説明

立体画像表示装置

【課題】水平方向の視差数の増加に伴う解像度及び輝度の低下を抑制することが可能な立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示装置は、平面画像を表示する平面画像表示部と、平面画像表示部に対して観察者側に配置されたマスク部3とを備える。マスク部3には、平面画像表示部に設けられたサブピクセルと同様の形状及び大きさの開口部30が設けられている。左上側から右下側に連なる3つの開口部30を1つのマスクパターンとした各マスクパターンは、各マスクパターンの横方向の間隔Dhが、Dh=n×Ph(但し、n:自然数,Ph:1つのサブピクセルの横幅)を満たし、各マスクパターンの縦方向の間隔Dvが、Dv≠n×Pv(但し、n:自然数,Pv:1つのサブピクセルの縦幅)を満たすように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像の表示が可能な立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する技術の1つとして、インテグラルフォトグラフィ方式(以下、IP方式という)が知られている(例えば、特許文献1参照)。IP方式の立体画像表示装置は、複数のピクセルが二次元的に配列された画像表示部を備え、画像表示部の観察者側には、複数の開口部が設けられたマスク部が配置されている。このような立体画像表示装置では、複数のピクセルが1つの立体画像表示用ピクセルを構成しており、マスク部には、各立体画像表示用ピクセルに対応する箇所に開口部が設けられている。また、立体画像表示装置は、複数の立体画像表示用ピクセルで1つの立体画像を表示する。観察者は、マスク部の各開口部を通過した立体画像表示用ピクセルからの光を視認しており、右眼と左眼とで異なるピクセルからの光を見るので立体画像を視認できる。
【0003】
このような構成によると、1つの立体画像表示用ピクセルを構成するピクセルの数が十分多く、且つマスク部の開口部のサイズが十分に小さければ、画像表示部から発せられる光は表示画面の前面側(観察者側)でほぼ均一に分布する。表示画面における表示光が均一に分布する場合、自然な運動視差が得られ、これは立体画像の視認を助ける。
【0004】
上述したようなIP方式の立体画像表示装置では、現状の画像表示装置における画素数でも極めて単純な構造でより自然な立体画像を表示することができる。また、IP方式の立体画像表示装置では、観察者は特殊な眼鏡を装着する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−136300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IP方式では、立体画像の視認が可能な視野角が一定である場合、同時に表示される平面画像の数(視差数)が多いほど、観察位置の移動に伴う立体画像の変化が滑らかになる。
しかしながら、視差数を多くするには、1つの立体画像表示用ピクセルを構成するピクセルの数を増加させる必要があるが、画像表示部におけるピクセルのサイズの縮小には限界がある。従って、視差数の増加に伴って立体画像表示用ピクセルの数を減らさねばならず、高精細での立体画像の表示が困難である。
【0007】
また、人間の両眼を結ぶ線は水平方向(横方向)に平行であることから、立体画像の認識には、水平方向の視差画像を増やすことが効果的である。そこで、立体画像表示装置は、水平方向に赤色のピクセル、緑色のピクセル及び青色のピクセルが所定の順序で配置された画像表示部において、斜め方向に階段状に配列される3つのピクセルに対応する位置に開口部が設けられたマスク部を備える場合がある。このようなマスク部では、水平方向の視差数を増加させる場合に、各色のピクセルを増加させる数だけ水平方向に増加させればよいので、水平方向の視差数の増加に伴う解像度の低下を垂直方向に振り分けることができる。よって、水平方向の視差数の増加に伴う水平方向の解像度の低下を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、このような構成においても、横方向の視差数を例えば8個や16個などと増加させた場合、立体画像表示用ピクセルの横幅の増加に伴ってマスク部に対する開口部の開口率が減少する。