説明

竪型ミルの粉砕ローラの監視装置及び監視方法

【課題】粉砕ローラが正常に回転していないことを確認可能な監視装置を提供する。
【解決手段】竪型ミル10は、竪型容器となる本体1、粉砕テーブル14、複数の粉砕ローラ2、プランジャー3、及び制震ダンパー装置4を備える。石炭が本体1に投入され、粉砕テーブル14と粉砕ローラ2の協働で石炭が粉砕される。プランジャー3は、石炭を粉砕する力を付勢する。制震ダンパー装置4は、粉砕ローラ2に発生する自励振動の振幅を抑制する。監視装置9は、振動計91と監視盤90を備える。振動計91は、制震ダンパー装置4の振幅値を計測する。監視盤90には、振動計91の振幅値データが入力される。粉砕ローラ2が正常に回転していないと、振動計91の振幅値データが大幅に減少することから、粉砕ローラ2が正常に回転していないことを判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型ミルの粉砕ローラの監視装置及び監視方法に関する。特に、石炭などを粉砕ローラで粉砕して微粉炭を製造する竪型ミルにおいて、粉砕ローラの動作を監視する監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、微粉炭をボイラーの燃料とする発電所などでは、竪型ミルを用いて、塊状の石炭を粉砕ローラで粉砕して微粉炭を製造している。この竪型ミルでは、石炭を粉砕する粉砕ローラが滑って大きく揺れ、粉砕ローラに自励振動が発生する現象が知られている。そして、例えば、この自励振動を作動スイッチが感知して、発電用のタービンを停止させるという事態を発生させていた。
【0003】
このような事態を解消するために、前記粉砕ローラの自励振動を0.1mm程度の微小振幅の振動に抑制する制震ダンパー装置付きの竪型ミルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−248473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した竪型ミルは、水平面が回転するテーブルとこのテーブルに従動して回転する粉砕ローラとの間に石炭を巻き込んで石炭を粉砕している。しかし、竪型ミルを長期に亘り稼動していると、粉砕ローラが劣化して回転しないようになってくる。
【0006】
一方、竪型ミルは、ドーム状に覆われた外殻の内部に粉砕ローラを配置しているので、竪型ミルの暗い内部を目視して、粉砕ローラが正常に回転しているか否かを確認することが困難であるという問題があった。
【0007】
粉砕ローラが正常に回転しているか否かを確認可能な監視装置及び監視方法が実現できれば、粉砕ローラの保守時期を特定でき、竪型ミルを不要に稼動させることなく、便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、粉砕ローラが正常に回転していないことを確認可能な竪型ミルの粉砕ローラの監視装置及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、制震ダンパー装置の振幅などを計測することによって、粉砕ローラが正常に回転していないことを監視可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな竪型ミルの粉砕ローラの監視装置及び監視方法を発明するに至った。
【0010】
(1)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記竪型容器の外壁に配置され、前記プランジャーに連動して、前記粉砕ローラに発生する自励振動の振幅を抑制する制震ダンパー装置と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、前記制震ダンパー装置の振幅値を計測する振動計と、この振動計の振幅値データが入力される監視盤と、を備える。
【0011】
(2)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記粉砕テーブルと複数の前記粉砕ローラの協働で製造された微粉炭を前記竪型容器の上方に吹き上げる一次空気が供給される一次空気供給管と、前記一次空気に吹き上げられた微粉炭が二次空気に送風されて回収される二次空気供給管と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、前記一次空気の圧力値を計測する第1圧力計と、前記二次空気の圧力値を計測する第2圧力計と、前記第1圧力計の圧力値データ及び前記第2圧力計の圧力値データが入力される監視盤であって、前記第1圧力計の圧力値データと前記第2圧力計の圧力値データとの差圧データを算出可能な監視盤と、を備える。
【0012】
(3)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記粉砕テーブルに連結する出力軸を有する電動機と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、前記電動機の負荷電流値を計測する電流計と、この電流計の負荷電流値データが入力される監視盤と、を備える。
