説明

筋萎縮性側索硬化症および他の脊髄障害のための遺伝子治療

この開示は、対象において運動機能および制御に影響を及ぼす障害または損傷を処置するための方法および組成物を提供する。1つの態様において、導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを脳に投与することによって、本発明の導入遺伝子産物は対象の脊髄に送達される。ウイルス性ベクターは、ウイルスによる感染に影響されやすく、かつコードされている組換えウイルス性遺伝子産物を発現する脳の領域に導入遺伝子を送達する。また、導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを投与することによって導入遺伝子産物を対象の脊髄に送達するための組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の運動機能、特に脳および/または脊髄に対する疾患または損傷によって影響を及ぼされる運動機能に影響を及ぼす障害を処置するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす障害のための新たな処置様式である。CNSの遺伝子治療は、有糸分裂後のニューロンに効率的に感染できるウイルス性ベクターの開発によって、容易になっている。中枢神経系は、脊髄および脳で構成されている。脊髄は、末梢神経系から脳に感覚情報を伝導し、脳から種々のエフェクターに運動情報を伝導している。中枢神経系への遺伝子送達のためのウイルス性ベクターの概説のために、Davidson et al. (2003) Nature Rev. 4:353 364を参照のこと。
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、好ましい毒性および免疫原性プロファイルを有しており、神経細胞に形質導入でき、かつCNSにおいて長期の発現を媒介できるので、CNSの遺伝子治療に有用であると考えられている(Kaplitt et al. (1994) Nat. Genet. 8:148 154; Bartlett et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1181 1186; and Passini et al. (2002) J. Neurosci. 22:6437 6446)。
【0004】
AAVベクターの有用な特性の1つは、神経細胞において逆行性および/または非逆行性の輸送を経るいくつかのAAVの能力にある。1つの脳領域中のニューロンは遠位の脳領域に軸索によって相互接続されており、それによってベクター送達のための輸送システムを提供している。例えば、AAVベクターを、ニューロンの軸索終末またはその周辺に投与してもよい。ニューロンはAAVベクターを内部移行させ、軸索に沿って細胞体に逆行性のやり方でAAVベクターを輸送している。アデノウイルス、HSVおよび仮性狂犬病ウイルスの類似の特性が、脳内の遠位の構造に遺伝子を送達することが示されている(Soudas et al. (2001) FASEB J. 15:2283 2285; Breakefield et al. (1991) New Biol. 3:203 218;およびdeFalco et al. (2001) Science, 291:2608 2613)。
【0005】
いくつかのグループが、AAV血清型2(AAV2)による脳の形質導入が脳内の注入部位に限られていることを報告している(Kaplitt et al. (1994) Nat. Genet. 8:148 154; Passini et al. (2002) J. Neurosci. 22:6437 6446;およびChamberlin et al. (1998) Brain Res. 793:169 175)。近年の報告は、神経栄養ウイルス性ベクターの逆行性軸索輸送が、正常なラットの脳の選択回路にも生じ得ることを示唆している(Kaspar et al. (2002) Mol. Ther. 5:50 56 (AAVベクター);Kasper et al. (2003) Science 301:839-842 (レンチウイルスベクター)およびAzzouz et al. (2004) Nature 429:413-417 (レンチウイルスベクター)。Roaul et al. (2005) Nat. Med. 11(4):423-428およびRalph et al. (2005) Nat. Med. 11(4):429-433は、サイレンシングのためのヒトCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)干渉RNAを発現するレンチウイルスの筋肉内注射が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療上関連する齧歯動物モデルにおいてALSの疾患発症を遅らせたことを報告している。
【0006】
AAVベクターによって形質導入されている細胞は、酵素または神経栄養因子などの治療用導入遺伝子産物を発現し、細胞内で有益な効果を媒介し得る。これらの細胞はまた治療用導入遺伝子産物を分泌し、続いて、治療用導入遺伝子産物は遠位の細胞に取り込まれ、そこでその有益な効果を媒介し得る。このプロセスは、クロスコレクション(cross correction)として記載されている(Neufeld et al. (1970) Science 169:141-146)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ヒト患者において運動機能の減少をもたらす脊髄の機能障害を処置するための組成物および方法は、依然として必要とされている。本発明は、この必要性を満たすものであり、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、IGF−1導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターの脳室内投与によって、対象の脊髄および/または脳幹領域に導入遺伝子を送達するための方法および組成物を提供する。ウイルス性送達は、上衣細胞における導入遺伝子の発現に有利な条件下であってもよい。
【0009】
本発明は、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択される導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターの脳室内投与によって、対象の脊髄および/または脳幹領域に導入遺伝子を送達するための方法および組成物を提供する。ウイルス性送達は、上衣細胞における導入遺伝子の発現に有利な条件下であってもよい。
【0010】
本発明は、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択される少なくとも2つの導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターの脳室内(側脳室内またはICVとしても知られている)投与によって、対象の脊髄および/または脳幹領域に導入遺伝子を送達するための方法および組成物を提供する。1つの実施態様において、組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、IGF−1およびVEGFを含む。ウイルス性送達は、上衣細胞における導入遺伝子の発現に有利な条件下であってもよい。表1〜3は、本発明において有用な導入遺伝子対の可能な組合せを提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、導入遺伝子の発現に有利な条件下、治療用導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを治療有効量で対象の脳に投与することによって、対象での運動ニューロン障害の症状を寛解させるための組成物および方法を提供する。
【0012】
ここまでの一般的な記載および以下の詳細な説明はともに例示的かつ説明的なだけであって、本発明を限定するものではないことを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ベータ−ガラクトシダーゼをコードするAAV4とIGF1をコードするAAV4の脳室内投与を比較するカプラン・マイヤー生存曲線を示す。生存率において有意な差が観察された。レシピエントはSODマウスであった。
【図2】図2は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Lac Z)をコードするAAV4対IGF1をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の前肢強度の比較を示す。IGF1レシピエントでは、より漸進的にかつよりゆっくりと強度が減少した。
【図3】図3は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Lac Z)をコードするAAV4対IGF1をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の後肢強度の比較を示す。IGF1レシピエントでは、より漸進的にかつより遅くに強度が減少した。
【図4】図4は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Lac Z)をコードするAAV4対IGF1をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間のロータロッド(落下までの待ち時間)の比較を示す。IGF1レシピエントでは、より漸進的にかつより遅くに下降した。
【図5】図5は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Lac Z)をコードするAAV4対IGF1をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の体重の減少の比較を示す。IGF1レシピエントでは、より漸進的にかつより遅くに体重が減少した。
【図6】図6は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Bgal)をコードするAAV4対IGF1をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の脳幹におけるGFAP染色の比較を示す。AAV4−IGF1処理マウスにおけるGFAP染色の減少によって証明されるように、AAV4−IGF1の脳室内送達は脳幹内のアストログリオシス(astrogliosis)の減少を導いた。
