて反時計回りに約90°回転した状態を示す。この状態では、視差の方向と観察者Hの両眼間の方向とが略垂直の関係になり、観察者Hは立体画像を認識することができない。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、所定の観察位置からの視線方向に関わらず、立体画像を観察者に認識させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様の立体画像表示システムは、視差画像を表示することにより観察者に立体画像を認識させる立体画像表示システムであって、それぞれの画素または領域が、視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心とする対称図形の接線方向または平行な方向に視差を持つ視差画像を表示する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、視差画像生成装置である。この装置は、視差画像が表示されるべき第1平面上の所定の位置に観察位置を設定する観察位置設定部と、第1平面から所定の高さに位置する第2平面上にあり、観察位置から高さに位置する基準地点を通り、かつ第1平面上の対象画素と観察位置とを結ぶ線分に対する第1平面上の垂直線と平行または略平行な、両眼視点直線上に、所定の間隔で位置し、かつ基準地点から等間隔に位置する二地点に右眼視点および左眼視点を設定する視点設定部と、右眼視点と対象画素とを通る右眼視線直線上および左眼視点と対象画素とを通る左眼視線直線上に存在するオブジェクトの表面と、右眼視線直線および左眼視線直線とのそれぞれの交点の画素値を、対象画素の、右眼用画像の画素値および左眼用画像の画素値として取得する画素値取得部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の観察位置からの視線方向に関わらず、立体画像を観察者に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図3は、本発明の実施の形態に係る、平面表示領域10内に表示される視差画像の視差の方向と観察者の右眼視点VRと左眼視点VLを模擬的に描いた図(その1)である。図3は、平面表示領域10の中心に観察位置PVが設定される例を示す。観察者はその観察位置PVに立って、平面表示領域10内に表示される視差画像を見ている。図3には観察者の頭部を描いていないが、観察者は図3の左手前方向を向き、右眼視点VRおよび左眼視点VLから左斜め下の注視点PRを見ており、視線方向は左斜め下方向となる。
【0014】
この場合、観察者の両眼間の方向は、観察位置PVと注視点PRを通る左下がり直線に対して、水平面上で垂直な方向となる。したがって、その方向と当該注視点PRの視差の方向DPとを一致または略一致させると、観察者はその左斜め下にある注視点PRを立体画素として認識することができる。
【0015】
図4は、本発明の実施の形態に係る、平面表示領域10に表示される視差画像の視差の方向と観察者の右眼視点VRと左眼視点VLを模擬的に描いた図(その2)である。図4も図3と同様に、平面表示領域10の中心に観察位置PVが設定される例を示す。図4では、観察者は図4の右手前を向き、右眼視点VRおよび左眼視点VLから右斜め下の注視点PRを見ており、視線方向は右斜め下方向となる。
【0016】
この場合、観察者の両眼間の方向は、観察位置PVと注視点PRを通る右下がり直線に対して、水平面上で垂直な方向となる。したがって、その方向と当該注視点PRの視差の方向DPとを一致または略一致させると、観察者はその右斜め下の注視点PRを立体画素として認識することができる。
【0017】
このように、地平面に対して水平に表示される視差画像内のそれぞれの画素または領域は、所定の観察位置からの視線方向に応じて異なる方向の視差を持つ必要がある。すなわち、所定の観察位置からの視線方向の変化により両眼間の方向が大きく変化する場合、それぞれの画素または領域が、所定の観察位置との位置関係に応じて個別に決定された方向に視差を持つ必要がある。
【0018】
所定の観察位置からの視線方向に関わらず、立体画像を観察者に認識させるには、それぞれの画素または領域が、所定の観察位置から見て水平方向または略水平方向に視差を持つ必要がある。より具体的には、視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置からそれぞれの画素または領域に対して直線を引いた場合、それぞれの画素または領域が当該直線に対して垂直方向または略垂直方向に視差を持つ必要がある。
【0019】
以下、視差画像内のそれぞれの画素または領域における、視差の方向を決定するためのアルゴリズムについて説明する。
