説明

筐体固定構造

【課題】市場において発生した製品の振動および騒音の問題に対して事後的に有効かつ迅速に対処することができる筐体固定構造を提供する。
【解決手段】筐体固定構造10は、振動源を収容する筐体12と、この筐体12の取付部26に一端部14aがボルト30により締結され、他端部が車体に固定されるブラケット部材14とを備える。取付部26はボルト30が螺合される雌ねじ穴28を有する。雌ねじ穴28は、取付部26を貫通する貫通穴に形成されている。そして、雌ねじ穴28の上端にはボルト30によりブラケット部材14の一端部14aが取り付けられ、雌ねじ穴28の下端には雄ねじ部42を螺合させることによりウェイト部材40が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体固定構造に係り、特に、振動源を収容する筐体をブラケット部材により車体等の固定支持部に固定する筐体固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用動力源としてモータを搭載したハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の電動車両が知られている。この電動車両には、直流電源としてのバッテリ、および、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換してモータに駆動電力として供給するインバータが搭載される。
【0003】
また、バッテリとインバータとの間にDCDCコンバータ(以下、単にコンバータという)が設けられ、このコンバータによってバッテリ電圧を昇圧してインバータへ供給することも行われている。
【0004】
上記のような電動車両において、インバータは複数の電力用スイッチング素子(例えばIGBT等)を含んで構成され、これらのスイッチング素子が高周期でオン・オフスイッチングされることによってインバータに振動が生じることがある。
【0005】
また、上記コンバータは、通常、リアクトルおよび複数の電力用スイッチング素子を含んで構成され、これらのスイッチング素子も昇圧動作に高速スイッチングされることによってリアクトルに振動が生じることがある。
【0006】
これらのインバータおよびコンバータは、金属製筐体に収容されて電動車両のエンジンコンパートメント(またはエンジンルーム)内などに設置される。上記筐体は、ブラケットによって車体に固定されることがある。この場合、インバータ等の振動が筐体およびブラケットを介して車体に伝達されると、車室内にいるユーザが不快な振動および騒音を感じることが起こり得る。
【0007】
そのため、振動源であるインバータやコンバータを収容した筐体から振動がブラケット部材を介して車体に伝達されるのを抑制するための技術が種々提案されている。
【0008】
例えば、特開2008−248936号公報(特許文献1)には、少なくともインバータを収容した筐体のいずれかの箇所を、車体に固定する筐体固定構造において、筐体および車体の一方に固定されたブラケット、筐体および車体の他方からブラケットに向かって延びるアームとを備えており、ブラケットは、アームに固定される第一固定金具と、ブラケットが取り付けられた筐体または車体に固定される第二固定金具と、第一固定金具と第二固定金具との間に介在する弾性体とを有しているものが記載されている。そして、この筐体固定構造によれば、インバータやコンデンサで発生した高周波ノイズが車両室内へ伝わるのを抑制することができるとされている。
【0009】
また、電動車両に関するものではないが、特開2000−100150号公報(特許文献2)には、磁気ディスク装置の剛体振動を低減するためのダンパを具備し、ダンパを含めてフォームファクタを満足する磁気ディスク装置において、装置内部品を収容している筐体の少なくとも一部分に切り欠き部を設け、切り欠き部に、減衰比が0.2以上のダンパを設置したことを特徴とする磁気ディスク装置が開示されている。そして、この磁気ディスク装置によれば、フレーム等と磁気ディスク装置から構成される振動系の固有振動数の多様化に対応して磁気ディスク装置の回転振動を低減し、ヘッドアクセスの高速化を実現するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−248936号公報
【特許文献2】特開2000−100150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1の筐体固定構造を搭載した電動車両によれば、筐体から車体への振動伝達を抑制する効果がある。しかしながら、弾性体が経時硬化することにより振動減衰効果が低下する可能性がある。その場合、電動車両のユーザから事後的に振動および騒音の抑制を求められたときにディーラ等の現場で対処するのは難しいという問題がある。
【0012】
