端子金具付き電線の製造方法
【課題】本発明は、電線の破断を防止できる適度な圧縮により、電線と端子金具との接続部分の接触抵抗を低く抑えることが可能な端子付き絶縁被覆電線の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電線の芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする。この予備加工によって、金属酸化物層の亀裂の隙間から金属酸化物層の下にある金属新生面を表面に露出させることができる。これにより、端子金具の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線内部の金属新生面と端子金具とが十分に接触するようになり、芯線とバレル部との接触抵抗を従来の圧着工程のみを行う方法に比べて低減させることができる。
【解決手段】電線の芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする。この予備加工によって、金属酸化物層の亀裂の隙間から金属酸化物層の下にある金属新生面を表面に露出させることができる。これにより、端子金具の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線内部の金属新生面と端子金具とが十分に接触するようになり、芯線とバレル部との接触抵抗を従来の圧着工程のみを行う方法に比べて低減させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム若しくはアルミニウム合金(以下、アルミニウム等)を芯線に持つ電線は、発電所からの送電線などの電力系に用いられているが、近年では、自動車の軽量化を図るために、配線材としても期待されている。
【0003】
この種の用途に使用される配線材では、電線端末の被覆を剥がして芯線を露出させ、芯線の端末部分に端子金具のバレル部を圧着して、その端子金具を相手部品の端子に接続するかたちで用いられている。
【0004】
しかし、芯線を構成する金属には、芯線表面に絶縁性の金属酸化物層が形成されやすいため、芯線と端子金具との接続部分の接触抵抗が大きくなることがあり、特にアルミニウム等によって製造された芯線では、非常に硬い酸化アルミニウムの皮膜が容易に形成され、端子金具との接触抵抗を高くしてしまうことが問題視されている。芯線と端子金具との接触抵抗を低くするには、芯線を加締接続するバレル部にセレーション溝を設けた端子金具を用いる製造方法も採用されている。
【0005】
セレーション溝を設けた端子金具では、圧着加工を行うと、芯線表面に形成された金属酸化物層がセレーション溝の縁と擦れ合うことにより、金属酸化物層に亀裂が入って芯線の金属新生面が露出し、その金属新生面と端子金具のバレル部とが接触する。これにより、芯線と端子金具との間の接触抵抗を小さくすることができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、圧着時の芯線の圧縮率が小さい場合には、芯線表面の金属酸化物層に亀裂が十分に入らず、金属酸化物層の下にある金属と端子金具との接触が不充分となり、接触抵抗を十分に小さくすることができないという問題があった。
【0008】
かといって、圧着時の芯線の圧縮率を大きくすると、加締付けられた芯線に応力が集中するため、芯線の破断が生じ易くなり、端子金具と電線との機械的な接続性能が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電線の破断を防止できる適度な圧縮により、電線と端子金具との接続部分の接触抵抗を低く抑えることが可能な端子付き絶縁被覆電線の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、電線の金属素線からなる芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする。
【0011】
端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、芯線の表面に生成されている金属酸化物層に亀裂を生じさせることによって、金属酸化物層の亀裂の隙間から金属酸化物層の下にある金属新生面を表面に露出させることができる。
【0012】
もしくは、金属新生面を大きく露出させることがないにしても、予め金属酸化物層に亀裂が入ることによって端子金具のバレル部を芯線に圧着するときに、その亀裂が広がって金属新生面が現れることで端子金具のバレル部と芯線との接触が確実になる。
【0013】
予備加工は、芯線を所定形状の金型で押さえ付けて前記芯線を塑性変形させるプレス加工により行うことができる。
【0014】
また、予備加工は、互いに対をなして嵌合関係となる凹凸を有する一対のロール間に、前記芯線を挟むことで前記芯線を前記凸凹の形に倣うように塑性変形させるロールプレス加工によって行うことができる。
【0015】
上記構成によれば、凸凹を有するロール機で芯線を加工すると、芯線は波状に変形して芯線表面の金属酸化物層に亀裂が生ずる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、芯線に生じてしまっている金属酸化物層に対して予備加工により亀裂を生じさせるから、端子金具を圧着する際の圧縮率を小さくしても端子金具と芯線との接触抵抗を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態によって作製された端子金具付き電線の斜視図
【図2】第1実施形態のプレス機によって電線がプレス加工される前の状態のプレス機と電線とを示す斜視図
【図3】第1実施形態の電線と端子金具とが圧着加工される前の圧着機と電線と端子金具を示す斜視図
【図4】第1実施形態のプレス機によって電線がプレス加工される前の状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図5】第1実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図6】第2実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す断面図
