説明

竪型プレスの鍛造装置

【課題】竪型プレスの上下方向押圧力を水平方向押圧力に変換する際のエネルギー効率を高く維持しつつ必要な鍛造ストロークや鍛造圧を確保する。
【解決手段】垂直姿勢に配設されて竪型プレスの圧下力を受けるラムシリンダ31と、水平姿勢に配設されて作動液流路35の他端に連通し、作動液の液圧を受けてワークWを鍛造するラムシリンダ32とを備える。ハウジング1内に、ラムシリンダ31を垂直姿勢で上下動可能に保持するシリンダ室34と、ラムシリンダ32を水平姿勢で水平動可能に保持するシリンダ室33と、ラムシリンダ32との間でワークWの両端を挟持するワーク支持部12と、ワークWを挿置する鍛造金型2を収納する収納空間13とを設けるとともに、作動液流路35をシリンダ室33,34の間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は竪型プレスの鍛造装置に関し、特に長尺ワークの端部据込み鍛造を竪型プレスで行なうのに適した鍛造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な竪型プレスで長尺ワークの端部据込み鍛造等を行なう場合、スライドとボルスタ間のデーライト寸法には限度があるため、これを越える長さの長尺ワークの鍛造は横型プレスを使用する必要がある。しかし、長尺ワークの据込み鍛造に、一般的な竪型プレスを使用したいという要請も強く、この場合、従来は図4に示すような鍛造装置が使用されている。
【0003】
すなわち、図4において、鍛造装置は、竪型プレスのスライド41下面に固定された第1押圧ブロック61と、その下方に位置して図略のガイド部材によって水平方向へ案内される第2押圧ブロック62とを備えている。第1押圧ブロック61には下方に向く傾斜面61aが形成されており、一方、第2押圧ブロック62には上記傾斜面61aに対向してこれと平行な、上方を向く傾斜面62aが形成されている。第2押圧ブロック62には水平方向へ移動可能な第1金敷ブロック71が接しており、当該金敷ブロック71と、これに対し水平方向で離れた位置に固定された第2金敷ブロック72との間に長尺ワークWが挟持されている。鍛造時には、スライド41を下降させると第1押圧ブロック61の傾斜面61aが第2押圧ブロック62の傾斜面62aに当接し、これによって第2押圧ブロック62が第1金敷ブロック71に向けて移動させられて(図4の鎖線)、第1金敷ブロック71を介して長尺ワークWの端部W1が金型8の型空間81内へ押し潰されるように短縮拡径変形させられて据込み鍛造がなされる。
【0004】
なお、特許文献1には、傾斜面を形成した移動力伝達素子を複数隣接して設けて、押圧作用方向を水平方向から垂直方向へ転換できるようにした流体圧シリンダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−129407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の鍛造装置では、鍛造作動時に第1および第2押圧ブロック61,62の傾斜面61a,62a同士が接触して相互に相対移動するため、この際の摺動抵抗によって竪型プレスの押圧力が無駄に費消される結果、鍛造時のエネルギー効率が悪いという問題があった。一方、摺動抵抗を小さくしエネルギー効率を改善するために上記傾斜面61a,62aの傾斜角を小さくすると、鍛造ストロークを長く確保できないという問題を生じる。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、竪型プレスの上下方向押圧力を水平方向押圧力に変換する際のエネルギー効率を高く維持しつつ必要な鍛造ストロークや鍛造圧を確保することが可能な竪型プレスの鍛造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本第1発明では、垂直姿勢に配設されて竪型プレスの圧下力を受ける第1ラムシリンダ(31)と、第1ラムシリンダ(31)に一端が連通する作動液流路(35)と、水平姿勢に配設されて作動液流路(35)の他端に連通し、作動液の液圧を受けてワーク(W)を鍛造する第2ラムシリンダ(32)とを備える。
【0009】
本発明によれば、一対のラムシリンダとこれらを連通させる作動液流路によって竪型プレスの上下方向押圧力を水平方向押圧力に変換しているから、従来のような傾斜面の摩擦抵抗による押圧力の無駄な費消は生じず、鍛造時のエネルギー効率が高く維持される。さらに、各ラムシリンダのストロークや内径を適当に選択することによって、必要な鍛造ストロークや鍛造圧を自在に設定することができる。
【0010】
本第2発明では、ハウジング(1)内に、前記第1ラムシリンダ(31)を垂直姿勢で上下動可能に保持する第1シリンダ室(34)と、前記第2ラムシリンダ(32)を水平姿勢で水平動可能に保持する第2シリンダ室(33)と、第2ラムシリンダ(32)との間で前記ワーク(W)の両端を挟持するワーク支持部(12)と、前記ワーク(W)を挿置する鍛造金型(2)を収納する収納空間(13)とを設けるとともに、前記作動液流路(35)を前記第1シリンダ室(34)と第2シリンダ室(33)との間に設ける。
【0011】
本第2発明においては、第1ラムシリンダ、第1シリンダ室、第2ラムシリンダ、第2シリンダ室、ワーク支持部、鍛造金型および作動液流路をハウジング内に一体に設けたから、他の竪型プレスへの移動および設置が容易である。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の竪型プレスの鍛造装置によれば、竪型プレスの上下方向押圧力を水平方向押圧力に変換する際のエネルギー効率を高く維持しつつ必要な鍛造ストロークや鍛造圧を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す、竪型プレスに設置した鍛造装置の部分断面側面図である。
【図2】鍛造装置の平面図である。
