説明

筆跡データ生成システム、筆跡データ生成方法、およびプログラム

【課題】手書き入力中のユーザーは、例えばバッテリーの残量が少なくなっているなどの手書入力装置200の状態を、書き込み中の文字などの筆跡の変化から容易に知ることができる。
【解決手段】画像が表示される表示面に対して情報を手書き入力するための手書入力装置200と、手書き入力される前記情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置50と、を備える筆跡データ生成システム10であって、手書入力装置200は、当該手書入力装置200の状態を示す信号を出力する信号送信部215,216を有し、筆跡データ生成装置50は、筆跡データを生成する筆跡データ生成部60と、信号の内容に応じて筆跡が異なる表示形態で表示面に表示されるように筆跡データを変更する筆跡データ変更部70を有することを特徴とする筆跡データ生成システム10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆跡データ生成システム、筆跡データ生成方法、およびプログラムに関し、特に、表示面に表示されている画像上に、電子ペンなどの手書入力装置によって手書き入力された情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを筆跡データ生成装置によって生成することのできる筆跡データ生成システム、筆跡データ生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペンやマーカーなどを使って黒板やホワイトボードなどに文字や図形を物理的に記載することが一般的であったが、最近では、検出機構を備えた記録面に対して電子ペンなどを用いて手書き入力した文字などの筆跡をリアルタイムで検出して表示装置の画面上に表示させることのできる筆跡入力システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、日本スマート・テクノロジーズ社のSMART Board(登録商標)のように、コンピューターに接続された液晶プロジェクターを用いて文字・絵・図形・グラフィックの画像をパネルに投射した状態で、パネルの投射面(表示面)の前面に配された座標入力/検出装置(書き込み面)に専用のペンなどで手書き入力された情報をコンピューターに取り込み、コンピューター内で手書き入力された情報と画像データとを合成して液晶プロジェクターによって投射面にリアルタイムで表示させることができるシステムも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているような、電子ペンから無線で出力される信号を記録面側で検出するシステムでは、電子ペンに組み込まれたバッテリーの残量が少なくなったり、電子ペンからの信号の受信強度が弱くなると、文字などの書き込みを適切に行うことができなくなるものが多い。そこで、このような状態に至ったことを警告音や警告メッセージでユーザーに知らせたり、バッテリーの残量や通信感度などを電子ペンに表示部を設けて表示させるなどの方法が知られている。
【0006】
しかしながら、バッテリーの残量が少なくなったり、電子ペンからの信号の受信強度が弱くなる度に警告音が鳴ったり警告メッセージが表示されるとユーザーは文字などの書き込みを集中して行うことができない。また、電子ペンにバッテリーの残量などが表示される表示部を設けても、記録面や手元の資料を見ながら書き込みを行っているユーザーは、表示部の表示内容を確認する度に記録面への書き込みを中断せざるを得なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的とし、本発明は、画像が表示される表示面に対して情報を手書き入力するための手書入力装置と、手書き入力される前記情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置と、を備える筆跡データ生成システムであって、前記手書入力装置は、当該手書入力装置の位置および状態の少なくとも一方を示す信号を送信する信号送信部を有し、前記筆跡データ生成装置は、前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部を有することを特徴とする筆跡データ生成システムを提供する。
【0008】
このような筆跡データ生成システムによれば、手書き入力中のユーザーは、例えばバッテリーの残量が少なくなっているなどの手書入力装置の状態を、書き込み中の文字などの筆跡の変化から容易に知ることができる。
【0009】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記信号は、前記手書入力装置が備えるバッテリーの残量を示す情報を含み、前記筆跡データ変更部は、前記バッテリーの残量に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することが好ましい。
【0010】
これにより、手書き入力中のユーザーは、手書入力装置のバッテリーの残量が少なくなっていることを、書き込み中の文字などの筆跡の変化から容易に知ることができる。
【0011】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ生成装置は、前記信号を受信する信号受信部を有し、前記筆跡データ変更部は、前記信号の受信状態に応じて前記筆跡データを変更することが好ましい。
【0012】
これにより、手書き入力中のユーザーは、例えば手書入力装置から送信される信号の受信感度が低下していることを、書き込み中の文字などの筆跡の変化から容易に知ることができる。
【0013】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ変更部は、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる濃度で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することが好ましい。
【0014】
これにより、手書き入力中のユーザーは、手書入力装置の状態を、書き込み中の文字などの筆跡が薄い色で表示されるなどの変化を手掛かりとして容易に知ることができる。
【0015】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ変更部は、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる線種で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することが好ましい。
