説明

符号化方法および装置、並びに復号方法および装置

【課題】RLL符号化を行った後にECC化を行う場合に、RLL符号系列の符号制限を乱さず、ECCのパリティ系列に対して符号化率の劣化を招く付加ビットの挿入を行なわず、かつ、復号側において軟判定復号および硬判定復号のどちらも容易に行うことができるようにする。
【解決手段】情報系列のRLL符号化を行った後にECC化を行う場合において、NビットRLL符号語におけるビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数としたとき、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲内において該ビットの最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットのパリティを挿入するようにして符号化が行われる。本発明は、ストレージシステムに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化方法および装置、並びに復号方法および装置に関し、特に、RLL符号化を行った後にECC化を行う場合に、RLL符号系列の符号制限を乱さず、ECCのパリティ系列に対して符号化率の劣化を招く付加ビットの挿入を行なわず、かつ、復号側において軟判定復号および硬判定復号のどちらも容易に行うことができるようにした符号化方法および装置、並びに復号方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの記録再生装置や通信装置においては、入力情報系列を符号化した符号系列を伝送することにより、デジタル伝送情報の誤り率の低減が図られている。
【0003】
図1は、記録再生システム1の構成例を示すブロック図である。
【0004】
図1に示すように、記録再生システム1は、記録装置11と再生装置12から構成される。記録装置11は符号化部21と記録部22から構成され、再生装置12は再生部31、A/D(analog/digital)変換部32、符号検出部33、および復号部34から構成される。
【0005】
図1においては、ユーザ側の情報系列(入力情報系列)は符号化部21に入力され、m/nの比で符号化されて符号系列となる。ここで、mは情報語長、nは符号語長、m/nは符号率あるいは符号化率と呼ばれる。符号化においては、暗号化、誤り訂正符号化、またはRLL(run-length-limited)符号化等の複数の符号化が組み合わされることが多い。
【0006】
符号系列は記録部22に入力され、光ピックアップあるいは磁気ヘッド等を用いて、図示しない記録媒体に記録部22において記録される。記録媒体に記録された記録信号は、その記録媒体を介して再生装置12に入力される。
【0007】
記録装置11からの記録信号は再生装置12の再生部31において、アナログ光ピックアップあるいは磁気ヘッド等によって記録媒体からアナログ再生信号に変換される。アナログ再生信号は、図示しないアナログ等化器を用いて所定の目標等化特性を有する信号に等化された後、A/D変換部32においてデジタル受信信号に毎時刻変換される。なお、A/D変換部32には、図示しない位相同期回路が含まれる。
【0008】
デジタル受信信号は、符号検出部33において検出符号系列またはその事後確率情報系列に変換される。変換によって得られた検出符号系列または事後確率情報系列は、復号部34に入力され、n/mの比で検出情報語に復号され、検出情報系列となる。
【0009】
なお、アナログ等化器による等化が十分でない場合には、A/D変換部32と符号検出部33の間にデジタル等化器が設けられる場合がある。また、近年、符号検出部33においてはビタビ検出器等の軟判定検出器を用いるのが一般的である。さらに、復号部34において繰り返し復号法を用いる場合には、符号検出部33において軟判定入力軟判定出力(soft-input soft output)の事後確率検出器が用いられる場合がある。
【0010】
ところで、図1の符号化部21において用いられる符号として様々な符号が検討されており、特にストレージシステムではRLL符号と誤り訂正符号(ECC(error-correcting code))とが連接されて用いられることが多い。
【0011】
ECCとしては、リードソロモン(Reed-Solomon)符号が古くから実用化されており、通信システムでは、近年、高い誤り訂正能力を有する低密度パリティ検査(low-density parity-check)符号も実用化されている。
【0012】
RLL符号としては、NRZI変調前の符号系列において、ビット0の最大連続数(最大ランレングス)がk、ビット0の最小連続数(最小ランレングス)がdに制限された符号が、一般的に、(d,k)RLL符号と呼ばれる。ここで、NRZI(non-return to zero on one)変調は、記録または送信信号の極性を、ビット1で反転、ビット0で保持する変調方式である。
【0013】
また、記録または送信符号系列の遷移連続数を有限とした符号はMTR(maximum-transition run)符号と呼ばれている。MTR符号は、NRZI変調前の符号系列において、ビット1の最大連続数が2以上で有限となる。NRZI変調前の符号ビット1の最大連続数が1の符号は、古くから知られている最小RLL符号と同じであるため、一般的にはMTR符号と呼ばれていない。MTR符号については、特許文献1および非特許文献1に開示されている。
【0014】
特許文献1および非特許文献1では、MTR=2の符号について、最大ランが8以上ならば、符号化率7/8の符号構成が可能であることが述べられている。
【0015】
MTRという表現は非特許文献1において初めて用いられたが、NRZI変調前のビット1の最大連続数が有限となる符号は、ナイキスト制限符号など、それ以前にも知られている。
【0016】
MTR符号の特徴は、ビット1の最大連続数を短く制限することにより、パーシャルレスポンス等化された受信信号の検出器トレリスにおいて、自乗ユークリッド距離の小さな符号系列を除去または減少させ、システムに符号化利得を与えることにある。
【0017】
たとえ、符号においてビット1の最大連続数が制限されていても、その値が大きいと、その符号化利得は非常に小さくなる。このため、一般的には、符号化利得向上のためにビット1の最大連続数が2以上、4以下程度に制限された符号をMTR符号と呼ぶことが多い。ビット1の最大連続数が2以上、4以下に制限されたMTR符号の性能の詳細については例えば非特許文献2に開示されている。
【0018】
受信信号の信号対雑音比(SNR(signal to noise ratio))が一定ならば、MTR制限が強い、すなわち、ビット1の最大連続数が小さい方が符号検出器において大きな利得を得ることができる。しかし、一般的には、MTR制限を強くすると達成できる符号化率が低くなり、SNRが劣化する。このため、符号においてどの程度のMTR制限がよいかは、用いられるシステムの信号伝達特性と相関する。
【0019】
MTR符号はビット1の最大ランレングスが制限された符号であるから、広い意味でRLL符号の1つと考えることもできる。また、実用上、MTR符号としては、ビット0の最大ランレングスについても同時に制限されたものが用いられる。
【0020】
ところで、上述したようにしてRLL符号とECCとを連接して用いる場合、ECC化した後(ECCのパリティを付加した後)にRLL符号化を行う方法と、RLL符号化を行った後にECC化を行う方法との2つの方法がある。後者の方法は、RLL復号による誤り伝播の影響を受けずに誤り訂正を行うことができるために符号化利得が大きくなる場合が多く、近年よく検討されている。
【0021】
図2は、RLL符号化を行った後にECC化を行う符号化部21の構成を示すブロック図である。
【0022】
図2において、入力情報系列はRLL符号化部51においてm1/n1の比でRLL符号化が行われた後、ECCパリティ生成部52と選択部53に入力される。ここで、m1およびn1は、m1<n1となる自然数である。
【0023】
ECCパリティ生成部52においては、ECCパリティが生成され、出力される。
【0024】
選択部53においては、RLL符号化部51から出力されたRLL符号化後の系列と、ECCパリティ生成部52から出力されたパリティ系列とが順次選択され、符号系列として出力される。
【0025】
図2の符号化方法によっては、パリティ系列のランレングスが制限されていないため、一般的に、符号系列の最小ランレングス制限、MTR制限、および最大ランレングス制限が劣化しやすいという問題がある。
【0026】
このような、パリティの挿入によってMTR制限やRLLが劣化する問題を低減させる方法として、従来、幾つかの方法が知られている。
【0027】
第1の方法は、図2の符号化方法において、ECCのパリティ系列とECC化前のRLL符号系列とをインターリーブする、すなわち、パリティ系列をECC化前のRLL符号系列に周期的に挿入する方法である。この方法については非特許文献3に開示されている。
【0028】
非特許文献3に記載されている方法によれば、パリティ挿入前のRLL符号系列の最大ランレングスをαとすれば、パリティ挿入後の符号系列の最大ランレングスは、εを自然数としてα+εに劣化する。ここで、ECCの符号化率がα/(α+ε)よりも大きければ、εを最小値1とすることができる。
【0029】
ただし、非特許文献3に記載されている方法は、RLL符号系列において最小ランレングス制限やMTR制限が行なわれていた場合、これらの制限を少なくとも1劣化させるという問題がある。
【0030】
一般的に、RLL符号系列の最大ランレングス制限については、1劣化したとしてもシステムに大きな性能劣化を生じさせない場合が多いが、最小ランレングス制限やMTR制限については、1劣化すると、システムの性能が大きく劣化する。
【0031】
この問題を避ける方法の1つとして、入力情報系列に対して第1のRLL符号化を行い、ECCのパリティ系列に対して第2のRLL符号化を行った後、第2のRLL符号系列を第1のRLL符号系列に周期的に挿入する方法が知られている。この方法については非特許文献4に開示されている。
【0032】
図3は、第1のRLL符号化を行った後、ECCのパリティ系列に対して第2のRLL符号化を行う符号化部21の構成を示すブロック図である。
【0033】
図3に示す構成のうち、図2に示す構成と同じ構成には同じ符号を付してある。図3の構成は、ECCのパリティ系列に対して第2のRLL符号化を行うRLL符号化部54がECCパリティ生成部52の後段に設けられている点で図2の構成と異なる。
【0034】
図3において、入力情報系列はRLL符号化部51においてm1/n1の比で第1のRLL符号化が行なわれた後、ECCパリティ生成部52と選択部53に入力される。
【0035】
ECCパリティ生成部52においては、ECCパリティが生成され、出力される。ECCパリティ生成部52から出力されたパリティ系列に対しては、RLL符号化部54においてm2/n2の比で第2のRLL符号化が行なわれる。ここで、m2およびn2は、m2<n2となる自然数である。
【0036】
選択部53においては、RLL符号化部51から出力された系列と、RLL符号化部54から出力された系列とが周期的に選択され、符号系列として出力される。
【0037】
非特許文献4に記載されている方法においては、第2のRLL符号化の方法として単純なビット挿入法が用いられている。これは、復号側においてECCの復号に軟判定復号を用いる場合に、それを容易に行うことができるようにするためである。第2のRLL符号化の方法として複雑な方法を用いた場合、ECCを復号する際に複雑な軟判定復号を行う必要が生じ、復号回路が複雑になるという問題が生じる。
【0038】
図3の符号化方法によっては、ECC化前のRLL符号系列に与えられた符号制限が、ECC化後に劣化しないようにすることができるという利点がある。その一方で、RLL符号化部54の符号化率m2/n2の影響によって、トータルの符号化率がm1/n1よりも劣化してしまうという問題がある。
【0039】
この問題を避ける方法の1つとして、入力情報系列に対して第1のRLL符号化を行い、ECCのパリティ系列を該RLL符号系列に周期的に挿入した後、符号化率1で第2のRLL符号化を行う方法が知られている。この方法については特許文献2に開示されている。
【0040】
図4は、特許文献2に開示されている、ECCのパリティ系列を第1のRLL符号系列に挿入した後に、符号化率1の第2のRLL符号化を行う符号化部21の構成を示すブロック図である。
【0041】
図4に示す構成のうち、図2に示す構成と同じ構成には同じ符号を付してある。図4の構成は、選択部53から出力された系列に対して符号化率1の第2のRLL符号化を行うRLL符号化部55が設けられている点で図2の構成と異なる。
【0042】
図4において、入力情報系列はRLL符号化部51においてm/nの比で第1のRLL符号化が行なわれた後、ECCパリティ生成部52と選択部53に出力される。
【0043】
ECCパリティ生成部52においては、ECCパリティが生成され、出力される。
【0044】
選択部53においては、RLL符号化部51から出力されたRLL符号化後の系列と、ECCパリティ生成部52から出力されたパリティ系列とが周期的に選択され、選択された系列が出力される。
【0045】
選択部53から出力された系列に対しては、RLL符号化部55において符号化率1の第2のRLL符号化が行なわれ、符号系列として出力される。
【0046】
特許文献2に記載されている構成においては、図4のRLL符号化部51で所望のRLL符号化の全てを行うのではなく、RLL符号化部55で所望のRLL符号化を完了する構成となっている。RLL符号化部55における符号変換の一例として、{直前の第1のRLL符号語の終端4ビット,パリティ1ビット,現在の第1のRLL符号語の始端4ビット}={0001,1,1100}である時、ビット1の連続数を3以下にするため、これを{0001,0,1110}に変換することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】米国特許,J. Moon and B. Brickner, US5859601, Jan. 1999
【特許文献2】米国特許,A. Hirano, S. Mita and Y. Watanabe, ‘‘Coding Apparatus and Coding Method,’’ United States Patent 6335841B1, Jan. 2002.
