説明

等速自在継手用グリース絞出し容器及び等速自在継手用グリース絞出し方法

【課題】内部に収容されたグリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる等速自在継手用グリース絞出し容器及び等速自在継手用グリース絞出し方法を提供する。
【解決手段】グリースの出入を許容する出入口部2と、グリースの出入を規制する底部3と、出入口部2と底部3との間に設けられ、グリースが収容されると共に底部3の出入口部側への折り返し状態で出入口部側への移動によるグリースの出入口部2からの押し出しを許容する胴部1とを備えた等速自在継手用グリース絞出し容器である。出入口部2は、胴部1から外方向に向かって縮径する円錐台部5と、円錐台部5の先端先細部から突出する短円筒部6とから構成される。底部3の非折り返し状態では、胴部1の中心Oを通る横断面Hに関してほぼ対称とした。絞出し最終状態において、折り返し状態の底部3が出入口部内に嵌合状となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容されたグリースを絞出す等速自在継手用グリース絞出し容器及び等速自在継手用グリース絞出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械や自動車用部品には、各部品の接触面を滑らかに摺動させて部品の摩擦や摩耗を減らすためにグリースが使用される。グリースが収容される容器として、硬質の材料で形成されたものは、使用後も容器の内側にグリースが残る。この場合、資源の浪費となっていた。また、出入口部と、底部と、蛇腹状の胴部とを備えた容器も提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の容器は、胴部が上下方向に伸縮する蛇腹部を有しており、蛇腹を縮めることによりグリースを外部に出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−352359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたものであっても、使用後、グリース残量は多く、また容器も使い捨てで廃却処理が必要となっていた。このため、残ったグリースが資源の浪費となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、内部に収容されたグリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる等速自在継手用グリース絞出し容器及び等速自在継手用グリース絞出し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の等速自在継手用グリース絞出し容器は、グリースの出入を許容する出入口部と、グリースの出入を規制する底部と、前記出入口部と底部との間に設けられ、底部の非折り返し状態でグリースが収容されると共に底部の出入口部側への折り返し状態で出入口部側への移動によるグリースの出入口部からの押し出しを許容する胴部とを備えた等速自在継手用グリース絞出し容器であって、前記出入口部は、胴部から外方向に向かって縮径する円錐台部と、この円錐台部の先端先細部から突出する短円筒部とから構成され、底部の非折り返し状態では、胴部の中心を通る横断面に関してほぼ対称とし、絞出し最終状態において、折り返し状態の底部が出入口部内に嵌合状としたものである。
【0007】
本発明の等速自在継手用グリース絞出し容器によれば、非折り返し状態では、胴部の中心を通る横断面に関してほぼ対称とするとともに、使用中では底部の反転を可能としたことにより、底部が外応力によって反転して胴部内に入り込む。これにより、底部を出入口部側に移動させながら、内部に収容されたグリースを外部に出すことができる。その後、絞出し最終状態において、折り返し状態の底部が出入口部内に嵌合状とすることができる。すなわち、最終状態においては、反転した底部の内面は出入口部の内面に隙間無く沿うことになり、底部の内面が出入口部の内面と重なり合うものとすることができる。これにより、最終状態において、内部に収容されたグリースが全て外部に出ることになる。また、出入口部は、胴部から外方向に向かって縮径する円錐台部と、この円錐台部の先端先細部から突出する短円筒部とから構成しているので、底部の短円筒部が底部近傍のグリースを押圧するとともに、出入口部近傍のグリースは円錐台部にてガイドされる。
【0008】
前記胴部を円筒状としたり、球体状としたり、楕円筒形としたり、角筒としたりすることができる。この場合、胴部の内面及び外面をストレート状とすることができる。従来では胴部を蛇腹状としていたため、変形し易くグリースが内部に残留していたのに対し、ストレート状とすると変形しにくく、グリースが内部に残留しにくくなる。
【0009】
前記グリースは流動性を有し、特に、補給部品用グリースとするのが好ましい。
【0010】
本発明の等速自在継手用グリース絞出し方法は、グリースの出入を許容する出入口部と、グリースの出入を規制する底部と、前記出入口部と底部との間に設けられ、底部の非折り返し状態でグリースが収容される胴部とを備えた絞出し容器の等速自在継手用グリース絞出し方法であって、底部を折り返して胴部内へ嵌入し、その後、この折り返し状態の底部を順次出入口部側へ移動させて内部のグリースを出入口部側から押し出し、最終的に折り返し状態で底部を出入口部内に嵌合させるものである。
【0011】
最終状態において、折り返し状態の底部と出入口部とが密接状とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、底部を出入口部側に移動させながら内部に収容されたグリースを外部に出すことができるため、最終状態において、グリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる。また、胴部の中心を通る横断面に関してほぼ対称としているため、安定性、取扱性が向上するとの利点もある。しかも、出入口部を円錐台部と短円筒部とから構成すると、底部の短円筒部が底部近傍のグリースを押圧するとともに、出入口部近傍のグリースは円錐台部にてガイドされて、グリースを外部にスムーズに出すことができる。
【0013】
前記底部及び出入口部の形状や、胴部の形状を種々のものとすることができ、汎用性に優れたものとなる。
【0014】
前記グリースは、流動性を有するものであると、底部が反転するとグリースがスムーズに出入口部側に移動して、一層効果的である。特に、補給部品用グリースとすると、グリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態を示す等速自在継手用グリース絞出し容器の使用前の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す等速自在継手用グリース絞出し容器の使用途中を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す等速自在継手用グリース絞出し容器の使用後を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す等速自在継手用グリース絞出し容器の使用前の斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示す等速自在継手用グリース絞出し容器の使用前の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器を示し、この絞出し容器は、材質として、例えば、ポリエチレンから構成され、円柱状の胴部1と、胴部1の一端部に配設される出入口部2と、胴部1の他端部に配設される底部3とを備えている。絞出し容器の内部には、産業機械又は自動車部品用の補給部品用グリース(図示省略)が収容されている。
【0018】
胴部1は、所定寸法を有する円筒体4から構成され、一端部と他端部とが開口状となっている。胴部1の内面及び外面はストレート状となっている。
【0019】
出入口部2は、胴部1の一端部から外側に向かって縮径する円錐台部5と、この円錐台部5から突出する短円筒部6とから構成される。そして、この短円筒部6を介して内部に収容されたグリースを外部に出したり、外部のグリースを内部に収容したりすることができる。また、短円筒部6の外周面には溝10が形成されており、この溝10に図示省略のキャップが係合する。これにより、短円筒部6の開口部を覆うことができる。
【0020】
底部3は、胴部1の他端部から外側に向かって縮径する円錐台部7と、この円錐台部7から突出する短円筒部8とから構成される。また、図2(a)、(b)に示すように、使用中では、底部3は出入口部側へ折り曲げられて、底部3の外面3aと内面3bとは反転が可能となっている。
【0021】
図1に示すような使用前(底部3の非折り返し状態)では、絞出し容器は、絞り出し容器の中心Oを通る横断面Hに対してほぼ対称となっている。また、図2(a)、(b)に示すような使用中(底部3の折り返し状態)では、出入口部2の内面2bと底部3の内面3bとの形状は相似形をなし、底部3の内面3bの形状は、出入口部2の内面2bの形状よりも小さくしている。
【0022】
図示省略のグリースは、主に前記円錐台部5、7と、胴部1と、短円筒部8の内側に収容されている。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態に係る等速自在継手用グリース絞出し容器の使用方法について説明する。まず、使用前では、図1に示すように、底部3の短円筒部8及び円錐台部7とが、胴部1の他端部から反出入口部側に突出している。そして、図2(a)、(b)に示すように、胴部1を介して底部3を折り返して底部3の外面3a及び内面3bを反転させる。すなわち、胴部1の他端部近傍を屈曲させて、底部3を胴部内に入り込ませる。これにより、底部3の短円筒部8が底部近傍のグリースを押圧するとともに、出入口部近傍のグリースは円錐台部5にてガイドされて出入口部近傍のグリースは外部へ出る。
【0024】
このようにして、図2(a)の矢印に示すように、底部3を出入口部側へ移動させることにより内部に封入されたグリースを外部に出すことができる。そして、最終的には、図3(a)、(b)に示すように、底部3が出入口部内に嵌合状となって、底部3の内面3bが出入口部2の内面2bと重なり合うものとすることができる。すなわち、出入口部2の短円筒部6の内面6bと、底部3の短円筒部8の内面8bとが重なり合い、出入口部2の円錐台部5の内面5bと、底部3の円錐台部7の内面7bとが重なり合い、胴部1の内面同士が重なり合う。このとき、底部3の内面3bの形状は出入口部2の内面2bの形状にほぼ沿うことになり、反転箇所と胴部1の内面との間に隙間が形成されるのを防止でき、内部に収容されたグリースが全て外部に出ることになる。
【0025】
このように、本発明の等速自在継手用グリース絞出し容器では、底部3を出入口部側に移動させながら、内部に収容されたグリースを外部に出すことができるため、最終状態において、グリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる。また、胴部1の中心Oを通る横断面Hに関してほぼ対称としているため、安定性、取扱性が向上するとの利点もある。
【0026】
前記底部3が反転した状態で、最終的に、反転した底部3は出入口部2にほぼ沿ったものとすると、反転箇所と胴部1の内面との間に隙間が形成されるのを防止でき、一層グリースの残量をほぼ無くすことができる。
【0027】
