説明

竪型炉のレンガ冷却構造

【課題】竪型炉の炉蓋の接続部における耐火レンガを良好に冷却する竪型炉のレンガ冷却構造を提供する。
【解決手段】ジャケットの底部から垂下する吊下部材13と、吊下部材で支持される耐火レンガ部14とを有し、前記ジャケットは、金属製の環状ダクト10と、環状ダクト10内に配された内管11と、内管から垂下する注入部材12とを有し、注入部材12は環状ダクト10の窓部10C−1を貫通して下端開口が開放されており、吊下部材13は上端で環状ダクト10に連通し下端で有底な空所13Bを有し、空所13B内に注入部材12が空所内壁面との間に間隔をもって挿入され、内管11がその一部に冷却用媒体の流入口がそして環状ダクト10の一部に流出口が設けられ、内管11に流入した冷却用媒体が注入部材12から吊下部材13の空所13Bへ注入された後、環状ダクト10を経てその流出口から流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型炉の炉蓋におけるレンガ冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型炉は、鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部から立ち上がり円筒状に形成された外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有している。
【0003】
かかる竪型炉では、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒よりも半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、接続部を介して該内筒壁部の下端周縁と接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられている。
【0004】
このように形成される竪型炉では、上記炉床上へ供給管から供給された原料が加熱空間における加熱ガスにより加熱される。したがって、炉蓋の上記接続部は高温にさらされる。
【0005】
このような竪型炉は、特許文献1で知られており、高温にさらされる上記接続部に冷却のための金属製のジャケットを備えている。該ジャケットからは、下方に向け幅を広げる楔状部が形成された吊下金属板が垂下していて、隣接せる二つの吊下金属板の上記楔状部で、加熱空間に面する耐火レンガを吊下支持している。該吊下金属板は、ジャケットに接する上端面で該ジャケットにより冷却される。耐火レンガは、その上部で上記楔状部により支持されていて、その下方に大きく延びる部分は該楔状部によっては支持されておらず、上記上部でのみ吊下されている形態をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2952785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐火レンガは耐火性に優れてはいるものの、あまりにも高温となると、脆くなる傾向があり、特に、耐火レンガを吊下支持する吊下部材たる上記吊下金属板と接触して吊下支持される耐火レンガの被支持部は、該耐火レンガの大きな自重が作用するために、その脆性が問題となる。あまり脆くなると、上記自重による応力で、上記被支持部は表面が亀裂発生したり破損したりする。その結果、被支持能力が低下して、さらに破損して、最悪の事態では、耐火レンガが吊下金属から脱落してしまうこともあり、その場合は、炉自体の耐火性に問題を生じ、炉としての機能を得ることができなくなる。そこで、耐火レンガの上記被支持部は、ジャケットにより冷却される上記吊下金属板と接面して冷却されることが望まれるが、特許文献1では、ジャケット自体には十分な冷却媒体が流通していていも、吊下金属板がその上端面でのみでしかジャケットと接触していないので、該吊下部材は十分に冷却されない。