端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法および圧着不良判定データ検査方法
【課題】 入力の手間、入力ミス、検証の手間が省ける端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法を提供する。
【解決手段】 圧着処理の良否を判定するための圧着不良判定データ作成方法は、端子圧着装置21に良品用加工データと不良品発生用加工データが予め記憶される。不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、不良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データと、良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して良否判定用データを生成する判定データ生成工程とを備える。
【解決手段】 圧着処理の良否を判定するための圧着不良判定データ作成方法は、端子圧着装置21に良品用加工データと不良品発生用加工データが予め記憶される。不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、不良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データと、良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して良否判定用データを生成する判定データ生成工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部を皮剥ぎした被覆電線の端末部に、端子圧着装置により端子を圧着する際、端子の圧着状態を監視して圧着不良を自動的に検出する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法および圧着不良判定データ検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、端子圧着装置は、被覆部が所定長さ皮剥ぎされた被覆電線の端末部に、所定形状の端子を圧着する構造とされていた。そして、このような端子圧着装置において、端子圧着処理時に、芯線部の一部が端子から食み出した状態で圧着されるいわゆる芯線こぼれ不良や、芯線部に圧着されるべき部分が被覆部の一部をも含めて圧着されるいわゆる被覆噛み不良等の種々の圧着不良が発生することがあり、そのような圧着不良が発生した場合に、それらを検出して排除する必要がある。
【0003】
そこで、端子圧着処理時の異常を検出して圧着状態を識別するための端子圧着不良検出装置が登場している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
即ち、図13に示されるように、端子圧着装置1は、ベース板2上にアプリケータ3を備え、該アプリケータ3は被覆電線4の端末部に端子5を圧着するためのアンビル6およびクリンパ7を備えている。また、端子5は被覆電線4の芯線部4aに圧着される芯線圧着部5aと、被覆部4bに圧着される被覆圧着部5bとを備えている。
【0005】
そして、ベース板2の下側に圧力センサ10(例えばピエゾセンサ)が備えられ、圧力センサ10からリード線11が引き出されている。
【0006】
端子5の圧着処理に際しては、端末部の被覆部4bが皮剥ぎされた被覆電線4と端子5とが、アンビル6とクリンパ7との間の所定位置に配置され、この状態で、クリンパ7を下降操作することにより、クリンパ7とアンビル6とで端子5の芯線圧着部5aと被覆圧着部5bが圧縮され、芯線圧着部5aが被覆電線4の芯線部4aに圧着されると共に被覆圧着部5bが被覆電線4の被覆部4bに圧着されて、被覆電線4の端末部に端子5が接続固定される構造とされていた。
【0007】
そして、このクリンパ7による端子圧着処理において、圧力センサ10はアンビル6やベース板2等を介して圧力を受け、その圧力値に応じた信号を出力する。端子圧着不良検出装置は、この圧力センサ10からの出力の時間的変化を波形として捉え、デジタル処理して、予めメモリ等に記憶された正常時の基準波形データと、検査時に出力された検出波形データとを比較することにより、良品か不良品かを判定し、不良品を排除する方式とされていた。
【0008】
このような検出された波形データにより圧着状態の良否を判定する方法として、図14に示されるように、正常圧着状態における基準波形データAを基準に上下方向に所定値シフトして得られる許容値Sの範囲を許容公差とし、検出波形データが、その波形データ全域に渡ってその許容公差範囲内にあるか否かで圧着状態の良否を判定する方法や、検出波形データを時間軸に沿って複数の領域(例えばT1、T2、T3等)に分割し、各領域の面積を基準波形データAの対応領域(T1、T2、T3等)の面積と比較して許容公差範囲内にあるか否かにより圧着状態の良否を判定する方法や、波形データのピーク値や総面積を基準波形データのものと比較して許容公差範囲内にあるか否かにより圧着状態の良否を判定する方法等がある。
【0009】
また、このような基準波形データや許容公差からなる良否判定用データが妥当かどうかを検査する場合、端子圧着装置側の加工データを人手により変更して、わざと芯線切れ、被覆噛み、被覆残り、芯線こぼれ、深打ち、浅打ち等の圧着不良を起こし、圧着不良と判定するかどうかを検証し、圧着不良と判定できなければ、良否判定用データが不良であるか、または端子圧着不良検出装置側の故障であると判断していた。
【0010】
【特許文献1】特開2005−135820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような基準波形データや許容公差を設定する方法として、先ず、正常な圧着状態における基準波形データを作成するために、実際に端子圧着処理を行い、正常状態の端子圧着処理を基に、その際の圧力センサからの出力の時間的変化を解析処理し、基準波形データを求める。その後、その基準波形データに対する許容公差を操作画面より人手で入力する方法がある。
【0012】
しかしながら、許容公差を人手により入力する方法によれば、どのような値を設定すればよいのか解りがたく、入力に手間がかかると共に、考え違いによる入力ミスや不注意による入力ミスが発生するおそれもあるという問題がある。
【0013】
また、基準波形データや許容公差の設定後、この良否判定用データが妥当であるかどうかを調べるために、端子圧着装置側の加工データを人手により変更してわざと各種の圧着不良を起こし、検証する必要があり、非常に手間がかかるという問題もある。
【0014】
さらに、特許文献1に開示のように、許容公差をサンプリングしたデータから算出された標準偏差に基づいて自動的に設定する方法もある。
【0015】
しかしながら、この場合も前記同様、端子形状や材質等の端子圧着条件により大きく変化するため、許容公差の調整に際しても、調整箇所を特定しがたく、従ってどの値を調整すればよいのか解りがたく、時間がかかり、考え違いによる入力ミスが発生するおそれもある。また、この場合も上記同様にして、設定された良否判定用データが妥当かどうかを検証する必要がある。
【0016】
さらに、人手により加工データを各種の圧着不良に対応させて変更する方法であるため、検証抜けを招くおそれもある。
【0017】
そこで、本発明はこれらの問題点に鑑み、入力の手間、入力ミス、検証の手間が省ける端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法、および検証の手間が省けると共に検証抜けを有効に防止した端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための圧着不良判定データ作成方法の技術的手段は、端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、前記不良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データと、前記良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して前記良否判定用データを生成する判定データ生成工程と、を備える点にある。
【0019】
また、前記不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、前記不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に前記検出波形データが記憶される方法としてもよい。
【0020】
