説明

端子金具付き電線の製造方法、端子圧着用金型及び端子金具

【課題】端子金具の伸びを抑制することが可能な端子金具付き電線の製造方法、端子圧着用金型及び端子金具を提供する。
【解決手段】端子圧着用金型としてクリンパ70の圧着の際にワイヤバレル部50,50を押しつけるバレル押圧面部75は、芯線21の軸方向における中間部の平坦面77と、両端部にあって平坦面77から前方及び後方にに向けて下方側傾斜する傾斜面76,78とからなり、両端部の傾斜面76,78が、中間部の平坦面77に先立ってワイヤバレル部50,50を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線の製造方法、端子圧着用金型及び端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆電線に端子金具を取り付けるに際して被覆電線の露出した芯線を端子金具に圧着接続することが行われる(特許文献1参照)。
ここで、芯線を端子金具に圧着するに際しては、例えば、底板部の側縁から立ち上げた一対のバレル部を有するオープンバレル型の端子金具をアンビル上に載置してその底板部に芯線を宛がう。そして、端子金具の上方に配したクリンパを降下させると、バレル部が芯線を包み込むように徐々に変形するとともに、バレル部の先端部が芯線を押し潰すように芯線に食い込むことにより圧着が行われる。
【特許文献1】特開2007−12341公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、バレル部が芯線を押圧していくと、底板部が押し潰されて芯線の軸方向に伸びが生じ、これにより、端子金具全体としても伸びが生じることになる。このような端子金具の伸びにより、端子金具がコネクタ等のキャビティに収容された場合に、キャビティからはみ出す等の不具合が懸念される。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具の伸びを抑制することが可能な端子金具付き電線の製造方法、端子圧着用金型及び端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る端子金具付き電線の製造方法は、底板部とその底板部の側縁から立ち上げた一対のバレル部とを有する端子金具を、被覆電線の芯線に端子圧着用金型によって圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、前記端子圧着用金型は、前記端子金具の底板部を受ける下型と、前記端子金具の底板部に前記芯線の先端部を宛がった状態で前記下型との相対位置を変えることにより前記バレル部を押圧して前記芯線を押し潰すバレル押圧面部を備える上型と、を備え、前記バレル押圧面部のうち、前記芯線の軸方向における両端部が、前記芯線の軸方向における中間部に先立って前記バレル部を押圧するようにしたところに特徴を有する(手段1)。
【0006】
手段1において、前記端子金具のバレル部の幅方向の端部には、切欠部が設けられているようにしてもよい(手段2)。
このようにすれば、押し潰される芯線やバレル部に生じる伸びを切欠部に逃がすことができる。
【0007】
本発明に係る端子圧着用金型は、底板部とその底板部の側縁から立ち上げた一対のバレル部とを有する端子金具を、被覆電線の芯線に圧着してなる端子金具付き電線の端子圧着用金型であって、前記端子圧着用金型として、前記端子金具の底板部を受ける下型と、前記端子金具の前記底板部に前記芯線の先端部を宛がった状態で前記下型との相対位置を変えることにより前記バレル部を押圧して前記芯線を押し潰すバレル押圧面部を備える上型とを備え、前記バレル押圧面部のうち、前記芯線の軸方向における中間部は、前記軸方向における両端部に比して前記バレル部との間のギャップが広がる形状となっているところに特徴を有する(手段3)。
【0008】
手段3において、前記バレル押圧面部は、前記芯線の軸方向における中間部が平坦面であり、前記芯線の軸方向における両端部のうち、前端部は、前方から前記平坦面に向けて直線状に傾斜することで前記バレル部との間のギャップが広がる傾斜面であるとともに、後端部は、後方から前記平坦面に向けて直線状に傾斜することで前記バレル部との間のギャップが広がる傾斜面であるようにしてもよい(手段4)。