【図7】第2実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図8】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す斜視図
【図9】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す断面図
【図10】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図11】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図12】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す断面図
【図13】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工されている状態のロール機と電線とを示す断面図
【図14】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す断面図
【図15】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図16】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す断面図
【図17】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工されている状態のロール機と電線とを示す断面図
【図18】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す断面図
【図19】他の実施形態のプレス機によって電線が予備加工された後のプレス機と電線とを示す断面図
【図20】他の実施形態のプレス機によって予備加工されされた後の電線を示す断面図
【図21】他の実施形態の予備加工された後の電線を示す断面図
【図22】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図23】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す斜視図
【図24】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工された後であって金型により超音波振動が与えられる前の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態を図1ないし図5を参照して説明する。図1に示すように、第1実施形態の端子金具付き電線10は、絶縁性の樹脂で被覆された電線11の先端部分に露出させた芯線12に端子金具13を圧着接続したものである。
【0019】
図2に示すように、電線11は、複数の金属素線14を撚り合わせてなる芯線12と、この芯線12の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被膜15とを備える。金属素線14は、銅、アルミニウム等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。第1実施形態においては、アルミニウム合金が用いられている。電線11の端末においては、絶縁被膜15が剥がされて芯線12が露出している。
【0020】
図3に示すように、端子金具13は、金属板材を図示しない金型により所定の形状にプレス加工してなる。端子金具13は、電線11の絶縁被膜15の外周を包み込むように加締られるインシュレーションバレル16と、このインシュレーションバレル16に連なって芯線12を外側から抱き込むように加締られるワイヤーバレル17と、このワイヤーバレル17に連なって相手方端子金具と接続する接続部18とを備える。インシュレーションバレル16とワイヤーバレル17は共に、上方にそれぞれ突出する一対の板状をなす。なお、ワイヤーバレル17が形成された端子金具本体部19には、芯線12と直交する方向に延びる複数本のセレーション溝20がプレス加工によって形成されている。
【0021】
第1実施形態の端子金具付き電線10は次のように製造される。
【0022】
まず、予備加工として、図2に示すように、プレス機21を用いて芯線12をプレスする。プレス機21は、上型22及び下型23を備えており、両型22、23に対向する面には複数本の角溝24が所定の形成間隔で平行に延びるように形成されている。図4に示すように、各角溝24の横幅は上記形成間隔の半分の寸法となっており、かつ、上型22及び下型23では、各角溝24の形成位置が角溝24の横幅分だけずれており、結局、上型22及び下型23の凹部25と突部26とが互いに対応する状態となっている。このプレス機21においては、電線11の芯線12は角溝24に対して直交する方向にセットされ、上型22と下型23との間に挟まれてプレスされる。
【0023】
図5に示すように、このような予備加工を行うと芯線12は角形の波状に塑性変形する。芯線12の表面に金属酸化物層(アルミニウム合金では酸化アルミニウム等)が生成していたとしても、角形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、比較的硬質で表面にある金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0024】
つぎに、図3に示すように、周知の圧着機27によって端子金具13と芯線12とを圧着する。まず、圧着機27のアンビル28上に端子金具13をセットし、端子金具13の上に芯線12を露出させた電線11を所定位置にセットする。この状態でクリンパ29を下降させると、インシュレーションバレル16によって電線11の絶縁被膜15が加締られ、ワイヤーバレル17によって芯線12が加締られる。
【0025】