さらに、前記不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなる方法としてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するための圧着不良判定データ検査方法の技術的手段は、端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法において、前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、前記不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ前記良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行う点にある。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法によれば、端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、不良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データと、良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して良否判定用データを生成する判定データ生成工程とを備える方法であり、端子圧着装置により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の圧着不良の加工に基づく検出波形データと、良品の加工に基づく検出波形データとにより、自動で良否判定用データを作成するため、従来のような良否判定用データ作成のための入力の手間や入力ミス、さらには検証の手間が省ける利点がある。
【0023】
また、不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に検出波形データが記憶される方法とすれば、端子圧着処理時における検出波形データの特徴から圧着不良の要因特定や、圧着不良の要因に応じた良否判定も可能となる利点がある。
【0024】
さらに、不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなる方法とすれば、圧着不良の要因に応じた段階的な検出波形データが得られるため、得られた検出波形データの傾向から、より精度のよい良否判定用データの作成が可能となる。
【0025】
また、本発明の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法によれば、端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行う方法であり、端子圧着装置により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の良否判定用データの判定結果に基づき、良否判定用データの妥当性を容易にチェックでき、チェックに際して従来のように、人手により、わざと圧着不良を起こさせる加工データにその都度変更する必要が無く、検証の手間が省けると共に、必要とされる不良品発生用加工データを予め種々記憶させておくことによって、検証抜けも有効に防止できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は全体概略構成、図2は概略ブロック図を示し、20は両端端子打機で、順次供給される被覆電線の下流側端末部における被覆部を所定長さ皮剥ぎし、その皮剥ぎされた被覆電線の端末部に所定形状の端子を圧着する。その後、所定長さに測長して切断すると共に、その切断された被覆電線の上流側端末部における被覆部を所定長さ皮剥ぎし、その皮剥ぎされた被覆電線の端末部に所定形状の端子を圧着して、両端末部に端子がそれぞれ圧着された所定長さの被覆電線を順次製造する構造とされており、その被覆電線における両端末部に端子を圧着するための端子圧着装置21、21がそれぞれ備えられた構造とされている。
【0027】
そして、端子圧着装置21、21による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値を検出すべく、例えば、図13に示される従来構造と同様、端子圧着不良検出装置22の装置本体22aに配線23接続された圧力センサ22b(例えばピエゾセンサ)が端子圧着装置21、21におけるベース板の下側にそれぞれ配置された構造とされている。なお、圧力センサ22bの配置位置はこれらに何ら限定されない。
【0028】
また、端子圧着不良検出装置22は、圧力センサ22bで検出された圧力値の出力等に基づき検出波形データを生成する検出波形生成部22c、圧力センサ22bで検出された圧力値のデータを取得するデータ取得部22d、ROMやRAM等のメモリ22e、許容公差の設定や調整を行う許容公差設定部22f、良否判定用の基準波形データおよび許容公差を設定する良否判定データ設定部22g、検出波形データが基準波形データの許容公差の範囲内かどうかを比較する比較部22h、比較部22hの比較結果に基づいて良否の判定を行う判定部22j、表示装置の表示を制御する表示制御部22k等を備え、検出波形生成部22cや許容公差設定部22fにより、良否判定用の基準波形データや許容公差を生成する良否判定データ生成部が構成される。このような端子圧着不良検出装置22としては、例えば、クリンプフォースモニタがある。
【0029】
前記両端端子打機20を駆動制御する制御部24に、端子圧着不良検出装置22が入出力ケーブル25を介して接続されると共に、操作部としてのパーソナルコンピュータ(いわゆるパソコン)26がデータ通信ケーブル27を介して接続されている。さらに、装置本体22aとパソコン26とがLANケーブル28を介してLAN接続されている。
【0030】
そして、パソコン26の表示画面26aに、端子打機20の操作画面や端子圧着不良検出装置22の操作画面や圧力波形モニター画面等を表示する構成とされている。
【0031】
また、両端端子打機20の制御部24における記憶装置としての内部メモリもしくは外部メモリとしてのパソコン26のハードディスクには、各種径・各種材質の被覆電線の端末部に各種形状・各種材質の端子をそれぞれ圧着処理するために予め生成された端子加工データの複数のファイルを記憶する端子加工データ記憶部24aが備えられている。この端子加工データ記憶部24aに格納されている各端子加工データのファイルには、それぞれを識別して特定するために、図3に示されるように、端子加工データのファイルナンバー(例えば、No.1、No.2、…)、電線名称、端子名称、加工データ等の情報がそれぞれ入力されている。
【0032】
さらに、本実施形態においては、端子加工データ記憶部24aの端子加工データファイルに、上記のような正規の端子圧着のための良品用加工データだけでなく、わざと圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データも予め記憶されている。このような不良品発生用加工データとしては、芯線部の一部が切断されてしまう芯線切れ用加工データ(例えば、No.a、No.a+1、…)、芯線部の圧着部分に被覆部をも圧着してしまう被覆噛み用加工データ(例えば、No.b、No.b+1、…)、被覆部の皮剥ぎ残りが生じる被覆残り用加工データ(例えば、No.c、No.c+1、…)、芯線部の一部が端子から食み出した状態で圧着される芯線こぼれ用加工データ(例えば、No.d、No.d+1、…)、芯線部が端子の芯線圧着部の所定位置より行き過ぎる深打ち用加工データ(例えば、No.e、No.e+1、…)、芯線部が端子の芯線圧着部の所定位置まで達していない浅打ち用加工データ(例えば、No.f、No.f+1、…)等の圧着不良の各種要因がそれぞれ発生するような加工データが記憶されている。
【0033】
そして、このような圧着不良を発生させるための各不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからそれぞれ構成されており、それぞれ具体的な加工データではなく、正規の端子圧着のための加工データを所定の補正値によって自動補正することにより得られる加工データとされている。例えば、重度から軽度に至る圧着不良の複数段階のデータは、両端端子打機20における被覆部を皮剥ぎするための正規のカッターの切込み位置データを段階的に補正すること等により得られるように構成されている。
【0034】
また、端子圧着不良検出装置22の記憶装置としての内部メモリもしくは外部メモリとしてのパソコン26のハードディスクには、端子圧着処理時における良品/不良品を判定するための前記各端子加工データ(例えば、No.1、No.2、…)にそれぞれ対応する各良否判定用データとして、予め生成されている基準波形データと該基準波形データに対応する許容公差との組合せからなる良否判定用データの複数のファイルを記憶する良否判定データ記憶部22mが備えられている。この良否判定データ記憶部22mに格納されている各良否判定用データのファイルには、それぞれを識別して特定するために、ファイルナンバー(例えば、No.1、No.2、…)、電線名称、端子名称等の情報がそれぞれ入力されている。そして、表示画面26aから入力設定することにより、良否判定データ記憶部22mの中から対応する良否判定用データが選択されて、良否判定データ設定部22gに設定される構成とされている。
