説明

端子金具及び端子金具の接続構造

【課題】半田不良を防止する。
【解決手段】端子金具10は、錫を主成分とする半田40がスルーホール61の開口を覆うように印刷されている回路基板60に対し、スルーホール61に挿入されて半田40を貫通する端子本体11を備える。端子本体11の挿入方向先端部の表面には、錫(Sn)よりも濡れ性の低い金属、例えばニッケル(Ni)によるメッキからなる第1メッキ層31が形成され、端子本体11の表面のうち挿入方向先端部を除く部分には、錫(Sn)によるメッキからなる第2メッキ層32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び端子金具と回路基板の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(以下、回路基板)に半田接続される端子金具として、特許文献1に記載のものが知られている。この端子金具は、回路基板に形成されたスルーホールに挿入される端子本体を備えている。回路基板の表面には、錫を主成分とする半田が、スルーホールの開口を覆うように印刷されており、半田を貫通させながら端子本体がスルーホールに挿入される。その後、回路基板がリフロー炉に通されて、半田が溶融固化されることにより、端子本体と回路基板との間に、半田のフィレット部が形成される。かかるフィレット部は、好ましくは、回路基板の表裏両面におけるスルーホールの開口縁部と端子本体の表面との間に、なだらかな裾野をもった形状となる。なお、半田は錫を主成分としており、端子金具の表面全体は錫メッキされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−51349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の端子金具の場合、スルーホールを通過する端子本体の先端部(挿入方向先端部)に半田が引きずられ、端子本体の先端部の表面に、半田が付着することがあった。そうすると、その後のリフロー処理で溶けた半田が端子本体の先端部にそのまま留まり、図5に示すように、回路基板70のスルーホール71を通過した端子本体90の先端部91に半田80が垂れ下がった状態になることがあった。その結果、上記したようなフィレット形状が形成されず、不良品として処理せざるを得ないという事情があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、半田不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、錫を主成分とする半田がスルーホールの開口を覆うように印刷されている回路基板に対し、前記スルーホールに挿入されて前記半田を貫通する端子本体を備え、前記端子本体の挿入方向先端部の表面に、錫よりも濡れ性の低い金属によるメッキからなる第1メッキ層が形成され、前記端子本体の表面のうち前記挿入方向先端部を除く部分に、錫メッキからなる第2メッキ層が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記端子本体の表面に、溶融状態となった半田を吸い上げ可能な吸い上げ溝が、前記端子本体の挿入方向先端側から長さ方向に沿って形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の端子金具を前記回路基板に接続させる接続構造であって、前記端子本体の表面と前記スルーホールの内周面との間に、前記半田の溶融固化後にフィレット部が形成され、前記第1メッキ層の端部が、前記フィレット部の盛り上がりの端部と同じ高さ位置又は前記フィレット部の盛り上がりの端部よりも前記挿入方向先端側に位置しているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
スルーホールに端子本体が挿入されるに際し、端子本体の挿入方向先端側に半田が付着することがある。しかるに本発明によれば、端子本体の挿入方向先端部の表面に、半田の主成分である錫よりも濡れ性の低い金属からなる第1メッキ層が形成されているから、リフロー処理によって溶けた半田が、端子本体の挿入方向先端側から錫メッキの第2メッキ層側へと吸い上げられる。その結果、良好なフィレット形状が実現され、半田不良が防止される。
【0010】
<請求項2の発明>
端子本体の表面に溶融状態となった半田を吸い上げ可能な吸い上げ溝が端子本体の挿入方向先端側から長さ方向に沿って形成されているため、半田が第2メッキ層のほうに好適に吸い上げられる。その結果、より良好なフィレット形状が実現される。
【0011】
<請求項3の発明>
第1メッキ層の端部がフィレット部の盛り上がりの端部と同じ位置又はフィレット部の盛り上がりの端部よりも挿入方向先端側に位置しているから、半田が端子本体の挿入方向先端側に留まるのが回避され、半田不良が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る端子金具において、端子本体の斜視図である。
