説明

竪型焼成炉

【課題】処理能力を増大しても炉本体の高さを大きくすることなく、十分に焼成のための熱を原料へ与える竪型焼成炉を提供することを課題とする。
【解決手段】炉床11より上方で予熱空間を形成する予熱筒体12と炉床11より下方で焼成空間を形成する焼成筒体13を有し、予熱空間は炉蓋より下方に落下開口11Aを有する炉床の外周縁より上方に延びる予熱筒体12の空間内に形成され、焼成空間が炉床11の落下開口11Aの周縁より下方に延びる焼成筒体13の空間内に形成され、炉蓋14に、予熱空間へ向け燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する加熱装置15が設けられ、焼成筒体13は、高さ方向中間位置で、焼成筒体13の内面から半径内方に延びる障壁部13Aが周方向の複数位置に設けられていると共に、焼成筒体13の周壁に、障壁部13Aの直下に生ずる空間へ燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する副加熱装置20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の焼成炉としては、特許文献1に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1の竪型焼成炉は、炉床より上方で予熱空間を形成する予熱筒体と炉床より下方で焼成空間を形成する焼成筒体を有する竪型筒状の炉体を備えた竪型焼成炉において、予熱空間は加熱装置が設けられている炉蓋より下方で炉体内面から半径内方に延び中央部に落下開口を有する炉床の外周縁より上方に延びて設けられた予熱筒体の空間内に形成され、焼成空間が該炉床の落下開口の周縁より下方に延びる焼成筒体の空間内に形成されている。
【0004】
上記炉蓋の中央軸線位置には、上記予熱空間に向け燃焼ガスを噴射するバーナが設けられており、上記焼成筒体は、高さ方向中間位置で、該焼成筒体の内面から半径内方に延びるブリッジが周方向の複数位置に設けられている。該複数のブリッジは、焼成筒体の中央軸線位置で連結されている。
【0005】
このような特許文献1の竪型焼成炉では、炉床上の原料は上記燃焼ガスに面する表層で予熱され、炉床の上方に設けられたプッシャで半径内方へ押し出されて上記落下開口から焼成筒体の焼成空間内へ落下する。上記炉床の落下開口から落下して焼成空間で堆積された原料の堆積層では、原料は自己が保有する熱により、この堆積層内で焼成が促進される。焼成が進行した原料は、上記焼成空間を上昇する冷却空気と接触して冷却されながら降下して、焼成筒体の下部に設けられた排出筒から製品として排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−068821
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の竪型焼成炉にあっては、構造上そして機能上において改善すべき余地があった。
【0008】
特許文献1に開示されている種の竪型焼成炉は、原料の処理能力を増大させようとすると、その分、加熱焼成時間を長くせねばならず、炉体の高さが大きくなってしまう。また、炉床の原料はその堆積層の表面のみで予熱され、表面側から焼成空間へ落下するが、予熱が十分であるとは限らず、焼成空間内で降下する間に十分に焼成されないこともある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑み、処理能力を増大しても炉本体の高さをさほど大きくすることなく、十分に焼成のための熱を原料へ与えることのできる竪型焼成炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る竪型焼成炉は、炉床より上方で予熱空間を形成する予熱筒体と炉床より下方で焼成空間を形成する焼成筒体を有する竪型筒状の炉体を備える。
【0011】
かかる竪型焼成炉において、本発明では、予熱空間は加熱装置が設けられている炉蓋より下方で炉体内面から半径内方に延び中央部に落下開口を有する炉床の外周縁より上方に延びて設けられた予熱筒体の空間内に形成され、焼成空間が該炉床の落下開口の周縁より下方に延びる焼成筒体の空間内に形成され、上記炉蓋に、上記予熱空間へ向け燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する加熱装置が設けられ、上記焼成筒体は、高さ方向中間位置で、該焼成筒体の内面から半径内方に延びる障壁部が周方向の複数位置に設けられていると共に、焼成筒体の周壁に、上記障壁部直下に生ずる空間へ燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する副加熱装置が設けられていることを特徴としている。