【0035】
次に、本実施形態にかかる良否判定用データの作成方法を、図4に示すフローチャートに基づき説明すると、先ず、新規の良否判定用データを作成するかどうかが判断される(ステップS1)。なお、良否判定用データを作成する場合には、対象となる端子圧着条件としての電線名称、端子名称、加工データ等の正規の端子圧着のための良品用加工データをパソコン26の操作部から入力して両端端子打機20の端子加工データ記憶部24aに記憶させておく。
【0036】
そして、良否判定用データを作成する場合には、次に、パソコン26の操作部から作成開始ためのデータ作成キーの操作がなされたかどうかが判断され(ステップS2)、データ作成キーの操作がなされると、その操作信号が両端端子打機20と端子圧着不良検出装置22に供給され、両端端子打機20および端子圧着不良検出装置22はデータ作成モードとなる(ステップS3)。このデータ作成モードにより両端端子打機20は内部処理し、対応する正規の良品用加工データを基に、芯線切れ用加工データ、被覆噛み用加工データ、被覆残り用加工データ、芯線こぼれ用加工データ、深打ち用加工データ、浅打ち用加工データ等の圧着不良の各種要因がそれぞれ段階的に発生するような不良品発生用加工データを自動補正により生成し、記憶する。
【0037】
次に、スタートキー操作がなされると(ステップS4)、不良品発生用加工データにより端子圧着処理の加工が開始される(ステップS5)。この不良品発生用加工データによる加工順序は適宜設定されており、例えば、本実施形態においては、端子加工データファイルのファイルナンバーの若い順に順次加工されていくように設定されている。また、本実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の圧着不良の要因毎に、重度の圧着不良から段階的に軽度の圧着不良に至るように前記ファイルナンバーの順番が設定されている。
【0038】
そして、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化を取り込み、データ取得部22dで取得された検出データを検出波形生成部22cで解析して検出波形データを生成し、圧着不良の要因である芯線切れや被覆噛み等の不良種類と共にメモリに記憶する(ステップS6)(不良品検出波形データ生成工程)。
【0039】
その後、ステップS7に移行して、不良品発生用加工データによる加工が全て終了したかどうかが判断され、終了していなければ、ステップS5に戻り、次の不良品発生用加工データにより加工が行われる。このようにして、ステップS5ないしステップS7が所定回数繰り返され、最終的に不良品発生用加工データによる加工が全て終了すれば、次に、良品用加工データにより端子圧着処理の加工を行う(ステップS8)。
【0040】
そして、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化を取り込み、データ取得部22dで取得された検出データを検出波形生成部22cで解析して検出波形データを生成し、良品の検出波形データとしてメモリに記憶する(ステップS9)(良品検出波形データ生成工程)。例えば、図5は良品の検出波形の一例で、図6ないし図11は良品の検出波形に、芯線切れ不良、被覆噛み不良、被覆残り不良、芯線こぼれ不良、深打ち不良、浅打ち不良のそれぞれの場合の検出波形を一点鎖線で重ねて表示した例である。
【0041】
その後、得られた良品の検出波形データと、各種圧着不良の不良品である各検出波形データに基づき、良否判定用データを生成し、良否判定データ記憶部22mにファイルナンバーを付与して記憶すると共に、良否判定データ設定部22gに良否判定用データとして設定する(ステップS10)(判定データ生成工程)。この良否判定用データの生成に際しては、得られた良品の検出波形データと不良品の各検出波形データとの関係から、基準波形データと、基準波形データを基準として良品と不良品との判定のしきい値となる許容公差とを割り出して、良否判定用データを作成する。例えば、本実施形態においては、検出波形生成部22cにより生成された良品の検出波形データを基準波形データとし、許容公差設定部22fに設定されている設定パラメータにより、この基準波形データと圧着不良の各検出波形データの特徴を現す部分との相互間の互いに接近する圧力値の差の1/2や2/3等の適宜範囲を許容公差として、自動的に設定する構成とされている。
【0042】
そして、良否判定用データが生成されて設定されると、データ作成モードが解除され、両端端子打機20は通常の端子圧着処理モードの戻され、一連の良否判定用データの作成が終了する(ステップS11)。
【0043】
そして、この状態で端子の圧着処理が開始されると、作成された良否判定用データの基準波形データとそれに対応する許容公差を基準に、端子が圧着処理された被覆電線における圧着処理の良否が判定され、良品であるか不良品であるか識別されていく。
【0044】
以上のように、本実施形態の端子圧着不良検出装置22における圧着不良判定データ作成方法によれば、端子圧着装置21によって、正規の良品用加工データにより端子圧着処理を行うだけでなく、自動でわざと各種の圧着不良を発生する不良品発生用加工データによっても端子圧着処理を行い、その際の圧着不良の加工に基づく各検出波形データと、良品の加工に基づく検出波形データとにより、自動で良否判定用データを作成するため、従来のような良否判定用データ作成のために、操作画面から許容公差を人手で入力する必要がなく、入力の手間や入力ミスが有効に省ける利点がある。
【0045】
しかも、予め、わざと各種の圧着不良を発生させて、それらの各検出波形データを基に良否判定用データを作成しているため、従来のように、良否判定用データの作成後、わざと各種の圧着不良を起こしてデータの妥当性を検証する必要がなく、検証の手間が省ける利点もある。
【0046】
また、入力の手間や検証の手間が省けることから、両端端子打機20の稼働率が向上でき、入力ミスが防止できることから、不良品の検出漏れが減り、品質向上につながる利点がある。
【0047】
さらに、各不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなり、各圧着不良の要因に応じた段階的な検出波形データが得られるため、得られた検出波形データの傾向から、より精度のよい良否判定用データの作成が可能となる利点がある。
【0048】
また、各不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に検出波形データが記憶される方法としているため、端子圧着処理時における検出波形データの特徴から圧着不良の要因特定が可能となり、圧着不良の要因が特定されることにより、不良製品発生時における人手によるチェックも容易となる。
【0049】
さらには、図6ないし図11に示されるように、端子圧着処理時における圧着不良毎の検出波形データの特徴から、良否判定用データによる良品・不良品の判定に際して、各圧力センサ22bで検出される各ポイント・ポイントにおける圧力値が許容公差の範囲内であるか否かで判定する方法や、検出波形データを時間軸に沿って適宜分割された領域毎の面積(いわゆる和)が許容公差の範囲内であるか否かで判定する方法を選択的に採用することにより、圧着不良の要因に応じたより精度のよい良否判定も可能となる利点がある。
【0050】
次に、本実施形態にかかる端子圧着不良検出装置22に設定されている良否判定用データが、妥当であるかどうかの検査方法について、図12に示すフローチャートに基づき説明する。
【0051】
先ず、良否判定用データのチェックを行うかどうかが判断される(ステップS21)。なお、良否判定用データのチェックを行う場合には、対象となる端子圧着条件としての電線名称、端子名称、加工データ等の正規の端子圧着のための良品用加工データを、パソコン26の操作部からの入力操作によって、両端端子打機20の端子加工データ記憶部24aに記憶されている端子加工データファイルの中から選択しておく。
【0052】
そして、良否判定用データをチェックする場合には、次に、パソコン26の操作部からチェック開始ためのデータチェックキーの操作がなされたかどうかが判断され(ステップS22)、データチェックキーの操作がなされると、その操作信号が両端端子打機20と端子圧着不良検出装置22に供給され、両端端子打機20および端子圧着不良検出装置22はデータチェックモードとなる(ステップS23)。このデータチェックモードにより両端端子打機20は内部処理し、前述同様、対応する正規の良品用加工データを基に、芯線切れ用加工データ、被覆噛み用加工データ、被覆残り用加工データ、芯線こぼれ用加工データ、深打ち用加工データ、浅打ち用加工データ等の圧着不良の各種要因がそれぞれ段階的に発生するような不良品発生用加工データを自動補正により生成し、記憶する。
【0053】