マスク部の開口率が低下した場合、表示画像における輝度が低下すると共に解像度が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水平方向の視差数の増加に伴う解像度の低下を抑制できると共に立体画像全体の輝度の低下も抑制できる立体画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る立体画像表示装置は、矩形を有する複数の画素が平面上に配置された画像表示部と、前記平面上で前記画素の配置方向と交差する方向に連なる3つの画素に対向する3つの開口部を1つのマスクパターンとして複数のマスクパターンが形成されたマスク部とを備え、前記画像表示部は、同じ表示色の画素が一方向に並べて配置されており、異なる表示色の画素が他方向に所定の順序で繰り返して配置されており、前記マスクパターンは、Dv≠n×Pv(但し、n:自然数、Pv:画素の前記一方向における長さ、Dv:前記一方向における前記マスクパターン間の間隔)を満たすように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る立体画像表示装置は、矩形を有する複数の画素が平面上に配置された画像表示部と、前記平面上で前記画素の配置方向と交差する方向に連なる3つの画素に対向する1つの開口部をマスクパターンとして複数のマスクパターンが形成されたマスク部とを備え、前記画像表示部は、同じ表示色の画素が一方向に並べて配置されており、異なる表示色の画素が他方向に所定の順序で繰り返して配置されており、前記マスクパターンは、Dv≠n×Pv(但し、n:自然数、Pv:画素の前記一方向における長さ、Dv:前記一方向における前記マスクパターン間の間隔)を満たすように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、マスク部の開口部は、平面画像を表示する画像表示部の画素において、画素の配置方向と交差する方向に連なる3つの画素に対向する位置に設けられている。また、3つの画素に対向する開口部を1つのマスクパターンとし、複数のマスクパターンが、画素の一方向における長さをPvとし、前記一方向におけるマスクパターン間の間隔をDvとした場合に、Dv≠n×Pv(nは自然数)を満たす位置に形成されている。前記一方向は、画像表示部において同じ表示色の画素が並べて配置されている方向を示す。即ち、例えば、同じ表示色の画素が表示面における縦方向(水平方向に対して垂直な方向)に配置された画像表示部において、マスクパターンの縦方向の間隔DvをDv≠n×Pvとして縦方向にマスクパターンをずらす。これにより、水平方向の視差数の増加に伴う解像度及び輝度の低下を抑制することができると共に、マスクパターン(開口部)を通過した各画素の表示色に基づくモアレの発生も抑制できる。
【0013】
本発明に係る立体画像表示装置は、前記マスクパターンは、Dh=n×Ph(但し、n:自然数、Ph:画素の前記他方向における長さ、Dh:前記他方向における前記マスクパターン間の間隔)を満たすように形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、複数のマスクパターンが、画素の他方向における長さをPhとし、前記他方向におけるマスクパターン間の間隔をDhとした場合に、Dh=n×Ph(nは自然数)を満たす位置に形成されている。前記他方向は、画像表示部において異なる表示色の画素が所定の順序で繰り返して配置されている方向を示す。よって、水平方向の視差数を増加させた場合であっても、水平方向の視差数の増加に伴う解像度の低下を垂直方向に分散させることができるので、水平方向の解像度の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、水平方向の視差数の増加に伴う解像度及び輝度の低下を抑制できると共に、マスクパターン(開口部)を通過した各画素の表示色に基づくモアレの発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る立体画像表示装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】平面画像表示部の表示面の一部を概略的に示す平面図である。