【非特許文献】
【0048】
【非特許文献1】J. Moon and B. Brickner, IEEE Trans. Magn. 32, p. 3992, 1996
【非特許文献2】E. Soljanin, ‘‘Application of Distance Enhancing Codes,’’ IEEE Trans. Magn., vol. 37, No.2, pp. 762-767, Mar. 2001.
【非特許文献3】J.L.Fan and J.M. Cioffi, ‘‘Constrained Coding Techniques for Soft Iterative Decoders,’’ Proc. IEEE (Globecom '99), pp. 723-727.
【非特許文献4】H. Song, R.M. Todd and J.R. Cruz, ‘‘Application of Low-density Parity-check Codes to Magnetic Recording Channels,’’ IEEE Trans. on Sel. Areas in Comm., vol. 19, No. 5, pp. 918-923, May 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
RLL符号化を行った後にECC化を行う符号化方法の従来の問題をまとめると以下のようになる。
【0050】
図2のように、入力情報系列に対してRLL符号化を行い、ECCのパリティ系列をECC化前の系列に周期的に挿入した場合、RLL符号化に与えられた符号制限が少なくとも1劣化する。
【0051】
図3のように、入力情報系列に対して第1のRLL符号化を行い、かつパリティ系列に対して第2のRLL符号化を行ってからECC化前の符号系列にECCのパリティ系列を周期的に挿入した場合、第1のRLL符号化に与えられた符号制限は守られるが、第2のRLL符号化によって符号化率の劣化が生じる。
【0052】
図4のように、入力情報系列に対して第1のRLL符号化を行い、ECCのパリティ系列を該RLL符号系列に周期的に挿入した後、符号化率1の第2のRLL符号化を行った場合、ECCのパリティ系列の復号を硬判定によって行うときには問題無いが、軟判定が困難になる。
【0053】
例えば、特許文献2の方法によって符号化を行い、復号時に軟判定を行う場合、第2のRLL符号化によって符号化された系列の復号は、最大で、連続する13ビットの受信信号系列を参照して、連続する8情報ビットの各信頼度を計算しなければならない。このような正確な軟判定復号を行う回路を設計することは容易ではない。
【0054】
すなわち、入力情報系列に対してRLL符号化を行った後にECC化を行う方法として、(1)RLL符号系列の符号制限を乱さず、(2)符号化率の劣化を招く付加ビットの挿入を行わず、(3)軟判定復号および硬判定復号のどちらも容易に行うことができる、といった3つの条件を同時に満たす符号化方法は従来知られていない。
【0055】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、RLL符号系列の符号制限を乱さず、ECCのパリティ系列に対して符号化率の劣化を招く付加ビットの挿入を行なわず、かつ、復号側において軟判定復号および硬判定復号のどちらも容易に行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0056】
本発明の一側面の符号化方法は、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして情報系列の符号化を行うステップを含む。
【0057】
pは、複数個の自然数であるようにすることができる。
【0058】
RLL符号の符号化率を、mを自然数としてm/nとした時、誤り訂正符号の符号化率がm/(n+β)であるようにすることができる。
【0059】
β=1であるようにすることができる。
【0060】
m=16であり、n=17であるようにすることができる。
【0061】
ビット1の最大連続数α=4であり、ビット0の最大連続数α=6であり、p=5であるようにすることができる。
【0062】
本発明の一側面の符号化装置は、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして情報系列の符号化を行う符号化手段を備える。
【0063】
本発明の他の側面の復号方法は、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして符号化が行われることによって得られた符号系列を検出し、検出した符号系列から誤り訂正符号パリティを削除し、誤り訂正符号パリティを削除した符号系列のRLL復号を行うステップを含む。
【0064】
本発明の他の側面の復号装置は、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして符号化が行われることによって得られた符号系列を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された符号系列から誤り訂正符号パリティを削除する削除手段と、前記削除手段により誤り訂正符号パリティが削除された符号系列のRLL復号を行う復号手段とを備える。
【0065】
本発明の一側面においては、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして情報系列の符号化が行われる。
【0066】
本発明の他の側面においては、情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして符号化が行われることによって得られた符号系列が検出され、検出された符号系列から誤り訂正符号パリティが削除され、誤り訂正符号パリティが削除された符号系列のRLL復号が行われる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、RLL符号系列の符号制限を乱さず、ECCのパリティ系列に対して符号化率の劣化を招く付加ビットの挿入を行なわず、かつ、復号側において軟判定復号および硬判定復号のどちらも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】記録再生システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】従来の符号化部の構成例を示すブロック図である。
【図3】従来の符号化部の他の構成例を示すブロック図である。
【図4】従来の符号化部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る記録再生システムを構成する記録装置に設けられる符号化部の構成例を示すブロック図である。
【図6】MTR=4、かつ、最大ランレングス6の制限を有する符号系列の有限状態遷移図である。
【図7】シャノン容量を示す図である。
【図8】符号変換表の例を示す図である。
【図9】違反時符号変換表の例を示す図である。
【図10】1ビットのパリティの挿入位置と、ビット1の連続に対する追加制限の例を示す図である。
【図11】1ビットのパリティの挿入位置と、ビット0の連続に対する追加制限の例を示す図である。
【図12】パリティビットの挿入位置と、符号語候補の数との関係を示す図である。
【図13】図5の符号化部を有する記録装置の記録処理について説明するフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態に係る記録再生システムを構成する再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】18状態のトレリス線図である。
【図16】図14の再生装置の再生処理について説明するフローチャートである。
【図17】送受信システムの構成例を示すブロック図である。
【図18】パーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
[符号化部の構成例]
図5は、本発明の一実施の形態に係る符号化部21の構成例を示すブロック図である。
【0070】
入力情報系列に対しては、RLL符号化部51においてm1/n1の比でRLL符号化が行われ、RLL符号系列がECCパリティ生成部52と選択部53に入力される。
【0071】
ECCパリティ生成部52においては、ECCのパリティが生成され、出力される。
【0072】
選択部53においては、RLL符号化部51から出力されたRLL符号系列と、ECCパリティ生成部52から出力されたパリティ系列とが順次選択され、符号系列として出力される。
【0073】
図5に示す構成自体は図2に示す符号化部21の構成と同じであるが、RLL符号化部51におけるRLL符号化、ECCパリティ生成部52におけるECCの生成、および、選択部53でのパリティ挿入位置の選択の各方法が異なる。
【0074】
例えば、特許文献2の方法においては、RLL符号系列へのECCパリティの挿入位置は、2つのRLL符号語の間の符号語接続点とされている。図5の構成においては、RLL符号語の途中にECCのパリティを挿入し、かつパリティの挿入位置周辺のランレングス制限を他の位置よりも強くすることで、パリティ挿入前のランレングス制限を劣化させること無くパリティを挿入することが可能になっている。
【0075】
本実施の形態では、一例として、図5のRLL符号化部51に16/17RLL符号、ECCパリティ生成部52にlow-density parity-check符号などの(2448,2312)ECCを用いる。本実施の形態で用いられるRLL符号は、本出願人による特開2008-219477号公報に開示されているRLL符号に、更に制限を加えたものである。
【0076】
本実施の形態において用いられる16/17RLL符号について説明する。
【0077】
図6は、MTR=4、かつ、最大ランレングス6の制限を有する符号系列の10状態の有限状態遷移図(FSTD(finite-state transition diagram))である。
【0078】
図6の有限状態遷移図のシャノン容量(MTR=4で最大ランレングス6のシャノン容量)は0.9684であり、16/17の符号化率(0.9411・・・)よりも大きい。このため、MTR=4、かつ、最大ランレングス6の制限を満たす16/17符号を構成することは可能である。
【0079】
ここで、シャノン容量とは、ある符号に制限を与えた場合に、その符号の達成し得る理論上の最大符号化率である。つまり、理論上は、シャノン容量以下の符号化率の符号を設計することが可能となる。MTR=3またはMTR=4とし、最大ラン制限を変えた場合のシャノン容量を図7に示す。図7に示すように、MTR=4である場合、最大ラン制限を6とする符号系列のシャノン容量は0.9684となる。
【0080】
なお、図6の制限を満たす16/17符号は固定長変換符号でも構成できるが、本実施の形態では可変長符号として符号化する。その理由は、可変長符号として符号化した方が、符号語の候補となる17ビット系列がより多くなり、MTR制限や最大ランレングス制限以外の符号制限を行いやすく、より性能のよい符号を設計できるからである。MTR制限や最大ランレングス制限以外の符号制限は任意であるが、一般的には、NRZI変調後の符号系列を1ビットおきに観測したときの最大ランレングス等が考えられる。
【0081】
いま、符号語の始端と終端におけるビット1の最大連続数を2、始端と終端におけるビット0の最大連続数を6、符号語途中におけるビット1の最大連続数を4、符号語途中におけるビット0の最大連続数を6に、各々制限するビット系列を考える。
【0082】
図6のFSTDに示すように、状態1乃至4および状態6乃至9は、「0」と「1」の両方を出力できるが、状態5は「0」だけを出力し、状態10は「1」だけを出力する。これらの条件を前提とすると、ビット0の最大連続数は6を許容しているので(図6のFSTDではビット0の連続数が6を超えることはないので)、始端とした場合にビット1の連続数が2以下となるのは状態3である。また、終端とした場合にビット1の連続数が2以下となるのは、状態4と5を除いた、状態1,2,3,6,7,8,9,10である。
【0083】
すなわち、図6のFSTDにおいて、状態3から始まって、状態1,2,3,6,7,8,9,10のいずれかで終わるビット系列を考える。このような制限を満たす17ビット系列は全部で78,943個存在し、この中から216=65,536個の仮符号語を選択する。
【0084】
つまり、図6のFSTDによって仮符号語を割り当てることで、図8に一部を示す符号変換表が生成される。
【0085】
図8は、図6のFSTDによって65,536(=216)個の情報語に仮符号を割り当てた際の、最初の8語についての符号変換表の例を示す図である。
【0086】
図8の符号変換表において、左側の列は16ビットの情報語を示し、右側の列はその16ビットの情報語に対応する17ビットの仮符号語を示す。図8の符号変換表は、情報語に仮符号語を割り当てるものである。例えば、図8の1行目に示すように、0000000000000000の16ビットの情報語は00000100000010001の17ビットの仮符号語に変換される。
【0087】
図8の符号変換表は、仮符号語の始端部分および終端部分における1の最大連続数を2、かつ、仮符号語の始端部分および終端部分における0の最大連続数を4以上10以下に制限するものである。なお、図8の符号変換表には、65,536個ある符号変換規則のうちの8個の符号変換規則だけを示している。また、情報語に対する仮符号語の割り当ては任意である。
【0088】
このように、図5のRLL符号化部51は、図8の符号変換表に従い、16ビットの情報語を、順次、17ビットの仮符号語に変換する。
【0089】
ただし、図8の符号変換表に従って変換を行った場合には符号語接続点における最大ランレングスが12となってしまう。RLL符号化部51は、仮符号語に変換した後の符号語接続点において最大ランレングス6の制限に違反した場合、違反時符号変換表に従ってさらに変換を行う。
【0090】
図9は、符号語接続点に適用される違反時符号変換表の一例を示す図である。
【0091】
図9において、コンマ(,)は連続する2つの符号語の境界を示している。ただし、仮符号語接続点におけるビット0の連続が、所望の最大ランレングス制限以下となっている場合は、図9の違反時符号変換表を適用してもしなくてもよい。図8の符号変換表によって得られた1つ目の仮符号語を仮符号語1、仮符号語1に続く2つ目の仮符号語を仮符号語2として説明する。
【0092】
図9の違反時符号変換表の規則番号1は、仮符号語1の終端の4ビットが0000、かつ仮符号語2の始端の1ビットが0である場合には、仮符号語1の終端の4ビットを0111、仮符号語2の始端の1ビットを0に各々変換することを表す。
【0093】
同様に、規則番号2は、仮符号語1の終端の1ビットが0、かつ仮符号語2の始端の4ビットが0000である場合には、仮符号語1の終端の1ビットを0、仮符号語2の始端の4ビットを1110に各々変換することを表す。
【0094】
仮符号語1の終端の4ビットが0000、かつ仮符号語2の始端の4ビットが0000である場合には、図9の規則番号1と規則番号2の違反規則を同時に満たすが、その場合には規則番号1と規則番号2のどちらを優先させてもよい。
【0095】
図9の違反時符号変換表に従って適宜変換を行うことにより、仮符号語接続点におけるビット0の連続を最大6に制限することが可能になる。RLL符号化部51は、違反時符号変換表に従って仮符号語の一部を適宜変換し、変換して得られた符号語を出力する。RLL符号化部51から出力されたRLL符号(16/17RLL符号)は、ビット0の最大ランレングスが6、ビット1の最大ランレングスが4の符号系列となる。
【0096】
図10は、ECCパリティ生成部52により生成された1ビットのECCのパリティの挿入位置と、ビット1の連続に対する追加制限の例を示す図である。
【0097】
図10に示すように、ECCパリティ生成部52により生成されたビット1、またはビット0のECCのパリティは、RLL符号化部51から出力された16/17RLL符号の先頭から4ビット目と5ビット目の間に挿入される。
【0098】
また、挿入される1ビットのECCのパリティがビット1である場合であっても上述した各制限を満たすために、パリティの挿入位置の周辺の範囲である、1ビット目以上、8ビット目以下の範囲において、ビット1の最大連続数を3以下とする制限が追加される。
【0099】
すなわち、パリティを含む形でビット1の各ビットを「,」で区切って表すと、図10の5つのパターンのうちの上から2番目に示すように{2ビット目‘‘1’’,3ビット目‘‘1’’,4ビット目‘‘1’’,パリティビット,5ビット目‘‘1’’}のパターンは禁止される。パリティビットが‘‘1’’である場合、MTR=4の制限を満たさなくなるためである。
【0100】
同様に、{3ビット目‘‘1’’,4ビット目‘‘1’’,パリティビット,5ビット目‘‘1’’,6ビット目‘‘1’’}のパターン、{4ビット目‘‘1’’,パリティビット,5ビット目‘‘1’’,6ビット目‘‘1’’,7ビット目‘‘1’’}のパターンは禁止される。また、{パリティビット,5ビット目‘‘1’’,6ビット目‘‘1’’,7ビット目‘‘1’’,8ビット目‘‘1’’}のパターンも禁止される。
【0101】
なお、1番目に示す{1ビット目‘‘1’’,2ビット目‘‘1’’,3ビット目‘‘1’’,4ビット目‘‘1’’,パリティビット}のパターンは、符号語の始端と終端におけるビット1の最大連続数を2とする上述した元々の制限により禁止されるパターンである。
【0102】
図11は、ECCパリティ生成部52により生成された1ビットのECCのパリティの挿入位置と、ビット0の連続に対する追加制限の例を示す図である。
【0103】
図11に示すように、ECCパリティ生成部52により生成されたビット1、またはビット0のECCのパリティは、RLL符号化部51から出力された16/17RLL符号の先頭から4ビット目と5ビット目の間に挿入される。
【0104】
また、挿入される1ビットのECCのパリティがビット0である場合であっても上述した各制限を満たすために、パリティの挿入位置の周辺の範囲において、ビット0の最大連続数を5以下とする制限が追加される。この場合のパリティの挿入位置の周辺の範囲は、-1ビット目(1つ前の符号語の最終ビットを0ビット目としてその直前のビット)以上、10ビット目以下の範囲となる。
【0105】
すなわち、図11の7つのパターンのうちの上から3番目に示すように{1ビット目‘‘0’’,2ビット目‘‘0’’,3ビット目‘‘0’’,4ビット目‘‘0’’,パリティビット,5ビット目‘‘0’’,6ビット目‘‘0’’}のパターンは禁止される。パリティビットが‘‘0’’である場合、ビット0の最大ランレングス制限6を満たさなくなるためである。
【0106】
同様に、{2ビット目‘‘0’’,3ビット目‘‘0’’,4ビット目‘‘0’’,パリティビット,5ビット目‘‘0’’,6ビット目‘‘0’’,7ビット目‘‘0’’}のパターン、{3ビット目‘‘0’’,4ビット目‘‘0’’,パリティビット,5ビット目‘‘0’’,6ビット目‘‘0’’,7ビット目‘‘0’’,8ビット目‘‘0’’}のパターンは禁止される。また、{4ビット目‘‘0’’,パリティビット,5ビット目‘‘0’’,6ビット目‘‘0’’,7ビット目‘‘0’’,8ビット目‘‘0’’,9ビット目‘‘0’’}のパターン、{パリティビット,5ビット目‘‘0’’,6ビット目‘‘0’’,7ビット目‘‘0’’,8ビット目‘‘0’’,9ビット目‘‘0’’,10ビット目‘‘0’’}のパターンは禁止される。
【0107】
なお、1番目に示す{-1ビット目‘‘0’’,0ビット目‘‘0’’,1ビット目‘‘0’’,2ビット目‘‘0’’,3ビット目‘‘0’’,4ビット目‘‘0’’,パリティビット}のパターンと、{0ビット目‘‘0’’,1ビット目‘‘0’’,2ビット目‘‘0’’,3ビット目‘‘0’’,4ビット目‘‘0’’,パリティビット,5ビット目‘‘0’’}のパターンは、符号語の始端と終端におけるビット0の最大連続数を6とする上述した元々の制限により禁止されるパターンである。
【0108】
図10および図11に示すように、パリティビットが挿入されるRLL符号に対して、ビット1およびビット0に関する追加的な最大連続数の制限が加えられる。これにより、パリティビット挿入後における符号系列全体のビット1およびビット0の最大の連続数が、パリティビット挿入前のビット1およびビット0の最大の連続数より増えてしまうことを防止することが可能になる。
【0109】
ここで、1符号語中に挿入されるパリティビットの位置は複数でも良いし、挿入されるパリティビットの数は各箇所に複数でも良い。
【0110】
このように、図5の符号化部21においては、情報系列のRLL符号化を行った後にECC化を行う場合において、NビットRLL符号語におけるビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数としたとき、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲内において該ビットの最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットのパリティを挿入するようにして符号化が行われる。
【0111】
図10および図11の例の場合、p=5,β=1であり、かつ、ビット1の制限に関してα=4、ビット0の制限に関してα=6である。
【0112】
ここで、図10および図11を参照して説明したように、RLL符号系列の禁止パターンの一部は、元々の制限によって禁止されているものである。従って、RLL符号語のどの位置にECCのパリティを挿入するかによって所望のランレングス制限を満たすRLL符号語の数が異なる。
【0113】
図12は、17ビットの符号語中に1ビットのパリティを挿入した際のパリティビットの挿入位置と、17ビットの符号語候補の数との関係を示す図である。この17ビットの符号語候補は、パリティビット挿入後にビット0の最大ランレングスが6、ビット1の最大ランレングスが4となるランレングス制限を満たすように設計されたものである。
【0114】
図12より、本実施の形態における16/17RLL符号へのパリティビットの挿入位置を5ビット目の前か13ビット目の後とした時に、最も多い70477個の符号語候補を生成できることが分かる。また、RLL符号化部51に対する入力となる16ビットの変換符号を設計するには216=65536個以上の符号語候補が必要であることから、パリティビットをどの位置に挿入しても本実施の形態の制限を満たすことができるわけではないことも分かる。
【0115】
この理由は、本実施の形態において用いられるRLL符号は、符号語の始端および終端においてビット1やビット0の最大連続数が元々制限されているためである。
【0116】
RLL符号は、一般的に、ある符号語と、それに続く符号語との符号語接続点においても所望の符号制限を満たさなければならず、符号語の始端および終端付近は、符号語の中央付近よりも強い符号制限が与えられる場合が多い。その結果、本実施の形態におけるRLLを満たす符号語の候補数は、RLL符号系列に元々与えられた符号制限の偏りに影響を受ける。
【0117】
このため、上述したMTR=4の符号の例では、ECCのパリティビットの挿入位置を5ビット目の前か13ビット目の後とした時に、最も多くの符号語候補を生成することができる。
【0118】
より多くの符号語候補が存在すれば、符号により多くの制限を追加することが可能となるので、符号性能の向上という点で有利である。
【0119】
本実施の形態の符号化方法においては、RLL符号の符号化率をm/nとした時、誤り訂正符号の符号化率がm/(n+β)であることが望ましい。RLL符号の符号化率をm/n、誤り訂正符号の符号化率をm/(n+β)とした時、RLL符号語のnビットに対して、ECCパリティを一定周期でβビットずつ規則的に挿入することができ、回路化が容易となる。
【0120】
上述したように、本実施の形態においては、m=16,n=17,β=1である。β=1とした時、与えられたm/nに対する最終的な符号化率を最大とすることができ、符号化率向上の観点からは最も効率的である。
【0121】
ここで、ビット1あるいはビット0の最大連続数がαに制限されたnビットの符号系列に計xビットのECCのパリティを付加する場合について考える。
【0122】
この場合、比較例1として非特許文献3の方法を用いたときには、パリティ挿入後の符号系列のランレングス制限はα+1以上に必ず劣化する。
【0123】
これに対して、本実施の形態の符号化方法によれば、パリティ挿入後の符号系列のランレングス制限は劣化せずαのままである。
【0124】
また、比較例2として非特許文献4の方法を用いたときには、パリティ挿入後の符号系列のランレングス制限を守るためには、パリティの両端およびパリティのαビット毎に付加ビットを挿入する必要がある。つまり、少なくとも、1+Ceil(x/α)ビットの付加ビットが必要になることから、ECCの実質的な符号化率はn/(n+x)からn/{n+x+1+Ceil(x/α)}に劣化する。
【0125】
例えば、ビット1の最大連続数が4に制限された2516ビットの符号系列に148ビットのECCパリティを挿入する場合、1+148/4=38ビットの付加ビットが必要となる。この場合、実質的な符号化率は、2516/(2516+148)=17/18=0.94444から2516/(2516+148+38)=0.93116に劣化する。符号化率が劣化すると信号の伝送速度が劣化したり、例えばストレージシステムでは記録再生時の信号対雑音比が劣化したりするなど、システムの性能が劣化する。
【0126】
これに対して、本実施の形態の符号化方法によれば、符号系列のランレングス制限を守るために必要な、パリティを除く付加ビットはゼロである。
【0127】
また、比較例3として特許文献2の方法を用いたときには、ECCのパリティビットに変換が施されているため、その軟判定復号時には、連続する複数ビットの受信信号系列を参照して、連続する複数情報ビットの各信頼度を計算しなければならない。このため、正確な軟判定復号を行う回路を設計することが困難になる。
【0128】
これに対して、本実施の形態の符号化方法においては、ECCのパリティビットは符号系列中に挿入されているだけである(ECCのパリティビットに変換が施されていない)。従って、復号側で軟判定復号を行う場合であっても、パリティビット部分についてA/D変換された入力信号をそのまま信頼度計算に利用することができ、正確な軟判定復号を行うことができる回路を容易に設計することが可能になる。
【0129】
[記録処理]
図13のフローチャートを参照して、図5の符号化部21を有する記録装置11の記録処理について説明する。
【0130】
ステップS11において、符号化部21のRLL符号化部51は、図8の符号変換表に従って、16ビット情報語を、17ビット仮符号語に変換する。ここで用いられる符号変換表は、パリティビットの挿入位置の周辺のビットについての追加制限が課せられたものであり、図10および図11を参照して説明したような各禁止パターンを有する仮符号語への変換は禁止される。
【0131】