【0016】
これにより、手書き入力中のユーザーは、手書入力装置の状態を、書き込み中の文字などの筆跡が破線など異なる種類の線で表示されるなどの変化を手掛かりとして容易に知ることができる。
【0017】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ変更部は、前記筆跡データを変更したことに応じて、前記信号の内容に応じたメッセージを前記表示面に表示させることが好ましい。
【0018】
これにより、手書き入力中のユーザーは、例えば手書入力装置のバッテリーの残量が少なくなっていることを、表示面に表示されるメッセージからも知ることができる。
【0019】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ生成装置は、予め設定された条件を満たした場合に、キャンセル信号を前記筆跡データ変更部へ出力するキャンセル信号生成部を更に有し、前記筆跡データ変更部は、所定条件を満たしたことを示すキャンセル信号が入力されたことに応じて前記筆跡データを変更前の状態に戻すことが好ましい。
【0020】
また、上記筆跡データ生成システムにおいて、前記筆跡データ生成装置は、前記筆跡データ変更部により変更される前の前記筆跡データを記憶する筆跡データ記憶部をさらに有することが好ましい。
【0021】
これにより、ユーザーへの警告などのために表示面に筆跡を表示させるための筆跡データを変更しつつ、記憶する筆跡データには当該変更を行わないので、手書き入力された文字などの筆跡をそのままのデータとして保存することができる。
【0022】
また、本発明は、他の形態として、投射面に画像を投射するプロジェクターと、前記投射面に情報を手書き入力するための手書入力装置と、手書き入力される前記情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置と、を備える筆跡データ生成システムであって、前記手書入力装置は、当該手書入力装置の状態を示す信号を送信する信号送信部を有し、プロジェクターは、前記画像を前記投射面に投射する投射部と、前記信号を受信する信号受信部を有し、前記筆跡データ生成装置は、前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部を有することを特徴とする筆跡データ生成システムを提供する。
【0023】
また、本発明は、さらに他の形態として、画像が表示される表示面に対して手書入力装置を用いて手書き入力される情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成方法であって、前記手書入力装置の状態に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することを特徴とする筆跡データ生成方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、さらに他の形態として、コンピューターを、画像が表示される表示面に対して手書入力装置を用いて手書き入力される情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置として機能させるプログラムあって、手書き入力される前記情報の前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、前記手書入力装置の状態に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部と、有する前記筆跡データ生成装置として前記コンピューターを機能させるプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る筆跡データ生成システム10の概略構成図である。
【図2】手書入力装置200の概略構成図である。
【図3】本システムを用いてスクリーンの投射面に文字や図形などを手書き入力する際の本システムにおける処理フローの一例を示す。
【図4】本システムを用いてスクリーンの投射面に文字や図形などを手書き入力する際の本システムにおける処理フローの一例を示す。
【図5】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図6】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図7】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図8】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図9】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図10】手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。
【図11】直上投射型のプロジェクター100を用いてスクリーンの投射面に投射画像を投射する様子を示す正面図である。
【図12】直上投射型のプロジェクター100を用いてスクリーンの投射面に投射画像を投射する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態について説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態における特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る筆跡データ生成システム10の概略構成図である。本実施形態の筆跡データ生成システム10は、図1に示すように、プロジェクター100、手書入力装置200、およびパーソナルコンピューター(PC)50で構成される。なお、PC50は、本発明における筆跡データ生成装置の一例である。
【0028】
プロジェクター100は、光源であるランプ110が放射した光を、光の3原色成分(赤色光、青色光、緑色光)に分離し、PC50から供給される画像データに応じて、光学部111に含まれる光変調素子である各色光用の液晶ライトバルブ(図示せず)により、各色の光を変調し、再度合成してスクリーンなどの表示面(以下、「投射面」と称する)に投射する、いわゆる「液晶3板式プロジェクター」である。
【0029】
プロジェクター100は、プロジェクター100を操作するための複数の操作用ボタンなどを備えたリモートコントローラー(リモコン)310により操作することができる。また、プロジェクター100は、後述の通信部119を介してPC50から各種の操作信号を与えることによっても操作することができる。また、プロジェクター100は、本体上面に、リモコン310と同様の操作用ボタンを備えた操作パネル(図示せず)を備えてもよい。
【0030】
プロジェクター100は、ランプ110、光学部111、液晶パネル駆動部112、ランプ駆動部113、電源部114、操作受付部115、制御部116、記憶部117、画像処理部118、通信部119、I/Oブリッジ部120、赤外光検出部160、および超音波検出部170などから構成されている。なお、赤外光検出部160および超音波検出部170は、本発明における信号受信部の一例である。また、以下において、ランプ110、光学部111、液晶パネル駆動部112、およびランプ駆動部113をまとめて投射部150と称する。
【0031】
ランプ110は、例えば、高圧水銀ランプや、メタルハライドランプ及びハロゲンランプなどの高輝度が得られる放電式ランプである。光学部111は、赤色、緑色、青色の各色光用の液晶ライトバルブと、ランプ110が放射する白色光を輝度分布の安定した略平行光に変換するインテグレーター光学系と、輝度分布の安定した白色光を光の3原色である赤色、緑色、青色の各色光成分に分離して各色光用の液晶ライトバルブに供給する分離光学系と、液晶ライトバルブにて各色光毎に画像信号に応じて変調された各色光を再度合成する合成光学系(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。光学部111は、合成光学系から射出されるフルカラーで略平行な変調光を内蔵する投射レンズで拡大した投射光により、スクリーンにフルカラー映像を投射する。
【0032】
液晶パネル駆動部112は、光学部111の液晶ライトバルブに対して画像処理部118から入力される画像信号とともに駆動電圧などを供給し、液晶ライトバルブに投射画像を写し出す。
【0033】
ランプ駆動部113は、電源部114からの電力供給を受け、ランプ110を点灯するために高電圧を発生して放電経路を形成するイグナイター回路と、点灯後の安定した点灯状態を維持するためのバラスト回路(いずれも図示せず)とを備えている。
【0034】
電源部114は、外部電源320からの交流電力をプラグから導き、内蔵するAC/DC変換部(いずれも図示せず)にて変圧、整流および平滑するなどの処理を施すことにより安定化させた直流電圧をプロジェクター100の各部に供給する。
【0035】
操作受付部115は、リモコン310またはPC50からの操作信号を受け付けてその操作内容を含む操作開始命令を制御部116へ送る。
【0036】
制御部116は、例えば高速の演算処理が可能な中央演算処理装置(Central Processing Unit)であり、操作受付部115からの操作開始命令に基づいて、プロジェクター100の各部に対して動作のトリガーとなる制御信号を送るとともに、各部から設定や動作結果を示す信号を受け取る。
【0037】
記憶部117は、例えば、フラッシュメモリーなどデータの書き換えが可能な不揮発性のメモリーおよびハードディスクにより構成されている。記憶部117は、例えば、プロジェクター100を起動させるときの起動ルーチンなど、プロジェクター100の動作を制御するための様々なプログラムおよび付随するデータを記憶する。また、記憶部117は、投射部150によりスクリーンの投射面に投射される画像の画像データ(以下、「投射データ」と称する)がPC50から供給されると、その投射データを受け取って記憶する。
【0038】
通信部119は、例えば公知の何れかの無線LAN規格に対応した無線LANカードであり、PC50における後述のPC通信部51との間で各種のデータを送受信する。
【0039】
I/Oブリッジ部120は、通信部119の無線LANカードを制御するためのPCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)に対応したカードコントローラーを搭載している。
【0040】
赤外光検出部160は、赤外光を受光可能な受光素子(光電変換素子)およびA/D変換回路を有し、手書入力装置200における後述の発光部215から出力される赤外光を受光する。具体的には、赤外光検出部160は、発光部215からの赤外光を受光素子で受光し、その受光強度に応じた電圧値のアナログ信号に変換してA/D変換回路へ出力する。そして、A/D変換回路で上記アナログ信号をその電圧値に応じてHまたはLのデジタル信号に変換して出力する。また、赤外光検出部160は、上記赤外光を受光したタイミングおよび受光しなくなったタイミングを示す受光タイミングデータを生成して出力する。
【0041】
なお、本例では、後述のように、手書入力装置200の発光部215は、手書入力装置200により投射面に文字などを手書き入力しているときだけ赤外光を発光する。また、発光部215は、後述のように、手書入力装置200が備えるバッテリーの残量に応じた周波数でパルス発光する。したがって、上記受光タイミングデータは、手書入力装置200により投射面に文字などが手書き入力されていた時間と、手書入力装置200が備えるバッテリーの残量を示すものとなる。
【0042】
超音波検出部170は、2組の超音波受信器およびA/D変換回路と、信号処理回路とを有し、手書入力装置200における後述の超音波出力部216から送信される超音波信号を受信する。具体的には、超音波検出部170は、超音波出力部216からの超音波信号をそれぞれの超音波受信器で受信し、その受信状態、例えば受信する信号レベルに応じた電圧値のアナログ信号に変換して各超音波受信器から対応するA/D変換回路へ出力する。そして、それぞれのA/D変換回路で上記アナログ信号をその電圧値に応じてHまたはLのデジタル信号に変換して出力する。
【0043】
そして、超音波検出部170は、上記信号処理回路において、それぞれのA/D変換回路からの上記デジタル信号から各超音波受信器における超音波信号の受信タイミングの時間差を予め定められた単位時間毎に検出する。ここで、上記時間差の検出は、例えば2組の超音波受信器で受信したそれぞれの超音波信号がパルス信号または正弦波信号などの一定の周期性を有する信号である場合は、それぞれの信号の位相差が上記信号処理回路で求められ、当該位相差から演算処理によって求められる。
【0044】
超音波検出部170は、検出した上記時間差を示す受信時間差データを生成して出力する。また、超音波検出部170は、上記信号処理回路において、上記受信時間差データに加えて、上記単位時間毎の超音波信号の受信状態(信号レベル)を示す信号レベルデータを生成して出力する。したがって、超音波検出部170から出力される上記受信時間差データおよび上記信号レベルデータは、手書入力装置200により投射面に文字などが手書き入力されている入力位置と、超音波検出部170による超音波信号の受信状態(信号レベル)を示すものとなる。
【0045】
続いて、PC50の概略構成について説明する。PC50は、PC通信部51、PC表示部52、PC電源部53、PCI/Oブリッジ部54、PCハードディスク55、PC制御部56、PC記憶部57、PC操作部58、PC操作受付部59、筆跡データ生成部60、筆跡データ変更部70、およびキャンセル信号生成部80を備える。なお、プロジェクター100の各構成の名称と区別するため、上記のように、筆跡データ生成部60、筆跡データ変更部70、およびキャンセル信号生成部80以外のPC50の各構成の名称には「PC」を附した。また、PCハードディスク55は、本発明における筆跡データ記憶部の一例である。
【0046】
PC通信部51は、プロジェクター100の通信部119との間で各種データの送受信を行う。PC表示部52は、CRTあるいはLCDなどの表示装置であり、例えばプロジェクター100によってスクリーンの投射面上に表示させている画像などを表示する。また、PC表示部52は、各種のコマンドやアイコンなどを表示してもよい。
【0047】
PC電源部53は、外部電源320からの交流電力をプラグから導き、内蔵するAC/DC変換部(いずれも図示せず)にて変圧、整流および平滑するなどの処理を施すことにより安定化させた直流電圧をPC50の各部に供給する。なお、PC50がノート型PCなど携行性を有する場合は、PC電源部53は、充電式のリチウムイオン電池などを有してもよい。
【0048】
PCI/Oブリッジ部54は、PC通信部51(無線LANカード)を制御するためのPCMCIAに対応したカードコントローラーや、PCハードディスク55を制御するためのハードディスクコントローラーなどの各種デバイスコントローラーを搭載している。
【0049】
PCハードディスク55は、例えばIDEに対応したハードディスクであり、基本ソフトであるOS(Operating System)や、プロジェクター100の制御ソフトウェアなどのプログラムを記憶する。なお、PCハードディスク55は、ネットワークブラウザ、あるいは文書作成やプレゼンテーションに用いられる各種ビジネス用ソフトなどのプログラムをさらに記憶してもよい。
【0050】
PC制御部56は、例えば高速の演算処理が可能な中央演算処理装置(Central Processing Unit)であり、PC操作受付部59からの信号に基づいて、PC50の各部に対して動作のトリガーとなる制御信号を送るとともに、各部から動作内容や動作結果を示す信号を受け取る。また、PC制御部56は、プロジェクター100と接続するための接続プログラム、および、PC通信部51により通信を行うための各種プロトコルプログラムなどのPC50の動作を制御するための様々なプログラムを実行する。
【0051】
PC記憶部57は、例えばフラッシュメモリーなどデータの書き換えが可能な不揮発性のメモリーにより構成されている。PC記憶部57は、PC制御部56で実行されるプログラムなどのPC50の動作を制御するための様々なプログラムや、当該プログラムに付随するデータ類を記憶している。なお、これらのプログラムおよびデータは、PCハードディスク55に記憶されていても良い。
【0052】
PC操作部58は、キーボードおよびマウスであり、例えば、PC50を起動およびシャットダウン、あるいはプレゼンテーション用の資料を表示させるための各種の操作入力が行われる。PC操作受付部59は、PC操作部58への操作入力を検出し、その操作内容を示す信号をPC制御部56へ送る。
【0053】
筆跡データ生成部60は、プロジェクター100の赤外光検出部160から出力される上記受光タイミングデータ、および超音波検出部170から出力される上記受信時間差データおよび信号レベルデータをPC通信部51を介して受け取り、時系列で記憶する。そして、筆跡データ生成部60は、記憶した上記各データを順次に読み出し、当該各データに基づいて、ユーザーが手書入力装置200を用いて文字や図形などを手書き入力している入力位置を特定する。本例では、筆跡データ生成部60は、フラッシュメモリーなどデータの書き換えが可能な不揮発性のメモリーおよび演算処理回路などにより構成される。
【0054】
より具体的には、例えば図1に示すように、ユーザーが手書入力装置200の先端をスクリーンの投射面に押しつけて文字や図形などの情報を手書き入力している場合は、上記のように、赤外光検出部160および超音波検出部170から、手書入力装置200から送信される赤外光や超音波信号(以下、これらをまとめて「信号」とまとめて称する)に基づいて生成された受信時間差データ、信号レベルデータ、および受光タイミングデータが出力される。そして、筆跡データ生成部60は、これらの各データのうち、上記受信時間差データに基づいて、超音波検出部170の各超音波受信器から手書入力装置200の先端までの距離を算出する。
【0055】
そして、筆跡データ生成部60は、上記受光タイミングデータから、手書入力装置200の先端位置を手書き入力位置(図1で「P」を付して示す位置)としてその座標を特定する。そして、筆跡データ生成部60は、投射面上の上記入力位置の移動軌跡上に予め設定された太さや色の線を表示させるための筆跡データを生成する。そして、筆跡データ生成部60は、PC50からプロジェクター100に供給される投射データに生成した筆跡データを合成する。
【0056】
筆跡データ変更部70は、上記信号の内容を示す上記各データに基づいて手書入力装置200により手書き入力された文字や図形などの筆跡が異なる表示形態で投射面に投射されるように筆跡データ生成部60によって生成される筆跡データを変更する。ここで、「筆跡が異なる表示形態で投射面に投射される」とは、例えば上記筆跡が設定とは異なる太さや色、あるいは濃度などで投射される状態を指す。
【0057】
例えば、筆跡データ変更部70は、赤外光検出部160から出力される上記受光タイミングデータが、電源部212のバッテリーの残量が予め定められた警告レベルを下回っていることを示したことに応じて、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡がこれまでに入力した文字の筆跡よりも薄い色の線で表示されるように筆跡データを変更する。また、筆跡データ変更部70は、超音波検出部170から出力される上記信号レベルデータが、超音波検出部170による超音波信号の信号レベルが予め定められたレベル(警告レベル)を下回っていることを示した、すなわち、超音波信号の受信強度が検出可能な下限レベルに近づいたことに応じて、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡がこれまでに入力した文字の筆跡と異なる種類の線で表示されるように筆跡データを変更する。
【0058】
また、筆跡データ変更部70は、筆跡データを変更したことに応じて、上記信号の内容に応じたメッセージを投射面に表示させる。例えば、筆跡データ変更部70は、上記信号レベルデータが、超音波検出部170による超音波信号の信号レベルが予め定められたレベル(警告レベル)を下回っていることを示した場合は、超音波信号の受信強度が検出可能な下限レベルに近づいている旨のメッセージが投射面に投射されるように投射データを変更する。
【0059】
キャンセル信号生成部80は、予め設定された条件を満たした場合に、キャンセル信号を筆跡データ変更部70に出力する。より具体的には、キャンセル信号生成部80は、筆跡データ変更部70から筆跡データの変更履歴を取得し、例えば、変更後に予め設定された時間が経過した筆跡データの変更部分について変更前の状態に戻すためのキャンセル信号を筆跡データ変更部70に出力する。また、キャンセル信号生成部80は、これに替えて、手書入力装置200の先端が投射面に一旦接触してから離れるまでを筆跡の一単位とし、現在入力中の文字の筆跡単位よりも前の筆跡における変更部分について変更前の状態に戻すためのキャンセル信号を筆跡データ変更部70に出力する。筆跡データ変更部70は、キャンセル信号を受け取ると、その内容に応じて筆跡データの変更部分について変更前の状態に戻した筆跡データを筆跡データ生成部60に生成させる。
【0060】
また、本例では、筆跡データ生成部60によって生成された筆跡データはPCハードディスク55に記憶される。ここで、PCハードディスク55には、筆跡データ変更部70により変更された筆跡データではなく、変更される前の筆跡データが記録される。したがって、ユーザーへの警告などのために投射面に筆跡を表示させるための筆跡データを変更しつつ、PCハードディスク55に記憶する筆跡データには当該変更を行わないので、手書き入力された文字などの筆跡をそのままのデータとして保存することができる。なお、筆跡データ変更部70による筆跡データの変更内容を別個のデータとしてPCハードディスク55に記憶させてもよい。
【0061】
次に、画像が投射されているスクリーンの投射面に対して、文字や図形などの情報を手書き入力するために用いられる手書入力装置200の構成について説明する。
【0062】
図2は、手書入力装置200の概略構成図である。手書入力装置200は、例えばホワイトボードマーカーと同程度の大きさで携行可能な電子ペンであり、図2に示すように、装置本体210と、装置本体210から突出する突出部220と、を備える。また、装置本体210には、スイッチ211、電源部212、残量検出回路213、感圧部214、発光部215、および超音波出力部216が設けられている。なお、発光部215および超音波出力部216は、本発明における信号送信部の一例である。
【0063】
突出部220は、図2に破線で示す位置まで装置本体210に押し込むことができる。また、突出部220の装置本体210側の端部には例えば弦巻ばねなどの弾性部材(図示せず)が配されており、突出部220は、当該弾性部材から装置本体210から押し出される方向の弾性力を受けている。したがって、突出部220を投射面に当接させて装置本体210に押し込んだ状態で、突出部220を投射面から離せば、突出部は再び装置本体210から押し出されて元の位置に戻る。
【0064】
スイッチ211は、電源部212から手書入力装置200の各部への電力の供給または停止を切り替えるための切り替えスイッチを有する。また、スイッチ211は、手書入力装置200の各種機能を実行するためのスイッチや、投射面に表示される筆跡の線の太さや線の色などの設定を変更するためのスイッチを含んでもよい。
【0065】
電源部212は、手書入力装置200の電源であり、手書入力装置200の各部へ供給するための電力が蓄電されたバッテリー、および当該バッテリーからの電圧を安定化させる低電圧回路を有する。上記バッテリーは、例えばマンガン電池、あるいはアルカリ電池などの一次電池でもよいが、例えばリチウム電池、リチウムポリマー電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、あるいはニッケルカドミウム電池などの二次電池が好ましく用いられる。なお、電源部212は、容易に交換可能なように配されることが好ましい。
【0066】
残量検出回路213は、電源部212から手書入力装置200の各部へ供給される電力を検出する。より具体的には、残量検出回路213は、例えば電源部212の出力電圧を検出する電圧検出回路と信号出力回路を有し、電源部212の出力電圧の大きさを示す信号を信号出力回路から発光部215へ出力する。
【0067】
感圧部214は、突出部220が装置本体210に押し込まれたことを検出する。感圧部214は、例えば圧電素子と電圧増幅回路などで構成され、突出部220が装置本体210に押し込まれたことに応じて、発光部215に対して信号を出力する。なお、突出部220が装置本体210に押し込まれたことを検出するための構成は本例に限られない。例えば、感圧部214に替えて装置本体210に押し込まれたことに伴う突出部220の変異を検出するセンサーを設けてもよい。
【0068】
発光部215は、本例では電源部212から供給される電力により赤外光を発光する発光ダイオードと、電源部212から当該発光ダイオードへ供給される電力を、感圧部214および残量検出回路213からそれぞれ与えられる信号に応じて制御する制御回路を有する。具体的には、上記制御回路は、感圧部214から信号を受け取ったことに応じて、電源部212から上記発光ダイオードへの電力の供給をオンする。
【0069】
そして、残量検出回路213からの信号に基づいて、上記発光ダイオードが電源部212のバッテリーの残量(電源部212の出力電圧の大きさ)に応じた周波数でパルス発光するように電源部212から供給される電力を制御する。発光部215が発光する赤外光は、上記のように赤外光検出部160において受光される。
【0070】
なお、本例では、突出部220が装置本体210に押し込まれた際に発光する赤外光の発光状態をバッテリーの残量に応じて変化させているが、バッテリーの残量を送信する形態はこれに限られない。例えば、超音波出力部216からの超音波信号をバッテリーの残量に応じて変調してもよく、また、バッテリーの残量を、光、電磁波、あるいは赤外光など所望の信号形態で残量検出回路213から直接送信するとともに、プロジェクター100またはPC50に当該信号の検出部を設けてもよい。
【0071】
超音波出力部216は、電源部212からの電力の供給を受けて超音波信号を出力する。超音波出力部216から出力される超音波信号は、上記のように、超音波検出部170に設けられた2つの超音波受信器において超音波出力部216からの距離の差に応じたタイミングで受信される。
【0072】
このように、手書入力装置200は、投射面に突出部220が押し付けられている場合のみ発光部215が赤外光を発光するので、手書入力装置200からの赤外光を検出することで、ユーザーが手書入力装置200を用いて投射面に手書き入力しているか否かを容易に検出することができる。なお、ユーザーが手書入力装置200で手書き入力をせずに例えば投射面に投射されている画像の特定部分を指し示している状態では、超音波出力部216から出力される超音波信号のみが検出される。したがって、この状態では、PC50の筆跡データ生成部60では筆跡データは生成されないが、手書き入力時と同様に手書入力装置200が指し示している位置の座標の特定が行われてもよい。
【0073】
図3および図4は、本システムを用いてスクリーンの投射面に文字や図形などを手書き入力する際の本システムにおける処理フローの一例を示す。本フローでは、まず、プロジェクター100の投射部150によってスクリーンの投射面に画像が投射され(ステップ100)、プロジェクター100の赤外光検出部160および超音波検出部170によって手書入力装置200からの赤外光および超音波信号が検出される(ステップS105)。
【0074】
そして、赤外光検出部160および超音波検出部170で手書入力装置200からの赤外光および超音波信号を受信すると(ステップS105:YES)、PC50の筆跡データ生成部60によって、手書入力装置200による手書き入力位置が特定され(ステップS110)、当該入力位置の移動軌跡上に予め設定された太さや色の線を表示させるための筆跡データが生成される(ステップS115)。そして、生成された筆跡データは、筆跡データ生成部60によって、PC50からプロジェクター100に供給される投射データと合成される。なお、赤外光および超音波信号のいずれも受信していないか、あるいは超音波信号のみを受信した場合(ステップS105:NO)は、筆跡データ生成部60によって筆跡データは生成されない。
【0075】
次に、手書入力装置200からの信号(赤外光および超音波信号)に基づいてプロジェクター100の赤外光検出部160および超音波検出部170から出力される受光タイミングデータおよび信号レベルデータの内容に基づいて、筆跡データ生成部60で生成された筆跡データが筆跡データ変更部70によって変更される(ステップS120〜S135)。
【0076】
図5から図10は、手書入力装置200によって投射面に文字を手書き入力している様子を示す図である。図5および図6に示すように、超音波検出部170からの信号レベルデータが、超音波信号の受信状態が良好であることを示すものであり(ステップS120:YES)、さらに、赤外光検出部160からの受光タイミングデータが、手書入力装置200のバッテリーの残量が十分である(警告レベルを上回っている)ことを示すものである場合(ステップS130:YES)は、筆跡データ変更部70は筆跡データ生成部60で生成された筆跡データを変更しない。したがって、筆跡データ生成部60で生成された筆跡データはそのまま投射データに合成されて投射面に筆跡として投射される(ステップS140)。
【0077】
一方、超音波検出部170からの信号レベルデータが、超音波信号の信号レベルが警告レベルを下回っていることを示した場合(ステップS120:NO)、筆跡データ変更部70によって、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡が破線で表示されるように、筆跡データ生成部60で生成された筆跡データが変更される(ステップS125)。また、このとき、筆跡データ変更部70によって、超音波信号の受信強度が検出可能な下限レベルに近づいている旨のメッセージが投射面に投射されるように投射データが変更される。
【0078】
さらに、赤外光検出部160からの受光タイミングデータが、電源部212のバッテリーの残量が警告レベルを下回っていることを示した場合(ステップS130:NO)、筆跡データ変更部70によって、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡がグレーなどのより薄い色で表示されるように、筆跡データ生成部60で生成された筆跡データが変更される(ステップS135)。また、このとき、筆跡データ変更部70によって、電源部212のバッテリーの残量が警告レベルを下回っている旨のメッセージが投射面に投射されるように投射データが変更される。
【0079】
そして、変更された筆跡データは、筆跡データ生成部60によって、投射データに合成される(ステップS140)。これにより、超音波検出部170で受信される超音波信号の信号レベルが警告レベルを下回っている場合、すなわち、手書入力装置200とプロジェクター100の間で何らかの通信障害が生じたり、あるいは、超音波出力部216からの超音波信号が超音波検出部170で検出可能なレベルを下回る程度にプロジェクター100と手書入力装置200との距離が離れた場合は、図7に示すように、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡が破線で表示されるとともに、「リモート信号の検出レベルが十分ではありません」との警告メッセージが投射面に投射される。また、電源部212のバッテリーの残量が警告レベルを下回っている場合は、図8に示すように、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡がそれまでよりも薄い色で表示されるとともに、「電池残量が少なくなっています」との警告メッセージが投射面に投射される。
【0080】
また、超音波検出部170で受信される超音波信号の信号レベルが警告レベルを下回り、さらに、電源部212のバッテリーの残量が警告レベルを下回った場合は、図示は省略するが、手書入力装置200による入力中の文字の筆跡が破線かつ薄い色で表示される。また、このとき、上記2種類の警告メッセージの両方が投射面に投射される。なお、超音波検出部170で受信される超音波信号の信号レベルが警告レベルを下回っている場合に、本例の警告メッセージに替えて、信号の受信強度を示す図形や数字などを投射面に投射しても良い。
【0081】
そして、筆跡データ変更部70によって変更された筆跡データに基づいて手書入力装置200による入力中の文字の筆跡が破線や淡色で投射されている状態において、キャンセル信号生成部80は、例えば「新たに一画分手書きされる毎にこれまでに手書きされた部分についての筆跡データの変更はキャンセルする」ことを条件として設定している場合、図9および図10に示すように、図7および図8に示す状態から新たに一画分手書きすると(ステップS145:YES)、それまでに破線や淡色で投射されていた部分の筆跡データが変更前の状態に戻されて(ステップS150)、投射データと合成されて投射される(ステップS155)。また、筆跡データが変更前の状態に戻されるのに併せて、警告メッセージも消去されるように筆跡データ変更部70によって投射データが変更される。したがって、警告メッセージが手書き入力の邪魔になりにくい。
【0082】
なお、図7および図8に示す状態から新たに一画分が完全に手書きされるまでは(ステップS145)、変更部分は元の状態には戻らないが、上記のキャンセル条件を変更後の時間で設定した場合は、時間の経過とともに順次に筆跡データが変更前の状態に戻される。以上により本フローは終了する。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る筆跡データ生成システム10によれば、手書入力装置200を用いて文字や図形などを投射面に手書き入力するユーザーは、例えばバッテリーの残量が少なくなっているなどの手書入力装置200の状態を、書き込み中の文字などの筆跡の変化から容易に知ることができる。また、ユーザーは、手書入力装置200が当該状態となっていることを、投射面に投射されるメッセージからも知ることができる。
【0084】
なお、本例では、手書入力装置200の位置および状態を示す信号として、発光部215から出力される赤外光および超音波出力部216から送信される超音波信号を例示したが、当該信号が示す内容はこれに限られない。例えば、手書入力装置200の内部設定などの情報などを含む信号を手書入力装置200から送信しても良い。また、手書入力装置200から送信される信号の種類も本例の赤外光および超音波信号に限られず、近距離通信用周波数帯(例えば2.4GHz帯)の電波信号であってもよい。また、筆跡データ変更部70による筆跡データの変更結果についても、本例のように破線や淡色による表示に限られない。例えば、筆跡の変更対象の部分の線の太さを変えたり当該部分が点滅表示されるように筆跡データを変更してもよい。
【0085】
また、本例では、手書入力装置200からの赤外光および超音波信号を受信することで手書入力装置200の位置および状態を特定しているが、当該位置および状態を特定する方式は本例に限られない。例えば、スクリーンに位置情報を示すマークあるいはバーコードなどが印字または表示されており、手書入力装置200がカメラによる撮像あるいはセンサーによるセンシングで当該マークあるいはバーコードを読み取って位置情報を取得しても良い。また、この場合、手書入力装置200は、自らの位置情報およびバッテリーの残量などを含む情報を種々の方式でプロジェクター100またはPC50に無線送信してもよい。
【0086】
また、手書入力装置200の先端位置を特定する方式は、本例に限られない。他の例として、例えば、GPS方式、光学方式、電磁誘導方式などであってもよい。なお、これらの方式の場合、手書入力装置200に各種の検出データに基づいて自身の位置情報を算出する演算処理回路を設けてもよい。また、スクリーン側に手書入力装置200の先端位置を検出する構成を有する場合は、手書入力装置200に本例のように超音波信号を出力する構成を設ける必要はなく、赤外光を出力する構成を備えていればよい。
【0087】
また、本実施形態では、プロジェクター100として、スクリーンの投射面に対して正面から画像光を投射する形態を例示したが、プロジェクター100は、例えば図11および図12に示すようにスクリーンの上方に設置されて当該上方から投射面に画像光を投射する直上投射型のプロジェクターであってもよい。このようにスクリーンの上方から画像光を投射することで、スクリーンの前に立っているプレゼンターが眩しさを感じにくくすることができる。
【0088】
また、本実施形態では、光源からの光を光変調部である液晶ライトバルブによって変調し投射する液晶3板式プロジェクター100を含む筆跡データ生成システム10を例示したが、本発明に係る筆跡データ生成システムはその他の方式を採用するプロジェクターを用いてもよい。より具体的には、DMD(Digital Micromirror Device)を用いた投射方式、所謂、DLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式を採用するプロジェクターを用いてもよい。ここで、DLP方式は、白色に光るランプの光をレンズで集光してDMDに当て、DMDの個々のミラーがオン状態に傾いているときの光を他のレンズで拡大し、スクリーンに投射する方式である。また、本実施形態では、光源として放電式ランプを用いて投射するプロジェクター100を含む筆跡データ生成システム10を例示したが、光源としてLED光源やレーザー光源などを用いて投射するプロジェクターを用いてもよい。
【0089】
また、本実施形態では、プロジェクター100の赤外光検出部160および超音波検出部170によって手書入力装置200からの信号を受信し、PC50の筆跡データ生成部60で手書入力装置200による投射面上の入力位置または指示位置を特定して筆跡に反映させる方式を例示したが、本発明に係る筆跡データ生成システム10は、当該方式に限定されない。他の例として、例えば、プロジェクター100によってスクリーンに画像を投射する形態に替えて、画像の表示機能を備えたスクリーンを用いてもよく、この場合、プロジェクター100が不要となることから、上記実施形態ではプロジェクター100に設けられていた赤外光検出部160および超音波検出部170をPC50に設けても良い。また、これに替えて、スクリーンの前方あるいは周縁部に赤外光検出部160および超音波検出部170を設けて、これらで受信した信号をPC50に有線または無線により送信してもよい。
【0090】
また、さらに他の例として、プロジェクター100がPC50の各機能を備えてもよい。すなわち、例えば、プロジェクター100にPC表示部52に相当する表示部を設けるとともに、記憶部117に画像データを記憶させてもよく、また、この場合、プロジェクター100の本体に設けられた操作パネル(図示せず)がPC操作部58に対応する機能を有してもよい。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0092】
10…筆跡データ生成システム、50…パーソナルコンピューター(PC)、51…PC通信部、52…PC表示部、53…PC電源部、54…PCI/Oブリッジ部、55…PCハードディスク、56…PC制御部、57…PC記憶部、58…PC操作部、59…PC操作受付部、60…筆跡データ生成部、70…筆跡データ変更部、80…キャンセル信号生成部、100…プロジェクター、110…ランプ、111…光学部、112…液晶パネル駆動部、113…ランプ駆動部、114…電源部、115…操作受付部、116…制御部、117…記憶部、118…画像処理部、119…通信部、120…I/Oブリッジ部、150…投射部、160…赤外光検出部、170…超音波検出部、200…手書入力装置、210…装置本体、211…スイッチ、212…電源部、213…残量検出回路、214…感圧部、215…発光部、216…超音波出力部、220…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が表示される表示面に情報を手書き入力するための手書入力装置と、手書き入力される前記情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置と、を備える筆跡データ生成システムであって、
前記手書入力装置は、
当該手書入力装置の位置および状態の少なくとも一方を示す信号を送信する信号送信部を有し、
前記筆跡データ生成装置は、
前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、
前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部を有することを特徴とする筆跡データ生成システム。
【請求項2】
前記信号は、前記手書入力装置が備えるバッテリーの残量を示す情報を含み、
前記筆跡データ変更部は、前記バッテリーの残量に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することを特徴とする請求項1に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項3】
前記筆跡データ生成装置は、
前記信号を受信する信号受信部を有し、
前記筆跡データ変更部は、受信した前記信号の受信状態に応じて前記筆跡データを変更することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項4】
前記筆跡データ変更部は、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる濃度で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項5】
前記筆跡データ変更部は、前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる線種で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項6】
前記筆跡データ変更部は、前記筆跡データを変更したことに応じて、前記信号の内容に応じたメッセージを前記表示面に表示させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項7】
前記筆跡データ生成装置は、
予め設定された条件を満たした場合に、キャンセル信号を前記筆跡データ変更部へ出力するキャンセル信号生成部を更に有し、
前記筆跡データ変更部は、所定条件を満たしたことを示すキャンセル信号が入力されたことに応じて前記筆跡データを変更前の状態に戻すことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の筆跡データ生成システム。
【請求項8】
投射面に画像を投射するプロジェクターと、前記投射面に情報を手書き入力するための手書入力装置と、手書き入力される前記情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置と、を備える筆跡データ生成システムであって、
前記手書入力装置は、
当該手書入力装置の状態を示す信号を送信する信号送信部を有し、
プロジェクターは、
前記画像を前記投射面に投射する投射部と、
前記信号を受信する信号受信部を有し、
前記筆跡データ生成装置は、
前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、
前記信号の内容に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部を有することを特徴とする筆跡データ生成システム。
【請求項9】
画像が表示される表示面に対して手書入力装置を用いて手書き入力される情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成方法であって、
前記手書入力装置の状態に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更することを特徴とする筆跡データ生成方法。
【請求項10】
コンピューターを、画像が表示される表示面に対して手書入力装置を用いて手書き入力される情報の筆跡を前記表示面に表示させるための筆跡データを生成する筆跡データ生成装置として機能させるプログラムあって、
手書き入力される前記情報の前記筆跡データを生成する筆跡データ生成部と、
前記手書入力装置の状態に応じて前記筆跡が異なる表示形態で前記表示面に表示されるように前記筆跡データを変更する筆跡データ変更部と、
を有する前記筆跡データ生成装置として前記コンピューターを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−204173(P2011−204173A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73272(P2010−73272)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】