説明

筐体及びタイムレコーダ

【課題】 扉を備えた筐体及びこれを用いるタイムレコーダにおいて、部品点数、工数の増加を伴わずに筐体の反りを矯正することにある。
【解決手段】 筺体本体2の一方の側壁2bの内反りを扉3の回転軸となる軸部材4を側壁2bのリブ2c〜2cに当接させることによって矯正し、筺体本体2の他方の側壁2hの内反りを扉3の側壁3gのリブ3h〜3hを側壁2hに当接させることによって矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の筐体及びこれを備えたタイムレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、射出成形によってバケツ状に形成された樹脂製の筐体を用いたものがある。例えば、タイムレコーダでは、筐体内に印字ヘッド、インクリボン等の消耗品を格納し、また、タイムカードの段送り機構を備えており、消耗品の交換の際や、タイムカードが詰まった際には筐体を開く必要があり、このような広い開口部を備えた筐体が用いられている。
【0003】
このような樹脂製の筐体では、奥から開口部の周縁に近づくにつれて内反りが生じてしまうため、その矯正のための構造が必要であった。
【0004】
例えば、特許文献1には、突出する嵌合ガイドを備えたカバーを用い、開口部に嵌合ガイドを嵌め込み、嵌合ガイドによって開口部を外側に押し広げて内反りを矯正する筐体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、樹脂製の筐体と一体的に成形されて開口部の奥に伸びる2本のリブに交差するように、補強リブを取り付けて筐体の歪を防止する筐体が開示されている。
【特許文献1】特開平11−46073号公報
【特許文献2】特開平2003−309379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものは、開口部に扉を備えた筐体には適用できないという問題があった。つまり、開口部において互いに対向する筐体の側壁の両方に嵌合ガイドを当接させるため、これら側壁の一方に回転軸を設けてこれら側壁の並び方向に開閉する扉としてカバーを取り付けようとしても、これは嵌合ガイドと側壁とが干渉するためできない。このため、特許文献1のものは、タイムレコーダの筐体のように開口部に扉を要するものには不向きであった。
【0007】
また、特許文献2のものは、筐体に補強リブを取り付けるため、部品点数、工数の増加という問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、扉を備えた筐体及びこれを用いるタイムレコーダにあって、部品点数、工数の増加を伴わずに筐体の反りを矯正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点の筐体は、
開口部を有する筐体本体と前記開口部を閉じる扉とを備えた樹脂製の筐体であって、
前記開口部から奥に伸びるように前記筐体本体の内側に一体的に設けられたリブと、
前記筐体本体に一体的に設けられた軸受部に支持され、前記開口部の一辺に設けられて前記扉の回転軸となる軸部材と、
を有し、前記軸部材と前記リブとが当接する
ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第1の観点の筐体は、前記軸部材の延伸方向に前記リブの複数が並ぶように構成することも好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点のタイムレコーダは、本発明の第1の観点の筐体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点の筐体及び第2の観点のタイムレコーダでは、扉の回転軸となる軸部材と筐体の開口部から奥に伸びるように設けられたリブとを当接させることによって筐体の内反りを矯正する。このため、部品点数、工数の増加をなく筐体の内反りを矯正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態に係るタイムレコーダについて説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係るタイムレコーダは、図1に示すような筐体1を用いる。筐体1は、射出成形によってバケツ状に形成された樹脂製の筐体本体2と、同様に射出成形による樹脂製の扉3とを、軸部材4により連結してなる。図2にタイムレコーダの正面図を示す。タイムレコーダは扉3に表示部5と、操作ボタン6〜6とを設けてある。
【0015】
図1に示すように、筐体本体2は、バケツ状に形成され、換言すれば、略直方体の一面(正面)に開口部2aを有する。また、図3に筐体本体2を正面からみた設計上の状態、すなわち、内反りのない状態を示す。筐体本体2は、開口部3の奥に後述する印字ヘッド等からなる機械体を収納する。図1に向かって左側の筐体本体2の側壁2bの内側には、開口部2aから奥に伸びるように筐体本体2と一体的に3本のリブ2c〜2cが形成されている。
【0016】
また、側壁2bには、開口部2aの一辺の略上端、下端にそれぞれ軸受部2d、2eが筺体本体2と一体的に形成されている。軸受部2d、2eは、開口部2aから奥に伸びるように筐体本体2と一体的に形成されたリブ2f、2gを貫通するように設けられている。
【0017】
側壁2bは、図4に示すように右側の筐体本体2の側壁2hに対してリブ2f、2gの間の部分がタイムレコーダの正面に向かって突出した突出部2b1となっている。
【0018】
また、筐体本体2の上面には図示しないタイムカードを筐体1の内部に挿入するための挿入口2iが設けられている。
【0019】
扉3は、浅いバケツ状に形成され、換言すれば、略直方体の一面(背面)に開口部3aを有する。開口部3aの裏側がタイムレコーダの正面となる。また、図5に扉3を背面からみた状態を示す。なお、扉3については、奥行きが浅いため筺体本体2のような内反りの問題は生じない。図1に向かって右側の扉3の側壁3bには、開口部3aの略上端、下端にそれぞれ軸受部3c、3dが扉3と一体的に形成されている。軸受部3c、3dは、開口部3aから奥に伸びるように扉3と一体的に形成されたリブ3e、3fを貫通するように設けられている。
