説明

立体表示装置並びに信号処理装置

【課題】光学素子と画素の関係に基づいて決定される最大視点数以下で、画面に表示する視差画像の数を変更する。
【解決手段】固有の最大視点数を持つ立体表示装置において、複数の視点の画素に同時に同じ画像を出力する、又は、寄与に応じて複数の視点画像を混合させて表示することにより、最大視点数以下の視点数にて視差画像の表示を行なうようになっている。このように表示を行なうことによって、運動視差に優れる多視点表示と、ゴースト及びエイリアシングに対して有利な少視点表示の間の任意の視点で、視差画像を表示することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者に立体視できる画像を提示する立体表示装置並びに信号処理装置に係り、特に、レンチキュラー・レンズやパララックス・バリアなどの光学素子を表示画面に相対して設置して、多視点の画像を表示する立体表示装置並びに信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
左右の眼に視差のある画像を表示させることで、観察者に立体視できる画像を提示することができる。立体視画像技術は、テレビ放送、映画、遠隔通信、遠隔医療など、さまざまな分野において適用が期待されている。
【0003】
例えば、LCD(Liquid Crystal display)やCRT(Cathod Ray Tube)などの表示画面上に、レンチキュラー・レンズなどのレンズ・アレイ、あるいは、パララックス・バリアと呼ばれる開口を設けた遮光板などを設置することで、特定位置から見える画素を制御することができる。レンチキュラー・レンズ、パララックス・バリアともに、略直線状の構造体がアレイ状に連続的に配列されている点で類似する。以下では、レンチキュラー・レンズとパララックス・バリアを併せて「光学素子」と呼ぶことにする。画素毎に各視点の画像を表示させると、このような光学素子によって各視点画像が分離され、左右の眼には異なる画像が表示される。視点間隔を両眼間隔より狭くすれば、観察者は立体感を得ることができる。また、画面の表示する視点数を増やすと、頭の動きに応じて見える画像が切り替わり、運動視差を得ることができる。
【0004】
上記の立体表示装置で表示できる視点数は、表示画面の解像度と、レンチキュラー・レンズやパララックス・バリアなどの光学素子との組み合わせなどによって決まる。また、視差画像は、対応する視点位置に設置されたカメラの撮像画像をソースとする。ここで、4視点、9視点、24視点…といった具合に視点数が増すと、すべての視差画像を撮像するのはコストがかかるため、視点補間により視差画像を生成する方法がとられる。したがって、視点数を増やすと、画像の滑らかさが得られる反面、視点補間に伴う映像遅延を生じ易いという問題がある。したがって、視差画像の数を適切に制御する必要がある。
【0005】
また、上記の立体表示装置では、表示画面の各画素を各視点画像の表示に割り当てることから、各視差画像の解像度は、表示画面本来の解像度の視点数分の1に低下する。例えば、画素が格子状に配置されている表示画面の場合、水平方向と垂直方向の解像度劣化を均等にすることと、画素間のブラック・マトリックスが周期的に投影されることによるモアレの発生を防止することを目的として、光学素子の延伸方向を表示画面の垂直方向に対し少し傾けて設置する立体表示装置が一般的である(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0006】
また、光学素子を表示画面に設置して視差画像を提示することを前提として、特殊な画素設計をした立体表示装置も存在する。例えば、画素を正方格子形状ではなく、台形で斜め方向に配置して、光学素子の延伸方向を垂直に設置した光学素子についても提案されている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0007】
いずれの立体表示装置も、表示可能な最大視点数は、光学素子と画素の関係で決定されており、物理的に一意に決まる。特殊画素配列をした立体表示装置においては、最大視点数は設計次第であるため一概には言えないが、例えば、上記の特許文献2に記載された立体表示装置の場合、最小画素単位の水平、垂直長さをそれぞれPx、Pyとし、光学素子の幅をLとすると、可能な最大視点数Nmaxは下式(1)のように表わされる。
【0008】
【数1】

【0009】
一方、画素の配列に対して光学素子を傾けて設置する場合の最大視点数Nmaxは、下式(2)のように表わされる。
【0010】
【数2】

