説明

端子保護キャップ

【課題】電線が通される空孔が、軸線方向に小径空孔と大径空孔とを連ねるように有しており、この両空孔の境界に空孔の内面に突出するバリが形成されてなるゴム製の端子保護キャップで、バリを除去するまでもなく、電線の挿通によって切断することとしても、その挿通時又は挿通後においても、そのバリが切断、分離することなく、空孔内において繋がったままで安定して存置されるようにする。
【解決手段】
バリ41の根元における空孔23の内周方向に沿う一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部43を設けた。この厚肉部43を空孔23の内面につながるように形成した。バリ41が小径空孔24側から通される電線7の先端で破られても、厚肉部43があるから、バリは切断分離し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製の端子保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゴム製の端子保護キャップ(以下、保護キャップとも言う)の1例として、図8の上に示したような保護キャップ11がある(特許文献1)。このものは、同図下左に示したガスセンサ2(例えば酸素センサ)用の保護キャップ11であり、酸素濃度等の出力信号を外部に送信するための電線(接続コード)7の先端に固着された端子金具4を収容して保護するとともに、この端子金具4をセンサ2の素子1からの出力取り出し用の端子金具3と接続した後、その接続部分をカバーし、絶縁保護する役割りをも担っている。このゴム製の保護キャップ11は、図8に示したように、正面視、円筒状の主筒状部12を主体として、その左右に突出する筒状部21、22を有する概略T字管形状を呈しており、圧入方式等の成形法により製造される。
【0003】
この保護キャップ11のうち、主筒状部12の軸線G2に対して垂直な軸線G1方向に同図右に向かって横向きに延びる筒状部21は、主筒状部12内の奥所に収容、配置された端子金具4に接続される電線7が通されるところである。この保護キャップ11において、端子金具4を主筒状部12内の奥所に収容、配置するには、筒状部21の外部から、保護キャップ11の内側(空間13)に電線7の端部(先端)を通し、その端部を端子金具4の圧着部5にカシメによって圧着して固定し、その後、電線7を筒状部21の外側から引張るようにしてその配置がなされる。この筒状部21の内側の空孔23は、外側の先端(面)21b寄り部位が小径空孔24(相対的に内径の小さい空孔)をなしており、これに続いて保護キャップ11の主筒状部12の内側空間13に向けた部位が内径の大きい大径空孔(相対的に内径の大きい空孔)26をなしている。これは、小径空孔24に電線7を隙間無く通すとともに、大径空孔26に端子金具4の圧着部5を収容し、その空孔23の大小の径違い部(境界壁)27にてその圧着部5を止めるためである。
【0004】
図8に示した保護キャップ11の筒状部21に電線7が通される前には、小径空孔24と大径空孔26との境界又は境界近傍において、図8中に点線で示したように、空孔の内面にはバリ41が膜状に形成されている(図9−A参照)。そして、このバリ41は、上記したように電線7を通す過程で、その先端で突き破られるように形成されている(図9−B参照)。したがって、詳しくは後述するが、図8に示したように電線7が通された状態の保護キャップ11においては、そのバリ41が空孔23の内面に繋がったままで電線7の表面(絶縁被膜)に押し付けられるような形となり、或いは端子金具4に付着する形で残存することになる(図9−C参照)。ここで、保護キャップ11にこのようなバリ41が形成される理由を、以下に、保護キャップ11の製造方法と共に説明する。
【0005】
このような保護キャップ11を、例えば、圧入成形方式や圧縮成形方式、或いは射出成形方式により製造する場合においては、例えば、図10に示したような型割り面PLとなる上型101と下型121との2つ割りの成形型(金型)100が用いられる。この成形型100は、保護キャップ11の横向きの筒状部21の軸線G1と垂直で、主筒状部12の軸線(中心)G2を通る断面(平面)が型割り面PLとされている。そして、上型101と下型121との間に位置決め配置される、保護キャップ11の内面14を成形する入れ子(芯型)131とからなっている。
【0006】