ステップS12において、RLL符号化部51は、仮符号語の符号語接続点の制限に違反している場合、図9の違反時符号変換表に従って変換を行う。RLL符号化部51によるRLL符号化によって生成されたRLL符号系列はECCパリティ生成部52と選択部53に供給される。
【0132】
ステップS13において、ECCパリティ生成部52は、ECCのパリティビットを生成し、出力する。
【0133】
ステップS14において、選択部53は、RLL符号化部51から供給された1符号語のRLL符号系列の4ビット目と5ビット目の間に、ECCパリティ生成部52から供給された1ビットのECCのパリティビットを挿入する。選択部53は、ECCのパリティビットを挿入して得られた符号系列を出力する。
【0134】
ステップS15において、記録部22は、選択部53から出力された符号系列を記録媒体に記録し、処理を終了する。
【0135】
[復号側の構成]
図14は、図5の符号化部21により符号化された符号系列を再生する再生装置12の構成例を示すブロック図である。
【0136】
図14に示す構成のうち、図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付してある。図14に示すように、再生装置12の復号部34は、ECC復号部61、パリティ削除部62、およびRLL復号部63から構成される。
【0137】
上述したように、記録装置11からの記録信号は再生装置12の再生部31においてアナログ再生信号に変換される。アナログ再生信号は、図示しないアナログ等化器を用いて所定の目標等化特性を有する信号に等化された後、A/D変換部32においてデジタル受信信号に毎時刻変換される。A/D変換部32によるA/D変換によって得られたデジタル受信信号により表される受信信号系列は符号検出部33に入力される。
【0138】
なお、本実施の形態の符号化方法により得られた符号系列の復号には、硬判定復号、軟判定復号のいずれも適用できるが、ここでは軟判定復号を行うものとする。
【0139】
符号検出部33に入力された受信信号系列は、軟判定データである検出ECC符号系列に変換され、出力される。ここで、符号検出部33からの出力は硬判定データとすることもできるが、ここでは受信信号の事後確率情報を表す軟判定データである。
【0140】
符号検出部33から出力された検出ECC符号系列は、復号部34のECC復号部61に入力されて誤り検出・訂正が施され、硬判定データである検出ECC符号系列が出力される。ここで、ECC復号部61からの出力は軟判定データとすることもできるが、ここでは硬判定データである。
【0141】
ECC復号部61から出力された検出ECC符号系列は、パリティ削除部62に入力され、ECCのパリティが削除された後、硬判定データである検出RLL符号系列として出力される。ここで、本実施の形態の符号化方法により得られた符号化系列においては、図10および図11を参照して説明したように、ECCのパリティはRLL符号系列にビット挿入されただけである。従って、復号時における、この逆操作(ECCのパリティの挿入に対応する処理)としては、パリティ削除部62においてECCのパリティを削除する処理を行うだけで済む。
【0142】
パリティ削除部62から出力された硬判定データである検出RLL符号系列は、RLL復号部63に入力されてn1/m1の比でRLL復号が行われる。RLL復号によって得られた硬判定データである検出情報系列は後段の回路に出力される。
【0143】
本実施の形態の符号化方法により得られた符号系列の復号には、図2の従来の方法により得られた符号系列の復号と同様に、このような簡単な構成の軟判定復号器を用いることが可能である。ただし、本実施の形態の符号化方法を用いた場合、図2の従来の方法を用いた場合とは異なり、符号系列のランレングス制限を劣化させることは無い。
【0144】
図15は、図14の符号検出部33において利用される18状態のトレリス線図である。
【0145】
図15において、白抜きの四角(□)は正極性の状態(positive state)を表し、黒塗りの四角(■)は負極性の状態(negative state)を表す。また、2つの状態を結ぶ実線はNRZI変調前の系列でビット1を表し、点線はNRZI変調前の系列でビット0を表す。図15のトレリス線図には、4ビット分の符号間干渉と、図6におけるビット1の最大連続数4の制限が反映されている。
【0146】
軟判定検出を行なうための4ビット分の符号間干渉を考慮したトレリス線図は、一般的に24=16状態となる。その16状態に、ビット1の最大連続数4の制限を加えた図15の18状態のトレリス線図に従って軟判定検出を行うことにより、例えば磁気記録システムにおいては、約0.3dBの符号化利得を得ることができる。
【0147】
本実施の形態の符号化方法を用いた場合、ECCのパリティ挿入後に符号系列の最大ランレングスを劣化させることは無いので、図5のRLL符号化部51におけるビット1の最大連続数が4であれば、符号検出時に図15のトレリス線図を用いることが可能となる。
【0148】
一方、従来の図2の方法を用いた場合、符号検出時に図15のトレリス線図を用いるためには、図2のRLL符号化部51におけるビット1の最大連続数を3に制限しておく必要がある。この場合、本実施の形態の符号化方法と同じ符号化率で、符号系列のビット0の最大連続数を上述した本実施の形態の最大連続数と同じ6に制限することは不可能である。
【0149】
[再生処理]
図16のフローチャートを参照して、図14の再生装置12の再生処理について説明する。
【0150】
ステップS21において、再生部31は、記録媒体に記録されているアナログ再生信号を再生し、等化して出力する。
【0151】
ステップS22において、A/D変換部32はアナログ再生信号に対してA/D変換を行い、得られた受信信号系列を出力する。
【0152】
ステップS23において、符号検出部33は、例えば図15に示されるような18状態のトレリス線図を用いて符号系列の検出を行い、軟判定データである検出ECC符号系列を出力する。
【0153】
ステップS24において、復号部34のECC復号部61は、符号検出部33から供給された検出ECC符号系列を対象として誤り検出・訂正を行い、硬判定データである検出ECC符号系列を出力する。
【0154】
ステップS25において、パリティ削除部62は、ECC復号部61から供給された検出ECC符号系列に挿入されているECCのパリティを削除し、出力する。
【0155】
ステップS26において、RLL復号部63は、ECCのパリティが削除された検出ECC符号系列を対象としてn1/m1の比でRLL復号を行う。ここでは、図9の違反時符号変換表に基づく変換の逆変換や、図8の符号変換表に基づく変換の逆変換が行われる。RLL復号部63は、RLL復号を行うことによって得られた検出情報系列を出力し、処理を終了させる。
【0156】
[変形例]
上述した符号化方法および復号方法は、データの送受信を行う送受信システムに適用することもできる。