【0013】
(4)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視方法は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記竪型容器の外壁に配置され、前記プランジャーに連動して、前記粉砕ローラに発生する自励振動の振幅を抑制する制震ダンパー装置と、当該制震ダンパー装置の振幅値を計測する振動計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、前記振動計から送出される振幅値データに基づき、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する。
【0014】
(5)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視方法は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記粉砕テーブルと複数の前記粉砕ローラの協働で製造された微粉炭を前記竪型容器の上方に吹き上げる一次空気が供給される一次空気供給管と、前記一次空気に吹き上げられた微粉炭が二次空気に送風されて回収される二次空気供給管と、前記一次空気の圧力値を計測する第1圧力計と、前記二次空気の圧力値を計測する第2圧力計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、前記第1圧力計の圧力値データと前記第2圧力計の圧力値データとの差圧データを算出して、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する。
【0015】
(6)本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視方法は、内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、前記粉砕テーブルに連結する出力軸を有する電動機と、前記電動機の負荷電流値を計測する電流計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、前記電流計の負荷電流値データに基づき、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、制震ダンパー装置の振幅値を計測する振動計と、振動計の振幅値データが入力される監視盤と、を備えている。本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、粉砕ローラが正常に回転していないと、振幅値データが大幅に減少することから、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定できる。
【0017】
又、本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、一次空気の圧力値を計測する第1圧力計、二次空気の圧力値を計測する第2圧力計、及び第1圧力計の圧力値データと第2圧力計の圧力値データとの差圧データを算出可能な監視盤を備えている。本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、粉砕ローラが正常に回転していないと、微粉炭が正常に製造されていないことに起因して、差圧データが大きくなることから、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定できる。
【0018】
更に、本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、電動機の負荷電流値を計測する電流計と、電流計の負荷電流値データが入力される監視盤と、を備えている。本発明による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置は、粉砕ローラが正常に回転していないと、粉砕テーブルを回転するための負荷電流値データが大きくなることから、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による竪型ミル、及び竪型ミルに備わる監視装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】前記実施形態による竪型ミルの構成を示す縦断面図である。
【図3】前記実施形態による竪型ミルの外観を示す正面図である。
【図4】図2のX−X矢視断面図である。
【図5】前記実施形態による竪型ミルに備わる粉砕ローラ及び制震ダンパー装置を拡大した正面図である。
【図6】図5のA矢視図である。
【図7】前記実施形態による竪型ミルに備わる制震ダンパー装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[竪型ミルの構成]