したがって、上記耐火レンガの被支持部の冷却も満足になされない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、耐火レンガの被支持部に生ずる影響を極力小さくできるように、吊下部材全体を十分に冷却して耐火レンガの被支持部分を強度に影響のない程度にまで確実に冷却して亀裂発生を防止できる竪型炉のレンガ冷却構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る竪型炉のレンガ冷却構造は、鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部位置で上下方向に延びる円筒状の外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有し、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒部より半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、接続部を介して該内筒壁部の下端周縁と接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられており、炉床の落下孔の内周縁から筒状をなして垂下し内部に焼成空間を形成する焼成筒部とその下方で冷却空間を形成する冷却筒部が設けられている。
【0010】
かかる竪型炉のレンガ冷却構造において、本発明では、接続部は、天板部の外周部と内筒壁部の下端周縁との接触する冷却用ジャケットと、該ジャケットに対して上記軸線方向で炉内側に位置し、周方向の複数位置で、上記ジャケットの底部から垂下して設けられた金属製の吊下部材と、該吊下部材で支持される耐火レンガ部とを有し、上記ジャケットは、天板部の外周部と内筒壁部の下端周縁と接触する金属製の環状ダクトと、該環状ダクト内に配されて該環状ダクトと二重管構造をなす内管と、該内管から垂下する注入部材とを有し、環状ダクトはその周方向での複数位置で底部に窓部が形成され、注入部材は該窓部を貫通して内管から垂下すると共に上下端で開口する注入流路が中空状に形成されていて上端開口が内管内部と連通し下端開口が開放されており、上記吊下部材は上端で上記環状ダクトの窓部に連通する開口が形成されそして下端で有底となっている空所を有していて、該空所内に上記注入部材が該空所内壁面との間に間隔をもった状態で挿入されて上記間隔で注出流路を形成しており、上記環状ダクトと内管のうち少なくとも内管がその一部に冷却用媒体の流入口がそして環状ダクトの一部に流出口が設けられていて、内管に流入した冷却用媒体が注入部材の下端開口から吊下部材の空所へ注入された後、ダクトの窓部から環状ダクトを経てその流入口から流出するようになっていることを特徴としている。
【0011】
本発明では、冷却用媒体の流入口は内管と環状ダクトの両方に設けられているようにすることもできる。
【0012】
このような構成の本発明によると、冷却用媒体、例えば空気、水等が流入口へ供給される。流入口が内管のみに設けられているときには、流入口から内管へ流入した冷却用媒体は、内管を通り、注入部材の内部に形成されている注入流路を経てその下端開口から吊下部材の空所内に流れ込む。この冷却用媒体は、空所内で、該空所を形成する内壁面と上記注入部材の外周壁との間の注出流路を上昇し環状ダクトの窓部での隙間を経て該環状ダクトに至る。上記冷却用媒体は、上記注出流路を上昇中に吊下部材をその内面から冷却する。冷却後、昇温した冷却媒体は環状ダクトの流出口から流出される。かくして、吊下部材は、上記隙間を連続的に流れる冷却媒体により、その内面から全体的に冷却される。
【0013】
流入口が内管のみならず、環状ダクトにも設けられているときには、冷却用媒体は両方の流入口のそれぞれから流入され、内管内の冷却媒体は既述したようにして吊下部材を冷却し、一方、環状ダクト内の冷却媒体は、環状ダクト内、すわなち環状ダクトの内壁面と内管の外壁面の間の空間内を流れて流出口に至る。この環状ダクト内の冷却媒体は、内管を冷却することで、この内管内の冷却媒体の昇温を抑制する機能を有すると共に、吊下部材の冷却後に窓部を経て環状ダクト内に至る冷却媒体を上記環状ダクト内の冷却媒体の流れに合流せしめて積極的に流出口へ流通させる機能を併せもつ。
【0014】
本発明において、注入部材は周面の一部に外方に突出するフランジ部が設けられていて、該フランジ部が環状ダクトの底部内面上で支持されているようにすることができる。
【0015】
こうすることにより、内管は周方向の複数に位置する注入部材のフランジにより、全体的に安定して支持される。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明は、冷却用ジャケットを環状ダクトと内管の二重管等の並行流通構造とし、内管から垂下する注入部材を経て、吊下部材の空所に冷却媒体を連続して注入して該吊下部材を内面から広い範囲で冷却することとしたので、吊下部材に全体的に良好に冷却される。しかも、冷却媒体は環状ダクト内を通って流出するので、流通する冷却媒体の流量を大きくでき、この点でも吊下部材の冷却効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態としてのレンガ冷却構造を有する竪型炉の要部を示す軸線含む面での縦断面図である。