【図3】竪型プレスに設置した鍛造装置の垂直部の断面図である。
【図4】従来の鍛造装置の部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には竪型プレスに設置した鍛造装置の部分縦断面側面図を示し、図2には鍛造装置の平面図を示す。また、図3には竪型プレスに設置した鍛造装置の横断面図を示す。鍛造装置は平面視で横長長方形(図2)のハウジング1を備えており、ハウジング1の一端には方向転換部11が、他端にはワーク支持部12が設けられている。ハウジング1の中間部には上方へ開放する横長長方形の収納空間13が形成されており、当該収納空間13内にはこれに沿う長方形の鍛造金型2が設置されている。鍛造金型2は上半の上型21と下半の下型22に分割されて、これらの側縁両端に形成されたヒンジ部23によって上型21を開放することができる。
【0016】
上型21と下型22の衝合面には一端部を大径とした筒状の型空間24が形成されており、形空間24内にはその内周とほぼ同径の棒状の長尺ワークWが挿置されている。長尺ワークWは一端が上記ワーク支持部12に設けたストッパ部材121に当接させられるとともに、長尺ワーク12の他端は方向転換部11を構成するラムシリンダ(第2ラムシリンダ)32の一端面に当接させられている。
【0017】
ハウジング1の方向転換部11は水平部111と垂直部112よりなる略L字断面をなし、水平部111内には上記ラムシリンダ32を水平姿勢で受容してこれを水平方向へ移動可能に保持するシリンダ室(第2シリンダ室)33が形成されている。ラムシリンダ32はその一端がシリンダ室33外へ突出している。方向転換部11の垂直部112内にはラムシリンダ(第1ラムシリンダ)31を垂直姿勢で受容して上下方向へ移動可能に保持するシリンダ室(第1シリンダ室)34が設けられており、ラムシリンダ31はその一端(上端)がシリンダ室34外へ突出している。
【0018】
これらシリンダ室33,34の間は、L字形に水平方向から垂直方向へ屈曲する、作動液(例えば作動油)を封入した作動液流路35で結ばれている。シリンダ室34外へ突出するラムシリンダ31の一端は縦型プレス4のスライド41の直下に位置している。また、シリンダ室33外へ突出するラムシリンダ32の一端にはその周面にステー51の基端が埋設されており、ステー51の先端には上記水平部111に設けた戻しシリンダ5の一端が結合されている。
【0019】
このような構造の鍛造装置を使用して長尺ワークWの端部W1の据込み鍛造を行なう場合には、上型21を開いて金型2の型空間24に図1に示すように長尺ワークWをセットし、その一端をストッパ部材121に、他端をラムシリンダ32に当接させる。この状態で上型21を閉めた後、竪型プレス4のスライド41を下降させてラムシリンダ31に当接させこれを下方へ押し下げる(図1の鎖線)。これにより、シリンダ室34内の作動液が作動液流路35へ押し出され、当該流路35を経てシリンダ室33内へ流入してラムシリンダ32を押圧する。押圧されたラムシリンダ32は金型2に向けて進出し、この過程で長尺ワークWの端部W1は金型2端部の大径空間内へ押し潰されるように短縮拡径変形させられて、ワーク端部W1の据込み鍛造がなされる。
【0020】
鍛造終了後はスライド41を上昇させ、戻しシリンダ5を収縮作動させてラムシリンダ32を後退させる。これにより、シリンダ室33内の作動液が作動液流路35へ押し出され、当該流路35を経てシリンダ室34内へ流入して、ラムシリンダ31を戻し上昇させる(図1に示す状態)。この後、金型2の上型21を開いて長尺ワークWを取り出す。
【0021】
本実施形態の鍛造装置においては、一対のラムシリンダ31,32とこれらを連結する作動液流路35によって竪型プレス4の上下方向押圧力を水平方向押圧力に変換しているから、従来のような傾斜面の摩擦抵抗による押圧力の無駄な費消は生じず、鍛造時のエネルギー効率が高く維持される。加えて、各ラムシリンダ31,32のストロークや内径を適当に選択することによって、必要な鍛造ストロークや鍛造圧を自在に設定することができる。また、ラムシリンダ31,32、シリンダ室33,34、ワーク支持部12、鍛造金型2および作動液流路35をハウジング1内に一体に設けているから、他の竪型プレスへの移動や設置が容易である。なお、本発明の鍛造装置の適用範囲は、長尺ワークの端部据込み鍛造には限られない。
【符号の説明】
【0022】
1…ハウジング、12…ワーク支持部、2…鍛造金型、31,32…ラムシリンダ、33,34…シリンダ室、35…作動液流路、W…長尺ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直姿勢に配設されて竪型プレスの圧下力を受ける第1ラムシリンダと、第1ラムシリンダに一端が連通する作動液流路と、水平姿勢に配設されて作動液流路の他端に連通し、作動液の液圧を受けてワークを鍛造する第2ラムシリンダとを備える竪型プレスの鍛造装置。
【請求項2】
ハウジング内に、前記第1ラムシリンダを垂直姿勢で上下動可能に保持する第1シリンダ室と、前記第2ラムシリンダを水平姿勢で水平動可能に保持する第2シリンダ室と、第2ラムシリンダとの間で前記ワークの両端を挟持するワーク支持部と、前記ワークを挿置する鍛造金型を収納する収納空間とを設けるとともに、前記作動液流路を前記第1シリンダ室と第2シリンダ室との間に設けた請求項1に記載の竪型プレスの鍛造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−245541(P2011−245541A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123617(P2010−123617)
【出願日】平成22年5月29日(2010.5.29)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】