説明

端子金具

【課題】タブの挿入力を低減する。
【解決手段】本体部11内には、撓み可能なバネ片21と操作片28とが互いに隣接して配置されている。操作片28は、支点部31、力点部33及び作用部35を有する。本体部11内にタブ61が挿入される過程では、タブ61が力点部33に当接するとともに、操作片28が支点部31を中心として傾倒し、その傾倒動作に伴って作用部35がバネ片21を押圧することで、タブ61がバネ片21と非接触状態に保たれる。本体部11内にタブ61が正規挿入されると、力点部33がタブ61の凹部63内に進入するとともに、操作片28が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って作用部35がバネ片21への押圧状態を解除することで、タブ61がバネ片21と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の端子金具が開示されている。このものは、互いに接続可能な雌雄一対の端子によって構成されている。雄端子は、タブを有している。雌端子は、筒状の本体部を有している。本体部内には、撓み可能なバネ片が配置されている。バネ片は、本体部の前端から後方へ折り返され、その上面に、エンボス部が突出して形成されている。本体部の天井壁には、エンボス部と対向する位置に、受け部が叩き出して形成されている。
【0003】
本体部内にタブが挿入されると、タブがエンボス部を摺動して、バネ片が下方へ撓み変形させられる。本体部内にタブが正規挿入されると、タブがエンボス部と受け部との間に弾性的に挟持させられ、これにより、両端子が電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の端子金具においては、タブが、本体部内に挿入される過程でエンボス部と接触するのを余儀なくされた。このため、タブとエンボス部との間で摩擦抵抗が発生し、本体部内に挿入されるタブの挿入力が増加する一因になっていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、タブの挿入力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに接続可能な雌雄一対の端子からなり、このうち、雄端子は、タブを有し、前記タブの外面には、凹部が形成され、雌端子は、前記タブが挿入される筒状の本体部を有し、前記本体部内には、撓み可能なバネ片が配置されているとともに、前記バネ片と隣接して操作片が配置され、かつ、前記操作片が、支点部、力点部及び作用部を有するものとされ、前記本体部内に前記タブが挿入される過程では、前記タブが前記力点部に当接するとともに、前記操作片が前記支点部を中心として傾倒し、その傾倒動作に伴って前記作用部が前記バネ片を押圧することで、前記タブが前記バネ片と非接触状態に保たれ、前記本体部内に前記タブが正規挿入されたときには、前記力点部が前記凹部内に進入するとともに、前記操作片が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って前記作用部が前記バネ片への押圧状態を解除することで、前記タブが前記バネ片と接触するように構成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記操作片が、前記支点部から前記力点部にかけて、前記タブの挿入経路側へせり上がる部分を有しているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記バネ片の側縁に突部が形成され、前記作用部が前記突部と当接するフック状の形態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
本体部内にタブが挿入される過程では、タブが力点部に当接するとともに、操作片が支点部を中心として傾倒し、その傾倒動作に伴って作用部がバネ片を押圧することで、タブがバネ片と非接触状態に保たれるから、タブの挿入力が低減される。また、本体部内にタブが正規挿入されると、力点部が凹部内に進入するとともに、操作片が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って作用部がバネ片への押圧状態を解除することで、タブがバネ片と接触するから、両端子の接続状態が確実に確保される。
【0011】
<請求項2の発明>
操作片が支点部から力点部にかけてタブの挿入経路側へせり上がる部分を有しているから、力点部へのタブの当接動作と操作片の傾倒動作を容易に連動させることができる。
【0012】
<請求項3の発明>
バネ片の側縁に突部が形成され、作用部が突部と当接するフック状の形態とされているから、突部を介して作用部のバネ片への押圧動作が良好になされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る端子金具において、雌雄の両端子の接続動作が開始された直後の状態を示す図である。
【図2】雌雄の両端子の接続過程の状態を示す図である。
【図3】雌雄の両端子が正規接続された状態を示す図である。