芯線12がワイヤーバレル17によって加締られると、芯線12はワイヤーバレル17に押圧されて流動し塑性変形に至る。芯線12が塑性変形する際、芯線12の表面を覆っている金属酸化物層には予備加工により既に亀裂が生じているため、塑性変形量が少ないとしても金属酸化物層の亀裂が容易に広がり、内部の金属新生面が現れて端子金具13と接触し、両者は確実な電気的接続状態に至る。
【0026】
特に、第1実施形態では、端子金具13に複数本のセレーション溝20を形成してあるから、そのセレーション溝20のエッジ部が芯線12の金属新生面に対して鋭く食い込むようになり、芯線12の金属新生面と端子金具13との接触面積はより広くなり、抵抗低減により寄与することになる。
【0027】
このように、第1実施形態によれば、端子金具13のワイヤーバレル17と芯線12との圧着工程の直前に芯線12をプレスする予備加工を行っているから、芯線12の表面を覆っている金属酸化物層に予備加工時に亀裂を生じさせることができる。
【0028】
これにより、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を従来の圧着工程のみを行う方法に比べて低減させることができる。
【0029】
このことは、従来と同等の抵抗を確保するような圧着を行うためには、従来よりも低い圧縮率で済むことを意味するから、圧着工程の圧縮率が高すぎるためにワイヤーバレル17のエッジ部で芯線12の金属素線14の一部が切断されてしまうような事態を防止することができ、電線11と端子金具13との間の機械的な接続強度(引っ張り強度)を向上させることができる。
【0030】
<第2実施形態>
第2実施形態を図6ないし図7を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0031】
図6に示すように、第2実施形態で使用するプレス機31も、上型32及び下型33を備えるが、両型32、33の対向する面には複数本の三角溝34が所定の形成間隔で平行に延びるように形成されている。
【0032】
各三角溝34の横幅は上記形成間隔の半分の寸法となっており、かつ、上型32及び下型33では、各三角溝34の形成位置が三角溝34の横幅分だけずれており、結局、上型32及び下型33の溝部35と突起部36とが互いに対応する状態となっている。このプレス機31においては、電線11の芯線12は三角溝34に対して直交する方向にセットされ、上記三角溝34内に挟まれてプレスされる。
【0033】
図7に示すように、上記プレス機31によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて三角溝34に倣うように波状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、波形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0034】
従って、第2実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0035】
<第3実施形態>
第3実施形態を図8ないし図10を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図8、図9に示すように、第3実施形態で使用するプレス機41も、上型42及び下型43を備えるが、両型42、43の対向する面には、それぞれ電線11の軸方向に沿う平角溝44が形成されている。電線11の芯線12は、上記平角溝44内に挟まれてプレスされる。なお、上記平角溝44には、電線11の絶縁被覆15部分を収容するための逃げ溝45が連続して形成されている。
【0037】
図10に示すように、上記プレス機41によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて平角溝44に倣うように扁平な角柱状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、隣り合う金属素線14どうしが互いに擦れ合いながら強く圧縮変形される結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0038】
従って、第3実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0039】
<第4実施形態>
第4実施形態を図11ないし図14を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図11に示すように、第4実施形態の予備加工として、ロール機51を用いて芯線12をロールプレスする。ロール機51は、上下一対の円柱状をしたロール52、53を備えており、ロール52、53の両端からはロール52、53径と同心をもち、ロール52、53径より小さい径をもつ円柱状の回転軸54が形成されている。
【0041】
また、図12に示すように、ロール52、53の表面全体には、回転軸54に対して水平方向に角溝55が所定の形成間隔で形成されている。そして、上下両部のロール52、53が最接近する場所では、上部のロール52及び下部のロール53の凹部56と突部57とが互いに対応する状態となっている。
【0042】
図13に示すように、このロール機51においては、電線11の芯線12をロール52、53間に挟むことでロールプレスする。芯線12がロール52、53間を通過した後に、ロール52、53の回転方向を逆にすると、図14に示すように、ロール52、53間に挟み込まれた芯線12はロール52、53間から取り出される。
【0043】
上記ロール機51によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は角形の波状に塑性変形する。芯線12の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、角形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0044】