図5は、実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第1アルゴリズムを説明するための図である。図5は、平面表示領域10の中心に観察位置PVが設定される例を示す。第1アルゴリズムでは、視差画像内の画素は、その視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る円を描いた場合の、当該画素を通る点の接線方向に視差を持つ。
【0020】
たとえば、画素PX1、PX2は、観察位置PVを中心点としそれらの画素PX1、PX2を通る円C1上の、それぞれの画素PX1、PX2を通る点の接線方向DP1、DP2に視差を持つ。この第1アルゴリズムを用いることにより、視差の方向と両眼間の方向とがすべての画素で平行する理想的な視差画像を生成することができる。
【0021】
図6は、実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第2アルゴリズムを説明するための図である。図6も、平面表示領域10の中心に観察位置PVが設定される例を示す。第2アルゴリズムでは、視差画像内の画素は、その視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る長円環を描いた場合の、当該画素を通る曲線上の点の接線方向または当該画素を通る直線と平行な方向に視差を持つ。すなわち、当該画素を通る点が当該長円環の円周上にある場合、その点の接線方向を視差の方向とし、当該画素を通る点が当該長円環の辺上にある場合、その辺と平行な方向を視差の方向とする。
【0022】
たとえば、画素PX1、PX2は、観察位置PVを中心点としそれらの画素PX1、PX2を通る長円環C2上の、それぞれの画素PX1、PX2を通る点の接線方向DP1、DP2に視差を持つ。この第2アルゴリズムでは、観察位置にある程度の幅を持たせることができる。すなわち、観察位置を長円環の長手方向に拡大することができる。図6の例では、平面表示領域10の中心点から平面表示領域10の長手方向にある程度移動した位置から視差画像を見ても、観察者は当該中心点から見る場合と同様の立体画像を認識することができる。したがって、複数人がその幅を持った観察位置に立つことにより、複数人が同時に同じ立体画像を認識することも可能となる。
【0023】
図7は、実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第3アルゴリズムを説明するための図である。図7も、平面表示領域10の中心に観察位置PVが設定される例を示す。第3アルゴリズムでは、視差画像内の画素は、その視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る正多角形を描いた場合の、当該画素を通る辺と平行な方向に視差を持つ。
【0024】
図7では正八角形を描いた例を示している。正八角形を描く例では、平面表示領域10は八つの領域R1〜R8に分割される。それぞれの領域内の画素R1〜R8は、同じ方向に視差を持つ。図7にて、画素PXは観察位置PVを中心点としその画素PXを通る正八角形C3の、その画素PXを通る辺と平行な方向DPに視差を持つ。
【0025】
この第3アルゴリズムでは、領域単位で視差の方向を調整すればよいため、画素単位で視差の方向を調整する場合と比較し、当該視差画像を生成するための手間を軽減することができる。とくに、コンピュータグラフィック画像ではなく実写画像で当該視差画像を生成する場合の手間を大幅に軽減することができる。なお、当該視差画像の具体的な生成方法については後述する。
【0026】
なお、視差の方向と両眼間の方向とが厳密に一致しなくても、観察者は視差画像を立体画像と認識することができ、それらの方向が20〜45°(平行成分が主成分となる範囲)程度ずれていても立体画像と認識することができる。
【0027】
以下、立体画像表示システムの構成例を説明する。まず、シャッタメガネ方式を採用した例を説明する。
図8は、本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システム500の第1構成例を示す図である。この立体画像表示システム500はプロジェクタ100およびシャッタメガネ200を備える。平面表示領域10は床に設置された専用のスクリーンであってもよいし、床そのものであってもよい。観察位置PVは平面表示領域10の中央手前の位置に設定される。観察位置PVはプロジェクタ100からの投射光による観察者の影が平面表示領域10内に写らない位置に設定されることが好ましい。
【0028】
プロジェクタ100は、上記視差画像を構成する右眼用画像および左眼用画像を平面表示領域10に時分割に投影する。すなわち、当該右眼用画像および当該左眼用画像は交互に平面表示領域10に表示され、ある瞬間では右眼用画像および左眼用画像のいずれかのみが表示される。
【0029】
シャッタメガネ200は観察者の両眼に装着される。シャッタメガネ200は、プロジェクタ100による当該右眼用画像および当該左眼用画像の切り替えに同期して、左眼の視界と右眼の視界を選択的または交互に遮る。すなわち、平面表示領域10に当該右眼用画像が表示されるとき右眼の視界を解放して左眼の視界を遮り、平面表示領域10に当該左眼用画像が表示されるとき左眼の視界を解放して右眼の視界を遮る。