【図4】雌雄の両端子の離脱過程の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。実施形態1に係る端子金具は、導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、雌雄一対の端子10、60によって構成されている。両端子10、60は、それぞれ対応するコネクタ(図示せず)に収容され、両コネクタの嵌合に伴い、互いに接続されるようになっている。
【0015】
雄端子60は、帯板状をなして、前後方向に細長く延びるタブ61を有する。タブ61の先端部には、先窄み状のテーパ部62が全周に亘って形成されている。また、タブ61の下面には、テーパ部62よりも後方に、有底の凹部63が開口して形成されている。凹部63の内壁前面は、底面から開口縁へ向けて前方に傾斜する斜面64となっている。
【0016】
雌端子10は、本体部11と、本体部11の後方に連なる連結部12と、連結部12の後方に連なるバレル部13とを有している。バレル部13は、オープンバレル状をなし、電線90の端末部にかしめ付けして接続されている。
【0017】
本体部11は、ほぼ角筒状をなし、基壁14、左右の側壁15、及び天井壁16を有している。本体部11の前面はタブ61の挿入口17として開口され、挿入口17を通して本体部11内にタブ61が挿入されるようになっている。連結部12は、両側壁15の下半部と基壁14とに連結されることによって断面U字状をなしている。天井壁16は、二重板構造とされ、その下板部分に、受け部18が下方へ叩き出して形成されている。受け部18は、ほぼ台形状をなし、前後方向に延出する形状とされている。基壁14には、片状のスタビライザ19が下方へ切り起こして形成されている。スタビライザ19は、雌端子10のコネクタ内への挿入動作を案内するとともに、コネクタへの誤挿入を規制する役割をもっている。
【0018】
本体部11内には、撓み可能なバネ片21が配置されている。バネ片21は、基壁14の前縁に一体に連結されつつ、基壁14の前縁から後方へ折り返されて全体として山型をなしている。バネ片21の頂部には、ドーム状のエンボス部22が上方へ叩き出して形成されている。本体部11内におけるエンボス部22と受け部18との間には、タブ61の挿入空間23が、挿入口17から後方に形成されている。バネ片21の前端部における折り返し部分は、基壁14の両側縁部と両側壁15の下縁部との間に形成された切り込みによって、本体部11内に入り込んだ状態となっている。バネ片21の後端部には、基壁14の内壁上面に当接する当接部24が形成され、さらに当接部24から後端にかけて跳ね上げ部25が形成されている。かかるバネ片21は、その前縁を支点として撓み変形させられ、撓み状態ではその前縁と当接部24とで実質的に両持ち状に支持される。
【0019】
バネ片21の両側縁には、左右一対の分岐片26が、頂部から前下がりに分岐して形成されている。両分岐片26の下端部の外側縁には、ピン状の突部27が側方へ突出して形成されている。
【0020】
また、本体部11内には、バネ片21を挟んだ両側に、左右一対の操作片28が、バネ片21と隣接して並列に配置されている。操作片28は、全体としてほぼV字状をなし、基壁14の両側縁に連なる支点部31と、自然状態において支点部31から上方へ略垂直に立ち上がる第1延出部32と、第1延出部32の上端部を構成する力点部33と、自然状態において支点部31からやや後方へ傾きながら立ち上がる第2延出部34と、第2延出部34の上端部を構成するフック状、詳細にはほぼ半円弧状の作用部35とによって一体に形成されている。第1延出部32は、第2延出部34よりも長くされている。力点部33は、作用部35よりも高い位置に配され、タブ61の挿入空間23に臨んでいる。また、作用部35は、突部27に引っ掛け可能な高さ位置に配され、常には突部27に上方から当接している。かかる操作片28は、支点部31を中心として傾倒可能とされ、かつ支点部31の弾性復元力によって傾倒状態から元の状態に復帰可能とされている。
【0021】
次に、実施形態1に係る端子金具の接続・離脱動作を説明する。
両コネクタの嵌合が開始されると、図1に示すように、本体部11の挿入空間23にタブ61の先端部が挿入される。タブ61の挿入動作が進むと、タブ61のテーパ部62が力点部33と当接し、タブ61からの押圧力により第1、第2延出部32、34が後方へ押し倒されるようにして、操作片28が支点部31を中心として後方へ傾倒させられる。かかる操作片28の傾倒動作に伴い、作用部35が突部27を下方へ押圧し、その押圧力によって分岐片26ひいてはバネ片21が下方へ強制的に撓み変形させられる。これにより、エンボス部22が下降し、タブ61の挿入空間23が広がる。さらにタブ61が挿入されると、図2に示すように、力点部33がタブ61の下面を摺動して、バネ片21の撓み状態が保たれるとともに、タブ61の先端部が、エンボス部22に接触することなく、エンボス部22の上方を通過する。この間、タブ61の上面は受け部18の下面を摺動している。
【0022】
