端末止水体及び端末止水構造
【課題】電線の配線管への接触防止と配線管のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管内の空気圧が変動しても脱却することがない端末止水体を提供する。
【解決手段】端末止水体1は、配線管20の端部に外装される第1筒部2と、第1筒部2に同軸で連設され、配線管20を挿通するワイヤハーネス21に外装されるテーパ状の第2筒部3とを備え、第2筒部3における出口部8を除く部位に、第1筒部2に差し込まれた配線管20内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部10を形成した。
【解決手段】端末止水体1は、配線管20の端部に外装される第1筒部2と、第1筒部2に同軸で連設され、配線管20を挿通するワイヤハーネス21に外装されるテーパ状の第2筒部3とを備え、第2筒部3における出口部8を除く部位に、第1筒部2に差し込まれた配線管20内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部10を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブ等の配線管にワイヤハーネス等の電線を挿通させて配索する際に、配線管のシールと電線の配線管への接触防止とを図るために配線管に取り付けられる端末止水体と、その端末止水体を用いた端末止水構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス等の電線をコルゲートチューブ等の配線管に挿通させて配索を行う場合、配線管の端部には、特許文献1に開示のような端部保護キャップが取り付けられる。この端部保護キャップは、スリットを備えた円筒状のキャップ本体に一対の突出片を設けてなり、配線管(コルゲートチューブ)に挿通させたワイヤハーネスをスリットを介してキャップ本体に挿通させてキャップ本体を配線管の外周部に装着し、突出片を配線管にテープ巻きすることで配線管に固定される。これにより、ワイヤハーネスをキャップ本体の開口部で保持して配線管の端部に直接接触しないようにしている。
しかし、この端部保護キャップでは、ワイヤハーネスの配線管の端部への接触を防止できるが、キャップ本体の開口とワイヤハーネスとの間が密着していないため、ここから水等の異物が侵入して腐食や劣化の原因となる。
そこで、特許文献2,3には、電線が挿入する筒状のゴム部品を配線管内に挿入して配管の内面に密着させることで、電線の接触防止と共に配線管の端部のシールも行うゴム栓や配索構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−204120号公報
【特許文献2】特開平10−223303号公報
【特許文献3】特開2009−166635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献2,3の発明のように配線管を密封すると、加熱等によって配線管内の空気圧が上昇することでゴム栓が内部から押圧され、配線管から外れてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、電線の配線管への接触防止と配線管のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管内の空気圧が変動しても脱却することがない信頼性の高い端末止水体及び端末止水構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弾性材料で形成される筒状を呈し、電線を挿通させた配線管の端部に装着される端末止水体であって、配線管の端部に外装される第1筒部と、その第1筒部に同軸で連設されて第1筒部から離れるに従って小径となり、先端部が配線管の端部から突出する電線に外装されるテーパ状の第2筒部とを含み、第2筒部における先端部を除く部位に、配線管内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部を形成したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、第1筒部と第2筒部との間の内面に、第1筒部に差し込まれた配線管の端部が当接するリング状の突き当て部を設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、突き当て部の高さを配線管の厚みよりも大きくしたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、変動部を、肉厚を先端部よりも薄くすることで形成したことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、端末止水構造であって、電線を挿通させた配線管の端部に、請求項1乃至4の何れかに記載の端末止水体の第1筒部を外装させ、電線を端末止水体の第2筒部を貫通させて外部に引き出したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び5に記載の発明によれば、電線の配線管への接触防止と配線管のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管内の空気圧が変動してもシール性が低下したり端末止水体が脱却したりすることがない。従って、信頼性の高い端末止水構造が得られる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、突き当て部の採用により、配線管は第1筒部内の適正位置へ確実に差し込みされる。また、配線管内の空気圧の減少によって変動部が収縮した際の第1筒部側への入り込みも防止可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、電線の配線管の端部への接触がより効果的に防止され、電線の保護効果が高まる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、変動部が簡単に形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】端末止水体の斜視図で、(A)が前方側から、(B)が後方側から見た状態を示す。