このような成形型100において、入れ子131は、主筒状部12の内面14(図8参照)を成形する主筒状部成形部133と、入れ子131の先端の一方の側(図10下側)において突出状に形成され、保護キャップ11における筒状部21のうちの大径空孔26の内面を成形する大径空孔用コア136を一体的に備えている。他方、筒状部21の小径空孔24の内面は、下型121に立設状ないし突出状に設けられた柱形状をなす小径空孔用コア144にて成形されるように構成されている。すなわち、筒状部21の大径空孔26の内面は、主筒状部12の内面を成形する主筒状部成形部133の一側において突出状に形成されてなる、大径空孔26の内面を成形する大径空孔用コア136の先端に対し、小径空孔用コア144の先端が型閉じ状態において当接状をなすことで、筒状部21の内面の成形面が形成されるように設定されている(図10の左下拡大図参照)。
【0007】
一方、この入れ子131の大径空孔用コア136の先端(面)137には、一定深さの凹部(凹となす円錐(円錐台)形状又は球面状の窪み)138が設けられている。他方、小径空孔用コア144の先端には、凹部138に嵌合するが、その凹部138の深さ寸法より小さい突出量の凸面(凸となす円錐面又は球面ないし凸部)145が設けられている。これにより型閉じ時には、大径空孔用コア136の先端面137の凹部138に、小径空孔用コア144の先端の凸面145が若干嵌り込む形で、この凸面145の外周縁が凹部138の外周縁に当接すると共に、両コア136,144の先端相互の間には空隙(空間)Kが形成される。なお、保護キャップ11における左の筒状部22の空孔に対応する部位には、上型101に固定されたその空孔用コア105が設けられており、型閉じ時においてその先端が主筒状部成形部133の一側(図10上)に当接するように設定されている。
【0008】
保護キャップ11は、このような型閉じ状態においてゴム(生地)がキャビティC内に圧入されることで、その成形がなされるが、その際には、前記した両コア136,144の先端相互の間の空隙(空間)Kにゴムがはみ出ることになる。その結果、製造された保護キャップ11の筒状部21には、図9−Aに示したように、その小径空孔24と大径空孔26との境界27近傍に、空孔23の内面に突出して張り出すバリ41が膜状に形成されることになる。なお、このようなゴムのはみ出しによるバリ41は、両コア136,144の先端同士の衝突(成形型(金型)におけるコア部の損傷)を回避するためと、ゴムの充填性を高めるためのものでもある。
【0009】
ところで、このような保護キャップ11における空孔23内のバリ41は、本来、別工程で除去されるのが好ましい。ところが、上記もしたように保護キャップ11に端子金具4を取り付ける際には、その筒状部21内に電線7をその先端から通過させる工程を含んでいる。そして、この工程において、同時にそのバリ41を容易に打抜き或いは突き破ることができることから、従来は、それを事前に除去するということはされず、バリ41が付着したままの状態で、端子金具4の取付け工程に回されていた。因みに、このように電線7で突き破られるバリ41は、その根元が薄く形成されることから、通常、これを空孔23の正面から見ると、その内周面に沿う形で切断されてなるC字形などのヒダ状の膜(又は舌片状の膜)となり、一部又は部分がゴムの薄皮1枚で空孔23の内面に繋がった形となる。そして、電線7が通された後のバリ41は、図9−Cに示したように、変形して空孔23の内面に繋がったままで電線7の表面(絶縁被膜)に押し付けられるような形となり、或いは端子金具4に付着する形で残存するようになっていた。
【特許文献1】特開2005−10156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、従来は、バリ41を事前に除去することなく、電線7を通す工程でその先端で突き破り、その後は、筒状部21の空孔23内に電線7の表面に付着するような形で変形させたまま残存させていたのであるが、このようなバリ処理法によるときは、次のような問題が発生する可能性があった。すなわち、電線7を挿入する際にその先端でバリ41を突き破るという手法によるときは、その挿入時にバリ全体やその一部が切断、分離されてしまうことがある。このようなバリ片は小さなものであり、直ちに具体的な問題となることはないと考えられる。とはいえ、筒状部21内においてバリ41が微片小となったりして分離している場合には、センサの保護キャップとして使用される過程で、振動等の要因により、そのバリ片が筒状部21の奥に移動し、これが端子金具4の電気的接続部分に嵌り込むなどして、導通不良等の問題発生の要因となることも考えられる。
【0011】