【0011】
但し、上式(2)において、θは光学素子の延伸方向と表示画面の垂直方向のなす角を表す。また、記号《》は、整数を乗算して得られる最小の整数を表す。例えば、《1.4》は、5を乗算して最小の整数7から得られることから、《1.4》=7である。
【0012】
多視差画像を表示する立体表示装置は、上式(1)又は(2)から得られる最大視点数Nmax以下の事前に設定した視点数を固定値として扱っており、一旦設定した後に視点数を変更することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6064424号公報
【特許文献2】特許第4402578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、レンチキュラー・レンズやパララックス・バリアなどの光学素子を表示画面に相対して設置して、多視点の画像を好適に表示することができる、優れた立体表示装置並びに信号処理装置を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、光学素子と画素の関係に基づいて決定される最大視点数以下で、画面に表示する視差画像の数を変更することができる、優れた立体表示装置並びに信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
複数の画素が配列され、2以上の視点数の視差画像を表示する表示部と、
前記の各視差画像をそれぞれ異なる方向に出射するように、前記表示部の画面に相対して設置された光学素子と、
前記光学素子と前記画素の関係に基づいて決定される最大視点数Nmax以内で視点数Nを変更した視差画像を処理する映像信号処理部と、
視差画像を表示出力するよう、前記表示画面の駆動を制御する駆動制御部と、
を具備する立体表示装置。
である。
【0017】
本願の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の立体表示装置において、光学素子は、略直線状の構造体がアレイ状に連続的に配列されて構成され、延伸方向が前記表示画面の垂直方向に対して傾斜角θだけ傾けて配設されている。そして、最大視点数Nmaxは、光学素子の1構造体の水平方向の長さL、画素を構成する最小の色単位の水平、垂直方向それぞれの長さPx、Pyに基づいて決定される。
【0018】
本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の立体表示装置の映像信号処理部は、表示画面の各画素に視点数Nにおける視点番号jを割り振る視点番号割り振り部と、各視差画像の該当する視点番号の画素を配列してN視点の視差画像を合成する画像合成部を備えている。そして、記駆動制御部は、合成画像を表示出力するよう、前記表示画面の駆動を制御するように構成されている。
【0019】
本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の立体表示装置の視点番号割り振り部は、前記最大視点数Nmaxにおける元の視点番号が異なる複数の画素に対して視点数Nにおける新しい視点番号jを割り振る操作を、元の視点番号に従って行ない、視点数をNmaxからNへ変更する(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの整数)、ように構成されている。
【0020】
本願の請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の立体表示装置の視点番号割り振り部は、前記最大視点数Nmaxを、減少させた視点数Nで等分して、視点数Nにおける新しい視点番号jを生成し(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの数)、元の視点番号iの順に従って各画素に新しい視点番号jを割り振り直して、視点数をNmaxからNへ変更するように構成されている。
【0021】
本願の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の立体表示装置の映像信号処理部は、N視点の視差画像を入力し、また、視点数Nにおける新しい視点番号jがk<j<k+1となるときに(但し、kは1〜Nの整数、Nは3以上Nmax未満の整数、Nmaxは4以上の整数)、視点番号jの視差画像を、入力された前記N視点の視差画像の視点番号kの視差画像と視点番号(k+1)の視差画像を寄与に応じて混合して補間する画像補間部をさらに備えている。そして、画像補間部で補間された視差画像を適宜用いて、N視点の視差画像を合成するように構成されている。