【図3】マスク部の一部を概略的に示す平面図である。
【図4】立体画像表示装置の表示面の一部を概略的に示す平面図である。
【図5】立体画像表示装置による表示色パターンを示す平面図である。
【図6】実施形態2の立体画像表示装置の表示面の一部を概略的に示す平面図である。
【図7】比較例3の立体画像表示装置による表示色パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る立体画像表示装置について、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0018】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る立体画像表示装置を概略的に示す斜視図である。本実施形態1の立体画像表示装置1は、観察者が特殊な眼鏡を使用することなく、表示画像の立体感を感じることが可能な立体画像(三次元画像)を表示する表示装置である。
【0019】
立体画像表示装置1は、平面画像(二次元画像)を表示する平面画像表示部2と、平面画像表示部2の前面側に配置されたマスク部3とを備える。なお、前面側とは、立体画像表示装置1に対して観察者側を意味する。平面画像表示部2は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、陰極線管表示装置等である。平面画像表示部2として透過型の液晶表示装置を用いる場合、平面画像表示部2の後面側に光源が配置される。
【0020】
図2は平面画像表示部2の表示面の一部を概略的に示す平面図である。図2中の各矩形は、画像を表示するためのピクセルを構成するサブピクセルをそれぞれ示しており、図2に示す平面画像表示部2の表示領域は、赤色のサブピクセル2R、緑色のサブピクセル2G及び青色のサブピクセル2Bによって構成されている。同色のサブピクセル2R,2G,2Bはそれぞれ縦方向に並べて設けられており、横方向には、例えば赤色のサブピクセル2R、緑色のサブピクセル2G及び青色のサブピクセル2Bの順番で繰り返して設けられている。
【0021】
1つのピクセルは、赤色のサブピクセル2R、緑色のサブピクセル2G及び青色のサブピクセル2Bの3つのサブピクセルによって構成される。また、縦方向は、表示面における上下方向(垂直方向に略平行な方向)を示し、横方向は左右方向(水平方向又は観察者の両眼を結ぶ方向に略平行な方向)を示す。なお、縦方向及び横方向は、互いに略直交する関係にあるが、重力方向とは無関係である。また、後述の斜め方向は、縦方向及び横方向の双方に交差する方向を示す。
【0022】
図3はマスク部3の一部を概略的に示す平面図である。マスク部3は、例えば遮光性を有する板体に、サブピクセル2R,2G,2Bと同様の形状及び大きさの開口部30を設けて構成されている。図3に示すマスク部3では、左上側から右下側に連なる3つの開口部30を1つのマスクパターンとし、各マスクパターンの横方向の間隔をDhとし、1つのサブピクセル2R,2G,2Bの横幅をPhとした場合に、Dh=n×Ph(nは自然数)を満たすように各マスクパターンが形成されている。また、各マスクパターンの縦方向の間隔をDvとし、1つのサブピクセル2R,2G,2Bの縦幅をPvとした場合に、Dv≠n×Pv(nは自然数)を満たすように各マスクパターンが形成されている。
【0023】
図4は立体画像表示装置1の表示面の一部を概略的に示す平面図である。図4では、簡略化のため、マスク部3については開口部30のみを示す。図4に示す立体画像表示装置1では、マスク部3の1つのマスクパターンに含まれる3つの開口部30のそれぞれに対向する位置の各サブピクセル2R,2G,2Bによって1つの平面画像表示用ピクセルが構成される。また、図4に示す立体画像表示装置1では、ハッチングを付した領域21に対向する各サブピクセル2R,2G,2Bによって1つの立体画像表示用ピクセルが構成される。具体的には、領域21は、1つのマスクパターンに含まれる各開口部30について、各開口部30よりも縦方向の上側及び下側に長い領域とする。図4では、2つの領域21のみを示す。このように、本実施形態1では、1つの立体画像表示用ピクセル21に含まれるサブピクセル2R,2G,2B(平面画像表示用ピクセル)が、横方向に3つ存在するので、立体画像表示装置1の横方向の視差数は3個であり、縦方向の視差数は1個である。