このようにすれば、中間部におけるバレル部にかかる圧力を均一にすることができるから、当該部分における底板部の伸びを均一にすることができる。
【0009】
手段3又は手段4に記載の端子圧着用金型を用いて被覆電線の圧着が行われる端子金具であって、前記バレル部の幅方向の端部には、前記芯線の軸方向の中間部において、切欠部が設けられているようにしてもよい(手段5)。
このようにすれば、押し潰される芯線やバレル部に生じる伸びを切欠部に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0010】
バレル押圧面部のうち、芯線の軸方向における両端部が芯線の軸方向における中間部に先立ってバレル部を押圧することにより、前記両端部にバレル部及び芯線を介して押圧される底板部が前記中間部にバレル部及び芯線を介して押圧される底板部よりも先に強い圧力がかかった状態で上型と下型との間に挟まれ、芯線の軸方向に動かないように拘束(固定)される。そして、中間部がバレル部及び芯線を介して底板部を押圧したときには、既に両端部に押圧された底板部の部分が拘束(固定)されているため、芯線の軸方向に伸びを生じさせることができない。よって、バレル押圧面部の中間部に押圧された際の底板部の伸びを少なくすることができ、端子金具全体としての伸びを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1の端子金具付き電線10について、図1〜図8を参照して説明する。
本実施形態の端子金具付き電線10は、図1に示すように、被覆電線20の端末部に端子金具30が圧着接続されてなり、例えば電気自動車において走行用の動力源を構成するバッテリ、インバータ、モータなどの装置(図示せず)の間に配索されるものである。
【0012】
被覆電線20は、アルミニウム合金からなる金属素線21Aを螺旋状に撚り合わせてなる芯線21を樹脂製の絶縁被覆22(絶縁層)で被覆したものであり、その端末部においては、絶縁被覆22が剥き取られて芯線21が露出されている。なお、芯線21には、アルミニウム合金以外にも、他の種類の金属を用いてもよい。
【0013】
端子金具30は、いわゆるオープンバレル型であって、箱型の端子部31と、端子部31と連続し被覆電線20が接続される電線接続部40とからなり、アルミ製よりも高い強度が得られる銅合金製とされている。
端子部31は、箱型の雌端子金具30であって、図示しない雄端子が挿入孔31Aに挿入されることにより、電気的接続が図られる。
【0014】
電線接続部40は、被覆電線20を保持する電線支持部41と、芯線21と接続される芯線接続部45と、を有する。
電線支持部41は、芯線接続部45から連続した底板の左右両側縁から一対のインシュレーションバレル41A,41Aが立ち上げられてなり、これらの一対のインシュレーションバレル41A,41Aを被覆電線20側に湾曲させることにより、被覆電線20が離脱や位置ずれしないように保持されている。
【0015】
芯線接続部45は、底板部48と、底板部48の両側部から延出されてなる一対のワイヤバレル部50,50(本発明の「バレル部」に相当)と、からなる。
底板部48は、幅方向の中央部が低くなるように湾曲した半円筒形状をなす(図3参照)。
【0016】
ワイヤバレル部50,50は、図2に示すように、前後方向(軸方向)に長い長方形状をなし、底板部48の両側部からそれぞれ幅方向に延出されている。なお、図2は、電線接続部40の部分における金属板材の打ち抜き加工後の展開形状(端子金具原板)である。
ワイヤバレル部50,50の幅方向の端部には、芯線21の軸方向の中間部において切欠部55が設けられている。
【0017】
切欠部55は、ワイヤバレル部50,50の幅方向の端部が最も大きく、底板部48に近づくにしたがって徐々に(直線状に)小さくなる2等辺三角形状をなし、その2等辺三角形の等距離の2辺55A,55Bの交点がほぼ底板部48に達する位置に形成されている。
【0018】
次に、端子金具30に電線を圧着するには、図3に示すように、端子圧着用金型として、アンビル60(本発明の「下型」に相当)とクリンパ70(本発明の「上型」に相当)とが用いられる。
アンビル60は、金属製で略直方体状をなし、圧着の際には、その上面60Aに、端子金具30が載置される(上面60Aが底板部48を受ける)。
【0019】