【0022】
本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項5に記載の立体表示装置は、入力される視差画像の視点数が最大視点数Nmax以下のときに、前記映像信号処理部が視点数の補間を行なわずに直接出力するように構成されている。
【0023】
本願の請求項8に記載の発明によれば、請求項1に記載の立体表示装置の映像信号処理部は、前記表示部の表示画面の少なくとも一部において、入力される視差画像の視差量に応じて視点数を変更するように構成されている。
【0024】
本願の請求項9に記載の発明によれば、請求項1に記載の立体表示装置は、視差画像の視聴者が視点数を設定するユーザー設定部をさらに備えている。そして、映像信号処理部は、前記ユーザー設定部を介して設定された視点数へ、視差画像の視点数を変更するように構成されている。
【0025】
また、本願の請求項10に記載の発明は、
最大視点数Nmaxの表示装置の表示画面の各画素に、前記最大視点数Nmax以内となる視点数Nにおける視点番号を割り振る視点番号割り振り部と、
各視差画像の該当する視点番号の画素を配列してN視点の視差画像を合成する画像合成部と、
を具備する信号処理装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光学素子と画素の関係に基づいて決定される最大視点数以下で、画面に表示する視差画像の数を変更することができる、優れた立体表示装置並びに信号処理装置を提供することができる。
【0027】
本発明によれば、固有の最大視点数を持つ立体表示装置において、複数の視点の画素に同時に同じ画像を出力することによって、運動視差に優れる多視点表示と、ゴースト及びエイリアシングに対して有利な少視点表示の間の任意の視点で、視差画像を表示することが可能である。
【0028】
また、本発明によれば、固有の最大視点数を持つ立体表示装置において、寄与に応じて複数の視点画像を混合させて表示することにより、最大視点数以下の視点数にて視差画像の表示を行なうことによって、運動視差に優れる多視点表示と、ゴースト及びエイリアシングに対して有利な少視点表示の間の任意の視点で、視差画像を表示することが可能である。
【0029】
また、本発明に係る立体表示装置並びに信号処理装置によれば、入力される視差画像が最大視点数以下の場合に、視点数の補間処理などを行なわずに、直接出力することが可能であり、回路コストの低減と映像遅延の減少を同時に実現することができる。
【0030】
また、本発明に係る立体表示装置並びに信号処理装置によれば、最小視点数の2倍の視点数で視差画像の表示を行ない、且つ、視点番号が奇数又は偶数のいずれか一方の視点の画素を黒色表示とすることによって、ゴーストの少ない視差画像を表示させることができる。
【0031】
また、本発明に係る立体表示装置並びに信号処理装置によれば、物理的手段によらず信号処理のみによって視点数の変更を実現することができるので、表示画面内での制御を容易に行なうことができる。
【0032】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、RGB縦ストライプの画素配列の表面に、光学素子の1つであるレンチキュラー・レンズを設置した状態を示した図である。
【図2】図2は、図1に示した光学素子と画素配列の関係からなる表示画面において、各視点からの配光分布を例示した図である。
【図3】図3は、最大視点数24の立体表示装置を8視点としての利用した場合の各視点からの配光分布を示した図である。
【図4】図4は、図1に示した立体表示装置において、最大視点数24の視点状態で視点番号1の画素のみを白表示し、その他の視点番号の画素を黒表示とした場合の画素状態を示した図である。
【図5】図5は、図1に示した立体表示装置において、8視点状態で視点番号1の画素のみを白表示し、その他の視点番号の画素を黒表示とした場合の画素状態を示した図である。
【図6】図6は、最大視点数24の立体表示装置の視点数を16に設定し、視点番号が奇数又は偶数のいずれか一方の視点の画素を黒色に表示させたときの各視点からの配光分布を例示した図である。
【図7】図7は、多視点の視差画像を表示する立体表示装置100の構成例を示した図である。
【図8】図8は、異なる複数の画素に対して新しい1つの視点番号を割り振って視点数を変更する方法を実現する映像信号処理部120の機能的構成例を示した図である。
