説明

等速ジョイント用グリース組成物及び等速ジョイント

【課題】等速ジョイントを効率よく潤滑し、摩耗を低減し振動の発生を防止し得る等速ジョイント用グリース組成物、及びこれを封入した等速ジョイントを提供すること。
【解決手段】下記の成分を含有する等速ジョイント用グリース組成物。
(a)基油、
(b)ジウレア系増ちょう剤、
(c)パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤、
(d)次式で表される硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、
(R34N−CS−S)2−Mo2mn
(式中、R3及びR4は独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、mは0〜3、nは4〜1であり、m+n=4である。)
(e)亜鉛スルホネート、及び
(f)硫黄−リン系極圧添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ジョイント(CVJ)用グリース組成物及びこれを封入した等速ジョイントに関する。潤滑される等速ジョイント部分には、極めて高い面圧が発生し、ジョイント部分は、複雑なころがりすべり作用を受ける。このため、異常振動がしばしば発生する。本発明は、このような等速ジョイントを効率よく潤滑し、有効に摩擦を低減して振動の発生を防止し得る等速ジョイント用グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
このような等速ジョイントに用いられている潤滑グリースとしては、カルシウムコンプレックス石けんを増ちょう剤とするグリースや、リチウム石けんを増ちょう剤とし、例えば、硫化油脂、トリクレジルホスフェート、及びジチオリン酸亜鉛からなる群から選択された硫黄−リン系極圧剤を含有したグリースが挙げられる。
最近の自動車工業においては、車両の環境対策(CO2削減)を目的とした軽量化かつ居住空間の確保の点から、4輪駆動(FFタイプ)車が急激に増加し、これに不可欠な等速ジョイント(CVJ)が広く用いられている。このCVJの中で、プランジング型等速ジョイント、特にトリポート型等速ジョイント(TJ)、ダブルオフセット型等速ジョイント(DOJ)等は、ある角度の付いた状態で、回転時に複雑なころがりすべり運動を行うため、軸方向にスライド抵抗を生じ、これがアイドリング時の振動、発進及び加速時の車体の横揺れ、特定速度での車内でのビート音、又はこもり音の起振源となっている。この問題の解決のため、種々の等速ジョイント(CVJ)自体の構造の改良もなされているが、ジョイントの占めるスペース、重さ、及びコスト面でその改良は難しく、振動低減性能に優れたグリースが要求されている。
【0003】
このため、ウレア系増ちょう剤、二硫化モリブデン、及び 酸化ワックスのカルシウム塩、石油スルホン酸のカルシウム塩、アルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩、サリシレートのカルシウム塩、フェネートのカルシウム塩、酸化ワックスの過塩基性カルシウム塩、石油スルホン酸の過塩基性カルシウム塩、アルキル芳香族スルホン酸の過塩基性カルシウム塩、サリシレートの過塩基性カルシウム塩、及びフェネートの過塩基性カルシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する等速ジョイント用グリース組成物(特許文献1)や、さらにこれらの成分に加え、金属を含まない硫黄−リン系極圧剤、及びモリブデンジチオカーバメートを含有する等速ジョイント用グリース組成物(特許文献2)が提案されている。
また、基油、ジウレア系増ちょう剤、二硫化モリブデン、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、石油スルホン酸のカルシウム塩、硫黄−リン系極圧剤、及び植物性油脂を含有する等速ジョイント用組成物も提案されている(特許文献3)。
しかし、従来の等速ジョイント用グリース組成物は、その摩擦係数低減効果及び振動発生防止効果は必ずしも十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−194871
【特許文献2】特開平9−324189
【特許文献3】特開2006−96949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、等速ジョイント用グリース組成物、特に、等速ジョイントを効率よく潤滑し、有効に摩擦を低減し振動の発生を防止し得る等速ジョイント用グリース組成物、及びこれを封入した等速ジョイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、等速ジョイントの摩擦を低減し、振動を防止するグリース組成物の開発研究を種々行い、振動の発生し易い潤滑条件下で便用するグリースの性能評価を、振動摩擦摩耗試験機として知られるSRV試験機を用いて行った。その結果、等速ジョイントを起振源とした振動と、SRV試験機で測定した特定の振動条件下の摩擦係数に特別な関係があることを見いだした。さらに、本発明者等は、基グリースにウレアグリースを用いて、油性剤及び各種極圧剤等の様々な組み合わせによって、上述の関係を検討した。その結果、基油、ウレア系増ちょう剤、パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、亜鉛スルホネートおよび硫黄−リン系極圧剤を含有するグリース組成物が、低摩擦係数の望ましい潤滑特性を示すことを見いだし、さらに、実際の等速ジョイントを用いた強制力試験においても、従来の等速ジョイント用グリースとは異なり、振動の発生を顕著に防止し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記の等速ジョイント用グリース組成物及びこれを封入した等速ジョイントを提供するものである。
1.下記の成分を含有する等速ジョイント用グリース組成物。
(a)基油、
(b)ジウレア系増ちょう剤、
(c)パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤、
(d)次式で表される硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、
(R34N−CS−S)2−Mo2mn
(式中、R3及びR4は独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、mは0〜3、nは4〜1であり、m+n=4である。)
(e)亜鉛スルホネート、及び
(f)硫黄−リン系極圧添加剤。
2.ジウレア系増ちょう剤が次式で表されるジウレア系増ちょう剤であることを特徴とする上記1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
R1-NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2
(R1及びR2は独立して、炭素原子数8〜18のアルキル基である。)
3.パームオレインの沃素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であることを特徴とする上記1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
4.パームステアリンの沃素価が48以下及び上昇融点が44℃以上であることを特徴とする上記1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
5.全組成物中における各成分の含有量が、
(a)基油49.0〜98.65質量%、
(b)ジウレア系増ちょう剤1.0〜25.0質量%、
(c)油性剤0.1〜5.0質量%、
(d)硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン0.1〜5.0質量%、
(e)亜鉛スルホネート0.1〜15.0質量%、及び
(f)硫黄−リン系極圧添加剤0.05〜1.0質量%
である上記1又は2記載の等速ジョイント用グリース組成物。
6.プランジング型等速ジョイント用である上記1〜5のいずれか1項記載の等速ジョイント用グリース組成物。
7.上記1〜6のいずれか1項記載の等速ジョイント用グリース組成物を封入した等速ジョイント。
【発明の効果】
【0008】
本発明の等速ジョイント用グリース組成物は、等速ジョイントを効率よく潤滑し、有効に摩擦を低減し、振動の発生を顕著に防止し得る。また従来の等速ジョイント用グリース組成物と比較して耐ジョイントフレーキング特性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の等速ジョイント用グリース組成物について詳述する。
本発明のグリース組成物は、下記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、及び(f)を含有する。
(a)基油、
(b)ジウレア系増ちょう剤、
(c)パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤、
(d)次式で表される硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、
(R34N−CS−S)2−Mo2mn
(式中、R3及びR4は独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、mは0〜3、nは4〜1であり、m+n=4である。)
(e)亜鉛スルホネート、及び
(f)硫黄−リン系極圧剤
【0010】
上記(a)成分の基油としては、鉱物油、エーテル系合成油、エステル系合成油及び炭化水素系合成油等の通常に使用されている潤滑油またはそれらの混合油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。コストの点から、鉱物油を用いるのが好ましく、また、鉱物油を主成分とし、これに合成油を混合した基油を用いるのが好ましい。
上記基油の100℃における動粘度は、好ましくは5〜30mm2/sであり、より好ましくは7〜20mm2/sである。5mm2/s未満では、等速ジョイント(CVJ)内で油膜を形成せず高速耐久性が不充分となる傾向があり、30mm2/sを超えるとCVJ内の発熱のため高速耐久性が低下する傾向がある。
【0011】
上記(b)成分のジウレア系増ちょう剤は全て使用することができる。好ましくは、下記の式で表されるものが挙げられる。
R1-NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2
(R1及びR2は独立して、炭素原子数8〜18のアルキル基である。)
上記ジウレア系増ちょう剤は、ジフェニルメタンジイソシアネートと炭素数8〜18のアルキルアミン、例えば、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等との反応により得られる。上記ジイソシアネートとアミンとを反応させる方法には特に制限はなく、従来公知の方法により実施することができる。
【0012】
上記(c)成分の油性剤は、パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。特にパームオレイン、パームステアリンが好ましい。パームオレイン(palm olein)及びパームステアリン(palm stearin)は、一般的にアブラヤシの果肉(油脂含量16〜20%)から圧搾によって得られる油脂を分別し、必要な性状をもつ油脂分に分けたパーム分別油であり、潤滑作用に有効である。
パーム分別油には、低融点画分のパームオレインと高融点画分のパームステアリンがある。JAS規格では、パームオレインは酸価0.20以下、水分夾雑物0.1%以下、ヨウ素価56〜72、上昇融点24℃以下等となっており、パームステアリンは酸価0.20以下、水分夾雑物0.10%以下、ヨウ素価48以下、上昇融点44℃以上等となっている。また、パームオレインは40℃で清澄なもの、パームステアリンは60℃で清澄なものとなっている。
本発明のグリース組成物に使用するパームオレインは、好ましくは、ヨウ素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下のものであり、さらに好ましくはヨウ素価が60〜72及び上昇融点が20℃以下、最も好ましくはヨウ素価が65〜70及び上昇融点が13℃以下のものである。
本発明のグリース組成物に使用するパームステアリンは、好ましくはヨウ素価が48以下及び上昇融点が44℃以上のものであり、さらに好ましくはヨウ素価が22〜48及び上昇融点が44〜56℃のものである。
【0013】
上記(d)成分は、次式で表される硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンである。
(R34N−CS−S)2−Mo2mn
(式中、R3及びR4は独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、mは0〜3、nは4〜1であり、m+n=4である。)
3及びR4は、独立して、炭素数1〜24、好ましくは炭素数2〜18のアルキル基である。
上記(e)成分の亜鉛スルホネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは40mgKOH/g以下であり、例えば、塩基価50mgKOH/g以下のジノニルナフタレンスルホン酸の亜鉛塩が挙げられる。これらの亜鉛塩は、エンジン油等の潤滑油に用いられる金属系清浄分散剤や防錆剤として知られている、潤滑油留分中の芳香族炭化水素成分のスルホン化によって得られる。
【0014】
上記(f)成分の、硫黄−リン系極圧剤として好ましいものは、硫黄分15〜35重量%及びリン分0.5〜3質量%のものであり、硫黄成分とリン成分の比率を調整することにより、優れた摩耗防止性能や焼き付き防止性能を発揮させることができる。硫黄成分が上記範囲より多いとジョイントが腐食し易くなり、リン成分が上記範囲より多いとジョイントの摩耗防止効果が得られ難くなる。また両者とも上記範囲より少ない場合は、目的とする摩耗防止性能や焼き付き防止性能を十分に発揮させることが困難になる。
【0015】
本発明の等速ジョイント用グリース組成物において、等速ジョイント用グリース組成物の全質量に対して、(a)成分の基油の含有量は、好ましくは49.0〜98.65質量%、(b)成分のジウレア系増ちょう剤の含有量は、好ましくは1.0〜25.0質量%、さらに好ましくは5.0〜15.0質量%、(c)パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤の含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.5〜5.0質量%、(d)成分の硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンの含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.5〜5.0質量%、(e)成分のスルホン酸亜鉛の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%、さらに好ましくは1.0〜13.0質量%、(f)成分の硫黄−リン系極圧剤の含有量は、好ましくは0.05〜1.0質量%、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0016】
上記(b)成分のジウレア系増ちょう剤の含有量が1.0質量%未満であると、増ちょう効果が少なく、グリース化しにくくなり、25.0質量%を越えると、得られた組成物が硬くなりすぎ、所期の効果が得られなくなる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
上記(c)成分の油性剤の含有量が0.1質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、5.0質量%を越えて含有させても効果の増大がない場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
上記(d)成分の硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンの含有量が0.1質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、5.0質量%を越えて含有させても効果の増大がない場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
上記(e)成分のスルホン酸亜鉛の含有量が0.1質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、15.0質量%を越えて含有させても効果の増大がない場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
上記(f)成分の硫黄−リン系極圧剤の含有量が0.05質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、1.0質量%を越えて含有させても効果の増大がない場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0017】
本発明の等速ジョイント用グリース組成物には、上記(a)〜(f)成分に加え、更に各種潤滑油やグリースに一般的に用いられている酸化防止剤、防錆剤、ポリマー添加剤を添加することができる。また、上記成分以外の極圧剤、摩擦緩和剤、耐摩耗剤及び固体潤滑剤等の添加剤を添加することができる。上記添加剤を添加する場合、その含有量は、等速ジョイント用グリース組成物の全質量中、好ましくは0.1〜10.0質量%である。