従って、第4実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0045】
<第5実施形態>
第5実施形態を図15ないし図18を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
図15に示すように、第5実施形態で使用するロール機61も、上下一対のロール62、63を備えるが、ロール62、63表面には、ロール62、63の回転軸64に直行する方向に平溝65が一つ形成されている。ロール62、63間のギャップをなくすと、ロール62、63の平溝65の底面と平溝65の側面とに囲まれた矩形孔が形成される。
【0047】
図17に示すように、このロール機61においては、電線11の芯線12をロール62、63間の矩形孔に差し込むことで、芯線12はロール62、63間に挟まれてロールプレスされる。芯線12がロール62、63間を通過した後に、ロール62、63の回転方向を逆にすると、図18に示すように、ロール62、63間に挟み込まれた芯線12はロール62、63間から取り出される。
【0048】
上記ロール機46によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて矩形孔に倣うように角柱状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、隣り合う金属素線14どうしが互いに擦れ合いながら強く圧縮変形される結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0049】
従って、第5実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)上記実施形態では、複数本の素線からなる芯線を用いていたが、単芯線を用いてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、機械的衝撃を与えて金属酸化物層に亀裂を入れる方法として、プレス加工やロールプレス加工という方法を用いたが、金属線からなるブラシを用いて芯線表面をこする方法を用いてもよい。
【0053】
(3)実施形態3では、プレス機41による予備加工により芯線12を扁平な角柱状(断面矩形状)に塑性変形させたが、これに限られず、扁平な角柱状(矩形状)の塑性変形部を設けるのに代えて、長方形以外の四角形に塑性変形させた塑性変形部としてもよい。また、四角形以外の他の多角形の塑性変形させた塑性変形部としてもよい。例えば、図19に示すように、プレス機の上型70A及び下型70Bからなる金型を用いて予備加工を施して、円形の芯線12を六角形に塑性変形させた塑性変形部71を設けるようにしてもよい。
また、多角形以外の塑性変形部を形成してもよく、例えば、図20に示すように、金型による予備加工で芯線12を楕円形に塑性変形させた塑性変形部72を形成してもよい。更に、図21に示すように、芯線12に予備加工前よりも径(半径)の小さい円形の縮径部を有するように塑性変形させた塑性変形部73を形成してもよい。この塑性変形部73(縮径部)の形成方法としては、プレス機だけでなく、ロールプレス加工を用いてもよい。具体的には、図22に示すように、ロール機74の上下一対のロール75、76は、ロール75、76の外周面に、半円形状(円弧)に湾曲した溝77,78が形成されており、図23に示すように、両ロール75、76の溝77,78により形成される円形孔の部分に芯線12が押し潰されることで、塑性変形部73(縮径部)が形成されるようにすればよい。
【0054】
(4)予備加工の際に、芯線12の素線に超音波振動を与えることにより金属素線14の表面が粗化された(微小な凹凸が形成された)粗化領域が形成されるようにしてもよい。この粗化領域は、例えば、予備加工時に、芯線12の塑性変形に用いる金型を介して超音波振動を与えることにより形成することができる。
この粗化領域が形成された素線14からなる芯線12に、ワイヤーバレルを圧着すると、ワイヤーバレルによって力が加えられることにより素線14同士が擦れ合う。すると、素線14の表面に形成された粗化領域同士が擦れ合うことにより、素線14の表面に形成された酸化皮膜が剥がされる。すると、素線14の新生面が露出する。露出した新生面同士が互いに接触することにより、素線14同士が電気的に接続される。これにより、芯線12の径方向内側に位置する素線14が、電線11と端子金具13との間の電気的な接続に寄与することができるので、電線11と端子金具13との間の接触抵抗を小さくすることができる。
すなわち、本構成によれば、芯線12を塑性変形させる(機械的衝撃を与えて金属酸化物層に亀裂を入れる)のに加えて、(塑性変形時等に)超音波振動により粗化領域を形成することで、より芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
なお、上記した芯線12に塑性変形部73(縮径部)を形成する場合等のように、金型に代えてロールプレス加工を施す場合には、ロールプレス加工により塑性変形部73(縮径部)を形成した後に、図24に示すように、塑性変形部73(縮径部)と同一径の半円形の溝部79,80(凹部)を有する上型81及び下型82からなる金型(芯線を塑性変形させない金型)を介して芯線12に超音波振動を与えるようにすればよい。
【符号の説明】
【0055】
10…端子金具付き電線
11…電線
12…芯線
13…端子金具
21、31、41…プレス機
25…圧着機
51、61、74…ロール機
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム若しくはアルミニウム合金(以下、アルミニウム等)を芯線に持つ電線は、発電所からの送電線などの電力系に用いられているが、近年では、自動車の軽量化を図るために、配線材としても期待されている。
【0003】
この種の用途に使用される配線材では、電線端末の被覆を剥がして芯線を露出させ、芯線の端末部分に端子金具のバレル部を圧着して、その端子金具を相手部品の端子に接続するかたちで用いられている。
【0004】