【図7】図7は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Bgal)をコードするAAV4対IGF1コードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の腹側脊髄におけるGFAP染色の比較を示す。AAV4−IGF1処理マウスにおけるGFAP染色の減少によって証明されるように、AAV4−IGF1の脳室内送達は腹側脊髄内のアストログリオシス(astrogliosis)の減少を導いた。
【図8】図8は、ベータ−ガラクトシダーゼ(Bgal)をコードするAAV4対IGF1コードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウスでのニトロチロシンレベルの比較を示す。AAV4−IGF1処理マウスにおける染色の減少によって証明されるように、AAV4−IGF1の脳室内送達は頸部、胸部、腰部および仙椎などの脊髄中のニトロチロシンレベルの減少を導いた。
【図9】図9は、AAV4−GFPで処理したマウスでの緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を示す。GFPは、AAV4−GFPの脳室内送達の後で、脳室系の上衣細胞層に分布している。
【図10】図10は、AAV4−GFPで処理したマウスでの緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を示す。GFPは、AAV4−GFPの脳室内送達の後で脊髄中心管の上衣細胞層に分布している。
【図11】図11Aは、AAV4−IGF−1の脳室内注入で処理したSODマウスの組織に対して行ったRT−PCRの結果を示す。内部コントロールとして、B−アクチンを測定した。脳室内送達の後で、皮質、脳幹および脊髄中でベクターが検出された。図11Bは、AAV4−VEGFの脳室内注入で処理したSODマウスの組織に対して行ったRT−PCRの結果を示す。内部コントロールとして、B−アクチンを測定した。AAV4−VEGFの脳室内送達の後で、皮質、脳幹および脊髄中でベクターが検出された。
【図12】図12は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするAAV4またはVEGF165をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSOD1マウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。AAV4−VEGFを受けているマウスでは、生存期間中央値の有意な増加が観察された。
【図13】図13は、GFPをコードするAAV4対VEGF165をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間のロータロッド(落下までの待ち時間)の比較を示す。VEGF165レシピエントでは、より漸進的にかつより遅くに下降した。図13はまた、GFPをコードするAAV4対VEGF165をコードするAAV4の脳室内投与を受けたSODマウス間の後肢強度の比較を示す。VEGF165レシピエントでは、より漸進的にかつより遅くに強度が減少した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
表1〜3は、本発明において使用可能な多数の遺伝子対を提供し、実施態様は2つ以上の遺伝子を利用する。
【0015】
本発明がより容易に理解され得るように、まず特定の用語を定義する。詳細な説明において、さらなる定義を説明する。
【0016】
本発明の実施は、他に示さない限り、当該分野において公知の免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を用いる。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd edition (1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (1987));the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL,およびNIMAL CELL CULTURE (R.I. Freshney, ed. (1987))を参照のこと。
【0017】
明細書および特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明確に示さない限り、複数形への言及を含む。例えば、用語「細胞」は、その混合物を含む、多数の細胞を含む。
【0018】
本明細書で使用する用語「含む」は、記載の成分を含むが、他の成分を排除しない組成物および方法を意味することを意図している。組成物および方法を定義するために使用する場合、「〜から実質的になる」は、組成物にとって実質的に重要な他の成分を排除することを意味している。従って、本明細書で定義する成分から実質的になる組成物は、単離および精製方法由来の微量の夾雑物、ならびにリン酸緩衝化生理食塩水、保存料などの医薬上許容される担体を排除しない。「〜からなる」は、他の成分のうちの微量成分、および本発明の組成物を投与する実質的な方法工程以上のものを排除する。これらの転換用語によってそれぞれ定義する実施態様は、本発明の範囲内である。
【0019】
範囲を含む、pH、温度、時間、濃度および分子量などの全ての数字による指示は、(+)または(−)に0.1変動する近似値である。常に明確に記載していないが、全ての数字による指示に用語「約」が先行することが理解されるべきである。また、常に明確に記載していないが、本明細書に記載の試薬は単に例示であって、同等のものが当該分野において知られていることも理解されるべきである。
【0020】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、RNAに転写され得、所望により、適切な条件下で翻訳され、および/または発現されるポリヌクレオチドをいう。1つの態様において、導入遺伝子は、導入された細胞に所望の特性を与えるか、さもなければ所望の治療または診断結果をもたらす。
【0021】
ウイルス価に関連して使用する用語「ゲノム粒子(gp)」または「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー(gc)」は、感染性または機能性にかかわらず、組換えAAV DNAゲノムを含むビリオン数をいう。特定のベクター調製物中のゲノム粒子数を、本明細書の実施例、またはClark et al. (1999) Hum. Gene Ther., 10:1031 1039; Veldwijk et al. (2002) Mol. Ther., 6:272 278に記載のような手順によって測定してもよい。
【0022】
ウイルス価に関連して使用する用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」は、例えばMcLaughlin et al. (1988) J. Virol., 62:1963 1973に記載の感染中心アッセイ(infectious center assay)(複製中心アッセイとしても知られている)によって測定される、感染性でかつ複製コンピテントの組換えAAVベクター粒子の数をいう。
【0023】
ウイルス価に関連して使用する用語「形質導入単位(tu)」は、本明細書の実施例、または、例えばXiao et al. (1997) Exp. Neurobiol., 144:113 124;もしくはFisher et al. (1996) J. Virol., 70:520 532 (LFUアッセイ)に記載されるような機能アッセイにおいて測定される機能性の導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数をいう。
【0024】
用語「治療用」、「治療有効量」およびその類語は、対象において発症の予防もしくは遅延、または症状の寛解、または、例えばALSなどの運動ニューロンの疾患に関連する細胞病理などの神経病理の是正などの所望の生物学的結果の達成をもたらすRNA、DNA、またはDNAおよび/またはRNAの発現産物の量をいう。用語「治療上の是正」は、対象において発症の予防もしくは遅延、または症状の寛解をもたらす是正の程度をいう。有効量は、公知の実験方法によって決定してもよい。
【0025】
組成物はまた、有効成分と、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、疎水性溶剤、保存料、アジュバントなど不活性であるか(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性である化合物または組成物などの別の担体との組合せを含むことを意図している。担体はまた、医薬賦形剤および添加タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖およびオリゴ糖を含む糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖;多糖または糖ポリマー)を含み、これらは単独で存在するかまたは組み合わせて存在してもよく、単独または1〜99.99%重量または容量の組合せを含む。例示的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)などの血清アルブミン、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝化能力においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体成分としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。炭水化物賦形剤もまた本発明の範囲内であることが意図され、その例としては、限定するものではないが、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖;ラフィノース、デキストラン、デンプンなどの多糖;ならびにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール ソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールが挙げられる。
【0026】
用語「担体」はさらに、緩衝剤またはpHを調整するための薬剤を含み;代表的には、緩衝剤は有機酸または塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸の塩などの有機酸塩;Tris、塩酸トロメタミンまたはリン酸緩衝剤が挙げられる。さらなる担体としては、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2−ヒドロキシプロピル-.クアドラツル.-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香料、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」および「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、ならびにキレート剤(例えば、EDTA)が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用する用語「医薬上許容される担体」は、リン酸緩衝化生理食塩水、水、ならびに油/水または水/油乳濁液などの乳濁液、ならびに種々の型の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれをも含む。組成物はまた、インビボでの使用に許容されるというさらなる条件下で、安定化剤および保存料および上記の担体のいずれかを含み得る。担体、安定化剤およびアジュバントの例として、Martin REMINGTON’S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975)およびWilliams & Williams, (1995)、ならびにthe “PHYSICIAN’S DESK REFERENCE”, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)を参照のこと。担体としてはまた、人工脳脊髄液(aCSF)が挙げられる。
【0028】
本明細書にて、「対象」、「個体」または「患者」を互換的に使用しており、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトをいう。哺乳動物としては、限定するものではないが、マウス、ラット、サル、ヒト、家畜、競技動物およびペットが挙げられる。
【0029】
「コントロール」は、比較のために実験において使用する代替の対象またはサンプルである。コントロールは、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が遺伝子の発現レベルの変化と特定の型の病理(例えば、ALS(下記))との相関を決定することである場合、陽性コントロール(そのような変化を有し、その疾患の症状の特徴を示す対象または対象由来のサンプル)および陰性コントロール(発現の変化およびその疾患の臨床症状を欠く対象または対象由来のサンプル)を使用することが一般的に好ましい。
【0030】
遺伝子について用いられる「差次的に発現される」は、遺伝子から転写されたmRNAまたは遺伝子よってコードされるタンパク質産物の差次的な産生をいう。差次的に発現される遺伝子は、正常またはコントロール細胞の発現レベルと比較して、過剰発現されるか、または低発現され得る。1つの態様において、差次的に発現される遺伝子は、コントロールサンプルにて検出される発現レベルより少なくとも1.5倍、または少なくとも2.5倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍高くかまたは低く差次的に発現される遺伝子をいう。用語「差次的に発現される」はまた、コントロール細胞にてサイレントである場合発現しているか、またはコントロール細胞にて発現している場合発現していない細胞または組織中のヌクレオチド配列をいう。
【0031】
本明細書で使用する用語「調節する」は、例えば、増強、増大、減少または低減させるなどの効果または結果の量または強度を変化させることを意味する。
【0032】
本明細書で使用する用語「寛解させる」は、軽減と同義であって、低減または軽減することを意味する。例えば、対象をより耐えられるようにすることによって、疾患または障害の症状を改善し得る。
【0033】
ヒト脳における構造の同定のために、例えば、The Human Brain: Surface, Three Dimensional Sectional Anatomy With MRI, and Blood Supply, 2nd ed., eds. Deuteron et al., Springer Vela, 1999;Atlas of the Human Brain, eds. Mai et al., Academic Press; 1997;およびCo Planar Stereotaxic Atlas of the Human Brain: 3 Dimensional Proportional System: An Approach to Cerebral Imaging, eds. Tamarack et al., Thyme Medical Pub., 1988を参照のこと。マスス脳における構造の同定のために、例えば、The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates, 2nd ed., Academic Press, 2000を参照のこと。
【0034】
組換えウイルス性ベクターの側脳室内または脳室内送達は、脳脊髄液(CSF)で満たされている脳室のいずれか1つまたはそれ以上において実施され得る。CSFは脳室を満たす透明な液体であって、くも膜下腔に存在し、脳および脊髄を取り囲んでいる。CSFは、脈絡叢により産生され、脳近傍の組織液のウィーピング(weeping)または透過を介して、脳室に至る。脈絡叢は、側脳室底および第三および第四脳室天井を裏打ちする構造である。ある研究は、脈絡叢が1日に400〜600ccsの液体を産生可能であって、これは1日に4回中枢神経系腔を満たす量に一致することを示している。成人において、この液体の体積を計算すると、125〜150ml(4〜5オンス)である。CSFは、連続的に形成され、循環し、吸収されている。ある研究は、約430〜450ml(ほぼ2カップ)のCSFが毎日産生され得ることを示している。ある計算によれば、産生は成人で毎分約0.35mlであって、乳児で毎分0.15ml程度であると予測されている。側脳室の脈絡叢は、CSFの大部分を産生している。CSFは、モンロー孔を通って第三脳室に流れ込み、そこで産生されたものに添加され、シルビウス水道を通って第四脳室に至る。第四脳室がさらなるCSFが添加され;次いで、液体はマジャンディ孔およびルシュカ孔を通って、くも膜下腔に移動する。次いで、脳底を循環し、脊髄周辺を下り、大脳半球上を上昇する。CSFは、くも膜絨毛および脳内の血管洞を介して血液に入る。
【0035】
遺伝子導入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルス性ベクターによって媒介される態様において、ベクター構築物はウイルスゲノムまたはその部分、および導入遺伝子を含むポリヌクレオチドをいう。アデノウイルス(Ad)は比較的よく特徴付けられており、ウイルスの同種群は50以上の血清型を含んでいる。例えば、国際PCT出願第WO 95/27071号を参照のこと。Adは増殖させることが容易であって、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない。Ad由来の組換えベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび発生の可能性を減少させるAd由来の組換えベクターもまた、構築されている。国際PCT出願第WO 95/00655号および第WO 95/11984号を参照のこと。野生型AAVは高い感染性、および宿主細胞ゲノムへの特異的な組込みを有している。例えば、Hermonat and Muzyczka (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470およびLebkowski, et al. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:3988-3996を参照のこと。
【0036】
1つの態様において、本発明は、IGF−1導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターの脳室内投与によって、対象の脳に導入遺伝子を送達する方法を提供する。送達は、上衣細胞における導入遺伝子の発現に有利な条件下である。
【0037】
別の態様において、本発明は、導入遺伝子がIGF−1である場合、ALSまたは外傷性脊髄損傷などの運動ニューロン障害に罹患している哺乳動物において、CNSの対象細胞(ニューロンまたはグリア細胞)に治療用の導入遺伝子産物を送達する方法を提供する。導入遺伝子は、神経栄養ウイルスを介して投与され得る。ウイルスは、脳室を介して投与され得る。上衣細胞は形質導入されて、導入遺伝子を発現し、コードされるタンパク質産物を分泌する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、治療用の導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを対象の脳に脳室内投与することによって、対象において運動ニューロン障害を処置する方法であって、ここで、導入遺伝子は対象において治療有効量で発現される。
【0039】
本発明はまた、治療用の導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを脳に脳室内投与することによって、対象において運動ニューロン障害の症状を寛解させる方法であって、ここで、導入遺伝子は対象において治療有効量で発現される。
【0040】
本発明の実施に適切な神経栄養ウイルス性ベクターとしては、限定するものではないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス性ベクター(米国特許第5,672,344号)およびレンチウイルス性ベクターが挙げられる。
【0041】
本発明の方法において、任意の血清型のAAVを使用してもよい。本発明の特定の実施態様において使用するウイルス性ベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7およびAAV8からなる群より選択される(例えば、Gao et al. (2002) PNAS, 99:11854 11859;およびViral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照のこと)。本明細書に列挙するもの以外の他の血清型を使用してもよい。さらに、本明細書に記載の方法において、偽型AAVベクターを利用してもよい。偽型AAVベクターは、第2のAAV血清型のカプシド中に1つのAAV血清型のゲノムを含むものであって;例えば、AAV2カプシドおよびAAV1ゲノムを含むAAVベクター、またはAAV5カプシドおよびAAV2ゲノムを含むAAVベクターである(Auricchio et al., (2001) Hum. Mol. Genet., 10(26):3075-81)。
【0042】
AAVベクターは、哺乳動物に非病原性である単鎖(ss)DNAパルボウイルスに由来する(Muzyscka (1992) Curr. Top. Microb. Immunol., 158:97 129にて概説されている)。すなわち、AAVに基づく組換えベクターでは、ウイルスゲノムの96%を占めるrepおよびcapウイルス遺伝子が取り除かれ、ウイルスのDNA複製、パッケージングおよび組込みを開始するために使用される、隣接する2つの末端逆位配列(ITR)145塩基対(bp)が残されている。ヘルパーウイルスの非存在下では、野生型AAVはクロモソーム19q 13.3に対する優先的な部位特異性をともなってヒト宿主細胞ゲノムに組込まれるか、エピソームに維持され得る。1つのAAV粒子は、ssDNA5kbまでを収容するので、導入遺伝子および調節エレメントについて約4.5kbgを入れているが、これは一般的に十分である。しかし、例えば米国特許第6,544,785号に記載のトランススプライシング系は、この制限を倍近くにする。
【0043】
例示的な実施態様において、AAVはAAV4である。多くの血清型のアデノ随伴ウイルス、特にAAV2が、遺伝子治療ベクターとして広範に調査され、特徴付けられている。当業者であれば、機能性でAAVに基づく遺伝子治療ベクターの調製に精通している。ヒト対象に投与するためのAAV作製、精製および調製の種々の方法に関する多数の言及が、刊行された文献の本文に広く見出され得る(例えば、Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照のこと)。さらに、CNSの細胞に対して標的化されているAAVに基づく遺伝子治療が、米国特許第6,180,613号および第6,503,888号に記載されている。さらなる例示的なAAVベクターは、ヒトタンパク質をコードする組換えAAV2/1、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/7およびAAV2/8血清型ベクターである。
【0044】
本発明の特定の方法において、ベクターは作動可能にプロモーターに連結された導入遺伝子を含む。導入遺伝子は生物学的に活性な分子であって、その発現はCNSにおいて神経病理の少なくとも部分的な是正および/または疾患の進行の安定化をもたらす。導入遺伝子は、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2、CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンであってもよい。
【0045】
本発明の特定の方法において、ベクターは2つ以上の導入遺伝子を含み、ここで、各導入遺伝子は、1つのAAVベクターからの2つ以上の導入遺伝子の発現を可能にするプロモーターに作動可能に連結されている。さらなる方法において、導入遺伝子は同じプロモーターに作動可能に連結され得る。各導入遺伝子は生物学的に活性な分子であって、その発現はCNSにおいて神経病理の少なくとも部分的な是正をもたらす。さらに、2つ以上の導入遺伝子が送達される場合、導入遺伝子は2つ以上のAAVベクターを介して送達されてもよく、ここで、各AAVベクターはプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2、CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択されてもよい。例えば、導入遺伝子は、VEGF165などのVEGFおよびIGF−1を含み得る。
【0046】
インスリン様増殖因子(IGF−1)遺伝子は複合体構造を有しており、当該分野において周知である。IGF−1は遺伝子転写物から選択的にスプライシングされる少なくとも2つの別のmRNA産物を有している。IGF−1AまたはIGF−1Eaを含むいくつかの名称で知られている153アミノ酸のペプチド、およびIGF−1BまたはIGF−1Ebを含むいくつかの名称で知られている195アミノ酸のペプチドが存在している。Eb型は、ヒトにてEcとしても知られている。IGF−1の成熟型は70アミノ酸のペプチドである。IGF−1EaおよびIGF−1Ebのいずれも、70アミノ酸の成熟ペプチドを含むが、カルボキシル末端の伸長部分の配列および長さが異なっている。IGF−1EaおよびIGF−1Ebのペプチド配列を配列番号1および2によってそれぞれ示す。ヒトIGF−1のゲノムおよび機能性cDNA、ならびにIGF−1遺伝子およびその産物に関するさらなる情報が、Unigene Accession No. NM_00618にて利用可能である。IGF−1タンパク質は、配列番号3にて示す配列、またはその対立遺伝子バリアントを有してもよい。対立遺伝子バリアントは、1つまたは少数のアミノ酸残基、一般的には5未満、4未満、3未満の残基が異なる。IGF−1タンパク質の配列は改変されて、配列番号4にて示すようなTAT形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRR)を含んでもよい。
【0047】
カルビンジン D28K(カルビンジン D28ともいう)およびパルブアルブミンの機能は完全には解っていないが、これらはカルシウム緩衝作用に関与しているとされているカルシウム結合タンパク質である。理論に限定されるものではないが、ALSを有する対象においてカルシウムの恒常性が変化していることを示唆する証拠が存在している。低レベルのカルビンジン D28Kおよび/またはパルブアルブミンが、増加したカルシウム負荷を処理する運動ニューロンの能力を低減させることによって、ALSにおいて運動ニューロンの脆弱性を増加させ得ることを示唆する証拠が存在している。この低減は、細胞傷害および最終的な運動ニューロンの死をもたらし得る。さらなる証拠は、カルビンジン D28Kおよびパルブアルブミンなどのカルシウム結合タンパク質が豊富であるニューロンは変性に対して耐性であることを示唆している。
【0048】
HIF−1は、以下の2つのサブユニットからなるヘテロ2量体タンパク質である:(i)アリール炭化水素核輸送体(ARNT)としても知られる構成的に発現しているベータ(β)サブユニット(他の関連転写因子(例えば、ダイオキシン/アリール炭化水素受容体(DR/AhR))に共有されている);および(ii)低酸素条件の間だけ高レベルのアルファサブユニットが検出され得ように、その蓄積が翻訳後メカニズムによって調節されているアルファ(α)サブユニット(例えば、HIF−1αの最新のアフィニティー精製および分子クローニングを記載するWO96/39426、国際出願第PCT/US96/10251号を参照のこと)。両方のサブユニットは転写因子のベーシック ヘリックス ループ ヘリックス(bHLH)−PASファミリーのメンバーである。これらのドメインは、DNA結合および二量体形成を調節する。トランス活性化ドメインは、タンパク質のC末端に存在する。塩基性領域は、直接DNA結合を担う主に塩基性の約15アミノ酸からなる。この領域は2つの両親媒性αへリックスに隣接し、可変長のループによって分離されており、ファミリーメンバーの間の主要な二量体形成インターフェイスを形成している(Moore, A.W., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:10436-41 (2000))。PASドメイン(はじめの3つのタンパク質において同定された後に命名されている(Per, ARNT and Sim))は、大まかに保存され、かなりの疎水性である約50アミノ酸の領域2つ(PAS AおよびPAS Bと命名された)を含む200〜300アミノ酸を含む。HIF−1αサブユニットは正常酸素圧の条件下では不安定であって、正常な酸素レベル下で培養されている細胞におけるこのサブユニットの過剰発現は、低酸素によって正常に誘導される遺伝子の発現を誘導できる。代替のストラテジーは、HIF−1αサブユニットがもはや正常酸素圧の条件によって不安定化されず、従って種々の酸素条件下でより有効であるように、HIF−1αサブユニットを修飾することである。低酸素誘導性因子タンパク質のC末端(またはトランス活性化)領域の、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)VP16、NFκBまたは酵母転写因子GAL4およびGCN4などの転写活性化タンパク質由来の強力なトランス活性化ドメインとの置換は、正常酸素圧下でタンパク質を安定化させ、強力で恒常的な転写活性化を提供するために設計される。正常酸素圧下で低酸素誘導性因子タンパク質を安定化させ、強力で恒常的な転写活性化を提供するために、HIF−1α由来のDNA結合および二量体形成ドメイン、ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)VP16由来のトランス活性化ドメインからなるハイブリッド/キメラ融合タンパク質が構築された。遺伝子治療を介した対象の細胞へのこのハイブリッド/キメラの投与は、低酸素に応答して正常に上方制御される遺伝子の発現(すなわち、VEGFなど)を誘導する。構成的に安定なハイブリッドHIF−1αは、虚血性患者を処置することに有効であることが示されている(米国特許第6,432,927号および第7,053,062号、出典明示によってその全体を援用する)。
【0049】
血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーのメンバーは、血管生物学の最も強力な修飾因子の1つである。VEGFファミリーのメンバーは、血管形成、血管新生および血管維持を調節する。VEGF165は、本発明において使用してもよいVEGFファミリーのそのようなメンバーの1つである。
【0050】
脊髄性筋萎縮症(SMA)、常染色体性劣性神経筋障害の分子的基礎は、生存運動ニューロン遺伝子1(SMN1)のホモ接合型欠失である。SMN2と呼ばれるSMN1遺伝子のほぼ同一のコピーは、疾患の重症度を修飾する。2つの遺伝子の機能的な差異は翻訳的にサイレントな変異であるが、その変異はSMN2転写物においてエキソン7のスキップを引き起こすエキソンスプライシングエンハンサーを破壊する。SMN2転写物の10%のみが、SMN1と同一である機能性で完全長のタンパク質をコードしている。SMNタンパク質は、スプライスソームの集合において既によく知られている役割を担っている。
【0051】
CNTF(毛様体神経栄養因子)は、末梢神経および中枢神経系におけるグリア細胞によって発現されるニューロサイトカインである。一般に、CNTFは非ニューロンおよびニューロン細胞型の支持および生存における機能によって認識されている。例えば、Vergara, C and Ramirez, B; Brain Res, Brain Res. Rev. 2004; 47: 161-73を認識のこと。
【0052】
ソニックヘッジホッグ(shh)は、ニューロンおよびグリア細胞の生存を含む重要な発生プロセスを制御する。
【0053】
エリスロポイエチン(EPO)は、赤血球前駆細胞の主要な制御因子である。しかし、エリスロポイエチンは神経系において機能的に発現しており、神経保護効果を有することが報告されている。例えば、Bartesaghi, S., 2005. Neurotoxicology, 26:923-8を参照のこと。
【0054】
リジルオキシダーゼ(LOX)は、ペプチジルリジンの側鎖を酸化し、それによって特定のリジン残基がアルファ-アミノアジピン酸-デルタ-セミアルデヒドに変換される。これは、コラーゲンおよびエラスチンの成分鎖の共有結合性架橋を可能にする翻訳後変化である。翻訳後変化は、細胞外マトリックスにおいてこれらのタンパク質の線維性沈着物を安定化する。LOXはまた、種々のカチオン性タンパク質内のリジンを酸化し得、その機能は安定化または細胞外マトリックスより広いことを示唆している。LOXはタンパク質前駆体として合成され、細胞からプロLOXとして出現し、活性な酵素へとタンパク質分解性にプロセッシングされる。例えば、Lucero, HA and Kagan, HM, Cell Mol. Life Sci. 2006; 63(19-20):2304-16を参照のこと。
【0055】
プログラニュリン(PGRN)は、前頭側頭葉変性症を引き起こす遺伝子中の変異の近年の発見にともない、神経科学コミュニティーの注目を集める多面発現性タンパク質である。PGRNは、中枢神経系においてミクログリアおよびニューロンによって発現され、脳の発達において役割を担う。PGRNはまた、発生、創傷修復および腫瘍形成を含む多重「組織モデリング」プロセスに関与している。PGRNは、エラスターゼ酵素によってグラニュリン(GRN)に変換される。プログラニュリンが栄養性特性を有する一方で、GRNは炎症性メディエーターにより類似している。CNS疾患の動物モデルからの遺伝子発現調査は、ミクログリア活性化および炎症と組み合わされたPRGNの差次的な増加を示している。PGRN発現の増加の示唆は、ミクログリア活性化および神経炎症と密接に関連する。さらに、PGRNの発現は、運動ニューロン疾患およびアルツハイマー病を含む多くの神経変性疾患における活性化ミクログリアで増加している。調査は、PGRN中の変異が神経変性疾患の原因であると同定し、ニューロン生存にとってPGRNの機能が重要であることを示している。
【0056】
プロラクチンおよびプラセンタラクトゲン:オリゴデンドロサイト、CNSの有髄化細胞は、オリゴデンドロサイト前駆体細胞(OPC)によって成人期を通じて産生され続け(Gensert and Goldman, 1997; Levison et al., 1999; Menn et al., 2006; Peters and Sethares, 2004)、成人のCNSにおけるミエリン損傷の内因性修復に必要とされる(Polito and Reynolds, 2005)。OPCの増殖を調節する生理学的事象および成人のCNSにおける新たな有髄化オリゴデンドロサイトの発生が広く知られている。
【0057】
近年、多発性硬化症、脱髄性疾患を有する患者にて妊娠の第3の三半期の間再発率が低下することが報告されており、ホルモンがオリゴデンドロサイトの発生に影響することを示唆している(Confavreux et al., 1998; Voskuhl, 2003)。MS患者の寛解は、活性な白質病変の数および大きさの減少と相関している(van Walderveen et al., 1994)。興味深いことに、マウスでの妊娠は、母系CNS内で、新たなオリゴデンドロサイトの発生および有髄化軸索数の増加をもたらす(Gregg et al., 2007)。プロラクチン、妊娠の最終段階でプラトーに達するホルモンは、妊娠の間にOPCの増殖を調節し、未交尾のメスマウスにおいて白質の修復を促進することが示されている(Gregg et al., 2007)。
【0058】
ヒトプラセンタラクトゲン(hPL)、妊娠の第3の三半期の間にピークに達するホルモン(Selenkow et al., 1969)がオリゴデンドロサイトの発生に対して類似の影響を有し得ると考える理由が存在する。hPLは、ヒト成長ホルモン(hGH)およびプロラクチンに質的に類似する多数の生物学的活性を有しており(Lesniak et al., 1977)、IGF−1産生の主要な制御因子であるようである(Handwerger et al., 1992; Zimkeller, 2000; Handwerger et al., 2000)。hGHおよびIGF−1はともに、成人のCNSにおける有髄化の刺激因子であることが示されている(Carson et al.,1993; Peltwon et al., 1977)。従って、MS、ALS、脳卒中および脊髄損傷などの脱髄化に関与するCNS疾患の処置は、PRLまたはhPLに基づく治療、rhPRLまたはhPL発現用のウイルス性ベクターの脳室内注入から恩恵を受ける。
【0059】
グレリンは、成長ホルモン放出のメディエーターとして1999年に認識された胃ホルモンである。Wu, JT et al., 2004; Ann. Surg. 239:464を参照のこと。
【0060】
ニューロセルピンは、セルピンプロテアーゼインヒビターファミリーのメンバーである。特定の中枢神経系の状態において、ニューロセルピンは、tPA効果の強力な遮断を通じて、神経保護の役割を担い得る。例えば、Galliciotti, G and Sonderegger, P, 2006, Front Biosci 11: 33; Simonin, Y et al., 2006, J Neurosci;26:10614; Miranda, E and Lomas, DA, 2006, Cell Mol Life Sci 63:709を参照のこと。
【0061】
アンジオゲニンはリボヌクレアーゼ(RNAse)スーパーファミリーのメンバーである。血行路の正常な構成物であるが、危険性の高い因子として運動ニューロン障害に関わっている。
【0062】
理論に限定されることなく、IGF−1は、異なるレベルの脳脊髄幹に対するその多くの作用に起因するALSの処置のための治療用タンパク質である(Dore et al., Trends Neurosci, 1997, 20:326-331を参照のこと)。脳において、IGF−1はニューロンおよびグリアのアポトーシスを減少させ、鉄、コルヒチン、カルシウム、不安定化剤、過酸化物およびサイトカインによって誘導される毒性からニューロンを保護すると考えられている。IGF−1はまた、神経伝達物質アセチルコリンおよびグルタミン酸の放出を調節すると考えられている。IGF−1はまた、神経フィラメント、チューブリンおよびミエリン塩基性タンパク質の発現を誘導すると考えられている。脊髄において、IGF−1は、ChAT活性を調節し、コリン作動性表現型の減少を減弱させ、運動ニューロンの出芽を増強し、有髄化を増加させ、脱髄を抑制し、運動ニューロンの増殖および前駆細胞からの分化を刺激し、シュワン細胞分化、成熟および増殖を促進すると考えられている。筋肉において、IGF−1は、神経筋接合部にてアセチルコリン受容体クラスター形成を誘導し、神経筋機能および筋肉強度を増加させると考えられている。
【0063】
真核生物細胞における導入遺伝子発現のレベルは、導入遺伝子発現カセット内の転写プロモーターによって主に決定されている。いくつかの実施態様において、長期の活性を示し、組織、さらには細胞特異的であるプロモーターが使用されている。限定するものではないが、プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(Kaplitt et al. (1994) Nat. Genet. 8:148 154)、CMV/ヒトβ3グロビンプロモーター(Mandel et al. (1998) J. Neurosci. 18:4271 4284)、GFAPプロモーター(Xu et al. (2001) Gene Ther. 8:1323 1332)、1.8kbのニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Klein et al. (1998) Exp. Neurol. 150:183 194)、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター(Miyazaki (1989) Gene 79:269 277)、β-グルクロニダーゼ(GUSB)プロモーター(Shipley et al. (1991) Genetics 10:1009 1018)、および米国特許第6,667,174号に記載のヒトユビキチンA、ヒトユビキチンBおよびヒトユビキチンCから単離されるプロモーターなどのユビキチンプロモーターが挙げられる。発現を延長させるために、他の調節エレメントはさらに、マーモット肝炎ウイルス調節後エレメント(WPRE)(Donello et al. (1998) J. Virol. 72:5085 5092)またはウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化部位などの導入遺伝子に作動可能に連結され得る。
【0064】
いくつかのCNSの遺伝子治療適用のために、転写活性を制御することが必要であってもよい。この目的に対して、ウイルス性ベクターを用いた遺伝子発現の薬理学的な調節を、例えば、Habermaet al. (1998) Gene Ther. 5:1604 16011およびYe et al. (1995) Science 283:88 91に記載の種々の調節エレメントおよび薬物応答性プロモーターを含むことによって得てもよい。
【0065】
特定の実施態様において、組成物中のベクターの濃度または力価は、少なくとも(a)5、6、7、8、9、10、15、20、25または50(×1012gp/ml);(b)5、6、7、8、9、10、15、20、25または50(×10tu/ml);または(c)5、6、7、8、9、10、15、20、25、または50(×1010iu/ml)である。
【0066】
1つの態様において、導入遺伝子は生物学的に活性な分子をコードし、CNSにおけるその発現は神経病理の少なくとも部分的な是正および/または疾患進行の安定化をもたらす。いくつかの実施態様において、治療用の導入遺伝子産物は、ALSの症状を寛解および/または予防するIGF−1タンパク質である。例えば、Roaul et al. (2005) Nat. Med. 11(4):423-428およびRalph et al. (2005) Nat. Med. 11(4):429-433を参照のこと。他の態様において、2つの導入遺伝子は、例えば、IGF−1およびVEGFをコードし、CNSにおいてその発現はALSの症状の進行の寛解および/または抑制および/または安定化および/または遅延などの神経病理の少なくとも部分的な是正をもたらす。
【0067】
1つの態様において、これらの方法を実施する場合、導入遺伝子は、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンの治療量を発現する。
【0068】
ヒト脳の構造の同定のために、例えば、The Human Brain: Surface, Three Dimensional Sectional Anatomy With MRI, and Blood Supply, 2nd ed., eds. Deuteron et al., Springer Vela, 1999;Atlas of the Human Brain, eds. Mai et al., Academic Press; 1997;およびCo Planar Stereotaxic Atlas of the Human Brain: 3 Dimensional Proportional System: An Approach to Cerebral Imaging, eds. Tamarack et al., Thyme Medical Pub., 1988を参照のこと。マウス脳の構造の同定のために、例えば、The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates, 2nd ed., Academic Press, 2000を参照のこと。
【0069】
ウイルス性ベクターを含む溶液または他の組成物を側脳室または第四脳室などの特定の脳室などの中枢神経系の特定の領域に特異的に送達するために、溶液または他の組成物は定位微量注入により投与され得る。例えば、手術当日、患者は所定の位置に固定した(頭蓋骨にねじくぎで取り付けた)定位支持枠を有する。定位支持枠を有する脳(基準点となる標識にMRI適合性である)を、高解像度MRIを使用して撮像する。次いで、MRI画像は定位脳ソフトウェアを実行するコンピュータに移される。一連の冠状、矢状および軸方向画像を用いて、ベクター注入の標的部位および軌道を決定する。ソフトウェアを、軌道を定位枠に適切な3次元座標に直接変換する。穿頭孔を侵入部位上に開け、定位脳装置を所定の深さで植え込んだ針とともに局在させる。次いで、医薬上許容される担体中のベクター溶液を注入する。直接可視化の下での表面上の皮層への適用または定位脳でない他の適用など、さらなる投与経路を使用してもよい。
【0070】
ウイルス性ベクターを送達するための1つの方法は、ポンプを使うことである。そのようなポンプは、例えば、Alzet(Cupertino, CA)またはMedtronic(Minneapolis, MN)から市販されている。ポンプは埋込式でなくてもよい。ベクターを投与するための別の従来方法は、カニューレまたはカテーテルを使用することである。
【0071】
本発明は、運動ニューロン損傷に罹患している対象において、運動機能を調節、是正または増大させるための方法を提供する。説明のみを目的として、対象は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、脊髄性小脳運動失調、原発性側索硬化症(PLS)または外傷性脊髄損傷の1つ以上に罹患していてもよい。
【0072】
理論に限定されるものではないが、運動ニューロン損傷に付随する病理としては、運動ニューロン変性、神経膠症、神経フィラメント異常、皮質脊髄路および前根中の有髄化線維の減少が挙げられる。以下の2つの型の発症が認められる:脳幹の運動ニューロンに影響を及ぼす延髄性発症(顔面筋、発話および嚥下に影響を及ぼす);および脊髄運動ニューロンに影響を及ぼし、痙縮、全身性脱力、筋萎縮症、麻痺および呼吸不全によって反映される四肢発症。ALSにおいて、対象は延髄性および四肢発症両方を有する。PLSにおいて、対象は延髄性発症を有する。
【0073】
複雑な運動行為を組織化し、実行する能力は、大脳皮質中の運動野、すなわち運動皮質由来のシグナルに依存している。皮質性の運動指令は、2つの路を下降する。皮質延髄線維は顔面筋を動かす脳幹における運動核を制御しており、皮質脊髄線維は躯幹および四肢の筋肉を神経支配する脊髄運動ニューロンを制御している。大脳皮質はまた、下行性脳幹経路に対して作用することによって、脊髄性運動活性に間接的に影響を及ぼす。
【0074】
一次運動野は、ブロードマン領野(4)中の中心前回に沿って位置している。脊髄に突出している皮質ニューロンの軸索は、皮質脊髄路、約100万本の軸索を含む大きな線維の束の中を一緒に伝わっている。これらの約3分の1が前頭葉の中心前回を起源とする。別の3分の1は、領域6を起源とする。残りの3分の1は、体性感覚皮質中の領域3、2および1を起源とし、後角を通る求心性入力の伝達を調節している。
【0075】
皮質脊髄線維は皮質延髄とともに内包の後肢を通って、中脳の腹側部分に至る。皮質脊髄線維と皮質延髄は、脳橋において、脳橋神経核の間を通る小さな神経束に分離する。それらは髄質中で再編成されて、延髄錐体を形成する。皮質脊髄繊維の約3/4が髄質および脊髄の接合部分にある錐体交叉の正中線と交差する。交差した線維は、脊髄の側柱(背側外側の柱)の背面部分を下って、外側皮質脊髄路を形成する。交差しない線維は、前皮質脊髄路として前柱を下行する。
【0076】
皮質脊髄路の外側および腹側への分離は、脳幹の外側および内側の系として脊髄の灰白質の同じ領域で終結する。外側皮質脊髄路は、前角の外側部分中の運動核および中間帯中の介在ニューロンにまで主に突出している。前皮質脊髄路は、腹側正中細胞柱、および体軸筋を神経支配する運動ニューロンを含む中間帯の隣接部分の両方にまで突出している。
【0077】
所望により、ヒトの脳構造を別の哺乳動物の脳の類似の構造と相関させてもよい。例えば、ヒトおよび齧歯動物を含む大部分の哺乳動物は、前側海馬への突出が嗅内皮質の内側部分内のニューロンから生じているのに対して、外側および内側嗅内皮質両方の外側部分におけるニューロンが海馬の背側または中隔極(septal pole)にまで突出しており、嗅内−海馬突出が類似の組織分布を示している(Principles of Neural Science, 4th ed., eds Kandel et al., McGraw Hill, 1991; The Rat Nervous System, 2nd ed., ed. Paxinos, Academic Press, 1995)。さらに、嗅内皮質のII層細胞は、歯状回にまで突出しており、歯状回の分子層の外側2/3において終結している。III層細胞由来の軸索は、海馬のアンモン角領域CA1およびCA3の両方にまで突出している。
【0078】
1つの態様において、開示する方法は、治療用産物をコードする導入遺伝子を担持する神経栄養ウイルス性ベクターを、罹患している患者のCNSに投与する工程、および発現したタンパク質がCSFを介してCNS中に輸送されるように、導入遺伝子を治療効果を発揮することに十分なレベルで投与部位周辺のCNS内で発現させる工程を含む。さらに、ベクターは、CNS障害を処置することに有効で生物学的に活性な分子をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。そのような生物学的に活性な分子は、限定するものではないが、天然または成熟バージョンの全長タンパク質、天然または成熟バージョンのタンパク質フラグメント、合成ポリペプチドを含んでもよい。
【0079】
例示的な実施態様において、投与は1つ以上の脳室(対象または患者の側脳室など)への高い力価のベクター溶液の直接注入によって達成される。例えば、投与は、1つ以上の脳室(側脳室および第四脳室など)への直接ボーラス注入による。
【0080】
いくつかの実施態様において、方法は、治療用導入遺伝子を担持する高い力価の神経栄養ベクターの投与を含み、発現した産物の作用の最終的な部位に遠位なCNS内の第1の部位にて、導入遺伝子産物が治療レベルで発現する。いくつかの実施態様において、組成物のウイルス力価は、少なくとも以下である:(a)5、6、7、8、9、10、15、20、25または50(×1012gp/ml);(b)5、6、7、8、9、10、15、20、25または50(×10tu/ml);あるいは(c)5、6、7、8、9、10、15、20、25または50(×1010iu/ml)。
【0081】
実験用マウスにおいて、注入するAAV溶液の合計体積は、例えば、1〜20μlの間である。ヒトの脳を含む他の哺乳動物について、体積および送達割合はおよそ計量される。例えば、150μlの体積は霊長類の脳に安全に注入され得ることが示されている(Janson et al. (2002) Hum. Gene Ther. 13:1391 1412)。処置は、標的部位1つあたり1回の注入からなるか、または1つ以上の脳室にて繰り返してもよい。適切な脳室としては、側脳室、第3脳室および第4脳室が挙げられる。複数の注入部位を使用してもよい。例えば、いくつかの実施態様において、導入遺伝子を担持するウイルス性ベクターを含む組成物が、第1の投与部位に加えて、第1の投与部位に対して対側性または同側性でもよい別の部位に投与される。注入は、1回または複数回、一側性または両側性でもよい。
【0082】
例えば、米国特許第5,658,776号およびViral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003に記載される当該分野で公知の技術を使用して、高い力価のAAV調製物を製造してもよい。
【0083】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施態様を提供する。1つの従来技術は、本発明の精神または範囲を変更することなしに実施され得る多くの修飾および変化を認識する。そのような修飾および変異は、本発明の範囲内に含まれる。実施例は、本発明を制限するものでは決してない。
【実施例】
【0084】
組換えベクターの力価測定
ゲノムコピー数(ゲノム粒子/ml)に従って、AAVベクターの力価を測定する。ゲノム粒子濃度は、以前報告されたベクターDNAのTaqman(登録商標)PCRに基づく(Clark et al. (1999) Hum. Gene Ther., 10:1031 1039; Veldwijk et al. (2002) Mol. Ther., 6:272 278)。
【0085】
感染力アッセイを使用して、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)または緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)などのアッセイ可能なマーカー遺伝子を担持するベクターを容量設定してもよい。感受性細胞(例えば、HeLaまたはCOS細胞)をAAVで形質導入し、アッセイを実施してβ−ガラクトシダーゼベクターを形質導入した細胞をX−gal(5−ブロモ−4クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)で染色するか、またはGFP形質導入細胞について蛍光顕微鏡を用いるなどして、遺伝子発現を決定する。例えば、以下のようにアッセイを実施する:4×10のHeLa細胞を、正常な培地を使用して、24ウェルの培養プレートの各ウェル上にプレーティングする。付着後、すなわち、約24時間後に、細胞を10の感染効率(MOI)でAdタイプ5に感染させ、パッケージしたベクターの段階希釈物で形質導入し、37℃でインキュベートした。1〜3日後に、広範な細胞変性効果を観察する前に、適切なアッセイを細胞に対して行った(例えば、X−gal染色または蛍光顕微鏡)。β−ガラクトシダーゼなどのレポーター遺伝子を使用する場合、細胞を2%パラホルムアルデヒド、0.5%グルタルアルデヒド中で固定し、X−galを使用してβ−ガラクトシダーゼ活性について染色する。十分に分離した細胞を与えるベクター希釈物を計数する。各陽性細胞は、1形質導入単位(tu)のベクターを表す。
【0086】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療関連モデル
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、皮質、脳幹および脊髄における運動ニューロンの選択的な減少によって特徴付けられる致死的な神経変性疾患である。疾患の進行は、四肢、軸および呼吸筋の萎縮症をもたらす。運動ニューロンの細胞死は、反応性神経膠症、神経フィラメント異常、ならびに皮質脊髄路および前根における大きな有髄化線維の有意な減少をともなう1−6。ALSの原因はあまり解っていないが、蓄積する証拠は、孤発性(SALS)および家族性(FALS)ALSは多くの類似する病理学的特徴を共有しており;従って、いづれかの形態の研究が共通の処置を導くかもしれない見込みを提供する。FALSは診断ケースの約10%を占め、その20%はCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)における優性遺伝性変異に関連している。変異ヒトSOD1タンパク質を発現するトランスジェニックマウス(例えば、SOD1G93Aマウス)は、ALSの多くの病理学的特徴を繰り返しており、ALSを研究するために利用可能な動物モデルである。SALSについて、グルタミン酸誘導性興奮毒性、毒物曝露、プロテアソーム機能障害、ミトコンドリア損傷、神経フィラメント組織崩壊および神経栄養支持の減少を含む、無数の病理学的機構が根本原因に関係あると見なされている。
【0087】
現在まで、ALSの処置に有効な治療法は存在していない。インスリン増殖因子I(IGF−1)などの神経栄養因子が、ALSの処置におけるその潜在的な有効性について広範に研究されている。CSFを介して脳幹および脊髄性運動ニューロンと相互接続しているCNSの領域へのウイルス性ベクターの頭蓋内送達は、さもなければ従来技術の手段では標的化することが難しい領域に、IGF−1などの可能性がある治療学を投与する手段を提供する。
【0088】
理論に限定されることなく、IGF−1は異なるレベルの脳脊髄幹での多くの作用に起因する、ALSの処置のための治療用タンパク質である(Dore et al., Trends Neurosci, 1997, 20:326-331を参照のこと)。脳において、IGF−1はニューロンおよびグリアのアポトーシスを減少させ、鉄、コルヒチン、カルシウム、不安定化剤、過酸化物およびサイトカインによって誘導される毒性からニューロンを保護すると考えられている。IGF−1はまた、神経伝達物質アセチルコリンおよびグルタミン酸の放出を調節すると考えられている。IGF−1はまた、神経フィラメント、チューブリンおよびミエリン塩基性タンパク質の発現を誘導すると考えられている。脊髄において、IGF−1は、ChAT活性を調節し、コリン作動性表現型の減少を減弱させ、運動ニューロンの出芽を増強し、有髄化を増加させ、脱髄を抑制し、運動ニューロンの増殖および前駆細胞からの分化を刺激し、シュワン細胞分化、成熟および増殖を促進すると考えられている。筋肉において、IGF−1は、神経筋接合部にてアセチルコリン受容体クラスター形成を誘導し、神経筋機能および筋肉強度を増加させると考えられている。以下の実験において、IGF−1 Ea形態のタンパク質を用いた。
【0089】
実施例1:AAV4−IGF−1の側脳室内送達
発明者らは実験を実施して、AAV4−IGF−1の側脳室内送達が、(1)寿命の有意な延長;(2)ロータロッドおよび握力課題の成果改善;ならびに(3)脳幹および脊髄における神経病理の減少(すなわち、神経膠症における寛解および運動ニューロン生存率の改善)をもたらすかどうか決定した。
【0090】
症候性のSOD1マウス(すなわち、90日齢)をAAV4−IGF−1またはAAV4−Bgalコントロールベクターのいずれかで処理した(BgalはlacZともいわれる)。各マウスについて、定位支持枠を使用して、側脳室(A−P:ブレグマから−.3、M−L:ブレグマから−1.0、D−V:硬膜から−2.0、切歯棒(incisor bar):0.0)および第四脳室(A−P:ブレグマから−5.90、M−L:ブレグマから0.0、D−V:硬膜から−2.9、切歯棒:0.0)にベクターを注入した。10μlのHamiltonシリンジを用いて、0.5μl/分の速度で、脳室1つあたり全量1.80×1010ゲノムコピーのベクターを送達した。各ベクターの最終注入体積は、10μl/脳室であった。110日齢またはステージ4の終盤に、各処理群由来の4匹のマウスを、組織学的な分析(すなわち、脳幹および脊髄におけるGFAP(グリア線維酸性タンパク質)染色およびMNカウント)のために屠殺した。評価したエンドポイントとしては、生存率分析、ロータロッド、後肢および前肢握力試験および体重が挙げられる。
【0091】
ロータロッドデバイスおよびGrip Strength Meter(Columbus Instruments, Columbus, OH)を使用する運動機能試験を70日齢で開始してもよい。各1週間のセッションは、5rpm/分から始まる増加加速ロータロッドに対する3回の試行からなってもよい。各マウスがロッド上に留まっている時間を自動的に記録してもよい。Grip Strength Meter試験を、動物にプラットホームを掴ませ、動物がプラットホームを離すまで動物を引っ張ることによって実施してもよく、4つの別々の試行において力測定値を記録する。1つの後肢がロータロッド上で筋力低下および足の引きずりを示したと2人の独立した観察者によって評価された場合に疾患関連脱力の発症と定義した。信頼でき、かつ人道的なやり方で死亡率を決定するために、発明者らは、マウスを横にし、30秒間で立ち直れないことを人為的なエンドポイントと定義し、使用する。
【0092】
AAV4−IGF−1の側脳室内投与は、コントロールベクターとしてAAV4−Bgalを受けているSOD1マウスと比較して、有意な寿命の延長をもたらした。AAV4−IGF1を受けているマウスは、AAV4−Bgalで処理したマウスでの生存期間中央値121日間と比較して、生存期間中央値141.5日間を有していた(図1)。AAV4−IGF1で処理したSOD1マウスでは、コントロール処理マウスと比較して、ロータロッド試験、前肢握力および後肢握力によって測定した機能的結果が改善された。結果を図1〜5にて示す。
【0093】
GFAPの組織学的評価(神経膠症のマーカーであって、かつALSの病理学的な特徴である)は、AAV4−Bgalで処理したコントロールマウスと比較して、AAV4−IGF−1で処理したマウスにおいて、アストログリオーシス(astrogliosis)が有意に減少したことを示した。この減少は、CNSの脳幹領域(例えば、三叉神経核、顔面神経核、舌下神経核;図6)および腹側脊髄(例えば、頸部、胸部、腰部、仙椎;図7)の両方にて観察された。
【0094】
ニトロチロシンレベルの組織学的評価(ペルオキシナイトライトのマーカーであって、かつALSに関連する病理学的なマーカーである)は、AAV4−Bgalで処理したコントロールマウスと比較して、AAV4−IGF−1で処理したマウスにおいて、ニトロチロシンレベルが有意に低下したことを示した。このニトロチロシンレベルの減少は、頸部、胸部、腰部および仙椎領域などの脊髄中で観察された(図8)。
【0095】
実施例2:AAV4−IGF−1およびAAV4−GFPの側脳室内送達
症候性のSOD1マウス(すなわち、88〜90日齢)を、側脳室および第四脳室両方へのベクターの側脳室内注入を介して、AAV4−IGF−1またはAAV4−GFPベクターのいずれかで処理した。マウスは、2e10gc/脳室の用量を受けた。緑色蛍光タンパク質をコントロールタンパク質として用いて、AAVベクターの注入によって媒介される発現の可視化を可能にした。
【0096】
評価したエンドポイントとしては、生存率、ロータロッド試験、握力(後肢および前肢)、運動ニューロン細胞カウント、GFPタンパク質の分布、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)レベル、ニトロチロシンレベルおよびCNS内のウイルス分布を測定するためのRT−PCRが挙げられる。110日齢または最終段階で、各処理群由来のマウスを更なる分析のために屠殺した。グリア線維酸性タンパク質(GFAP)レベルを組織学的に評価した。GFAPは、神経膠症のマーカーであり、ALSの病理学的特徴である。ニトロチロシンレベルを組織学的に評価し;ニトロチロシンはペルオキシナイトライトのマーカーである。
【0097】
AAV4−IGF−1の側脳室内送達は、コントロールベクターとしてAAV4−GFPを受けているマウスと比較して、SOD1マウスにて寿命の有意な延長をもたらした。AAV4−IGF−1で処理したSOD1マウスでは、コントロール処理したマウスと比較して、ロータロッド試験、前肢握力および後肢握力によって測定される機能的結果が改善された。
【0098】
AAV4−GFPで処理したマウスにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)の可視化は、GFPが脳室系の上衣細胞層中に分布していることを示した。例えば、GFPは、側脳室前側、側脳室、第三脳室および第四脳室において可視化された(図9)。GFPはまた、脳室系の脈絡叢および脊髄中心管の上衣細胞層(頸部、胸部および腰部を含む)において可視化された(図10)。
【0099】
AAV4−IGF−1ベクターについてのRT−PCRは、ベクターが脳室送達後に皮質、脳幹および脊髄に存在したことを示した(図11A)。
【0100】
実施例3:AAV4−VEGFおよびAAV4−GFPの側脳室内送達
症候性のSOD1マウス(すなわち、88〜90日齢)を、側脳室および第四脳室両方へのベクターの側脳室内注入を介して、AAV4−VEGF−165またはAAV4−GFPベクターのいずれかで処理した。マウスは、2e10gc/脳室の用量を受けた。緑色蛍光タンパク質をコントロールタンパク質として利用し、AAVベクターの注入によって媒介される発現の可視化を可能にした。
【0101】
評価したエンドポイントとしては、生存率、ロータロッド試験、握力(後肢および前肢)、ならびにCNS内のウイルス分布を測定するためのRT−PCRが挙げられる。
【0102】
AAV4−VEGFの側脳室内送達は、コントロールベクターとしてAAV4−GFPを受けているマウスと比較して、SOD1マウスにて寿命の有意な延長をもたらした。AAV4−VEGFを受けたマウスの生存期間中央値は140日であったが、AAV4−GFPを受けたマウスの生存期間中央値は120日であった(図12)。
【0103】
AAV4−VEGFで処理したSOD1マウスでは、コントロール処理したマウスと比較して、ロータロッド試験(図13)、前肢握力および後肢握力(図13)によって測定される機能的結果が改善された。
【0104】
AAV4−VEGFの脳室内送達は、SOD1マウスにおいて体重に影響しなかった。
【0105】
AAV4−IGF−1ベクターについてのRT−PCRは、ベクターが脳室送達後に皮質、脳幹および脊髄に存在したことを示した(図11B)。
【0106】
明細書は、明細書内に記載する引用文献の教示を踏まえ、最も理解される。明細書中の実施態様は、本発明の説明を提供するものであって、本発明の範囲を限定するために構成されるべきではない。当業者は、本発明が多くの他の実施態様を含んでいることを容易に認識している。この開示に記載する全ての刊行物、特許および生物学的配列は、その全体を出典明示によって本願明細書に組込む。出典明示によって組込まれた材料が本明細書と矛盾するか、または一致しない範囲において、本明細書はいずれのそのような物質に優先する。本明細書におけるいずれの引用文献の列挙も、そのような引用文献が本発明の従来技術であることを了解するものではない。
【0107】
他に示さなければ、明細書(特許請求の範囲を含む)中で使用する試薬の量、細胞培養物、処置条件などを表す全ての値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていることを理解すべきである。従って、それとは反対に他に示さない場合、数値パラメーターは近似値であって、本発明によって取得されるべく求められる望ましい特性に非常に依存し得る。他に示さない場合、一連の成分に先行する用語「少なくとも」は、一連の各成分をいうと理解するべきである。当業者は、通例の実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施態様との多くの等価物を突き止めることを理解するか、または突き止めることができる。そのような等価物が特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を包含する、対象において導入遺伝子産物を脊髄に送達する方法:
導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを少なくとも1つの脳室に投与する工程であって、それによって導入遺伝子が発現され、発現したタンパク質産物が脊髄に送達される、工程。
【請求項2】
ウイルス性ベクターがAAVベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス性ベクターがAAV4である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
導入遺伝子がIGF−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ウイルス性ベクターが脳室内への直接注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ウイルス性ベクターが側脳室内への直接注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ウイルス性ベクターが第四脳室内への直接注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対象が筋萎縮性側索硬化症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を包含する、筋萎縮性側索硬化症を有する対象においてIGF−1を脊髄に送達する方法:
IGF−1をコードする導入遺伝子を含む組換えAAV4ウイルス性ベクターを、側脳室および第四脳室からなる群より選択される少なくとも1つの脳室に投与する工程であって、それによって導入遺伝子が発現され、IGF−1が脊髄に送達される、工程。
【請求項10】
以下の工程を包含する、対象において運動ニューロン障害を処置する方法:
治療用導入遺伝子を含む組換え神経栄養ウイルス性ベクターを少なくとも1つの脳室に投与する工程であって、それによって導入遺伝子が治療有効量で発現される、工程。
【請求項11】
ウイルス性ベクターがAAVベクターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ウイルス性ベクターがAAV4である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
導入遺伝子がIGF−1である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ウイルス性ベクターが脳室内への直接注入によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ウイルス性ベクターが側脳室への直接注入によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ウイルス性ベクターが第四脳室への直接注入によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
対象が筋萎縮性側索硬化症を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を包含する、対象において筋萎縮性側索硬化症を処置する方法:
IGF−1導入遺伝子を含む組換えAAV4ウイルス性ベクターを、側脳室および第四脳室からなる群より選択される少なくとも1つの脳室に投与する工程であって、それによって導入遺伝子が治療有効量で発現される、工程。
【請求項19】
導入遺伝子が、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択される、請求項1または10に記載の方法。
【請求項20】
対象が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性小脳運動失調、脊髄性筋萎縮症および外傷性脊髄損傷からなる群より選択される状態を有する、請求項1または10に記載の方法。
【請求項21】
対象が哺乳動物である、請求項1または10に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物が、齧歯動物、マウス、サルおよびヒトからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
対象がヒト患者である、請求項1または10に記載の方法。
【請求項24】
ヒト患者が、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2およびCNTF(毛様体神経栄養因子)からなる群より選択されるタンパク質の有効量を低発現する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
導入遺伝子が、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択されるタンパク質の治療量を発現する、請求項1または10に記載の方法。
【請求項26】
以下の工程を包含する、対象においてCNS機能の減少を検出するためのアッセイ:
マーカーをコードする導入遺伝子を含む神経栄養ウイルス性ベクターの診断有効量を対象の脳室に投与する工程;および
対象のCNSにおけるマーカーの存在をスクリーニングする工程。
【請求項27】
マーカー導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質である、請求項25記載のアッセイ。
【請求項28】
導入遺伝子のタンパク質産物がTAT修飾されている、請求項1、9、10または18に記載の方法。
【請求項29】
導入遺伝子のタンパク質産物がHIV TATタンパク質のタンパク質形質導入ドメイン由来の11アミノ酸モチーフを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
導入遺伝子が、インスリン増殖因子−1(IGF−1)、カルビンジン D28、パルブアルブミン、HIF1−アルファ、SIRT−2、VEGF、SMN−1、SMN−2CNTF(毛様体神経栄養因子)、ソニックヘッジホッグ(shh)、エリスロポイエチン(EPO)、リジルオキシダーゼ(LOX)、プログラニュリン(progranulin)、プロラクチン、グレリン、ニューロセルピン、アンジオゲニンおよびプラセンタラクトゲンからなる群より選択される少なくとも2つのタンパク質の治療量を発現する、請求項1または10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−539847(P2009−539847A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514369(P2009−514369)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013391
【国際公開番号】WO2007/146046
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】