クリンパ70は、金属製であり、略直方体状の部材の内部が、芯線21の軸方向における前端から後端に至るまで、下方(アンビル60側)ほど広がる山形状にくり抜かれている。このくり抜かれた内面形状が後述する圧着の際にワイヤバレル部50,50が摺接するバレル摺接部71となっている。
【0020】
バレル摺接部71の頂部は、一対のワイヤバレル部50,50に対応して、半円形状の凹部74,74が幅方向に2個並んで形成され、その凹部74,74の半円形が交わる接点部74Aが幅方向の中心に形成されている。
【0021】
凹部74,74は、バレル摺接部71に導かれたワイヤバレル部50,50を摺接させることにより、ワイヤバレル部50,50が芯線21を包み込むように変形させる。また、凹部74,74は、この凹部74,74への摺接により芯線21側に向きを変えたワイヤバレル部50,50を下方(アンビル60側)に押圧する機能も有しているため、この凹部74,74がワイヤバレル部50,50を押圧するバレル押圧面部75となっている。
【0022】
ここで、バレル押圧面部75は、図4に示すように、芯線21の軸方向における中間部が平坦面77であり、芯線21の軸方向における前端部は、平坦面77の前端から斜め下方向に直線状に傾斜する傾斜面76であり、芯線21の軸方向における後端部は、平坦面77からの後端から斜め下方向に直線状に傾斜する傾斜面78である。すなわち、傾斜面76は、平坦面77側に向けてワイヤバレル部50,50との間のギャップが広がるように直線状に傾斜し、傾斜面78は、平坦面77側に向けてワイヤバレル部50,50との間のギャップが広がるように傾斜している。
【0023】
この傾斜面76、平坦面77、傾斜面78の形状を合わせると、下方側に開放した逃げ凹部79が形成される。この逃げ凹部79は、圧着の際に、ギャップの狭い傾斜面76及び傾斜面78で強く押し付けられた芯線21やワイヤバレル部50,50がギャップが広く圧力の小さい平坦面77側に逃げることを可能とするものである。
【0024】
なお、傾斜面76及び傾斜面78の傾斜角度を大きくすると、バレル押圧面部75の前端部及び後端部で強く押し付けることになるが、これら傾斜面76及び傾斜面78の傾斜角度は、芯線21の太さや材質や底板部48の材質や厚み等に応じて適宜設定される。
【0025】
(端子金具付き電線の圧着方法)
端子原板に圧着工程が行えるように曲げ加工を施す(図3参照)。
図4に示すように、被覆電線20の露出した芯線21の先端部を、曲げ加工を施した端子金具30の電線接続部40に宛がった(載置した)状態で、端子金具30(の底板部48)をアンビル60上に位置決めし、アンビル60及び端子金具30の上方に配されたクリンパ70を下降させる(相対位置を変える)。
【0026】
すると、端子金具30のワイヤバレル部50,50が、クリンパ70のバレル摺接部71に摺接して芯線21を包み込むような形状に変形していく。
そして、ワイヤバレル部50,50が芯線21側に向きを変えると、図5に示すように、バレル押圧面部75がワイヤバレル部50,50を下方側に押圧する。
【0027】
ここで、クリンパ70のバレル押圧面部75は、芯線21の軸方向の前端部側及び後端部側にてワイヤバレル部50,50とのギャップが狭くなる形状となっているから、芯線21の軸方向における両端部が、芯線21の軸方向における中間部に先立ってワイヤバレル部50,50を押圧する。これにより、図6に示すように、傾斜面76,78に突き当てられた芯線21及びその下に位置する底板部48が先に押し潰されて、芯線21の軸方向に移動しないようにアンビル60とクリンパ70の間に拘束(固定)される。
【0028】
そして、クリンパ70が更に降下するにしたがって、中間部側の芯線21及び底板部48についても徐々に圧縮されていく。このとき、圧縮により芯線21及び底板部48について芯線21の軸方向に伸びが生じようとするが、両端部の芯線21及び底板部48については、アンビル60とクリンパ70の間に挟まれて拘束されており、芯線21の軸方向には伸びの生じる領域がないため、芯線21の軸方向には伸びが生じない。なお、両端部で強く押し潰されても、バレル押圧面部75の逃げ凹部79により底板部48や芯線21の伸びに応じた部分が逃がされる。
【0029】
