説明

端子圧着装置

【課題】小径かつ配置間隔が狭い複数本の電線の各端部に、端子金具を一括して圧着可能な端子圧着装置の提供。
【解決手段】端子圧着装置1は、先端面22に端子金具5及び電線6の端部がそれぞれ1つずつ載せられる並列した複数のアンビル塔2、各塔2の先端面22とそれぞれ対向し、各塔2の先端面22に載せられた端子金具5の圧着部51を先端面22との間で挟み、圧着部51を押圧する複数個の凹部31、各凹部31を縁取る枠体32を有し、アンビル塔2に接近又は離間する方向に移動可能なクリンパ3、各塔2を挟むように並列し、アンビル塔2に沿って昇降移動可能であり、上死点において各先端部がアンビル塔2よりも突出し、かつ上死点において互いに隣り合う先端部間で、端子金具5の各一対の側板片54、55を保持する複数個の昇降ガイド壁41を有するガイド体4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線の各端部にそれぞれ端子金具を一括して圧着する端子圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、末端の芯線を絶縁層から露出させた複数本の電線の各芯線に、それぞれ端子金具を一括して圧着する端子圧着装置が知られている。この種の端子圧着装置は、一般的に、端子金具及び電線の芯線を載せる複数個のアンビルと、これらのアンビルと向かい合う並列した複数個の凹部を有するクリンパと、を備える。前記端子圧着装置は、前記アンビル上の端子金具及び電線の芯線を、前記クリンパの凹部で押さえ付け、端子金具を電線の芯線に圧着している。
【0003】
電線の芯線に圧着される部分(即ち、圧着部)の端子金具は、特許文献1等に示されるように、電線の芯線が載せられる底を挟むように両縁が立ち上がっており、湾曲している。この立ち上がった両縁は、互いに向かい合う一対の板片(側板片)からなる。電線の芯線に圧着される際、端子金具の圧着部は、この立ち上がった両縁の方から前記クリンパの凹部内に進入する。進入したこの両縁が前記クリンパの凹部内で芯線を抱き込むように押し曲げられ、電線の芯線にかしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−335364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等に示される従来の端子圧着装置は、端子金具が圧着される電線同士の間隔が狭い場合、クリンパの凹部同士の間隔も、電線同士の間隔に対応させて狭く設定する必要がある。そのため、図9に示されるように、従来の端子圧着装置に用いられるクリンパ3Pは、各凹部31Pを縁取る枠体32Pのうち、各凹部31Pを隔てる部分35Pが特に細くなり、クリンパ3Pの十分な強度を確保できず、問題となることがあった。
【0006】
また、クリンパの十分な強度を確保するために、各凹部31Pを隔てる部分を太く設定すると、クリンパの凹部同士の間隔が広くなり、クリンパが凹部の配列方向に伸びて長くなってしまう。そのため、前記端子圧着装置では、特に、各電線の断面積が小さく、かつ電線同士の間隔が狭いワイヤーハーネス等に、端子金具を一括して圧着することが出来ず、問題となっていた。
【0007】
なお、図9に示される凹部31P同士の間隔が狭い従来のクリンパ3Pを、破線から先の部分を除いて、各凹部31Pを隔てる部分35Pを太くすると、クリンパの凹部31Pの幅(図9に示されるx参照)が狭くなってしまう。クリンパの凹部1Pの幅が狭くなると、この凹部31P内に進入させる端子金具の圧着部の開き幅(即ち、両縁の間隔)も狭くする必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の端子圧着装置は、圧着部の開き幅を狭くした端子金具をアンビル上で安定した状態で保持できる手段が無く、問題となっていた。アンビル上において、安定した状態で保持されていないと、圧着部の開き幅が狭くなった端子金具に、電線の芯線を載せ難くなることがある。特に、前記ワイヤーハーネスのように、各電線が細く、圧着される端子金具が小さい場合、問題となる。また、アンビル上において、前記端子金具が安定した状態で保持されていないと、クリンパの各凹部内に確実に、圧着部を進入させることも難しくなる。
【0009】
本発明の目的は、小径かつ配置間隔が狭い複数本の電線の各端部に、端子金具を一括して圧着可能な端子圧着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の端子圧着装置は、以下の通りである。
<1> 末端の芯線が露出した電線の端部が載せられる底板部と、該底板部から延びた一対の側板片と、を含む圧着部を有する複数個の端子金具を、複数本の電線の各端部に一括して圧着する端子圧着装置であって、
先端面に前記端子金具及び前記電線の端部がそれぞれ1つずつ載せられる並列した複数のアンビル塔と、
各アンビル塔の先端面とそれぞれ対向し、各アンビル塔の先端面に載せられた前記端子金具の圧着部を前記先端面との間で挟み、前記圧着部を押圧する複数個の凹部と、各凹部を縁取る枠体と、を有し、前記アンビル塔に接近又は離間する方向に移動可能なクリンパと、
各アンビル塔を挟むように並列し、前記アンビル塔に沿って昇降移動可能であり、上死点において各先端部が前記アンビル塔よりも突出し、かつ上死点において互いに隣り合う先端部間で、前記端子金具の各一対の側板片を保持する複数個の昇降ガイド壁、を有するガイド体と、を備えることを特徴とする端子圧着装置。
【0011】
前記<1>の端子圧着装置は、上記構成を備えることにより、前記アンビル塔に接近する前記クリンパの凹部内に、前記端子金具が、一対の側板片の方から確実に挿入され、受け渡される。
【0012】
<2> 前記ガイド体が弾性復元手段により支持され、前記クリンパが前記アンビル塔に接近すると共に、該クリンパの枠体が、前記ガイド体を押し下げる前記<1>に記載の端子圧着装置。
【0013】
前記<2>の端子圧着装置は、上記構成を備えることにより、前記ガイド体が前記クリンパによって押し下げられる。
【0014】
<3> 前記ガイド体の各昇降ガイド壁が、各アンビル塔の先端面上で断面が略U字状となるように前記端子金具の各一対の側板片を保持する前記<1>又は<2>に記載の端子圧着装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の端子圧着装置によれば、小径かつ配置間隔が狭い複数本の電線の各端部に、端子金具を一括して圧着できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る端子圧着装置の断面を模式的に表した説明図である。
【図2】図1に示される端子圧着装置の各アンビル塔の先端面に、端子金具を載せた状態を模式的に表した説明図である。
【図3】端子金具の斜視図である。
【図4】図2に示される端子圧着装置の各アンビル塔に載せられた端子金具の圧着部に、それぞれ電線の芯線を載せた状態を模式的に表した説明図である。
【図5】図4に示される端子圧着装置のクリンパを降下させて、クリンパの各凹部内に、各アンビル塔上の端子金具の圧着部の一部を進入させた状態を模式的に表した説明図である。
【図6】図5に示される端子圧着装置のクリンパを更に降下させた状態を模式的に表した説明図である。
【図7】図6に示される端子圧着装置のクリンパを更に降下させた状態を模式的に表した説明図である。
【図8】図7に示される端子圧着装置のクリンパを上昇させた状態を模式的に表した説明図である。
【図9】従来の端子圧着装置に用いられるクリンパの断面を模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る端子圧着装置の構成及び動作を説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
図1は、一実施形態に係る端子圧着装置の断面を模式的に表した説明図である。図1に示されるように、端子圧着装置1は、複数のアンビル塔2、クリンパ3、及びガイド体4を備える。
【0019】
前記アンビル塔2は、基台20上に立設されており、基台20上で並列している。本実施形態では、4つのアンビル塔2(2a、2b、2c及び2d)が基台20上に立設されている。各アンビル塔2の間には、隙間21(21a、21b及び21c)が設けられている。また一方の端のアンビル塔2aと、基台20に立設された側壁23(23a)との間、及び他方の端のアンビル塔2dと、基台20に立設された側壁23(23b)との間にも、それぞれ隙間24(24a及び24b)が設けられている。
【0020】
前記側壁23aは、前記隙間24aと面する側に、弾性復元手段25(25a)を収容する収容室26(26a)を備える。また、他方の側壁23bも、前記隙間24bと面する側に、弾性復元手段25(25b)を収容する収容室26(26b)を備える。前記弾性復元手段25(25a及び25b)は、例えば、バネからなり、それぞれ前記収容室26(26a及び26b)の床面27(27a及び27b)上に設置されている。
【0021】
前記アンビル塔2は、上方へ向けて真っ直ぐに伸びている。前記アンビル塔2の各先端面22は、窪み、湾曲している。この先端面22に、端子金具が1つずつ載せられる。各アンビル塔2の高さ(先端面22の位置)は、略同じに設定されている。
