説明

筋鞘にnNOSを回復させる合成ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子

本発明は、全長ジストロフィン遺伝子の本質的な生物学的機能を保持する新規ジストロフィンミニ/ミクロ遺伝子を提供する。より詳細には、本発明は、筋鞘に神経の一酸化窒素合成酵素(nNOS)を回復させることができる、一組の合成ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子を提供する。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)およびX連鎖性拡張型心筋症(XLDC)の治療のための医薬組成物とともに方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する記述
本発明は、少なくとも部分的に米国国立衛生研究所からのグラント番号AR49419下の政府支援により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有することができる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年1月18日に出願された米国仮出願シリアル番号60/881,129および2007年10月16日に出願された60/999,321の利益を主張する。
【0003】
本発明は、全長ジストロフィン遺伝子の本質的な生物学的機能を保持する新規ジストロフィンミニ/ミクロ遺伝子に関する。より詳細には、本発明は、筋鞘に神経の一酸化窒素合成酵素(nNOS)を回復させることができる、一組の合成ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子に関する。
【背景技術】
【0004】
ジストロフィン欠損筋肉疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)およびX連鎖性拡張型心筋症(XLDC)を含む。それらは最も一般的な遺伝性疾患の一つであり、3,000人の新生児当たり1人以上の男児が発症する。患者は進行性の筋変性および衰弱のために通常10代前半までに車椅子使用を余儀なくされ、20代前半までに死に至る。女性保因者も40代から50代に発症する。上述の筋肉疾患は、ジストロフィン遺伝子中の変異(特にX連鎖性劣性突然変異)によって引き起こされる。ジストロフィン遺伝子は現在までに知られている最大の遺伝子であり、79エクソン、約11.5kbのコード配列および高率のデノボ変異でX染色体上のおよそ240万塩基対にわたって存在する。
【0005】
現在のところ、ジストロフィン欠損疾患のための効果的な治療はない。細胞治療法および遺伝子治療法を含む新規遺伝学研究法が積極的に探究されてきた。しかしながら、ジストロフィンの遺伝子およびmRNA(14キロベース;kb)の並はずれた大きさは、遺伝子治療法の開発への手ごわい障壁である。この理由のために、より小さな簡略型のミニジストロフィンまたはミクロジストロフィン遺伝子の開発に注目した研究が行なわれてきた。これらの簡略伝子はウイルスベクター(AAVベクターおよびレンチウイルスベクターなど)経由で、または幹細胞(中胚葉性血管芽細胞、CD133+幹細胞およびサイドポピュレーション細胞など)経由で導入することができる(Yuasa et al., 1998; Wang et al., 2000; Ferrer et al., 2000; Harper et al., 2002; Fabb et al., 2002; Sakamoto et al., 2002; Bachrach et al., 2004; Sampaolesi et al., 2006; Benchaouir et al 2007, Cell Stem Cell 1 :646-657)。ミクロ遺伝子は、5kb以下のコード配列を有しており、単一のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)中にパッケージジングできる、天然に存在するジストロフィン遺伝子および合成ジストロフィン遺伝子を一般的に指す。ミニ遺伝子は、10kbと等しいかまたはそれ未満であるが5kbよりも大きいコード配列を有する合成ジストロフィン遺伝子を指す。ミニ遺伝子は単一のAAVベクター中にパッケージングできないが、オーバーラッピングベクター、トランススプライシングベクターおよびハイブリッドベクターなどデュアルベクターの変形物を介して提供することができる。
【0006】
野生型ジストロフィン遺伝子は2つの主要な生物学的機能を保有する。1つは、筋肉膜が収縮の間に安定化されるように、細胞骨格と細胞外マトリックスの間の機械的結合を提供することである。他は多数の重要な細胞活動のためのシグナル伝達機能を提供することである。ジストロフィンのシグナル伝達機能は、神経の一酸化窒素合成酵素(nNOS)と呼ばれるパートナータンパク質を介して主に遂行される(Rando, 2001)。いくつかの研究は、nNOSが全長ジストロフィンタンパク質によって筋鞘に動員されることを示してきた(Brenman et al., 1995; Brenman et al., 1996)。最近の研究は、ジストロフィン欠損筋肉中のnNOSの損失がDMDの動物モデルおよびヒトDMD患者における疾患進行に有意に関与することをさらに示唆した(Brenman et al., 1995; Chang et al., 1996; Thomas et al., 1998; Sander et al., 2000)。さらに、nNOSの遺伝子導入による過剰発現は、DMDのmdxマウスモデルにおける筋肉病理を改善する(Wehling et al., 2001; Tidball and Wehling-Henricks, 2004; Shiao et al., 2004; Wehling-Henricks et al., 2005)。
【0007】
ジストロフィンのミニ遺伝子およびミクロ遺伝子を作製する試みが報告された。例えば、ΔR4−R23/ΔCミクロジストロフィンは、DMDのマウスモデルにおける組織病理を低減することができる。しかしこのミクロタンパク質は、筋肉特異的力を正常レベルへ回復することができない(Harper et al, 2002; Gregorevic et al., 2004; Liu et al., 2005; Yue et al., 2006; Gregorevic et al., 2006)。ΔH2−R19ミニジストロフィン遺伝子は非常に軽症の患者に由来する(England et al., 1990; Harper et al., 2002)。このミニ遺伝子は全長ジストロフィン遺伝子と同じレベルへ筋肉特異的力を回復できるので、このミニ遺伝子はΔR4−R23ミクロ遺伝子またはΔR4−R23/ΔCミクロ遺伝子よりも優れている(Harper et al., 2002; Lai et al., 2005)。しかし、このミニ遺伝子はnNOSを回復することができない。実際のところ、既存のミニジストロフィン遺伝子またはミクロジストロフィン遺伝子のどれも、筋鞘へnNOSを動員する能力を有していない(表1)(Chao et al., 1996; Crawford et al., 2000; Warner et al., 2002; Wells et al., 2003; Torelli et al., 2004; Lai et al., 2005; Yue et al., 2006; Li et al., 2006; Judge et al., 2006)。筋鞘のnNOSを回復させないことは、著しく最小化ジストロフィン遺伝子の治療有効性を低減するだろう。
【0008】
以前には、nNOSは、ジストロフィンタンパク質のC末端ドメインを通して筋鞘に動員されると考えられた(Brenman et al., 1995; Brenman et al., 1996)。全長ジストロフィンタンパク質は,N末端ドメイン、中央のロッドドメイン、システインリッチドメインおよびC末端ドメインを含む4つのドメインを有する。N末端ドメインおよび中央のロッドドメインの一部は、細胞骨格タンパクFアクチンと相互作用する。中央のロッドドメインは24のスペクトリン様リピートおよび4つのヒンジを含む。システインリッチドメインは、細胞外マトリックスへジストロフィンを結合するために膜貫通型タンパク質ジストログリカンと相互作用する。C末端ドメインは、2つのシントロフィン結合部位および1つのジストロブレビン結合部位を含む。いくつかの研究は、nNOSとα−シントロフィンとの間のPDZ/PDZドメイン相互作用を介して、筋鞘にnNOSが動員されることを示唆する(Brenman et al., 1996; Hillier et al., 1999; Kameya et al., 1999; Tochio et al., 1999; Adams et al., 2001; Miyagoe-Suzuki and Takeda, 2001)。このことから、C末端ドメインを備えたミニ遺伝子またはミクロ遺伝子が筋鞘へnNOSを動員することを示唆するように思われる。しかし、既存のC末端ドメイン含有ミニ/ミクロジストロフィンタンパク質のどれもnNOSを筋鞘にもたらすことができないが、シントロフィンはこれらの場合において筋鞘に完全に局在することが研究により繰り返し示された(Chao et al., 1996; Lai et al., 2005)。さらに、C末端短縮型全長ジストロフィンタンパク質はnNOSを筋鞘へ動員することが示された(Crawford et al., 2000)。
【0009】
表1は、いくつかの天然に存在するジストロフィン遺伝子ならびにいくつかの代表的な合成ジストロフィンミニ遺伝子およびミクロ遺伝子の構造および機能を評価し要約する。検査したすべての遺伝子の中で、天然アイソフォームのDp427(全長ジストロフィン遺伝子)およびDp260(全長遺伝子の網膜のアイソフォーム)、ならびにC末端短縮型全長遺伝子(Δ7178)のみが筋鞘にnNOSを回復させることが確認された。しかし上で論じられたように、これらの遺伝子はAAVまたはレンチウイルスのベクターパッケージングのためには大きすぎる。
【0010】
したがって、筋鞘にnNOSを回復させ、DMD、BMDおよびXLDCの治療における遺伝子療法のために使用される能力を備えた新規ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子またはそのシリーズを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、全長ジストロフィン遺伝子と比較して著しく減少した大きさであり、機械的結合機能および筋鞘への神経の一酸化窒素合成酵素(nNOS)などのシグナル伝達機能の両方を回復できる新規ジストロフィンミニ遺伝子およびミクロ遺伝子を同定した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、全長ジストロフィンタンパク質のN末端ドメイン、システインリッチドメイン、中央のロッドドメインの2つまたは複数のリピートおよび中央のロッドドメインの2つまたは複数のヒンジを保持する修飾されたジストロフィンポリペプチドまたは非全長のジストロフィンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(本出願においてミニ遺伝子またはミクロ遺伝子とも呼ばれる)を対象とする。好ましくは、核酸分子は、中央のロッドドメインの保持されるリピートの中の少なくともR16およびR17を保持する。H1およびH4は中央のロッドドメインの中の好ましい保持されるヒンジである。特定の態様において、本発明のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子によってコードされる修飾されたジストロフィンポリペプチドまたは非全長ジストロフィンポリペプチドは、全長ジストロフィンタンパク質のC末端ドメインをさらに保持する。
【0013】
他の特定の態様において、本発明はミニ/ミクロジストロフィン遺伝子ΔH2−R15(配列番号:7)、ΔH2−R15/ΔC(配列番号:10)、ΔH2−R15/ΔR18−19(配列番号:8)、ΔR3−15/ΔR18−23/ΔC(配列番号:12)、ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC()(配列番号:13)、ΔR2−15/ΔH3−R23/ΔC(配列番号:11)のそれぞれ、またはその修飾物もしくは変形物によってコードできる配列番号:1に記載されるようなアミノ酸配列を有する、修飾されたジストロフィンポリペプチド分子または非全長ジストロフィンポリペプチド分子を提供する。図1Bおよび1Cも参照。
【0014】
別の態様において、本発明は、筋鞘に神経の一酸化窒素合成酵素(nNOS)を回復させることができる、本発明の核酸分子(ミニジストロフィン遺伝子および/またはミクロジストロフィン遺伝子)を送達するために、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を対象とする。本発明に従う組換えAAVベクター(単一ベクターまたはデュアルベクター)は、筋鞘にnNOSを回復させることができる本発明の核酸分子(ミニジストロフィン遺伝子またはミクロジストロフィン遺伝子)の任意の1つ、発現カセット(プロモーターおよびポリA)およびウイルス逆方向末端リピート(ITR)を含む。本発明の特定の態様は、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC、AV.ミニCMV.ΔR3−15/ΔR18−23/ΔC、AV.ミニCMV.ΔR2−15/ΔH3−R23/ΔC、AV.ΔH2−R15ドナー/AV.ΔH2−R15アクセプター、AV.ΔH2−R15/ΔR18−19.ヘッド/AV.ΔH2−R15/ΔR18−19.テイルおよび修飾物またはその変形物を含むが、これらに限定されない例示的なAAVベクターを提供する。本発明は、レンチ.CK6.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC、レンチ.CK6.ΔR3−15/ΔR18−23/ΔCおよびレンチ.CK6.ΔH2−R15を含むが、これらに限定されない例示的なレンチウイルスベクターもまた提供する。図2を参照。本発明に従って、デュアル組換えAAVベクターシステムは2つのAAVベクターを含み、2つのAAVベクターの1つは本発明の核酸分子の一部、ミニ遺伝子またはミクロ遺伝子を含み、もう1つのベクターは残りの部分の核酸分子、ミニ遺伝子またはミクロ遺伝子を含み、2つのベクターは互いとの組換えで全長の核酸分子、ミニ遺伝子またはミクロ遺伝子を産生することを可能にする配列をさらに含む。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体あり、またはその担体なしで、本発明(ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子)の核酸分子の治療上の有効量を被験体(subject)に投与することによって、被験体におけるDMD、BMDおよび/またはXLDCの治療のための方法を対象とする。特定の態様において、本発明の方法に従う投与経路は、患者における局部的な筋肉機能を改良する局部的または局所的な筋肉内注射、患者の部位または全身におけるすべての筋肉への全身的な送達(静脈内、動脈内、腹腔内および心臓内などの)、AAVまたはレンチウイルスベクターによる筋幹細胞のインビトロの感染に続く局部的および/または全身的な送達を含むが、これらに限定されない。なおさらなる別の態様において、本発明は、1つまたは複数の本発明のAAVベクターおよびレンチウイルスベクターならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を対象とする。
本特許または出願ファイルは、少なくとも1枚のカラーで作製された図面を含む。カラー図面を備えたこの特許または特許出願公報のコピーは、請求して必要な料金の支払いをすると官庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】全長ジストロフィン遺伝子および一連のミニ/ミクロジストロフィン遺伝子の構造および対応するnNOS回復能力を示した図である。
【図1B】ヒトジストロフィン遺伝子およびタンパク質からのR16およびR17のDNA配列およびアミノ酸配列を示した図である。垂直線の前の配列はR16であり、垂直線の後の配列はR17である。
【図1C】ヒト、アカゲザル(マカカ・ムラタ(macaca mulatta))、ブタ(サス・スクローファ(sus scrofa))、イヌ(カニス・ファミリアリス(canis familliaris))、マウス(ムス・ムスクルス(mus musculus))およびニワトリ(ガルス・ガルス(gallus gallus))を含む、異なる種からのジストロフィン遺伝子のR16およびR17からのDNA配列アライメントを示した図である。異なる種の間で同一のアミノ酸を星印でマークする。異なる種の間で相同性の高いアミノ酸を2つのドットでマークする。異なる種の間で相同性が中程度のアミノ酸を1つのドットでマークする。
【図2】発明のジストロフィンミニ/ミクロ遺伝子を保有する、AAVベクターおよびレンチウイルスベクターの構造を示した図である。
【図3】全長ジストロフィン遺伝子、および本発明者によって開発されたいくつかの合成ミニジストロフィン遺伝子の診断用の切断を示した図である。これらのミニ遺伝子の構造は図1中で略述される。これらのミニ遺伝子のnNOS回復に関する生物学的機能は、図4中で詳細に検討される。
【図4】全長ジストロフィン遺伝子またはいくつかの合成のミニジストロフィン遺伝子(ΔH2−R15、ΔH2−R16、ΔH2−R17またはΔH2−R19)を保有するプラスミドによる処理後に、2か月齢のジストロフィン欠損mdxマウスの骨格筋におけるnNOS回復およびジストロフィン発現の免疫蛍光法(IF)分析を示した図である。未処理のmdx筋肉中の復帰線維のクローンもまた示す。発現を注入後に2〜3週間で検討した。
【図5】本発明者の研究室において合成された追加のミニ/ミクロ遺伝子(ΔH2−R15/ΔR18−19、ΔH2−R15/ΔCおよびΔR3−15/ΔR18−23/ΔC)を保有するプラスミドによる処理後に、ジストロフィン欠損mdxマウスの骨格筋におけるnNOS回復およびジストロフィン発現の追加のIF分析、ならびにnNOS活性の組織酵素染色を示した図である。未処理の(プラスミドなし)mdx筋肉中の復帰線維もまた示す。
【図6A】他の研究者(Wangなど、2000)によって開発されたΔ3849ミクロ遺伝子発現カセットの構造に対して、本発明者によって開発されたミクロ遺伝子ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを保有するAAVベクターの構造を比較した図である。
【図6B】正常マウス筋肉におけるnNOS、ヒトジストロフィンおよびnNOS活性のIFおよび組織酵素染色を示した図である。
【図6C】mdxマウス筋肉における、nNOS、ヒトジストロフィンおよびnNOS活性のIFおよび組織酵素染色を示した図である。
【図6D】Δ3849ミクロ遺伝子による遺伝子導入mdxマウス筋肉における、nNOS、ヒトジストロフィンおよびnNOS活性のIFおよび組織酵素染色を示した図である。
【図6E】発明のΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子を保有するAAV−6ベクターによる処理後のmdxマウス筋肉における、nNOS、ヒトジストロフィンおよびnNOS活性のIFおよび組織酵素染色を示した図である。
【図7A】本発明のΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子を保有するAAV−9ベクターによる処理後のmdxマウス筋肉における、nNOS、ヒトジストロフィン(それぞれN末端ドメイン、R16、R17およびH3)のIFおよび組織酵素染色ならびにnNOS活性を示した図である。AAVベクターの構造もまた示す。
【図7B】本発明のΔR3−15/ΔR17−23/ΔCミクロ遺伝子を保有するAAV−9ベクターによる処理後のmdxマウス筋肉における、nNOS、ヒトジストロフィン(それぞれN末端ドメイン、R16、R17およびH3)のIFおよび組織酵素染色ならびにnNOS活性を示した図である。AAVベクターの構造もまた示す。
【図8A】nNOSのPDZドメインとR16−17との間の正の相互作用を示すが、R16またはR17との間では示さない、酵母ツーハイブリッド分析を図示した図である。酵母ツーハイブリッド分析において使用するコンストラクトの図式的なアウトラインである。nNOSのPDZドメインを、DNA結合ドメインを含むコンストラクト中で操作する。このコンストラクトはトリプトファン(Trp)もまた発現する。このコンストラクトはTrp欠損培地(Trp−)中で増殖できる。R16、R17、R16−17またはシントロフィンPDZドメインを、DNA活性化ドメインを保有するコンストラクト中で操作する。これらのコンストラクトはロイシン(Leu)を発現し、Leu欠損培地(Leu−)中で増殖できる。R16−17の構造はR16またはR17の構造とは異なる。DNA結合ドメインとDNA活性化ドメインとの間の相互作用により、ヒスチジン(His)産生が開始される。その結果として、これらの細胞はLeu−/Trp−/His−の三重欠損培地中で増殖できる。
【図8B】nNOSのPDZドメインとR16−17との間の正の相互作用を示すが、R16またはR17とは示さない、酵母ツーハイブリッド分析を図示した図である。Leu−/Trp−/His−の三重欠損培地上の代表的な酵母−ツーハイブリッド分析である。
【図8C】nNOSのPDZドメインとR16−17との間の正の相互作用を示すが、R16またはR17とは示さない、酵母ツーハイブリッド分析を図示した図である。Leu−/Trp−/His−の三重欠損培地上の代表的なドット希釈分析である。シントロフィンPDZドメインDNA活性化コンストラクトまたはR16−17DNA活性化コンストラクトの共形質転換により、酵母増殖がもたらされた。R16DNA活性化コンストラクトまたはR17DNA活性化コンストラクトによる共形質転換によっては増殖はなかった。チェックマーク、酵母細胞は三重欠損培地中で増殖した;×、酵母細胞は三重欠損培地中で成長しなかった。
【図9A】ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子は、mdx骨格筋中の筋鞘全体性を増強することを示した図である。AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCをAAV−6ベクター中にパッケージングした。6×1010vg粒子のベクターを、2か月齢のmdxマウス(N=4)の腓腹筋に送達した。エバンスブルー色素取り込み分析をAAV感染40日後で実行した。AAVに感染した筋肉の連続的な筋肉切片の代表的な低倍率蛍光抗体染色顕微鏡写真。それぞれの抗体によって認識されるエピトープを、各顕微鏡写真について示した。ミクロジストロフィンは筋鞘に沿って発現される。エバンスブルー色素は傷ついた筋線維の内部に蓄積する。
【図9B】ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子は、mdx骨格筋中の筋鞘全体性を増強することを示した図である。AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCをAAV−6ベクター中にパッケージングした。6×1010vg粒子のベクターを、2か月齢のmdxマウス(N=4)の腓腹筋に送達した。エバンスブルー色素取り込み分析をAAV感染40日後で実行した。AAVに感染した筋肉の連続的な筋肉切片の代表的な高倍率蛍光抗体染色顕微鏡写真。それぞれの抗体によって認識されるエピトープを、各顕微鏡写真について示した。ミクロジストロフィンは筋鞘に沿って発現される。エバンスブルー色素は傷ついた筋線維の内部に蓄積する。
【図10A】ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子およびΔR4−23/ΔCミクロ遺伝子が、mdxマウスの筋力改善を同じ水準でもたらすことを示した図である。AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCおよびAV.CMV.ΔR4−23/ΔCを、AAV血清型−9(AAV−9)中にパッケージングした。
【図10B】ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子およびΔR4−23/ΔCミクロ遺伝子が、mdxマウスの筋力改善を同じ水準でもたらすことを示した図である。AAV−9ベクターを顔面静脈注入経由でオスmdxマウス新生仔に送達した(1×1012vg粒子/ベクター/マウス)。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋の特異的力をAAV感染3か月後に測定した。年齢および性別が一致したBL10マウスおよびmdxマウスを筋力測定のための対照として含んだ。星印、BL10のEDL筋特異的力は他の群よりも有意に高かった。十字形、AAV感染マウスの特異的力は、mdx群よりも有意に高かったが、BL10群の特異的力よりも低かった。AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染マウスとAV.CMV.ΔR4−23/ΔC感染マウスとの間の統計的な差はなかった。サンプルサイズは、BL10についてはN=4;mdxについてはN=5;N=AV.CMV.ΔR4−23/ΔC感染mdxマウスについては6;N=AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染mdxマウスについては5である。
【図11A】mdx4cvマウス新生仔におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的送達により、骨格筋特異的力が改良されたことを示した図である。1×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを、顔面静脈注入経由でオスmdx4cvマウス新生仔に送達した。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋特異的力を、AAV感染3か月後に調べた。年齢および性別が一致したBL6マウスおよびmdx4cvマウスを対照として含んだ。星印、BL6マウスの結果は、他の群の結果よりも有意によかった。十字形、AAV感染マウスの結果は、mdx4cv群の結果よりも有意によかったが、BL6群の結果よりも悪い。サンプルサイズは、BL6についてはN=7;mdx4cvについてはN=6;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染mdx4cvマウスについてはN=6である。
【図11B】mdx4cvマウス新生仔におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的送達により、血清中クレアチンキナーゼ(CK)レベルが低下したことを示した図である。1×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを、顔面静脈注入経由でオスmdx4cvマウス新生仔に送達した。血清中クレアチンキナーゼレベルを、AAV感染3か月後に調べた。年齢および性別が一致したBL6マウスおよびmdx4cvマウスを対照として含んだ。星印、BL6マウスの結果は、他の群の結果よりも有意によかった。十字形、AAV感染マウスの結果は、mdx4cv群の結果よりも有意によかったが、BL6群の結果よりも悪い。サンプルサイズは、BL6についてはN=7;mdx4cvについてはN=6;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染mdx4cvマウスについてはN=6である。
【図12A】成体のmyoD/ジストロフィンダブルノックアウトマウス(m−dko)におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的な送達は、骨格筋機能を改善することを示した図である。5.5×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを尾静脈注入経由で2か月齢のオスm−dkoマウスに送達した。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋の機能をAAV感染3か月後に検討した。年齢および性別が一致した未感染同腹仔を対照として含んだ。特異的単収縮力を示す(単一刺激下で)。星印、AAVに感染したマウスの結果は、感染していない対照の結果よりも有意によかった。筋肉機能分析のためのサンプルサイズは、未感染同腹仔対照についてはN=4;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染m−dkoマウスについてはN=14である。
【図12B】成体のmyoD/ジストロフィンダブルノックアウトマウス(m−dko)におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的な送達は、骨格筋機能を改善することを示した図である。5.5×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを尾静脈注入経由で2か月齢のオスm−dkoマウスに送達した。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋機能をAAV感染3か月後に検討した。年齢および性別が一致した未感染同腹仔を対照として含んだ。異なる頻度の強縮刺激下の特異的強縮力を示す。星印、AAVに感染したマウスの結果は、感染していない対照の結果よりも有意によかった。筋肉機能分析のためのサンプルサイズは、未感染同腹仔対照についてはN=4;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染m−dkoマウスについてはN=14である。
【図12C】成体のmyoD/ジストロフィンダブルノックアウトマウス(m−dko)におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的な送達は、骨格筋機能を改善することを示した図である。5.5×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを尾静脈注入経由で2か月齢のオスm−dkoマウスに送達した。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋機能をAAV感染3か月後に検討した。年齢および性別が一致した未感染同腹仔を対照として含んだ。10サイクルの遠心性収縮の間の力減少を示す。星印、AAVに感染したマウスの結果は、感染していない対照の結果よりも有意によかった。筋肉機能分析のためのサンプルサイズは、未感染同腹仔対照についてはN=4;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染m−dkoマウスについてはN=14である。
【図12D】成体のmyoD/ジストロフィンダブルノックアウトマウス(m−dko)におけるAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの全身的な送達は、血清中クレアチンキナーゼ(CK)レベルを低下させることを示した図である。5.5×1012vg粒子のAAV−9のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを尾静脈注入経由で2か月齢のオスm−dkoマウスに送達した。血清中クレアチンキナーゼレベルをAAV感染3か月後に検討した。年齢および性別が一致した未感染同腹仔を対照として含んだ。星印、AAVに感染したマウスの結果は、感染していない対照の結果よりも有意によかった。CK分析のためのサンプルサイズは、未感染同腹仔対照についてはN=3;AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC感染m−dkoマウスについてはN=6である。
【図13】トランススプライシングAAV(tsAAV)ベクターおよびオーバーラッピングAAVベクターにおける導入遺伝子再構成の図式的なアウトラインを示した図である。tsAAVベクターでは、ITR依存的組換えにより全長発現カセットを再構成する。ダブル−D ITRジャンクションは、操作されたスプライシングドナー(SD)およびアクセプター(SA)配列によって除去される。オーバーラッピングAAVベクターでは、共有領域は相同組換えを介して再結合する。ウイルスのITRは、このプロセスの間に除去される。
【図14】ハイブリッドAAVベクターにおける導入遺伝子再構成の図式的なアウトラインを示した図である。AV.CMV.LacZ.ハイブリッド5’ベクターは、CMVプロモーター、LacZ遺伝子の5’の半分、スプライシングドナー(SD)および872bpアルカリフォスファターゼ(AP)配列を含む。AV.CMV.LacZ.ハイブリッド3’ベクターは、872bpのAP配列、続いてスプライシングアクセプター(SA)、LacZ遺伝子の3’の半分およびSV40ポリアデニル化シグナル(ポリA)を含む。ベクターゲノムは、AAV−2のITRが隣接する。共感染に際して、AP配列仲介性相同組換え経由で完全なLacZ発現カセットを再構成できる。あるいは、ウイルスのITR仲介性ヘッドツーテイル組換え経由で完全なLacZ発現カセットを作製することができる。連結配列が細胞のスプライシング機構(点線)によって除去された後に、LacZ発現が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
公報、特許出願、特許、および本明細書において言及される他の参照はすべて、それらの全体を参照することによって組み入れられる。
【0018】
本発明は、AAVベクターまたはレンチウイルスベクターの中へパッケージングできるほど十分に小さく、しかもなおジストロフィー損傷から筋肉を保護するために必要な、機械的結合機能およびシグナル機能(筋鞘のnNOS関連機能などの)を含むがこれらに限定されない、全長野生型ジストロフィン遺伝子の本質的な機能を保つ、新規連のジストロフィンミニ遺伝子およびミクロ遺伝子を同定する。本発明は、合成ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子中のジストロフィンタンパク質の中央のロッドドメインのR16およびR17リピートの含有がnNOS回復のために決定的であると認識する。言いかえれば、R16およびR17を保持するミニ/ミクロジストロフィン遺伝子は、全長ジストロフィンタンパク質と同様の様式で筋鞘にnNOSタンパク質を回復させることができる。さらに本発明は、本発明のミニ/ミクロ遺伝子による処理から回復したnNOSタンパク質が、その生物学的機能(酵素活性)を保持することを認識する。
【0019】
「ジストロフィン遺伝子」によって、全長ジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸分子が意味される。本発明は、ヒト、マウス、およびイヌ(特にヒトから)を含むがこれらに限定されない、任意の哺乳類種に由来するジストロフィン遺伝子を用いることを検討する。特定の全長ジストロフィン遺伝子は、配列番号:2に記載のDNA配列を有しており、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する全長ジストロフィンタンパク質をコードする。「ドメイン」によって、タンパク質構造の一部が意味される。例えば、ヒトジストロフィンタンパク質の「N末端ドメイン」は、本明細書において参照されるように、およそ1〜およそ252のアミノ酸残基、特に配列番号:1のアミノ酸残基メチオニン1〜グルタミン酸252、より詳細には配列番号:17に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。同様に、ジストロフィンタンパク質の「中央のロッドドメイン」または「ロッドドメイン」は、本明細書において参照されるように、およそ253〜およそ3112の配列番号:1のアミノ酸残基、特に配列番号:1に記載のアミノ酸残基メチオニン253〜ロイシン3112を含み;ジストロフィンタンパク質の「システインリッチドメイン」は、本明細書において参照されるように、およそ3113〜およそ3408の配列番号:1のアミノ酸残基、特に配列番号:1に記載のアミノ酸残基アルギニン3113〜スレオニン3048、より詳細には配列番号:46に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、ジストロフィンタンパク質の「C末端ドメイン」は、本明細書において参照されるように、配列番号:1のおよそ3409〜3685のアミノ酸残基、特に配列番号:47に記載のアミノ酸残基プロリン3409〜メチオニン3685を含む。「ジストロフィンミクロ遺伝子」または「ミクロジストロフィン遺伝子」または「ミクロ遺伝子」によって、5kbまたはそれ未満の長さであり、N末端ドメイン、システインリッチドメイン、中央のロッドドメインの2つまたは複数のリピート、および全長ジストロフィンタンパク質の中央のロッドドメインの2つまたは複数のヒンジを保持する、修飾されたジストロフィンポリペプチドまたは非全長ジストロフィンポリペプチド(本出願においてミクロジストロフィンともまた呼ばれる)をコードする核酸分子が意味される。「ミクロジストロフィン」によって、全長ジストロフィンタンパク質の生物学的機能を保持し、そのコード配列が5kbまたはそれ未満である、修飾されたジストロフィンタンパク質分子または非全長ジストロフィンタンパク質分子が意味される。ミクロジストロフィンの例を図1中に示す。「ジストロフィンミニ遺伝子」、「ミニジストロフィン遺伝子」または「ミニ遺伝子」によって、5kbまたはそれ以上の長さであるがジストロフィンコード配列の全長未満であり、好ましくは5kb〜約10kbの間の長さ、より好ましくは約5kb〜約8kbの長さ、さらにより好ましくは約7kbの長さであり、N末端ドメイン、システインリッチドメイン、中央のロッドドメインの2つまたは複数のリピート(Rおよび番号によっても参照され、例えばR16はリピート番号16を意味する)および全長ジストロフィンタンパク質の中央のロッドドメインの2つまたは複数のヒンジを保持する、修飾されたジストロフィンポリペプチドまたは非全長ジストロフィンポリペプチド(本出願においてミニジストロフィンともまた呼ばれる)をコードする、核酸分子が意味される。「ミニジストロフィン」によって、全長ジストロフィンタンパク質の生物学的機能を保持し、そのコード配列が5kb以上の長さであるがジストロフィンコード配列の全長未満である、修飾されたジストロフィンタンパク質分子または非全長ジストロフィンタンパク質分子が意味される。
【0020】
ジストロフィンタンパク質の「生物学的機能」によって、細胞骨格と細胞外マトリックスとの間の機械的結合、および筋鞘へのnNOSの動員などのシグナル伝達機能を提供することを含むがこれらに限定されない機能が意味される。ジストロフィン遺伝子またはジストロフィンタンパク質に関連する「修飾された」によって、修飾されたジストロフィン遺伝子または修飾されたジストロフィンタンパク質分子が、ジストロフィン遺伝子の全長コード配列またはジストロフィンタンパク質の全長アミノ酸配列を含まないが、なお全長遺伝子または全長タンパク質の生物学的機能を保持するかまたは実質的に保持するように、変化させた野生型(または天然に存在する)全長ジストロフィン遺伝子またはジストロフィンタンパク質分子が意味される。
【0021】
「修飾されたN末端ドメイン」によって、野生型N末端ドメインまたは天然に存在するN末端ドメインとは構造および/または配列が異なるが、野生型N末端ドメインまたは天然に存在するN末端の機能を保持するN末端ドメインが意味される。「修飾または変更」によって、核酸分子またはポリペプチドの実質的な機能を保持する、および/または核酸分子もしくはポリペプチドと実質的に相同または類似/同一である、核酸分子またはポリペプチドに対する任意の変化(変異によってなど)が意味される。
【0022】
1つの実施形態において、本発明は、N末端ドメイン、中央のロッドドメインの2つまたは複数のスペクトリン様リピート、中央のロッドドメインの2つまたは複数のヒンジ領域および全長ジストロフィンタンパク質のシステインリッチドメインを保持する、修飾ジストロフィンポリペプチドまたは非全長ジストロフィンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(本出願においてミニ遺伝子またはミクロ遺伝子ともまた呼ばれる)を対象とする。
【0023】
特定の実施形態において、さらに本発明のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子は、ジストロフィンタンパク質のC末端ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。C末端ドメインの変異はDMD患者の認知表現型の相関することが示されている(Tuffery et al., 1995; Kerr et al., 2001)。さらに、C末端ドメイン変異も患者のサブセットにおいてDMDを引き起こすことが示されてきた(McCabe et al., 1989; Prior et al., 1995; Suminaga et al., 2004)。任意の特定の理論に限定しようと意図するものではないが、ジストロフィンタンパク質のC末端ドメインをコードするDNA配列をさらに含むミニジストロフィン遺伝子またはミクロジストロフィン遺伝子は、DMDに対するよりよい予防または治療を提供できると考えられる。具体的な実施形態において、中央のロッドドメインのリピートは、ヒト、イヌ、マウス、ブタ、ブタ、ウサギ、ニワトリを含むが、これらに限定されない任意の種からでありえる。
【0024】
好ましくは、本発明のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子の2つまたは複数のスペクトリン様リピートは、中央のロッドドメインのR16およびR17を含んでいる。しかしながら、本発明は、またR1−R15およびR18−R24から選択された1つまたは複数を含むR16およびR17の他の追加のスペクトリン様リピートをコードする配列を含むミニ遺伝子およびミクロ遺伝子を検討する。例えば、図1において示されるように、ミクロ遺伝子は、本発明の具体的な実施形態である、R1、R16、R17およびR24(例えば図1のΔR2−15/ΔR18−23/ΔC)、またはR1−R2、R16、R17およびR24(例えば図1のΔR3−15/ΔR18−23/ΔC)、またはR1、R16−R19およびR24(例えば図1のΔR2−15/ΔH3−23/ΔC)を含むことができる。本発明において使用されるシンボル“Δ”は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特定の配列または領域の欠失または欠損を意味する。例えば、ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCは、リピート2−15、リピート18−23およびC末端ドメインを欠失または欠損する1つのミクロ遺伝子を表わす。他の特定の実施形態において、本発明は、リピートR1−R3、リピートR16、リピートR17およびリピートR20−R24(例えば図1のΔR2−15/ΔR18−19)、またはリピートR1−R3およびリピートR16−R24(例えば図1のΔH2−R15)を含むミニ遺伝子を検討する。
【0025】
本発明のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子のヒンジ領域は、好ましくはH1およびH4のヒンジ領域を含むが、これらに限定されない。しかしながら、本発明は、H1およびH4の他の追加のヒンジ領域を含むミニ遺伝子およびミクロ遺伝子もまた検討する。例えば、図1は、本発明の具体的な実施形態であるミニ遺伝子(例えばΔR2−15/ΔR18−19およびΔH2−R15)中にH3を含むことができることを示す。
【0026】
1つの実施形態において、本発明は、全長ジストロフィンタンパク質の記載のN末端ドメイン(配列番号:17)、記載の中央のロッドドメインの2つまたは複数のスペクトリン様リピート(配列番号:19〜44)、中央のロッドドメインの2つまたは複数のヒンジ領域、例えば記載の(配列番号:18〜45および配列番号:1)および記載のシステインリッチドメイン(配列番号:46)を保持する修飾されたジストロフィンポリペプチドまたは非全長ジストロフィンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して実質的な相同性、類似性または同一性を有する、ヌクレオチド配列を含むミニ遺伝子またはミクロ遺伝子、またはヌクレオチド配列を対象とする。
【0027】
「実質的な相同性」、「実質的な類似性」または「実質的な同一性」によって、配列において、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の相同性、類似性または同一性を有する核酸またはアミノ酸配列が意味される。
【0028】
他の実施形態において、ミニ遺伝子またはミクロ遺伝子は、ストリンジェンシーが高い、中程度または低い条件下で、選択された配列にハイブリダイズする遺伝子である。37〜42℃の低いストリンジェンシーに対する本明細書における参照は、ハイブリダイゼーションについては、少なくとも約1%v/v〜少なくとも約15%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、ならびに洗浄条件については、少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含んで包含する。必要な場合には、ハイブリダイゼーションについては、少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、ならびに洗浄条件については、少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含んで包含する中間のストリンジェンシー、またはハイブリダイゼーションについては、少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩、ならびに洗浄条件については少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含んで包含する高いストリンジェンシーなどの、他のストリンジェンシー条件を適用できる。ハイブリダイゼーションは異なる温度で実行でき、このようなことが起こる場合には他の条件はそれに応じて調整できる。具体的なハイブリダイゼーション条件の例は、65℃でのハイブリダイゼーション、続いて2×SSC、0.1%SDSによる1回または複数回の洗浄、および0.2×SSCによる最終洗浄、より好ましくは室温または65℃もしくは68℃までの温度での0.1×SSCおよび0.1%SDSによる最終洗浄を含む。
【0029】
特定の実施形態において、修飾されたジストロフィンタンパク質は、記載の中央のロッドドメインのR16(配列番号:)および記載のR17(配列番号:)を含むが、これらに限定されない。しかしながら、本発明は、R16およびR17に加えて、記載のR1−R15から選択される他のスペクトリン様リピート(それぞれ配列番号:19〜34)、および記載のR18−R24(それぞれ配列番号:37〜44)もまた含む修飾されたジストロフィンタンパク質もまた検討する。例えば、図1において示されるように、修飾されたジストロフィンタンパク質は、本発明の特定の実施形態である、R1、R16、R17およびR24(例えば図1のΔR2−15/ΔR18−23/ΔC)、またはR1−R2、R16、R17およびR24(例えば図1のΔR3−15/ΔR18−23/ΔC)、またはR1、R16−R19およびR24(例えば図1のΔR2−15/ΔH3−23/ΔC)を含むことができる。他の特定の実施形態において、本発明は、リピートR1−R3、R16、R17およびR20−R24(例えば図1のΔR2−15/ΔR18−19)、またはR1−R3およびR16−R24(例えば図1ΔH2−R15)を含む修飾されたジストロフィンタンパク質を検討する。
【0030】
同様に、本発明のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子は、ヒンジ領域の記載のH1(配列番号:18)および記載のH4(配列番号:45)を好ましくは含むが、これらに限定されない。しかしながら、本発明は、H1およびH4の他にもヒンジ領域を含むミニ遺伝子およびミクロ遺伝子もまた検討する。例えば、図1は、本発明の特定の実施形態である、ミニ遺伝子中にH3を含むことができること(例えばΔR2−15/ΔR18−19およびΔH2−R15)を示す。
【0031】
さらにより好ましくは、本発明は、修飾されたジストロフィンタンパク質の記載のΔR2−15/ΔR18−23/ΔC(配列番号:13)、記載のΔR3−15/ΔR18−23/ΔC(配列番号:12)、記載のΔR2−15/ΔH3−23/ΔC(配列番号:11);ならびに修飾されたジストロフィンタンパク質の記載のΔR2−15/ΔR18−19(配列番号:8)および記載のΔH2−R15(配列番号:7)を対象とする。本発明のミクロ遺伝子およびミニ遺伝子の任意の修飾または変更もまた、本発明によって検討される。上述のミニ遺伝子またはミクロ遺伝子の発現産物をコードする縮重核酸分子は、本発明によって特に検討される。本発明に従って、ミクロ/ミニジストロフィン遺伝子は、当業者に公知であり、本出願において以下に提供される実施例において図示される従来技術によって、合成、作製、入手、組み立てることもできる。例えば、本発明のミニ遺伝子およびミクロ遺伝子は、分子生物学的技術によって、および実施例2および図3中に記載および示されるように、合成することができる。
【0032】
本発明のミニ遺伝子および/またはミクロ遺伝子によってコードされたポリペプチドもまた、本発明によって検討および包含される。
【0033】
さらに他の実施形態において、本発明は、本発明の核酸分子を送達できるベクターを提供する。目的のために適切な任意のベクターは本発明によって検討される。特に、本発明は、筋鞘にnNOSを回復させることができる本発明の核酸分子(ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子)を送達する、一連の組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)およびレンチウイルスベクターを提供する。本発明に従う組換えAAVベクター(単一ベクターまたはデュアルベクター)は、発現カセット(プロモーターおよびポリA)およびウイルス逆方向末端リピート(ITR)に作動可能に結合されて、筋鞘にnNOSを回復させることができる、本発明の核酸分子(ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子)の任意の1つを含む。
【0034】
好ましくは、本発明によって検討されるベクターは、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC、AV.ミニCMV.ΔR3−15/ΔR18−23/ΔC、AV.ミニCMV.ΔR2−15/ΔH3−R23/ΔC、AV.ΔH2−R15ドナー/AV.ΔH2−R15アクセプター、AV.ΔH2−R15/ΔR18−19.ヘッド/AV.ΔH2−R15/ΔR18−19.テイルなどのAAVベクターを含むが、これらに限定されない。これらのベクターの修飾または変更もまた本発明によって検討される。
【0035】
ミニジストロフィンポリペプチド分子またはミクロジストロフィンポリペプチド分子をコードするミニ遺伝子またはミクロ遺伝子は、上述および実施例2において以下に図示されるように、従来技術を用いることによって、作製することができる。次に、ミニ遺伝子またはミクロ遺伝子は、適切な制限酵素の使用によって取り出し、選択した発現カセット(好ましくはAAVベクターが適切)の中へ接合することができる。あるいは、精製したミニ遺伝子またはミクロ遺伝子核酸分子は既知の方法を使用して、全体を配列決定でき、次にアミノ酸配列をコードする任意のいくつかの翻訳的に等価な合成DNA配列を調製でき、この合成配列は適切な発現カセット(好ましくはAAVベクターが適切)へ挿入できる。多数の発現カセットおよびベクターが当技術分野において周知である。「発現カセット」によって、それらが適切なリーディングフレームで構造遺伝子に隣接するときに細胞中で機能する、開始配列、プロモーター配列および終始配列を含む、制御配列の完全なセットが意味される。発現カセットは、しばしばおよび好ましくは、任意の所望される構造遺伝子(例えば本発明のミクロ遺伝子またはミニ遺伝子)の切断および挿入のために適切な制限部位の組合せを含む。構造配列のために適切なリーディングフレームで、クローン化された遺伝子が開始コドンを有することは重要である。加えて、本発明のための発現カセットは、1つの末端で高い頻度で遺伝子を転写する強力な構成的プロモーター配列(例えばCMVプロモータ)、およびもう1つの末端でメッセンジャーRNAの適切なプロセッシングおよび輸送のためのポリA認識配列を好ましくは含む。本発明のミクロ遺伝子を挿入できるそのような好ましい(空の)発現カセットの例は、Yue et al(Yue & Duan 2002 Biotechniques 33(3):672- 678)中に記載されるような、pcis.RSVmcs、pcis.CMVmcs、pcis.CMVmcs−イントロン、pcis.SV40mcs、pcis.SV40mcs−イントロン、pcis.CK6mcsおよびpcis.CAGmcsである。本発明のミニ遺伝子を挿入できるそのような好ましい(空の)発現カセットの例は、Duan et al(Duan, Yue and Engelhardt 2003 Methods in Molecular Bioloev 219:29-51)中に記載されるようなpDD188、pDD293およびpDD295、ならびにGhosh et al(Ghosh, Yue, Lai and Duan 2008 Molecular Therapy 16:124-130)中に記載されるようなpAG15およびpAG21である。非常に好ましい発現カセットは、カナマイシン耐性遺伝子などの1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含むようにデザインされる。用語「ベクター」によって、宿主細胞中で外来遺伝子を複製および発現することができるDNA配列が意味される。典型的には、ベクターは適切な酵素の使用によって予測可能な様式で切断できる1つまたは複数のエンドヌクレアーゼ認識部位を有する。そのようなベクターは、形質転換細胞の同定および分離のためのマーカーを与える追加の構造遺伝子配列を含むように好ましくは構築される。好ましいマーカー/選択薬剤は、カナマイシン、クロロスルフロン、ホスフォノトリシン(phosphonothricin)、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートを含む。ベクター中で外来の遺伝物質が機能的に発現する細胞はベクターによって「形質転換され」、「形質転換体」と呼ばれる。
【0036】
特に好ましいベクターは、アデノ随伴ウイルスのゲノムに由来するが非病原性の一本鎖DNA分子のAAVベクターである。
【0037】
発現カセット中で使用できるプロモーターは、nosプロモーター、ocsプロモーター、ファゼオリンプロモーター、CaMVプロモーター、RSVプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター、CK6プロモーターおよびMCKプロモーターを含むが、これらに限定されない。所望される制御配列に作動可能に結合されたミニ遺伝子またはミクロ遺伝子を含む発現カセットは、送達のために適切なベクターの中へライゲーションすることができる。一般に、宿主細胞と適合性のある複製配列および対照配列を含むAAVベクターおよびレンチウイルスベクターを使用する。単一AAVベクターなどの適切なベクターは、典型的には、末端でウイルス逆方向末端リピート(ITR)を、そしてプロモーター、ならびにミクロ遺伝子およびポリAを保有する。
【0038】
「デュアルベクターシステム」によって、2つのベクター(例えばAAVベクター)からなり、両方のベクターが送達される遺伝子または配列の一部を保有し、遺伝子全体が2つのベクターの間の相互作用によって再構成される、ベクターシステムが意味される。
【0039】
1つの実施形態において、本発明のデュアルベクターシステム(例えばAAVデュアルベクターシステム)の2つのベクターは、トランススプライシングベクター(tsベクター、例えばtsAAVベクター)である。
【0040】
他の実施形態において、デュアルベクターシステム(例えばAAVデュアルベクターシステム)の2つのベクターは、本発明のハイブリッドベクター(例えばハイブリッドAAVベクター)である。トランススプライシングAAVベクターは、(単一AAVベクター中で提供されるものの他に)スプライシングドナーシグナルおよびスプライシングアクセプターシグナルを典型的には保有する。ハイブリッドAAVベクターは、好ましくは(単一AAVベクターおよびトランススプライシングベクター中で提供されるものの他に)ヒト胎盤アルカリフォスフォターゼ(phosphotase)遺伝子の中央の3分の1からの、オーバーラップする相同の配列を典型的には保有する。レンチウイルスベクターは、図2で図示されるような5’の長い末端反復(LTR)、3’LTRおよびパッケージングシグナルΨを典型的には保有する。
【0041】
「作動可能に結合された(operably linked)」によって、核酸分子が、他の核酸分子と機能的な関係で置かれることが意味される。例えば、発現カセットが配列の転写に影響を与えるならば、発現カセット(プロモーターおよびポリA)はミニ/ミクロジストロフィン遺伝子に作動可能に結合されている。
【0042】
AAVベクターおよびレンチウイルスベクターの構造、機能および使用に関する情報は、当技術分野において周知であり利用可能である。本発明のデュアルAAVベクターは、大きな(例えば少なくとも10kb)パッケージング能力を有する。3つの古典的なデュアルベクターは、シス活性化ベクター、トランススプライシング(ts)ベクターおよびオーバーラッピングベクターである(Duan, D., Z. Yan, and J. F. Engelhardt. 2006.AAVベクターの容量の拡張(Expanding the capacity of AAV vectors)、p. pp525-32.M. E. Bloom, S. F. Cotmore, R. M. Linden, C. R. Parrish, and J. R. Kerr(編)中、パルボウイルス(Parvoviruses)。Hodder Arnold;オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ロンドン、ニューヨークによってアメリカ合衆国で流通される。Ghosh, A., and D. Duan. 2007.アデノ随伴ウイルスベクター容量の使用:2つのベクターの物語(Expending Adeno-associated Viral Vector Capacity: A Tale of Two Vectors)。Biotechnology and Genetic Engineering Reviews 24: 165- 177, 2007.中で概説される)。
【0043】
tsベクターおよびオーバーラッピングベクターのみが6kbのミニ遺伝子を送達することができる。tsAAVにおいて、大きな治療用遺伝子はドナーベクターおよびアクセプターベクターへと分割される。ドナーベクターは、遺伝子の5’部分およびスプライシングドナーシグナルを保有する。アクセプターベクターは、スプライシングアクセプターシグナルおよび遺伝子の3’部分を保有する。発現は、AAV逆方向末端リピート(ITR)仲介性分子間組換え、および続いて行なわれる組換えゲノムのスプライシングによって達成される(図13)。Duan, D., Y. Yue, and J. F. Engelhardt. 2001.トランススプライシングベクターまたはオーバーラッピングベクターによるAAVパッケージング容量の拡張:定量比較(Expanding AAV Packaging Capacity With Trans-splicing Or Overlapping Vectors: A Quantitative Comparison)。Mol Ther 4:383-91、Sun, L., J. Li, and X. Xiao. 2000.ウイルスDNAのヘテロダイマー化を介するアデノ随伴ウイルスベクターのサイズ限界の克服(Overcoming adeno-associated virus vector size limitation through viral DNA heterodimerization)。Nat. Med. 6:599-602、およびYan, Z., Y. Zhang, D. Duan, and J. F. Engelhardt. 2000.表紙から:トランススプライシングベクターは遺伝子治療のためのアデノ随伴ウイルスの有用性を拡張する(From the Cover: Trans-splicing vectors expand the utility of adeno-associated virus for gene therapy)。Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6716-6721.を参照。
【0044】
オーバーラッピングベクターにおいて、大きな治療用遺伝子は上流ベクターおよび下流ベクターへと分割される。上流ベクターおよび下流ベクターは相同領域を共有する(Duan, D., Y. Yue, and J. F. Engelhardt. 2001., Halbert, C. L., J. M. Allen, and A. D. Miller. 2002.)。より大きな遺伝子部分を保有するAAVベクターとの間の組換えに続く効率的なマウス気道の形質導入(Efficient mouse airway transduction following recombination between AAV vectors carrying parts of a larger gene)。Nat Biotechnol 20:697-701.)導入遺伝子の再構成は相同組換えを介して達成される(図13)。遺伝子スプリッティング部位の最適化などの合理的なベクターデザインによって、tsAAVベクターからの形質導入効率は、単一AAVベクターからの形質導入効率に到達することができる(Lai et al 2005 Nature Biotechnique: Lai et al 2006 Human Gene Therapy)。さらに、tsAAVベクターの全身的な送達により、げっ歯類の全身の筋肉を効率的に形質導入することが示された(Ghosh, Yue, Long, Bostic and Duan 2007 Molecular Therapy 16:124-130)。tsAAV仲介性ミニ遺伝子治療は、筋肉の病状を減少させ、筋力を改良し、単一mdx筋肉中の収縮誘導性損傷を阻害することが実証された(Lai, Y., D. Li, Y. Yue, and D. Duan. 2007.デュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子治療のためのトランススプライシングアデノ随伴ウイルスベクターのデザイン(Design of trans-splicing adeno-associated viral vectors for Duchenne muscular dystrophy gene therapy)。Method in Molecular Medicine:印刷中、Lai, Y., Y. Yue, M. Liu, and D. Duan. 2006.合成イントロンは、トランススプライシングアデノ随伴ウイルスベクターの形質導入効率を改良する(Synthetic intron improves transduction efficiency of trans-splicing adeno-associated viral vectors)。Hum Gene Ther 17:1036-42、およびLai, Y., Y. Yue, M. Liu, A. Ghosh, J. F. Engelhardt, J. S. Chamberlain, and D. Duan. 2005.トランススプライシングアデノ随伴ウイルスベクターによる効率的なインビボ遺伝子発現(Efficient in vivo gene expression by trans-splicing adeno-associated viral vectors)。Nat Biotechnol 23:1435-9.)。
【0045】
古典的なデュアルAAVベクターに加えて、ハイブリッドAAVデュアルベクターシステムが最近開発されている(Ghosh, Yue, Lai and Duan 2008 Molecular Therapy 16:124-130)。tsAAVは、至適遺伝子スプリッティング部位に高度に依存する。この制限はハイブリッドベクターシステムで克服される。ハイブリッドAAVベクターにおいて、導入遺伝子の再構成は、tsAAVベクターで記述されているような従来のトランススプライシング経路によって、または高度に組換誘導性の外来性DNA配列経由の相同組換えによって達成することができる。
【0046】
図1は、全長ジストロフィン遺伝子、他の研究者によって出版/研究されたミニ/ミクロジストロフィン遺伝子、および本発明者によって合成された代表的なミニ/ミクロジストロフィン遺伝子の構造および筋鞘へのnNOSの回復に関するそれぞれの機能を示す。図1において、Nはジストロフィンタンパク質のN末端ドメインを表わし;H1−4はジストロフィンタンパク質のロッドドメイン中のヒンジ1〜4を表わし;数の番号はジストロフィンロッドドメイン中のスペクトリン様リピートを表わし(正に荷電したリピートは白色の数の番号である);CRはジストロフィンタンパク質中のシステインリッチドメインを表わし;Cはジストロフィンタンパク質のC末端ドメインを表わし;点線で囲ったボックスは、各々がそれぞれのコンストラクトにおいて欠失される領域を表わす。
【0047】
図1中に示されるように、本発明の前に、ミニ遺伝子Δ17−48、ミニ遺伝子ΔH2−R19、ミクロ遺伝子ΔR4−R23/ΔCおよびミクロ遺伝子Δ3849(ΔR3−21/ΔC)が、記述/研究されている。他の利点を有するのだが、これらのミニ/ミクロ遺伝子のどれも筋鞘へnNOSを回復させる機能を保持せず、同様に他の出版されたミニ/ミクロジストロフィン遺伝子(図1中にリストされない)も機能を保持しない。本発明につながる研究において、新規ミニ/ミクロ遺伝子を合成した。R16−17リピートを含むミニ/ミクロ遺伝子(ΔH2−R15、ΔH2−R15/ΔR18−19、ΔH2−R15/ΔC、ΔR3−15/ΔR18−23/ΔCおよびΔR2−15/ΔR18−23/ΔCなど)はnNOSを回復することが示されるが、R16またはR17リピートのないミニ/ミクロ遺伝子(ΔH2−R17、ΔH2−R16、ΔH2−R15/ΔR17−19およびΔR3−15/ΔR17−23など)はその能力を欠くことが見出された。図1および本出願において以下に提供される実施例を参照。
【0048】
図1は、nNOSを動員するミクロドメインの機能は、その天然の配列前後関係/位置から独立していることをさらに示唆する。野生型ジストロフィンにおいて、R16−17はR15およびR18によって囲まれている。本発明のミニ/ミクロジストロフィン遺伝子において、R1(例えばΔR2−15/ΔR18−23/ΔCにおいて)、R2(例えばΔR3−15/ΔR18−23/ΔCにおいて)、R3(例えばΔH2−R15およびその派生物において)、H3(例えばΔH2−R15/ΔR18−19において)およびR24(例えばΔR2−R15/ΔR18−23/ΔCおよびその誘導体の)など、他のリピートまたはヒンジに隣接してR16−17を置くときに、nNOSタンパク質およびその活性は筋鞘で回復する。従って、さらに他の実施形態において、本発明は、被験体に本発明のミニ遺伝子および/またはミクロ遺伝子の治療的有効量を投与することによる、好ましくはミニ遺伝子および/またはミクロ遺伝子を保有するベクターを投与することによる、より好ましくは被験体に本発明のミニ遺伝子および/またはミクロ遺伝子を含むAAVベクターの治療的有効量を投与することによる、被験体のDMD、BMDおよび/またはXLDCの治療のための方法を対象とする。
【0049】
「被験体」によって、任意の哺乳類被験体、好ましくはヒトが意味される。本発明の方法に従う投与の経路は、患者における局部的な筋肉機能を改良する局部的または局所的な筋肉内注射、患者の部位または全身におけるすべての筋肉への全身的な送達(静脈内、動脈内、腹腔内などの)、AAVまたはレンチウイルスベクターによる筋幹細胞のインビトロの感染に続く局部的および/または全身的な送達を含む。
【0050】
「治療的有効量」によって、治療される症状を有意に肯定的に修飾するほど高いが、音波医学的判断の範囲内で深刻な副作用(妥当なベネフィット/リスク比で)を回避するほど低い量が意味される。治療的有効量は、調製のタイプ、ベクターまたは使用されている組成物だけでなく、治療されている特定の症状または治療されている被験体の症状およびその人の身体的症状に応じて変化する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は血管内投与を検討する。例えばR16およびR17を含むミクロジストロフィン遺伝子によるAAV−9遺伝子治療において、新生仔マウス(1週間またはそれ未満の年齢)への用量は約0.5〜約1.5×1011vg粒子/グラム体重または約50〜約75μl/グラム体重であり;若いマウス(1週間〜1か月の年齢)への用量は約0.5〜約1.5×1011vg粒子/グラム体重または約75〜約200μl/グラム体重であり;成体マウス(1〜20か月齢)への用量は約0.5〜約1.5×1011vg粒子/グラム体重または約200〜約400μl/グラム体重であり;新生仔イヌ(3日またはそれ未満の年齢)のための用量は約0.5〜約2×1011vg粒子/グラム体重または約10〜約25μl/グラム体重であり;若いイヌ(3日〜3か月の年齢)のための用量は約0.5〜約2×1011vg粒子/グラム体重または約10〜約25μl/グラム体重であり;成体イヌ(3か月またはそれ以上)のための用量は約1〜約3×1011vg粒子/グラム体重または約15〜約30μl/グラム体重である。
【0052】
本発明に従って、ジストロフィンタンパク質中のR16−17のnNOS動員ミクロドメインを同定した後、ミクロドメインは、DMD、BMDおよびXLDCなどのジストロフィン欠損疾患の治療のための非ウイルス性遺伝子治療ベクターおよび/またはウイルス性遺伝子治療ベクターおよび/または細胞治療へと組み入れることができる。本発明は、ジストロフィン欠損筋肉中にnNOSを回復させることができる一連のAAVミニ/ミクロジストロフィンベクターを提供する。組換えAAVベクターは、nNOSを回復するミニ/ミクロジストロフィン遺伝子、発現カセット(プロモーターおよびポリA)およびウイルスの逆方向末端リピート(ITR)の任意の1つを含む。図2は、本発明のミニ/ミクロジストロフィン遺伝子を保有するAAVベクターの例示的なコンストラクトをリストする。
【0053】
さらに他の実施形態において、本発明は、本発明の1つまたは複数のAAVベクターおよびレンチウイルスベクターおよび未修飾プラスミドDNA分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を対象とする。
【0054】
核酸のための薬学的な製剤、用量および投与経路は、例えばFeigner et alの米国特許第5,580,859号中に、一般的に開示される。局部投与および全身投与の両方は本発明によって検討される。本発明の分子が予防的な目的のために用いられる場合、本発明の薬剤は好ましくは全身投与による連用に適用可能である。
【0055】
本発明の治療剤を含む1つまたは複数の適切な単位投与量形態(持続放出のために任意で製剤化できる)は、経口経路、または直腸経路、経皮経路、皮下経路、静脈経路、筋肉内経路、腹腔内経路、胸内経路、肺内経路および鼻腔内経路を含む非経口経路を含む様々な経路によって投与することができる。製剤は、適切な場合には、個別単位投与量形態において便利なように提供され、製薬学に周知の任意の方法によっても調製できる。かかる方法は、液体担体、固体マトリクス、半固形担体、微粉固体担体またはその組合せと治療剤を合わせる工程、および次に必要なならば、所望される送達システムの中へ生成物を導入または形成する工程を含みうる。
【0056】
本発明の治療剤が経口投与のために調製されるときに、それらは好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と組み合わせて、薬学的製剤または単位投与量形態を形成する。「薬学的に許容される」によって、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害でない、担体、希釈剤、添加剤、および/または塩が意味される。経口投与のための活性成分は、粉末または顆粒として;溶液、懸濁物またはエマルジョンとして;またはチューインガムからの活性成分の摂取のための合成樹脂などの到達可能な基材中に存在できる。活性成分は、ボーラス、舐剤またはペーストとしてもまた提供できる。
【0057】
本発明の医薬組成物を含む薬学的製剤は、周知の容易に利用可能な成分を使用して、当技術分野において公知の手順によって調製することができる。例えば、薬剤は一般的な添加剤、希釈剤または担体により製剤化することができ、タブレット、カプセル、懸濁物、粉末および同種のものへと形成できる。かかる製剤のために適切な添加剤、希釈剤および担体の例は、以下のデンプン、糖、マンニトールおよびケイ酸誘導体などの充填剤および増量剤;カルボキシメチルセルロース、HPMCおよび他のセルロース誘導体、アルギナート、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンなどの結合剤;グリセロールなどの保湿剤;炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解を遅らせるための薬剤;第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;セチルアルコール、グリセロール・モノステアレートなどの表面活性薬剤;カオリンおよびベントナイトなどの吸着性担体;ならびにタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体のポリエチルグリコールなどの潤滑剤を含む。
【0058】
本発明の治療剤は、好都合な経口投与のためのエリキシルもしくは溶液、または例えば筋肉内経路、皮下経路もしくは静脈経路による非経口投与のために適切な溶液としてもまた製剤化することができる。本発明の治療剤の薬学的製剤は、水溶液もしくは無水溶液または分散物の形態、または代わりにエマルジョンもしくは懸濁物の形態もまたとることができる。
【0059】
したがって、治療剤は、非経口投与(例えば注入(ボーラス注射、連続的な点滴など)による)のために製剤化され、恐らく、アンプル中の単位用量形態、充填済みシリンジ、少量の体積の点滴容器、または追加の防腐剤を含有する多重用量容器中で提供できる。活性成分は、油性賦形剤または水性賦形剤中で懸濁物、溶液またはエマルジョンとしてそのような形態をとり、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含みうる。あるいは活性成分は、使用の前に適切な賦形剤(例えば滅菌されたパイロジェンフリー水)による構成のために、滅菌された固体の無菌的な単離によって、または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態でありうる。これらの製剤は、先行技術において周知である、薬学的に許容される賦形剤およびアジュバントを含むことができる。
【0060】
本発明に従う組成物は、セルロースおよび/またはセルロース誘導体などの増粘剤もまた含むことができる。それらは、キサンタンガム、グアーガム、カルボゴムもしくはアラビアゴムなどのゴム類、またはあるいはポリエチレングリコール、ベントンおよびモンモリロナイト、ならびに同種のものもまたを含むことができる。
【0061】
必要ならば、抗酸化剤、界面活性剤、他の防腐剤、皮膜剤、角質溶解剤または面皰溶解剤から選択される補助剤、香料および着色剤を追加することが可能である。記述される症状のため、または他のいくつかの症状のためであるかにかかわらず、他の活性成分もまた追加できる。
【0062】
本発明の医薬組成物の局部送達は、疾患部位で、またはその部位の近くで、薬剤を投与する様々な技術によることもまた可能である。部位特異的局部送達または標的化局部送達技術の実施例は、限定するのではなく、利用可能な技術の例証となるように意図される。実施例は、注入カテーテルもしくは留置カテーテル(例えば針注入カテーテル、シャントおよびステントまたは他の移植可能な装置)などの局部送達カテーテル、部位特異的担体、直接噴射、または直接適用を含む。
【0063】
特に、筋肉などの組織への本発明のベクターの送達のために、宿主動物の筋組織の中へベクターを導入する任意の物理的方法または生物学的方法を用いることができる。ベクターは、露出した組換えベクター、およびAAV投与のために周知のウイルスコートタンパク質の中へパッケージングされたベクターDNAの両方を意味する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝生理食塩水中にAAVベクターを単純に溶解することは、筋組織発現のために有用な賦形剤を提供するのに十分であることが実証され、ベクターと共に同時投与することができる担体または他の構成分子には公知の制限はない(しかしDNAを分解する組成物をベクターと共にするのは正常様式では回避されるべきである)。医薬組成物は、注射可能な製剤、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所製剤として調製することができる。筋肉注射および経皮輸送の両方のための多数の製剤は今までに開発されており、本発明の実践において使用できる。ベクターは、任意の薬学的に許容される担体と共に投与および取り扱いの容易性のために使用できる。
【0064】
筋肉注射の目的のために、胡麻油または落花生油などのアジュバント、または水性プロピレングリコール中の溶液は、滅菌された水溶液と同様に用いることができる。所望されるならば、かかる水溶液は緩衝することができ、液体希釈剤は最初に生理食塩水またはグルコースにより等張にされる。遊離酸(DNAは酸性リン酸基を含む)または薬理学的に許容される塩としてのAAVベクターの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を適切に混合した水中で調製できる。AAVウイルス粒子の分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物、ならびに油脂中でもまた調製できる。通常の貯蔵および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を阻害するために防腐剤を含む。これに関連して、用いられる滅菌された水性溶媒はすべて、当業者に周知の標準技術によって容易に得られる。
【0065】
注射可能な使用のために適切な医薬品形態は、滅菌された水溶液または分散物、および滅菌された注射可能な溶液または分散物の即時調整のための滅菌された粉末を含む。すべての場合において、形態は滅菌され、容易な注入可能性がある程度の流動性でなくてはならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定し、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保護されなくてはならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールおよび同種のもの)、その適切な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒になりえる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合では必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールおよび同種のもの)によって成し遂げることができる。多くの場合において、等張剤(例えば糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によって引き起こすことができる。
【0066】
滅菌された注射可能な溶液は、上で列挙される他の成分の様々なものと共に、適切な溶媒中に必要とされる量でAAVベクターを組み入れ、必要に応じて、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散物は、基本的な分散媒および上で列挙されたものからの必要な他の成分を含む、滅菌された賦形剤の中へ滅菌された活性成分を組み入れることによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌された粉末の場合において、調製の好ましい方法は、あらかじめ滅菌濾過したその溶液から、任意の追加の所望成分を加えた活性成分の粉末を産出する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0067】
本発明の治療用化合物は、哺乳類に、単独でまたは薬学的に許容される担体と共に組合せで投与できる。活性成分および担体の相対的な比率は、化合物の溶解度および化学的性質、選択された投与経路、ならびに標準的薬務によって決定される。予防または治療のために適当な本治療剤の投与量は、投与形態、選択された特定の化合物、および治療下での特定の患者の生理学的特性に応じて変化する。一般的に、最初に低投与量を使用し、最適の効果がこのような状況下で達成されるまで、必要ならば、少量の増加量で増加される。例示的な投与量は、実施例中で以下に設定される。
【0068】
AAVが幅広い宿主領域(肺発現について)を有し、筋肉中で残存することが示されているので、本発明のベクターは、任意の動物、および特に哺乳類、鳥類、魚類および爬虫類、特にウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ニワトリおよびシチメンチョウなどの家畜哺乳類および鳥類において遺伝子を発現するために用いることができる。ヒトおよび獣医学領域の両方の使用は特に好ましい。
【0069】
発現される遺伝子は、使用者によって所望されるすべての制御エレメント(例えばプロモーター、オペレーター)を備えたタンパク質をコードするDNAセグメント、またはコードしないDNAセグメントのいずれかになりえ、その転写により、いくつかのRNA含有分子(転写調節エレメント、+RNAまたはアンチセンス分子などの)の全部または一部が産生される。
【0070】
アデノ随伴ウイルスベクターは、上述のベクターシステムに関して一定の長所を有する。第一に、アデノウイルスのように、AAVは非分裂細胞に効率的に感染できる。第二に、AAVウイルス遺伝子はすべてベクター中で除去される。ウイルス遺伝子発現誘導性免疫反応はもはや問題ではないので、AAVベクターはアデノウイルスベクターよりも安全である。第三に、野生型AAVはもともと組込みウイルスであり、導入遺伝子は宿主染色体の中への組込みにより細胞中で安定的に維持される。第四に、組換えAAVベクターは、特にげっ歯類、イヌおよびヒトの筋肉などの哺乳類組織中で何年もの間エピゾーム分子として残存できる。エピゾーム形態は、インビボの組織におけるAAVベクター仲介性形質導入についての優勢形態と考えられる。第五に、AAVは非常に安定したウイルスであり、多くの界面活性剤、pH変化および熱(1時間以上56℃で安定)に対して耐性がある。そのことにより、活性を失わずに、凍結乾燥し再溶解できる。したがって、AAVは遺伝子治療に非常に有望な送達手段である。
【0071】
本発明は、本発明のミニ/ミクロ遺伝子の製作、nNOS回復の検出、nNOSタンパク質活性の測定、本発明のAAVベクターの発現の実施例をさらに提供する。以下に提供される実施例は、単にいくつかの実施形態の例示を意味し、いかなる方法でも請求項の範囲を限定するように判断されるべきでなく、明細書によってのみ限定される。
【実施例1】
【0072】
実験プロトコール:
動物モデルおよびインビボ遺伝子移入。この開示中で記述される動物実験はすべて、ミズーリ大学(University of Missouri)の研究所の動物実験委員会(Animal Care and Use Committee)によって承認されており、NIHガイドラインに従う。正常な実験用マウス(BL10マウス)およびジストロフィン欠損実験用マウス(mdxマウスおよびmdx4cvマウス)は、ジャクソン研究所(Jackson Laboratory)(バーハーバー、メイン)からもとは購入した。myoD/ジストロフィンダブルノックアウト(m−dko)マウスは、もとはオタワ研究所のMichael Rudnicki博士から入手した。続いてミズーリ大学での自家繁殖によってコロニーを確立し、12時間−12時間の明暗サイクルで20〜23℃の特定病原体未感染の動物施設中に、マウス(実験用マウスおよび繁殖用ペアを含む)を収容した。非ウイルス性プラスミドによるインビボの局部的なトランスフェクションまたはAAV仲介性局部的な遺伝子移入のいずれかによって、ジストロフィン発現、nNOS発現およびnNOS活性を評価するために、2つの筋肉(前脛骨(TA)筋および腓腹筋)を使用した。AAV仲介性遺伝子移入(局部的送達および全身的送達)後のジストロフィン発現、nNOS発現、nNOS活性および筋力改善に対して、長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋を使用した。血管内の全身的な遺伝子送達後のジストロフィン発現、nNOS発現、nNOS活性および筋肉の病状改善について、すべての身体の筋肉(骨格筋および心筋を含む)を解析した。これらの筋肉に対してプラスミドまたはAAVを送達するために、最初に筋肉の近位端部を2〜3mm切開して露出した。次に、33Gのハミルトン針を筋肉の中央の腹へ挿入した。ベクター(プラスミドまたはAAV)を、ゆっくり注入針を引き出しながら筋肉の中へ注入した。傷を縫合し、回復するまで動物をモニターした。
【0073】
ヒトジストロフィンおよびnNOSについての二重蛍光抗体染色。本発明のミニ/ミクロジストロフィン遺伝子に加えて、報告されているミニ/ミクロジストロフィン遺伝子もすべて、ヒトジストロフィンcDNAに倣って形成した。合成ミニ/ミクロ遺伝子発現を評価するために、ヒトジストロフィンのヒンジ1領域中のエピトープと特異的に反応するが、マウスジストロフィンとは反応しないモノクローナル抗体(Dys−3、クローンDy10/12B2、IgG2a;1:20希釈;ノボカストラ(Novocastra)社、ニューカースル、イギリス)を使用した。nNOS発現を評価するために、抗nNOSのC末端ポリクローナル抗体(1:2000希釈;サンタクルーズ(Santa Cruz)社、サンタクルーズ、カリフォルニア)を使用した。ポリクローナル抗体は、マウス筋肉において非常に低いバックグラウンドであった。下記は二重免疫染色プロトコールの説明である。8μmの風乾凍結切片を、KPBS(356μM KH2PO4、1.64mM K2HPO4、160mM NaCl)により簡単にリンスする。1%ヤギ血清KPBSにより15分間室温でブロックする。0.2%ゼラチン(シグマ(Sigma)社、セントルイス、ミズーリ)KPBSにより洗浄する。抗nNOS抗体を4℃で一晩適用する。0.2%ゼラチンKPBSにより洗浄する。nNOSタンパク質発現を明らかにするためにアレックス488コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体(1:100希釈;モレキュラー・プローブ(Molecular Probe)社、ユージーン、オレゴン)を適用する。第2の工程はマウス筋肉においてマウスモノクローナル抗体の使用を必要とする。最初に、内因性のマウス免疫グロブリン(Ig)に対する二次抗体の結合をブロックした。パパイン消化ウサギ抗マウスIgG(FabおよびFc断片を含む)を、ブロッキングのために使用した。簡潔には、ウサギ抗マウスIgG(シグマ社、セントルイス、ミズーリ)を、1mM EDTAおよび22mM L‐システイン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ)の存在下でパパイン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ)により37℃で16時間消化した。消化反応はヨード酢酸(シグマ社、セントルイス、ミズーリ)によって止めた。二重免疫染色のために、nNOS抗体で染色した凍結切片を抗マウスIgGブロッキング溶液中で室温で60分間ブロックした。PBS中の洗浄後に、凍結切片を20%ウサギ血清(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories)社、ウエストグローブ、ペンシルバニア)により室温で30分間再びブロックした。PBS中の洗浄後に、Dys−3モノクローナル抗体(1%ウサギ血清中で希釈した)を4℃で一晩適用した。PBS中の洗浄後に、ヒトジストロフィンエピトープを、アレックス594コンジュゲートヤギ抗マウス抗体(モレキュラー・プローブ社、ユージーン、オレゴン)によって明らかにした。核を可視化し、光退色を減少させるために、DAPI(モレキュラー・プローブ社、ユージーン、オレゴン)を含むスローフェード・ライト・アンチフェード・キット(SlowFade Light Antifade Kit)によりスライドをマウントした。顕微鏡写真は、ニコン(Nikon)E800蛍光顕微鏡を使用して、キューイメージ・レティガ(Qimage Retiga)1300カメラにより撮影する。
【0074】
nNOS活性を評価するための組織酵素染色。nNOS活性の組織化学的評価は、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)ジアフォラーゼ活性に基づいた(Hope et al., 1991; Bredt et al., 1991; Dawson et al., 1991)。nNOSはNADPHジアフォラーゼである(Hope et al., 1991)。本質的には、無色の可溶性ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)塩を青色の不溶性フォルマザンに変換するために、nNOSは電子ドナーとしてNADPHを使用する。筋肉中のnNOS活性を決定するために、16μmの風乾凍結切片は、最初に4%パラホルムアルデヒド中で4℃で2時間固定した。この工程は、脱水素酵素およびP450などの他の細胞性酵素における非特異的NADPHジアフォラーゼ活性を不活性化する。nNOS由来NADPHジアフォラーゼ活性はパラホルムアルデヒド固定に対して耐性がある(Matsumoto et al., 1993; Spessert and Claassen, 1998)。
【0075】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の短いリンス後に、組織切片は37℃で20分間0.2%トリトンX−100により透過性にした。次にスライドを、0.2%トリトンX−100、0.2mM NADPHおよび0.16mg/mlのNBTを含む溶液中で37℃で4時間染色することによって、NADPHジアフォラーゼ活性を示した。機能的なnNOS酵素は、明視野顕微鏡下で青色の染色として観察された。顕微鏡写真は、ニコンE800顕微鏡を使用して、キューイメージ・レティガ1300カメラにより撮影した。
【0076】