【図9】図9は、最大視点数を新しい視点数で等分して、各画素に新たに視差番号を割り振って視点数を変更する方法を実現する映像信号処理部120の機能的構成例を示した図である。
【図10】図10は、視点数設定部401で設定された視点数Nに変更した視差画像を生成する映像信号処理部120の構成例を示した図である。
【図11】図11は、視点数設定部401で設定された視点数Nに変更した視差画像を生成する映像信号処理部120の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
図7には、多視点の視差画像を表示する立体表示装置100の構成例を示している。
【0036】
立体表示装置100は、画像表示部110と、映像信号処理部120と、タイミング制御部140と、映像メモリー150を備えている。また、画像表示部110は、表示パネル112と、ゲート・ドライバー113と、データ・ドライバー114を備えている。
【0037】
映像信号処理部120は、映像信号処理部120の外部からの映像信号の伝送を受けると、画像表示部110における多視点の視差画像の表示に適したものとなるように各種信号処理を実行して出力する。具体的には、映像信号処理部120は、多視点の視差画像を入力とし、視点番号に従って各視差画像から切り出した画素同士を合成して、1フレーム内に各視点の画素の情報を含んだ合成視差画像を生成する。生成した合成視差画像は、映像メモリー150に供給される。本実施形態では、合成視差画像に含まれる視点数を変更することができるが、詳細については後述に譲る。なお、ここで言う、映像信号の伝送元となる「外部」には、ディジタル放送の受信機や、ブルーレイ・ディスク・プレイヤーなどのコンテンツ再生装置を挙げることができる。
【0038】
また、映像信号処理部120は、合成視差画像の映像信号の切り替えのタイミングに同期して、データ・ドライバー113及びゲート・ドライバー114が動作するように、所定の制御信号をタイミング制御部140へ供給する。
【0039】
ゲート・ドライバー113は、順次駆動するための信号を生成する駆動回路であり、タイミング制御部140から伝送された信号に応じて、表示パネル112内の各画素に接続されたゲート・バス・ラインへ、駆動電圧を出力する。また、データ・ドライバー114は、映像信号に基づく駆動電圧を出力する駆動回路であり、タイミング制御部140から伝送された信号並びに映像メモリー150から読み出された映像信号に基づいてデータ線へ印加する信号を生成して出力する。
【0040】
表示パネル112は、例えば格子状に配列された複数の画素を有するが、本発明の要旨は特定の画素配列には限定されない。液晶表示パネルの場合、ガラスなどの透明板の間に所定の配向状態を有する液晶分子が封入されており、外部からの信号の印加に応じて画像を表示する。上述したように、表示パネル112への信号の印加はゲート・ドライバー113及びデータ・ドライバー114によって実行される。
【0041】
表示パネル112には、レンチキュラー・レンズやパララックス・バリアなどの、略直線状の構造体がアレイ状に連続的に配列されて構成される光学素子160が相対して設置されている。光学素子160は、表示パネル112から表示出力される各視差画像をそれぞれ異なる方向に出射するようになっている。光学素子160は、その延伸方向が表示パネル112の画素配列の垂直方向に対して傾斜角θだけ傾けて配設されている。表示パネル112で表示出力される視差画像の最大視点数Nmaxは、上式(2)により表わされる。
【0042】
図1には、RGB縦ストライプの画素配列の表面に、光学素子の1つであるレンチキュラー・レンズを設置した状態を示している。同図に示す例では、レンチキュラー・レンズは、その延伸方向が画素配列の方向に対してθだけ傾けて設置されている。また、同図は、24視点の視差画像を表示している状態を例示しており、各画素の濃淡で色を表し、各画素の中に記されている1〜24の番号は、画素の割り振られた視差番号を表している。
【0043】
図1に示す例では、最小画素単位の水平、垂直方向のそれぞれ長さPx、Py、光学素子の幅Lの各パラメーターは、下式(3)に示す通りとなる。
【0044】
【数3】

【0045】
したがって、この場合の最大視点数Nmaxは、上式(2)を用いて下式(4)のように算出される。すなわち、図1に示した光学素子と画素の関係によれば、最大24の視差画像を表示することが可能である。
【0046】
【数4】

【0047】
図2には、図1に示した光学素子と画素配列の関係からなる立体表示装置において、各視点からの配光分布を例示している。同図は、24視点の各1視点のみに白画像を表示し、他の視点を黒とした場合の表示画面からの光の出射方向をプロットしたものである。同図より、この立体表示装置は、各視差画像がそれぞれ別の方向に出射していることが分かる。