そして、図7,図8に示すように、クリンパ70が所定位置まで下降すると、端子金具付き電線の圧着が終了する。なお、ワイヤバレル部50,50に生じる伸びは、切欠部55にて吸収されるため、圧着の終了時には、切欠部55が閉じるようになっている。
なお、クリンパ70は、電線支持部41についてもかしめるようになっており、上記したクリンパ70の下降により、上記した圧着とほぼ同時に被覆電線20が電線支持部41にかしめられるようになっている。
【0030】
このように本実施形態によれば、バレル押圧面部75のうち、芯線21の軸方向における両端部が芯線21の軸方向における中間部に先立ってワイヤバレル部50,50(バレル部)を押圧することにより、両端部にて押圧される底板部48に強い圧力がかかった状態で上型と下型との間に挟まれ、芯線21の軸方向に動かないように拘束(固定)される。そして、中間部がワイヤバレル部50,50及び芯線21を介して底板部48を押圧したときには、既に両端部に押圧された底板部48の部分が拘束(固定)されているため、芯線21の軸方向に伸びを生じさせることができない。よって、バレル押圧面部75の中間部に押圧された際の底板部48の伸びを少なくすることができ、端子金具全体としての伸びを抑制することができる。
【0031】
また、バレル押圧面部75は、芯線21の軸方向における中間部が平坦面77であり、芯線21の軸方向における両端部のうち、前端部は、前方から平坦面77に向けて直線状に傾斜することでワイヤバレル部50,50との間のギャップが広がる傾斜面76であるとともに、後端部は、後方から平坦面77に向けて直線状に傾斜することでワイヤバレル部50,50との間のギャップが広がる傾斜面78である。
これにより、中間部におけるワイヤバレル部50,50にかかる圧力を均一にすることができるから、当該部分における底板部48の伸びを均一にすることができる。
【0032】
さらに、ワイヤバレル部50,50の幅方向の端部には、芯線21の軸方向の中間部において、切欠部55が設けられているから、ワイヤバレル部50,50に生じる伸びを切欠部55に逃がすことができる。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図9ないし図16にを参照して説明する。
実施形態2の端子金具130は、実施形態1と異なり、図9に示すように、ワイヤバレル部に切欠部55が設けられていないものが用いられている。この場合、ワイヤバレル部50,50の両端部が拘束(固定)された場合に、ワイヤバレル部50,50の伸びを切欠部55で吸収できない。したがって、実施形態2では、実施形態1よりもワイヤバレル部50,50の伸びを少なくするために、バレル押圧面部175の傾斜面176,178の傾斜角度を実施形態1の傾斜面76,78と比較してやや緩やかにしている。そのため、逃げ凹部179も、実施形態1の逃げ凹部79よりもやや小さくなっている。
なお、以下では、実施形態1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
芯線接続部45は、図9に示すように、底板部48と、底板部48の両側部から延出されてなる一対のワイヤバレル部150,150(本発明の「バレル部」に相当)と、からなる。
底板部48は、幅方向の中央部が低くなるように湾曲した半円筒形状をなす(図11参照)。
【0035】
ワイヤバレル部150,150は、図10に示すように、前後方向(軸方向)に長い長方形状をなし、底板部48の両側部からそれぞれ幅方向に延出されている。なお、図10は、電線接続部40の部分における金属板材の打ち抜き加工後の展開形状(端子金具原板)である。
【0036】
次に、端子金具30に電線を圧着するには、図11に示すように、端子圧着用金型として、アンビル60(本発明の「下型」に相当)とクリンパ170(本発明の「上型」に相当)とが用いられる。
アンビル60は、金属製で略直方体状をなし、圧着の際には、その上面60Aに、端子金具30が載置される。
【0037】
クリンパ170は、金属製であり、略直方体状の部材の内部が、芯線21の軸方向における前端から後端に至るまで、下方(アンビル60側)ほど広がる山形状にくり抜かれている。このくり抜かれた内面形状が後述する圧着の際にワイヤバレル部150,150が摺接するバレル摺接部171となっている。
【0038】