【0024】
上述のように斜め方向に配列された3つのサブピクセル2R,2G,2Bによって1つの立体画像表示用ピクセル21を構成する代わりに、横方向に配列された3つのサブピクセル2R,2G,2Bによって1つの立体画像表示用ピクセルを構成することが考えられる。この場合、横方向の視差数をA個増加させるためには、1つの立体画像表示用ピクセル21に含まれるサブピクセル2R,2G,2Bを横方向に3×A個増加させる必要がある。これに対して、図4に示す立体画像表示装置1では、横方向の視差数をA個増加させるために、1つの立体画像表示用ピクセル21に含まれるサブピクセル2R,2G,2Bをそれぞれ横方向にA個ずつ増加させればよい。従って、本実施形態1では、横方向の視差数を増加させる場合であっても、視差数の増加に伴う解像度の低下を抑制することができる。
【0025】
しかしながら、このような構成であっても、横方向の視差数を増加させるほど、1つの立体画像表示用ピクセル21の横幅は増加する。従って、例えば、視差数を8個や16個などとした場合、立体画像表示用ピクセル21の横幅の増加に伴って、マスク部3において横方向に形成される開口部30の数が減少する。マスク部3の板体に対する開口部30の開口率が低下した場合、表示画像における輝度が低下する。従って、本実施形態1では、各マスクパターンの横方向の間隔DhをDh=n×Phとし、各マスクパターンの縦方向の間隔DvをDv≠n×Pvとすることにより、横方向ではなく縦方向の開口部30の数を増加させることにより、解像度の低下を抑制しつつ輝度の低下も抑制する。
【0026】
本実施形態1のマスク部3は、各マスクパターンの横方向の間隔Dhが、Dh=n×Ph(nは自然数)を満たし、各マスクパターンの縦方向の間隔Dvが、Dv≠n×Pv(nは自然数)を満たすように形成されている。この構成のほかに、各マスクパターンの横方向の間隔Dhが、Dh≠n×3Ph(nは自然数)を満たし、各マスクパターンの縦方向の間隔Dvが、Dv=n×3Pv(nは自然数)を満たすようにマスク部を形成することが考えられる。なお、3Phは、横方向に連続するサブピクセル2R,2G,2B3つ分の横幅を示し、3Pvは、縦方向に連続するサブピクセル2R(又は2G,2B)3つ分の縦幅を示す。このようにマスク部を構成した場合の立体画像表示装置と、本実施形態1の立体画像表示装置1とを比較する。
【0027】
図5は立体画像表示装置による表示色パターンを示す平面図である。図5の上側には、各マスクパターンの横方向の間隔Dhが、Dh≠n×3Phを満たし、縦方向の間隔Dvが、Dv=n×3Pvを満たすマスク部を備えた立体画像表示装置による表示色パターンを示す。また、図5の下側には、本実施形態1の立体画像表示装置1による表示色パターンを示す。図5には、立体画像表示装置の全てのサブピクセル2R,2G,2Bをオン状態として一眼で見た場合に観察できる表示色パターンの例を示し、R,G,Bはそれぞれ赤色、緑色、青色を示す。
【0028】
図5の上側の表示色パターンが示すように、Dh≠n×3Ph及びDv=n×3Pvを満たすマスク部を備えた立体画像表示装置では、マスク部の開口部を通して視認できるサブピクセル2R,2G,2Bは、右上側から左下側へ配列する赤色のサブピクセル群22R、緑色のサブピクセル群22G及び青色のサブピクセル群22Bを形成する。このようなサブピクセル群22R,22G,22Bでは、同色のサブピクセル2R,2G,2Bが連続して配置されるので、モアレとして認識され易い。
一方、図5の下側の表示色パターンが示すように、本実施形態1の立体画像表示装置1では、同色のサブピクセル2R,2G,2Bが連続して配置されないので、モアレの発生を抑制できる。
【0029】