また、上記特許文献2の磁気ディスク装置では、筐体の切り欠き部に取り付けられるダンパを構成する重りは、装置の仕様によって決まる振動低減目標の絶対値を満足するように決めればよいと記載されているが、事後的に発生した振動等の問題に対して解決策を与えるものではない。
【0013】
本発明の目的は、市場において発生した製品の振動および騒音の問題に対して事後的に有効かつ迅速に対処することができる筐体固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る筐体固定構造は、振動源を収容する筐体と、この筐体の取付部に一端部が締結部材により締結され、他端部が固定支持部に対して固定されるブラケット部材とを備える筐体固定構造であって、前記取付部は前記締結部材が螺合される雌ねじ穴を有し、前記雌ねじ穴は前記取付部を貫通する貫通穴に形成されており、前記雌ねじ穴の一方端には前記締結部材により前記ブラケット部材の一端部が取り付けられ、前記雌ねじ穴の他方端にはウェイト部材の雄ねじ部を螺合させることにより前記ウェイト部材が取り付けられたものである。
【0015】
本発明に係る筐体固定構造において、前記固定支持部は電動車両の車体であり、前記筐体は鉛直方向に関して前記ブラケット部材の一端部の下面以下に配置されてもよい。
【0016】
また、本発明に係る筐体固定構造において、前記ウェイト部材は、前記取付部の雌ねじ穴に螺合される雄ねじ部と、この雄ねじ部材の周囲に分離可能に取り付けられる質量部とにより構成されてもよい。
【0017】
また、本発明に係る筐体固定構造において、前記ウェイト部材または前記質量部材は、重さの異なる複数種類のものから選択される1つ又は複数の組合わせで用いられてもよい。
【0018】
また、本発明に係る筐体固定構造において、前記質量部材は、軸状をなす前記雄ねじ部に対して横方向から装着可能なように、環形状の一部に切欠部が径方向中心まで延びて形成されてもよい。
【0019】
さらに、本発明に係る筐体固定構造において、前記ウェイト部材は、前記雄ねじ部と、この雄ねじ部にくびれ部を介して連結される質量部とを含み、前記くびれ部がバネ部として機能してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る筐体固定構造によれば、筐体の取付部に形成されている雌ねじ穴を貫通穴に形成し、この貫通穴の端部に雌ねじ部を形成し、この雌ねじ部にウェイト部材の雄ねじ部を螺合させてウェイト部材を取り付ける構成としたので、筐体とブラケット部材との取付位置にウェイト部材を含むダイナミックダンパ機能を簡単に付加することができる。したがって、電動車両等の製品について事後的にユーザから振動および騒音を抑えてほしいとの要望があった場合にも、市場において有効かつ迅速に対処することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施の形態である筐体固定構造を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った縦断面図である。
【図3】筐体に肉厚部を膨出形成してダイナミックダンパ機能の質量部とする例を示す、図2と同様の縦断面図である。
【図4】ウェイト部材の変形例を示す側面図である。
【図5】ウェイト部材の別の変形例を示す側面図である。
【図6】図5における1つの環状部材の平面図である。
【図7】第2実施の形態の筐体固定構造を示す、図2と同様の縦断面図である。
【図8】ウェイト部材の雄ねじ部の基部にくびれ部を形成した例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下に説明する実施形態および変形例が適宜に組み合わせて用いられてもよいことは当初から予定されていることである。
【0023】
以下では、筐体固定構造が電動車両に適用される例について説明するが、本発明は、振動源を収容する筐体からの又は筐体への振動伝達を抑制することが必要とされる車両以外の他の機械、装置に適用されてもよい。
【0024】
図1は、第1実施形態の筐体固定構造10を電動車両に適用した例を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA−A線に沿った縦断面図である。
【0025】
図1に示すように、筐体固定構造10は、例えば金属製の筐体12と、この筐体12を車体(固定支持部材)Bに固定するブラケット部材14とを備える。筐体12は、略直方体状をなす金属製のケースである。筐体12には、例えば、軽量で電磁ノイズ遮蔽性が良好で且つ製造容易なアルミダイカストが好適に用いられる。
【0026】
筐体12は、上ケース部16、中ケース部18および下ケース部20を含む。各ケース部16,18,20は、複数のボルト22によってそれぞれ締結されて一体に組み付けられる。そして、筐体12内には、電動車両に搭載されて振動源となるインバータ及びコンバータの少なくとも一方が筐体12との絶縁状態を確保しつつ収容されている。