【図2】端子本体の底面図である。
【図3】回路基板のスルーホールに端子本体を挿入する前の状態を示す断面図である。
【図4】回路基板のスルーホールに端子本体を挿入してフィレット部を形成した状態を示す断面図である。
【図5】背景技術において、端子本体の先端部に半田が垂下して半田不良を招いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。実施形態1に係る端子金具10は、図示しない基板用コネクタに装着され、基板用コネクタとともにプリント回路基板(以下、回路基板60)に取り付けられる。
【0014】
端子金具10は、その母材部分が銅又は銅合金からなる導電金属製であって全体としてL字状又は直線状をなし、基板用コネクタの端面から外部へ導出される端子本体11を備える。端子本体11は、角が丸みをもった断面ほぼ正方形の棒状をなし、回路基板60に形成されたスルーホール61に上方から挿入されて接続固定される。端子本体11の先端部(回路基板60への挿入方向先端部)には、図1及び図2に示すように、4面をテーパ状に切り欠くことによって先細り状とされた誘い込み部12が形成されている。端子本体11の先端面は、ほぼ正方形状とされている。
【0015】
また、端子本体11の先端部には、誘い込み部12における相対向する2面に、左右一対の凹部13が切り欠いて形成されている。凹部13は、端子本体11の先端から誘い込み部12のやや上方に至る範囲に、長さ方向に延出して形成されている。そして、凹部13は、上端に向けて徐々に幅寸法を増加させる形態とされている。具体的には、凹部13の底面は、上端に行くにしたがって次第に外向きに拡開する第1斜面14で構成され、凹部13の両側内面は、第1斜面14の両側縁から外向きに拡開する第2斜面15で構成され、凹部13の上端面は、第1斜面14の上縁から外向きに拡開する第3斜面16で構成されている。凹部13の先端は、端子本体11の先端面に開口しており、第1斜面14及び第2斜面15の下端は、端子本体11の下端に臨んでいる。
【0016】
また、端子本体11には、その先端部から上方へ長さ方向に沿って細長く延びる吸い上げ溝17が切り込み形成されている。吸い上げ溝17の下端は、凹部13の上端面(第3斜面16)に開口し、吸い上げ溝17の上端は、端子本体11がスルーホール61に挿入された状態で、スルーホール61内に入り込む高さ位置に達している。そして、吸い上げ溝17は、全長に亘ってほぼ一定の深さを有し、かつ凹部13の上端面に向けて拡開する左右一対の導入部18を有している。
【0017】
吸い上げ溝17の底面は、ほぼ垂直に切り立つフラット面19で構成され(図3を参照)、吸い上げ溝17の両側内面は、フラット面19の両側縁からフラット面19に対してほぼ直角に立ち上がる第1ストレート面21及び第1ストレート面21の外縁から外向きに拡開する第4斜面22で構成され、吸い上げ溝17の上端面は、フラット面19の上縁からフラット面19に対してほぼ直角に立ち上がる第2ストレート面23及び第2ストレート面23の外縁から外向きに拡開する第5斜面24で構成されている。
【0018】
さて、端子本体11の先端部の表面には、ニッケル(Ni)によるメッキが施された第1メッキ層31が形成されている。この第1メッキ層31は、誘い込み部12全体に亘って形成されている。そして、端子本体11の表面には、その先端部(第1メッキ層31)を除いて、錫(Sn)によるメッキが施された第2メッキ層32が形成されている。この場合、第2メッキ層32は、端子本体11の先端部を除き、端子金具10全体に亘って形成されている。
【0019】
実施形態1に係る端子金具10の構造は上述の通りであり、続いて、回路基板60に端子金具10を接続させる方法について説明する。
【0020】
まず、回路基板60の表面に半田ペーストが印刷される。このとき、半田ペーストがスルーホール61内に入り込み、図3に示すように、スルーホール61の開口部が半田40で覆われる。
【0021】
その状態で、回路基板60の表面に基板用コネクタが配置される。基板用コネクタを回路基板60に引き降ろす過程で、端子本体11がその先端からスルーホール61に挿入される。挿入の過程では、誘い込み部12によって端子本体11の挿入案内がなされつつ、端子本体11の先端部(誘い込み部12を含む)が半田40を貫通して通過し、回路基板60の裏面側に抜ける。これにより、端子本体11の先端部が回路基板60の裏面下方へ突出する位置に配置されるとともに、端子本体11の表面にクリーム状の半田40が付着する。このとき、凹部13内に半田40が良好に捕捉される。
【0022】
