説明

筋電位計測装置

【課題】電磁波ノイズを効果的に遮断することのできる筋電位計測装置を提供する。
【解決手段】筋電位計測装置は、導電性シート、筋電位計測用電極、及び、増幅回路を備えている。導電性シートは、柔軟性と伸縮性を有しているとともに、人体に一巡して巻き付けることができる形状を有している。筋電位計測用電極は、導電性シートの人体に面する側に導電性シートから絶縁されて取り付けられている。増幅回路は、筋電位計測用電極と電気的に接続されており、筋電位計測用電極が検出する筋電位を増幅する。この筋電位計測装置は、増幅回路のグランド端子と導電性シートが電気的に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の筋電位を計測するための計測装置であって、外界電磁波ノイズの遮断性能の高い筋電位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータ付きの義手や義足、又は、いわゆるパワードスーツを動かすためのHMI(Human Machine Interface)として、あるいは運動状態を計測する装置として筋電位計測装置が用いられることがある。筋電位は微弱であるため、外界ノイズの除去が重要である。例えば特許文献1には、被験者の生体信号の測定を妨害する外界からの電磁波ノイズを遮断する衣服が提案されている。その衣服は、表生地又は裏生地に導電性の布を用い、生体信号を増幅する増幅手段のGNDと衣服の導電性の布を電気的に接続している。そのような構成により衣服がいわゆる電磁波シールドとして機能し、電磁波ノイズを遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、導電性の布を使った衣服を電磁波シールドとして利用するものであるが、電磁波ノイズに敏感な筋電位計測用電極が衣服で確実に覆われる保証がない。特許文献1の技術では、電磁波ノイズが衣服の隙間から漏れ入って筋電位計測用電極に影響を及ぼす虞がある。本発明は上記課題に鑑みて創作された。本発明は、電磁波ノイズを効果的に遮断することのできる筋電位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の筋電位計測装置は、導電性シート、筋電位計測用電極、及び、増幅回路を備えている。導電性シートは、柔軟性と伸縮性を有しているとともに、人体に一巡して巻き付けることができる形状を有している。導電性シートは典型的には筒状に形成されていてよい。或いは、導電性シートは、両端をホックやファスナなどで留めることによって筒状となる平面状のシートであってもよい。筋電位計測用電極は、導電性シートの人体に面する側に導電性シートから絶縁されて取り付けられている。増幅回路は、筋電位計測用電極と電気的に接続されており、筋電位計測用電極が検出する筋電位を増幅する。そして本発明の筋電位計測装置は、増幅回路のグランド端子と導電性シートが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の筋電位計測装置は、筋電位計測用電極を導電性シートの内側面に配置しており、その導電性シートが人体を一巡して筒状に筋電位計測用電極を覆っている。そのような構成により、本発明の筋電位計測装置は、高い電磁波ノイズ遮断効果を得ることができる。なお、「導電性シートの内側面」とは、人体に接する側の面を意味する。
【0007】
本発明の筋電位計測装置はさらに、筋電位計測用電極のインピーダンスを低くするインピーダンス変換回路が、導電性シートの人体に面する側に取り付けられていることが好ましい。このとき、筋電位計測用電極は、インピーダンス変換回路を介して増幅回路と電気的に接続される。このように構成すると、筋電位計測用電極側のインピーダンスに対して増幅回路側のインピーダンスを高くすることができるので、筋電位計測用電極と増幅回路を繋ぐために導電性シートの外側へ引き出されるケーブルが電磁波ノイズに曝されても、ケーブルを伝播する信号に重畳したノイズの筋電位計測用電極への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁波ノイズを効果的に遮断することのできる筋電位計測装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施例の筋電位計測装置の模式的外観図である。
【図2】第1実施例の筋電位計測装置を腕に装着した状態を示す。
【図3】第1実施例の電極ユニットの拡大断面図である。
【図4】第2実施例の筋電位計測装置の電極ユニットの拡大断面図である。
【実施例1】
【0010】