【0048】
このような立体表示装置を、例えば最大視点数24以下である8視点の立体表示装置として利用する場合、1つの方法として、3視点分に同一の情報を表示する方法が挙げられる。すなわち、24視点での視点番号1〜3に8視点での視点番号1の画像を表示し、24視点での視点番号4〜6に8視点での視点番号2の画像を表示し、…というように、元の視点番号が異なる複数の画素に対して新しい1つの視点番号を割り振るという操作を、元の視点番号の順に従って行ない、最大視点数24よりも小さい新しい視点数8における新しい視点番号を各画素に再割り当てする。そして、新しい視点番号が同じとなる複数の画素からの画像を表示することにより、同じ立体表示装置を8視点立体表示装置として機能させる。
【0049】
図8には、上記の視点数の変更方法を実現する映像信号処理部120の機能的構成例を示している。新しい視点数をNとすると、視点番号割り振り部201は、表示パネル112の各画素に対し、視点数Nにおける新しい視点番号jを割り振る。ここで、視点番号割り振り部201は、最大視点数Nmaxにおける元の視点番号が異なる複数の画素に対して視点数Nにおける新しい視点番号jを割り振る操作を、元の視点番号に従って行ない、視点数をNmaxからNへ変更する(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの整数)。次いで、画像合成部202は、N視点の視差画像が入力されると、各視差画像の該当する視点番号の画素を配列して、1フレーム内に各視点の画素の情報を含んだ合成視差画像を生成する。
【0050】
図3には、最大視点数24の立体表示装置を上記のように8視点としての利用した場合の各視点からの配光分布を示している。同図から、視点数を最大視点数よりも小さくしたときに、各視差画像がそれぞれ別の方向に出射していることが分かる。すなわち、最大視点数24の立体表示装置は、3視点分に同一の情報を表示する方法によって、8視点の立体表示装置としても機能することが分かる。
【0051】
また、最大視点数24の立体表示装置を、最大視点数24以下である8視点の立体表示装置として利用する他の方法として、24視点を8等分して、各画素に新たに視差番号を割り振る方法が挙げられる。すなわち、24視点立体表示装置として利用する場合の視点番号1、2、3、…、24を、新たな視点数8で等分して、新しい視点番号1、1.33、2.66、3、…、7.66、8を生成し、元の視点番号の順に従って各画素に新しい視点番号を割り振り直す。この場合、例えば、新しい視点番号1.3の画像を、8視点画像の視点番号1と視点番号2の各画像を、寄与に応じて適切に混合して表示させるようにしてもよい。
【0052】
例えば、8視点の視差画像V1、V2、…、V8が入力されたとする。新しい視点番号1.33の視差画像V1.33に対しては、隣接する視点1及び視点2の各視差画像V1、V2のみが寄与し、且つ、寄与率を線形的に評価する場合には、視点番号1.33の視差画像V1.33は、下式(5)に表わすように視差画像V1とV2を混合して生成される。
【0053】
【数5】

【0054】
また、新しい視点番号2.66の視差画像V2.66についても、同様に、隣接する視点2及び視点3の各視差画像V2、V3のみが寄与し、且つ、寄与率を線形的に評価すると、視点番号2.66の視差画像V2.66は、下式(6)のように表わされる。
【0055】
【数6】

【0056】
勿論、新しい視点番号の視差画像に、隣接する視点以外の視差画像が寄与するという評価方法であってもよい。また、線形補間以外に、例えば補間曲線を用いた補間方法を適用することもできる。
【0057】
図9には、最大視点数を新しい視点数で等分して、各画素に新たに視差番号を割り振って視点数の変更方法を実現する映像信号処理部120の機能的構成例を示している。新しい視点数をNとすると、視点番号割り振り部301は、表示パネル112の各画素に対し、視点数Nにおける新しい視点番号jを割り振る。ここで、視点番号割り振り部301は、最大視点数Nmaxを、減少させた視点数Nで等分して、視点数Nにおける新しい視点番号jを生成し(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの数)、元の視点番号iに従って各画素に新しい視点番号jを割り振り直して、視点数をNmaxからNへ変更する。また、画像補間部302は、視点数Nにおける新しい視点番号jがk<j<k+1となるときに(但し、kは1〜N−1の整数、Nは3以上Nmax未満の整数、Nmaxは4以上の整数)、視点番号jの視差画像を生成する。例えば、画像補間部302は、視点番号jの視差画像を、入力されたN視点の視差画像の視点番号kの視差画像と視点番号(k+1)の視差画像を、寄与に応じて混合して補間画像を生成する。次いで、画像合成部303は、入力画像並びに補間画像の組み合わせからなるN視点の視差画像が入力されると、各視差画像の該当する視点番号の画素を配列して、1フレーム内に各視点の画素の情報を含んだ合成視差画像を生成する。