【図2】図1のレンガ冷却構造に用いられる冷却用のジャケットの環状ダクトと内管を示す横断面図である。
【図3】図1のジャケット及びその周辺を拡大して示す(半径方向に延びる面での)縦断面図である。
【図4】図3について周方向に延びる面での縦断面図である。
【図5】図1ないし図4に示される環状ダクト、内管、注入部材そして吊下部材についての分離状態での部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のレンガ冷却構造を有する竪型炉の軸線を含む面での主要部についての縦断面図である。
【0020】
図1において、符号1で示される炉床は、鉛直な炉の軸線Xを中心とした落下孔2が形成されている。該炉床1は、軸線Xに対し半径方向に拡がる炉床面1Aを有している。本実施形態では炉床1は軸線Xまわりに回転するが、本発明においては、非回転であってもよい。この炉床1の下方には、上記落下孔2の内周縁から筒状をなして垂下する焼成筒部(図示せず)と、さらに下方に延びる冷却筒部(図示せず)を有していて、上記炉床1上の原料Pが上記落下孔2から落下して焼成筒部で自己保有熱により焼成後、降下して上記冷却筒部で冷却されて、炉外に取り出されるようになっているが、これらの構成は、本発明の主眼とするところではないので、これ以上の説明は省略する。
【0021】
上記炉床1の上方には、該炉床1の外周縁の位置で上下に延びる非回転の外筒壁部3が設けられている。該外筒壁部3の下端縁3Aは上記回転せる炉床1の炉床面1Aに近接し隙間を形成している。通常、上記下端縁3Aと炉床面1Aとの間には、互いの相対回転を許容し上記隙間をシールするシール装置(図示せず)が設けられている。炉床1が非回転の形式の炉の場合は、炉床1と上記外筒壁部3は連続して一体に形成することができる。
【0022】
上記外筒壁部3の上端縁には、炉蓋4がその外周縁で接続されている。すなわち、炉蓋4は外筒壁部3に対して一体的に連続接続され上記外筒壁部3に対しその半径方向内方に位置している。
【0023】
上記炉蓋4は、上記外筒壁部3の上端縁に接続され半径方向内方に向け延び炉床1と平行な面をなす環板状部(図示せず)と、該環板状部の内周縁から垂下する内筒壁部5と、半径方向で該内筒壁部5内に位置し、上方に向け凸弯曲する円板状の天板部6と、該天板部6の外周縁と上記内筒壁部5の下端縁とを接続する環状の接続部7とを有している。上記内筒壁部5は、半径方向で炉床1の範囲内に位置している。上記炉蓋4は、その外面側(図では上面側)に鋼板製の補強体8により覆われて補強されている。該補強体8は、上記内筒壁部5の下部と天板部6の外周との間に形成されている環状空間に位置する環状のジャケット9と一体をなしている。該ジャケット9内には、冷却媒体、例えば、空気が流通し、該ジャケット9が接面する内筒壁部5そして天板部6さらに接続部7のそれぞれの対応部分を冷却する。
【0024】
上記炉床1の上方に位置する炉蓋4の環状板部(図示せず)には、周方向の複数位置に原料の供給管(図示せず)と排気管(図示せず)が接続部されていて、該供給管を経て外部から原料が炉床1上に落下供給され、落下して炉床1上に形成された原料Pの堆積層の粒間を透過する排ガスが上記排気管から炉外へ排出されるようになっている。一方、炉蓋4の天板部6には、上記軸線Xの位置で天板部6を貫通して、燃料供給管20と燃焼用空気供給管21とが配置されている。この燃料供給管20から炉内に供給される燃料は、主として液体あるいはガス燃料であるが、これに代えあるいは併せて固体(粉体)燃料を用いてもよい。併せて固体燃料を用いる場合は、液体あるいはガス燃料のための供給管とは別途設けられた供給管から固体燃料が供給されることが好ましい。
【0025】
上記内筒壁部5と天板部6は耐火レンガで作られており、天板部6にあっては、該耐火レンガの保持を強固にするために、該耐火レンガと鋼板製の補強体8との間にはモルタル層6Aが設けられている。
【0026】
上記内筒壁部5の下端縁と天板部6の外周縁を接続する接続部7は、周方向の複数位置で環状の上記ジャケット9の下板部9Aから垂下する金属製の吊下部材とこれにより支持されている耐火レンガ部により形成されている。
【0027】