しかし、芯線を構成する金属には、芯線表面に絶縁性の金属酸化物層が形成されやすいため、芯線と端子金具との接続部分の接触抵抗が大きくなることがあり、特にアルミニウム等によって製造された芯線では、非常に硬い酸化アルミニウムの皮膜が容易に形成され、端子金具との接触抵抗を高くしてしまうことが問題視されている。芯線と端子金具との接触抵抗を低くするには、芯線を加締接続するバレル部にセレーション溝を設けた端子金具を用いる製造方法も採用されている。
【0005】
セレーション溝を設けた端子金具では、圧着加工を行うと、芯線表面に形成された金属酸化物層がセレーション溝の縁と擦れ合うことにより、金属酸化物層に亀裂が入って芯線の金属新生面が露出し、その金属新生面と端子金具のバレル部とが接触する。これにより、芯線と端子金具との間の接触抵抗を小さくすることができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、圧着時の芯線の圧縮率が小さい場合には、芯線表面の金属酸化物層に亀裂が十分に入らず、金属酸化物層の下にある金属と端子金具との接触が不充分となり、接触抵抗を十分に小さくすることができないという問題があった。
【0008】
かといって、圧着時の芯線の圧縮率を大きくすると、加締付けられた芯線に応力が集中するため、芯線の破断が生じ易くなり、端子金具と電線との機械的な接続性能が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電線の破断を防止できる適度な圧縮により、電線と端子金具との接続部分の接触抵抗を低く抑えることが可能な端子付き絶縁被覆電線の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、電線の金属素線からなる芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする。
【0011】
端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、芯線の表面に生成されている金属酸化物層に亀裂を生じさせることによって、金属酸化物層の亀裂の隙間から金属酸化物層の下にある金属新生面を表面に露出させることができる。
【0012】
もしくは、金属新生面を大きく露出させることがないにしても、予め金属酸化物層に亀裂が入ることによって端子金具のバレル部を芯線に圧着するときに、その亀裂が広がって金属新生面が現れることで端子金具のバレル部と芯線との接触が確実になる。
【0013】
予備加工は、芯線を所定形状の金型で押さえ付けて前記芯線を塑性変形させるプレス加工により行うことができる。
【0014】
また、予備加工は、互いに対をなして嵌合関係となる凹凸を有する一対のロール間に、前記芯線を挟むことで前記芯線を前記凸凹の形に倣うように塑性変形させるロールプレス加工によって行うことができる。
【0015】
上記構成によれば、凸凹を有するロール機で芯線を加工すると、芯線は波状に変形して芯線表面の金属酸化物層に亀裂が生ずる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、芯線に生じてしまっている金属酸化物層に対して予備加工により亀裂を生じさせるから、端子金具を圧着する際の圧縮率を小さくしても端子金具と芯線との接触抵抗を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態によって作製された端子金具付き電線の斜視図
【図2】第1実施形態のプレス機によって電線がプレス加工される前の状態のプレス機と電線とを示す斜視図
【図3】第1実施形態の電線と端子金具とが圧着加工される前の圧着機と電線と端子金具を示す斜視図
【図4】第1実施形態のプレス機によって電線がプレス加工される前の状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図5】第1実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図6】第2実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す断面図
【図7】第2実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図8】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す斜視図
【図9】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工される前のプレス機と電線とを示す断面図
【図10】第3実施形態のプレス機によって電線が予備加工されている状態のプレス機と電線とを示す断面図
【図11】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図12】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す断面図
【図13】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工されている状態のロール機と電線とを示す断面図
【図14】第4実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す断面図
【図15】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図16】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す断面図
【図17】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工されている状態のロール機と電線とを示す断面図
【図18】第5実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す断面図
【図19】他の実施形態のプレス機によって電線が予備加工された後のプレス機と電線とを示す断面図