【0027】
上ケース部16および下ケース部20は、それぞれ、筐体12における上カバーおよび下カバーを構成する。また、中ケース部18は、上面視で略ロ字型の枠体をなしており、外側壁面24上に取付部26が一体に形成されている。ここでは、中ケース部18の1つの壁面24上に2つの取付部26が離れて形成されている例が示されている。
【0028】
中ケース部18の取付部26は、略半円柱状に膨出形成されている。また、取付部26には、雌ねじ穴28が形成されている。雌ねじ穴28は、取付部26の上面から下面にかけて貫通する貫通穴として形成されている。雌ねじ穴28の内周面には、雌ねじが形成されている。この雌ねじは、貫通穴の全長にわたって連続して形成されてもよいし、あるいは、中間部分を除く上端部分および下端部分に形成されていてもよい。この場合、上端部分の雌ねじ部と下端部分の雌ねじ部とは、互いに連通しない雌ねじ穴として形成されてもよい。
【0029】
中ケース部18の取付部26には、例えば金属板等からなるブラケット部材14の一端部14aがボルト(締結部材)30によって取り付けられている。本実施形態におけるボルト30は、フランジ付き円柱状頭部を有するものが用いられるものとして図示するが、これに限定されるものではなく、例えば六角ボルト等の他のボルトまたはネジ部材が用いられてもよい。
【0030】
ブラケット部材14の一端部14aには、図2に示すように、ボルト挿通穴14cが形成されており、このボルト挿通穴14cにボルト30を挿入して雌ねじ穴28の上端部分に螺合させて締め付けることにより、ブラケット部材14の一端部14aが中ケース部18に締結される。
【0031】
他方、ブラケット部材14の他端部14bは、車体B(固定支持部材)に対して固定されている。車体Bには雌ねじ穴32が形成されており、ブラケット部材14の他端部14bにはボルト挿通穴(図示せず)が形成されている。そして、このボルト挿通穴にボルト34を挿入して雌ねじ穴32に対して締め付けることにより、ブラケット部材14の他端部14bが車体Bに締結される。
【0032】
このようにして筐体12は、2つのブラケット部材14を介して車体Bに固定されている。なお、図1では、取付部26の膨出形状を見易くする等のために、もう1つのブラケット部材の図示を省略してある。また、2つのブラケット部材が略U字型をなす1つのブラケット部材として構成されてもよい。さらに、筐体12は、下ケース部20が図示しない別のブラケット部材によってケース下方位置で車体に取り付けられてもよい。
【0033】
図2に示すように、取付部26の雌ねじ穴28の下端部分には、ウェイト部材40が取り付けてある。ウェイト部材40は、例えば鉄製のもので、雄ねじ部42と、雄ねじ部42の基端部に連結する質量部44とを備える。本実施形態では、雄ねじ部42と質量部44とが一体に形成されている。ウェイト部材40は、雌ねじ穴28の下端部分に雄ねじ部42を螺合させて締め付けることにより、取付部26に対して締結固定される。
【0034】
雄ねじ部42の外周には、雄ねじが形成されている。また、質量部44は、円柱状に形成されている。そして、質量部44の端面には、ドライバや六角レンチ等の工具で締め付けるためのマイナス形状、プラス形状、又は六角形状の溝が形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、質量部44の外形が六角柱等の角柱状に形成されてもよい。
【0035】
ウェイト部材40(特に、質量部44)の重さは、筐体12からブラケット部材14を介して車体Bに伝播するのが懸念される高周波振動を効果的に減衰できるように設定される。このような振動の周波数は、筐体12に収容されたインバータ等のスイッチング素子の駆動周波数(例えば、数kHz〜10kHz)に相当するものであり、予め定められている。したがって、その決められた周波数およびその近傍の周波数帯の高周波振動を効果的に減衰させることができるウェイト部材40の重さは、実験、シュミレーション、計算等を行うことによって求めることができる。ここで、1つのウェイト部材40の重さは、例えば数十グラムとすることができる。
【0036】
図3は、筐体12の上ケース部16に肉厚部17を膨出形成してダイナミックダンパ機構の質量部(またはマス部)とする例を示す、図2と同様の縦断面図である。肉厚部17は、各ブラケット部材14の一端部14aが締結される取付部26に対応する位置において、上ケース部16の上面から例えば直方体状に突出する形状に一体形成されている。
【0037】
また、図3に示す筐体固定構造では、取付部26の雌ねじ穴29が貫通していない有底の穴として形成されており、この点においても本実施形態の筐体固定構造10とは異なっている。
【0038】