(竪型ミルの全体構成)
最初に、本発明の一実施形態による竪型ミルの全体構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による竪型ミル、及び竪型ミルに備わる監視装置の構成を示す縦断面図である。図2は、前記実施形態による竪型ミルの構成を示す縦断面図である。
【0021】
又、図3は、前記実施形態による竪型ミルの外観を示す正面図である。図4は、図2のX−X矢視断面図である。図5は、前記実施形態による竪型ミルに備わる粉砕ローラ及び制震ダンパー装置を拡大した正面図である。なお、図3及び図4において、制震ダンパー装置の図示を省略している。
【0022】
図1から図5を参照すると、本発明の一実施形態による竪型ミル10は、その竪型容器となる本体1が分級部11と粉砕部12で構成されている。分級部11は、本体1の上部をドーム状に覆っている。粉砕部12は、堅牢な円筒状の外殻で本体1の下部を囲っている。
【0023】
図1から図3を参照すると、本体1は、床面FLに設置された脚台13によって支持されている。粉砕部12の下部には、水平面が回転する円盤状の粉砕テーブル14を設置している。床面FLには、電動機15と減速器16を設置している。電動機15の出力軸は、減速器16に連結している。減速器16の出力軸は、粉砕テーブル14に連結している。そして、電動機15を駆動すると、粉砕テーブル14を回転できる。
【0024】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、粉砕部12には、三つの粉砕ローラ2を放射状に取り付けている。粉砕ローラ2は、ピポッドブラケット2aに回転軸2bを支持している。回転軸2bの先端部には、ローラタイヤ2cを回転可能に支持している。粉砕テーブル14を回転すると、粉砕テーブル14の回転がこれらのローラタイヤ2cに摩擦伝動されるように、粉砕ローラ2が構成されている。つまり、粉砕テーブル14と粉砕ローラ2は、2軸が直角に交わる摩擦伝動装置を構成している。
【0025】
図2から図5を参照すると、粉砕部12の外殻は、部分的に開口している。そして、粉砕部12の開口をジャーナルカバー17が開閉可能に覆っている。ジャーナルカバー17は、粉砕部12の遠心方向と直交にする方向に延びる回動軸17aを支持している。そして、回動軸17aには、ピポッドブラケット2aの基端部が回動可能に連結している。つまり、粉砕ローラ2は、粉砕テーブル14に接近又は離間する方向に、揺動可能に支持されている。
【0026】
図2又は図4及び図5を参照すると、ピポッドブラケット2aは、押圧片21aを突出している。一方、ジャーナルカバー17には、押圧片21aを押圧してピポッドブラケット2aを時計方向に回動させる一組のプランジャー3・3を取り付けている。
【0027】
又、図5を参照すると、押圧片21aの反対側には、停止片22aを設けている。停止片22aには、調整ボルト17bの先端が当接するように構成され、ピポッドブラケット2aの時計方向の回転が規定(規制)されている。調整ボルト17bは、先端の突出長を外部から調整できるように構成されている。
【0028】
図5を参照すると、プランジャー3は、円筒状のシリンダチューブ3a、プランジャーロッド3b、及び圧縮コイルばね3cで構成されている。シリンダチューブ3aは、粉砕部12の内部に向けて突出するように、ジャーナルカバー17に取り付けられている。プランジャーロッド3bは、シリンダチューブ3aの軸方向に進退するように、シリンダチューブ3aに保持されている。圧縮コイルばね3cは、シリンダチューブ3aに内装され、プランジャーロッド3bの先端が押圧片21aを押圧する力を付勢している。
【0029】
図5を参照すると、粉砕テーブル14と粉砕ローラ2との間に介在された塊状の石炭は、プランジャー3に付勢されながら、回動する又は互いに擦れあう過程で圧壊(粉砕)される。これにより、微粉炭cfを製造することができる。
【0030】
図5を参照すると、プランジャーロッド3bの基端部は、制震ダンパー装置4を連結している。図示された制震ダンパー装置4は、特許文献1に開示された制震ダンパー装置と同様に構成されている。そして、制震ダンパー装置4は、粉砕ローラ2の自励振動を微小振幅の振動に抑制することができるが、その構成及び作用は、後述する。
【0031】
図5を参照すると、ジャーナルカバー17は、ヒンジ軸17cで粉砕部12の外殻と連結している。そして、ジャーナルカバー17を外側に開くと(図1又は図2の想像線を参照)、粉砕ローラ2及びプランジャー3を点検又は保守することが容易になる。
【0032】
図1から図3を参照すると、粉砕部12の下部には、粉砕テーブル14の下部を包囲するように密閉した、環状の一次空気室121を形成している。一次空気室121には、一次空気供給管12dを介して、外部から一次空気A1が供給されている。そして、一次空気室121からは、粉砕テーブル14の周囲に配置された複数のポート12pを介して、一次空気A1を分級部11に向けて吹き込んでいる。なお、一次空気室121は、異物排出管12fに連通している。又、粉砕テーブル14の軸受部には、シール送気管12sからシールエアを通気している。