【図2】(A)は端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図3】端末止水構造の説明図である。
【図4】加熱時の状態を示す説明図である。
【図5】冷却時の状態を示す説明図である。
【図6】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図7】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図8】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図9】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である。
【図10】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である(電線保護部品装着前)。
【図11】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である(電線保護部品装着後)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に端末止水体の一例を示す。端末止水体1はゴム製の筒状体で、配線管の端部が挿入される第1筒部2と、第1筒部2に同軸で連設され、配線管に挿通させたワイヤハーネス等の電線が挿通される第2筒部3とからなる。
第1筒部2は、前後(図2の左側を前方とする。)に亘って等径となる貫通孔4を内部に有し、後部6よりも肉厚となる前部5の外周には、複数(ここでは3つ)のリング状の凹溝7,7・・が、軸方向へ所定間隔をおいて同軸で周設されている。
【0010】
一方、第2筒部3は、第1筒部2から前方へ離れるに従って徐々に小径となるテーパ状で、最も小径となる先端部には、内周が前後方向へ等径となる出口部8が形成されている。
また、第2筒部3における出口部8の後方部分には、出口部8よりも肉厚が小さい薄肉部9,9・・が、周方向へ所定間隔をおいて形成されている。この薄肉部9によって出口部8の後方部分は、出口部8よりも可撓性が高い変動部10となっている。
そして、端末止水体1の内面において第1筒部2と第2筒部3との間には、リング状の突条である突き当て部11が周設されている。この突き当て部11の高さは、ここに差し込まれる配線管の肉厚よりも大きくなっている。
【0011】
以上の如く構成された端末止水体1は、電線としてのワイヤハーネスを挿通させた配線管に用いる場合、図3に示すように、コルゲートチューブ等の配線管20の端部を端末止水体1の第1筒部2に後方から差し込むと、配線管20が突き当て部11に当接してそれ以上の差し込みが規制される。第1筒部2の貫通孔4は配線管20の外径よりも僅かに小径となっているため、第1筒部2は配線管20の外周に密着した状態で外装される。
【0012】
次に、配線管20を挿通させたワイヤハーネス21を配線管20から前方へ突出させて第2筒部3に差し込み、そのまま出口部8を貫通させて前方へ引き出す。出口部8の内径はワイヤハーネス21の外径よりも僅かに小径となっているため、出口部8はワイヤハーネス21の外周に密着した状態で外装される。最後に第1筒部2の後端と配線管20とに跨る位置と、出口部8の前端とワイヤハーネス21とに跨る位置とにそれぞれテープ22を巻回すれば端末止水体1の装着が完了する。
【0013】
この端末止水構造においては、ワイヤハーネス21は第2筒部3によって第1筒部2及び配線管20の軸心で保持されるため、ワイヤハーネス21が配線管20の端部に接触することがない。特に突き当て部11が配線管20の肉厚よりも高く形成されているため、ワイヤハーネス21は配線管20内で移動しても先に突き当て部11に接触することとなり、配線管20との接触はより効果的に防止される。
また、第1筒部2は配線管20に、第2筒部3はワイヤハーネス21にそれぞれ密着して外装されるため、配線管20やワイヤハーネス21の貫通部分でのシール性が確保され、端末止水体1や配線管20の内部に水等の異物が浸入するおそれが低減される。
【0014】
そして、ここでは薄肉部9によって第2筒部3の変動部10が高い可撓性を有しているので、加熱によって配線管20内の空気圧が高まると、図4に示すように変動部10が外側へ膨出して空気圧の上昇を吸収する。逆に冷却によって配線管20内の空気圧が減少して負圧になると、図5に示すように変動部10が内側へ収縮して空気圧の減少を吸収する。従って、何れの場合も出口部8とワイヤハーネス21との間のシール性に影響を与えることがなく、端末止水体1が脱却することもない。なお、変動部10が負圧によって収縮しても突き当て部11によってそれ以上の後方への入り込みは阻止される。
【0015】