出入口部2の内面を、円錐台部5と短円筒部6とから構成すると、底部3の短円筒部8が底部近傍のグリースを押圧するとともに、出入口部近傍のグリースは円錐台部5にてガイドされて、グリースを外部にスムーズに出すことができる。また、本発明では、胴部1をストレート状としている。従来では胴部1を蛇腹状としていたため、変形し易くグリースが内部に残留していた。これに対し、ストレート状とすることにより変形しにくく、グリースが内部に残留しにくくなる。
【0028】
前記グリースは、流動性を有するものであると、底部3が反転するとグリースがスムーズに出入口部側に移動して、一層効果的である。特に、補給部品用グリースとすると、グリースの残量をほぼ無くすことができて、資源の浪費を防止することができる。
【0029】
次に、第2実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器として、胴部1の形状を楕円筒状としている。また、図4は第3実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器であり、胴部1の形状を球体状としている。図5は第4実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器であり、胴部1を断面矩形の角筒としている。このように、第2実施形態〜第4実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器も、底部3が反転して胴部内に入り込み、底部3を出入口部側に移動させながら、内部に収容されたグリースを外部に出すことができる。その後、絞出し最終状態において、折り返し状態の底部3が出入口部内に嵌合状とすることができる。このため、前記第1実施形態の等速自在継手用グリース絞出し容器と同様の作用効果を奏する。特に、底部3及び出入口部2の形状や、胴部1の形状を種々のものとすることができ、汎用性に優れたものとなる。なお、図4〜図5の等速自在継手用グリース絞出し容器において、図1〜図3と同一の構成については、図1〜図3と同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、胴部1を角筒とする場合は断面矩形に限られず、三角形、五角形以上の多角形とすることもできる。材質としては、底部3を反転させることができるものであれば、種々の材質を適用することができる。胴部1、出入口部2、底部3の材質は、全て同一のものから構成してもよく、いずれかのみを相違させたり、全てを相違させたりすることもできる。胴部1の長さ、太さ、出入口部2や底部3の大きさは、収容するグリース量の使用状況に合わせて任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 胴部
2 出入口部
3 底部
5 円錐台部
6 短円筒部
O 中心
H 横断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリースの出入を許容する出入口部と、グリースの出入を規制する底部と、前記出入口部と底部との間に設けられ、底部の非折り返し状態でグリースが収容されると共に底部の出入口部側への折り返し状態で出入口部側への移動によるグリースの出入口部からの押し出しを許容する胴部とを備えた等速自在継手用グリース絞出し容器であって、
前記出入口部は、胴部から外方向に向かって縮径する円錐台部と、この円錐台部の先端先細部から突出する短円筒部とから構成され、
底部の非折り返し状態では、胴部の中心を通る横断面に関してほぼ対称とし、絞出し最終状態において、折り返し状態の底部が出入口部内に嵌合状となることを特徴とする等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項2】
前記胴部を円筒状としたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項3】
前記胴部を楕円筒形としたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項4】
前記胴部を角筒としたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項5】
前記胴部を球体状としたことを特徴とする請求項1の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項6】
胴部の内面及び外面をストレート状としたことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項7】
前記グリースは、流動性を有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項の等速自在継手用グリース絞出し容器。
【請求項8】
グリースの出入を許容する出入口部と、グリースの出入を規制する底部と、前記出入口部と底部との間に設けられ、底部の非折り返し状態でグリースが収容される胴部とを備えた絞出し容器の等速自在継手用グリース絞出し方法であって、
底部を折り返して胴部内へ嵌入し、
その後、この折り返し状態の底部を順次出入口部側へ移動させて内部のグリースを出入口部側から押し出し、
最終的に折り返し状態で底部を出入口部内に嵌合させることを特徴とする等速自在継手用グリース絞出し方法。
【請求項9】
最終状態において、折り返し状態の底部と出入口部とが密接状となることを特徴とする請求項8の等速自在継手用グリース絞出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240936(P2011−240936A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112259(P2010−112259)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】