図1に、第1実施例の筋電位計測装置10の模式的外観図を示す。図2に、筋電位計測装置10をユーザの腕に装着した状態を示す。図3に、筋電位計測装置10に配置された電極ユニット40の拡大断面図を示す。筋電位計測装置10は、電極ユニット40をアレイ状に取り付けた筒状の導電性シート12と、筋電位計測用電極14で検出する筋電位を増幅する増幅回路16を備える。筋電位計測用電極14は、電極ユニット40の内側に配置されている。電極ユニット40は導電性シート12を貫通しているが、筋電位計測用電極14は、導電性シート12の内側面に、導電性シート12から絶縁されて配置されている。導電性シート12は、柔軟性と伸縮性を有しており、図2に示すようにユーザの腕に巻き付けることができる。この筋電位計測装置10は、腕に限らず、ユーザの脚に巻き付けて脚の筋肉に発生する筋電位を計測することもできる。以下では簡単のため、「筋電位計測用電極14」を「検出電極14」と換言することがある。なお、増幅回路16は、従来の筋電位計測装置で用いられるものを使えばよいので詳細な説明は省略する。
【0011】
図1、図2に示す符号18は、導電性シート12と増幅回路16のグランド端子を電気的に接続するケーブルである。なお、図1と図2では、各筋電位計測用電極14と増幅回路16を電気的に接続するケーブルの図示を省略している。
【0012】
図3を参照して電極ユニット40の構造を説明する。図3において、導電性シート12の下側が、人体の皮膚に触れるシート内側に相当する。以下、「内側」とは、導電性シート12や後述する固定具28a、28b、或いは絶縁材26等において、導電性シート12を人体に巻きつけたときに、人体に近い側の面を意味する。別言すれば、「内側」とは、筒状の導電性シート12の筒の中心に近い側を意味する。図3に示すように、検出電極14は導電性シート12の内側に配置されている。
【0013】
電極ユニット40は、検出電極14、ICチップ22、ICチップ22と検出電極14の間の配線、及びICチップ22と外部ケーブル32の間の配線をレイアウトしたフレキシブル基板20、スペーサ24、絶縁材26、及び、それらの部品を導電性シート12に固定するための固定具28a、28bから構成されている。
【0014】
検出電極14の周辺の回路構成を概説する。検出電極14は、ボルテージフォロワを構成するためのICチップ22を介して増幅回路16と電気的に接続される。なお、ボルテージフォロワがインピーダンス変換回路の一例に相当する。ICチップ22はオペアンプを内蔵している。オペアンプの出力端が反転入力端に接続しており、非反転入力端に検出電極14が接続しており、出力端が増幅回路16に接続していることによってボルテージフォロワが構成される。検出電極14とICチップ22はフレキシブル基板20を介して接続している。ICチップと外部ケーブル32もフレキシブル基板20を介して接続している。符号22aはICチップ22の端子を示しており、端子22aがフレキシブル基板20内の配線によって検出電極14と接続している。符号22bはICチップの他の端子群を示しており、端子群22bがフレキシブル基板20内の配線によって外部ケーブル32内の信号線群34と接続している。なお、外部ケーブル32の他端は増幅回路16に接続している。増幅回路16とICチップ22は3本の信号線で接続している。3本の信号線は、夫々、オペアンプ駆動用の正負の電源線、及び、オペアンプの出力信号線に相当する。
【0015】
電極ユニット40の物理的構成を説明する。フレキシブル基板20の一方の面に検出電極14が取り付けられており、他方の面にICチップ22が取り付けられている。ICチップ22の上面にスペーサ24が取り付けられており、フレキシブル基板20は、ICチップ22とスペーサ24を挟み込むように折り曲げられている。折り曲げられたフレキシブル基板20は、検出電極14を内側に向けて導電性シート12に取り付けられている。フレキシブル基板20は、絶縁材26、固定具28aを挟んで導電性シート12に固定されている。
【0016】
固定具28a、28bが、フレキシブル基板20等を介して検出電極14を導電性シートに固定している。固定具28a、28bは、導電性シート12の両面に夫々取り付けられている。固定具28a、28bは、例えばスナップボタンで代用することができる。固定具28a、28bは金属製であってよいし、樹脂製であってもよい。シート内側に位置する固定具28aの内側に、樹脂製の絶縁材26が取り付けられている。固定具28a、28b、導電性シート12、及び、絶縁材26には、それらを貫通する貫通孔30が設けられており、その貫通孔30を外部ケーブル32が導電性シート12の外側から内側へ通じている。前述したように、外部ケーブル32の一端はフレキシブル基板20に接続しており、外部ケーブル32、フレキシブル基板20、ICチップ22を介して検出電極14が増幅回路16に接続している。
【0017】
外部ケーブル32とは別に、ケーブル18を介して増幅回路16のグランド端子が導電性シート12に電気的に接続している。
【0018】
筋電位計測装置10の特徴を説明する。図2、図3に示すように、検出電極14は筒状の導電性シート12の内側に固定されており、導電性シート12は増幅回路16のグランド端子に接続している。導電性シート12の電位は常に増幅回路のグランド電位に保たれる。導電性シート12が常に安定なグランド電位に保たれることによって、外部の電磁波ノイズを遮断し、筒状の内側の電場が安定化する。すなわち、筒状の導電性シート12は電磁波シールドの機能を果す。図2に示すように、使用時には検出電極14が確実に導電性シート12に覆われるので、検出電極14が外部電磁波ノイズから確実に保護される。そのため、この筋電位計測装置10は、外部電磁波ノイズを効果的に遮断することができる。
【0019】
導電性シート12は柔軟性と伸縮性を備えているので、筋電位計測装置10の使用時には導電性シート12が人体の皮膚に触れる。そのため、人体の基本電位も増幅回路のグランド電位に保たれる。この特徴も、筋電位計測装置10の電磁波ノイズ遮断効果に寄与している。
【0020】
ボルテージフォロワを構成するICチップ22が導電性シート12の内側に配置されていることも電磁波ノイズの影響低減に寄与する。ボルテージフォロワは、検出電極14におけるインピーダンスをそれより低いインピーダンスに変換する。それゆえ、外部ケーブル32が外部電磁波ノイズに曝されても、信号に重畳するノイズが検出電極14に与える影響を低減することができる。
【実施例2】
【0021】
図4を参照して第2実施例の筋電位計測装置100を説明する。なお、第1実施例の筋電位計測装置10と同じ部品には同じ符号を付している。図4は、筋電位計測装置100の電極ユニット140の拡大断面図を示している。第2実施例の電極ユニット140は、第1実施例のフレキシブル基板20、スペーサ24、及び絶縁材26の代わりに平板状の基板120と、スペーサを兼ねる絶縁材126を採用している。絶縁材126は、樹脂で形成されており、ICチップ22を埋設している。また、絶縁材126は、外部ケーブル32のガイド及び固定機能も兼ねている。図4では詳細な結線構造の図示を省略しているが、外部ケーブル32を通る信号線34は、絶縁材126を通って基板120に接続されており、基板120を介してICチップ22の端子群22bに接続している。また、オペアンプの非反転入力端に相当するICチップ22の端子22aが、基板120を介して検出電極14に接続している。図4から明らかなとおり、第2実施例の筋電位計測装置100でも、絶縁材126が導電性シート12と検出電極14の間を絶縁しているとともに、導電性シート12が増幅回路16のグランド端子に接続している。この筋電位計測装置100も、第1実施例の筋電位計測装置10と同じ効果を奏する。
【0022】
以上、本発明の好適な実施例を説明した。本発明の筋電位計測装置は、単極誘導方式と双極誘導方式のいずれの方式にも適用することができる。双極誘導方式の場合は、基準電極を含む全ての検出電極を導電性シートの内側に配置することが好ましい。単極誘導方式の場合は、不感電極は、検出電極から離れた部位、例えば手首の豆状骨の付近に貼着される。本発明を単極誘導方式に適用する場合は、検出電極を配置した導電性シートとは別の第2の導電性シートの内側に不感電極を配置し、その第2の導電性シートを使って不感電極を人体に取り付けることが好ましい。その場合も、不感電極は第2の導電性シートから絶縁して配置するとともに、第2の導電性シートを増幅回路のグランド端子と接続することが好ましい。
【0023】
導電性シートと電極ユニット(検出電極)との固定を確実にするために、固定具の周囲を接着剤で固めることも好適である。また、実施例では筒状の導電性シートを採用した。導電性シートは、ファスナやホックなどによって筒を構成することができる平面状のシートであってもよい。
【0024】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0025】
10、100:筋電位計測装置
12:導電性シート
14:筋電位計測用電極(検出電極)
16:増幅回路
18、34:ケーブル
20:フレキシブル基板
22:ICチップ
24:スペーサ
26、126:絶縁材
28a、28b:固定具
30:貫通孔
40、140:電極ユニット
120:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性と伸縮性を備えており、人体に一巡して巻き付けることが可能な導電性シートと、
導電性シートの人体に面する側に導電性シートから絶縁されて取り付けられている筋電位計測用電極と、
筋電位計測用電極と電気的に接続されており、筋電位計測用電極が検出する筋電位を増幅する増幅回路と、
を備えており、
増幅回路のグランド端子と導電性シートが電気的に接続されていることを特徴とする筋電位計測装置。
【請求項2】
筋電位計測用電極のインピーダンスを低くするインピーダンス変換回路が、導電性シートの人体に面する側に取り付けられており、インピーダンス変換回路を介して筋電位計測用電極が増幅回路と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の筋電位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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