説明

筒状フィルター及びその製造方法

【課題】濾過対象液の泡立ちを防ぐことができる上、濾過ライフの向上が可能な筒状フィルターとその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のスパンボンド不織布からなる複層不織布(20)が巻回された筒状体(10)を含み、隣り合うスパンボンド不織布同士が熱融着されている筒状フィルターであって、筒状体(10)において、隣り合うスパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、複層不織布(20)において、隣り合うスパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、かつ隣り合うスパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違することを特徴とする筒状フィルター(1)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を濾過するために用いられる筒状フィルターであり、主として、水、油、塗料、界面活性剤等の液体を濾過するための筒状フィルター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濾過層の構成成分として繊維を用いた筒状フィルターは、濾過対象液が、中空円筒状に形成された濾過層の最外周部から中心部に集められる間に、濾過層により濾過対象液中の微粒子を捕捉できるように構成されている。
【0003】
このような筒状フィルターは、製薬工業、電子工業等における精製水の濾過、飲料水製造工程内における飲料水の濾過、自動車工業における塗装剤の濾過等、各種産業界において広く利用されている。
【0004】
上記のような分野に使用されてきた筒状フィルターとしては、例えば特許文献1や特許文献2等に提案された筒状フィルターが知られている。特許文献1では、ステープル繊維をカードで開繊して熱接着性複合繊維のウェブとし、このウェブを加熱しながら巻回し、複合繊維の低融点成分で熱接着して筒状フィルターを形成している。また、特許文献2では、スパンボンド不織布製造手法により得られたウェブを用いて、特許文献1の場合と同様に筒状フィルターを形成している。これらの筒状フィルターでは、熱接着性複合繊維が使用されており、濾過圧の上昇によっても熱接着された繊維間の剥離が起こり難いため、安定した捕捉精度が得られるといった利点がある。
【0005】
また、特許文献3には、メルトブロー紡糸をしながら繊維径を変化させて堆積して得られた極細複合繊維ウェブを、熱処理して巻芯に巻き取った後、巻芯を抜き取ることによって得られた筒状フィルターが提案されている。
【0006】
更に、特許文献4には、熱融着性複合繊維を含む繊維集合層を熱融着温度に加熱し、巻芯に巻き付け、引き続き所望の穴径を有するシート(例えば、濾紙、メンブレンフィルター等)を繊維集合層とともに巻き込んで精密濾過層を形成した後、繊維集合層のみを巻き取って前濾過層を形成し、冷却後巻芯を抜き取って得られた精密濾過用筒状フィルターが提案されている。
【特許文献1】特開昭52−152575号公報
【特許文献2】特開平8−226064号公報
【特許文献3】特開平5−96110号公報
【特許文献4】特公昭56−49605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記のような従来の技術には以下のような問題点があった。まず、特許文献1の筒状フィルターは、構成繊維同士が強固に熱接着されているために、繊維間に形成される空隙が小さくなり、その結果、目詰まりが早くなる(即ち、濾過ライフが短くなる)という問題があった。また、繊維処理剤を用いて製造されるステープル繊維から構成されているため、濾過中に濾過対象液の泡立ちが発生するおそれがあった。
【0008】
特許文献2の筒状フィルターは、繊維処理剤を用いずに製造されるスパンボンド不織布
を使用しているため、濾過中に濾過対象液の泡立ちが発生するおそれはない。また、スパンボンド不織布は繊維密度が高いため、特許文献1の筒状フィルターに比べ捕捉精度が良くなる。しかし、繊維密度が高い分、筒状フィルターの内部へ濾過対象液を送り込み難くなるため、筒状フィルターの表面のみで濾過する傾向が強くなり、濾過ライフが短くなるおそれがあった。
【0009】
特許文献3の筒状フィルターは、1dtex以下の極細繊維で構成されているために繊維間の空隙が小さくなり、濾過ライフが短くなる問題があった。
【0010】
特許文献4の筒状フィルターは、前濾過層の繊維間に形成される空隙が小さい上、精密濾過層が熱融着繊維層の中に押圧された状態で存在するため、筒状フィルターの表面のみで濾過する傾向が強くなり、特許文献2の筒状フィルターと同様に濾過ライフが短くなる問題があった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、濾過対象液の泡立ちを防ぐことができる上、濾過ライフの向上が可能な筒状フィルターとその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の筒状フィルターは、複数のスパンボンド不織布からなる複層不織布が巻回された筒状体を含み、隣り合う前記スパンボンド不織布同士が熱融着されている筒状フィルターであって、