【0030】
以下、より具体的に説明する。
図9は、図8のプロジェクタ100およびシャッタメガネ200の構成を示すブロック図である。プロジェクタ100は、視差画像入力部110、同期信号生成部120、画像切替部130、投影部140および同期信号送信部150を含む。シャッタメガネ200は、同期信号受信部210、シャッタ制御部220、左眼用シャッタ230および右眼用シャッタ240を含む。
【0031】
視差画像入力部110は上記視差画像を画像切替部130に入力する。同期信号生成部120は上記視差画像を構成する、右眼用画像と左目用画像とを切り替えるための同期信号を生成する。たとえば、120Hzのクロック信号を生成する。同期信号生成部120は生成した同期信号を画像切替部130および同期信号送信部150に入力する。画像切替部130は視差画像入力部110から入力される右眼用画像と左眼用画像とを、同期信号生成部120から入力される同期信号に応じて、交互に選択して投影部140に入力する。
【0032】
投影部140は画像切替部130から入力される右眼用画像および左眼用画像を平面表示領域10に投影する。同期信号送信部150は同期信号生成部120から入力される同期信号を所定の無線チャネルまたは有線チャネルを介してシャッタメガネ200(より具体的には同期信号受信部210)に送信する。たとえば、2.4GHzの周波数帯を用いた短距離無線通信を採用してもよい。
【0033】
同期信号受信部210は同期信号送信部150から送信される同期信号を受信し、シャッタ制御部220に入力する。シャッタ制御部220は、同期信号受信部210から入力される同期信号に応じて、左眼用シャッタ230および右眼用シャッタ240を制御する。具体的には、その同期信号に合わせて左眼用シャッタ230および右眼用シャッタ240を交互に開閉する。左眼用シャッタ230および右眼用シャッタ240は、液晶シャッタなどで構成され、シャッタ制御部220からの制御信号に応じて開閉する。具体的には、左眼用シャッタ230が開いているとき右眼用シャッタ240が閉じ、右眼用シャッタ240が開いているとき左眼用シャッタ230が閉じる。
【0034】
図10は、本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システム500の第2構成例を示す図である。図11は、本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システム500の第3構成例を示す図である。なお、図10、図11ではシャッタメガネ200を省略して描いている。
【0035】
第2構成例および第3構成例では複数のプロジェクタを使用する。複数のプロジェクタは、上記視差画像を表示させる平面表示領域を複数の領域に分割した場合の、それぞれの領域に当該視差画像に対応する部分画像を投影する。より具体的には、複数のプロジェクタのそれぞれは、当該視差画像を構成する右眼用画像および左眼用画像の、割り当てられた領域に対応する部分右眼用画像および部分左眼用画像をその領域に交互に投影する。複数のプロジェクタは同期がとれており、そのすべてのプロジェクタはある瞬間において部分右眼用画像または部分左眼用画像を投影する。したがって、ある瞬間において平面表示領域10には全体右眼用画像または全体左眼用画像が表示される。シャッタメガネ200は、複数のプロジェクタにより投影される当該全体右眼用画像および当該全体左眼用画像の切り替えに同期して、左眼の視界と右眼の視界を交互に遮る。
【0036】
図10に示す第2構成例では二台のプロジェクタ(第1プロジェクタ100aおよび第2プロジェクタ100b)を使用する。平面表示領域10は長手方向に二等分され、第1領域Raと第2領域Rbとに分割される。同様に、視差画像も同じ切り口で二等分され、第1領域用Raの部分視差画像と第2領域用Rbの部分視差画像とに分割される。第1プロジェクタ100aおよび第2プロジェクタ100bは、平面表示領域10の長手方向の両側にそれぞれ設置される。観察位置PVは平面表示領域10の中央手前に設定される。
【0037】
第1プロジェクタ100aは第1領域Raに第1領域用の部分右眼用画像および部分左眼用画像を交互に表示する。第2プロジェクタ100bは第2領域Rbに第2領域用の部分右眼用画像および部分左眼用画像を交互に表示する。第1プロジェクタ100aと第2プロジェクタ100bは、部分右眼用画像および部分左眼用画像のいずれを投影するべきか同期がとれている。
【0038】
図11に示す第3構成例では四台のプロジェクタ(第1プロジェクタ100a、第2プロジェクタ100b、第3プロジェクタ100cおよび第4プロジェクタ100d)を使用する。平面表示領域10は十字に四等分され、第1領域Ra、第2領域Rb、第3領域Rcおよび第4領域Rdに分割される。同様に、視差画像も同じ切り口で四等分され、第1領域用Raの部分視差画像、第2領域用Rbの部分視差画像、第3領域用Rcの部分視差画像および第4領域用Rdの部分視差画像とに分割される。