このように、上記形態の端末止水体1及び端末止水構造によれば、ワイヤハーネス21に外装されるテーパ状の第2筒部3を設けると共に、第2筒部3における出口部8を除く部位に、配線管20内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部10を形成したことで、ワイヤハーネス21の配線管20への接触防止と配線管20のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管20内の空気圧が変動してもシール性が低下したり端末止水体1が脱却したりすることがない。従って、信頼性の高い端末止水構造が得られる。
【0016】
特にここでは、第1筒部2と第2筒部3との間の内面に、第1筒部2に差し込まれた配線管20の端部が当接するリング状の突き当て部11を設けたことで、配線管20は第1筒部2内の適正位置へ確実に差し込みされる。また、配線管20内の空気圧の減少によって変動部10が収縮した際の第1筒部2側への入り込みも防止可能となる。
また、突き当て部11の高さを配線管20の厚みよりも大きくしているので、ワイヤハーネス21の配線管20の端部への接触がより効果的に防止され、ワイヤハーネス21の保護効果が高まる。
さらに、変動部10を、肉厚を出口部8よりも薄くすることで形成しているので、変動部10が簡単に形成可能となっている。
【0017】
なお、第2筒部のテーパ状は上記形態のような曲面状に小径となるテーパに限らず、直線状に小径となるテーパであっても差し支えない。
また、突き当て部はリング状の突条にせず、断続的に突設される突条又は突起等の他の形状としてもよい。勿論突き当て部を省略することも可能である。
さらに、第1筒部及び第2筒部の端部におけるテープ巻きも、結束バンド等の他の結束手段に代えたり、このような結束手段自体を省略したりすることができる。
【0018】
また、変動部の構成も上記形態に限らず、例えば薄肉部による場合は図6に示すように、リング状の薄肉部9A,9A・・を軸方向へ所定間隔をおいて複数形成することで変動部10Aを得るようにしてもよい。勿論先端部を除く第2筒部全体を薄肉部とすることも可能である。
さらに、薄肉部以外では、図7に示すように、第2筒部3の表面に外面に沿った所定深さの切込み12,12・・を、周方向へ所定間隔をおいて複数形成することで変動部10Bを得るようにしてもよい。この切込みは周方向に形成したり、周方向と前後方向等との複数の方向を組み合わせて形成したりすることもできる。
加えて、図8に示すように、蛇腹状に形成して変動部10Cを形成することもできる。
【0019】
一方、端末止水構造においても、例えばワイヤハーネスの接続部分を保護する電線保護部品を用いる場合は、図9に示すように、電線保護部品23を形成する一対の半割り部材24,25の内面に、端末止水体1の凹溝7に係合する複数の突条26,26・・を形成して、半割部材24,25で配線管20の端部を挟持して保護する際に、突条26を端末止水体1の凹溝7に係合させるようにすれば、端末止水体1及び配線管20が電線保護部品23内で適正に位置決めされる。なお、電線保護部品23は、ワイヤハーネス21が接続される車体の電装部品に取り付けられたり、ワイヤハーネス同士を接続したりする場合に用いられる。
【0020】
そして、端末止水体1には前部5に凹溝7を形成するものに限らず、図10に示すように、前部5の接線方向へ貫通し、入口14が前後へ長い長円状、出口15,15・・が複数の透孔となるスリット13を形成するようにしてもよい。この場合、電線保護部品23の一方の半割部材24には、先端が出口15に合わせた複数のピン部28,28・・に分岐する差し込み板27が突設され、他方の半割部材25には、ピン部28の先端が嵌合する凹部29,29・・が形成される。よって、端末止水体1の入口14から半割部材24の差し込み板27を差し込んで、出口15から突出させたピン部28の先端を半割部材25の凹部29にそれぞれ嵌合させれば、図11に示すように、電線保護部品23内で端末止水体1及び配線管20を位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・端末止水体、2・・第1筒部、3・・第2筒部、4・・貫通孔、5・・前部、6・・後部、7・・凹溝、8・・出口部、9,9A・・薄肉部、10,10A〜10C・・変動部、11・・突き当て部、12・・切込み、20・・配線管、21・・ワイヤハーネス、22・・テープ、23・・電線保護部品、24,25・・半割部材、26・・突条。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブ等の配線管にワイヤハーネス等の電線を挿通させて配索する際に、配線管のシールと電線の配線管への接触防止とを図るために配線管に取り付けられる端末止水体と、その端末止水体を用いた端末止水構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス等の電線をコルゲートチューブ等の配線管に挿通させて配索を行う場合、配線管の端部には、特許文献1に開示のような端部保護キャップが取り付けられる。この端部保護キャップは、スリットを備えた円筒状のキャップ本体に一対の突出片を設けてなり、配線管(コルゲートチューブ)に挿通させたワイヤハーネスをスリットを介してキャップ本体に挿通させてキャップ本体を配線管の外周部に装着し、突出片を配線管にテープ巻きすることで配線管に固定される。これにより、ワイヤハーネスをキャップ本体の開口部で保持して配線管の端部に直接接触しないようにしている。