よって、本実施形態1では、横方向の視差数の増加に伴う解像度及び輝度の低下を抑制できると共に、モアレの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態1では、横方向の視差数を3個としたが、横方向の視差数は2個以上であればよく、縦方向の視差数は1個以上であればよい。
【0030】
(実施形態2)
以下に、実施形態2に係る立体画像表示装置について説明する。上述の実施形態1のマスク部3では、1つの立体画像表示用ピクセル21を構成するために、斜め方向に連なる3つの開口部30が設けられている。これに対して、本実施形態2では、1つの立体画像表示用ピクセル21を構成するために、斜め方向に長い形状(平行四辺形)を有した開口部31が設けられたマスク部3を用いる。その他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0031】
図6は実施形態2の立体画像表示装置1の表示面の一部を概略的に示す平面図である。図6では、簡略化のため、マスク部3については開口部31のみを示す。図6に示す立体画像表示装置1では、マスク部3の1つの開口部31に対向する位置の3つのサブピクセル2R,2G,2Bによって1つの平面画像表示用ピクセルが構成される。なお、開口部31は、1つの平面画像表示用ピクセルを構成する3つのサブピクセル2R,2G,2Bと完全には同じ形状ではない。また、本実施形態2の立体画像表示装置1における立体画像表示用ピクセル21は、上述の実施形態1における立体画像表示用ピクセル21と同じ領域によって構成される。本実施形態2の立体画像表示装置1では、上述の実施形態1の立体画像表示装置1と比較して、マスク部3の開口部の形状が異なる分、開口部を通して観察できるピクセルの形状が相異する。しかし、観察距離又は開口部の大きさ等を考慮すると、その差は誤差範囲内に留まるので、本実施形態2でも、上述の実施形態1と同様に、立体画像表示装置1の横方向の視差数は3個であり、縦方向の視差数は1個である。
【0032】
本実施形態2のマスク部3においても、各開口部31の横方向の間隔Dhが、Dh=n×Ph(nは自然数)を満たし、各開口部31の縦方向の間隔Dvが、Dv≠n×Pv(nは自然数)を満たす。なお、Phは1つのサブピクセル2R,2G,2Bの横幅を示し、Pvは1つのサブピクセル2R,2G,2Bの横幅を示す。よって、本実施形態2においても、横方向の視差数の増加に伴う解像度及び輝度の低下を抑制できると共に、モアレの発生を抑制することができる。
また、本実施形態2でも、横方向の視差数を3個としたが、横方向の視差数は2個以上であればよく、縦方向の視差数は1個以上であればよい。
【0033】
本実施形態1,2の立体画像表示装置1は、同色のサブピクセル2R,2G,2Bが連続して配置されるサブピクセル群22R,22G,22Bの発生を抑制することによってモアレの発生を抑制できる構成である。このような構成は、液晶表示装置等の平面画像表示装置に一般的に設けられているブラックマトリクスと、マスク部の各開口部との相対位置に起因するモアレの発生を抑制する構成においても有用である。
【0034】
本実施形態1,2の立体画像表示装置1は、平面画像表示部2の前面側にマスク部3を配置した構造を有する。本実施形態1,2において、平面画像表示部2として透過型の液晶表示装置のように光シャッタとしての機能を有するものを使用する場合、立体画像表示装置1は、上述した構造のほかに、平面画像表示部2と光源との間にマスク部3を配置した構造を採用できる。また、平面画像表示部2として自発光型の画像表示装置を使用する場合、立体画像表示装置1は、平面画像表示部2の前面側にマスク部3を配置した構造を採用できる。
【0035】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0036】
(実施例1)
本実施例1では、上述の実施形態1で示した立体画像表示装置1を作製した。なお、立体画像表示装置1において、横方向の視差数は3個であり、縦方向の視差数は1個である。また、平面画像表示部2として液晶表示装置(ピクセル数=1920×1080)を使用し、平面画像表示部2の背面側にバックライトを配置した。この液晶表示装置2は、赤色、緑色、青色の縦長状の着色層を横方向に繰り返し配列させて構成されたカラーフィルタ層を備える。