【0033】
図1から図3を参照すると、本体1の頂部には、逆円錐台状の密閉された分配器1aを取り付けている。分配器1aの内部は、分級部11及び粉砕部12と連通している。又、分配器1aの上面には、四つの二次空気供給管11aを取り付けている。更に、これらの二次空気供給管11aには、分配器1aの内部から二次空気供給管11aの流路を開閉するカットダンパ12aを設けている。
【0034】
図1から図3を参照すると、一次空気A1により吹き上げられた微粉炭cfは、分級部11で分級されて、分配器1aまで上昇する。そして、微粉炭cfは、二次空気A2に送風されて、二次空気供給管11aに回収され、二次空気供給管11aを介して、図示しないボイラーへと供給される。一般に、二次空気A2の圧力は、本体1の内部を通過する過程で、一次空気A1の圧力より低下している。
【0035】
図1又は図2を参照すると、本体1の中心部には、給炭管1bを配置している。給炭管1bの上端は、分配器1aから突出している。又、給炭管1bの下端は、粉砕ローラ2より若干上方に開口している。
【0036】
図1又は図2を参照すると、給炭管1bは、逆円錐状のリジェクトシュート11cで囲われたサイクロン(回転式分級器)1cを回転可能に取り付けている。サイクロン1cは、リジェクトドア12cを介して、下端部から進入してきた微粉炭cfを旋回させて、遠心力で微粉炭cfを分級している。
【0037】
図1又は図2を参照すると、比重の大きい(粒径の大きい)微粉炭cfは、リジェクトシュート11cで回収されて、再び粉砕される。一方、比重の小さい(粒径の小さい)微粉炭cfは、サイクロン1cの中央部に分布し、二次空気供給管11aを介して、図示しないボイラーへと供給される。なお、微粉炭cfの分級は、サイクロン1cの回転速度にも依存している。
【0038】
なお、図1から図3を参照すると、サイクロン1cの上部には、円環状に複数のベーン13cを配置している。又、分級部11の外周を囲むように、ループエア管14cが配置されている。そして、ループエア管14cに外部から圧縮空気を供給し、適宜な複数の位置からベーン13cに圧縮空気を吹き付けて、サイクロン1cを回転するように構成している。サイクロン1cの回転速度を調整することにより、所望の粒径の微粉炭cfを得ることができる。
【0039】
図1又は図2を参照すると、図示された竪型ミル10は、塊状の石炭を貯蔵するバンカー(図示せず)から石炭が移送されて、給炭管1bに投入される。これらの塊状の石炭は、粉砕テーブル14の中央部に落下した後に、粉砕テーブル14の円環状の窪み部へと転落(集積)し続ける。そして、粉砕テーブル14と粉砕ローラ2の協働により、塊状の石炭を粉砕して、微粉炭cfを製造している。
【0040】
(制震ダンパー装置の構成)
次に、実施形態による制震ダンパー装置4の構成を説明する。図6は、図5のA矢視図である。図7は、前記実施形態による竪型ミルに備わる制震ダンパー装置の縦断面図である。なお、本願の図6は、特許文献1の図3に相当し、本願の図7は、特許文献1の図4に相当している。
【0041】
図5から図7を参照すると、制震ダンパー装置4は、連接棒41、一対の帯状の可動板4a及び固定板4b、及び一組の制震ダンパー42・42を備えて構成している。連接棒41の一端部は、プランジャーロッド3bの基端部に連結している。連接棒41の他端部は、可動板4aの中央部に固定している。
【0042】
図5又は図6を参照すると、可動板4aには、その長手方向に沿って、補強板41aを取り付けており、可動板4aの変形を防止している。一組の制震ダンパー42・42は、連接棒41を間にして、対向するように配置されている。
【0043】
図5を参照すると、制震ダンパー42は、可動板4aと固定板4bとが相対的に近づく、又は離反するように、可動板4aと固定板4bを伸縮自在に連結している。固定板4bは、その四隅から突出した支持脚41bをジャーナルカバー17のリブに固定している。
【0044】
図7を参照すると、制震ダンパー42は、内側ベローズ管42aと、内側ベローズ管42aを包囲する外側ベローズ管42bを有する2重ベローズ管で構成している。外側ベローズ管42bの一端側は、可動フランジ42cで密閉されている。外側ベローズ管42bの他端側は、固定フランジ42dで密閉されている。なお、可動フランジ42cは、可動板4aに固定され、固定フランジ42dは、固定板4bに固定されている(図5参照)。
【0045】
図7を参照すると、内側ベローズ管42aと外側ベローズ管42bとの間には、第1作動流体室421を設けている。一方、内側ベローズ管42aの内部には、遮蔽板42eを設けて、空気室420と第2作動流体室422とに区画している。又、外側ベローズ管42bの内部には、仕切り板42fを設けて、第1作動流体室421及び第2作動流体室422を区画する第3作動流体室423を形成している。