しかし、この端部保護キャップでは、ワイヤハーネスの配線管の端部への接触を防止できるが、キャップ本体の開口とワイヤハーネスとの間が密着していないため、ここから水等の異物が侵入して腐食や劣化の原因となる。
そこで、特許文献2,3には、電線が挿入する筒状のゴム部品を配線管内に挿入して配管の内面に密着させることで、電線の接触防止と共に配線管の端部のシールも行うゴム栓や配索構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−204120号公報
【特許文献2】特開平10−223303号公報
【特許文献3】特開2009−166635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献2,3の発明のように配線管を密封すると、加熱等によって配線管内の空気圧が上昇することでゴム栓が内部から押圧され、配線管から外れてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、電線の配線管への接触防止と配線管のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管内の空気圧が変動しても脱却することがない信頼性の高い端末止水体及び端末止水構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弾性材料で形成される筒状を呈し、電線を挿通させた配線管の端部に装着される端末止水体であって、配線管の端部に外装される第1筒部と、その第1筒部に同軸で連設されて第1筒部から離れるに従って小径となり、先端部が配線管の端部から突出する電線に外装されるテーパ状の第2筒部とを含み、第2筒部における先端部を除く部位に、配線管内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部を形成したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、第1筒部と第2筒部との間の内面に、第1筒部に差し込まれた配線管の端部が当接するリング状の突き当て部を設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、突き当て部の高さを配線管の厚みよりも大きくしたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、変動部を、肉厚を先端部よりも薄くすることで形成したことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、端末止水構造であって、電線を挿通させた配線管の端部に、請求項1乃至4の何れかに記載の端末止水体の第1筒部を外装させ、電線を端末止水体の第2筒部を貫通させて外部に引き出したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び5に記載の発明によれば、電線の配線管への接触防止と配線管のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管内の空気圧が変動してもシール性が低下したり端末止水体が脱却したりすることがない。従って、信頼性の高い端末止水構造が得られる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、突き当て部の採用により、配線管は第1筒部内の適正位置へ確実に差し込みされる。また、配線管内の空気圧の減少によって変動部が収縮した際の第1筒部側への入り込みも防止可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、電線の配線管の端部への接触がより効果的に防止され、電線の保護効果が高まる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、変動部が簡単に形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】端末止水体の斜視図で、(A)が前方側から、(B)が後方側から見た状態を示す。
【図2】(A)は端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図3】端末止水構造の説明図である。
【図4】加熱時の状態を示す説明図である。
【図5】冷却時の状態を示す説明図である。
【図6】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図7】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図8】(A)は変更例の端末止水体の側面図、(B)はその縦断面図である。
【図9】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である。
【図10】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である(電線保護部品装着前)。
【図11】電線保護部品を用いた端末止水構造の説明図である(電線保護部品装着後)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に端末止水体の一例を示す。端末止水体1はゴム製の筒状体で、配線管の端部が挿入される第1筒部2と、第1筒部2に同軸で連設され、配線管に挿通させたワイヤハーネス等の電線が挿通される第2筒部3とからなる。