【0012】
このような構成の本発明の竪型焼成炉によると、炉床上に供給されて堆積層を形成する原料は、加熱装置から予熱空間へ噴射される燃焼ガスもしくは高温ガスにより、上記堆積層の表面から加熱を受け予熱される。予熱された堆積層の表面の原料は、プッシャにより炉床の落下開口を経て落下し、しかる後、周方向の複数位置で焼成筒体の内壁面に設けられた障壁部同士間を経てから焼成筒体の下部に達して堆積層を形成する。この焼成空間での堆積層は、その上面が焼成筒体の障壁部よりも上方に位置するようになる。
【0013】
この焼成空間内の堆積層には、該堆積層の上面よりも下方に上記障壁部が存在しているので、該障壁部の直下に原料不在の空間が形成される。本発明では、この空間へ副加熱装置から燃焼ガスもしくは高温ガスが噴射されている。したがって、焼成空間内の原料は、その焼成途中で熱が補給される。かくして、炉本体の高さが従来よりも低くて焼成筒体内での原料の滞留が短くても、十分に焼成が促進される。
【0014】
本発明において、焼成筒体の周方向の複数位置に設けられた障壁部は半径方向内方に延び焼成筒体の中央軸線位置で互いに連結されてブリッジを形成しているようにすることができる。
【0015】
竪型焼成炉では、焼成筒体の補強のために上記ブリッジを設けていることが多い。換言すれば、本発明では、このようなブリッジの直下に形成される原料不存在の空間へ副加熱装置から燃焼ガスや高温ガスを噴射することで、焼成途中での原料へ焼成促進のための熱を供給できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明は、焼成筒体に設けられた障壁部の直下に形成される原料不存在の空間へ、副加熱装置から燃焼ガスあるいは高温ガスを供給することとしたので、燃焼途中の原料へ熱を補給して焼成を促進することができることとなり、その結果、原料は焼成のための焼成筒体内での滞留時間が短くても十分に焼成され、処理能力を増大させても、焼成筒体の高さ寸法を大きくすることが必要なくなって、この点で、炉体、すなわち竪型焼成炉の高さ方向での小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態としての竪型焼成炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1において、回転することなく静止せる竪型の筒状をなし主として耐火性レンガで作られた炉体10は、半径方向中央部に落下開口11Aが形成された環板状の炉床11と、該炉床11の外周縁から上方に延びる予熱筒体12と、該炉床11の内周縁、すなわち上記落下開口11Aの周縁から下方に延びる焼成筒体13とを有している。上記炉床11の直上位置には、周方向の複数位置で、半径方向に往復動するプッシャ11Bが設けられている。本実施形態では、プッシャ11Bは上下二本が組として設けられている。
【0020】
予熱筒体12は、上記炉床11の外周縁から上方に向け、その上端縁に環板状の天板部12Aが取り付けられている。該天板部12Aは、予熱筒体12の上端縁から半径内方に延び、その内周縁から内筒部12Bが垂下している。この内筒部12Bの下端は炉蓋14の外周部に固定され、該内筒部12Bがこの炉蓋14を、該炉蓋14の外周部に設けられた環状の冷却部14Aを介して支持している。この冷却部14Aは、炉蓋14を支持する強度のダクト状の環体をなしていて、内部へ冷却媒体、例えば冷却水が流通していて、炉蓋14の外周部と内筒部12Bの下端部を冷却して、炉蓋14の支持構造の脆弱化を防止している。
【0021】
炉蓋14には、加熱装置として、燃料と空気を炉体内に噴射供給するバーナ15が、炉蓋14の中央鉛直軸線の位置に設けられている。本発明において、加熱装置としてのバーナ15は、その燃料の種類を問わず、液体燃料でも、気体燃料でも、固体燃料でもよい。あるいは、加熱装置は、炉外で高温化されたガスを炉体内に噴射するようになっていてもよい。
【0022】
上記天板部12A、内筒部12B、予熱筒体12そして炉床11によって包囲される予熱空間は、焼成に先立ち予熱されるべき石灰石等の原料Mを炉床11上に堆積するための空間を形成するのに供され、特に該予熱空間の下部での原料Mの予熱に貢献する。この予熱空間の上部では、原料供給管17が天板部12Aに接続されている。この原料供給管17は、上記天板部12Aの周方向複数位置に設けられており、各原料供給管17は、天板部12Aより上方の炉体外で、二つに分岐されていて、一方が傾斜せる原料投入管17A、他方が上方に垂立する排気管17Bとなっている。複数の原料投入管17Aはそれらの上端で原料貯留槽18の底壁18Aに開口して接続されている。該原料貯留槽18は、仕切板18Bによって上空間と下空間に仕切られており、両空間は仕切板18Bから垂下する短筒18Cにより連通している。また、原料貯留槽18の蓋板には、開閉可能な充填口18Dが設けられている。該充填口18Dは、開口されて適宜時に原料Mを外部から槽内の上空間へ充填されるのに供する。上空間に供給された原料Mは上記短筒18Cを経て下空間に落下する。
【0023】
上記原料投入管17Aから上方に向け分岐された複数の排気管17Bは、該排気管17Bの上端で、上記原料貯留槽18を取り囲むように設けられた環状ダクト19に接続されており、該環状ダクト19は、その吸引口19Aを経てブロワ等の図示せぬ吸引装置に接続されている。
【0024】
炉床11の落下開口11Aの周縁から垂下して設けられている筒状に耐熱材料で作られている焼成筒体13は、上部で下方に向け拡径された後に下方に向け円筒状に形成され、その下部には冷却筒体13Bが下方に向けつぼまる形をなして設けられている。上記焼成筒体13の内面には、上下方向での中間位置に、周方向の複数箇所でアーチ状のブリッジ13Aが設けられている。これらのブリッジ13Aは炉体10と同様に耐火レンガで作られていて、上方から見たときに、焼成筒体13の内面位置からその中心軸線位置に向け延び、互いのブリッジ13Aが該中心軸線位置で連結されている。換言すれば、複数のブリッジ13Aは、この中心軸線位置から放射状に半径外方に延びて上記焼成筒体13の内面にまで達している。
【0025】
上記焼成筒体13には、周方向で少なくとも上記ブリッジ13Aの位置で、かつ高さ方向で該ブリッジ13Aの直下となる位置に、周壁に半径外方へ没した副加熱空間16が形成されている。この副加熱空間16は周方向に連続する環状をなしていてもよい。該副加熱空間16には、外壁に取り付けられた副加熱装置20が設けられていて、加熱ガスとして、微粉炭素の燃料と空気とが上記副加熱空間16へ噴射するようになっている。上記ブリッジ13Aの上方には、外壁に温度センサ21が設けられていて、上記ブリッジ13Aより上方における原料の温度を検出して、その検出温度に応じて、上記副加熱装置20の噴射燃料と空気の量を調整できるようになっている。
【0026】
上記焼成筒体13の下部からは、下方に向け縮径してテーパ状をなす冷却筒体13Bが垂下し、この冷却筒体13Bからは筒状の排出筒22が垂下している。該排出筒22は、下部が小径となっていて、そこからは、傾斜する取出管23が下方に延びている。該取出管23内には、上下で異なる三位置に、回動式のダンパ23A,23B,23Cが設けられていて、上下のダンパ23A,23Cと中間のダンパ23Bとが開閉時期を異にしている。
【0027】
上記冷却筒体13Bから排出筒22へ移行する範囲には、外部から冷却空気を受ける受気管24が進入して設けられている。該受気管24はL字状に屈曲されて上方に延び、その上端に二段傘状の分気体25が取り付けられている。この傘状の分気体25により、上記受気管24の上端開口へ原料が進入せず、冷却空気が上記上端開口から周囲へ分散送気されるようになる。上記受気管24の垂立部にはその外面に段状の滑落案内体26が取り付けられている。この滑落案内体26は、上面に環状段部が形成されていて、上段に比し下段が大きい直径を有している。好ましくは、この滑落案内体26は、外部から駆動力を受けて、上記受気管24まわりにゆっくりと回転する。焼成後冷却された原料は、上記滑落案内体26の上面を順次滑落して排出筒22の下部へ達する。
【0028】
次に、かかる構成の本実施形態装置について、原料が炉体内へ投入され炉体内で焼成される原理を説明する。
【0029】
(1)充填口18Dから原料貯留槽18の上空間へ供給された石灰石等の焼成対象物たる原料Mは仕切板18B上に貯留され、複数の短筒18Cから該原料貯留槽18の下空間へ落下し、底壁18Aから斜め下方に延びる複数の原料投入管17Aを経て落下し炉体10内の炉床11上に堆積される。炉床11上での原料Mの堆積層は、炉体10の半径方向内方に安息角をもって自由表面を形成する。
【0030】
(2)炉蓋14に設けられた加熱装置としての複数のバーナ15からは燃料と空気が噴射されて燃料が燃焼してその火炎が下方に向け噴出される。
【0031】
(3)上記炉床11上で堆積層をなす原料Mはその自由表面で上記火炎により加熱されて予熱され、プッシャ11Bの作動により、逐次落下開口11Aから焼成筒体13内へ落下する。予熱された原料Mは落下開口11Aから落下すると、周方向の複数位置に障壁部として設けられたブリッジ13A同士間を通り、さらに落下して、上記焼成筒体13内で、ブリッジ13Aよりも上方位置に自由表面をもつように堆積される。上記ブリッジ13Aの直下には、原料不存在の空間が形成される。すなわち、その空間には原料の堆積層の自由表面が存在するようになる。該空間には副加熱装置20からの燃焼ガスが噴射されており、堆積層はこの空間に面する上記自由表面で加熱されて熱が補給され焼成が促進される。
【0032】
(4)一方、受気管24から取り入れられた外部空気は、該受気管24を経て、冷却空気として、分気体25から堆積層内へ進入し、焼成が十分に進行した原料を冷却しながら、自らは昇温して、予熱空間へ達し、燃焼空気の一部として燃焼に寄与する。
【0033】
(5)炉床11上の原料Mの堆積層にはその自由表面から予熱空間での燃焼ガスの一部が層内に流入し、予熱に寄与する。炉外に設けられた環状ダクト19は、図示しない外部のブロワにより吸引されているので、上記炉床11上の原料Mの堆積層を透過する燃焼ガスの一部は、原料Mとの熱交換により降温した後に、上記複数の排気管17B中を上昇し、上記環状ダクト19を経て排気される。
【0034】
(6)このようにして焼成そして冷却された原料Mは排出筒22を降下しつつ冷却され、取出管23を滑落して、交互に開くダンパ23A,23Cそして23Bを経て、製品として取り出される。
【0035】
本発明は、図示されそして説明された形態のみには限定されず、種々変更が可能である。例えば、加熱装置そして副加熱装置いずれも、燃料を噴射して燃焼ガスを生ずる装置、あるいは、炉外で燃焼した後に炉内に高温ガスとして噴射する装置とすることができる。又、燃料としては、液体燃料、気体燃料そして固体燃料のいずれをも、あるいはそれらの混合を用いることもできる。固体燃料としては、噴射に好適な微粉炭を用いることができる。
【0036】
さらには、複数の障壁部は、既述のブリッジ部でなくとも、焼成筒体の周壁から半径内方へ突出していて、中心軸線位置で連結されていなくともよい。また、障壁部そして副加熱装置から加熱ガスを受ける空間は、上下方向の複数位置に設けられていてもよく、その場合、上方の障壁部と上下の障壁部とは、周方向で異なる位置に設けられていることが好ましい。
【0037】
また、図示の例では炉床は非回転であったが、本発明は炉床が鉛直中心軸線まわりに回転する形式の竪型炉でも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
10 炉体
11 炉床
11A 落下開口
12 予熱筒体
13 焼成筒体
13A 障壁部(ブリッジ)
14 炉蓋
15 加熱装置(バーナ)
20 副加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床より上方で予熱空間を形成する予熱筒体と炉床より下方で焼成空間を形成する焼成筒体を有する竪型筒状の炉体を備えた竪型焼成炉において、
予熱空間は加熱装置が設けられている炉蓋より下方で炉体内面から半径内方に延び中央部に落下開口を有する炉床の外周縁より上方に延びて設けられた予熱筒体の空間内に形成され、焼成空間が該炉床の落下開口の周縁より下方に延びる焼成筒体の空間内に形成され、
上記炉蓋に、上記予熱空間へ向け燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する加熱装置が設けられ、
上記焼成筒体は、高さ方向中間位置で、該焼成筒体の内面から半径内方に延びる障壁部が周方向の複数位置に設けられていると共に、焼成筒体の周壁に、上記障壁部直下に生ずる空間へ燃焼ガスもしくは高温ガスを噴射する副加熱装置が設けられていることを特徴とする竪型焼成炉。
【請求項2】
焼成筒体の周方向の複数位置に設けられた障壁部は半径方向内方に延び焼成筒体の中央軸線位置で互いに連結されてブリッジを形成していることとする請求項1に記載の竪型焼成炉。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207828(P2012−207828A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72431(P2011−72431)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(390034212)株式会社チサキ (20)
【Fターム(参考)】