上記ジャケット9は、本実施形態では、補強体8と一体に作られていて、上述のごとく、炉蓋4の内筒壁部5の下部と天板部6の外周との間に形成される環状空間に位置して設けられており、環状ダクト10とその中に位置して該環状ダクト10と相俟って二重管構造をなす内管11とを有し、さらには該内管11から垂下する注入部材12を有している。
【0028】
上記環状ダクト10は、補強体と同様の鋼製等の金属製であり、上記内筒壁部5の下部の内周面に接面する外側周板部と、天板部の外周に接面する内側周板部と、これらの上端同士そして下端同士を連結する環状の上板部そして下板部とを有し、図1に見られるように縦断面が四角形をなしていて内部に環状空間を形成している。上記下板部は、半径方向にて、上記外側周板部そして内側周板部よりも張り出している。上記環状ダクト10は、その平面形状を示す図2に見られるように、直径方向の一端側にL字状に屈曲した流入口10Aそして他端側に流出口10Bを有している。
【0029】
内管11は、図2にも見られるように、上記環状ダクト10内に配されていて、該環状ダクト10と二重管構造をなしている。本実施形態では、内管11は、短円筒管11−1を複数連続して周方向に接続して全体として環状をなしている。
【0030】
一つの短円筒管11−1は両端にフランジ11−1−Aを有し、隣接する短円筒管11−1同士はそのフランジ同士で接続されて上述のごとく環状をなしている。該内管11は、図2に見られるごとく、環状ダクト10の流入口10Aと周方向で同位置に流入口11Aが設けられている。
【0031】
上記短円筒管11−1は、図3〜図5に見られるように、長手方向(管の軸線方向)の中間部の底部に、スリット孔11−1−Bが管壁を貫通して形成されており、該スリット孔11−1−Bの位置に、注入部材12が取り付けられている。
【0032】
上記注入部材12は、横断面が横長な矩形をなす四角筒をなしていて上下に貫通する注入流路12Aが形成されている。この注入流路12Aの上側開口が形成されている上端は、上記短円筒管11−1の底部外面に密着する円弧状に形成されており、上記短円筒管11−1のスリット孔11−1−Bを覆い囲むようにして該短円筒管11−1に溶接等により接続されている。したがって、上記注入流路12Aは上側開口そしてスリット孔11−1−Bを通じて内管11の内部空間と連通し、同時にスリット孔11−B−1を注入流路12A内に位置せしめて環状ダクト10内の空間との直接の連通を阻止している。これに対し、注入流路12Aの下側開口が形成されている下端は自由端となっていて、該下側開口はそのまま下方に向け開口されている。上記注入部材12は、その外側面の一部に、外方に張り出すフランジ部12Bが設けられている。
【0033】
既述した環状ダクト10の下板部には、該環状ダクト10の周方向で、上記内管11に取り付けられた注入部材12に対応する位置に、該下板部の厚み方向で貫通する窓部10Cが形成されている。上記注入部材12は該窓部10Cを貫通するように位置しており、該窓部10Cの内縁と注入部材12の外面との間には、四角環状の隙間10C−1が形成されている。上記注入部材12のフランジ部12Bは、環状ダクト10の下板部の上面上に位置し、四角環状の上記隙間10C−1のごく一部のみに対応した部分で上記下板部に取り付けられており、上記隙間10C−1は、フランジ部12Bが占める小さな領域を除いて殆んどの部分が隙間として機能している。このフランジ部が上記下板部に取り付けられることで、内管11はその自重が該フランジ部12Bを介して上記下板部支えられると共に、環状ダクト10内で、所定位置、例えばほぼ中央にくるように位置決めされる。
【0034】
上記環状ダクト10の下板部には、該下板部に形成された窓部10Cを包囲する位置に金属製の吊下部材13が溶接等により取り付けられ垂下している。該吊下部材13は、図1にも見られるように、炉の半径方向にも延びていて、図3〜図5に見られるように、中空厚板状をなして下半部でその板幅、すなわち炉の周方向での寸法が下方に向け次第に大きくなる楔状をなすテーパ支持面13Aを外面に有している。該吊下部材13は、その板厚内に、冷却媒体流路を形成するための空所13Bが形成されている。
【0035】
上記吊下部材13の空所13Bは、上記注入部材12のフランジ部12Bよりも下方の該注入部材12の部分を受け入れ、かつ該注入部材12の外周面そして下端面との間に間隔を有する大きさそして形状に形成されている。この間隔は注入部材12の外側に注出流路13B−1を形成する。この空所13Bの上開口は、本実施形態では、上記環状ダクト10の下板部に形成された窓部10Cを取り囲むように該窓部10C外側に位置しており、該空所13B内の上記注出流路13B−1は上記窓部10Cにおける隙間10C−1を経て環状ダクト10内の空間と連通している。