【0039】
第1プロジェクタ100a、第2プロジェクタ100b、第3プロジェクタ100cおよび第4プロジェクタ100dは、平面表示領域10を囲むように設置される。より具体的には、第1プロジェクタ100aは第1領域用Raの外側の辺に接して設置される。第2プロジェクタ100b、第3プロジェクタ100cおよび第4プロジェクタ100dも同様である。図11では第1プロジェクタ100aは外側の長手方向の辺に接して、第3プロジェクタ100cと対向する位置に設置される。
【0040】
第1プロジェクタ100aは第1領域Raに第1領域用の部分右眼用画像および部分左眼用画像を交互に表示する。第2プロジェクタ100b、第3プロジェクタ100cおよび第4プロジェクタ100dも同様である。第1プロジェクタ100a、第2プロジェクタ100b、第3プロジェクタ100cおよび第4プロジェクタ100dは、部分右眼用画像および部分左眼用画像のいずれを投影するべきか同期がとれている。
【0041】
シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システムでは、右眼用画像と左眼用画像とを空間的でなく時間的に分割することにより、解像度を低下させずに立体画像を表示させることができる。また、複数のプロジェクタを用いることにより大きなサイズの立体画像を表示することができる。また、図11に示すように複数のプロジェクタを用いることにより、平面表示領域10の中央に観察位置PVを設定しても、その位置にいる観察者の影の発生を抑制することができる。
【0042】
図12は、本発明の実施の形態に係る、偏光メガネ方式を採用した立体画像表示システム500の構成例を示す図である。ここでは円偏光メガネ方式を例に説明する。この立体画像表示システム500は、ディスプレイ300、円偏光板310および円偏光メガネ400を備える。図12では観察位置PVが手前の辺の中央に設定されている。ディスプレイ300、たとえばプラズマディスプレイや液晶ディスプレイは、右眼用画像および左眼用画像が空間的に組み合わせられた視差画像を表示する。たとえば、走査線の奇数列に右眼用画像を、偶数列に左眼用画像を表示する。
【0043】
円偏光板310はディスプレイ300に表示面側に設けられる。フィルム状にしてディスプレイ300の表示面に貼り付けてもよい。円偏光板310はディスプレイ300から発せられる光線を円偏光の光線に変換する。より具体的には、走査線の奇数列から発せられる光線を右円偏光の光線に変換し、偶数列から発せられる光線を左円偏光の光線に変換する。すなわち、右眼用画像の光線の位相と左眼用画像の光線の位相を逆にする。
【0044】
円偏光メガネ400は、右眼用フレーム内に右円偏光成分を通す右眼用フィルタが設けられ、左眼用フレーム内に左円偏光成分を通す左眼用フィルタが設けられる。観察者はこの円偏光メガネ400をかけることにより、右眼で右眼用画像および左眼で左眼用画像を見ることができ、立体画像を認識することができる。
【0045】
偏光メガネ方式を採用した立体画像表示システムでは、アナグリフメガネ方式を採用したシステムと比較し、カラー画像を忠実に再現することができる。また、円偏光方式を採用することにより、観察者の頭がある程度傾いても立体画像を認識することができる。
【0046】
図13は、本発明の実施の形態に係る、パラッラクスバリア方式を採用した立体画像表示システム500の構成例を示す図である。この立体画像表示システム500は、ディスプレイ600およびパラッラクスバリア610を備える。図13でも観察位置PVが手前の辺の中央に設定されている。図13では平面表示領域10が三つの領域R1〜R3に分割される。第1領域R1は平面表示領域10の右側の二つの頂点と観察位置PVとを頂点とする三角形の領域である。第2領域R2は平面表示領域10の奥側の二つの頂点と観察位置PVとを頂点とする三角形の領域である。第3領域R3は平面表示領域10の左側の二つの頂点と観察位置PVとを頂点とする三角形の領域である。
【0047】
ディスプレイ600は、右眼用画像および左眼用画像が空間的に組み合わせられた視差画像を表示する。この視差画像は領域ごとに視差の方向が異なっている。図13ではそれぞれの領域R1〜R3ごとに、ストライプの方向と直交する方向に、視差の方向が設定されている。
【0048】
パラッラクスバリア610は、ディスプレイ600の表示面側に設けられる。パラッラクスバリア610はバリアとアパーチャが交互に配置されて形成される。図13ではそれぞれの領域R1〜R3ごとに、ストライプの方向と同じ方向のバリアとアパーチャが交互に配置される。パラッラクスバリア610は、ディスプレイ600から特定の距離に位置する右眼から左眼用画像の画素が見ないように、その距離に位置する左眼から右眼用画像の画素が見えないように作用する。
【0049】