次に、スタートキー操作がなされると(ステップS24)、不良品発生用加工データにより端子圧着処理の加工が開始される(ステップS25)。この不良品発生用加工データによる加工順序は前述同様、適宜設定されており、例えば、本実施形態においては、端子加工データファイルのファイルナンバーの若い順に順次加工されていくように設定されている。また、本実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の圧着不良の要因毎に、重度の圧着不良から段階的に軽度の圧着不良に至るように前記ファイルナンバーの順番が設定されている。
【0054】
そして、端子圧着処理の開始によって、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化をデータ取得部22dで取り込み、検出波形生成部22cでその検出データが解析されて検出波形データを生成し、表示制御部22kを通じてパソコン26の表示画面26aにその検出波形データに基づく検出波形が、良否判定用データの基準波形データに基づく基準波形に重ねられた状態で表示されていく。
【0055】
そして、不良品発生用加工データによって圧着不良が検出されるかどうかが判定される(ステップS26)(不良品判定チェック工程)。即ち、比較部22hで、その検出波形データが基準波形データの許容公差の範囲内であるかどうかが比較され、判定部22jで良否の判定がなされ、表示画面26a上にその判定結果が表示される。この際、判定結果が圧着不良の判定でなければ、良否判定用データが不良または端子圧着不良検出装置22自体に異常がある旨の警告メッセージを表示画面26aに表示して(ステップS27)、異常の報知を行い、次のステップには移行せず、両端端子打機20は停止される。
【0056】
また、ステップS26で圧着不良が検出されれば、表示画面26aに圧着不良の判定結果と良否判定用データ異常なしの表示がなされ(ステップS28)、不良品発生用加工データによる加工が全て終了したかどうかが判断される(ステップS29)。そして、不良品発生用加工データによる加工が全て終了していなければ、ステップS25に戻り、次の不良品発生用加工データにより加工が行われる。このようにして、ステップS25ないしステップS29が所定回数繰り返され、最終的に不良品発生用加工データによる加工が全て終了すれば、次に、良品用加工データにより端子圧着処理の加工を行う(ステップS30)。
【0057】
そして、その結果、良品用加工データによって圧着不良が検出されるかどうかが判定され(ステップS31)(良品判定チェック工程)、この場合の判定結果が圧着不良の判定であれば、良否判定用データが不良または端子圧着不良検出装置22自体に異常がある旨の警告メッセージを表示画面26aに表示して(ステップS32)、異常の報知を行い、次のステップには移行せず、両端端子打機20は停止される。
【0058】
また、ステップS31で圧着不良が検出されなければ、表示画面26aに圧着良品の判定結果と良否判定用データ異常なしの表示がなされ(ステップS33)、データチェックモードが解除され、両端端子打機20は通常の端子圧着処理モードの戻され、一連の良否判定用データの検査が終了する(ステップS34)。
【0059】
以上のように、本実施形態の端子圧着不良検出装置22における圧着不良判定データ検査方法によれば、予め記憶されている良品用加工データや不良品発生用加工データを利用して、端子圧着装置21により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の良否判定用データの判定結果に基づいて、良否判定用データの妥当性を容易にチェックすることができ、チェックに際して従来のように、人手により、わざと圧着不良を起こさせる加工データに種々変更する必要が無く、検証の手間が省けると共に、必要とされる種々の不良品発生用加工データを予め記憶させておくことによって、検証抜けも有効に防止できる利点がある。
【0060】
また、良否判定用データの妥当性や端子圧着不良検出装置22の故障の検証の手間が省けることから、両端端子打機20の稼働率が向上できると共に、端子圧着不良検出装置22の故障の検出や良否判定用データの確実性が向上できることから、不良品の検出漏れが減り、品質向上につながる利点がある。
【0061】
なお、上記実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の各種圧着不良用の不良品発生用加工データとして、重度から軽度に至る複数段階の補正用加工データをそれぞれ予め記憶された構成とされているが、良否判定用データの作成に先立って、良品用加工データと各種の圧着不良に対応する重度の不良品発生用加工データを入力して予め記憶させ、ステップS3のデータ作成モードとなった際に、内部処理により、それらの加工データから重度から軽度に至る複数段階の不良品発生用加工データを自動で生成する構成としてもよい。
【0062】
また、不良品発生用加工データは、重度から軽度に至る複数段階でなく、芯線切れ等の各種圧着不良用の軽度の不良品発生用加工データのみから良品用加工データを作成する方法であってもよい。
【0063】
さらに、良否判定のための許容公差は、基準波形データを基準に上下方向に所定値シフトして得られる許容値の範囲によるものであってもよく、また、基準波形データを時間軸に沿って複数の領域に分割し、各領域の面積を比較する場合の許容値の範囲であってもよく、さらには、波形データのピーク値や総面積を基準波形データのものと比較する場合の許容値の範囲であってもよい。
【0064】
また、検査時の異常を表示画面26aに表示して報知する方法を示しているが、音声や光等で報知する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態にかかる全体概略図である。
【図2】端子圧着不良検出装置の概略ブロック図である。
【図3】端子加工データ記憶部に記憶されている端子加工データファイルの説明図である。
【図4】圧着不良判定データ作成工程を示すフローチャートである。
【図5】良品の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図6】芯線切れ不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図7】被覆噛み不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図8】被覆残り不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図9】芯線こぼれ不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図10】深打ち不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図11】浅打ち不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図12】圧着不良判定データ検査工程を示すフローチャートである。
【図13】端子圧着装置の概略説明図である。
【図14】端子圧着装置における時間と圧力値との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
20 両端端子打機
21 端子圧着装置
22 端子圧着不良検出装置
22b 圧力センサ
24 制御部
24a 端子加工データ記憶部
26 パソコン
26a 表示画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆部を皮剥ぎした被覆電線の端末部に、端子圧着装置により端子を圧着する際、端子の圧着状態を監視して圧着不良を自動的に検出する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法および圧着不良判定データ検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、端子圧着装置は、被覆部が所定長さ皮剥ぎされた被覆電線の端末部に、所定形状の端子を圧着する構造とされていた。そして、このような端子圧着装置において、端子圧着処理時に、芯線部の一部が端子から食み出した状態で圧着されるいわゆる芯線こぼれ不良や、芯線部に圧着されるべき部分が被覆部の一部をも含めて圧着されるいわゆる被覆噛み不良等の種々の圧着不良が発生することがあり、そのような圧着不良が発生した場合に、それらを検出して排除する必要がある。
【0003】
そこで、端子圧着処理時の異常を検出して圧着状態を識別するための端子圧着不良検出装置が登場している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
即ち、図13に示されるように、端子圧着装置1は、ベース板2上にアプリケータ3を備え、該アプリケータ3は被覆電線4の端末部に端子5を圧着するためのアンビル6およびクリンパ7を備えている。また、端子5は被覆電線4の芯線部4aに圧着される芯線圧着部5aと、被覆部4bに圧着される被覆圧着部5bとを備えている。
【0005】
そして、ベース板2の下側に圧力センサ10(例えばピエゾセンサ)が備えられ、圧力センサ10からリード線11が引き出されている。