また、保護キャップ11として組み立てられた時には、切断、分離されていないとしても、バリ41はその根元(周縁)において薄皮でその一部又は部分がつながっているだけである、このため、その後の振動等により、バリ41全体やその一部が切断、分離する危険性もあり、同様の問題発生の可能性がある。このような問題は、保護キャップ11の成形後にバリ41を正確に除去すれば解決されることは、上記した通りであるが、実際にはこのようなバリは空孔23の奥にあることからその除去も容易ではない。したがって、仮にその除去を行うとすれば大幅なコストアップを招いてしまう。また、バリ41を周方向に沿って厚くして強度アップを図ることも考えられるが、このようにすれば電線による突き破りを困難としてしまう。
【0012】
本発明は、こうした問題点を解消すべくなされたもので、保護キャップの成形後において、筒状部内に発生するバリを別途、独立の工程で除去するまでもなく、従来と同様に電線の挿通によって切断することとしても、その挿通時又は挿通後においても、バリが切断、分離することなく、空孔内において繋がったままで安定して存置されるようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔はその軸線方向に小径空孔と大径空孔とを連ねるように有しており、
前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において前記空孔の内面に突出するバリが形成されてなる端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、電線が通される空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔はその軸線方向に小径空孔と大径空孔とを連ねるように有しており、
前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において前記空孔の内面に突出するバリが形成されてなるものであり、このバリが小径空孔側から通される電線の先端で破られるように形成されてなる端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、主筒状部の一側に電線が通される空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔は、主筒状部の外側寄り部位の小径空孔と、主筒状部の内側空間寄り部位の大径空孔とからなっており、
前記空孔の軸線と垂直な型割り面を有する割り型と、割り型に挟まれて主筒状部の内面を形成する入れ子を含む成形型を用いて製造される端子保護キャップにおいて、
前記小径空孔を形成する小径空孔用コアが前記割り型の一つに設けられ、前記大径空孔を形成する大径空孔用コアが前記入れ子に設けられ、
成形型の型閉じ状態において、前記小径空孔用コアの先端が、前記大径空孔用コアの先端に空隙を保持して当接状となるため、前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において、前記空孔の内面に突出するバリが形成される端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする。
【0016】
そして、請求項4に記載の発明は、前記小径空孔と前記大径空孔との境界に前記大径空孔側を向く境界壁が形成され、前記厚肉部を、前記空孔の内面のうち、この境界壁につながるように形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子保護キャップである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る端子保護キャップにおいては、上記のようにバリに厚肉部が設けられているため、小径空孔内に電線を通してバリを突き破ったとしても、突き破られたバリは、その厚肉部を介して空孔の内面に繋がることができる。したがって、このような厚肉部がなく空孔の内面に、ゴムの薄皮の一部又は部分でつながっていたにすぎない従来のバリに比べて、本願発明では、電線を通す際にも、その通過後においても、そのバリが切断、分離してしまう危険性を小さくできるから、空孔内において安定して存置させることができる。その結果、バリ(片)の切断、分離に起因する電気的信頼性における問題を解消できる。すなわち、本発明に係る端子保護キャップにおいては、バリの除去をすることなく、従来通りに電線を通すことでバリを突き破ることとしてそのバリを残存させることとしても、バリの切断、分離を招くことなく、安定して存置させることができるという、優れた効果を奏することができる。
【0018】