【0058】
前者の、最大視点数で立体表示装置を用いる場合の元の視点番号が異なる複数の画素に対して新しい1つの視点番号を割り振り、新しい視点番号が同じとなる複数の画素からの画像を表示するという視点数の変更方法によると、最大視点数の約数以外の視点数に変更した立体表示装置とすることは困難である。
【0059】
これに対し、後者の、最大視点数を新しい視点数で等分して、各画素に新たに視差番号を割り振るという視点数の変更方法によれば、最大視点数以下の任意の視点数に変更することが可能である。しかしながら、2つの視差画像を混合させて視差画像を作成する(新たな視点番号に該当する視差画像を補間する)必要があるため、計算コストの増大を招く。
【0060】
図2から、最大視点数24の立体表示装置を最大視点数24のまま利用すると、隣の視点の配光とのオーバーラップが大きく、各視差画像が分離されないことが分かる。言い換えれば、最大視点数24の視差画像を表示する多視点状態では、隣接する視点の画像が同時に見える。このため、隣接視点が視差のない画像であれば問題ないが、視差がある画像を表示した場合には、本来の視点の近傍にゴースト像が見えることになり、像がぼけた印象を観察者に与える。
【0061】
これに対し、最大視点数を新しい視点数で等分して各画素に新たに視差番号を割り振る方法で視点数を変更すると、図3に示したように、隣の視点の配光とのオーバーラップが少なくなり、各視差画像が分離されていることが分かる。視点数を間引くと、オーバーラップが減少することから、画像が鮮明化する。すなわち、最大視点数24の立体表示装置で8視点の視差画像を表示している状態では、観察者には隣の視点の画像があまり見えない。隣の視点と視差がついた場所であっても、24視点の画像を表示する場合と比較して、観察者はゴーストの少ない画像を見ることができる。
【0062】
また、最大視点数24の立体表示装置を最大視点数24のまま利用すると、図2から分かるように、隣接する視点間で視点の角度差が小さい。このため、観察者が頭を左右に動かした場合でも、次々と異なる視差画像が見えることになり、滑らかな運動視差を得ることができる。これに対し、視点数を最大視点数24から8に減少させると、図3に示したように、隣接する視点間での視点の角度差が大きくなる。このため、観察者が頭を左右に動かすと、離散的に視差画像が順次見えることになる。すなわち、視点数を減少させると、観察者が頭を動かしたときには、パタパタと不自然な運動視差となる。
【0063】
図4には、図1に示した立体表示装置において、最大視点数24の視点状態で視点番号1の画素のみを白表示し、その他の視点番号の画素を黒表示とした場合における画素状態を示している。また、図5には、図1に示した立体表示装置において、8視点状態で視点番号1(1.0以上2.0未満)の画素のみを白表示し、その他の視点番号の画素を黒表示とした場合における画素状態を示している。但し、最大視点数を新しい視点数で等分して各画素に新たに視差番号を割り振って視点数を8に減少させた方法とする。
【0064】
図4と図5を比較して分かるように、24視点状態では、視点番号1の画素が8視点状態と比べて疎となっている。このため、24視点ではエイリアシングが発生して、細かな情報を表示することが困難となる。一方、8視点では、1視点画像が比較的密となるので、エイリアシングが起こり難くなっている。
【0065】
以上のように、立体表示装置が最大視点数である24視点の視差画像を表示することは運動視差において優れ、これに対し、視点数を減らして視差画像を表示することでゴーストとエイリアシングが改善することが分かる。
【0066】
運動視差と、ゴースト若しくはエイリアシングのいずれを優先させて表示するかは、視聴者の嗜好や、表示される情報の内容、又は視聴環境などによって左右される。このため、いずれを優先させるか、すなわち視点数を事前に決定することは困難である。そこで、立体表示装置100は、視聴者による指示に基づいて最大視点数Nmax以下の視点数Nを設定し、あるいは表示するコンテンツやその視聴環境に基づいて最大視点数Nmax以下の視点数を自動的に設定して、視点数Nの視差画像を表示するようにすればよい。図10及び図11には、最大視点数Nmaxの視差画像を入力し、視点数設定部401で設定された視点数Nに変更した視差画像を生成する映像信号処理部120の構成例を示している。