【0006】
端子5の圧着処理に際しては、端末部の被覆部4bが皮剥ぎされた被覆電線4と端子5とが、アンビル6とクリンパ7との間の所定位置に配置され、この状態で、クリンパ7を下降操作することにより、クリンパ7とアンビル6とで端子5の芯線圧着部5aと被覆圧着部5bが圧縮され、芯線圧着部5aが被覆電線4の芯線部4aに圧着されると共に被覆圧着部5bが被覆電線4の被覆部4bに圧着されて、被覆電線4の端末部に端子5が接続固定される構造とされていた。
【0007】
そして、このクリンパ7による端子圧着処理において、圧力センサ10はアンビル6やベース板2等を介して圧力を受け、その圧力値に応じた信号を出力する。端子圧着不良検出装置は、この圧力センサ10からの出力の時間的変化を波形として捉え、デジタル処理して、予めメモリ等に記憶された正常時の基準波形データと、検査時に出力された検出波形データとを比較することにより、良品か不良品かを判定し、不良品を排除する方式とされていた。
【0008】
このような検出された波形データにより圧着状態の良否を判定する方法として、図14に示されるように、正常圧着状態における基準波形データAを基準に上下方向に所定値シフトして得られる許容値Sの範囲を許容公差とし、検出波形データが、その波形データ全域に渡ってその許容公差範囲内にあるか否かで圧着状態の良否を判定する方法や、検出波形データを時間軸に沿って複数の領域(例えばT1、T2、T3等)に分割し、各領域の面積を基準波形データAの対応領域(T1、T2、T3等)の面積と比較して許容公差範囲内にあるか否かにより圧着状態の良否を判定する方法や、波形データのピーク値や総面積を基準波形データのものと比較して許容公差範囲内にあるか否かにより圧着状態の良否を判定する方法等がある。
【0009】
また、このような基準波形データや許容公差からなる良否判定用データが妥当かどうかを検査する場合、端子圧着装置側の加工データを人手により変更して、わざと芯線切れ、被覆噛み、被覆残り、芯線こぼれ、深打ち、浅打ち等の圧着不良を起こし、圧着不良と判定するかどうかを検証し、圧着不良と判定できなければ、良否判定用データが不良であるか、または端子圧着不良検出装置側の故障であると判断していた。
【0010】
【特許文献1】特開2005−135820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような基準波形データや許容公差を設定する方法として、先ず、正常な圧着状態における基準波形データを作成するために、実際に端子圧着処理を行い、正常状態の端子圧着処理を基に、その際の圧力センサからの出力の時間的変化を解析処理し、基準波形データを求める。その後、その基準波形データに対する許容公差を操作画面より人手で入力する方法がある。
【0012】
しかしながら、許容公差を人手により入力する方法によれば、どのような値を設定すればよいのか解りがたく、入力に手間がかかると共に、考え違いによる入力ミスや不注意による入力ミスが発生するおそれもあるという問題がある。
【0013】
また、基準波形データや許容公差の設定後、この良否判定用データが妥当であるかどうかを調べるために、端子圧着装置側の加工データを人手により変更してわざと各種の圧着不良を起こし、検証する必要があり、非常に手間がかかるという問題もある。
【0014】
さらに、特許文献1に開示のように、許容公差をサンプリングしたデータから算出された標準偏差に基づいて自動的に設定する方法もある。
【0015】
しかしながら、この場合も前記同様、端子形状や材質等の端子圧着条件により大きく変化するため、許容公差の調整に際しても、調整箇所を特定しがたく、従ってどの値を調整すればよいのか解りがたく、時間がかかり、考え違いによる入力ミスが発生するおそれもある。また、この場合も上記同様にして、設定された良否判定用データが妥当かどうかを検証する必要がある。
【0016】
さらに、人手により加工データを各種の圧着不良に対応させて変更する方法であるため、検証抜けを招くおそれもある。
【0017】
そこで、本発明はこれらの問題点に鑑み、入力の手間、入力ミス、検証の手間が省ける端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法、および検証の手間が省けると共に検証抜けを有効に防止した端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための圧着不良判定データ作成方法の技術的手段は、端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、前記不良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データと、前記良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して前記良否判定用データを生成する判定データ生成工程と、を備える点にある。
【0019】
また、前記不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、前記不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に前記検出波形データが記憶される方法としてもよい。
【0020】
さらに、前記不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなる方法としてもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するための圧着不良判定データ検査方法の技術的手段は、端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法において、前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、前記不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ前記良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行う点にある。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法によれば、端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、不良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データと、良品検出波形データ生成工程で記憶された検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して良否判定用データを生成する判定データ生成工程とを備える方法であり、端子圧着装置により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の圧着不良の加工に基づく検出波形データと、良品の加工に基づく検出波形データとにより、自動で良否判定用データを作成するため、従来のような良否判定用データ作成のための入力の手間や入力ミス、さらには検証の手間が省ける利点がある。
【0023】
また、不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に検出波形データが記憶される方法とすれば、端子圧着処理時における検出波形データの特徴から圧着不良の要因特定や、圧着不良の要因に応じた良否判定も可能となる利点がある。
【0024】
さらに、不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなる方法とすれば、圧着不良の要因に応じた段階的な検出波形データが得られるため、得られた検出波形データの傾向から、より精度のよい良否判定用データの作成が可能となる。
【0025】
また、本発明の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法によれば、端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行う方法であり、端子圧着装置により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の良否判定用データの判定結果に基づき、良否判定用データの妥当性を容易にチェックでき、チェックに際して従来のように、人手により、わざと圧着不良を起こさせる加工データにその都度変更する必要が無く、検証の手間が省けると共に、必要とされる不良品発生用加工データを予め種々記憶させておくことによって、検証抜けも有効に防止できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は全体概略構成、図2は概略ブロック図を示し、20は両端端子打機で、順次供給される被覆電線の下流側端末部における被覆部を所定長さ皮剥ぎし、その皮剥ぎされた被覆電線の端末部に所定形状の端子を圧着する。その後、所定長さに測長して切断すると共に、その切断された被覆電線の上流側端末部における被覆部を所定長さ皮剥ぎし、その皮剥ぎされた被覆電線の端末部に所定形状の端子を圧着して、両端末部に端子がそれぞれ圧着された所定長さの被覆電線を順次製造する構造とされており、その被覆電線における両端末部に端子を圧着するための端子圧着装置21、21がそれぞれ備えられた構造とされている。