【0036】
上記空所13Bの内面は、横断面における該空所13Bの幅が、上下方向のどの位置でも同じとなる直方体形状をなしているが、吊下部材13の外面のテーパ支持面13Aに沿って下方に向け広がるように形成されていてもよい。上記空所13Bは、内管11からの冷却媒体が注入部材12の下端開口から注入された際に、該空所13Bと注入部材12の外周面との間の上記注出流路13B−1を上記冷却媒体が上昇して上記窓部10Cでの隙間10C−1を経て環状ダクト10へ至る間に吊下部材13を冷却するが、その冷却効果を向上させるために、該空所13Bの内面に凸条や溝条を形成して冷却媒体との接触面積を増大させるように形成してもよい。特に、この内面に凸条が形成されている場合には、吊下部材13の吊下強度をも向上されることとなる。
【0037】
隣接する二つの吊下部材13の間の空間には、該空間に適合する形成をなす平面形状が扇状セグメントをなす耐火レンガ14が炉の半径外方より順次差し込まれ、その溝部14Aが上記吊下部材13のテーパ支持面13Aに係止し吊下支持されている。なお、環状ダクト10の下板部と上記耐火レンガ14との間には、図4に見られるように、耐熱性を有する断熱材料、例えばセラミックファイバ材15を介在せしめるが好ましい。さらには、上記吊下部材13、断熱材料15そして耐火レンガ14の間に形成される隙間には、耐熱性のある部材を挿入もしくは充填材を注入して、耐火レンガ14の保持を安定せしめることが望ましい。
【0038】
このような構成の本実施形態のレンガ冷却構造をもつ竪型炉の作動は、次のごとくである。
【0039】
(1)原料Pが原料供給管から炉床1上に落下供給され、原料堆積層を形成する。この原料堆積層は、図1のごとく、その積層上面が外筒壁部3と内筒壁部5の間の環状空間にまで及ぶ。
【0040】
(2)次に、燃料供給管20から燃料が、そして燃焼用空気供給管21から燃焼用空気が炉内に吹き込まれて燃料が燃焼し、炉蓋4の下方に形成されている加熱空間Fで生成される火炎による熱で、炉床1上で炉内に面する原料堆積層の表面層を加熱する。
【0041】
(3)加熱された上記表面層の原料は、図示しないプッシャにより落下孔2の方へ押し出されて落下孔2へ落下し、下方の焼成筒部に堆積されて、自己保有熱で焼成されつつ降下し、冷却筒部内を上昇する冷却空気により該冷却筒部で冷却された後に炉外へ取り出される。
【0042】
(4)焼成原料を冷却しつつ上昇し自ら昇温する空気は加熱空間Fで燃料の燃焼に寄与した後、炉床1上の原料堆積層の原料粒子間に進入し、堆積層内部の原料を加熱しながら排ガスとして炉蓋4の環状板部に設けられた排気管から炉外へ排出される。
【0043】
(5)一方、上記加熱空間F内の火炎の熱により接続部7は加熱を受ける。したがって、接続部7を形成する耐火レンガ14は高温に熱せられる。しかし、該耐火レンガ14は吊下部材13と接面しており、特に、耐火レンガ14の被支持面は、吊下部材13のテーパ支持面13Aに対して、耐火レンガ14の自重による力をもって接面しているので、その接面は密接であり、内部で冷却を受けている吊下部材13により上記被支持面は良好に冷却される。吊下部材13からの反力を受けるこの被支持面が良好に冷却されることで、該被支持面は脆くなることなくその強度を十分確保する。
【0044】
本実施形態において、上記吊下部材13は、次の要領で内部から冷却される。
【0045】
(A)冷却用のジャケット9の環状ダクト10そして内管11へ、流入口10Aそして流入口11Aから、それぞれ冷却媒体、例えば冷却空気が流入する。流入口10Aから流入した冷却空気は、環状ダクト10と内管11の間の空間を流れ流出口10Bから排出される。
【0046】
(B)一方、流入口11Aから内管11内に流入した冷却空気は、該内管11を形成する各短円筒管11−1に垂下して取り付けられた注入部材12の注入流路12Aに流入し、該注入流路12Aの下端から吊下部材13の空所13Bに注入される。冷却空気は、この空所13B内では、該空所13Bの内壁面と上記注入部材12の外面との間の注出流路13B−1を上昇し、窓部10Cの隙間10C−1を経て環状ダクト10内へ流入する。冷却空気は上記注出流路13B−1を上昇する過程において、上記吊下部材13を内部から冷却し、この冷却により昇温した該空気が環状ダクト10内に流入し環状ダクト10内を流れる流入口10Aからの冷却空気に合流して環状ダクト10の流出口10Bから排出される。昇温している排出空気は、炉内への供給前の原料の昇温のために用いたり、あるいは炉蓋に設けられた燃焼用空気供給管へ燃焼用空気として供給して、有効利用可能である。