【0022】
図1に示されるクリンパ3は、前記アンビル塔2の上方に配置し、待機している。前記クリンパ3は、各アンビル塔2の先端面22と対向する複数個の凹部31と、枠体32を備える。前記凹部31は、前記アンビル塔2の先端面22と向かい合う天井面33と、この天井面33から下方へ延び、互いに向かい合う一対の側壁面34を有する。
【0023】
前記天井面33は、2つの円弧状の面(円弧面)が左右対称に配置したものからなり、中央部が下方へ向けて突出している。この天井面33の両端から一対の側壁面34が下方へ向けて延びている。前記一対の側壁面34の間の空間は、下方へ行くほど広くなっている。つまり、互いに向かい合う一対の側壁面34は、末広がりに配置している。
【0024】
前記凹部31は、前記アンビル塔2と対向するように並列している。本実施形態では、4個の凹部31が各アンビル塔2(2a、2b、2c及び2d)と対向している。前記凹部31は、前記枠体32によって縁取られている。枠体32は、隣り合う凹部31同士を隔て、下方へ向けて突出する凸部35と、両端の凹部31の外側にそれぞれ配置し、下方へ向けて突出する2つの端側凸部36を備える。枠体32は、その断面形状が櫛状となっており、前記凸部35及び端側凸部36が櫛歯のように並んでいる。前記凹部31は、前記アンビル塔2の先端が入る大きさ(空間)を有する。
【0025】
前記クリンパ3は、図示されない移動手段を備え、前記アンビル塔2に向けて近付き(接近し)、又は前記アンビル塔2から離れる(離間する)方向に移動できる。前記移動手段としては、この種の端子圧着装置で利用される公知の手段を適用できる。
【0026】
前記ガイド体4は、各アンビル塔2(2a、2b、2c及び2d)間に形成された前記隙間21(21a、21b及び21c)と、前記2つの側壁23(23a及び23b)と両端のアンビル塔2(2a及び2d)との間に形成された前記隙間24(24a及び24b)とに、それぞれ前記アンビル塔2に沿って昇降移動可能な昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)を備える。各昇降ガイド壁41は、それらの間に前記アンビル塔2が挟まれるように並列している。
【0027】
本実施形態において、前記昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)は、それぞれ分離独立した部品ではなく、一体的に形成されたものからなる。つまり、各昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)は、図示されない個所において、一体的に繋がっている。このような昇降ガイド壁41を有するガイド体4は、例えば、略直方体の部材に、各アンビル塔2(2a、2b、2c及び2d)を挿入する貫通孔42(42a、42b、42c及び42d)を形成することによって製造できる。
【0028】
最も外側に配置する昇降ガイド壁41(41a及び41e)は、それぞれ外側に突出した突出部43(43a及び43e)を有する。突出部43aは、前記側壁23aの収容室26a内に挿入され、前記収容室26a内の弾性復元手段25aによって収容室26aの天井面28aに押し付けられている。また、他方の突出部43eは、前記側壁23bの収容室26b内に挿入され、前記収容室26b内の弾性復元手段25bによって収容室26bの天井面28bに押し付けられている。つまり、ガイド体4は、前記弾性復元手段25(25a及び25b)によって支持されている。
【0029】
本実施形態のガイド体4は、前記アンビル塔2に沿って上下方向に移動可能であり、前記突出部43(43a及び43e)が前記収容室26(26a及び26b)の天井面28(28a及び28b)で係止されることによって静止する。このように静止した状態のガイド体4は、上死点にある。
【0030】
上死点における前記ガイド体4の各昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)は、図1に示されるように、それぞれの先端部が、前記アンビル塔2(2a、2b、2c及び2d)の各先端面22よりも、上方に突出している。なお、各昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)の先端面は、平らである。
なお、本実施形態においては、上死点における各昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)の各先端部の位置は、前記側壁23(23a及び23b)の先端部の位置と、略同一となっているが、他の実施形態においては、例えば、各昇降ガイド壁41(41a、41b、41c、41d及び41e)の各先端部が、前記側壁23(23a及び23b)の先端部よりも高くなるように、設定してもよい。
【0031】
図2は、図1に示される端子圧着装置の各アンビル塔の先端面に、端子金具を載せた状態を模式的に表した説明図である。図2に示されるように、各アンビル塔2の先端面22上に載せられた端子金具5は、隣り合う昇降ガイド壁41の先端部間で挟まれ、保持されている。
【0032】
前記端子金具5は、金属製の板材を加工して得られるものである。ここで、図3を参照しつつ、前記端子金具5を説明する。図3は、端子金具の斜視図である。図3に示されるように、端子金具5は、圧着部51と、この圧着部51の前方に設けられる接触部52とからなる。
前記圧着部51は、電線6の端部に圧着される部分であり、電線6の端部(本実施形態においては芯線61)が載せられる底板部53と、この底板部53から延びた一対の側板片54及び55からなる。この側板片54及び55は、圧着片又はバレルと呼ばれることもある。
【0033】
前記底板部53は、その前方に前記接触部52を配置し、その接触部52に向かって右側に側板片54を配置し、向かって左側に側板片55を配置している。つまり、側板片54及び55は前記底板部53を挟んで左右対称に配置している。なお前記底板部53に載せられる電線6の芯線61は導体からなり、末端の芯線61は絶縁層62から露出している。前記芯線61は、複数本の導線の束からなり、所謂、多芯である。他の実施形態においては、芯線61が単芯であってもよい。前記一対の側板片54及び55は、図3に示されるように、共に上方に向けて立ち上がっている。このような形状の圧着部51は、例えば、プレス成型によって得られる。
【0034】
前記接触部52は、相手方である他の端子金具と接触し、互いに電気的に接続させる部分である。前記接触部52は、所謂、メス型端子金具である。前記接触部52の形状は、特に制限はなく目的に応じて適宜設定される。
【0035】
図2に示されるように、各アンビル塔2の先端面22には、それぞれ端子金具5の圧着部51が載せられる。図2には、接触部52側から見た状態の圧着部51が示される。前記圧着部51は、底板部53が前記先端面22上に配置するように載せられる。前記圧着部51は、その断面が前記先端面22上において略U字状となるように、一対の側板片54及び55が隣り合う昇降ガイド壁41によって挟まれている。このように挟まれ、互いに向かい合う前記側板片54及び55の間の距離(開き幅)は、図3に示される端子金具5の圧着部51の開き幅よりも、狭くなっている。つまり、端子金具5の圧着部51を隣り合う昇降ガイド壁41で挟むことによって、前記圧着部51の一対の側板片54及び55の開き幅を、前記クリンパ3の凹部31の幅よりも、小さくしている。
【0036】
隣り合う昇降ガイド壁41の間の距離は、前記端子金具5の圧着部51の開き幅が、前記クリンパ3の凹部31内に挿入できる幅となるように、前記クリンパ3の凹部31の幅以下に設定される。
【0037】
本実施形態においては、各アンビル塔2上の前記圧着部51の一対の側板片54及び55の先端の位置が、昇降ガイド壁41の先端の位置と、略同じに設定されている。他の実施形態においては、例えば、前記一対の側板片54及び55の先端の位置を、昇降ガイド壁41の先端の位置よりも高くし、前記一対の側板片54及び55の先端を、昇降ガイド壁41からはみ出させてもよい。また、これとは反対に、前記側板片54及び55の先端の位置を、昇降ガイド壁41の先端の位置よりも低くしてもよい。
【0038】
図4は、図2に示される端子圧着装置の各アンビル塔に載せられた端子金具の圧着部に、それぞれ電線の芯線を載せた状態を模式的に表した説明図である。図4に示されるように、電線6の芯線61は、各端子金具5の底板部53上に載せられる。各端子金具5の圧着部51は、隣り合う昇降ガイド壁41で保持されているため、位置決めされ安定している。そのため電線6の芯線61を圧着部51内に入れやすい。
なお各電線6は、図示されない電線保持手段によって保持されている。図4に示されるように、各電線6(芯線61)は、互いに所定の間隔をおいて並列している。
【0039】
図5は、図4に示される端子圧着装置のクリンパを降下させて、クリンパの各凹部内に、各アンビル塔上の端子金具の圧着部の一部を進入させた状態を模式的に表した説明図である。
クリンパ3を、図4等に示されるアンビル塔2の上方に配置された状態から下方へ移動させると、先ず、クリンパ3の下側に設けられた櫛歯状に並ぶ凸部35及び端側凸部36が、ガイド体4の各昇降ガイド壁41の先端部と接触する。前記凸部35及び端側凸部36の先端面は平らになっている。前記凸部35及び端側凸部36と接触した各昇降ガイド壁41は、クリンパ3が更に下方へ移動すると、前記凸部35及び端側凸部36によって押し下げられ、アンビル塔2に沿って下降し始める。この際、ガイド体4を支える弾性復元手段25(25a及び25b)は、縮み始める。