【0067】
例えば、動画圧縮規格の1つであるH.264では、複数の視点で撮影された映像を効率的に圧縮するマルチビュー符号化(Multi View Coding:MVC)について規格化している。しかしながら、この種の標準規格において、表示したいコンテンツが個別の裸眼立体表示装置と合致した視点数を有しているとは限らない。すなわち、立体表示装置100に入力される視差画像の視点数と、立体表示装置100において表示可能な最大視点数Nmaxにかい離を生じる可能性がある。
【0068】
例えば、入力される視差画像の視点数を、視点補間により立体表示装置100に最適な視点数まで増減して表示させることができるが、この場合、回路コストの増大を招来する。また、視点補間により映像遅延が生じる場合があり、例えばゲーム機などでは映像遅延は好ましくない。これに対し、本実施形態に係る立体表示装置100によれば、上述したような方法により入力される視差画像の視点数を変更することによって、視点補間を行なわずに、視差画像を直接出力することが可能である。すなわち、回路コストの増大を防ぎ、また、映像遅延を最小にして、視差画像を表示することが可能である。
【0069】
本実施形態に係る立体表示装置100が上述した2つの方法のいずれかにより視差画像の視点数を変更する際、視点数の最小値は、1視点間隔が視聴者の眼間距離となる値に設定されることが望ましい。図3には、3視点分に同一の情報を表示する方法により、最大視点数24の立体表示装置を8視点としての利用した場合の各視点からの配光分布を示した。図示の例では、1視点間隔がおよそ1.2度となっている。この視点間隔は、1.5メートル離れたところにおいて平均的な人の眼間距離65ミリメートルに相当する。したがって、本実施形態に係る立体表示装置であれば、変更可能な視点数の下限を8視点とすることが望ましい。
【0070】
また、本実施形態に係る立体表示装置100において、視点数を下限の視点数8の2倍である16視点に設定して視差画像を表示させる際に、視点番号が奇数又は偶数のいずれか一方の視点の画素のみ本来の画像を表示させ、他方の画素には黒色表示にするようにしてもよい。図6には、この場合の各視点からの配光分布を例示している。
【0071】
各視点の表示される角度を、図6と図3で比較すると、8視点としたときと同じである。これに対し、視点表示の状態を、図6と図3で比較すると、16視点に設定して、視点番号が奇数又は偶数のいずれか一方の視点を黒色表示させた場合の方が、隣接視点とのオーバーラップが減少し、ゴーストの少ない画像を表示することが可能となっていることが分かる。但し、黒色挿入を行なった16視点は、8視点と比べて輝度がおよそ半分となっているものの、1視差画像のみに注目すると、鮮明な画像を得ることができる。
【0072】
なお、上記では、表示パネル112の画面全体において同一の視点数であることを前提として説明してきたが、画面内で視点数が変更する場合であっても、同様に本発明を適用することができる。例えば、画面内で大きな視差がつき、大きく飛び出す映像の場合は、該当部分だけ視点数を増加させることにより、滑らかな運動視差を表現して、より自然な立体映像としてもよい。但し、視点数を増加させすぎると、エイリアシングが生じるので、立体表示装置毎に視差と視点数の関係を形成するべきである、と本発明者らは思料する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0074】
本明細書では、図1に示したようにRGBストライプ構造の画素に対して傾けて光学素子を設置した実施形態について説明してきたが、本発明の要旨は、特定のRGB画素配列や、画素と光学素子との特定の関係にのみ限定されるものではない。図示した以外の特殊な画素配置や特殊な画素構造を持った立体表示装置に対しても、同様に本発明を適用することができる。
【0075】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0076】
100…立体表示装置
110…画像表示部
112…表示パネル
113…ゲート・ドライバー
114…データ・ドライバー
120…映像信号処理部
140…タイミング制御部
150…映像メモリー
160…光学素子 201…視点番号割り振り部