【0027】
そして、端子圧着装置21、21による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値を検出すべく、例えば、図13に示される従来構造と同様、端子圧着不良検出装置22の装置本体22aに配線23接続された圧力センサ22b(例えばピエゾセンサ)が端子圧着装置21、21におけるベース板の下側にそれぞれ配置された構造とされている。なお、圧力センサ22bの配置位置はこれらに何ら限定されない。
【0028】
また、端子圧着不良検出装置22は、圧力センサ22bで検出された圧力値の出力等に基づき検出波形データを生成する検出波形生成部22c、圧力センサ22bで検出された圧力値のデータを取得するデータ取得部22d、ROMやRAM等のメモリ22e、許容公差の設定や調整を行う許容公差設定部22f、良否判定用の基準波形データおよび許容公差を設定する良否判定データ設定部22g、検出波形データが基準波形データの許容公差の範囲内かどうかを比較する比較部22h、比較部22hの比較結果に基づいて良否の判定を行う判定部22j、表示装置の表示を制御する表示制御部22k等を備え、検出波形生成部22cや許容公差設定部22fにより、良否判定用の基準波形データや許容公差を生成する良否判定データ生成部が構成される。このような端子圧着不良検出装置22としては、例えば、クリンプフォースモニタがある。
【0029】
前記両端端子打機20を駆動制御する制御部24に、端子圧着不良検出装置22が入出力ケーブル25を介して接続されると共に、操作部としてのパーソナルコンピュータ(いわゆるパソコン)26がデータ通信ケーブル27を介して接続されている。さらに、装置本体22aとパソコン26とがLANケーブル28を介してLAN接続されている。
【0030】
そして、パソコン26の表示画面26aに、端子打機20の操作画面や端子圧着不良検出装置22の操作画面や圧力波形モニター画面等を表示する構成とされている。
【0031】
また、両端端子打機20の制御部24における記憶装置としての内部メモリもしくは外部メモリとしてのパソコン26のハードディスクには、各種径・各種材質の被覆電線の端末部に各種形状・各種材質の端子をそれぞれ圧着処理するために予め生成された端子加工データの複数のファイルを記憶する端子加工データ記憶部24aが備えられている。この端子加工データ記憶部24aに格納されている各端子加工データのファイルには、それぞれを識別して特定するために、図3に示されるように、端子加工データのファイルナンバー(例えば、No.1、No.2、…)、電線名称、端子名称、加工データ等の情報がそれぞれ入力されている。
【0032】
さらに、本実施形態においては、端子加工データ記憶部24aの端子加工データファイルに、上記のような正規の端子圧着のための良品用加工データだけでなく、わざと圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データも予め記憶されている。このような不良品発生用加工データとしては、芯線部の一部が切断されてしまう芯線切れ用加工データ(例えば、No.a、No.a+1、…)、芯線部の圧着部分に被覆部をも圧着してしまう被覆噛み用加工データ(例えば、No.b、No.b+1、…)、被覆部の皮剥ぎ残りが生じる被覆残り用加工データ(例えば、No.c、No.c+1、…)、芯線部の一部が端子から食み出した状態で圧着される芯線こぼれ用加工データ(例えば、No.d、No.d+1、…)、芯線部が端子の芯線圧着部の所定位置より行き過ぎる深打ち用加工データ(例えば、No.e、No.e+1、…)、芯線部が端子の芯線圧着部の所定位置まで達していない浅打ち用加工データ(例えば、No.f、No.f+1、…)等の圧着不良の各種要因がそれぞれ発生するような加工データが記憶されている。
【0033】
そして、このような圧着不良を発生させるための各不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからそれぞれ構成されており、それぞれ具体的な加工データではなく、正規の端子圧着のための加工データを所定の補正値によって自動補正することにより得られる加工データとされている。例えば、重度から軽度に至る圧着不良の複数段階のデータは、両端端子打機20における被覆部を皮剥ぎするための正規のカッターの切込み位置データを段階的に補正すること等により得られるように構成されている。
【0034】
また、端子圧着不良検出装置22の記憶装置としての内部メモリもしくは外部メモリとしてのパソコン26のハードディスクには、端子圧着処理時における良品/不良品を判定するための前記各端子加工データ(例えば、No.1、No.2、…)にそれぞれ対応する各良否判定用データとして、予め生成されている基準波形データと該基準波形データに対応する許容公差との組合せからなる良否判定用データの複数のファイルを記憶する良否判定データ記憶部22mが備えられている。この良否判定データ記憶部22mに格納されている各良否判定用データのファイルには、それぞれを識別して特定するために、ファイルナンバー(例えば、No.1、No.2、…)、電線名称、端子名称等の情報がそれぞれ入力されている。そして、表示画面26aから入力設定することにより、良否判定データ記憶部22mの中から対応する良否判定用データが選択されて、良否判定データ設定部22gに設定される構成とされている。
【0035】
次に、本実施形態にかかる良否判定用データの作成方法を、図4に示すフローチャートに基づき説明すると、先ず、新規の良否判定用データを作成するかどうかが判断される(ステップS1)。なお、良否判定用データを作成する場合には、対象となる端子圧着条件としての電線名称、端子名称、加工データ等の正規の端子圧着のための良品用加工データをパソコン26の操作部から入力して両端端子打機20の端子加工データ記憶部24aに記憶させておく。
【0036】
そして、良否判定用データを作成する場合には、次に、パソコン26の操作部から作成開始ためのデータ作成キーの操作がなされたかどうかが判断され(ステップS2)、データ作成キーの操作がなされると、その操作信号が両端端子打機20と端子圧着不良検出装置22に供給され、両端端子打機20および端子圧着不良検出装置22はデータ作成モードとなる(ステップS3)。このデータ作成モードにより両端端子打機20は内部処理し、対応する正規の良品用加工データを基に、芯線切れ用加工データ、被覆噛み用加工データ、被覆残り用加工データ、芯線こぼれ用加工データ、深打ち用加工データ、浅打ち用加工データ等の圧着不良の各種要因がそれぞれ段階的に発生するような不良品発生用加工データを自動補正により生成し、記憶する。
【0037】
次に、スタートキー操作がなされると(ステップS4)、不良品発生用加工データにより端子圧着処理の加工が開始される(ステップS5)。この不良品発生用加工データによる加工順序は適宜設定されており、例えば、本実施形態においては、端子加工データファイルのファイルナンバーの若い順に順次加工されていくように設定されている。また、本実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の圧着不良の要因毎に、重度の圧着不良から段階的に軽度の圧着不良に至るように前記ファイルナンバーの順番が設定されている。
【0038】
そして、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化を取り込み、データ取得部22dで取得された検出データを検出波形生成部22cで解析して検出波形データを生成し、圧着不良の要因である芯線切れや被覆噛み等の不良種類と共にメモリに記憶する(ステップS6)(不良品検出波形データ生成工程)。
【0039】
その後、ステップS7に移行して、不良品発生用加工データによる加工が全て終了したかどうかが判断され、終了していなければ、ステップS5に戻り、次の不良品発生用加工データにより加工が行われる。このようにして、ステップS5ないしステップS7が所定回数繰り返され、最終的に不良品発生用加工データによる加工が全て終了すれば、次に、良品用加工データにより端子圧着処理の加工を行う(ステップS8)。
【0040】
そして、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化を取り込み、データ取得部22dで取得された検出データを検出波形生成部22cで解析して検出波形データを生成し、良品の検出波形データとしてメモリに記憶する(ステップS9)(良品検出波形データ生成工程)。例えば、図5は良品の検出波形の一例で、図6ないし図11は良品の検出波形に、芯線切れ不良、被覆噛み不良、被覆残り不良、芯線こぼれ不良、深打ち不良、浅打ち不良のそれぞれの場合の検出波形を一点鎖線で重ねて表示した例である。
