説明

竪型粉砕機の制御方法及び制御装置

【課題】 運転中に生じる異常振動を効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法と、その制御方法に用いるに好適な制御装置を提供する。
【解決手段】 予め、竪型粉砕機1の運転中に、竪型粉砕機1の出口ガス温度を検出しながら、振動値を測定し、振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超えない範囲の出口ガス温度を、境界ガス温度の範囲として記録する。竪型粉砕機1の制御運転中においては、竪型粉砕機の出口ガス温度を測定し、該測定した出口ガス温度が予め記憶した境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、回転テーブルの回転数を減速するによって、異常振動を防止することができる。本発明は、原料を粉砕する際に生じやすい竪型粉砕機の異常振動を、出口ガス温度から予測し、テーブル回転数を調整することにより異常振動を抑制するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、又化学品等を原料として粉砕する竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に係り、特に、竪型粉砕機で原料を微粉砕する際に生じやすい異常振動を防止又は抑制するに好適な竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭やオイルコークス等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。竪型粉砕機としては,特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。
【0003】
【特許文献1】特開平5−104012号公報
【0004】
特許文献1に示される竪型粉砕機は、粉砕機の下部から吹き込んだ気流によって、粉砕した原料を搬送し上昇させるとともに、竪型粉砕機内の上部に配した分級機構によって、気流により搬送された原料の中から微粉のみを選抜して、機外に取り出すタイプの竪型粉砕機であって、一般的にエアスエプト式と呼ばれる型式の竪型粉砕機である。
なお、竪型粉砕機の他のタイプには、内部に分級機構を備えていないものもあり、従来技術として周知である。
【0005】
以下、特許文献1に開示されたエアスエプト式の竪型粉砕機の構造等について簡略に説明する。特許文献1に開示された竪型粉砕機は、回転テーブルの上方に、分級機構として複数毎の回転羽根を有した回転セパレータを備えており、該回転セパレータの中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュートが配されている。そして、原料投入シュートを介し、原料投入口から回転テーブル上に原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
【0006】
原料投入シュートによって回転テーブルの上方から、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル上で渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブルの外周部に向かって移動する。回転テーブルの外周縁部にはダムリングが設けられ、回転テーブル上で所要の原料厚みを保持するように構成されているので、回転テーブルの外周部に移動した原料は、ダムリングでせき止められ、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれ粉砕される。
【0007】
なお、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリングを乗り越え、回転テーブル上面の外周部とケーシングとの隙間である環状通路(環状空間部と称することもある)へと向かう。
【0008】
竪型粉砕機の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口より、エキゾーストファン等の送風機により、竪型粉砕機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機のケーシング内で、該回転テーブル下方から回転セパレータ上方に向かうガスの気流が生じている。
従って、該ダムリングを乗り越えて環状通路に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング内を上昇する。
【0009】
ケーシング内において上昇する気流は、回転セパレータの影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング下方に落下する等し、回転セパレータを通過することができない。回転セパレータを通過できず、落下した原料は、再度粉砕ローラに噛み込まれて粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0010】
環状通路に達した原料の中で特に粒径の大きな原料は、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。
【0011】
なお、前述した竪型粉砕機で問題となりやすいのは、竪型粉砕機の異常振動である。特許文献1には、竪型粉砕機の運転中に原料層厚の時間的変化を監視し、予め設定した時間幅で原料層厚が単調減少したとき等において、回転テーブル上の原料層厚を改善して振動を回避するために、回転テーブルの回転速度を調整して異常振動を防止する竪型粉砕機の制御方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記した従来技術に従い、回転テーブル上の原料層厚を調整することより振動を回避できる場合も多いが、竪型粉砕機の運転中においては、回転テーブル上の原料層厚がほとんど変化しないにもかかわらず、異常振動が発生する場合がある。
この原因については、従来、明確になっておらず、対処的に運転条件を変化させて振動を回避するしかなく、このような場合においても、振動を効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法並びに制御装置が求められていた。