【0040】
各昇降ガイド壁41が前記クリンパ3によって押し下げられると、隣り合う昇降ガイド壁41の間で保持された各端子金具5の圧着部51が各昇降ガイド壁41の間から露出し始める。この際、前記圧着部51は、側板片54及び55の先端から露出する。この露出した側板片54及び55は、端子金具5と対向するクリンパ3の各凹部31内に進入する。凹部31内に進入した側板片54及び55は、互いに向かい合う一対の側壁面34に沿って凹部31内を更に進む。
つまり、各アンビル塔2の先端面22上に、電線6の芯線61と共に載せられ、かつガイド体4の各昇降ガイド壁41の間で保持された各端子金具5の圧着部51は、前記ガイド体4(昇降ガイド壁41)によって、クリンパ3の各凹部31内に確実に受け渡され、案内される。
【0041】
図6は、図5に示される端子圧着装置のクリンパを更に降下させた状態を模式的に表した説明図である。図6に示されるように、クリンパ3を更に下方へ移動させると、ガイド体4が更に押し下げられ、クリンパ3の凹部31がアンビル塔2の先端面22に近付く。また、各アンビル塔2の先端面22がガイド体4の各昇降ガイド壁41の先端よりも高くなり、各昇降ガイド壁41の間から露出する。
この際、クリンパ3の凹部31内にある端子金具5の側板片54及び55の各先端は、凹部31の天井面33に向かって各側壁面34を摺るように移動する。前記側板片54及び55が天井面33に到達すると、前記側板片54及び55は共に天井面33の表面形状に沿って円弧状に曲がり、前記側板片54及び55の先端同士が、天井面33の中央部で突き当たる。
【0042】
図7は、図6に示される端子圧着装置のクリンパを更に降下させた状態を模式的に表した説明図である。図7に示されるように、クリンパ3を更に下方へ移動させると、ガイド体4が更に押し下げられ、クリンパ3の凹部31がアンビル塔2の先端面22に更に近付く。すると、端子金具5の圧着部51は、前記凹部31の天井面33と、アンビル塔2の先端面22との間で挟まれ、これらの間で押圧される。このように押圧されると、端子金具5の側板片54及び55は、芯線61を抱き込むように曲がり、該芯線61に圧着される。なお、図7に示されるガイド体4は、下死点にある。
【0043】
図8は、図7に示される端子圧着装置のクリンパを上昇させた状態を模式的に表した説明図である。図8に示されるように、クリンパ3を上方へ移動させると、ガイド体4が弾性復元手段25(25a及び25b)の弾性力によって押し上げられ、アンビル塔2に沿って上昇する。クリンパ3の凸部35及び端側凸部36が、ガイド体4の各昇降ガイド壁41の先端から離れると、ガイド体4は、上死点に達し、図1等に示されるガイド体4の位置まで戻る。
【0044】
図8に示されるように、クリンパ3を上方へ移動させてアンビル塔2から離して退避させると、アンビル塔2の先端面22上に載った、電線6の芯線61に圧着された端子金具5が現れる。このようにすれば、端子圧着装置1から前記端子金具5を取り出すことができる。
【0045】
以上のようにすれば、前記端子圧着装置1を用いて、複数の電線の各端部(芯線)に、端子金具を一括して圧着することができる。
【0046】
他の実施形態においては、電線の芯線と共に、芯線を覆う絶縁層の一部に、端子金具の圧着部を圧着し、かしめてもよい。また、用いる端子金具によっては、電線の前記絶縁層のみに端子金具の圧着部をかしめてもよい。
【0047】
他の実施形態においては、各昇降ガイド壁が、それぞれ独立に昇降可能な構成のガイド体を採用してもよい。この場合、例えば、各昇降ガイド壁をそれぞれ弾性復元手段によって支持し、それぞれを独立して昇降移動させればよい。
【0048】
上記実施形態においては、ガイド体の各昇降ガイド壁の先端面は、図1等に示されるように、平らになっているが、他の実施形態においては、例えば、先端面に窪みが形成されていてもよい。昇降ガイド壁の先端部の形状は、少なくとも、隣り合う昇降ガイド壁が、端子金具の圧着部を所定の開き幅で保持できればよい。
【0049】
上記実施形態においては、ガイド体は、クリンパの下降に伴って押し下げられるものであったが、他の実施形態においては、例えば、クリンパの下降にあわせて、独立してガイド体が下降する構成であってもよい。ガイド体は、少なくとも、端子金具の圧着部を保持し(位置決めし)、かつ、クリンパの凹部に前記圧着部を受け渡すことができるものであればよい。ガイド体は、前記圧着部をクリンパの凹部内に受け渡した後は、クリンパの下降を妨げないように退避できるものであればよい。