バレル摺接部171の頂部は、一対のワイヤバレル部150,150に対応して、半円形状の凹部174,174が幅方向に2個並んで形成され、その凹部174,174の接点部174Aが中心に形成されている。
凹部174,174は、バレル摺接部171に導かれたワイヤバレル部150,150を摺接させることにより、ワイヤバレル部150,150が芯線21を包み込むように変形させる。また、この凹部174,174は、摺接により芯線21側に向きを変えたワイヤバレル部150,150を押圧するバレル押圧面部175となっている。
【0039】
ここで、バレル押圧面部175は、図12に示すように、芯線21の軸方向における中間部が平坦面177であり、芯線21の軸方向における前端部は、平坦面177の前端から斜め下方向に直線状に傾斜する傾斜面176であり、芯線21の軸方向における後端部は、平坦面177からの後端から斜め下方向に直線状に傾斜する傾斜面178である。これら傾斜面176,178の傾斜角度は、実施形態1の傾斜面76,78の傾斜角度よりもやや小さくなっている。
【0040】
なお、傾斜面176、平坦面177、傾斜面178の形状を合わせると、下方側に開放した逃げ凹部179が形成される。この逃げ凹部179は、圧着の際に、ギャップの狭い傾斜面176及び傾斜面178で強く押し付けられた芯線21やワイヤバレル部50,50がギャップが広く圧力の小さい平坦面177側に逃げることを可能とするものであり、実施形態1の逃げ凹部79よりも小さくなっている。
【0041】
(端子金具付き電線の圧着方法)
端子原板に圧着工程が行えるように曲げ加工を施す(図11参照)。
図12に示すように、被覆電線20の露出した芯線21の先端部を、曲げ加工を施した端子金具130の電線接続部40に宛がった状態で、端子金具130をアンビル60上に位置決めし、アンビル60及び端子金具30の上方に配されたクリンパ170を下降させる。
【0042】
すると、端子金具130のワイヤバレル部150,150が、クリンパ170のバレル摺接部171に摺接して芯線21を包み込むような形状に変形していく。
そして、ワイヤバレル部150,150が芯線21側に向きを変えると、図13に示すように、バレル押圧面部175がワイヤバレル部150,150を下方側に押圧する。
【0043】
ここで、クリンパ170のバレル押圧面部175は、芯線21の軸方向の前端部側及び後端部側にてワイヤバレル部150,150とのギャップが狭くなる形状となっているから、芯線21の軸方向における両端部が、芯線21の軸方向における中間部に先立ってワイヤバレル部150,150を押圧する。これにより、図14に示すように、傾斜面176,179に突き当てられた芯線21及びその下に位置する底板部48が先に押し潰されて、移動しないようにアンビル60とクリンパ170の間に拘束(固定)される。
【0044】
そして、クリンパ170が更に降下するにしたがって、中間部側の芯線21及び底板部48についても徐々に圧縮されていく。このとき、圧縮により芯線21及び底板部48について芯線21の軸方向に伸びが生じようとするが、両端部の芯線21及び底板部48については、アンビル60とクリンパ170の間に挟まれて拘束されており、芯線21の軸方向には伸びの生じる領域がないため、芯線21の軸方向には伸びが生じない。なお、両端部で強く押し潰されても、バレル押圧面部175の逃げ凹部179により底板部48や芯線21の伸びに応じた部分が逃がされる。
そして、図15,図16に示すように、クリンパ170が所定位置まで下降すると、端子金具付き電線の圧着が終了する。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、バレル押圧面部75,175は傾斜面を有する構成としたが、これに限られない。例えば、バレル押圧面部を芯線21の軸方向において下方側に開放するように曲面状に湾曲した形状として、軸方向の両端部が先にワイヤバレル部50,50を押圧するようにしてもよい。また、バレル押圧面部は、軸方向の両端部にて傾斜していなくてもよく、例えば、芯線21の軸方向の両端部に下方に突出する凸部を設け、この凸部が先にワイヤバレル部50,50を押圧することにより、軸方向の両端部において底板部48を拘束(固定)する構成としても良い。
【0046】