【図20】他の実施形態のプレス機によって予備加工されされた後の電線を示す断面図
【図21】他の実施形態の予備加工された後の電線を示す断面図
【図22】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工される前のロール機と電線とを示す斜視図
【図23】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工された後のロール機と電線とを示す斜視図
【図24】他の実施形態のロール機によって電線が予備加工された後であって金型により超音波振動が与えられる前の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態を図1ないし図5を参照して説明する。図1に示すように、第1実施形態の端子金具付き電線10は、絶縁性の樹脂で被覆された電線11の先端部分に露出させた芯線12に端子金具13を圧着接続したものである。
【0019】
図2に示すように、電線11は、複数の金属素線14を撚り合わせてなる芯線12と、この芯線12の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被膜15とを備える。金属素線14は、銅、アルミニウム等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。第1実施形態においては、アルミニウム合金が用いられている。電線11の端末においては、絶縁被膜15が剥がされて芯線12が露出している。
【0020】
図3に示すように、端子金具13は、金属板材を図示しない金型により所定の形状にプレス加工してなる。端子金具13は、電線11の絶縁被膜15の外周を包み込むように加締られるインシュレーションバレル16と、このインシュレーションバレル16に連なって芯線12を外側から抱き込むように加締られるワイヤーバレル17と、このワイヤーバレル17に連なって相手方端子金具と接続する接続部18とを備える。インシュレーションバレル16とワイヤーバレル17は共に、上方にそれぞれ突出する一対の板状をなす。なお、ワイヤーバレル17が形成された端子金具本体部19には、芯線12と直交する方向に延びる複数本のセレーション溝20がプレス加工によって形成されている。
【0021】
第1実施形態の端子金具付き電線10は次のように製造される。
【0022】
まず、予備加工として、図2に示すように、プレス機21を用いて芯線12をプレスする。プレス機21は、上型22及び下型23を備えており、両型22、23に対向する面には複数本の角溝24が所定の形成間隔で平行に延びるように形成されている。図4に示すように、各角溝24の横幅は上記形成間隔の半分の寸法となっており、かつ、上型22及び下型23では、各角溝24の形成位置が角溝24の横幅分だけずれており、結局、上型22及び下型23の凹部25と突部26とが互いに対応する状態となっている。このプレス機21においては、電線11の芯線12は角溝24に対して直交する方向にセットされ、上型22と下型23との間に挟まれてプレスされる。
【0023】
図5に示すように、このような予備加工を行うと芯線12は角形の波状に塑性変形する。芯線12の表面に金属酸化物層(アルミニウム合金では酸化アルミニウム等)が生成していたとしても、角形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、比較的硬質で表面にある金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0024】
つぎに、図3に示すように、周知の圧着機27によって端子金具13と芯線12とを圧着する。まず、圧着機27のアンビル28上に端子金具13をセットし、端子金具13の上に芯線12を露出させた電線11を所定位置にセットする。この状態でクリンパ29を下降させると、インシュレーションバレル16によって電線11の絶縁被膜15が加締られ、ワイヤーバレル17によって芯線12が加締られる。
【0025】
芯線12がワイヤーバレル17によって加締られると、芯線12はワイヤーバレル17に押圧されて流動し塑性変形に至る。芯線12が塑性変形する際、芯線12の表面を覆っている金属酸化物層には予備加工により既に亀裂が生じているため、塑性変形量が少ないとしても金属酸化物層の亀裂が容易に広がり、内部の金属新生面が現れて端子金具13と接触し、両者は確実な電気的接続状態に至る。
【0026】
特に、第1実施形態では、端子金具13に複数本のセレーション溝20を形成してあるから、そのセレーション溝20のエッジ部が芯線12の金属新生面に対して鋭く食い込むようになり、芯線12の金属新生面と端子金具13との接触面積はより広くなり、抵抗低減により寄与することになる。
【0027】
このように、第1実施形態によれば、端子金具13のワイヤーバレル17と芯線12との圧着工程の直前に芯線12をプレスする予備加工を行っているから、芯線12の表面を覆っている金属酸化物層に予備加工時に亀裂を生じさせることができる。
【0028】
これにより、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を従来の圧着工程のみを行う方法に比べて低減させることができる。
【0029】
このことは、従来と同等の抵抗を確保するような圧着を行うためには、従来よりも低い圧縮率で済むことを意味するから、圧着工程の圧縮率が高すぎるためにワイヤーバレル17のエッジ部で芯線12の金属素線14の一部が切断されてしまうような事態を防止することができ、電線11と端子金具13との間の機械的な接続強度(引っ張り強度)を向上させることができる。
【0030】
<第2実施形態>
第2実施形態を図6ないし図7を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0031】
図6に示すように、第2実施形態で使用するプレス機31も、上型32及び下型33を備えるが、両型32、33の対向する面には複数本の三角溝34が所定の形成間隔で平行に延びるように形成されている。