【0046】
図7を参照すると、空気室420は、可動フランジ42cに開口した流通孔h1を介して、外気に連通している。第1作動流体室421、第2作動流体室422、及び第3作動流体室423には、非圧縮流体(以下、流体と略称する)Lが充填されている。
【0047】
図7を参照すると、仕切り板42fには、第1作動流体室421と第3作動流体室423とを連通する流通孔h2を開口していると共に、第2作動流体室422と第3作動流体室423とを連通する流通孔h3を開口している。したがって、第1作動流体室421の流体Lと第2作動流体室422の流体Lとは、相互に流通が可能になっている。
【0048】
次に、実施形態による制震ダンパー装置4の作用を説明する。図5を参照して、粉砕ローラ2に自励振動が発生すると、この自励振動は、粉砕ローラ2に追従するプランジャー3に伝動される。更に、プランジャーロッド3bに伝えられた自励振動は、軸方向に振幅する挙動となって、制震ダンパー装置4に伝動される。
【0049】
図5又は図7を参照すると、プランジャーロッド3bが外方に移動すると、制震ダンパー42は、伸びる方向に変形する力が作用する。そして、この間、制震ダンパー42の内部では、第1作動流体室421の容積が膨張する一方で、第2作動流体室422の容積は収縮するので、第2作動流体室422の流体Lは、第3作動流体室423を介して、第1作動流体室421へと流動(移動)する。この場合、流体Lは粘性を有しているので、流通孔h2・h3を通過する際の流動抵抗となって、プランジャーロッド3bの移動速度が減速(抑制)される。
【0050】
一方、図5又は図7を参照すると、プランジャーロッド3bが内方に移動すると、制震ダンパー42は、圧縮される方向に変形する力が作用する。そして、この間、制震ダンパー42の内部では、第1作動流体室421の容積が収縮する一方で、第2作動流体室422の容積は膨張するので、第1作動流体室421の流体Lは、第3作動流体室423を介して、第2作動流体室422へと流動(移動)する。この場合、流体Lは粘性を有しているので、流通孔h2・h3を通過する際の流動抵抗となって、プランジャーロッド3bの移動速度が減速(抑制)される。
【0051】
図5又は図7を参照すると、制震ダンパー装置4は、プランジャーロッド3bの移動速度が減速させる作用が短時間に交互に実行されることにより、粉砕ローラ2に発生する自励振動の振幅が抑制される。
【0052】
[竪型ミルの粉砕ローラの監視装置]
次に、本発明の実施形態による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置の構成及び作用を説明する。図2から図7を参照すると、実施形態による竪型ミル10は、ドーム状に覆われた外殻の内部に複数の粉砕ローラ2を配置しているので、竪型ミル10の暗い内部を目視して、これらの粉砕ローラ2が正常に回転しているか否かを確認することが困難であった。
【0053】
本発明者は、制震ダンパー装置の振幅など、竪型ミルの挙動を計測することによって、粉砕ローラが正常に回転していないことを間接的に監視可能なことを見出し、本発明の実施形態による竪型ミルの粉砕ローラの監視装置を発明した。
【0054】
(第1実施形態)
図1を参照すると、第1実施形態による監視装置9は、振動計91と監視盤90を備えている。振動計91は、制震ダンパー装置4に取り付けられている。そして、振動計91によって、制震ダンパー装置4の振幅値が計測される。監視盤90には、振動計91の振幅値データが入力される。
【0055】
図1を参照して、振動計91は、複数の制震ダンパー装置4の内のいずれか一つに取り付けてもよく、全ての制震ダンパー装置4に一対一に取り付けてもよい。振動計91は、市販の振動形を利用でき、マグネット、又はクランプなど、適宜な取り付け手段で制震ダンパー装置4に取り付けることができる。
【0056】
図1を参照すると、振動計91と監視盤90とは、電線又は光ファイバなど有線で接続してもよく、無線で接続してもよい。監視盤90は、既存(既設)の監視盤又は制御盤を利用することもでき、既存の監視盤に振動計91用の表示器を追加してもよく、振動計91から所定値以上の振幅値データが入力されると、警報が作動するように構成してもよい。
【0057】
図1を参照すると、第1実施形態による監視装置9は、制震ダンパー装置4の振幅値を計測する振動計91と、振動計91の振幅値データが入力される監視盤90と、を備えている。第1実施形態による監視装置9は、粉砕ローラ2が正常に回転していないと、振幅値データが大幅に減少することから、粉砕ローラ2が正常に回転していないことを判定できる。又、第1実施形態による監視装置9は、振動計91から送出される振幅値データに基づき、粉砕ローラ2の回転の有無を判定することができる。
【0058】