両コネクタが正規嵌合されて、本体部11内にタブ61が正規挿入されると、図3に示すように、力点部33が凹部63内に嵌り、タブ61から力点部33への押圧状態が解除される。すると、支点部31の弾性復元力によって操作片28が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って、第1、第2延出部32、34が起立するとともに、作用部35から突部27への押圧状態も解除される。同時に、バネ片21が元の状態に復元する向きに弾性変位して、エンボス部22がタブ61の下面に当接する。こうして、タブ61がエンボス部22と受け部18との間に弾性的に挟持させられ、両端子10、60が導通可能に接続される。この場合、エンボス部22は、タブ61の下面のうち力点部33が摺動した領域に当接するようになっている。このため、仮に、タブ61の下面に酸化皮膜等が形成されていても、力点部33の摺動作用によって酸化皮膜等がワイピングにより除去されて、両端子10、60の接続信頼性が高められる。
【0023】
一方、両コネクタを離脱方向に引っ張ると、タブ61が本体部11から抜け出る向きに後退し、その後退動作に伴って、力点部33が凹部63の斜面64を摺動するとともに、第1、第2延出部32、34が前方へ押し倒されるようにして、操作片28が支点部31を中心として前方へ傾倒させられる。さらに、図4に示すように、力点部33が凹部63から抜け出てタブ61の下面を摺動する。こうして両コネクタが引き離されると、両端子10、60の接続状態が自ずと解除されるようになっている。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、本体部11内にタブ61が挿入される過程では、タブ61が力点部33に当接するとともに、操作片28が支点部31を中心として傾倒し、その傾倒動作に伴って作用部35がバネ片21を押圧することで、タブ61がバネ片21と非接触状態に保たれるから、操作片28のてこ作用により、タブ61の挿入力が低減される。また、本体部11内にタブ61が正規挿入されると、力点部33が凹部63内に進入するとともに、操作片28が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って作用部35がバネ片21への押圧状態を解除することで、タブ61がバネ片21と接触するため、両端子10、60の接続状態が確実に確保される。
【0025】
また、操作片28が支点部31から力点部33にかけてタブ61の挿入空間23側へせり上がる部分を有しているから、力点部33へのタブ61の当接動作と操作片28の傾倒動作を容易に連動させることができる。
【0026】
さらに、バネ片21の両側縁に突部27が形成され、作用部35が当接部24と当接するフック状の形態とされているから、突部27を介して作用部35のバネ片21への押圧動作が良好になされる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)バネ片が、本体部の後端部からタブの挿入口へ向けて片持ち状に延びる形態であってもよい。
(2)操作片が、支点部から片持ち状に突出する形態とされ、その先端部に力点部が形成され、その中間部に作用部が形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…雌端子
11…本体部
21…バネ片
23…挿入空間(挿入経路)
27…突部
28…操作片
31…支点部
33…力点部
35…作用部
60…雄端子
61…タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続可能な雌雄一対の端子からなり、このうち、雄端子は、タブを有し、前記タブの外面には、凹部が形成され、
雌端子は、前記タブが挿入される筒状の本体部を有し、前記本体部内には、撓み可能なバネ片が配置されているとともに、前記バネ片と隣接して操作片が配置され、かつ、前記操作片が、支点部、力点部及び作用部を有するものとされ、
前記本体部内に前記タブが挿入される過程では、前記タブが前記力点部に当接するとともに、前記操作片が前記支点部を中心として傾倒し、その傾倒動作に伴って前記作用部が前記バネ片を押圧することで、前記タブが前記バネ片と非接触状態に保たれ、
前記本体部内に前記タブが正規挿入されたときには、前記力点部が前記凹部内に進入するとともに、前記操作片が元の状態に復帰する向きに変位し、その変位動作に伴って前記作用部が前記バネ片への押圧状態を解除することで、前記タブが前記バネ片と接触するように構成されていることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記操作片が、前記支点部から前記力点部にかけて、前記タブの挿入経路側へせり上がる部分を有している請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
前記バネ片の側縁に突部が形成され、前記作用部が前記突部と当接するフック状の形態とされている請求項1又は2記載の端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−150925(P2011−150925A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12063(P2010−12063)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】