【0018】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
容器に基油440gとジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート58.9gをとり、混合物を70〜80℃に加熱した。別容器に基油440gとオクチルアミン61.1gをとり、70〜80℃に加熱後、先の容器に加え、よく攪拌しながら、30分間反応させた。その後攪拌しながら、160℃まで昇温し、放冷後、ベース脂肪族アミンジウレアグリースを得た。このベースグリースに、表1に示す配合で、添加剤を添加し、適宜基油を加え、得られる混合物を三段ロールミルにて、ちょう度No. 1 グレードに調整した。
グリースの基油として、以下の特性を有する鉱油を使用した。
粘度 40℃ 157 mm2/s
100℃ 14 mm2/s
粘度指数 88
【0019】
表1及び表2に実施例1〜13及び表3〜表5に比較例1〜24を示す。
実施例1〜13において、各々の成分(c)、成分(d)、成分(e)、成分(f)を添加しなかった他は同様にした比較例1〜23のグリースを調製した。
比較例24は市販のMoDTCを含有するウレアグリースである。
なお、表中に示す各成分は以下のとおりであり、表中の数字は質量%を示す。
MoDTC(硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン):商品名サクラルーブ600(旭電化工業社製)
パームオレイン :パームオレイン100%、沃素価66〜70、上昇融点13℃以下
パームステアリン:パームステアリン100%、沃素価22〜48、上昇融点44〜56℃
亜鉛スルホネート :ジノニルナフタレンスルホン酸亜鉛(塩基価50mgKOH/g以下)
硫黄−リン系極圧添加剤 :商品名:ルブリゾール810(日本ルブリゾール社製)
【0020】
上記等速ジョイント用グリース組成物につき、以下に示す試験方法で物性の評価を行った。
SRV試験
テストピース ボール :直径17.5mm(SUJ2)
プレート:直径24mm×7.85mm(SUJ2)
試験条件 荷重 :200N
周波数 :50Hz
振幅 :0.8mm
時間 :10分
試験温度:40℃
測定項目 摩擦係数(μ)
強制力試験
下記条件にて実ジョイントでの強制力試験を行い、強制力を測定した。
試験条件 回転数:200rpm
トルク:500Nm
ジョイント角度:10°
運転時間:2min.
ジョイントタイプ:トリポート型等速ジョイント
測定項目 ジョイント強制力を測定し、市販ウレアグリースを基準としての増減率(%)で評価した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【0026】
成分(c)〜(f)を含有する本発明の実施例1〜13のグリース組成物は、成分(c)〜(f)のいずれかの成分を含まない比較例1〜20のグリース組成物および比較例21の市販品と比較して、著しい摩擦係数低減効果及び振動発生防止効果を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含有する等速ジョイント用グリース組成物。
(a)基油、
(b)ジウレア系増ちょう剤、
(c)パームオレイン、パームステアリン及びグリセリンモノオレエートからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性剤、
(d)次式で表される硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、
(R34N−CS−S)2−Mo2mn
(式中、R3及びR4は独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、mは0〜3、nは4〜1であり、m+n=4である。)
(e)亜鉛スルホネート、及び
(f)硫黄−リン系極圧添加剤。
【請求項2】
ジウレア系増ちょう剤が次式で表されるジウレア系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
R1-NH-CO-NH-C6H4-p-CH2-C6H4-p-NH-CO-NHR2
(R1及びR2は独立して、炭素原子数8〜18のアルキル基である。)
【請求項3】
パームオレインの沃素価が56〜72及び上昇融点が24℃以下であることを特徴とする請求項1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項4】
パームステアリンの沃素価が48以下及び上昇融点が44℃以上であることを特徴とする請求項1記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項5】
全組成物中における各成分の含有量が、
(a)基油49.0〜98.65質量%、
(b)ジウレア系増ちょう剤1.0〜25.0質量%、
(c)油性剤0.1〜5.0質量%、
(d)硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン0.1〜5.0質量%、
(e)亜鉛スルホネート0.1〜15.0質量%、及び
(f)硫黄−リン系極圧添加剤0.05〜1.0質量%
である請求項1又は2記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項6】
プランジング型等速ジョイント用である請求項1〜5のいずれか1項記載の等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の等速ジョイント用グリース組成物を封入した等速ジョイント。

【公開番号】特開2011−37950(P2011−37950A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184663(P2009−184663)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】