第1実施形態による監視装置9は、同時に稼動している他の複数の竪型ミルから取得される振幅値データと当該振幅値データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転しているか否かを判定してもよく、経験則に基づく振幅値と当該振幅値データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転しているか否かを判定してもよい。
【0059】
(第2実施形態)
図1を参照すると、第2実施形態による監視装置9は、第1圧力計92、第2圧力計93、及び監視盤90を備えている。第1圧力計92は、一次空気供給管12dに取り付けられている。そして、第1圧力計92によって、一次空気A1の圧力値が計測される。
【0060】
図1を参照すると、第2圧力計93は、二次空気供給管11aに取り付けられている。そして、第2圧力計93によって、二次空気A2の圧力値が計測される。監視盤90には、第1圧力計92の圧力値データ及び第2圧力計93の圧力値データが入力される。監視盤90は、第1圧力計92の圧力値データと第2圧力計93の圧力値データとの差圧データを算出できる。
【0061】
図1を参照して、第2圧力計93は、全て(四つ)の二次空気供給管11aに一対一に取り付けることが好ましい。この場合、カットダンパ12aが開いている二次空気供給管11aに取り付けた第2圧力計93が作動するように、制御することが好ましく、第2圧力計93の圧力値データは、作動している第2圧力計93の圧力値データを平均して、第2圧力計93の圧力値データとすることが好ましい。
【0062】
第1圧力計92の圧力値及び第2圧力計93の圧力値は、機械的手段で得られた圧力値を電気信号に変換することが好ましく、例えば、遠隔地にある監視盤90に圧力値データを電気信号として送信できる。
【0063】
図1を参照して、粉砕ローラ2が正常に回転しないと(粉砕ローラ2の回転が停止すると)、一次空気A1と二次空気A2との差圧が大きくなることが経験則から判明していた。石炭が十分に粉砕されることなく、竪型ミルの底部に滞留しているので、一次空気A1の流路に抵抗を生じさせるためだと推定される。
【0064】
図1を参照すると、第2実施形態による監視装置9は、一次空気A1の圧力値を計測する第1圧力計92、二次空気A2の圧力値を計測する第2圧力計93、及び第1圧力計92の圧力値データと第2圧力計93の圧力値データとの差圧データを算出可能な監視盤90を備えている。第2実施形態による監視装置9は、粉砕ローラ2が正常に回転していないと、微粉炭cfが正常に製造されていないことに起因して、差圧データが大きくなることから、粉砕ローラ2が正常に回転していないことを判定できる。
【0065】
又、第2実施形態による監視装置9は、第1圧力計92の圧力値データと第2圧力計93の圧力値データとの差圧データを算出して、粉砕ローラ2の回転の有無を判定することができる。
【0066】
第2実施形態による監視装置9は、同時に稼動している他の複数の竪型ミルから取得される差圧データと当該差圧データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転していることを判定してもよく、経験則に基づく差圧値と当該差圧データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定してもよい。
【0067】
(第3実施形態)
図1を参照すると、第3実施形態による監視装置9は、電流計94と監視盤90を備えている。電流計94は、電動機15に接続されている。そして、電流計94によって、電動機15の負荷電流値が計測される。
【0068】
図1を参照すると、第3実施形態による監視装置9は、電動機15の負荷電流値を計測する電流計94と、電流計94の負荷電流値データが送出される監視盤90と、を備えている。第3実施形態による監視装置9は、粉砕ローラ2が正常に回転していないと、粉砕テーブル14を回転するための負荷電流値データが大きくなることから、粉砕ローラ2が正常に回転していないことを判定できる。又、第3実施形態による監視装置9は、電流計94の負荷電流値データに基づき、粉砕ローラ2の回転の有無を判定することができる。
【0069】
第3実施形態による監視装置9は、同時に稼動している他の複数の竪型ミルから取得される負荷電流値データと当該負荷電流値データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定してもよく、経験則に基づく負荷電流値と当該負荷電流値データとが比較されて、粉砕ローラが正常に回転していないことを判定してもよい。
【0070】
実施形態による監視装置は、振幅値データ、差圧データ、及び負荷電流値データの内のいずれか二つの計測データから、粉砕ローラの回転の有無を判定することもでき、これらの全ての計測データを組み合わせて、粉砕ローラの回転の有無を判定することもできる。
【0071】
実施形態による監視装置は、粉砕ローラが正常に回転しているか否かを確認できるので、粉砕ローラの保守時期を特定でき、竪型ミルを不要に稼動させることなく、便利である。
【符号の説明】
【0072】