第1筒部2は、前後(図2の左側を前方とする。)に亘って等径となる貫通孔4を内部に有し、後部6よりも肉厚となる前部5の外周には、複数(ここでは3つ)のリング状の凹溝7,7・・が、軸方向へ所定間隔をおいて同軸で周設されている。
【0010】
一方、第2筒部3は、第1筒部2から前方へ離れるに従って徐々に小径となるテーパ状で、最も小径となる先端部には、内周が前後方向へ等径となる出口部8が形成されている。
また、第2筒部3における出口部8の後方部分には、出口部8よりも肉厚が小さい薄肉部9,9・・が、周方向へ所定間隔をおいて形成されている。この薄肉部9によって出口部8の後方部分は、出口部8よりも可撓性が高い変動部10となっている。
そして、端末止水体1の内面において第1筒部2と第2筒部3との間には、リング状の突条である突き当て部11が周設されている。この突き当て部11の高さは、ここに差し込まれる配線管の肉厚よりも大きくなっている。
【0011】
以上の如く構成された端末止水体1は、電線としてのワイヤハーネスを挿通させた配線管に用いる場合、図3に示すように、コルゲートチューブ等の配線管20の端部を端末止水体1の第1筒部2に後方から差し込むと、配線管20が突き当て部11に当接してそれ以上の差し込みが規制される。第1筒部2の貫通孔4は配線管20の外径よりも僅かに小径となっているため、第1筒部2は配線管20の外周に密着した状態で外装される。
【0012】
次に、配線管20を挿通させたワイヤハーネス21を配線管20から前方へ突出させて第2筒部3に差し込み、そのまま出口部8を貫通させて前方へ引き出す。出口部8の内径はワイヤハーネス21の外径よりも僅かに小径となっているため、出口部8はワイヤハーネス21の外周に密着した状態で外装される。最後に第1筒部2の後端と配線管20とに跨る位置と、出口部8の前端とワイヤハーネス21とに跨る位置とにそれぞれテープ22を巻回すれば端末止水体1の装着が完了する。
【0013】
この端末止水構造においては、ワイヤハーネス21は第2筒部3によって第1筒部2及び配線管20の軸心で保持されるため、ワイヤハーネス21が配線管20の端部に接触することがない。特に突き当て部11が配線管20の肉厚よりも高く形成されているため、ワイヤハーネス21は配線管20内で移動しても先に突き当て部11に接触することとなり、配線管20との接触はより効果的に防止される。
また、第1筒部2は配線管20に、第2筒部3はワイヤハーネス21にそれぞれ密着して外装されるため、配線管20やワイヤハーネス21の貫通部分でのシール性が確保され、端末止水体1や配線管20の内部に水等の異物が浸入するおそれが低減される。
【0014】
そして、ここでは薄肉部9によって第2筒部3の変動部10が高い可撓性を有しているので、加熱によって配線管20内の空気圧が高まると、図4に示すように変動部10が外側へ膨出して空気圧の上昇を吸収する。逆に冷却によって配線管20内の空気圧が減少して負圧になると、図5に示すように変動部10が内側へ収縮して空気圧の減少を吸収する。従って、何れの場合も出口部8とワイヤハーネス21との間のシール性に影響を与えることがなく、端末止水体1が脱却することもない。なお、変動部10が負圧によって収縮しても突き当て部11によってそれ以上の後方への入り込みは阻止される。
【0015】
このように、上記形態の端末止水体1及び端末止水構造によれば、ワイヤハーネス21に外装されるテーパ状の第2筒部3を設けると共に、第2筒部3における出口部8を除く部位に、配線管20内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部10を形成したことで、ワイヤハーネス21の配線管20への接触防止と配線管20のシールとを共に可能としつつ、シールした配線管20内の空気圧が変動してもシール性が低下したり端末止水体1が脱却したりすることがない。従って、信頼性の高い端末止水構造が得られる。
【0016】
特にここでは、第1筒部2と第2筒部3との間の内面に、第1筒部2に差し込まれた配線管20の端部が当接するリング状の突き当て部11を設けたことで、配線管20は第1筒部2内の適正位置へ確実に差し込みされる。また、配線管20内の空気圧の減少によって変動部10が収縮した際の第1筒部2側への入り込みも防止可能となる。
また、突き当て部11の高さを配線管20の厚みよりも大きくしているので、ワイヤハーネス21の配線管20の端部への接触がより効果的に防止され、ワイヤハーネス21の保護効果が高まる。
さらに、変動部10を、肉厚を出口部8よりも薄くすることで形成しているので、変動部10が簡単に形成可能となっている。
【0017】
なお、第2筒部のテーパ状は上記形態のような曲面状に小径となるテーパに限らず、直線状に小径となるテーパであっても差し支えない。
また、突き当て部はリング状の突条にせず、断続的に突設される突条又は突起等の他の形状としてもよい。勿論突き当て部を省略することも可能である。
さらに、第1筒部及び第2筒部の端部におけるテープ巻きも、結束バンド等の他の結束手段に代えたり、このような結束手段自体を省略したりすることができる。
【0018】
また、変動部の構成も上記形態に限らず、例えば薄肉部による場合は図6に示すように、リング状の薄肉部9A,9A・・を軸方向へ所定間隔をおいて複数形成することで変動部10Aを得るようにしてもよい。勿論先端部を除く第2筒部全体を薄肉部とすることも可能である。
さらに、薄肉部以外では、図7に示すように、第2筒部3の表面に外面に沿った所定深さの切込み12,12・・を、周方向へ所定間隔をおいて複数形成することで変動部10Bを得るようにしてもよい。この切込みは周方向に形成したり、周方向と前後方向等との複数の方向を組み合わせて形成したりすることもできる。