【0032】
各三角溝34の横幅は上記形成間隔の半分の寸法となっており、かつ、上型32及び下型33では、各三角溝34の形成位置が三角溝34の横幅分だけずれており、結局、上型32及び下型33の溝部35と突起部36とが互いに対応する状態となっている。このプレス機31においては、電線11の芯線12は三角溝34に対して直交する方向にセットされ、上記三角溝34内に挟まれてプレスされる。
【0033】
図7に示すように、上記プレス機31によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて三角溝34に倣うように波状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、波形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0034】
従って、第2実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0035】
<第3実施形態>
第3実施形態を図8ないし図10を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図8、図9に示すように、第3実施形態で使用するプレス機41も、上型42及び下型43を備えるが、両型42、43の対向する面には、それぞれ電線11の軸方向に沿う平角溝44が形成されている。電線11の芯線12は、上記平角溝44内に挟まれてプレスされる。なお、上記平角溝44には、電線11の絶縁被覆15部分を収容するための逃げ溝45が連続して形成されている。
【0037】
図10に示すように、上記プレス機41によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて平角溝44に倣うように扁平な角柱状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、隣り合う金属素線14どうしが互いに擦れ合いながら強く圧縮変形される結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0038】
従って、第3実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0039】
<第4実施形態>
第4実施形態を図11ないし図14を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図11に示すように、第4実施形態の予備加工として、ロール機51を用いて芯線12をロールプレスする。ロール機51は、上下一対の円柱状をしたロール52、53を備えており、ロール52、53の両端からはロール52、53径と同心をもち、ロール52、53径より小さい径をもつ円柱状の回転軸54が形成されている。
【0041】
また、図12に示すように、ロール52、53の表面全体には、回転軸54に対して水平方向に角溝55が所定の形成間隔で形成されている。そして、上下両部のロール52、53が最接近する場所では、上部のロール52及び下部のロール53の凹部56と突部57とが互いに対応する状態となっている。
【0042】
図13に示すように、このロール機51においては、電線11の芯線12をロール52、53間に挟むことでロールプレスする。芯線12がロール52、53間を通過した後に、ロール52、53の回転方向を逆にすると、図14に示すように、ロール52、53間に挟み込まれた芯線12はロール52、53間から取り出される。
【0043】
上記ロール機51によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は角形の波状に塑性変形する。芯線12の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、角形に折り曲げられた部分では、表面部分が芯線12の長手方向に沿って延ばされる結果、金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0044】
従って、第4実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0045】
<第5実施形態>
第5実施形態を図15ないし図18を参照して説明する。前記第1実施形態との相違は予備加工の方法が異なるところにあり、その他は前記第1実施形態と同様である。前記第1実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
図15に示すように、第5実施形態で使用するロール機61も、上下一対のロール62、63を備えるが、ロール62、63表面には、ロール62、63の回転軸64に直行する方向に平溝65が一つ形成されている。ロール62、63間のギャップをなくすと、ロール62、63の平溝65の底面と平溝65の側面とに囲まれた矩形孔が形成される。
【0047】
図17に示すように、このロール機61においては、電線11の芯線12をロール62、63間の矩形孔に差し込むことで、芯線12はロール62、63間に挟まれてロールプレスされる。芯線12がロール62、63間を通過した後に、ロール62、63の回転方向を逆にすると、図18に示すように、ロール62、63間に挟み込まれた芯線12はロール62、63間から取り出される。
【0048】
上記ロール機46によって電線11の芯線12の予備加工を行うと、芯線12は圧縮されて矩形孔に倣うように角柱状に塑性変形する。このため、芯線12を構成する各金属素線14の表面に金属酸化物層が生成していたとしても、隣り合う金属素線14どうしが互いに擦れ合いながら強く圧縮変形される結果、表面の金属酸化物層に多数の亀裂が発生し、時には内部の金属新生面が露出する。
【0049】