【0047】
(C)環状ダクト10内の冷却空気は、内管11を経て吊下部材13を冷却した後に環状ダクト10内に流入する空気を流出口10Bへ導くための伴流を形成すると共に、各吊下部材13の冷却により次第に昇温して行く内管11内の冷却空気を冷却して後続の吊下部材13を冷却できる温度に維持する機能をも有している。
【0048】
本実施形態においては、環状ダクトは少なくとも流出口を有していれば、流入口を有していることを要しない。この場合は、冷却空気は内管のみに流入され、吊下部材の冷却後に、環状ダクトの流出口から排出されることとなる。
【0049】
さらに、本実施形態は、内管を環状ダクトの中央位置に配し、環状ダクトと相俟って二重管構造としたが、この形態に限定されず、環状ダクトの内部空間を上下に仕切り、下部空間を内管としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 炉床
2 落下孔
3 外筒壁部
4 炉蓋
5 内筒壁部
6 天板部
7 接続部
9 ジャケット
10 環状ダクト
10B 流出口
10C 窓部
11 内管
11A 流入口
12 注入部材
12A 注入流路
13 吊下部材
13B 空所
13B−1 注出流路
F 加熱空間
P 原料
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部位置で上下方向に延びる円筒状の外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有し、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒部より半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、接続部を介して該内筒壁部の下端周縁と接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられており、炉床の落下孔の内周縁から筒状をなして垂下し内部に焼成空間を形成する焼成筒部とその下方で冷却空間を形成する冷却筒部が設けられている竪型炉のレンガ冷却構造において、
接続部は、天板部の外周部と内筒壁部の下端周縁とに接触する冷却用のジャケットと、該ジャケットに対して上記軸線方向で炉内側に位置し、周方向の複数位置で、上記ジャケットの底部から垂下して設けられた金属製の吊下部材と、該吊下部材で支持される耐火レンガ部とを有し、上記ジャケットは、天板部の外周部と内筒壁部の下端周縁と接触する金属製の環状ダクトと、該環状ダクト内に配されて該環状ダクトと二重管構造をなす内管と、該内管から垂下する注入部材とを有し、環状ダクトはその周方向での複数位置で底部に窓部が形成され、注入部材は該窓部を貫通して内管から垂下すると共に上下端で開口する注入流路が中空状に形成されていて上端開口が内管内部と連通し下端開口が開放されており、上記吊下部材は上端で上記環状ダクトの窓部に連通する開口が形成されそして下端で有底となっている空所を有していて、該空所内に上記注入部材が該空所内壁面との間に間隔をもった状態で挿入されて上記間隔で注出流路を形成しており、上記環状ダクトと内管のうち少なくとも内管がその一部に冷却用媒体の流入口がそして環状ダクトの一部に流出口が設けられていて、内管に流入した冷却用媒体が注入部材の下端開口から吊下部材の空所へ注入された後、ダクトの窓部から環状ダクトを経てその流出口から流出するようになっていることを特徴とする竪型炉のレンガ冷却構造。
【請求項2】
冷却用媒体の流入口は内管と環状ダクトの両方に設けられていることとする請求項1に記載の竪型炉のレンガ冷却構造。
【請求項3】
注入部材は周面の一部に外方に突出するフランジ部が設けられていて、該フランジ部が環状ダクトの底部内面上で支持されていることとする請求項1に記載の竪型炉のレンガ冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−112548(P2012−112548A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259776(P2010−259776)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(390034212)株式会社チサキ (20)
【Fターム(参考)】