次いで、図示しないリフロー炉内で回路基板60を加熱する。すると、半田40が溶け、溶けた半田40が端子本体11の表面とスルーホール61の内周面との間に流れ込む。このとき、仮に、端子本体11の先端部に半田40が付着していても、端子本体11の先端部には、半田40の主成分である錫(Sn)よりも濡れ性の低いニッケル(Ni)からなる第1メッキ層31が形成されているため、端子本体11の先端部に半田40が留まり難くなる一方、その上方に位置する錫(Sn)メッキからなる第2メッキ層32側に半田40が移行し易くなる。さらに、凹部13内に進入した半田40が毛管現象によって導入部18から吸い上げ溝17内に吸い上げられることによっても、半田40が端子本体11の先端部に留まるのが回避される。
【0023】
その後、半田40が冷却固化されると、端子金具10がスルーホール61の内周面及びスルーホール61の表裏両面の開口縁部に形成された導電部50と半田40を介して導通可能に接続される。こうして端子金具10が回路基板60に接続されると、図4に示すように、スルーホール61の表裏両面の開口縁部と、端子本体11の表面との間に、なだらかな裾野をもったフィレット部55が形成される。かかるフィレット部55は誘い込み部12の上方に位置しており、言い換えれば、第1メッキ層31の上端がフィレット部55の盛り上がりの下端よりも下方(挿入方向先端側)に位置している。
【0024】
以上説明したように、実施形態1によれば、スルーホール61に端子本体11が挿入されたときに、仮に、端子本体11の先端側に半田40が付着しても、その後、リフロー炉で溶けた半田40が第1メッキ層31側である端子本体11の先端側から第2メッキ層32側に吸い上げられるため、端子本体11の先端側に半田40が留まるのが回避される。その結果、回路基板60と端子本体11との間に良好な形状のフィレット部55が構成され、半田不良が防止される。この場合、第1メッキ層31の上端がフィレット部55の盛り上がりの下端よりも下方に位置することにより、半田不良が確実に防止される。
【0025】
また、端子本体11の表面に溶融状態となった半田40を吸い上げ可能な吸い上げ溝17が端子本体11の先端側から長さ方向に沿って形成されているため、半田40が第2メッキ層32のほうにより好適に吸い上げられる。その結果、フィレット部55の形状がより良好となる。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)第1メッキ層は、銅(Cu)・錫(Sn)による合金メッキからなる層、ニッケル(Ni)・錫(Sn)による合金メッキからなる層、鉄(Fe)によるメッキからなる層、クロム(Cr)によるメッキからなる層、のいすれかによって構成されるものであってもよい。これらも、ニッケル(Ni)同様、錫(Sn)よりも濡れ性の低い金属で構成されるため、錫(Sn)を主成分とする半田が第2メッキ層側に好適に吸い上げられる。
(2)第1メッキ層の上端がフィレット部の盛り上がりの下端と同じ高さに位置していてもよい。
(3)端子本体の表面のうち先端部を除く部分において、第1メッキ層に第2メッキ層が積層されていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10…端子金具
11…端子本体
17…吸い上げ溝
31…第1メッキ層
32…第2メッキ層
40…半田
55…フィレット部
60…回路基板
61…スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫を主成分とする半田がスルーホールの開口を覆うように印刷されている回路基板に対し、前記スルーホールに挿入されて前記半田を貫通する端子本体を備え、
前記端子本体の挿入方向先端部の表面に、錫よりも濡れ性の低い金属によるメッキからなる第1メッキ層が形成され、前記端子本体の表面のうち前記挿入方向先端部を除く部分に、錫メッキからなる第2メッキ層が形成されていることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記端子本体の表面に、溶融状態となった半田を吸い上げ可能な吸い上げ溝が、前記端子本体の挿入方向先端側から長さ方向に沿って形成されている請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の端子金具を前記回路基板に接続させる接続構造であって、
前記端子本体の表面と前記スルーホールの内周面との間に、前記半田の溶融固化後にフィレット部が形成され、前記第1メッキ層の端部が、前記フィレット部の盛り上がりの端部と同じ高さ位置又は前記フィレット部の盛り上がりの端部よりも前記挿入方向先端側に位置していることを特徴とする端子金具の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151247(P2011−151247A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12067(P2010−12067)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】