説明

筆記用具、製図用具および/または描画用具用の芯

本発明は、少なくとも1種類のポリマー結合材、少なくとも1種類のワックスおよび少なくとも1種類の充填材を含む、筆記用具、製図用具または描画用具用の、特に黒鉛筆または色鉛筆用のポリマー結合材を有する芯であって、芯がさらに0.1〜5重量%のパーム油を有するポリマー結合材を有する芯に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記用具、製図用具および/または描画用具用のポリマー結合材を有する芯(polymergebundenen Minen)に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記、製図および/または描画用のこのような芯は基本的に知られている。筆記、製図および/または描画用の黒鉛ベースのポリマー結合材を有する芯とは、一方では、木材または他の切削可能な材料に嵌め込んで固定される芯、および、他方では、曲げ剛性のある被覆材内に摺動可能に固定される芯と理解される。この例としては、木軸黒鉛筆、およびシャープペンシル類、例えば、いわゆるノック式シャープペンシルまたは芯ホルダー(Fallstife)用の芯がある。この場合、芯の外径は、通常、約0.3mm〜6mmの範囲である。
【0003】
従って、例えば、特許文献1に、ポリマー結合材を有する黒鉛芯が開示されている。このような非焼成芯は、ポリマー結合材、滑剤および充填材を含む。
【0004】
このような芯を製造する場合、50重量%超の高い充填材含有量では確かに筆記特性および描画特性は非常に良好であるが、押出成形中の芯材料の粘度が非常に高く、それによって必要な器具内および押出機内の押出圧力が非常に高い値を取ることが不利である。ヘッド圧力は約350バールである。これは、押出機の寸法を大きくすること、および費用のかかる設備が必要であるという点で、不利に作用する。また、高い押出圧力によって機械や器具の寿命も非常に短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第3827968C1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、前述の欠点がなく、低い押出圧力で製造できる筆記、製図および/または描画用の芯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、少なくとも1種類のポリマー結合材、少なくとも1種類のワックスおよび少なくとも1種類の充填材を含む筆記用具、製図用具または描画用具用の、特に、黒鉛筆または色鉛筆用のポリマー結合材を有する芯に関して、芯がさらに0.1〜5重量%のパーム油を有することによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
意外なことに、パーム油を芯成分として的確に使用することにより配合物に内部滑剤が提供され、これによって押出機内の押出圧力が著しく低下することが分かった。芯組成物にパーム油を添加すると、押出成形時に、特に、口金または押出ヘッドでの加圧または押出圧力が著しく低下する。このとき、パーム油の添加量が増加するにつれ圧力が低下し、従来の押出成形可能な芯組成物と比較して少なくとも約30%、特に少なくとも約50%の圧力低下が達成される。
【0009】
確かに他の天然油または合成油でも同様に押出機内の圧力は低下するが、これらは押出成形された芯の強度を過度に損なうことが分かった。意外なことに、パーム油を使用する場合、押出機内の圧力は低いが、それにもかかわらず、必要な程度、芯の強度があるため、他の天然油または合成油の場合と異なる。
【0010】
パーム油の典型的な脂肪酸の割合は、次のような組成を有する。
C12:ラウリン酸 0〜1%
C14:ミリスチン酸 0〜3%
C16:パルミチン酸 36〜47%
C18:ステアリン酸 2〜8%
C18:オレイン酸 36〜42%
C18:リノール酸 7〜12%
C18:リノレン酸 0〜1%
その他: 1%以下
【0011】
さらに、パーム油によって、芯の描線の着色濃度(Farbeindruck)が濃くなり、筆記時の書き味が改善される。黒鉛筆芯では高い黒色度を有する濃い描線が得られ、他方、色鉛筆芯では描線の色調が濃く鮮明になる。
【0012】
芯組成物のパーム油の割合は、0.1〜5重量%の範囲、特に0.5〜2.5重量%の範囲である。パーム油の含有量が前述の5重量%の上限を超える場合、芯の強度は、パーム油を使用する場合でも過度に低下する。芯は、使用時に、砕けるかまたは折れる傾向がある。
【0013】
使用するワックスは、20℃で混練可能であり、硬さが固い〜脆く、粗い構造〜微結晶性の構造を有し、色が半透明〜不透明であるが、ガラス状ではなく、40℃超で分解することなく融解する。それは融点より僅かに高温で易流動性であり、稠度と溶解性が温度に大きく依存する。
【0014】
本発明のポリマー結合材を有する芯は、押出成形後に、さらに熱処理または含浸を行うことなく直ぐに使用できる非焼成芯である。
【0015】