【0157】
図17は、本発明の他の実施形態に係る送受信システム101の構成例を示すブロック図である。
【0158】
図17に示す構成のうち、図1に示す記録再生システム1の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0159】
図17に示すように、送受信システム101は送信装置111と受信装置112から構成される。送信装置111には、図1の記録部22に代えて送信部122が設けられ、受信装置112には、図1の再生部31に代えて受信部131が設けられる。
【0160】
送信装置111の送信部122は、符号化部21からの符号系列に対応する信号を、例えば、送信アンテナによって空間に送信する。すなわち、このとき、送受信システム101は無線通信システムである。
【0161】
受信装置112の受信部131は、受信アンテナによって、空間中の信号をアナログ信号に変換する。変換して得られたアナログ信号はA/D変換部32に供給される。
【0162】
なお、送信装置111と受信装置112とが一体となって送受信装置が構成されるようにしてもよい。また、図1の記録装置11と再生装置12とが一体となって記録再生装置が構成されるようにしてもよい。
【0163】
上述した符号化方法および復号方法は、例えば、磁気ディスク記録再生装置および磁気テープ記録再生装置等の各種の磁気記録再生装置に適用可能である。また、光磁気ディスク記録再生装置、相変化光ディスク記録再生装置、および再生専用光ディスク再生装置等の各種の光ディスク装置にも適用可能である。さらに、テレビ放送、携帯電話機、LAN(Local Area Network)等の各種の通信装置にも適用可能である。
【0164】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0165】
図18は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0166】
CPU(Central Processing Unit)311、ROM(Read Only Memory)312、RAM(Random Access Memory)313は、バス314により相互に接続されている。
【0167】
バス314には、さらに、入出力インタフェース315が接続されている。入出力インタフェース315には、キーボード、マウスなどよりなる入力部316、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部317が接続される。また、入出力インタフェース315には、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部318、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部319、リムーバブルメディア321を駆動するドライブ320が接続される。
【0168】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU311が、例えば、記憶部318に記憶されているプログラムを入出力インタフェース315およびバス314を介してRAM313にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0169】
CPU311が実行するプログラムは、例えばリムーバブルメディア321に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供され、記憶部318にインストールされる。
【0170】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0171】
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0172】
1 記録再生システム, 11 記録装置, 12 再生装置, 21 符号化部, 22 記録部, 31 再生部, 32 A/D変換部, 33 符号検出部, 34 復号部, 51 RLL符号化部, 52 ECCパリティ生成部, 53 選択部, 54 RLL符号化部, 55 RLL符号化部, 61 ECC復号部, 62 パリティ削除部, 63 RLL復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして情報系列の符号化を行う
ステップを含む符号化方法。
【請求項2】
pは、複数個の自然数である
請求項1に記載の符号化方法。
【請求項3】
RLL符号の符号化率を、mを自然数としてm/nとした時、
誤り訂正符号の符号化率がm/(n+β)である
請求項1に記載の符号化方法。
【請求項4】
β=1である
請求項3に記載の符号化方法。
【請求項5】
m=16であり、
n=17である
請求項4に記載の符号化方法。
【請求項6】
ビット1の最大連続数α=4であり、
ビット0の最大連続数α=6であり、
p=5である
請求項5に記載の符号化方法。
【請求項7】
情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして情報系列の符号化を行う符号化手段
を備える符号化装置。
【請求項8】
情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして符号化が行われることによって得られた符号系列を検出し、
検出した符号系列から誤り訂正符号パリティを削除し、
誤り訂正符号パリティを削除した符号系列のRLL復号を行う
ステップを含む復号方法。
【請求項9】
情報系列のRLL符号化を行った後に誤り訂正符号化を行う場合に、nビットのRLL符号語内のビット0あるいはビット1の最大連続数をα(1<α)、pを自然数とした時、RLL符号語のp-αビット目以上、p+α-1ビット目以下の範囲においてビット0あるいはビット1の最大連続数がα-β以下であり、RLL符号語のp-1ビット目とpビット目との間にβビットの誤り訂正符号パリティを挿入するようにして符号化が行われることによって得られた符号系列を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された符号系列から誤り訂正符号パリティを削除する削除手段と、
前記削除手段により誤り訂正符号パリティが削除された符号系列のRLL復号を行う復号手段と
を備える復号装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−109236(P2011−109236A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259908(P2009−259908)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】