説明

端子圧着電線

【課題】1本の導体からなる芯線部における接触圧力の低下を抑制し、端子との接触抵抗の増加を抑制することができる端子圧着電線を提供する。
【解決手段】1本の導体からなる芯線部3と、この芯線部3の外周を覆う被覆部とを備え、被覆部から露出する芯線部3に端子7の加締部9が加締められて導通される端子圧着電線1において、被覆部5から露出する芯線部3を、端子7の加締部9に加締められる前の状態で加熱し、加締部9に加締めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子圧着電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子圧着電線としては、複数本の導体からなる芯線部と、この芯線部の外周を覆う被覆部とを備え、被覆部から露出する芯線部に端子の加締部としての導体加締部が加締められて導通されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この端子圧着電線では、複数本の導体からなる芯線部と導体加締部の内面との間に延展性に富んだ金属を介在させて加締めた後、金属を加熱して溶融させている。この金属に溶融により、溶融した金属が芯線部間及び芯線部と導体加締部との間に入り込み、接触面積を増大されると共に、酸化被膜の発生を阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−299140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような端子圧着電線では、芯線部が複数本の導体からなるので、導体断面積が大きくなるに従い、使用する導体の本数が多くなり、製造コストが高くなっている。このため、屈曲性を必要としない部位に使用する端子圧着電線においては、製造コストを低減させるために、1本の導体からなる芯線部を用いることがある。
【0006】
しかしながら、1本の導体からなる芯線部を有する端子圧着電線では、加締部による芯線部の加締めの際に、複数本の導体からなる芯線部と異なり、芯線部が加締部内で移動することがなく、加締部の加締めによって芯線部に掛かる荷重の分散が難くなっている。
【0007】
このため、端子の加締部において、高温や低温などの環境変化によって、特に接触圧力の高い部分でクリープが発生して接触圧力が低下するなど、加締部で十分な接触圧力を確保することができず、端子との接触抵抗が増加する恐れがあった。
【0008】
そこで、この発明は、1本の導体からなる芯線部における接触圧力の低下を抑制し、端子との接触抵抗の増加を抑制することができる端子圧着電線の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、1本の導体からなる芯線部と、この芯線部の外周を覆う被覆部とを備え、前記被覆部から露出する前記芯線部に端子の加締部が加締められて導通される端子圧着電線であって、前記被覆部から露出する芯線部は、前記端子の加締部に加締められる前の状態で加熱され、前記加締部に加締められていることを特徴とする。
【0010】
この端子圧着電線では、被覆部から露出する芯線部が端子の加締部に加締められる前の状態で加熱され、加締部に加締められているので、加熱されて軟化された芯線部に対して加締部の食い込みを大きくすることができる。
【0011】
従って、芯線部と加締部とがより密着されて芯線部と加締部との間に反発力が働き、1本の導体からなる芯線部におけるクリープの発生を抑制できるので、芯線部における接触圧力の低下を抑制し、端子との接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の端子圧着電線であって、前記被覆部は、被覆部から露出する前記芯線部側が前記端子の加締部に加締められていることを特徴とする。
【0013】
この端子圧着電線では、被覆部が被覆部から露出する芯線部側が端子の加締部に加締められているので、端子の加締部によって加締められる固定部分を増大させ、加締部による固定を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1本の導体からなる芯線部における接触圧力の低下を抑制し、端子との接触抵抗の増加を抑制することができる端子圧着電線を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る端子圧着電線の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る端子圧着電線に端子を加締める前の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る端子圧着電線に端子を加締めたときの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る端子圧着電線の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る端子圧着電線に端子を加締めたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図5を用いて本発明の実施の形態に係る端子圧着電線について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1〜図4を用いて第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施の形態に係る端子圧着電線1は、1本の導体からなる芯線部3と、この芯線部3の外周を覆う被覆部5とを備え、被覆部5から露出する芯線部3に端子7の加締部9が加締められて導通される。
【0019】
そして、被覆部5から露出する芯線部3は、端子7の加締部9に加締められる前の状態で加熱され、加締部9に加締められている。
【0020】
図2,図3に示すように、端子圧着電線1に導通される端子7は、接触部11と加締部9とを備えている。接触部11は、筒状に形成された雌型からなり、相手端子である雄型端子(不図示)のタブが挿入されて相手端子と端子7とが電気的に接続される。この接触部11には、加締部9が一体に設けられている。
【0021】
加締部9は、底壁13と一対の側壁15,17とからなる。底壁13は、接触部11と連続する一部材で形成され、端子7の長手方向に延設されている。この底壁13は、端子圧着電線1の芯線部3の下面側に配置され、幅方向の両側には一対の側壁15,17が設けられている。
【0022】
一対の側壁15,17は、それぞれ底壁13の幅方向の両側に底壁13と連続する一部材で形成されている。この一対の側壁15,17は、上型と下型とからなる治具(不図示)などによって被覆部5が剥ぎ取られて芯線部3が露出した端子圧着電線1の端末に加締められ、端子7と端子圧着電線1とが電気的に接続される。