なお、本発明において、バリの根元とは、バリの突出する空孔の内面寄り部位をいう。また、本発明において厚肉部の厚みは、空孔内に電線を通した後、容易に、亀裂や切れが発生しないような厚みに、ゴムの材質や厚肉部の幅(範囲)等に応じて設定すればよく、しかもこの厚肉部は、空孔の周方向に沿って複数箇所に設けられていてもよい。さらに、請求項3において、「成形型の型閉じ状態において、前記小径空孔用コアの先端が、前記大径空孔用コアの先端に空隙を保持して当接状となる」における当接とは、厳密には当接状態になく、空隙を保持して離間している場合も含むものとする。本明細書において当接というときは、このような場合も含めて当接という。なお、本発明におけるバリは、空孔を確実に閉塞しているものに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る端子保護キャップを具体化した実施の形態例について、図1〜図5に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態における端子保護キャップは、上記した図8に示したところの、ガスセンサに使用される保護キャップ11と同様のものであり、その筒状部21の空孔23の内面(内周面)をなす、外側寄り部位の電線7が通される小径空孔24と、主筒状部12の内側空間13寄り部位の大径空孔26との境界27部位において形成されるバリ41の形状ないし構造のみが相違するだけである。このため、この相違点を中心として説明し、同一の部位には同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0020】
本形態の端子保護キャップ11は、図1−Aに示したように、その正面視において概略T字管形状を呈しており、その上下に延びる主筒状部12は円筒状に形成されており、その奥所(図1−A上)には、図8に示したのと同様の端子金具4が配置されるように形成されている。そして、図1−Aの正面視において、主筒状部12から右に向かって横向きに延びる筒状部21は先端寄り部位が小径の径違い円筒状に形成されており、その内部の空孔23を通して、図8に示したのと同様の電線(接続コード)7が引き出されるように形成されている。なお、保護キャップ11は、例えばフッ素ゴムとされている。
【0021】
すなわち、本形態では、主筒状部12から右に向かって横向きに延びる筒状部21における内面(内側)の空孔23は、筒状部21の外側に位置する先端寄り部位が断面円形の小径空孔24(内径の小さい空孔)をなしており、これに続いて、その軸線G1方向に、主筒状部12の中心側の内側に向かって相対的に内径の大きい断面円形の大径空孔26(内径の大きい空孔)が続いており、保護キャップ11の主筒状部12の内側空間13に連なっている。そして、筒状部21の空孔23のうち、小径空孔24は電線7を隙間無く通すことができるようにその直径が設定されている。ただし、この小径空孔24は、図1の拡大図に示したように、その軸線G1方向に沿って断面が変化し、3箇所において縮径されて括れるように形成されている。これは、小径空孔24に通される電線がその縮径部にて緊締されるようにするためである。また、大径空孔26は、端子金具4の圧着部5を収容するスペースとなるため、かしめて電線7を接続した状態の圧着部5が収容可能の直径(横断面)に設定されている。
【0022】
なお、同図の保護キャップ11においては、主筒状部12の左にも、それより小径で軸線G1と平行に延びる円筒状の筒状部(左筒状部)22が形成されているが、ここには電線ではなく、水密作用はあるが通気性のある素材からなるのフィルタが圧入されるところである。また、主筒状部12は、その内側にセンサの図8における上端寄り部位が圧入され得るように、その内周面14が形成されている。
【0023】
さて、このような本形態の保護キャップ11においては、小径空孔24と大径空孔26とが、上記したように筒状部21の内側に形成されているのであるが、この小径空孔24と大径空孔26との境界部位に形成されているバリ41は、小径空孔24を閉塞する形態で形成されている。このバリ41は、小径空孔24側が凹となすと共に、大径空孔26側(主筒状部12の中心側)に向けて凸となし、バリ41の中央部が厚く、その根元寄り部位(空孔の内面寄り部位)が薄くなるように形成されている。ただし、バリ41の根元における空孔の内周方向に沿う一部に、所定の幅Wで、相対的に厚みTが部分的に厚肉となる厚肉部43が形成されており、その厚肉部43は、空孔23の内面であって小径空孔24と大径空孔26の境界であり、大径空孔26を向く境界壁27につながるように形成されている(図2拡大図参照)。なお、この厚肉部43の厚みTは、バリの中央部の厚さと同様にされており、0.3mmとされている。
【0024】