【0041】
その後、得られた良品の検出波形データと、各種圧着不良の不良品である各検出波形データに基づき、良否判定用データを生成し、良否判定データ記憶部22mにファイルナンバーを付与して記憶すると共に、良否判定データ設定部22gに良否判定用データとして設定する(ステップS10)(判定データ生成工程)。この良否判定用データの生成に際しては、得られた良品の検出波形データと不良品の各検出波形データとの関係から、基準波形データと、基準波形データを基準として良品と不良品との判定のしきい値となる許容公差とを割り出して、良否判定用データを作成する。例えば、本実施形態においては、検出波形生成部22cにより生成された良品の検出波形データを基準波形データとし、許容公差設定部22fに設定されている設定パラメータにより、この基準波形データと圧着不良の各検出波形データの特徴を現す部分との相互間の互いに接近する圧力値の差の1/2や2/3等の適宜範囲を許容公差として、自動的に設定する構成とされている。
【0042】
そして、良否判定用データが生成されて設定されると、データ作成モードが解除され、両端端子打機20は通常の端子圧着処理モードの戻され、一連の良否判定用データの作成が終了する(ステップS11)。
【0043】
そして、この状態で端子の圧着処理が開始されると、作成された良否判定用データの基準波形データとそれに対応する許容公差を基準に、端子が圧着処理された被覆電線における圧着処理の良否が判定され、良品であるか不良品であるか識別されていく。
【0044】
以上のように、本実施形態の端子圧着不良検出装置22における圧着不良判定データ作成方法によれば、端子圧着装置21によって、正規の良品用加工データにより端子圧着処理を行うだけでなく、自動でわざと各種の圧着不良を発生する不良品発生用加工データによっても端子圧着処理を行い、その際の圧着不良の加工に基づく各検出波形データと、良品の加工に基づく検出波形データとにより、自動で良否判定用データを作成するため、従来のような良否判定用データ作成のために、操作画面から許容公差を人手で入力する必要がなく、入力の手間や入力ミスが有効に省ける利点がある。
【0045】
しかも、予め、わざと各種の圧着不良を発生させて、それらの各検出波形データを基に良否判定用データを作成しているため、従来のように、良否判定用データの作成後、わざと各種の圧着不良を起こしてデータの妥当性を検証する必要がなく、検証の手間が省ける利点もある。
【0046】
また、入力の手間や検証の手間が省けることから、両端端子打機20の稼働率が向上でき、入力ミスが防止できることから、不良品の検出漏れが減り、品質向上につながる利点がある。
【0047】
さらに、各不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなり、各圧着不良の要因に応じた段階的な検出波形データが得られるため、得られた検出波形データの傾向から、より精度のよい良否判定用データの作成が可能となる利点がある。
【0048】
また、各不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に検出波形データが記憶される方法としているため、端子圧着処理時における検出波形データの特徴から圧着不良の要因特定が可能となり、圧着不良の要因が特定されることにより、不良製品発生時における人手によるチェックも容易となる。
【0049】
さらには、図6ないし図11に示されるように、端子圧着処理時における圧着不良毎の検出波形データの特徴から、良否判定用データによる良品・不良品の判定に際して、各圧力センサ22bで検出される各ポイント・ポイントにおける圧力値が許容公差の範囲内であるか否かで判定する方法や、検出波形データを時間軸に沿って適宜分割された領域毎の面積(いわゆる和)が許容公差の範囲内であるか否かで判定する方法を選択的に採用することにより、圧着不良の要因に応じたより精度のよい良否判定も可能となる利点がある。
【0050】
次に、本実施形態にかかる端子圧着不良検出装置22に設定されている良否判定用データが、妥当であるかどうかの検査方法について、図12に示すフローチャートに基づき説明する。
【0051】
先ず、良否判定用データのチェックを行うかどうかが判断される(ステップS21)。なお、良否判定用データのチェックを行う場合には、対象となる端子圧着条件としての電線名称、端子名称、加工データ等の正規の端子圧着のための良品用加工データを、パソコン26の操作部からの入力操作によって、両端端子打機20の端子加工データ記憶部24aに記憶されている端子加工データファイルの中から選択しておく。
【0052】
そして、良否判定用データをチェックする場合には、次に、パソコン26の操作部からチェック開始ためのデータチェックキーの操作がなされたかどうかが判断され(ステップS22)、データチェックキーの操作がなされると、その操作信号が両端端子打機20と端子圧着不良検出装置22に供給され、両端端子打機20および端子圧着不良検出装置22はデータチェックモードとなる(ステップS23)。このデータチェックモードにより両端端子打機20は内部処理し、前述同様、対応する正規の良品用加工データを基に、芯線切れ用加工データ、被覆噛み用加工データ、被覆残り用加工データ、芯線こぼれ用加工データ、深打ち用加工データ、浅打ち用加工データ等の圧着不良の各種要因がそれぞれ段階的に発生するような不良品発生用加工データを自動補正により生成し、記憶する。
【0053】
次に、スタートキー操作がなされると(ステップS24)、不良品発生用加工データにより端子圧着処理の加工が開始される(ステップS25)。この不良品発生用加工データによる加工順序は前述同様、適宜設定されており、例えば、本実施形態においては、端子加工データファイルのファイルナンバーの若い順に順次加工されていくように設定されている。また、本実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の圧着不良の要因毎に、重度の圧着不良から段階的に軽度の圧着不良に至るように前記ファイルナンバーの順番が設定されている。
【0054】
そして、端子圧着処理の開始によって、各端子圧着装置21、21により端子が被覆電線に圧着処理される際の圧力センサ22bからの圧力値の出力変化をデータ取得部22dで取り込み、検出波形生成部22cでその検出データが解析されて検出波形データを生成し、表示制御部22kを通じてパソコン26の表示画面26aにその検出波形データに基づく検出波形が、良否判定用データの基準波形データに基づく基準波形に重ねられた状態で表示されていく。
【0055】
そして、不良品発生用加工データによって圧着不良が検出されるかどうかが判定される(ステップS26)(不良品判定チェック工程)。即ち、比較部22hで、その検出波形データが基準波形データの許容公差の範囲内であるかどうかが比較され、判定部22jで良否の判定がなされ、表示画面26a上にその判定結果が表示される。この際、判定結果が圧着不良の判定でなければ、良否判定用データが不良または端子圧着不良検出装置22自体に異常がある旨の警告メッセージを表示画面26aに表示して(ステップS27)、異常の報知を行い、次のステップには移行せず、両端端子打機20は停止される。
【0056】
また、ステップS26で圧着不良が検出されれば、表示画面26aに圧着不良の判定結果と良否判定用データ異常なしの表示がなされ(ステップS28)、不良品発生用加工データによる加工が全て終了したかどうかが判断される(ステップS29)。そして、不良品発生用加工データによる加工が全て終了していなければ、ステップS25に戻り、次の不良品発生用加工データにより加工が行われる。このようにして、ステップS25ないしステップS29が所定回数繰り返され、最終的に不良品発生用加工データによる加工が全て終了すれば、次に、良品用加工データにより端子圧着処理の加工を行う(ステップS30)。
【0057】
そして、その結果、良品用加工データによって圧着不良が検出されるかどうかが判定され(ステップS31)(良品判定チェック工程)、この場合の判定結果が圧着不良の判定であれば、良否判定用データが不良または端子圧着不良検出装置22自体に異常がある旨の警告メッセージを表示画面26aに表示して(ステップS32)、異常の報知を行い、次のステップには移行せず、両端端子打機20は停止される。
【0058】
また、ステップS31で圧着不良が検出されなければ、表示画面26aに圧着良品の判定結果と良否判定用データ異常なしの表示がなされ(ステップS33)、データチェックモードが解除され、両端端子打機20は通常の端子圧着処理モードの戻され、一連の良否判定用データの検査が終了する(ステップS34)。
【0059】