(2)実施形態1の切欠部55は、三角形状のものとしたが、これに限られない。例えば、四角形状として圧着後に内部の芯線21が切欠部から視認できるものでもよい。また、単に凹部が形成されているだけでもよい。なお、実施形態1のように、三角形状の切欠部とすれば、圧着後に切欠きが閉じて隙間を生じさせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態1の端子金具付き電線の側面図
【図2】端子金具の部分的な展開形状
【図3】圧着の際のクリンパとアンビルを示す図
【図4】図3の側面図
【図5】クリンパの傾斜面がワイヤバレル部を押し潰す図
【図6】図5の断面図
【図7】圧着終了時のワイヤバレルを説明する図
【図8】図7の断面図
【図9】実施形態2の端子金具付き電線の側面図
【図10】端子金具の部分的な展開形状
【図11】圧着の際のクリンパとアンビルを示す図
【図12】図11の側面図
【図13】クリンパの傾斜面がワイヤバレル部を押し潰す図
【図14】図13の断面図
【図15】圧着終了時のワイヤバレルを説明する図
【図16】図15の断面図
【符号の説明】
【0048】
10,110…端子金具付き電線
20…被覆電線
21…芯線
30,130…端子金具
40…電線接続部
41…電線支持部
48…底板部
50,150…ワイヤバレル部(バレル部)
60…アンビル
70,170…クリンパ
74,74…凹部
75,175…バレル押圧面部
76,79,176,179…傾斜面
77,177…平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部とその底板部の側縁から立ち上げた一対のバレル部とを有する端子金具を、被覆電線の芯線に端子圧着用金型によって圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、
前記端子圧着用金型は、前記端子金具の底板部を受ける下型と、前記端子金具の底板部に前記芯線の先端部を宛がった状態で前記下型との相対位置を変えることにより前記バレル部を押圧して前記芯線を押し潰すバレル押圧面部を備える上型と、を備え、
前記バレル押圧面部のうち、前記芯線の軸方向における両端部が、前記芯線の軸方向における中間部に先立って前記バレル部を押圧するようにしたことを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記端子金具のバレル部の幅方向の端部には、切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
底板部とその底板部の側縁から立ち上げた一対のバレル部とを有する端子金具を、被覆電線の芯線に圧着してなる端子金具付き電線の端子圧着用金型であって、
前記端子圧着用金型として、前記端子金具の底板部を受ける下型と、前記端子金具の前記底板部に前記芯線の先端部を宛がった状態で前記下型との相対位置を変えることにより前記バレル部を押圧して前記芯線を押し潰すバレル押圧面部を備える上型とを備え、
前記バレル押圧面部のうち、前記芯線の軸方向における中間部は、前記軸方向における両端部に比して前記バレル部との間のギャップが広がる形状となっていることを特徴とする端子圧着用金型。
【請求項4】
前記バレル押圧面部は、前記芯線の軸方向における中間部が平坦面であり、前記芯線の軸方向における両端部のうち、前端部は、前方から前記平坦面に向けて直線状に傾斜することで前記バレル部との間のギャップが広がる傾斜面であるとともに、後端部は、後方から前記平坦面に向けて直線状に傾斜することで前記バレル部との間のギャップが広がる傾斜面であることを特徴とする請求項3に記載の端子圧着用金型。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の端子圧着用金型を用いて被覆電線の圧着が行われる端子金具であって、
前記バレル部の幅方向の端部には、前記芯線の軸方向の中間部において、切欠部が設けられていることを特徴とする端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−62038(P2010−62038A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227430(P2008−227430)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】