このような端子保護キャップ11によれば、電線が通される空孔をなすところの小径空孔24と大径空孔26との境界に、空孔23の内面に突出するバリ41が形成されているが、そのバリ41には、根元における空孔23の内周方向に沿う一部に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部43が設けられており、この厚肉部43は空孔23の内面であって小径空孔24と大径空孔26の境界である境界壁27につながるように形成されている。これにより、図3に示したように、小径空孔24の外側から電線7が通されると、同図−B、Cに示したようにその先端にてバリ41が突き破られるが、その際には、バリ41は、その厚肉部43を介して空孔23の内面に繋がっている。そして、以後、電線7の先端に端子金具を圧着して取り付け、電線7を外側に引出すようにして、図8に示したのと同様の組立て状態とした後は、バリ41は空孔23の内面に繋がったままで電線7の表面(絶縁被膜)に押し付けられるような形となり、或いは端子金具4に付着する形で存置される。このように本発明によれば、厚肉部43があることから、それがなく空孔の内面に肉の薄いバリで、いわば薄皮1枚で部分的につながっていたにすぎない従来のバリに比べて、電線を通す際にも、その通過後においても、そのバリ41が切断、分離してしまう危険性を小さくでき、したがって、空孔内において安定して存置させることができる。このため、従来のようなバリ(片)の切断、分離に起因する電気的信頼性における問題を解消できる。
【0025】
さて次に、このような保護キャップ11の製法について、図4、図5に基づいて説明する。図4は本製法に用いる成形型100を示したものであり、この成形型100は、保護キャップ11における横向きの筒状部21の軸線G1に垂直で、主筒状部12の軸線G2を通る断面(平面)が第1型割り面PL1をなし、筒状部21の先端面21b寄り部位を横断する断面が第2型割り面PL2をなす、上下の3つ割り型(第1型101,第2型111,第3型121)と、保護キャップ11の主筒状部12の内面14を成形する入れ子131とからなっている。ただし、この製法では、第1型が上に位置するものとして、以下、第1型101〜第3型121を、上型101、中型111及び下型121として説明する。また、この製法では、従来技術において使用した成形型のうちの下型を、中型と下型とに分割した点においては相違するが、上型については相違点はなく、したがって、以下の説明においては、その相違点を中心として説明し、同一の部位には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0026】
すなわち、上型101は、従来技術において説明した上型と相違点はなく、保護キャップ11における筒状部21の軸線G1に垂直で、主筒状部12の軸線G2を通る断面より、図1左の筒状部22側の外面を成形するように、その外面に倣った形状の成形面として第1型割り面PL1が凹設されている。また、その成形面のうち、保護キャップ11における左の筒状部22の空孔に対応する部位には、上型101に固定されたその空孔用コア105が設けられている。
【0027】
一方、従来技術において使用した成形型のうちの下型121に対応する、本形態における中型111と下型121には、両型を閉じたときに、保護キャップ11における筒状部21の軸線G1に垂直で、主筒状部12の軸線G2を通る断面より、この筒状部21側の表面を成形する成形面が凹設されている。この両型111,121の型閉じ面をなす第2型割り面PL2は、保護キャップ11における筒状部21の先端21b寄り部位を横断する位置に設定されている。すなわち、下型121の第2型割り面PL2には、筒状部21の先端(面)21bを含むその先端寄り部位に対応する形状を成形面122として凹設している。そして、本形態では、筒状部21の空孔23のうちの小径空孔24を成形する小径空孔用コア144を、この下型121における成形面122において立設するように設けている。なお、この小径空孔用コア144は、その外面が小径空孔24の内面に対応する形状に形成されている。そして、その先端145は、円錐テーパ状をなす凸面とされており、図10に示したのと同様に形成されている(図4拡大図参照)。
【0028】
他方、上型101と中型の111間に配置される入れ子131は、基本的には、図10に示したのと同様であり、保護キャップ11における主筒状部12の内面14を成形する主筒状部成形部133と、その先端の一方の側(図2、3下側)において突出状に形成され、保護キャップ11における図1−Aの右の横向きの筒状部21のうちの大径空孔26の内面を成形する大径空孔用コア136を一体的に備えている。そして、大径空孔用コア136の先端面137の中央には、円錐台形状の底部を有する凹部138が設けられている。ただし、この凹部138における外周寄りの一部は先端面137の外周に向けて直方体形状に切り込まれており、上記した実施形態の保護キャップ11におけるバリ41の厚肉部43に対応するキャビティ(空間)K2をなすようにされている。