加えて、図8に示すように、蛇腹状に形成して変動部10Cを形成することもできる。
【0019】
一方、端末止水構造においても、例えばワイヤハーネスの接続部分を保護する電線保護部品を用いる場合は、図9に示すように、電線保護部品23を形成する一対の半割り部材24,25の内面に、端末止水体1の凹溝7に係合する複数の突条26,26・・を形成して、半割部材24,25で配線管20の端部を挟持して保護する際に、突条26を端末止水体1の凹溝7に係合させるようにすれば、端末止水体1及び配線管20が電線保護部品23内で適正に位置決めされる。なお、電線保護部品23は、ワイヤハーネス21が接続される車体の電装部品に取り付けられたり、ワイヤハーネス同士を接続したりする場合に用いられる。
【0020】
そして、端末止水体1には前部5に凹溝7を形成するものに限らず、図10に示すように、前部5の接線方向へ貫通し、入口14が前後へ長い長円状、出口15,15・・が複数の透孔となるスリット13を形成するようにしてもよい。この場合、電線保護部品23の一方の半割部材24には、先端が出口15に合わせた複数のピン部28,28・・に分岐する差し込み板27が突設され、他方の半割部材25には、ピン部28の先端が嵌合する凹部29,29・・が形成される。よって、端末止水体1の入口14から半割部材24の差し込み板27を差し込んで、出口15から突出させたピン部28の先端を半割部材25の凹部29にそれぞれ嵌合させれば、図11に示すように、電線保護部品23内で端末止水体1及び配線管20を位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・端末止水体、2・・第1筒部、3・・第2筒部、4・・貫通孔、5・・前部、6・・後部、7・・凹溝、8・・出口部、9,9A・・薄肉部、10,10A〜10C・・変動部、11・・突き当て部、12・・切込み、20・・配線管、21・・ワイヤハーネス、22・・テープ、23・・電線保護部品、24,25・・半割部材、26・・突条。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料で形成される筒状を呈し、電線を挿通させた配線管の端部に装着される端末止水体であって、
前記端部に外装される第1筒部と、その第1筒部に同軸で連設されて前記第1筒部から離れるに従って小径となり、先端部が前記端部から突出する前記電線に外装されるテーパ状の第2筒部とを含み、
前記第2筒部における前記先端部を除く部位に、前記配線管内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部を形成したことを特徴とする端末止水体。
【請求項2】
前記第1筒部と第2筒部との間の内面に、前記第1筒部に差し込まれた前記配線管の端部が当接するリング状の突き当て部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の端末止水体。
【請求項3】
前記突き当て部の高さを前記配線管の厚みよりも大きくしたことを特徴とする請求項2に記載の端末止水体。
【請求項4】
前記変動部を、肉厚を前記先端部よりも薄くすることで形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の端末止水体。
【請求項5】
電線を挿通させた配線管の端部に、請求項1乃至4の何れかに記載の端末止水体の第1筒部を外装させ、前記電線を前記端末止水体の第2筒部を貫通させて外部に引き出したことを特徴とする端末止水構造。
【請求項1】
弾性材料で形成される筒状を呈し、電線を挿通させた配線管の端部に装着される端末止水体であって、
前記端部に外装される第1筒部と、その第1筒部に同軸で連設されて前記第1筒部から離れるに従って小径となり、先端部が前記端部から突出する前記電線に外装されるテーパ状の第2筒部とを含み、
前記第2筒部における前記先端部を除く部位に、前記配線管内の空気圧の変動に伴って拡縮可能な変動部を形成したことを特徴とする端末止水体。
【請求項2】
前記第1筒部と第2筒部との間の内面に、前記第1筒部に差し込まれた前記配線管の端部が当接するリング状の突き当て部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の端末止水体。
【請求項3】
前記突き当て部の高さを前記配線管の厚みよりも大きくしたことを特徴とする請求項2に記載の端末止水体。
【請求項4】
前記変動部を、肉厚を前記先端部よりも薄くすることで形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の端末止水体。
【請求項5】
電線を挿通させた配線管の端部に、請求項1乃至4の何れかに記載の端末止水体の第1筒部を外装させ、前記電線を前記端末止水体の第2筒部を貫通させて外部に引き出したことを特徴とする端末止水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−130129(P2012−130129A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278313(P2010−278313)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
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