202…画像合成部
301…視点番号割り振り部
302…画像補間部
303…画像合成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列され、2以上の視点数の視差画像を表示する表示部と、
前記の各視差画像をそれぞれ異なる方向に出射するように、前記表示部の画面に相対して設置された光学素子と、
前記光学素子と前記画素の関係に基づいて決定される最大視点数Nmax以内で視点数Nを変更した視差画像を処理する映像信号処理部と、
視差画像を表示出力するよう、前記表示画面の駆動を制御する駆動制御部と、
を具備する立体表示装置。
【請求項2】
前記光学素子は、略直線状の構造体がアレイ状に連続的に配列されて構成され、延伸方向が前記表示画面の垂直方向に対して傾斜角θだけ傾けて配設され、前記最大視点数Nmaxは下式により表わされる、
請求項1に記載の立体表示装置(但し、Lは光学素子の1構造体の水平方向の長さ、Px、Pyは前記画素を構成する最小の色単位の水平、垂直方向それぞれの長さを表し、記号《》は、整数を乗算して得られる最小の整数を表す)。
【数1】

【請求項3】
前記映像信号処理部は、
前記表示画面の各画素に視点数Nにおける視点番号を割り振る視点番号割り振り部と、
各視差画像の該当する視点番号の画素を配列してN視点の視差画像を合成する画像合成部と、
を備え、
前記駆動制御部は、合成画像を表示出力するよう、前記表示画面の駆動を制御する、
請求項2に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記視点番号割り振り部は、前記最大視点数Nmaxにおける元の視点番号が異なる複数の画素に対して視点数Nにおける新しい視点番号jを割り振る操作を、元の視点番号に従って行ない、視点数をNmaxからNへ変更する(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの整数)、
請求項3に記載の立体表示装置。
【請求項5】
前記視点番号割り振り部は、前記最大視点数Nmaxを、減少させた視点数Nで等分して、視点数Nにおける新しい視点番号jを生成し(但し、Nは2以上Nmax未満の整数、jは1〜Nの数)、元の視点番号iの順に従って各画素に新しい視点番号jを割り振り直して、視点数をNmaxからNへ変更する、
請求項3に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記映像信号処理部は、N視点の視差画像を入力し、
視点数Nにおける新しい視点番号jがk<j<k+1となるときに(但し、kは1〜Nの整数、Nは3以上Nmax未満の整数、Nmaxは4以上の整数)、視点番号jの視差画像を、入力された前記N視点の視差画像の視点番号kの視差画像と視点番号(k+1)の視差画像を混合して補間する画像補間部をさらに備え、
前記画像補間部で補間された視差画像を適宜用いて、N視点の視差画像を合成する、
請求項5に記載の立体表示装置。
【請求項7】
入力される視差画像の視点数が最大視点数Nmax以下のときに、前記映像信号処理部は、視点数の補間を行なわずに直接出力する、
請求項5に記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記映像信号処理部は、前記表示部の表示画面の少なくとも一部において、入力される視差画像の視差量に応じて視点数を変更する、
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項9】
視差画像の視聴者が視点数を設定するユーザー設定部をさらに備え、
前記映像信号処理部は、前記ユーザー設定部を介して設定された視点数へ、視差画像の視点数を変更する、
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項10】
最大視点数Nmaxの表示装置の表示画面の各画素に、前記最大視点数Nmax以内となる視点数Nにおける視点番号を割り振る視点番号割り振り部と、
各視差画像の該当する視点番号の画素を配列してN視点の視差画像を合成する画像合成部と、
を具備する信号処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−203050(P2012−203050A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64998(P2011−64998)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】