黒鉛筆芯および色鉛筆芯の他に、例えば、いわゆる大工用鉛筆用の芯などの特殊な芯も挙げられる。
【0016】
有利な実施形態はサブクレームから得られる。
【0017】
ポリマー結合材を有する芯が、
10〜30重量% ポリマー結合材
2〜25重量% ワックス
0.1〜5重量% パーム油、および
残部 充填材
を有することが有利であると分かった。
【0018】
ポリマー結合材を有する芯が、
15〜25重量% 結合材
4〜20重量% ワックス
0.5〜2.5重量% パーム油、および
残部 充填材
を有することが特に好ましい。
【0019】
少なくとも1種類の結合材が、ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、スチレンブタジエン(SB)、ポリオレフィン(PO)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)を含む群の少なくとも1種類のポリマーからなることが好適であると実証された。
【0020】
また、2種類以上の結合材からなる混合物も使用可能である。
【0021】
さらに、少なくとも1種類のワックスが、ステアレート、モンタンワックス、アミドワックス、パラフィンを含む群の少なくとも1つであることが好適であると実証された。
【0022】
また、2種類以上のワックスの混合物も使用可能である。
【0023】
その場合、少なくとも1種類のワックスが、ステアリン酸カルシウムからなるかまたはステアリン酸カルシウムを含むことが特に好ましい。
【0024】
少なくとも1種類の充填材が、黒鉛、カーボンブラック、六方晶系窒化ホウ素、層状ケイ酸塩、チョーク、バライト、有色顔料、無色顔料を含む群の少なくとも1種類の充填材からなることが有利である。
【0025】
その場合、黒鉛筆芯では、特に、黒鉛または黒鉛とカーボンブラックの組み合わせが着色充填材として好ましい。色鉛筆芯では、白色または無色の充填材(六方晶系窒化ホウ素、層状ケイ酸塩など)と着色顔料(アゾ顔料、フタロシアニン、ジオキサジン、キナクリドン、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、ウルトラマリン、鉄−シアノ錯体など)の組み合わせが好適であると実証された。
【0026】
好ましい黒鉛筆芯用組成物は、
15〜25重量% 結合材
4〜12重量% ワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 黒鉛または黒鉛とカーボンブラック
を含む。
【0027】
特に、黒鉛筆芯は、
15〜25重量% ポリスチレン(PS)
4〜12重量% ステアリン酸カルシウム
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 黒鉛または黒鉛とカーボンブラック
を有する。
【0028】
例として挙げられる黒鉛筆芯用配合物1は、
ポリスチレン(PS) 21重量%
ステアリン酸カルシウム 6重量%
パーム油 1.0重量%
黒鉛 残部
を含む。
【0029】
下記の表に、従来技術の押出成形した黒鉛筆芯と比較した、配合物1による本発明の黒鉛筆芯を製造する場合の押出ヘッドの押出圧力の低下を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
ここで、本発明の組成物により製造される芯は、製造に必要な押出圧力が著しく低いことが明確に分かる。機械と器具の耐用期間が長くなり、機械設計が簡単になる。
【0032】
例示的な黒鉛筆芯用配合物2は、
スチレン−アクリロニトリル(SAN) 15重量%
ステアリン酸アルミニウム 10重量%
パーム油 2重量%
黒鉛 残部
を含む。
【0033】
好ましい色鉛筆芯用組成物は、
15〜25重量% 結合材
4〜12重量% ワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 層状ケイ酸塩および/または六方晶系窒化ホウ素、
および少なくとも1種類の有色顔料および/または
無色顔料
を含む。
【0034】
特に、色鉛筆芯は、
15〜25重量% ポリスチレン(PS)
4〜12重量% モンタンワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 タルク粉および/または六方晶系窒化ホウ素、および少
なくとも1種類の有色顔料および/または無色顔料
を有する。
【0035】
本発明のポリマー結合材を有する芯の製造方法として、押出成形が好適であることが実証された。
【0036】
本発明の芯は、特に、下記の工程の実施により製造される:
−芯の全配合成分を混合し、芯顆粒に造粒する工程、
−芯顆粒を押出機で130〜200℃の範囲の温度で適した口金を通して連続した線状の芯(endlosen Minenstraengen)に押出成形する工程、
−連続した線状の芯を冷却し、凝固させる工程、および
−連続した線状の芯を最終的な長さに、特に必要な鉛筆長さに切断する工程。
【0037】
押出ヘッドに応じて、芯の断面は任意の形状−丸い形状、角のある形状またはその組み合わせを取り得る。さらに、複合共押出成形(Mehrfach−Coextrusion)により、様々な芯配合物を押出ヘッドで結合させ、複合芯にしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のポリマー結合材、少なくとも1種類のワックスおよび少なくとも1種類の充填材を含む、筆記用具、製図用具または描画用具用の、特に黒鉛筆または色鉛筆用のポリマー結合材を有する芯であって、
前記芯がさらに0.1〜5重量%のパーム油を有する、上記ポリマー結合材を有する芯。
【請求項2】
前記芯が、
10〜30重量% 結合材
2〜25重量% ワックス
0.1〜5重量% パーム油、および
残部 充填材
を有する、請求項1に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項3】
前記芯が、
15〜25重量% 結合材
4〜20重量% ワックス
0.5〜2.5重量% パーム油、および
残部 充填材
を有する、請求項1または請求項2に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項4】
前記少なくとも1種類の結合材が、ポリスチレン(PS)、スチレン/アクリロニトリル(SAN)、スチレン/ブタジエン(SB)、ポリオレフィン(PO)、およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)を含む群の少なくとも1種類のポリマーからなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項5】
前記少なくとも1種類のワックスが、脂肪酸、ステアレート、モンタンワックス、アミドワックス、パラフィンを含む群の少なくとも1種類のワックスからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項6】
前記少なくとも1種類のワックスが、ステアリン酸カルシウムからなるかまたはステアリン酸カルシウムを含む、請求項5に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の充填材が、黒鉛、カーボンブラック、六方晶系窒化ホウ素、層状ケイ酸塩、チョーク、バライト、有色顔料、および/または無色顔料を含む群の少なくとも1種類の充填材を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項8】
前記芯が黒鉛筆芯であり、
15〜25重量% 結合材
4〜12重量% ワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 黒鉛または黒鉛とカーボンブラック
を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項9】
前記芯が黒鉛筆芯であり、
15〜25重量% ポリスチレン
4〜12重量% ステアリン酸カルシウム
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 黒鉛または黒鉛とカーボンブラック
を有する、請求項8に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項10】
前記芯が色鉛筆芯であり、
15〜25重量% 結合材
4〜12重量% ワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 層状ケイ酸塩および/または六方晶系窒化ホウ素、および 少なくとも1種類の有色顔料および/または無色顔料
を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項11】
前記芯が色鉛筆芯であり、
15〜25重量% ポリスチレン
4〜12重量% モンタンワックス
0.5〜2重量% パーム油、および
残部 タルク粉および/または六方晶系窒化ホウ素、および少
なくとも1種類の有色顔料および/または無色顔料
を有する、請求項10に記載のポリマー結合材を有する芯。
【請求項12】
前記芯が押出成形によって製造される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリマー結合材を有する芯の製造方法。

【公表番号】特表2011−528045(P2011−528045A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517788(P2011−517788)
【出願日】平成21年7月11日(2009.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005050
【国際公開番号】WO2010/006742
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390035437)ヨット・エス・ステットラー・ゲゼルシャフト・ミツト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】