【0013】
本発明は、以上のような要求に鑑みてなされたものであり、竪型粉砕機の異常振動を防止するに好適な竪型粉砕機の制御方法並びに制御装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機の制御方法は、
(1) 複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕するとともに、該粉砕した原料を、該回転テーブルの下方に設けたガス導入口から導入したガスによって吹き上げて、回転テーブルの上方に設けた製品取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機の制御方法において、 竪型粉砕機の制御運転中に、該竪型粉砕機の出口ガス温度を測定し、該出口ガス温度が予め記憶した境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、回転テーブルの回転数を減速する。
【0015】
(2) (1)に記載の竪型粉砕機の制御方法において、予め運転中に、竪型粉砕機の出口ガス温度を検出しながら、竪型粉砕機の振動値を測定して、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超えない出口ガス温度を境界ガス温度の範囲として記録する。
【0016】
(3) (1)に記載の制御方法を行う竪型粉砕機の制御装置であって、前記竪型粉砕機から排出される出口ガスの温度を検出するためのガス温度計を有して、
該ガス温度計からの信号を演算して出口ガスの温度を検出する演算機、境界ガス温度を記憶した記憶機、及び該演算機で検出した出口ガス温度と境界ガス温度を比較して、該測定した出口ガス温度が境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、回転テーブルの回転数を減速する指令を発信する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、竪型粉砕機の異常振動を、竪型粉砕機の出口ガス温度から予測できるので、異常振動が生じる前に竪型粉砕機の回転テーブル回転速度を減速して異常振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の好ましい実施形態の例について詳細に説明する。
図1は本実施形態に係り竪型粉砕機の概略の構造を説明するための説明図である。図2は本実施形態に係り竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。図3は原料の水分量と摩擦係数の関係を表すグラフ、図4は回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフ、図5は振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、回転テーブル2、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)外周部を円周方向に等分する位置に配設した複数個のコニカル型の粉砕ローラ3、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2B、減速機2Bを介して回転テーブル2を駆動する可変速式の電動機2M、及び電動機2Mの回転数を制御する制御盤50、を備えている。
【0020】
粉砕ローラ3は、軸7により下部ケーシングに回動自在に軸着した上部アーム6と、該上部アーム6と一体に形成した下部アーム6Aとを介して油圧シリンダ8のピストンロッド9に連結されており、該油圧シリンダ8の作動によって回転テーブル上面2Aの方向に押圧されて、回転テーブル上面2Aに原料を介して従動することによって回転する。
【0021】
前記ケーシング1Bの回転テーブル上面2Aの中央上部には、セパレータ14と、原料投入口35が設けられており、また、セパレータ14の中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュート13が配されて、原料投入シュート13を介して原料投入口35から回転テーブル上面2Aに原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
また、セパレータ14は、セパレータ14の回転軸を中心として上方に拡径する逆円錐台状に一定間隔の隙間をあけて並べられた複数枚の羽根14Aを備えて、図示しない駆動装置により自在に回転できる構成となっている。
【0022】
原料投入シュート13から投入した原料は、回転テーブル上面2Aを渦巻き状の軌跡を描きながら回転テーブル上面2Aの外周部に移動して、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブル上面2Aの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル上面2Aの外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。ここで、ケーシング1Bの回転テーブル2の下方には、ガスを導入するためのガス導入口33を設けており、さらに回転テーブル上方には該ガスとともに粉砕した原料を取り出すための上部取出口39を設けている。
【0023】
竪型粉砕機1の運転中において、該ガス導入口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、前記ケーシング1B内において該回転テーブル下方からセパレータ14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じている。
【0024】
竪型粉砕機1内に投入した原料と、回転テーブル2と粉砕ローラ3に粉砕されてダムリング15を乗り越えた原料の一部は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、回転セパレータ14に達する。