組換えAAV−6産生。AAVパッケージングのために使用されるシスプラスミドは、ΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子などの本発明のミニ/ミクロ遺伝子を保有した。任意のメカニズムによる限定を意図しないが、R16−17ミクロドメインはこれらのミニ/ミクロ遺伝子におけるnNOS回復に関与すると考えられる。AAVベクターを作製するために、パッケージング細胞株(293細胞)を、プラスミドのトランスフェクション48時間前に150mmの培養プレートに1:6でスプリットする。合計4つのプラスミドをコトランスフェクションして、AAV−6ベクターを作製した。これらはシスプラスミド、pMT−Rep2、pCMVCap6およびpHelperを含んでいた。各ベクター調製(15×150mmプレート)のために、187.5μgのシスプラスミド、187.5μgのpMT−Rep2、562.5μgのpCMVCap6および562.5μgのpHelper(1:1:3:3の比率で)を使用した。すべてのプラスミドを15.2mlの水中で完全に混合した後、1.68mlの2.5M CaCl2を250mMの最終濃度まで追加した。次に、DNA/CaCl2混合物を16.8mlの2×HBSへゆっくり滴下させることによって、DNA−リン酸カルシウム沈殿を生じた。次に、培養プレートを旋回させながら、DNA−リン酸カルシウム沈殿を293細胞へ一滴ずつ適用した。トランスフェクション72時間後に、細胞溶解物をセルリフター(コーニング(Corning)社、コーニング、ニューヨーク)により回収した。ベンチトップ遠心分離機(4℃で3,000rpm)中での20分の遠心後に、細胞沈殿を9mlの10mMトリス−HCl(pH8.0)中で再懸濁した。細胞溶解物を、ドライアイス/エタノールおよび40℃の水浴を使用して、8〜10回凍結/融解した。細胞溶解物を、出力5.5で10分間(氷上)(ミソニック・セル・ディスラプター(Misonic Cell Disrupter)S3000;ミソニックス(Misonix)社、ニューヨーク)、超音波処理した。細胞溶解物をDNase Iにより37℃で45分間消化した。細胞溶解物は、出力5.5で7分間(氷上)再び超音波処理する。溶解物を、10分の1体積の0.25%トリプシンおよび10%デオキシコール酸ナトリウムにより37℃で30分間消化した。4℃で30分間4,000rpmの遠心によって、清澄な細胞溶解物を得た。上清を新しいチューブへ移した。体積を10mMトリス(pH8)により29mlに調整し、18.2gのCsCl2(CsCl2の最終濃度、0.613g/ml)を追加した。溶液を37℃で30分間インキュベートしてCsCl2を溶解し、次に4℃30分間4,000rpmで遠心した。上清をSW55Tiローター中の5mlのベックマン(Beckman)超遠心分離チューブ6本へロードし、4℃40時間46,000rpmで遠心した。画分は20ゲージの針によりチューブの底部から回収した。ウイルス含有画分は、放射性標識ヒトジストロフィン遺伝子特異的プローブを使用して、スロットブロットによって同定した。最も高いウイルス力価を持つ画分を組み合わせ、4℃40時間46,000rpmで再び遠心分離した。画分を回収し、最も高いウイルス画分をスロットブロットによって同定した。ウイルスストックを、ヘペスバッファー(20mMヘペス、150mM NaCl、pH7.8)中で4℃で2×24時間透析した。
【0077】
組換えAAV−9産生。AAV−6パッケージングのために使用した同じシスプラスミドを、AAV−9パッケージングのために使用した。トランスフェクションおよび精製のプロトコールは、パッケージングプラスミドを除いて、AAV−6産生におけるものと本質的に同じだった。4つのプラスミドのコトランスフェクションを使用する代わりに、1:1:3の比率(187.5μgのシスプラスミド、187.5μgのpRep2/Cap9および562.5μgのpHelper)で、シスプラスミド、pRep2/Cap9およびpHelperを使用して、三重プラスミドトランスフェクションを実行した(Bostick et al., 2007; Ghosh et al., 2007)。
【実施例2】
【0078】
ミニ/ミクロジストロフィン遺伝子
ジストロフィンミニ遺伝子(ΔH2−R15)の1つの実施例は、鋳型としてΔH2−R19ミニ遺伝子を使用して行なうことができる。図3は、全長遺伝子、ΔH2−R19ミニ遺伝子および3つの新しく合成されたミニ遺伝子を含むプロトタイプコンストラクトのための診断用切断を示す。ΔH2−R19ミニ遺伝子(筋鞘へnNOSを回復させることができない)はDMD遺伝子治療のために現在評価されているミニ遺伝子である(Harper et al., 2002; Lai et al., 2005)。ΔH2−R17、ΔH2−R16およびΔH2−R15は、ΔH2−R19ミニ遺伝子のリピートよりも、それぞれ2つ(R18およびR19)、3つ(R17、R18およびR19)ならびに4つ(R16、R17、R18およびR19)の追加のリピートを含むミニ遺伝子である。余分のリピートは、診断用バンドの分子量が次第に増加することによって可視化することができる。具体的には、それぞれの各コンストラクトをNsiI/SalIの二重消化により切断し、導入遺伝子から診断用フラグメントを遊離した。消化DNA断片を、アガロースゲル上で電気泳動にかけた。診断用バンドのサイズを分子量マーカー(1kbラダー)により決定した。星印は、不完全消化に起因するΔH2−R19コンストラクトの残存プラスミドを示す。
【0079】
合成ミニジストロフィン遺伝子と同様に、合成ミクロジストロフィン遺伝子を標準的な分子生物学クローニング手順を使用して作製した。本質的には、関連するDNA配列(リピート、ヒンジなどのような)は、高忠実度のPCR反応によって増幅し、次にT4DNAリガーゼを使用する酵素ライゲーションによって再度組み立てた。次に再結合した合成DNA分子を、標準的な組換えDNA技術を使用して、コンピテントな大腸菌(E.Coli)に形質転換した。適切なクローンを制限酵素診断用切断によって同定した。これらのクローンはDNA塩基配列決定によってさらに確認した。
【実施例3】
【0080】
nNOS回復
図4は、全長ジストロフィン遺伝子またはいくつかの合成ミニジストロフィン遺伝子(ΔH2−R15、ΔH2−R16、ΔH2−R17またはΔH2−R19)による処理後2か月齢のmdxマウスの骨格筋におけるnNOS回復およびジストロフィン発現の免疫蛍光法(IF)分析を示す。未処理のmdx筋肉における復帰線維のクローンもまた提供する。
【0081】
実験の間に、全長ヒトジストロフィンcDNA、ΔH2−R19、ΔH2−R17、ΔH2−R16または本発明のΔH2−R15ミニ遺伝子を保有するプラスミドを、2か月齢のmdxマウスの前脛骨(TA)筋および腓腹筋へ注入した。ミニ遺伝子はすべてヒトジストロフィン遺伝子に由来し、ヒトジストロフィン中にのみ存在するエピトープに特異的なモノクローナル抗体(Dys−3)(この抗体は本出願においてヒトジストロフィン(Hum Dys)抗体と呼ばれる)を使用して同定できた。これらのすべてのコンストラクトにおいて、導入遺伝子はCMVプロモーターおよびSV40ポリAの転写調節下で発現した。
【0082】
注入時では、少数の復帰線維を除いてmdx筋肉中にジストロフィン発現はなかった。mdx筋肉におけるジストロフィン発現の非存在は、このモデルにおいてマウスジストロフィン遺伝子中のエクソン23中の点変異のためであった。この変異は早期翻訳終結およびジストロフィン発現の消失を導く。たまに変異エクソンのスキップによりRNA転写物が生じた。このことはスキップされた転写物を含む筋線維中でのみジストロフィン発現を導く。これらの筋線維は復帰体と呼ばれる。復帰筋線維の頻度は通常<1%である。復帰筋線維はマウスジストロフィンタンパク質を保有するので、それはヒトジストロフィン特異的抗体によって認識できない。
【0083】
全長ヒトジストロフィン遺伝子の対照および他の対照ミニ遺伝子(ΔH2−R19、ΔH2−R17、ΔH2−R16)に加えて、ミニジストロフィン遺伝子(ΔH2−R15)におけるジストロフィン発現とnNOS発現の関係を調べるために、2つの異なる抗体(Hum DysおよびnNOS抗体)を免疫染色のために使用した。図4中で示されるように、Hum Dys抗体(図4、上部の列)はヒトジストロフィンのみと反応し、復帰線維中のマウスジストロフィンを認識しなかった。nNOS抗体(図4、中央の列)は筋鞘に局在するnNOSを認識した。陽性の染色は、復帰線維に加えて、全長ジストロフィンプラスミドおよびΔH2−R15ミニ遺伝子によりトランスフェクションされた細胞においても見出されたが、ΔH2−R19、ΔH2−R17またはΔH2−R16のミニ遺伝子によってトランスフェクションされた筋線維においては見出されなかった。マージした画像(図4、底部列)において、nNOSタンパク質を回復できるコンストラクトは黄色(全長およびΔH2−R15)として表示されるが、nNOSを回復できないコンストラクトは赤色(ΔH2−R16、ΔH2−R17およびΔH2−R19)として表示される。復帰筋線維中のマウスジストロフィンタンパク質はDys−3抗体によって認識することができず、それらはマージした画像では緑色として見える。スケールバーは50μmである。表2は、図4中に表示される免疫染色結果の定量化を示す。
【0084】
表2は、本発明のΔH2−R15ミニ遺伝子が筋鞘へnNOSを回復することができる確証を提供する。
【0085】
図5は、3つの追加の合成ミニ/ミクロ遺伝子(ΔH2−R15/ΔR18−19、ΔH2−R15/ΔCまたはΔR3−15/ΔR18−23/ΔC)による処理後の、ジストロフィン欠損mdxマウスの骨格筋中のnNOS回復およびジストロフィン発現の追加のIF分析を示す。復帰線維もまた未処理のmdx筋肉において示す。
【0086】
同様に、追加のミニ/ミクロ遺伝子の発現は、CMVプロモーターおよびSV40ポリAの転写調節下であった。これらの発明の遺伝子を保有するプラスミドを、2か月齢のmdxマウスのTAおよび/または腓腹筋へ注入した。ジストロフィン発現およびnNOS回復を1〜2週間後に検討した。発明のミニ/ミクロ遺伝子の発現は、ヒトジストロフィンエピトープを特異的抗体によって実証した(赤色で)。nNOS発現はnNOS特異的抗体によって示した(緑色で)。マージした画像から、本発明のミニ/ミクロジストロフィンタンパク質およびnNOSタンパク質の共局在が示される(黄色で)。これらの顕微鏡写真において、発明のミニ/ミクロ遺伝子を保有する線維は、星印によってマークされる。未処理の筋肉(プラスミドなし)では、復帰筋線維(十字形)のみが検出された。スケールバーは50μmである。
【実施例4】
【0087】
nNOS活性検査
ストリンジェントな組織酵素分析を実行して動員されているnNOSタンパク質の生化学的機能を決定した。nNOS活性結果もまた、明視野画像における青色で示されるnNOS活性染色と共に図5、6B〜6Eおよび7A〜7B中に含まれる。重要な問題は、本発明のミニ/ミクロ遺伝子の処理後に蛍光抗体染色によって検出されたnNOSタンパク質が、確かに機能的なタンパク質であるかどうかである。nNOSはNADPHジアフォラーゼ活性を有する(Hope et al., 1991; Bredt et al., 1991; Dawson et al., 1991)。本質的には、この酵素活性はNADPHから無色の可溶性テトラゾリウム塩への電子伝達を可能にし、最終的に有色の不溶性フォルマザン誘導体を産生する(Beesley, 1995; Rothe et al, 2005)。nNOS活性分析(すなわち本発明者によって用いられる組織酵素分析)は以前に他の研究者によって使用され、nNOSとα−シントロフィンとの間の機能的相互作用が確立された(Kameya et al., 1999)。蛍光抗体染色によってnNOSタンパク質が陽性に染色された筋線維は、イン・シトゥーの酵素分析によるnNOS活性もまた示した。表3は、図5中に表示される免疫染色およびnNOS活性分析結果の定量化を示す。表3は、R16−17ミクロドメインを備えたミニ/ミクロ遺伝子が、機能的なnNOSタンパク質を筋鞘へ回復させることができるという明らかな証拠を提供する。R16−17ミクロドメインのnNOSを動員する活性は、全長タンパク質中での天然の位置に依存しない。表3における結果は、本発明のミニ/ミクロ遺伝子によるnNOS回復がジストロフィンC末端ドメインに依存しないという結論をさらに強化する。
【実施例5】
【0088】
ミニ/ミクロ遺伝子を有するAAVベクター
図6Aは、AAVベクター(すなわちΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子を保有するAAVベクター)の実施例を示し、それを全長タンパク質および既存のΔ3849ミクロ遺伝子発現カセットと比較する(Wang et al., 2000)。AAVベクターの発現カセットは、CMVプロモーター、ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子およびSV40ポリAを含む。カセット全体は末端でAAVのITRが隣接する。AAVベクターは、AAV−6、AAV−8およびAAV−9などの選択されたAAV血清型のカプシッドの中へ全体のコンストラクト(AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC)をパッケージングすることによって作製した。図6Aは、他のミクロジストロフィンの発現カセット(MCK.ΔR3−22/ΔC)の構造もまた示す。このミクロ遺伝子は著者によってもとは「Δ3849ミニ遺伝子」と呼ばれた(Wang et al., 2000)。比較を容易にするために、このミクロ遺伝子は分子構造を反映してΔR3−22/ΔCミクロ遺伝子と名前を変える。
【0089】
図6B〜6EはIF染色およびnNOS活性染色の結果を示す。図6B〜Eにおいて、ミクロ遺伝子の発現(6D中のような遺伝子導入mdxマウスから;または6E中のような本発明のAAV−6ベクターから)は、ヒトジストロフィンエピトープに特異的なモノクローナル抗体を使用して、赤色で表示される。nNOSタンパク質はnNOSの特異的なポリクローナル抗体を使用して、緑色で表示される。DAPIにより染色された核は青色で示される。nNOSの酵素活性は、明視野顕微鏡において筋鞘で青色として表わされる。これらのパネルにおいて、上部列の顕微鏡写真は低倍率画像である(スケールバー、500μm)。下部列の顕微鏡写真は、それぞれ上部列顕微鏡写真において四角で囲った領域からの拡大画像である(スケールバー、100μm)。
【0090】
これらの実験において、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCは以前に出版されたプロトコールを使用して、AAV−6の中へパッケージングし、次にパッケージングしたAAVベクターを2か月齢のmdxマウスにTA筋肉へ送達した(Lai et al., 2005; Ghosh et al., 2006; Yue et al., 2006; Lai et al., 2006)。AAV感染筋を3週間後に採取した。
【0091】
図6Bは正常なマウスTA筋における筋鞘nNOSの局在を示す。正常なマウス筋では、ヒトジストロフィンはヒトジストロフィンエピトープ(Dys−3)に特異的な抗体により検出されなかった。多量のnNOSタンパク質およびnNOS活性が正常なマウス筋において検出された。nNOSはII型線維中で優先的に発現されることが示された。マウスTA筋では、99%の線維はII型線維である。星印は、nNOSタンパク質およびnNOS活性が陰性の少数の筋線維(<1%)を示す。これらはI型線維である。
【0092】
図6Cは、mdx筋における筋鞘のnNOSタンパク質およびnNOS活性の欠如を示す。mdxマウス筋では、ヒトジストロフィンはヒトジストロフィンエピトープに特異的な抗体(Hum Dys)により検出されなかった。矢印は、nNOSタンパク質およびnNOS活性が陽性である希な復帰線維をマークする。
【0093】
図6Dは、以前に出版されたΔR3−21/ΔCミクロ遺伝子の発現は筋鞘へnNOSを回復させることができないことを実証する。#は、ΔR3−21/ΔCミクロ遺伝子を発現するがnNOSタンパク質およびnNOS活性は陰性である代表的な筋線維を表わす。
【0094】