【0037】
液晶表示装置2におけるサブピクセル2R,2G,2Bのそれぞれは、横方向の幅(横幅)Phを230μmとし、縦方向の幅(縦幅)Pvを690μmとした。また、同じ表示色のサブピクセル2R(又は2G,2B)間の横方向の間隔(ピッチ)は690μm、即ち、3×Phとした。
【0038】
マスク部3は、ガラス板上にクロム膜と酸化クロム膜とを順次成膜し、これらをパターニングすることにより作製した。なお、クロム膜及び酸化クロム膜を除去した部分が開口部30となり、開口部30のそれぞれは、サブピクセル2R,2G,2Bと同様に、横幅を230μmとし、縦幅を690μmとした。また、3つの開口部30によって構成されるマスクパターン間の横方向の間隔Dhを690μm、即ち、Dh=3×Phとし、縦方向の間隔Dvを2415μm、即ち、Dv=3.5×Pv(Dv≠n×Pv,n:自然数)とした。
【0039】
このように平面画像表示部2及びマスク部3を作製することにより、立体画像表示用ピクセル21の縦方向の配列数が308(1080÷3.5)個となり、横方向の配列数が640(1920÷3)個となる。
上述の構造で立体画像表示装置1を作製することにより、観察者が両眼を結ぶ線を横方向に対してほぼ平行にした状態で、表示された立体画像を観察した場合に、モアレが現れることなく、良好な立体画像を表示できるという効果が得られる。
【0040】
(比較例1)
上述の実施例1に対する比較例1として、図5の上側に示した表示色パターンでの表示を行なう立体画像表示装置を作製した。本比較例1では、マスク部に形成されるマスクパターン間の横方向の間隔Dhを920μm、即ち、Dh=4×Phとし、縦方向の間隔Dvを2070μm、即ち、Dv=3×Pvとした。なお、本比較例1の立体画像表示装置は、マスク部におけるマスクパターンの形成位置が異なり、それに応じて立体画像表示用ピクセルの配置位置が異なる以外は実施例1の立体画像表示装置1の構成と同様の構成を有する。
【0041】
このような構造の比較例1の立体画像表示装置では、立体画像表示用ピクセルの縦方向の配列数が360(1080÷3)個となり、横方向の配列数が480(1920÷4)個となる。よって、上述の実施例1の立体画像表示装置1は、比較例1の立体画像表示装置よりも高解像度を実現できる。また、上述の実施形態1の立体画像表示装置1が、比較例1の立体画像表示装置と比較して、立体画像表示用ピクセルの数が多いので、マスク部3における開口率が高くなり、高輝度の立体画像の表示が可能となる。
また、上述したように作製した比較例1の立体画像表示装置では、観察者が両眼を結ぶ線を横方向に対してほぼ平行にした状態で、表示された立体画像を観察した場合に、モアレが現れた。
【0042】
(比較例2)
上述の実施例1に対する比較例2として、マスク部に形成されるマスクパターン間の横方向の間隔Dhを805μm、即ち、Dh=3.5×Phとし、縦方向の間隔Dvを2070μm、即ち、Dv=3×Pvとした。なお、本比較例2の立体画像表示装置は、マスク部におけるマスクパターンの形成位置が異なり、それに応じて立体画像表示用ピクセルの配置位置が異なる以外は実施例1の立体画像表示装置1の構成と同様の構成を有する。
【0043】
上述したように作製した比較例2の立体画像表示装置では、観察者が両眼を結ぶ線を横方向に対してほぼ平行にした状態で、表示された立体画像を観察した場合に、モアレが現れた。
【0044】
(実施例2)
本実施例2では、上述の実施形態2で示した立体画像表示装置1を作製した。なお、立体画像表示装置1において、横方向の視差数は3個であり、縦方向の視差数は1個である。また、平面画像表示部2として、実施例1で使用した液晶表示装置(ピクセル数=1920×1080)を使用し、平面画像表示部2の背面側にバックライトを配置した。
【0045】
マスク部3は、実施例1のマスク部3と同様の方法により作製した。実施例2のマスク部3では、開口部31は、横幅を230μmとし、縦方向の高さを2070(3×690)μmとした。また、開口部31(マスクパターン)間の横方向の間隔Dhを690μm、即ち、Dh=3×Phとし、縦方向の間隔Dvを2415μm、即ち、Dv=3.5×Pv(Dv≠n×Pv,n:自然数)とした。