以上のように、本実施形態の端子圧着不良検出装置22における圧着不良判定データ検査方法によれば、予め記憶されている良品用加工データや不良品発生用加工データを利用して、端子圧着装置21により自動でわざと圧着不良や正規の端子圧着処理を行い、その際の良否判定用データの判定結果に基づいて、良否判定用データの妥当性を容易にチェックすることができ、チェックに際して従来のように、人手により、わざと圧着不良を起こさせる加工データに種々変更する必要が無く、検証の手間が省けると共に、必要とされる種々の不良品発生用加工データを予め記憶させておくことによって、検証抜けも有効に防止できる利点がある。
【0060】
また、良否判定用データの妥当性や端子圧着不良検出装置22の故障の検証の手間が省けることから、両端端子打機20の稼働率が向上できると共に、端子圧着不良検出装置22の故障の検出や良否判定用データの確実性が向上できることから、不良品の検出漏れが減り、品質向上につながる利点がある。
【0061】
なお、上記実施形態においては、芯線切れや被覆噛み等の各種圧着不良用の不良品発生用加工データとして、重度から軽度に至る複数段階の補正用加工データをそれぞれ予め記憶された構成とされているが、良否判定用データの作成に先立って、良品用加工データと各種の圧着不良に対応する重度の不良品発生用加工データを入力して予め記憶させ、ステップS3のデータ作成モードとなった際に、内部処理により、それらの加工データから重度から軽度に至る複数段階の不良品発生用加工データを自動で生成する構成としてもよい。
【0062】
また、不良品発生用加工データは、重度から軽度に至る複数段階でなく、芯線切れ等の各種圧着不良用の軽度の不良品発生用加工データのみから良品用加工データを作成する方法であってもよい。
【0063】
さらに、良否判定のための許容公差は、基準波形データを基準に上下方向に所定値シフトして得られる許容値の範囲によるものであってもよく、また、基準波形データを時間軸に沿って複数の領域に分割し、各領域の面積を比較する場合の許容値の範囲であってもよく、さらには、波形データのピーク値や総面積を基準波形データのものと比較する場合の許容値の範囲であってもよい。
【0064】
また、検査時の異常を表示画面26aに表示して報知する方法を示しているが、音声や光等で報知する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態にかかる全体概略図である。
【図2】端子圧着不良検出装置の概略ブロック図である。
【図3】端子加工データ記憶部に記憶されている端子加工データファイルの説明図である。
【図4】圧着不良判定データ作成工程を示すフローチャートである。
【図5】良品の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図6】芯線切れ不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図7】被覆噛み不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図8】被覆残り不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図9】芯線こぼれ不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図10】深打ち不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図11】浅打ち不良の場合の時間と圧力値との関係の波形の一例を示す説明図である。
【図12】圧着不良判定データ検査工程を示すフローチャートである。
【図13】端子圧着装置の概略説明図である。
【図14】端子圧着装置における時間と圧力値との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
20 両端端子打機
21 端子圧着装置
22 端子圧着不良検出装置
22b 圧力センサ
24 制御部
24a 端子加工データ記憶部
26 パソコン
26a 表示画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、
前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、
前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、
前記不良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データと、前記良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して前記良否判定用データを生成する判定データ生成工程と、
を備えることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、前記不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に前記検出波形データが記憶されることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項4】
端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法において、
前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、
前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、
前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、
前記不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ前記良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行うことを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法。
【請求項1】
端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、
前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する不良品検出波形データ生成工程と、
前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際の前記圧力値の変化を示す検出波形データを生成し、記憶する良品検出波形データ生成工程と、
前記不良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データと、前記良品検出波形データ生成工程で記憶された前記検出波形データとの関係から、基準波形データと許容公差とを割り出して前記良否判定用データを生成する判定データ生成工程と、
を備えることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記不良品発生用加工データは、圧着不良の要因毎にそれぞれ記憶され、前記不良品検出波形データ生成工程で、圧着不良の要因と共に前記検出波形データが記憶されることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法において、
前記不良品発生用加工データは、重度の圧着不良から軽度の圧着不良に至る複数段階のデータからなることを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ作成方法。
【請求項4】
端子圧着装置による端子圧着処理時の所定箇所で発生する圧力値の変化から生成された検出波形データに基づき、予め設定されている良否判定用データにより圧着処理の良否を判定する端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法において、
前記端子圧着装置に、正規の端子圧着のための良品用加工データと、圧着不良を発生させるための不良品発生用加工データが予め記憶され、
前記不良品発生用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着不良と判定するかどうかをチェックする不良品判定チェック工程と、
前記良品用加工データにより端子圧着処理を行い、その際に生成される前記検出波形データに基づき圧着良品と判定するかどうかをチェックする良品判定チェック工程と、を備え、
前記不良品判定チェック工程で圧着不良と判定し、かつ前記良品判定チェック工程で圧着良品と判定する以外の場合は、異常がある旨の報知を行うことを特徴とする端子圧着不良検出装置の圧着不良判定データ検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−109517(P2007−109517A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299110(P2005−299110)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
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