【0029】
前記した成形型100においては、図4に示したように、上型101と、中型111との間に入れ子131を位置決めして入れ込んで、型閉じすると共に、中型111と下型121とも型閉じすることで、下型121に形成された小径空孔用コア144の先端145が、入れ子131における大径空孔用コア136の先端面137の凹部138に嵌り込むように設定されている。ただし、型閉じした際には、この小径空孔用コア144の先端145と、大径空孔用コア136の先端面137の凹部138との間には、バリ41が形成されるように、それに対応した空隙Kが形成されるように設定されている。そして、型閉じした際には、凹部138の周縁に、先端145が当接或いは当接状をなすのであるが、この際には、バリ41の厚肉部43に対応するキャビティK2が形成される。なお、上型101に固定された空孔用コア105は、型閉じ状態において、その先端が入れ子131の主筒状部成形部133の側面の凹部137に当接状をなすように設定されている。
【0030】
上記したような成形型100を用いて保護キャップ11を製造するには、図4に示したように型閉じをし、その状態において、キャビティー(空間)C内に、加熱、加圧されたゴムを充填する。そして、このゴムの充填においては、小径空孔用コア144の先端145と、大径空孔用コア136の先端面137の凹部138との間に形成されている空隙Kにゴムがはみ出して膜状ないし袋状のバリ41が形成される。そして、この形成においては、キャビティK2にもゴムが充填されるため、バリ41の厚肉部43が形成される。かくして、充填されたゴムの固化後において、図5に示したように、上型101、中型111及び下型121を、それぞれの型割り面PL1,PL2が離間するように型開きして、入れ子131の外面に付着した形で形成されてなる成形品である保護キャップ11を入れ子131と共に中型111の成形面から取り出し、入れ子131から取り外す。こうして、図1,2に示したところの、小径空孔24と大径空孔27との境界又は境界近傍において空孔23の内面に突出するバリが形成されてなる端子保護キャップが得られるのであるが、そのバリ41は、根元における空孔23の内周方向に沿う一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部43を有すると共に、この厚肉部43は空孔23の内面(本形態では境界壁27)につながったものとなる。
【0031】
上記製法においては、3つ割り型の成形型を用いたが、従来技術で説明した図10に示した2つ割り型の成形型を用いる場合でも、同様に製造できる。ただし、3つ割り型の成形型を用いた場合には、型開き時において、下型121の小径空孔用コア144の先端145は、入れ子131における大径空孔用コアの先端面137から離間している。したがって、成形品である保護キャップ11を中型111の成形面から離型する際において、入れ子131に振動や揺動を加えたとしても、小径空孔用コア144に横荷重がかかることもないし、その先端145が相手金型と擦れあったりして損傷を受けることもない。
【0032】
上記した保護キャップ11におけるバリは、円錐台形状に大径空孔26側に突出するような形状のものにおいて具体化した場合で説明したが、その形状はこれに限定されるものではない、例えば、図6に示したように、断面が三日月形のバリ41においても具体化できるなど、その形状は適宜に変更して具体化できるし、厚肉部43についても、適宜に変更して具体化できる。なお、厚肉部41の厚みTは厚いほど強度アップが図られるが、あまり強度が大きくなると、変形しにくくなり、電線でバリを打抜くのに支障が出る。厚肉部41の厚さTは、こうした点やゴムの材質や厚肉部41の幅W等に応じて設定すればよい。なお、上記においてバリ41の厚肉部43は、バリ41の根元における空孔の内周方向に沿う一部に設けたものとして具体化したが、これは複数箇所において設けられていてもよい。例えば、図7に示したように、厚肉部43を2箇所に分けて設けてもよい。このようにすれば、万一、一方の厚肉部43が切断したとしても、バリ41が空孔の内面から分離するのが防止されるためである。
【0033】
さらに、上記において、ゴム製の保護キャップはガスセンサ用の保護キャップとして、とくに左右にそれぞれ筒状部21,22を有するものとして具体化し、そのうちの1つの筒状部21の内側の空孔においてバリがあるものとして具体化したが、本発明が対象としている保護キャップはこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる端子保護キャップを説明する図であって、Aは正面断面図、Bは右側面図、CはAを下から見た図。