【0046】
このように平面画像表示部2及びマスク部3を作製することにより、立体画像表示用ピクセル21の縦方向の配列数が308(1080÷3.5)個となり、横方向の配列数が640(1920÷3)個となる。
上述の構造で立体画像表示装置1を作製することにより、観察者が両眼を結ぶ線を横方向に対してほぼ平行にした状態で、表示された立体画像を観察した場合に、モアレが現れることなく、良好な立体画像を表示できるという効果が得られる。
【0047】
(比較例3)
上述の実施例2に対する比較例3として、図7に示した表示色パターンでの表示を行なう立体画像表示装置を作製した。図7は比較例3の立体画像表示装置による表示色パターンを示す平面図である。本比較例3の立体画像表示装置1では、横方向の視差数は3個であり、縦方向の視差数は1個である。本比較例3では、マスク部に形成される開口部(マスクパターン)間の横方向の間隔Dhを920μm、即ち、Dh=4×Phとし、縦方向の間隔Dvを2070μm、即ち、Dv=3×Pvとした。なお、本比較例3の立体画像表示装置は、マスク部におけるマスクパターンの形成位置が異なり、それに応じて立体画像表示用ピクセルの配置位置が異なる以外は実施例2の立体画像表示装置1の構成と同様の構成を有する。
【0048】
このような構造の比較例3の立体画像表示装置では、立体画像表示用ピクセルの縦方向の配列数が360(1080÷3)個となり、横方向の配列数が480(1920÷4)個となる。よって、上述の実施例2の立体画像表示装置1は、比較例3の立体画像表示装置よりも高解像度を実現できる。
また、上述したように作製した比較例3の立体画像表示装置では、観察者が両眼を結ぶ線を横方向に対してほぼ平行にした状態で、表示された立体画像を観察した場合に、モアレが現れた。
【符号の説明】
【0049】
1 立体画像表示装置
2 平面画像表示部(画像表示部)
3 マスク部
30,31 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形を有する複数の画素が平面上に配置された画像表示部と、
前記平面上で前記画素の配置方向と交差する方向に連なる3つの画素に対向する3つの開口部を1つのマスクパターンとして複数のマスクパターンが形成されたマスク部とを備え、
前記画像表示部は、同じ表示色の画素が一方向に並べて配置されており、異なる表示色の画素が他方向に所定の順序で繰り返して配置されており、
前記マスクパターンは、
Dv≠n×Pv
(但し、n:自然数、Pv:画素の前記一方向における長さ、Dv:前記一方向における前記マスクパターン間の間隔)
を満たすように形成されていることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
矩形を有する複数の画素が平面上に配置された画像表示部と、
前記平面上で前記画素の配置方向と交差する方向に連なる3つの画素に対向する1つの開口部をマスクパターンとして複数のマスクパターンが形成されたマスク部とを備え、
前記画像表示部は、同じ表示色の画素が一方向に並べて配置されており、異なる表示色の画素が他方向に所定の順序で繰り返して配置されており、
前記マスクパターンは、
Dv≠n×Pv
(但し、n:自然数、Pv:画素の前記一方向における長さ、Dv:前記一方向における前記マスクパターン間の間隔)
を満たすように形成されていることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項3】
前記マスクパターンは、
Dh=n×Ph
(但し、n:自然数、Ph:画素の前記他方向における長さ、Dh:前記他方向における前記マスクパターン間の間隔)
を満たすように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114220(P2013−114220A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262710(P2011−262710)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】