ここで、径の大きく重量の大きな原料はセパレータ14の羽根14Aを通過することができずセパレータ14の下方に落下して再度粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕されるとともに、径の小さな原料は、隙間をあけて並べられた羽根14Aの間を抜けてセパレータ14を通過し、上部取出口39より取り出される。
【0025】
また、粉砕ローラ3に噛み込まれずそのまま環状通路に達したような一部の極大な粒径の原料は、環状通路30より回転テーブル下方に落下して下部取出口34より竪型粉砕機1の外に取り出される。
【0026】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であって、例えば、粉砕ローラ3の形状がスフェリカル形状のタイヤ型の竪型粉砕機1であっても良い。また、要求される製品の粒度に応じて、セパレータ14は固定タイプのものであっても良い。
【0027】
ここで、本実施形態においては、竪型粉砕機1から排出される出口ガス温度を図るための温度計として温度センサS1、及び、竪型粉砕機1の振動値を測定するための振動センサS2を備えている。
【0028】
次ぎに、竪型粉砕機1に備えた制御盤50について簡略に説明する。
図1に示した実施形態において、制御盤50は、温度センサS1からの信号を演算して、出口ガスの温度を検出する演算機50Bを備えている。
また、図1に示した実施形態においては、予め運転中に、演算機50Bから送信される出口ガス温度と振動センサS2より送信される振動値が入力されて、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超えない出口ガス温度を、境界ガス温度の範囲として記録する記憶機を備えている。
【0029】
本実施形態による制御方法によって、竪型粉砕機1を制御中(制御運転中)には、演算機50Bで検出した出口ガス温度と、記憶機50Cに記憶した境界ガス温度の範囲を比較して、該検出した出口ガス温度が、予め記憶した境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、電動機2Mに、回転数を減速するための信号を発信する制御装置50Aを備えている。
なお、図1に示す実施形態において、電動機2Mは、可変速式であり、減速機2Bを介して回転テーブル2に連結されている。従って、電動機2Mは、制御盤50の制御装置50Aよりから送信される信号によって、その回転速度を自在に変化させて、回転テーブル2の回転速度を自在に変化させることができる。
【0030】
次に本実施形態に係る粉砕システムの好ましい1例ついて図2を参考に説明する。
図2に示した粉砕システムは、竪型粉砕機1、原料ホッパ20、バケットエレベータ25、原料ホッパ21、エキゾーストファン89等を備えている。
原料ホッパ20に蓄えられた原料は、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に投入されて粉砕される。竪型粉砕機1内で粉砕された原料は、エキゾーストファン89によるガスの気流により、竪型粉砕機1内を上方に移動して製品取出口39から機外に取り出される。また、竪型粉砕機1の中に投入された原料の中で、製品取出口39から機外に取り出されなかった一部の原料については、下部取出口34から機外に取り出されて、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に再度投入されて粉砕される。
【0031】
以下、本発明による竪型粉砕機の制御方法について、従来技術と異なる部分を中心として、第1の実施形態を説明する。
なお、第1実施形態に用いた竪型粉砕機1は、粉砕ローラの個数が3個であって、テーブル回転数は73RPMであり、粉砕ローラ中心直径Dは0.4mであり、テーブル直径Tは0.64mである。
【0032】
原料投入シュート13によって、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル2の外周部に向かって移動し、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。
【0033】
回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル2A上面の外周部とケーシング1Bとの隙間である環状通路30へと向かう。
【0034】
竪型粉砕機1の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口33より、エキゾーストファン89によって、機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機1のケーシング1B内で、回転テーブル2下方から回転セパレータ14上方に向かうガスの気流が生じている。従って、ダムリング15を乗り越えて環状通路30に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング1B内を上昇する。
【0035】
ケーシング1B内において上昇する気流は、回転セパレータ14の影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング1B下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング1B下方に落下する等し、回転セパレータ14を通過することができない。
【0036】
回転セパレータ14を通過できず、落下した原料は、竪型粉砕機内で循環して、再度、粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕される。或いは、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0037】
以下、竪型粉砕機1の制御方法について説明する。
まず、本発明による竪型粉砕機の第1実施形態においては、予め運転中に、温度センサ1により竪型粉砕機1の出口ガスの温度を検出しながら、振動センサS2により竪型粉砕機1の振動値を測定して、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超えない出口ガス温度を境界温度の範囲として、記憶機50Cに記録する。
言い換えると、本発明による第1の実施形態においては、まず、異常振動が発生しない出口ガス温度を境界ガス温度の範囲として記憶機50Cに記憶する必要がある。