【0023】
図1〜図4に示すように、端子圧着電線1は、芯線部3と被覆部5とを備えている。芯線部3は、アルミニウムやアルミニウム合金などの導電性材料の1本の導体からなる。この芯線部3の外周には、被覆部5が一体に設けられている。
【0024】
被覆部5は、合成樹脂などの絶縁材料からなり、芯線部3の外周を覆うように芯線部3と一体に設けられている。この被覆部5を剥がすことにより、芯線部3が露出し、この露出した芯線部3に端子7の加締部9が加締められる。
【0025】
このような加締部9に加締められる芯線部3は、加締部9に加締められる前の状態で加熱されて軟化される。この加熱されて軟化した芯線部3には、一対の側壁15,17が加締められる。このとき、一対の側壁15,17の端部は軟化された芯線部3のより深い位置に食い込むと共に、一対の側壁15,17の内面は芯線部3の軟化によって芯線部3の外周面とより密着される。
【0026】
このように加熱されて軟化した芯線部3に加締部9を加締めることにより、芯線部3と加締部9との密着が増大し、芯線部3と加締部9との間に反発力が働く。この反発力により、環境変化によって芯線部3を加締める加締部9のクリープの発生を抑制でき、芯線部3と加締部9との接触圧力の低下を抑制することができる。
【0027】
このように構成された端子圧着電線1は、まず、所定位置の被覆部5を剥がして芯線部3を露出させる。次に、露出させた芯線部3を加熱する。そして、この加熱された芯線部3に対して、治具などによって一対の側壁15,17を加締め、端子7と端子圧着電線1とを導通させる。
【0028】
なお、芯線部3を加熱する他の方法としては、まず、被覆部5によって被覆されていない芯線部3のみを加熱する。次に、加熱された芯線部3の端部に端子7の一対の側壁15,17を加締める。このとき、芯線部3の他端部に端子7の一対の側壁15,17を加締め、芯線部3の両端部に端子7を加締める構成としてもよい。そして、端子7が加締められた芯線部3に対して被覆部5で被覆する。このような方法では、被覆部5を剥がしてから芯線部3を加熱する方法と比較して、芯線部3に被覆部5が残存していることがなく、芯線部3の加熱の際に被覆部5が溶融することを防止することができる。
【0029】
このような端子圧着電線1では、被覆部5から露出する芯線部3が端子7の加締部9に加締められる前の状態で加熱され、加締部9に加締められているので、加熱されて軟化された芯線部3に対して加締部9の食い込みを大きくすることができる。
【0030】
従って、芯線部3と加締部9とがより密着されて芯線部3と加締部9との間に反発力が働き、1本の導体からなる芯線部3におけるクリープの発生を抑制できるので、芯線部3における接触圧力の低下を抑制し、端子7との接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図5を用いて第2実施形態について説明する。
【0032】
本実施の形態に係る端子圧着電線101は、被覆部5は、被覆部5から露出する芯線部3側が端子103の加締部105に加締められている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0033】
図5に示すように、端子103の加締部105は、底壁13が芯線部3から被覆部5まで延設され、一対の側壁からなる導体加締部107と、一対の側壁からなる被覆加締部109とを備えている。導体加締部107は、一対の側壁がそれぞれ底壁13の幅方向の両側に底壁13と連続する一部材で形成されている。この導体加締部107は、上型と下型とからなる治具(不図示)などによって、加熱されて軟化された芯線部3に加締められ、端子103と端子圧着電線101とが電気的に接続される。
【0034】
被覆加締部109は、一対の側壁がそれぞれ導体加締部107よりも被覆部5側に配置されると共に底壁13の幅方向の両側に底壁13と連続する一部材で形成されている。この被覆加締部109は、上型と下型とからなる治具(不図示)などによって被覆部5に加締められ、端子103と端子圧着電線101との固定を安定化させる。
【0035】
このように構成された端子圧着電線101は、まず、所定位置の被覆部5を剥がして芯線部3を露出させる。次に、露出させた芯線部3を加熱する。そして、この加熱された芯線部3に対して治具などによって導体加締部107を加締めると共に、被覆部5に対して治具などによって被覆加締部109を加締め、端子103と端子圧着電線101とを導通させると共に端子103と端子圧着電線101との固定を安定化させる。
【0036】
このような端子圧着電線101では、被覆部5が被覆部5から露出する芯線部3側が端子103の加締部105に加締められているので、端子103の加締部105によって加締められる固定部分を増大させ、加締部105による固定を安定化させることができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態に係る端子圧着電線では、圧着される端子が、接触部が筒状に形成された雌型端子となっているが、接触部をタブなどに形成した雄型端子であってもよい。
【0038】
また、端子の加締部は、導体加締部と被覆加締部とが離間して設けられているが、導体加締部と被覆加締部とを連続する一部材で形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,101…端子圧着電線
3…芯線部
5…被覆部
7,103…端子
9,105…加締部
11…接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の導体からなる芯線部と、この芯線部の外周を覆う被覆部とを備え、前記被覆部から露出する前記芯線部に端子の加締部が加締められて導通される端子圧着電線であって、
前記被覆部から露出する芯線部は、前記端子の加締部に加締められる前の状態で加熱され、前記加締部に加締められていることを特徴とする端子圧着電線。
【請求項2】
請求項1記載の端子圧着電線であって、
前記被覆部は、被覆部から露出する前記芯線部側が前記端子の加締部に加締められていることを特徴とする端子圧着電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89547(P2013−89547A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231413(P2011−231413)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】