【0050】
上記実施形態の端子圧着装置1は、クリンパ3の方がアンビル塔2へ接近し、又はクリンパ3がアンビル塔2から離間する構成であったが、他の実施形態においては、アンビル塔の方がクリンパに接近し、又はアンビル塔がクリンパから離間する構成であってもよい。更に、他の実施形態においては、クリンパ及びアンビル塔が共に接近し、又は共に離間する構成であってもよい。つまり、本発明の端子圧着装置は、相対的にクリンパがアンビル塔に向かって接近し、又は相対的にクリンパがアンビル塔から離間するものである。
【0051】
上記実施形態の端子圧着装置は、電線の各芯線に圧着された端子金具の各圧着部の高さ(所謂、クリンプハイト)が、同じとなるように設定されている。他の実施形態の端子圧着装置においては、例えば、各アンビル塔の高さ(先端面の形状)を個別に調整し、かつ、各アンビル塔と噛み合わされるクリンパの凹部の形状も個別に調整することによって、クリンプハイトを個別設定してもよい。この場合、端子金具の圧着部を挟むガイド体の各昇降ガイド壁の先端部の位置(上死点における位置)も、個別設定されたクリンプハイトに対応できるように、適宜、調整される。
【0052】
本発明の端子圧着装置は、特に、クリンパの凹部同士の距離(ピッチ)が狭い場合に、特に優れる。何故ならば、クリンパ3の凹部31同士の距離を短くしても、各凹部31を隔てる部分(凸部35)をある程度、太く保つことができるからである(図1等参照)。つまり、図9に示される従来のクリンパ3Pから、破線(図9参照)よりも先の部分を除いたものを、本発明のクリンパとして使用できる。そのため、クリンパの凹部同士の距離が狭い場合であっても、クリンパの強度を確保できる。
なお、このクリンパは従来のクリンパ3Pと比べて、凹部の幅は狭くなる。しかしながら、この狭くなった凹部内に端子金具の圧着部が入るように、ガイド体が前記圧着部の開き幅を調整するため、凹部の幅が狭くなったことは問題とならない。
【0053】
なお、本発明の端子圧着装置に適用できる電線は、極細電線等として知られている断面積が小さい(小径な)電線に限られないことは言うまでもない。前記電線よりも太い電線にも本発明の端子圧着装置は、好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 端子圧着装置
2 アンビル塔
3 クリンパ
31 凹部
32 枠体
4 ガイド体
41 昇降ガイド壁
5 端子金具
51 圧着部
53 底板部
54、55 側板片
6 電線
61 端部(芯線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端の芯線が露出した電線の端部が載せられる底板部と、該底板部から延びた一対の側板片と、を含む圧着部を有する複数個の端子金具を、複数本の電線の各端部に一括して圧着する端子圧着装置であって、
先端面に前記端子金具及び前記電線の端部がそれぞれ1つずつ載せられる並列した複数のアンビル塔と、
各アンビル塔の先端面とそれぞれ対向し、各アンビル塔の先端面に載せられた前記端子金具の圧着部を前記先端面との間で挟み、前記圧着部を押圧する複数個の凹部と、各凹部を縁取る枠体と、を有し、前記アンビル塔に接近又は離間する方向に移動可能なクリンパと、
各アンビル塔を挟むように並列し、前記アンビル塔に沿って昇降移動可能であり、上死点において各先端部が前記アンビル塔よりも突出し、かつ上死点において互いに隣り合う先端部間で、前記端子金具の各一対の側板片を保持する複数個の昇降ガイド壁、を有するガイド体と、を備えることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記ガイド体が弾性復元手段により支持され、前記クリンパが前記アンビル塔に接近すると共に、該クリンパの枠体が、前記ガイド体を押し下げる請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記ガイド体の各昇降ガイド壁が、各アンビル塔の先端面上で断面が略U字状となるように前記端子金具の各一対の側板片を保持する請求項1又は2に記載の端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48856(P2012−48856A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187481(P2010−187481)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】