なお、この境界ガス温度の範囲については、制御運転前に実際に測定しておき、制御運転の前に設定値として制御盤に入力し、記憶機50Cに記憶させても良い。
【0038】
次ぎに、竪型粉砕機1の制御運転中においては、温度センサS1で竪型粉砕機出口ガスの温度を検出しながら、記憶している境界ガス温度の範囲と比較する。
そして、竪型粉砕機1の制御運転中においては、演算機50B検出した出口ガス温度が、前記記憶している境界ガス温度を逸脱し、高くなる、或いは低くなった場合に、制御装置50Aから、電動機2Mに回転数低下の信号を発信して、回転テーブル2の回転数を低下させて、異常振動の発生を防止する。
【0039】
ここで、図3に原料の水分量と摩擦係数粉(粉砕ローラと原料との間の動摩擦係数)の関係を示すが、原料の中の水分量が適正な範囲を逸脱すると一挙に摩擦係数が低下し、その結果、粉砕部ですべりなどが生じて、竪型粉砕機1の振動を誘発する原因となっている。投入する原料の水分量を測定して、テーブル回転数を制御する方法も考えられるが、原料中に含まれる水分量が変化すると、それを気化させるに必要な熱量が変化する。
従って、導入するガス温度を一定とした場合に、出口ガス温度を監視すれば、原料の中に含まれる水分量が把握できることになり、原料の中に含まれる水分量が適正な範囲を外れない境界ガス温度の範囲を決定することで、異常振動の発生を防止又は抑止できる。
【0040】
図4に回転テーブル2の回転速度と動摩擦係数(粉砕ローラと原料との間の動摩擦係数)の関係を示すが、テーブル回転速度を低下させることによって、摩擦係数は上昇する。
【0041】
このような理由から、竪型粉砕機1の運転中においては、出口ガス温度を測定し、該出口ガス温度が予め記憶した境界ガス温度を逸脱した場合に回転テーブル2の回転速度を低下させて、粉砕ローラ3と原料の動摩擦係数を回復することが、振動の防止に有効である。
【0042】
ところで、摩擦係数と竪型粉砕機振動の関係は、摩擦係数が低下した際に振動、特に自励振動の起点となる。
【0043】
竪型粉砕機に発生する振動は摩擦係数の他に下記のように考えることもできる。
【0044】

【0045】
なお、加振力をバネ定数で割ったものを変位量(A)とする。
【0046】
振動増幅係数は図5に示したように加振振動数(ω)と粉砕層の振動数(ω0)の比率により変化することが分かる。
通常は、図5においてω/ω0が1.0以下(=共振点以下)で運転されているので、粉砕層の振動数(ω0)を変えずに(製品の粒度に比例し同粒度は変更できないため)加振振動数(ω)を低下させることにより振動増幅係数を低下させることができる。
【0047】
加振振動数(ω)は粉砕ローラの回転数に比例するため同調するテーブル回転数を変更することにより加振振動数を低減できる。この結果、分母、分子ω/ω0の内分子を低下させれば振動増幅係数は減少するので、竪型粉砕機振動が抑制できる。
【0048】
以上、説明したように、振動を抑制または抑止する方法として、摩擦係数の確保法と加振振動数の制御法がある。この2方法に共通するものは、回転テーブルの回転数であり、原料性状に合わせて都度適正な回転数に設定することにより竪型粉砕機の能力を最大限に引き出すことができる。
【0049】
即ち、竪型粉砕機の出口ガス温度が、振動を生じない適正な範囲から外れ逸脱した場合に、テーブル回転数を任意に低下させ、加振振動数を低下させ、振動増幅係数を減少させれば、竪型粉砕機振動を発生させる前に振動要因を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る竪型粉砕機の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。
【図3】原料の中に含まれる水分量と動摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図4】回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図5】振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
13 原料投入シュート
14 回転セパレータ
15 ダムリング
1B ケーシング
20 原料ホッパ(新規原料供給用)
21 原料ホッパ
25 バケットエレベータ
30 環状通路
33 ガス導入口
89 エキゾーストファン(送風機)
34 下部取出口
35 原料投入口
39 製品取出口(上部取出口)
50 制御盤
50A 制御装置
50B 演算機
50C 記憶機
S1 温度センサ
S2 振動センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕するとともに、
該粉砕した原料を、該回転テーブルの下方に設けたガス導入口から導入したガスによって吹き上げて、回転テーブルの上方に設けた製品取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機の制御方法において、
竪型粉砕機の制御運転中に、該竪型粉砕機の出口ガス温度を測定し、該出口ガス温度が予め記憶した境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、回転テーブルの回転数を減速する竪型粉砕機の制御方法。
【請求項2】
予め運転中に、竪型粉砕機の出口ガス温度を検出しながら、竪型粉砕機の振動値を測定して、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超えない出口ガス温度を境界ガス温度の範囲として記録する請求項1に記載の竪型粉砕機の制御方法。
【請求項3】
前記竪型粉砕機から排出される出口ガスの温度を検出するためのガス温度計を有して、
該ガス温度計からの信号を演算して出口ガスの温度を検出する演算機、境界ガス温度を記憶した記憶機、及び該演算機で検出した出口ガス温度と境界ガス温度を比較して、該測定した出口ガス温度が境界ガス温度の範囲を逸脱した場合に、回転テーブルの回転数を減速する指令を発信する制御装置とを備えて、請求項1に記載の竪型粉砕機の制御方法を行う竪型粉砕機の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate