説明

等価回路パラメータ測定装置および等価回路パラメータ測定方法

【課題】同じ試料についての等価回路のパラメータを測定したときに他の測定装置と同じ値のパラメータ値を測定する。
【解決手段】処理部6は、試料8の各周波数でのインピーダンスZおよび位相θを示す測定周波数特性データDFbを取得する周波数特性データ取得処理と、取得した測定周波数特性データDFbで示されるインピーダンスZにインピーダンス補正係数mを乗算して補正インピーダンスZb1に補正し、かつ測定周波数特性データDFbで示される位相θに位相補正値nを加算して補正位相θb1に補正して補正周波数特性データDFb1を算出する周波数特性データ補正処理と、補正周波数特性データDFb1に基づいて試料8の等価回路の各パラメータのパラメータ値DLb1,DCb1,DRb1を算出し、パラメータ補正値k,k,kを乗算して補正するパラメータ補正処理とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の等価回路についてのパラメータを測定する等価回路パラメータ測定装置および等価回路パラメータ測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、下記特許文献1に開示された定数測定器が知られている。この定数測定器は、制御部と、端子切替部と、インピーダンス測定部と、インピーダンス記憶部と、インピーダンス極小・極大点探索部と、T型回路網変換部と、アドミタンスピーク点探索部と、共振回路計算部と、並列回路合成部と、等価回路表示部とを有している。
【0003】
この定数測定器では、通信機器のA端子と、B端子と、接地端子との3端子のうちの2端子間で測定したインピーダンス変化における極小点または極大点付近のインピーダンスの周波数範囲を狭めて詳しく再測定する命令を出し、測定した端子間のインピーダンス測定値を、上記の通信機器がT型回路網であると仮定した場合におけるこのT型回路網のそれぞれのインピーダンスに変換し、それぞれのアドミタンスに変換し、そのピーク点を探索し、ピーク点の周波数とアドミタンスとに基づいて、直列共振回路を仮定し、共振回路定数を計算し、次のピーク点探索の命令を出し、計算した回路定数を、モード合成によって並列回路に合成し、通信機器のコモンモード等価回路を表示する。
【0004】
この定数測定器によれば、測定ポイント間隔を、従来に比べて1桁以上、または、さらに狭くすることができる通信機器のコモンモード等価回路を導出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−62045号公報(第7−18頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ユーザが、上記のような測定装置を複数有する場合に、すべての測定装置が同一メーカの同一機種である場合もあるが、異なるメーカのものである場合もある。
【0007】
後者の場合には、一般的に、メーカ毎に測定装置に予め記憶させる通信機器(試料)の等価回路(例えば、図4,5に示されるようなインダクタンスL、キャパシタンスCおよび抵抗Rで規定される通信機器(試料)毎の回路)についての算出アルゴリズムの演算式が異なっている。また、この算出アルゴリズムの演算式が同じであったとしても、演算式で使用する各定数(インダクタンスL、キャパシタンスCおよび抵抗R)の導出方法が異なる場合がある。このため、各測定装置で同じ通信機器(試料)についての等価回路のパラメータを測定したとしても、同じ結果が得られないという解決すべき課題が存在している。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、同じ試料についての等価回路のパラメータを測定したときに他の測定装置と同じ値のパラメータ値を測定し得る等価回路パラメータ測定装置および等価回路パラメータ測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の等価回路パラメータ測定装置は、他の測定装置において測定された基準試料についての予め規定された各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データ、並びに当該他の測定装置において当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての各パラメータのパラメータ値をそれぞれ入力する入力部と、測定対象の試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定する測定部と、前記他の装置において測定された前記基準試料についての周波数特性データおよび算出された当該基準試料についての各パラメータ値を入力周波数特性データおよび入力パラメータ値として前記入力部を介して入力する入力処理、前記入力周波数特性データに基づいて、前記基準試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値で当該パラメータ値に対応する前記入力パラメータ値を除算することにより、当該各パラメータについてのパラメータ補正係数を算出するパラメータ補正係数算出処理、前記基準試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定周波数特性データとして前記測定部によって測定する周波数特性データ測定処理、前記入力周波数特性データで示される前記インピーダンスを前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスで除算することにより、前記各周波数におけるインピーダンスについてのインピーダンス補正係数を算出すると共に、前記入力周波数特性データで示される前記位相から前記測定周波数特性データで示される前記位相を減算することにより、前記各周波数における位相についての位相補正値を算出する特性データ補正係数算出処理とを実行する処理部とを備え、前記処理部は、新たな試料についての前記各パラメータを算出する際に、前記新たな試料について前記周波数特性データ測定処理を実行して、当該試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す前記測定周波数特性データを取得する周波数特性データ取得処理と、前記取得した前記新たな試料についての前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスに前記インピーダンス補正係数を乗算して補正インピーダンスに補正し、かつ当該測定周波数特性データで示される前記位相に前記位相補正値を加算して補正位相に補正して、補正周波数特性データを算出する周波数特性データ補正処理と、前記補正周波数特性データに基づいて前記新たな試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値に前記パラメータ補正値を乗算することにより、当該算出したパラメータ値を補正するパラメータ補正処理とを実行する。
【0010】
また、請求項2記載の等価回路パラメータ測定装置は、請求項1記載の等価回路パラメータ測定装置において、前記入力部は、外部記憶媒体または電気通信回線を介して、前記他の測定装置において測定された前記基準試料についての前記周波数特性データ、および当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての前記各パラメータの前記パラメータ値を入力するインターフェース回路で構成されている。
【0011】
また、請求項3記載の等価回路パラメータ測定方法は、他の測定装置において測定された基準試料についての予め規定された各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データ、並びに当該他の測定装置において当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての各パラメータのパラメータ値を入力周波数特性データおよび入力パラメータ値としてそれぞれ入力する入力処理と、前記入力周波数特性データに基づいて、前記基準試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値で当該パラメータ値に対応する前記入力パラメータ値を除算することにより、当該各パラメータについてのパラメータ補正係数を算出するパラメータ補正係数算出処理と、前記基準試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定周波数特性データとして測定する周波数特性データ測定処理と、前記入力周波数特性データで示される前記インピーダンスを前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスで除算することにより、前記各周波数におけるインピーダンスについてのインピーダンス補正係数を算出すると共に、前記入力周波数特性データで示される前記位相から前記測定周波数特性データで示される前記位相を減算することにより、前記各周波数における位相についての位相補正値を算出する特性データ補正係数算出処理とを実行し、新たな試料についての前記各パラメータを算出する際に、前記新たな試料について前記周波数特性データ測定処理を実行して、当該試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す前記測定周波数特性データを取得する周波数特性データ取得処理と、前記取得した前記新たな試料についての前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスに前記インピーダンス補正係数を乗算して補正インピーダンスに補正し、かつ当該測定周波数特性データで示される前記位相に前記位相補正値を加算して補正位相に補正して、補正周波数特性データを算出する周波数特性データ補正処理と、前記補正周波数特性データに基づいて前記新たな試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値に前記パラメータ補正値を乗算することにより、当該算出したパラメータ値を補正するパラメータ補正処理とを実行する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の等価回路パラメータ測定装置および請求項3記載の等価回路パラメータ測定方法によれば、新たな試料についての測定周波数特性データを測定したときに、各周波数でのインピーダンスにインピーダンス補正係数を乗算して補正インピーダンスに補正し、かつ測定周波数特性データで示される位相に位相補正値を加算して補正位相に補正し、この補正後のインピーダンスおよび補正位相に基づいて、新たな試料の等価回路についての各パラメータのパラメータ値を算出したときに、このパラメータ値に各パラメータ補正係数を乗算することにより、他の測定装置と同じ試料についての等価回路のパラメータについてのパラメータ値を測定したときに、他の測定装置で測定されるパラメータ値と同じ値のパラメータ値を測定することができる。
【0013】
請求項2記載の等価回路パラメータ測定装置によれば、他の測定装置において測定された基準試料についての周波数特性データ、およびこの他の測定装置においてこの周波数特性データに基づいて算出された基準試料の等価回路についての各パラメータ値が記憶されている外部記憶媒体を入力部に接続したり、この周波数特性データおよび各パラメータ値が伝送される電気通信回線を入力部に接続したりするだけで、この外部記憶媒体または電気通信回線を介して、他の測定装置での周波数特性データ、および各パラメータ値を短時間で、しかも簡易に入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】等価回路パラメータ測定装置1の構成図である。
【図2】補正用データ算出処理50の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】パラメータ測定処理60の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】等価回路の一例を示す回路図である。
【図5】等価回路の他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、等価回路パラメータ測定装置1および等価回路パラメータ測定方法の実施の形態について説明する。
【0016】
最初に、等価回路パラメータ測定装置1(以下、「測定装置1」ともいう)の構成について、図面を参照して説明する。
【0017】
測定装置1は、図1に示すように、入力部2、測定部3、操作部4、記憶部5、処理部6および出力部7を備え、測定部3に接続された測定対象としての試料8の等価回路についての各パラメータを測定可能に構成されている。本例では一例として、試料8の等価回路は、図4で示されるように、インダクタンスL、キャパシタンスCおよび抵抗Rの各パラメータで構成されているものとする。
【0018】
入力部2は、他の測定装置(試料8について測定される等価回路は、測定装置1によって測定される等価回路とは相違しているものの検査装置1と同様にして各パラメータL,C,Rで構成されており、この各パラメータL,C,Rを測定可能に構成されている測定装置)において測定された基準試料(例えば、特定の正常な試料8)8rについての予め規定された各周波数でのインピーダンスZraおよび位相θraをその各周波数に対応付けた周波数特性データDFra、並びにこの他の測定装置においてこの周波数特性データDFraに基づいて算出された基準試料8rの等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLra,DCra,DRraをそれぞれ入力する。また、入力部2は、入力した周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを処理部6に出力する。また、入力部2は、周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraの入力および処理部6への出力については、処理部6からの要求に応じて実行する。
【0019】
本例では一例として、入力部2は、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの外部記憶媒体用のインターフェース回路で構成されて、外部記憶媒体9に記憶されている他の測定装置の上記した周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを入力する。なお、RS−232C、GPIB、有線LANまたは無線LANなどの各種の通信方式の電気通信回線に接続されるインターフェース回路で入力部2を構成し、これらの通信方式に従って他の測定装置から電気通信回線を介して伝送されて来る周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを入力(受信)する構成を採用することもできる。
【0020】
測定部3は、プローブ3aを介して試料8(基準試料8rを含む)を接続可能に構成されて、接続された試料8について上記した各周波数(他の測定装置の周波数と同じ周波数)でのインピーダンスZrbおよび位相θrbをその周波数に対応付けた周波数特性データDFrbを測定する。また、測定部3は、測定した周波数特性データDFrbを処理部6に出力する。また、測定部3は、周波数特性データDFrbの測定および処理部6への出力については、処理部6からの要求に応じて実行する。
【0021】
操作部4は、例えば操作キー(図示せず)を複数備え、操作された操作キーに予め割り当てられた処理を処理部6に対して実行させるための命令データDcmdを処理部6に出力する。記憶部5は、RAMなどの半導体メモリや、HDD(Hard disk drive)で構成されて、他の測定装置の上記した周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraや、測定部3によって測定された周波数特性データDFrbなどを記憶する。
【0022】
処理部6は、例えばCPUで構成されて、入力部2および測定部3に対する制御を実行すると共に、補正用データ算出処理およびパラメータ測定処理を実行する。また、処理部6は、パラメータ測定処理において測定した試料8の等価回路についての各パラメータのパラメータ値DLb,DCb,DRbを出力部7に出力する。出力部7は、一例として、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されて、測定されたパラメータ値DLb,DCb,DRbを画面に表示する。なお、表示装置に代えて、外部装置(外部記憶媒体などの外部記憶装置を含む)とのインターフェース回路で出力部7を構成して、この外部装置にパラメータ値DLb,DCb,DRbを出力することもできる。
【0023】
次いで、測定装置1による上記の各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb,DCb,DRbの測定動作と共に、このパラメータ値DLb,DCb,DRbの測定方法について図面を参照して説明する。
【0024】
測定装置1では、処理部6が、まず、パラメータ値DLb,DCb,DRbの測定に先立ち、図2に示す補正用データ算出処理50を実行する。この補正用データ算出処理50では、処理部6は、最初に、入力処理を実行する(ステップ51)。なお、この入力処理の実行に際しては、他の測定装置において測定された基準試料8rについての周波数特性データDFra、およびこの他の測定装置においてこの周波数特性データDFraに基づいて算出された基準試料8rの等価回路についての各パラメータ値DLra,DCra,DRraが記憶された外部記憶媒体9が入力部2に予め接続されているものとする。
【0025】
入力処理では、処理部6は、操作キーに対する操作が行われた操作部4から命令データDcmd(外部記憶媒体9から周波数特性データDFra等の読み込みを指示する命令データ)を入力したときに、入力部2に対して、周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraの外部記憶媒体9からの入力(読み込み)と、入力した周波数特性データDFra,および各パラメータ値DLra,DCra,DRraの処理部6への出力とを要求する。
【0026】
入力部2は、この処理部6からの要求に応じて、外部記憶媒体9から周波数特性データDFra,および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを読み出して、処理部6に出力する。処理部6は、この周波数特性データDFra,および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを入力して、周波数特性データDFraを入力周波数特性データとして(以下、「入力周波数特性データDFra」ともいう)記憶部5に記憶させると共に、各パラメータ値DLra,DCra,DRraを入力パラメータ値として(以下、「入力パラメータ値DLra,DCra,DRra」ともいう)記憶部5に記憶させる。これにより、入力処理が完了する。
【0027】
処理部6は、上記の入力処理に引き続いて、パラメータ補正係数算出処理を実行する(ステップ52)。このパラメータ補正係数算出処理では、処理部6は、まず、記憶部5に記憶させた入力周波数特性データDFraに基づいて、基準試料8rの等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLra1,DCra1,DRra1を算出する。この場合、処理部6は、測定装置1での等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb,DCb,DRbを算出するための算出アルゴリズム(予め規定されたアルゴリズム)を用いて、入力周波数特性データDFraから各パラメータ値DLb,DCb,DRbを算出して、パラメータ値DLra1,DCra1,DRra1として記憶部5に記憶する。
【0028】
次いで、処理部6は、このパラメータ補正係数算出処理において算出した各パラメータ値DLb,DCb,DRbで、各パラメータ値DLb,DCb,DRbに対応する入力パラメータ値DLra1,DCra1,DRra1を除算することにより、各パラメータL,C,Rについてのパラメータ補正係数k(=DLra1/DLb),k(=DCra1/DCb),k(=DRra1/DRb)を算出して記憶部5に記憶させる。これにより、パラメータ補正係数算出処理が完了する。
【0029】
続いて、処理部6は、周波数特性データ測定処理を実行する(ステップ53)。この周波数特性データ測定処理に際しては、まず、測定部3に各プローブ3aを介して基準試料8rを接続する。この場合、この基準試料8rとして、他の測定装置において上記の周波数特性データDFra等を測定したときに使用した基準試料8rと同じもの(同一の基準試料8r、または同じ特性を示す別の基準試料8r)を使用する。この状態において、処理部6は、操作キーに対する操作が行われた操作部4から命令データDcmd(測定部3に対して試料8の周波数特性データDFb(基準試料8rについては周波数特性データDFrb)の測定を指示する命令データ)を入力したときに、測定部3に対して、基準試料8rについての周波数特性データDFrbの測定と、測定した周波数特性データDFrbの処理部6への出力とを要求する。
【0030】
測定部3は、この処理部6からの要求に応じて、基準試料8rについての周波数特性データDFrb(各周波数でのインピーダンスZrbおよび位相θrb)を測定して、処理部6に出力する。処理部6は、この周波数特性データDFrbを入力して、周波数特性データDFrbを測定周波数特性データとして(以下、「測定周波数特性データDFrb」ともいう)記憶部5に記憶させる。なお、基準試料8rについては、測定部3による周波数特性データDFrbの測定後に、測定部3から取り外される。これにより、周波数特性データ測定処理が完了する。
【0031】
次いで、処理部6は、特性データ補正係数算出処理を実行する(ステップ54)。この特性データ補正係数算出処理では、まず、処理部6は、各周波数における入力周波数特性データDFraで示されるインピーダンスZraを、対応する周波数における測定周波数特性データDFrbで示されるインピーダンスZrbで除算することにより、各周波数におけるインピーダンスZrbについてのインピーダンス補正係数m(=Zra/Zrb)を算出して記憶部5に記憶する。また、処理部6は、各周波数における入力周波数特性データDFraで示される位相θraから、対応する周波数における測定周波数特性データDFrbで示される位相θrbを減算することにより、各周波数における位相θrbについての位相補正値n(=θra−θrb)を算出して記憶部5に記憶する。これにより、特性データ補正係数算出処理が完了し、補正用データ算出処理50についても完了する。以上により、測定装置1は、新たな試料8についての等価回路の各パラメータL,C,Rを算出可能な状態となる。
【0032】
このようにして算出されたインピーダンス補正係数mは、一般的には周波数毎に相違する値となり、また位相補正値nについても、一般的に周波数毎に相違する値となる。
【0033】
次に、測定装置1による新たな試料8の等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb,DCb,DRbの測定動作について説明する。
【0034】
測定装置1では、測定部3に試料8が接続されている状態において、処理部6は、図3に示すパラメータ測定処理60を実行する。このパラメータ測定処理60では、処理部6は、まず、周波数特性データ取得処理を実行する(ステップ61)。
【0035】
この周波数特性データ取得処理では、処理部6は、操作キーに対する操作が行われた操作部4から命令データDcmd(測定部3に対して試料8の周波数特性データDFbの測定(取得)を指示する命令データ)を入力したときに、測定部3に対して、試料8についての周波数特性データDFbの測定と、測定した周波数特性データDFbの処理部6への出力とを要求する。
【0036】
測定部3は、この処理部6からの要求に応じて、試料8についての周波数特性データDFb(各周波数でのインピーダンスZおよび位相θ)を測定して、処理部6に出力する。処理部6は、この周波数特性データDFbを入力(取得)して、周波数特性データ(測定周波数特性データ)DFbを記憶部5に記憶させる。これにより、周波数特性データ取得処理が完了する。
【0037】
次いで、処理部6は、周波数特性データ補正処理を実行する(ステップ62)。この周波数特性データ補正処理では、処理部6は、取得した新たな試料8についての測定周波数特性データDFbで示される各周波数でのインピーダンスZにインピーダンス補正係数mを乗算して補正インピーダンスZb1に補正し、かつ測定周波数特性データDFbで示される位相θに位相補正値nを加算して補正位相θb1に補正する。また、この補正によって算出された補正インピーダンスZb1および補正位相θb1を補正周波数特性データDFb1として記憶部5に記憶させる。
【0038】
これにより、この周波数特性データ補正処理によって得られた補正インピーダンスZb1および補正位相θb1は、測定装置1で測定している試料8を他の測定装置(上記したステップ51において、入力部2を介して入力した周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを測定した測定装置)で測定したときに得られるインピーダンスZa1および補正位相θa1に一致させられる(揃えられる)。
【0039】
続いて、処理部6は、パラメータ補正処理を実行する(ステップ63)。このパラメータ補正処理では、処理部6は、まず、補正周波数特性データDFb1に基づいて、試料8の等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb1,DCb1,DRb1を算出する。次いで、処理部6は、算出した各パラメータ値DLb1,DCb1,DRb1に、記憶部5から読み出した各パラメータL,C,Rについてのパラメータ補正係数k,k,kを乗算することにより、各パラメータ値DLb1,DCb1,DRb1を各パラメータL,C,Rについての最終的なパラメータ値DLb,DCb,DRbに補正して記憶部5に記憶させる。これにより、パラメータ測定処理60が完了する。
【0040】
この結果、このパラメータ補正処理によって得られたパラメータ値DLb,DCb,DRbは、測定装置1で測定している試料8を他の測定装置(上記したステップ51において、入力部2を介して入力した周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを測定した測定装置)で測定したときに得られるパラメータ値DLa,DCa,DRaに一致させられる。
【0041】
最後に、処理部6は、算出(測定)した試料8の等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb,DCb,DRbを出力部7としての表示装置の画面に表示させる。
【0042】
このように、この測定装置1および等価回路パラメータ測定方法では、他の測定装置において測定された基準試料8rの周波数特性データ(入力周波数特性データ)DFraおよび基準試料8rの等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値(入力パラメータ値)DLra,DCra,DRraと、この入力周波数特性データDFraに基づいて測定装置1が算出した等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLra1,DCra1,DRra1とに基づいて、各パラメータL,C,Rについてのパラメータ補正係数k,k,kを算出する。また、測定装置1が測定した基準試料8rの周波数特性データDFrbと他の測定装置において測定された基準試料8rの周波数特性データ(入力周波数特性データ)DFraとに基づいて、インピーダンスZrbのインピーダンス補正係数mと、位相θrbの位相補正値nとを算出する。また、新たな試料8についての周波数特性データ(測定周波数特性データ)DFbを測定したときには、測定周波数特性データDFbで示される各周波数でのインピーダンスZにインピーダンス補正係数mを乗算して補正インピーダンスZb1に補正し、かつ測定周波数特性データDFbで示される位相θに位相補正値nを加算して補正位相θb1に補正することにより、上記の他の測定装置で測定したときに得られるインピーダンスZa1および補正位相θa1に一致させ、このインピーダンスZa1および補正位相θa1(周波数特性データDFb1)に基づいて、新たな試料8の等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値DLb1,DCb1,DRb1を算出し、最後に、このパラメータ値DLb1,DCb1,DRb1に各パラメータ補正係数k,k,kを乗算することにより、上記の他の測定装置でこの試料8を測定したときに得られるパラメータ値DLa,DCa,DRaに一致するパラメータ値DLb,DCb,DRbに補正する。
【0043】
したがって、この測定装置1および等価回路パラメータ測定方法によれば、他の測定装置と同じ試料8についての等価回路のパラメータL,C,Rについてのパラメータ値を測定したときに、他の測定装置で測定されるパラメータ値DLa,DCa,DRaと同じ値のパラメータ値DLb,DCb,DRbを測定することができる。
【0044】
また、この測定装置1によれば、外部記憶媒体9に記憶されているデータを入力するインターフェース回路で入力部2を構成したことにより、他の測定装置において測定された基準試料8rについての周波数特性データDFra、およびこの他の測定装置においてこの周波数特性データDFraに基づいて算出された基準試料8rの等価回路についての各パラメータ値DLra,DCra,DRraが記憶されている外部記憶媒体9を入力部2に接続するだけで、この外部記憶媒体9を介して、他の測定装置での周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを短時間で、しかも簡易に入力することができる。
【0045】
なお、上記の例では、他の測定装置において測定された周波数特性データDFra、および基準試料8rの等価回路についての各パラメータ値DLra,DCra,DRraを1つの測定装置1に入力することにより、他の測定装置と同じ試料8についての等価回路のパラメータL,C,Rについてのパラメータ値を1つの測定装置1で測定したときに、他の測定装置で測定されるパラメータ値DLa,DCa,DRaと同じ値のパラメータ値DLb,DCb,DRbを測定できるように構成しているが、他の測定装置において測定された周波数特性データDFra、および各パラメータ値DLra,DCra,DRraを複数の測定装置に入力し、この複数の測定装置において上記した測定装置1と同様にして、試料8の等価回路についての各パラメータL,C,Rのパラメータ値を測定(算出)することにより、他の測定装置で測定されるパラメータ値DLa,DCa,DRaと同じ値のパラメータ値をこの複数の測定装置で測定できるように構成することもできる。
【0046】
また、上記の測定装置1や他の測定装置について、3つのパラメータL,C,Rを含む等価回路の各パラメータ値を算出する例を挙げて説明したが、3つのパラメータL,C,Rのうちの少なくとも1つを含む等価回路の各パラメータを算出する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 測定装置
2 入力部
3 測定部
6 処理部
8 試料
8r 基準試料
DFb 測定周波数特性データ
DFb1 補正周波数特性データ
DFra 入力周波数特性データ
DFrb 測定周波数特性データ
DLa,DCa,DRa パラメータ値
DLb,DCb,DRb パラメータ値
DLb1,DCb1,DRb1 パラメータ値
DLra,DCra,DRra パラメータ値
DLra1,DCra1,DRra1 パラメータ値
kL,kC,kR パラメータ補正係数
m インピーダンス補正係数
n 位相補正値
Za1 インピーダンス
Zb インピーダンス
Zb1 補正インピーダンス
Zra インピーダンス
Zrb インピーダンス
θa1 補正位相
θb 位相
θb1 補正位相
θra 位相
θrb 位相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の測定装置において測定された基準試料についての予め規定された各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データ、並びに当該他の測定装置において当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての各パラメータのパラメータ値をそれぞれ入力する入力部と、
測定対象の試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定する測定部と、
前記他の装置において測定された前記基準試料についての周波数特性データおよび算出された当該基準試料についての各パラメータ値を入力周波数特性データおよび入力パラメータ値として前記入力部を介して入力する入力処理、前記入力周波数特性データに基づいて、前記基準試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値で当該パラメータ値に対応する前記入力パラメータ値を除算することにより、当該各パラメータについてのパラメータ補正係数を算出するパラメータ補正係数算出処理、前記基準試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定周波数特性データとして前記測定部によって測定する周波数特性データ測定処理、前記入力周波数特性データで示される前記インピーダンスを前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスで除算することにより、前記各周波数におけるインピーダンスについてのインピーダンス補正係数を算出すると共に、前記入力周波数特性データで示される前記位相から前記測定周波数特性データで示される前記位相を減算することにより、前記各周波数における位相についての位相補正値を算出する特性データ補正係数算出処理とを実行する処理部とを備え、
前記処理部は、新たな試料についての前記各パラメータを算出する際に、
前記新たな試料について前記周波数特性データ測定処理を実行して、当該試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す前記測定周波数特性データを取得する周波数特性データ取得処理と、
前記取得した前記新たな試料についての前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスに前記インピーダンス補正係数を乗算して補正インピーダンスに補正し、かつ当該測定周波数特性データで示される前記位相に前記位相補正値を加算して補正位相に補正して、補正周波数特性データを算出する周波数特性データ補正処理と、
前記補正周波数特性データに基づいて前記新たな試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値に前記パラメータ補正値を乗算することにより、当該算出したパラメータ値を補正するパラメータ補正処理とを実行する等価回路パラメータ測定装置。
【請求項2】
前記入力部は、外部記憶媒体または電気通信回線を介して、前記他の測定装置において測定された前記基準試料についての前記周波数特性データ、および当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての前記各パラメータの前記パラメータ値を入力するインターフェース回路で構成されている請求項1記載の等価回路パラメータ測定装置。
【請求項3】
他の測定装置において測定された基準試料についての予め規定された各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データ、並びに当該他の測定装置において当該周波数特性データに基づいて算出された当該基準試料の等価回路についての各パラメータのパラメータ値を入力周波数特性データおよび入力パラメータ値としてそれぞれ入力する入力処理と、
前記入力周波数特性データに基づいて、前記基準試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値で当該パラメータ値に対応する前記入力パラメータ値を除算することにより、当該各パラメータについてのパラメータ補正係数を算出するパラメータ補正係数算出処理と、
前記基準試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す周波数特性データを測定周波数特性データとして測定する周波数特性データ測定処理と、
前記入力周波数特性データで示される前記インピーダンスを前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスで除算することにより、前記各周波数におけるインピーダンスについてのインピーダンス補正係数を算出すると共に、前記入力周波数特性データで示される前記位相から前記測定周波数特性データで示される前記位相を減算することにより、前記各周波数における位相についての位相補正値を算出する特性データ補正係数算出処理とを実行し、
新たな試料についての前記各パラメータを算出する際に、
前記新たな試料について前記周波数特性データ測定処理を実行して、当該試料について前記各周波数でのインピーダンスおよび位相を示す前記測定周波数特性データを取得する周波数特性データ取得処理と、
前記取得した前記新たな試料についての前記測定周波数特性データで示される前記インピーダンスに前記インピーダンス補正係数を乗算して補正インピーダンスに補正し、かつ当該測定周波数特性データで示される前記位相に前記位相補正値を加算して補正位相に補正して、補正周波数特性データを算出する周波数特性データ補正処理と、
前記補正周波数特性データに基づいて前記新たな試料の等価回路についての前記各パラメータのパラメータ値を算出すると共に、当該算出したパラメータ値に前記パラメータ補正値を乗算することにより、当該算出したパラメータ値を補正するパラメータ補正処理とを実行する等価回路パラメータ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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