従って、第5実施形態でも前記第1実施形態と同様に、端子金具13の圧着加工時の圧縮率を低くしても、芯線12内部の金属新生面と端子金具13とが十分に接触するようになり、芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)上記実施形態では、複数本の素線からなる芯線を用いていたが、単芯線を用いてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、機械的衝撃を与えて金属酸化物層に亀裂を入れる方法として、プレス加工やロールプレス加工という方法を用いたが、金属線からなるブラシを用いて芯線表面をこする方法を用いてもよい。
【0053】
(3)実施形態3では、プレス機41による予備加工により芯線12を扁平な角柱状(断面矩形状)に塑性変形させたが、これに限られず、扁平な角柱状(矩形状)の塑性変形部を設けるのに代えて、長方形以外の四角形に塑性変形させた塑性変形部としてもよい。また、四角形以外の他の多角形の塑性変形させた塑性変形部としてもよい。例えば、図19に示すように、プレス機の上型70A及び下型70Bからなる金型を用いて予備加工を施して、円形の芯線12を六角形に塑性変形させた塑性変形部71を設けるようにしてもよい。
また、多角形以外の塑性変形部を形成してもよく、例えば、図20に示すように、金型による予備加工で芯線12を楕円形に塑性変形させた塑性変形部72を形成してもよい。更に、図21に示すように、芯線12に予備加工前よりも径(半径)の小さい円形の縮径部を有するように塑性変形させた塑性変形部73を形成してもよい。この塑性変形部73(縮径部)の形成方法としては、プレス機だけでなく、ロールプレス加工を用いてもよい。具体的には、図22に示すように、ロール機74の上下一対のロール75、76は、ロール75、76の外周面に、半円形状(円弧)に湾曲した溝77,78が形成されており、図23に示すように、両ロール75、76の溝77,78により形成される円形孔の部分に芯線12が押し潰されることで、塑性変形部73(縮径部)が形成されるようにすればよい。
【0054】
(4)予備加工の際に、芯線12の素線に超音波振動を与えることにより金属素線14の表面が粗化された(微小な凹凸が形成された)粗化領域が形成されるようにしてもよい。この粗化領域は、例えば、予備加工時に、芯線12の塑性変形に用いる金型を介して超音波振動を与えることにより形成することができる。
この粗化領域が形成された素線14からなる芯線12に、ワイヤーバレルを圧着すると、ワイヤーバレルによって力が加えられることにより素線14同士が擦れ合う。すると、素線14の表面に形成された粗化領域同士が擦れ合うことにより、素線14の表面に形成された酸化皮膜が剥がされる。すると、素線14の新生面が露出する。露出した新生面同士が互いに接触することにより、素線14同士が電気的に接続される。これにより、芯線12の径方向内側に位置する素線14が、電線11と端子金具13との間の電気的な接続に寄与することができるので、電線11と端子金具13との間の接触抵抗を小さくすることができる。
すなわち、本構成によれば、芯線12を塑性変形させる(機械的衝撃を与えて金属酸化物層に亀裂を入れる)のに加えて、(塑性変形時等に)超音波振動により粗化領域を形成することで、より芯線12とワイヤーバレル17との接触抵抗を低減させることができる。
なお、上記した芯線12に塑性変形部73(縮径部)を形成する場合等のように、金型に代えてロールプレス加工を施す場合には、ロールプレス加工により塑性変形部73(縮径部)を形成した後に、図24に示すように、塑性変形部73(縮径部)と同一径の半円形の溝部79,80(凹部)を有する上型81及び下型82からなる金型(芯線を塑性変形させない金型)を介して芯線12に超音波振動を与えるようにすればよい。
【符号の説明】
【0055】
10…端子金具付き電線
11…電線
12…芯線
13…端子金具
21、31、41…プレス機
25…圧着機
51、61、74…ロール機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の金属素線からなる芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、
前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記予備加工が、芯線を所定形状の金型で押さえ付けて前記芯線を塑性変形させるプレス加工である請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記予備加工が、互いに対をなして嵌合関係となる凹凸を有する一対のロール間に、前記芯線を挟むことで前記芯線を前記凸凹の形に倣うように塑性変形させるロールプレス加工である請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項1】
電線の金属素線からなる芯線に端子金具のバレル部を圧着してなる端子金具付き電線の製造方法であって、
前記端子金具のバレル部を前記芯線に圧着する直前に、前記芯線の金属表面に生成している金属酸化物層に機械的衝撃を与えて前記金属酸化物層に少なくとも亀裂を生じさせる予備加工を行うことを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記予備加工が、芯線を所定形状の金型で押さえ付けて前記芯線を塑性変形させるプレス加工である請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記予備加工が、互いに対をなして嵌合関係となる凹凸を有する一対のロール間に、前記芯線を挟むことで前記芯線を前記凸凹の形に倣うように塑性変形させるロールプレス加工である請求項1記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−251287(P2010−251287A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208458(P2009−208458)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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