1 本体(竪型容器)
2 粉砕ローラ
2c ローラタイヤ
3 プランジャー
4 制震ダンパー装置
9 監視装置
10 竪型ミル
14 粉砕テーブル
90 監視盤
91 振動計
cf 微粉炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記竪型容器の外壁に配置され、前記プランジャーに連動して、前記粉砕ローラに発生する自励振動の振幅を抑制する制震ダンパー装置と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、
前記制震ダンパー装置の振幅値を計測する振動計と、
この振動計の振幅値データが入力される監視盤と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視装置。
【請求項2】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記粉砕テーブルと複数の前記粉砕ローラの協働で製造された微粉炭を前記竪型容器の上方に吹き上げる一次空気が供給される一次空気供給管と、
前記一次空気に吹き上げられた微粉炭が二次空気に送風されて回収される二次空気供給管と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、
前記一次空気の圧力値を計測する第1圧力計と、
前記二次空気の圧力値を計測する第2圧力計と、
前記第1圧力計の圧力値データ及び前記第2圧力計の圧力値データが入力される監視盤であって、前記第1圧力計の圧力値データと前記第2圧力計の圧力値データとの差圧データを算出可能な監視盤と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視装置。
【請求項3】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記粉砕テーブルに連結する出力軸を有する電動機と、を備える竪型ミルにおいて、前記粉砕ローラの動作を監視する監視装置であって、
前記電動機の負荷電流値を計測する電流計と、
この電流計の負荷電流値データが入力される監視盤と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視装置。
【請求項4】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記竪型容器の外壁に配置され、前記プランジャーに連動して、前記粉砕ローラに発生する自励振動の振幅を抑制する制震ダンパー装置と、
当該制震ダンパー装置の振幅値を計測する振動計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、
前記振動計から送出される振幅値データに基づき、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する竪型ミルの粉砕ローラの監視方法。
【請求項5】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記粉砕テーブルと複数の前記粉砕ローラの協働で製造された微粉炭を前記竪型容器の上方に吹き上げる一次空気が供給される一次空気供給管と、
前記一次空気に吹き上げられた微粉炭が二次空気に送風されて回収される二次空気供給管と、
前記一次空気の圧力値を計測する第1圧力計と、
前記二次空気の圧力値を計測する第2圧力計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、
前記第1圧力計の圧力値データと前記第2圧力計の圧力値データとの差圧データを算出して、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する竪型ミルの粉砕ローラの監視方法。
【請求項6】
内部に石炭が投入され、この石炭を粉砕して微粉炭が製造される筒状の竪型容器と、
前記竪型容器の底部に配置され、石炭を載置して水平回転する粉砕テーブルと、
この粉砕テーブルに摩擦伝動されて回転するローラタイヤを有する揺動可能な複数の粉砕ローラと、
この粉砕ローラを前記粉砕テーブルに押圧して、当該粉砕ローラと前記粉砕テーブルとの間に介在された石炭を粉砕する力を付勢するプランジャーと、
前記粉砕テーブルに連結する出力軸を有する電動機と、
前記電動機の負荷電流値を計測する電流計と、を備える竪型ミルの粉砕ローラの監視方法であって、
前記電流計の負荷電流値データに基づき、前記粉砕ローラの回転の有無を判定する竪型ミルの粉砕ローラの監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−45496(P2012−45496A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190609(P2010−190609)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】