図6Eは、本発明のΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子AAVベクターによってnNOSタンパク質およびnNOS活性の回復が成功したことを示す。AAV−6(AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC)は、mdxのTA筋中の大多数の筋線維に効率的に感染した。十字形はΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子を発現し、nNOSにもまた陽性である代表的な筋線維を表わす。二重十字形は、ΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子発現またはnNOSタンパク質/活性の徴候のない、AAV感染が起こらない代表的な筋線維を表わす。ΔR3−21/ΔCミクロ遺伝子を発現する筋肉とは対照的に、ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子陽性の線維はすべて、nNOSタンパク質およびnNOS活性についてもまた陽性の染色を示した。しかしながらΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子陰性の線維は、nNOSタンパク質およびnNOS活性については本質的には陰性であった。
【実施例6】
【0095】
R16およびR17リピートの両方はnNOSを回復するために本発明のミクロ遺伝子AAVベクターで必要とされる。
図7Aおよび7Bは、IF染色およびnNOS活性染色の結果を示す。これらの実験において、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC(図7A)およびAV.CMV.ΔR3−15/ΔR17−23/ΔC(図7B)を、以前に出版されたプロトコールを使用してAAV−9の中へパッケージングし、パッケージングされたAAVベクターを、50日齢のmdxマウスのTA筋肉へ送達した(Bostick et al., 2007; Ghosh et al., 2007)。AAVに感染した筋肉を30日後に採取した。
【0096】
図7Aは、発明のΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子AAV−9ベクターによるnNOSタンパク質およびnNOS活性の回復の成功を示す。4つの異なるジストロフィン抗体をΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子発現を診断するために使用した。ヒンジ1抗体(Dys 3とも呼ばれる)は、ヒトジストロフィン中のヒンジ1のみを認識する。R16抗体(マンディーズ(Mandys)106とも呼ばれる)は、ジストロフィンリピート16を認識する。R17抗体(マネックス(Manex)44Aとも呼ばれる)はジストロフィンリピート17を認識する。ヒンジ3抗体(マネックス50とも呼ばれる)は、ジストロフィンヒンジ3を認識する。本発明のΔR2−15/R18−23/ΔCミクロ遺伝子はH3を保有しない。したがって、少数の復帰線維のみがヒンジ3抗体により検出された。ヒンジ1抗体、R16抗体およびR17抗体は、AV.CMV.ΔR2−15/R18−23/ΔCベクターによる多量の形質導入を示した。AAVで形質導入された筋線維はnNOSをもまた発現し、nNOS活性を示す(スケールバー、500μm)。
【0097】
図7Bは、AV.CMV.ΔR3−15/R17−23/ΔCの AAV−9ベクターにより感染したmdx筋肉における筋鞘のnNOSタンパク質およびnNOS活性の欠如を示す。このミクロ遺伝子はR17を含まない。したがって、少数の復帰線維のみがR17抗体により検出された。本発明はその具体的な実施形態と関連して記述されているが、発明の方法のさらなる変形が可能であることが理解されるだろう。この特許出願は、本発明の原理に一般に従い、本発明が関連する当技術分野内の公知または慣習的な実践内になるように、および前載された本明細書における基本的な特色へ適用できるように、および添付された請求項の範囲に従うように、本開示からのかかる逸脱を含んで、本発明の任意の変更、使用または適応を包含するように意図される。
【実施例7】
【0098】
酵母ツーハイブリッド研究により、R16−17とnNOSのPDZドメインとの間の相互作用が示された。
mdxマウスにおける我々のインビボの研究は、R16単独(ΔR3−15/ΔR17−23/ΔCミクロ遺伝子など)またはR17単独(ΔH2−R16ミニ遺伝子など)のいずれかの存在では、筋鞘nNOS発現を回復できないことを示唆する。しかしながら、R16およびR17の両方が存在するとき(ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子など)には、nNOSは筋鞘へ動員される。直接的相互作用がR16−17とnNOSのPDZドメインとの間にあるかどうか決定するために、我々は酵母ツーハイブリッド分析を実行した(図8)。
【0099】
結合コンストラクトは、DNA結合ドメイン、トリプトファン(Trp)およびnNOSのPDZドメインを発現する(図8A)。活性化コンストラクトは、DNA活性化ドメイン、ロイシン(Leu)およびジストロフィンスペクトリン様リピート(R16のみ、R17のみまたはR16および17の両方)を発現する(図8A)。シントロフィンPDZドメインを保有する活性化コンストラクトもまた陽性対照として含んだ。DNA結合ドメインとDNA活性化ドメインとの間の相互作用は、ヒスチジン(His)産生を開始させる(図8A)。個々のコンストラクトにより形質転換した酵母細胞は、Leu−/Trp−の二重欠損プレート上で増殖しなかった。結合コンストラクトおよび活性化コンストラクトの両方により共形質転換した酵母細胞は、Leu−/Trp−プレート上で増殖できた。陽性対照において、シントロフィンPDZドメインとnNOSのPDZドメインとの間の相互作用は、ヒスチジン産生をもたらした。このことは、酵母細胞がLeu−/Trp−/His−の三重欠損プレートで増殖することを可能にした(図8Bおよび図8C)。R16−17活性化コンストラクトによりコトランスフェクションされた細胞における酵母の細胞増殖が観察されたが、R16またはR17の活性化コンストラクトによりコトランスフェクションされた細胞においては観察されなかった(図8Bおよび8C)。総合すれば、酵母ツーハイブリッドの我々の結果から、R16−17とnNOSのPDZドメインとの間に直接的相互作用があることが示唆される。しかしながら、R16単独またはR17単独では、nNOSのPDZドメインと相互作用できない。
【0100】
R16−17含有ミクロジストロフィン遺伝子は筋鞘を増強する。ジストロフィンは筋鞘へ機械的支持を提供する。ジストロフィンの非存在下では、筋収縮は筋鞘損傷を導く。これは、傷つけられた筋線維中のエバンスブルー色素(EBD)の蓄積によって測定することができる。AAV−6のAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCを、2か月齢の成体mdxマウスの腓腹筋へ送達し、EBD取り込み分析を40日後に行なった。N末端、R16およびR17に特異的な抗体による連続的な蛍光抗体染色から、ミクロ遺伝子発現が示された(図9)。R6−8およびC末端はΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子では欠失している。これらの領域に特異的な抗体では染色は陽性にならなかった。EBDは、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCベクターによって形質導入されない筋線維においてのみ観察された。
【0101】
R16−17を含むミクロジストロフィン遺伝子は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のマウスモデルにおける筋力を改良する。ΔR4−23ミクロ遺伝子は文献において最もよく特徴が明らかにされているミクロ遺伝子の1つである(Abmayr et al., 2005; Gregorevic et al., 2006; Gregorevic et al., 2004; Harper et al., 2002; Liu et al., 2005; Yue et al., 2003; Yue et al., 2006)。mdxマウス、ユートロフィン/ジストロフィンダブルノックアウトマウスおよびジストロフィー犬における実験は、有望な結果をもたらした。長趾伸(extensor digitorium longus)(EDL)筋力を、AV.CMV.ΔR4−23/ΔCまたはAV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCのいずれかにより感染したmdxマウスにおいて比較した。ロッドドメイン構造中の差にもかかわらず(図10A)、両方のミクロ遺伝子は同じレベルで力の改善をもたらした(図10B)。ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子がmdx4cvマウスにおける筋力を改良できるかどうかを検査するための実験を行なった。これらのマウスはBL6バックグラウンドで得られ、それらはジストロフィン遺伝子中に異なる変異を保有していた。新生仔mdx4cvマウスにおける全身的な遺伝子送達後に、EDL筋の特異的力の有意な増加が観察された(図11A)。血清中クレアチンキナーゼ(CK)は、DMD患者およびDMDの動物モデルにおいて上昇していた。ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子によるAAV治療は、有意にmdx4cvマウスにおける血清CKレベルを低下させた(図11B)。
【0102】
ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCミクロ遺伝子の治療的有効性をさらに評価するために、より厳格な検査を成体のmyoD/ジストロフィンのダブルノックアウト(m−dko)マウスにおいて行なった(図12)。 mdxマウスは軽度の表現型を示していた。これは部分的にはマウス骨格筋における堅調な筋肉再生のためであった。m−dkoマウスにおいて、筋肉再生は骨格筋特異的転写因子myoDの不活性化によってブロックされた。M−dkoマウスはヒト患者と同様の重篤な筋疾患を示した(Duan, 2006; Megeney et al., 1996; Megeney et al., 1999)。2か月齢のオスm−dkoマウスにおいて、全身的なAAV−9送達を実行した。AAV投与の3か月後で、単一(単収縮)刺激および強縮刺激下でEDL筋を測定した。未処理のマウスと比較して、AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔCの感染は有意に筋力を増強した(図12Aおよび12B)。DMD筋肉は、遠心性収縮誘導性損傷に対して特に感受性がある。未処理のm−dkoマウスにおいて、遠心性収縮により筋力は急速に減少した。AV.CMV.ΔR2−15/ΔR18−23/ΔC処理は、遠心性損傷に後に続く筋力を有意に保護した(図12C)。筋力改善の他にも、成体m−dkoマウスにおけるAAV投与は、血清CKレベル中の有意な減少もまたもたらした(図12D)。
【0103】
参考文献















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【0112】


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長野生型ジストロフィンタンパク質に由来する修飾されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記修飾されたタンパク質が、N末端からC末端までに、
(1)前記ジストロフィンタンパク質のN末端ドメインまたは前記ジストロフィンタンパク質の修飾されたN末端ドメインと、
(2)前記ジストロフィンタンパク質の中央のロッドドメインの少なくとも2つのリピートであって、R16およびR17を含む少なくとも2つのリピートと、
(3)前記ジストロフィンタンパク質の少なくとも2つのヒンジ領域であって、H1およびH4を含む少なくとも2つのヒンジ領域と、
(4)前記ジストロフィンタンパク質のシステインリッチドメインと、
を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記ジストロフィンタンパク質の中央のロッドドメインの少なくとも2つのリピートが、(1)R1、R16、R17およびR24、(2)R1−R2、R16、R17およびR24、(3)R1、R16−R19および24、(4)R1−R3、R16、R17およびR20−R24、ならびに(5)R1−R3およびR16−R24からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記ジストロフィンタンパク質の少なくとも2つのヒンジ領域が、H1、H3およびH4を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
前記配列が、配列番号:7〜8および配列番号:10〜13からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
前記ジストロフィンタンパク質のC末端ドメインをコードする配列をさらに含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載のいずれかの核酸分子によってコードされるポリペプチド。
【請求項7】
発現カセットおよびウイルスの逆方向末端リピート(ITR)に作動可能に結合される、請求項1に記載のいずれか1つの核酸分子を含む単一の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項8】
2つのAAVベクターを含むデュアル組換えAAVベクターシステムであって、前記2つのAAVベクターのうちの1つが、請求項1に記載のいずれか1つの核酸分子の一部を含み、かつもう一方のベクターが、前記核酸分子の残りの部分を含み、前記2つのベクターが、互いとの組換えで全長の前記核酸を産生することを可能にする配列をさらに含む、デュアル組換えAAVベクターシステム。
【請求項9】
被験体に治療的有効量の請求項7または8に記載のAAVベクターおよび薬学的に許容される担体を投与することによって、前記被験体におけるジストロフィン欠損疾患を治療する方法。
【請求項10】
前記ジストロフィン欠損疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、およびX連鎖性拡張型心筋症(XLDC)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の請求項7または8に記載のAAVベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。

【図1A】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−516252(P2010−516252A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546436(P2009−546436)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/000717
【国際公開番号】WO2008/088895
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509202879)ユニヴァーシティ オブ ミズーリー−コロンビア (1)
【Fターム(参考)】