パラッラクスバリア610の代わりにレンチキュラレンズを用いても同様の状況を作り出すことができる。また、図13では右眼用画像と左眼用画像の二つの視点の画像を表示する所謂二視点表示の例を示したが、より多くの視点の画像を表示する多視点表示とすることも可能である。パララックスバリアは四つの画像が見える方向を分離し、片眼がある画像を見ているときは他の画像が見えないように作用する。パラッラクスバリア方式を採用した立体画像表示システムでは、メガネが必要なくシステムを簡素化することができる。
【0050】
つぎに、上述した視差画像の生成方法について説明する。
図14は、本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置700の構成を示すブロック図である。視差画像生成装置700は、観察位置設定部710、視点設定部720および画素値取得部730を備える。これらの構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0051】
図15は、本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置700により視差画像を生成する過程を示す図(その1)である。以下、図15を参照しながら、コンピュータグラフィックで生成された、所定のオブジェクトを含む原画像から、視差画像を生成する例を説明する。
【0052】
観察位置設定部710は、視差画像が表示されるべき第1平面上の所定の位置に観察位置PVを設定する。ここで第1平面は視差画像の投影面となる。観察位置PVは設計者により第1平面上の任意の位置に設定されることが可能である。観察位置PVは視差画像が表示される領域の内であっても外であってもよい。
【0053】
視点設定部720は、両眼視点直線L1に右眼視点VRおよび左眼視点VLを設定する。この両眼視点直線L1は、当該第1平面から所定の高さHに位置する第2平面上にあり、当該観察位置PVから当該高さHに位置する基準地点PSを通る。かつ、この両眼視点直線L1は、当該第1平面上の対象画素PXと当該観察位置PVとを結ぶ線分L2に対する第1平面上の垂直線L3と平行または略平行な関係にある。当該高さHは設計者により任意に設定されることができる。たとえば、当該高さHは平均的な身長の人が直立した状態の両眼が位置する高さに設定されてもよい。
【0054】
視点設定部720は、当該右眼視点VRおよび当該左眼視点VLを、当該両眼視点直線L1上に所定の間隔で位置し、かつ当該基準地点PSから等間隔に位置する二地点に設定する。その二地点の距離も設計者により任意に設定されることができる。たとえば、当該二地点の距離は平均的な人の両眼の距離に設定されてもよい。
【0055】
画素値取得部730は、当該右眼視点VRと当該対象画素PXとを通る右眼視線直線L4上および当該左眼視点VLと当該対象画素PXとを通る左眼視線直線L5上に存在するオブジェクトOBの表面と、当該右眼視線直線L4および当該左眼視線直線L5とのそれぞれの交点P4、P5の画素値を、当該対象画像PXの、右眼用画像の画素値および左眼用画像の画素値として取得する。これらの画素値をすべての画素について取得することにより、右眼用画像および左眼用画像を生成することができる。なお、オブジェクトOBが当該右眼視点VRおよび当該左眼視点VLから見て投影面の奥に存在するのではなく、投影面の手前に存在する場合にも同様の原理で画素値を取得することができる。
【0056】
図5に示したように第1アルゴリズムが適用される視差画像を生成する場合、視点設定部720は、すべての画素について両眼視点直線L1を上記垂直線L3と平行に描く必要がある。一方、図7に示したように第3アルゴリズムが適用される視差画像を生成する場合、視点設定部720は、分割された領域単位で、両眼視点直線L1の方向を固定することができ、当該右眼用視点VRおよび当該左眼用視点VLを固定することができる。この場合、視差画像生成にかかる演算量を低減することができ、その生成処理を高速化することができる。
【0057】
ここまでコンピュータグラフィックを用いて視差画像を生成する例を説明したが、実写の視差画像を生成する場合にも同様に考えることができる。たとえば、第3アルゴリズムが適用される視差画像を実写で生成する場合、分割された領域ごとに当該右眼視点VRおよび当該左眼視点VLを共有して撮影し、領域ごとに撮影された、異なる視点の画像を合成すればよい。異なる視点の画像の境界を滑らかに合成できれば、その合成方法はとわない。たとえば、パノラマ合成を利用することができる。
【0058】
図16は、本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置700により視差画像を生成する過程を示す図(その2)である。図16は、一つの画像PXについて四つの視点(第1視点V1、第2視点V2、第3視点V3、および第4視点V4)の視差画像を生成する例である。
【0059】