【0020】
側壁3bは、図4に示すように左側の扉3の側壁3gに対して、リブ3e、3fの間の部分がタイムレコーダの正面に向かって切り欠けた切欠部3b1となっている。扉3を閉じたときには切欠部3b1に突出部2b1が嵌まり込むようになっている。
【0021】
また、扉3は、側壁3bのリブ3e、3fの上側、下側に対応してタイムレコーダの背面に向かって突出する突出部3b2、3b3を有する。これに対応して筐体本体2には逃げ部2b2、2b3が設けられている。タイムレコーダの上面から見て、突出部3b2、3b3と、逃げ部2b2、2b3とは、軸部材4の軸心を中心とする円弧部を有し、これらの部分で互いに嵌り合う。
【0022】
また、扉3は、側壁3gの内側に開口部3aから奥に伸びるように扉3と一体的に形成された3本のリブ3h〜3hを有する。リブ3h〜3hはその一部が扉3からタイムレコーダの背面に向かって突出する。
【0023】
また、扉3は、表示部5を露出させるための窓部3iを有する。
【0024】
軸部材4はステンレス鋼等の金属材料から形成される。これにより、軸部材4の剛性を筺体本体2の側壁2bのそれより高いものとしてある。扉3のリブ3e、3fで筺体本体2のリブ2f、2gを挟むようにして扉3と筺体本体2とを配置し、軸受部2d、2eと軸受部3c、3dとを位置合わせして、これらの軸受部に軸部材4をタイムレコーダの上面から通して扉3と筺体本体2とを連結する。
【0025】
筐体1の内部には、図6に示すように、筐体本体2の内側には機械体7が取り付けられ、扉3の内側に表示部5を搭載し、操作ボタン6に押圧される図示しないスイッチ基板等を搭載した制御基板8が取り付けられ、タイムレコーダとして完成する。機械体7は、キャリッジに搭載された印字ヘッド7a、インクリボンカセット7b、キャリッジ駆動用モータ7c、図示しないタイムカードの送り機構及びそのための段送りモータ7d等からなる。機械体7に取り付けられた図示しない、キャリッジ駆動用モータ7c、段送りモータ7dの駆動回路やタイムカードの検出用等の各種センサの入力又は出力部は信号線7eにより制御基板8に接続されて、制御基板8により制御される。また、制御基板8は電源ケーブル7fにより筐体本体2の内側に取り付けられた図示しない電源回路と接続される。
【0026】
以上のように構成された筐体1及びタイムレコーダでは、軸受部2d、2e、3c、3dによって支持された軸部材4は、筺体本体2の側壁2bのリブ2c〜2cと当接する。図7に示すように筺体本体2の側壁2b、2hには、奥から開口部2aの周縁に近づくにつれて内反りが生じている。図8に示すように、軸部材4が側壁2bのリブ2c〜2cと当接して側壁2bを外側に押し開くことによって側壁2bの内反りを矯正する。
【0027】
なお、図8では、側壁2hの内反りが矯正された状態となっている。これは、扉3が閉じたときに側壁3gのリブ3h〜3hが側壁2hに内側から当接して側壁2hを外側に押し開くことによって側壁2hの内反りを矯正した状態を示している。
【0028】
また、リブ2c〜2c及びリブ3h〜3hは、側壁2b、2hの上下方向の中央に近づくにつれて内反りが大きくなるため、それに応じて中央部分に適当な間隔で設けられる。また、これらリブは3本に限らず、内反りする範囲に応じて適当な数だけ設ければよい。
【0029】
以上のように本発明の実施の形態に係るタイムレコーダの筺体1は、筺体本体2に扉3を設けるにあたり、筺体本体2の一方の側壁2bの内反りを扉3の回転軸となる軸部材4を側壁2bのリブ2c〜2cに当接させることによって矯正し、筺体本体2の他方の側壁2hの内反りを扉3の側壁3gのリブ3h〜3hを側壁2hに当接させることによって矯正する。このように、内反りを矯正するための部品を筺体1に別途取り付けることがなく、部品点数、工数の増加をなく筐体1の内反りを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態にかかるタイムレコーダの筐体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるタイムレコーダの正面図である。
【図3】実施の形態にかかるタイムレコーダの筐体本体の正面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかるタイムレコーダの筐体を分解した状態の斜視図である。
【図5】実施の形態にかかるタイムレコーダの扉の背面図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるタイムレコーダの扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図7】実施の形態にかかるタイムレコーダの筐体本体の内反り矯正前の状態を示す正面図である。
【図8】実施の形態にかかるタイムレコーダの筐体本体の内反り矯正後の状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 筐体
2 筐体本体
3 扉
4 軸部材
2c リブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体本体と前記開口部を閉じる扉とを備えた樹脂製の筐体であって、
前記開口部から奥に伸びるように前記筐体本体の内側に一体的に設けられたリブと、
前記筐体本体に一体的に設けられた軸受部に支持され、前記開口部の一辺に設けられて前記扉の回転軸となる軸部材と、
を有し、前記軸部材と前記リブとが当接する
ことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記軸部材の延伸方向に前記リブの複数が並ぶことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筐体を備えることを特徴とするタイムレコーダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−335491(P2007−335491A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163162(P2006−163162)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】