このように、筐体12のブラケット取付部近傍にウェイト部を一体形成することによっても、振動が筐体12からブラケット部材14を介して車体Bに伝播するのを抑制できることが判っている。しかしながら、例えばアルミダイカスト等の金属鋳物で上ケース部16を形成する場合には、上記のような肉厚部17を形成すると鋳巣等の空隙が内部に生じてケース自体の強度が低下することにつながり易い。また、筐体12の上面はユーザ等の目にも触れる部分であるため、筐体12の上面に突出形成される肉厚部17は筐体12の意匠性も悪くする。
【0039】
これに対し、本実施形態の筐体固定構造10では、図2に示すように、振動減衰機能を果たすウェイト部材40を中ケース部18の取付部26の下面に取り付ける構成としたので、上ケース部16の肉厚部17を省略でき、これにより鋳巣による強度低下および意匠性の悪化を解消できる。
【0040】
また、本実施形態の筐体固定構造10は、筐体12の取付部26に形成されている雌ねじ穴28を貫通穴に形成し、この貫通穴の下端部分に雌ねじを形成し、この雌ねじにウェイト部材40の雄ねじ部42を螺合させてウェイト部材40を取り付ける構成としたので、筐体12とブラケット部材14との取付位置にウェイト部材40を含むダイナミックダンパ機能を簡単に付加することができる。この場合、取付部26の雌ねじ穴28の外周壁部および/または中ケース部18のケース側壁部自体がバネ部として機能することができる。
【0041】
したがって、電動車両について事後的にユーザから振動および騒音を抑えてほしいとの要望があった場合にも、異なる重さのウェイト部材への交換等によるウェイト調整をディーラのサービスピット等で容易に行うことができ、市場において有効かつ迅速に振動騒音対策を講じることができる。
【0042】
図4に、ウェイト部材の変形例を示す。このウェイト部材40aは、取付部26の雌ねじ穴28に螺合される雄ねじ部42aと、雄ねじ部42aの周囲に分離可能な別部材として外装される筒状の質量部44aとで構成される。このように雄ねじ部42aと質量部44aとを別部材として構成することで、雄ねじ部42aとして市販のボルトを用いることができ、ウェイト部材40aのコスト低減を図れる。また、この場合、重さの異なる質量部44aを複数準備しておき、適宜に交換しながら筐体12からの振動伝達をより効果的に抑制可能なものを選択することで、市場における振動騒音対策をより有効且つ迅速に行うことができる。
【0043】
図5に、ウェイト部材の別の変形例を示す。このウェイト部材40bにおいても、図4に示すウェイト部材40aと同様に、雄ねじ部42aと質量部44bとが別部材として構成されている。ただし、上記ウェイト部材40aでは質量部44aが1つの筒状部材で構成されるのに対し、図5のウェイト部材40bでは、質量部44bが、1つの比較的厚い(すなわち重い)環状部材44cと、複数の比較的薄い(すなわち軽い)環状部材44dとを組み合わせて構成されている。
【0044】
このように質量部44bを異なる重さの複数種類の環状部材44c,44dを組合せて用いることで、質量部44bの重さ調整が容易になり、市場における振動騒音対策をより正確に行うことができる。また、比較的薄い環状部材44dとして市販のワッシャ部材を用いることができ、ウェイト部材40bの大幅なコスト低減も図れる。
【0045】
さらにこの場合、図6に示すように、薄い環状部材44dについて、環形状の一部に切欠部46を径方向中心まで延びて形成してもよい。このようにすれば、軸状をなす雄ねじ部42aに対して横方向から環状部材44dを着脱可能になり、取付部26の雌ねじ穴28から雄ねじ部42aを取り外さなくても環状部材44dを増減させることができ、ウェイト部材40bの重さ調整をより簡単に行うことができる。
【0046】
なお、上記のような切欠部46を、図4に示す筒状の質量部44aおよび図5に示す比較的厚い環状部材44cに適用してもよい。また、図5では、2種類の環状部材44c,44dを組合わせて用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、1種類の環状部材44dだけを多数枚用いて構成してもよいし、あるいは、重さが異なる3種類以上の環状部材を組合わせて用いてもよい。さらに、重さが異なる複数種類の環状部材は、必ずしも外径が同一でなくてもよい。
【0047】
次に、図7を参照して、第2実施形態の筐体固定構造10aについて説明する。図7は、第2実施の形態の筐体固定構造10aを示す、図2と同様の縦断面図である。ここでは、上記第1実施形態の筐体固定構造10と相違する点のみについて説明することとし、同一要素に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態の筐体固定構造10aでは、筐体12の上ケース部16aが、鉛直方向に関してブラケット部材14の一端部14aの下面以下に配置されている。換言すれば、ブラケット部材14の水平方向側方に筐体12が位置していない。これ以外の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0049】
このように構成することで、筐体12の底部が車体Bに対して別途固定されている場合に、電動車両の衝突時に車体Bの変形によってブラケット部材14が矢印C方向に移動したとしても筐体12が突き破られることがなく、筐体12およびその収容物であるインバータ等の破損を抑制することができる。
【0050】
図7に示すような筐体12は、例えば、上ケース部16aの両側縁部のねじ留め部以外の部分を中ケース部18内に落とし込むような形状に形成することによって実現されてもよいし、あるいは、上ケース部16a全体を平板として形成する一方、中ケース部18の取付部26を上ケース部16aの厚みに相当する長さ分だけ上方に突出した形状に形成することによって実現されてもよい。
【0051】
なお、本発明に係る筐体固定構造は、上述した複数の実施形態および変形例に限定されるものではなく、本願特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変更または改良が可能である。
【0052】
例えば、図8に示すように、ウェイト部材40cは、雄ねじ部42が比較的小径の又は細くなったくびれ部48を介して質量部44に連結されてもよい。この場合、ウェイト部材40cのくびれ部48によって、ダイナミックダンパ機能を発揮するバネ部を質量部44と共に容易に付加することができる。
【0053】
また、上記においては、取付部の下部にウェイト部材が着脱可能に取り付けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ウェイト部材は、一旦固定されると取り外すのが容易でない例えば、圧入、溶接等の固定方法で取付部に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,10a,10b 筐体固定構造、12 筐体、14 ブラケット部材、14a 一端部、14b 他端部、14c ボルト挿通穴、16,16a 上ケース部、17 肉厚部 18 中ケース部、20 下ケース部、22,30,34 ボルト、24 外側壁面、26 取付部、28,29,32 雌ねじ穴、40,40a,40b,40c ウェイト部材、42,42a 雄ねじ部、44,44a,44b 質量部、44c,44d 環状部材、46 切欠部、48 くびれ部、B 車体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源を収容する筐体と、この筐体の取付部に一端部が締結部材により締結され、他端部が固定支持部に対して固定されるブラケット部材とを備える筐体固定構造であって、
前記取付部は前記締結部材が螺合される雌ねじ穴を有し、前記雌ねじ穴は前記取付部を貫通する貫通穴に形成されており、前記雌ねじ穴の一方端には前記締結部材により前記ブラケット部材の一端部が取り付けられ、前記雌ねじ穴の他方端にはウェイト部材の雄ねじ部を螺合させることにより前記ウェイト部材が取り付けられる、筐体固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体固定構造において、
前記固定支持部は電動車両の車体であり、前記筐体は鉛直方向に関して前記ブラケット部材の一端部の下面以下に配置されることを特徴とする筐体固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筐体固定構造において、
前記ウェイト部材は、前記取付部の雌ねじ穴に螺合される雄ねじ部と、この雄ねじ部材の周囲に分離可能に取り付けられる質量部とにより構成されることを特徴とする筐体固定構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の筐体固定構造において、
前記ウェイト部材または前記質量部材は、重さの異なる複数種類のものから選択される1つ又は複数の組合わせで用いられることを特徴とする筐体固定構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の筐体固定構造において、
前記質量部材は、軸状をなす前記雄ねじ部に対して横方向から装着可能なように、環形状の一部に切欠部が径方向中心まで延びて形成されることを特徴とする筐体固定構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の筐体固定構造において、
前記ウェイト部材は、前記雄ねじ部と、この雄ねじ部にくびれ部を介して連結される質量部とを含み、前記くびれ部がバネ部として機能することを特徴とする筐体固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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