【図2】図1の端子保護キャップの筒状部におけるバリを説明する図であって、Aは図1における拡大図と同一部位の図であり、BはそのAにおけるバリの左側面図。
【図3】図1の端子保護キャップの筒状部の空孔に電線を通すときの説明用断面図。
【図4】図1の保護キャップの製法に用いる成形型の型閉じ状態を説明する断面図。
【図5】図4において、成形後、型開きした状態の図。
【図6】バリの別例を示したもので、Aは断面図、BはAの左側面図。
【図7】バリの別例を示したもので、Aは断面図、BはAの左側面図。
【図8】端子保護キャップの従来技術を説明する断面図及びこれが取付けられるセンサの破断面図。
【図9】図8の端子保護キャップの筒状部の空孔におけるバリ及びこの空孔に電線を通すときの説明用断面図。
【図10】図8の保護キャップの成形に用いる成形型を説明するその型閉じ状態の断面図。
【符号の説明】
【0035】
7 電線
11 端子保護キャップ
12 主筒状部
13 主筒状部の内側空間
14 主筒状部の内面
23 空孔
24 小径空孔
26 大径空孔
27 小径空孔と大径空孔との境界(境界壁)
41 バリ
43 厚肉部
100 成形型
101,111,12 割り型(上型、中型、下型)
131 入れ子
136 大径空孔用コア
137 大径空孔用コアの先端
144 小径空孔用コア
145 小径空孔用コアの先端
K 空隙
G1 空孔の軸線
PL1,PL2 型割り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔はその軸線方向に小径空孔と大径空孔とを連ねるように有しており、
前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において前記空孔の内面に突出するバリが形成されてなる端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする端子保護キャップ。
【請求項2】
電線が通される空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔はその軸線方向に小径空孔と大径空孔とを連ねるように有しており、
前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において前記空孔の内面に突出するバリが形成されてなるものであり、このバリが小径空孔側から通される電線の先端で破られるように形成されてなる端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする端子保護キャップ。
【請求項3】
主筒状部の一側に電線が通される空孔を有するゴム製の端子保護キャップであって、
その空孔は、主筒状部の外側寄り部位の小径空孔と、主筒状部の内側空間寄り部位の大径空孔とからなっており、
前記空孔の軸線と垂直な型割り面を有する割り型と、割り型に挟まれて主筒状部の内面を形成する入れ子を含む成形型を用いて製造される端子保護キャップにおいて、
前記小径空孔を形成する小径空孔用コアが前記割り型の一つに設けられ、前記大径空孔を形成する大径空孔用コアが前記入れ子に設けられ、
成形型の型閉じ状態において、前記小径空孔用コアの先端が、前記大径空孔用コアの先端に空隙を保持して当接状となるため、前記小径空孔と前記大径空孔との境界又は境界近傍において、前記空孔の内面に突出するバリが形成される端子保護キャップにおいて、
前記バリの根元における前記空孔の内周方向に沿う少なくとも一部に、相対的に厚みが部分的に厚肉となる厚肉部が設けられると共に、この厚肉部を前記空孔の内面につながるように形成してなることを特徴とする端子保護キャップ。
【請求項4】
前記小径空孔と前記大径空孔との境界に前記大径空孔側を向く境界壁が形成され、前記厚肉部を、前記空孔の内面のうち、この境界壁につながるように形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子保護キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−171735(P2008−171735A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5253(P2007−5253)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】