画素値取得部730は、第1視点V1と当該対象画素PXとを通る第1視線直線L41上および第2視点V2と当該対象画素PXとを通る第2視線直線L42上に存在するオブジェクトOBの表面と、第1視線直線L41および第2視線直線L42とのそれぞれの交点P41、P42の画素値を取得する。
【0060】
同様に、画素値取得部730は、第3視点V3と当該対象画素PXとを通る第3視線直線L43上および第4視点V4と当該対象画素PXとを通る第4視線直線L44上に存在するオブジェクトOBの表面と、第3視線直線L43および第4視線直線L44とのそれぞれの交点P43、P44の画素値を取得する。このように、画素値取得部730は、当該対象画像PXの、四つの視点からの画素値を取得することができる。
【0061】
以上説明したように本実施の形態によれば、画素単位または領域単位で視差の方向が異なる視差画像を表示することにより、所定の観察位置からの視線方向に関わらず、立体画像を観察者に認識させることができる。とくに、床や天井に設置される、スクリーンやディスプレイに大きなサイズの立体画像を表示するアプリケーションに適している。
【0062】
また、地面や上空の画像を本実施の形態に係る視差画像で表示することにより、全方位に表示される立体画像を定位置から視線方向を変えながら鑑賞するアプリケーションにも適している。たとえば、野球やサッカーの試合が行われている競技場全体、立体プラネタリウム、立体環境画像などを全方位に表示するアプリケーションに適している。また、視点を切り替える技術を合わせて用いることにより、自動車や飛行機の立体仮想ラジコンを観察者の周囲で移動させ、そのラジコンからの映像を鑑賞するアプリケーションにも利用することができる。
【0063】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0064】
メガネ方式を採用した立体画像表示システム500では、メガネに観察者の頭部の位置を検出するためのセンサを搭載し、そのセンサでその頭部の位置を検出することにより、視差画像の観察位置を、当該センサで検出された位置に切り替えることができる。図16で説明したように複数の視点からの視差画像をあらかじめ用意し、検出された位置に応じた視点からの視差画像を選択して表示すればよい。この場合、観察者は観察位置を変更しても立体画像を認識し続けることができ、観察者は自由に移動することができる。
【0065】
また、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システム500では、異なる観察位置にいる複数の観察者に対して立体画像を認識させることができる。たとえば、二組の視差画像を時分割に表示することにより、異なる観察位置にいる二人の観察者に対して立体画像を認識させることができる。より具体的には、第1右眼用画像、第1左眼用画像、第2右眼用画像、第2左眼用画像を時分割に表示し、一方の観察者に装着されるシャッタメガネは、第2右眼用画像および第2左眼用画像が表示される期間に両眼を遮り、第1右眼用画像が表示される期間に左眼を遮り、第1左眼用画像が表示される期間に右眼を遮るよう制御する。他方の観察者に装着されるシャッタメガネは、第1右眼用画像および第1左眼用画像が表示される期間に両眼を遮り、第2右眼用画像が表示される期間に左眼を遮り、第2左眼用画像が表示される期間に右眼を遮るよう制御する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来技術に係る、平面表示領域内に表示される視差画像の視差の方向と観察者からの視線方向を模擬的に描いた図(その1)である。
【図2】従来技術に係る、平面表示領域内に表示される視差画像の視差の方向と観察者からの視線方向を模擬的に描いた図(その2)である。
【図3】本発明の実施の形態に係る、平面表示領域内に表示される視差画像の視差の方向と観察者の右眼視点と左眼視点を模擬的に描いた図(その1)である。
【図4】本発明の実施の形態に係る、平面表示領域に表示される視差画像の視差の方向と観察者の右眼視点と左眼視点を模擬的に描いた図(その2)である。
【図5】実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第1アルゴリズムを説明するための図である。
【図6】実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第2アルゴリズムを説明するための図である。
【図7】実施の形態に係る、視差の方向を決定するための第3アルゴリズムを説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システムの第1構成例を示す図である。
【図9】図8のプロジェクタおよびシャッタメガネの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システムの第2構成例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る、シャッタメガネ方式を採用した立体画像表示システムの第3構成例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る、偏光メガネ方式を採用した立体画像表示システムの構成例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る、パラッラクスバリア方式を採用した立体画像表示システムの構成例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置により視差画像を生成する過程を示す図(その1)である。
【図16】本発明の実施の形態に係る視差画像生成装置により視差画像を生成する過程を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0067】
10 平面表示領域、 100 プロジェクタ、 100a 第1プロジェクタ、 100b 第2プロジェクタ、 100c 第3プロジェクタ、 100d 第4プロジェクタ、 110 視差画像入力部、 120 同期信号生成部、 130 画像切替部、 140 投影部、 150 同期信号送信部、 200 シャッタメガネ、 210 同期信号受信部、 220 シャッタ制御部、 230 左眼用シャッタ、 240 右眼用シャッタ、 300 ディスプレイ、 310 円偏光板、 400 円偏光メガネ、 500 立体画像表示システム、 600 ディスプレイ、 610 パラッラクスバリア、 700 視差画像生成装置、 710 観察位置設定部、 720 視点設定部、 730 画素値取得部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視差画像を表示することにより観察者に立体画像を認識させる立体画像表示システムであって、
それぞれの画素または領域が、前記視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心とする対称図形の接線方向または平行な方向に視差を持つ視差画像を表示することを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項2】
前記視差画像内の画素は、前記視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る円を描いた場合の、当該画素を通る点の接線方向に視差を持つことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示システム。
【請求項3】
前記視差画像内の画素は、前記視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る長円環を描いた場合の、当該画素を通る曲線上の点の接線方向または当該画素を通る直線と平行な方向に視差を持つ視差画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示システム。
【請求項4】
前記視差画像内の画素は、前記視差画像が表示される平面上の所定の位置に設定された観察位置を中心として当該画素を通る正多角形を描いた場合の、当該画素を通る辺と平行な方向に視差を持つことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示システム。
【請求項5】
前記視差画像を表示させる平面表示領域を複数の領域に分割した場合の、それぞれの領域に前記視差画像に対応する部分画像を投影する複数のプロジェクタを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の立体画像表示システム。
【請求項6】
視差画像が表示されるべき第1平面上の所定の位置に観察位置を設定する観察位置設定部と、
前記第1平面から所定の高さに位置する第2平面上にあり、前記観察位置から前記高さに位置する基準地点を通り、かつ前記第1平面上の対象画素と前記観察位置とを結ぶ線分に対する前記第1平面上の垂直線と平行または略平行な、両眼視点直線上に、所定の間隔で位置し、かつ前記基準地点から等間隔に位置する二地点に右眼視点および左眼視点を設定する視点設定部と、
前記右眼視点と前記対象画素とを通る右眼視線直線上および前記左眼視点と前記対象画素とを通る左眼視線直線上に存在するオブジェクトの表面と、前記右眼視線直線および前記左眼視線直線とのそれぞれの交点の画素値を、前記対象画素の、右眼用画像の画素値および左眼用画像の画素値として取得する画素値取得部と、
を備えることを特徴とする視差画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−119066(P2010−119066A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292737(P2008−292737)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】