前記筒状体において、隣り合う前記スパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、
前記複層不織布において、隣り合う前記スパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、かつ隣り合う前記スパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違することを特徴とする。
【0013】
本発明の筒状フィルターの製造方法は、
第1スパンボンド不織布と、前記第1スパンボンド不織布と重なり合う第2スパンボンド不織布とを含み、前記第1及び第2スパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、前記第1及び第2スパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、前記第1及び第2スパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違する積層スパンボンド不織布を加熱することによって、各層間が熱融着された複層不織布を形成し、
前記複層不織布を、前記第1熱可塑性樹脂の融点より5℃下回る温度以上に加熱しながら巻芯に巻き取り、
巻き取られた前記複層不織布を冷却し、前記巻芯を抜き取って、前記複層不織布が巻回された筒状体を形成する筒状フィルターの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の筒状フィルターによれば、スパンボンド不織布を使用しているため、濾過対象液の泡立ちを防ぐことができる。また、複層不織布において、隣り合うスパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有るため、スパンボンド不織布同士を熱融着した際、熱収縮率が小さい方のスパンボンド不織布に皺が発生し、スパンボンド不織布間に空隙が形成される。更に、複層不織布において、隣り合うスパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違するため、捕捉精度を維持した上、筒状フィルターの内部へ濾過対象液を容易に送り込むことができる。これにより、濾過対象液の通液性が向上し、目詰まりが抑制されるため、濾過ライフの向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の筒状フィルターは、複数のスパンボンド不織布からなる複層不織布が巻回された筒状体を含み、隣り合うスパンボンド不織布同士が熱融着されている筒状フィルターである。ここで、本明細書において「スパンボンド不織布」とは、長繊維(例えば繊維長が1m以上であり、一般的には繊維長が無限である繊維)からなる不織布のことを指す。よって、本発明の筒状フィルターに使用できる不織布は、所謂スパンボンド手法により得られた不織布は無論であるが、長繊維であれば、例えば噴流直紡型のメルトブロー手法により得られた不織布であってもよい。長繊維からなる不織布は、繊維処理剤を用いずに製造される。そのため、本発明の筒状フィルターによれば、濾過対象液の泡立ちを防ぐことができる上、筒状フィルターからの溶剤等の不純物の溶出を防止できる。なお、筒状体の径方向に積層された複層不織布の層数は、例えば、30〜2000とすればよい。また、複層不織布を構成するスパンボンド不織布の厚みは特に限定されず、例えば0.1〜2mmとすればよい。また、複層不織布を構成するスパンボンド不織布の枚数についても特に限定されず、2枚以上であればよい。
【0016】
前記筒状体において、隣り合うスパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなる。これにより、スパンボンド不織布同士を、第1熱可塑性樹脂により熱融着させることができる。第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂との融点の差が10℃未満では、熱融着時に第2熱可塑性樹脂が溶融し、前記複合繊維の形状が維持できなくなるおそれがある。なお、本発明の筒状フィルターは、隣り合うスパンボンド不織布のうち少なくとも一方が前記複合繊維からなる不織布であればよく、他方のスパンボンド不織布については、単一成分繊維からなるものでもよいし、複合繊維からなるものでもよい。
【0017】
前記複層不織布においては、隣り合うスパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、好ましくは7%以上有る。ここで、「熱融着温度」とは、第1熱可塑性樹脂の融点−5℃から第2熱可塑性樹脂の融点−10℃までの範囲において、隣り合うスパンボンド不織布の熱収縮率の差が5%以上となる温度を任意に選択したものである。これにより、スパンボンド不織布同士を熱融着した際、熱収縮率が小さい方のスパンボンド不織布に皺が発生し、スパンボンド不織布間に空隙が形成される。その結果、濾過対象液の通液性が向上し、目詰まりが抑制されるため、濾過ライフの向上が可能となる。なお、前記熱収縮率の差が5%未満では、前記効果が低下する。また、前記熱収縮率の差が80%を超えると、筒状フィルターの成形が困難となるおそれがあるため、前記熱収縮率の差は、80%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
【0018】
前記複層不織布においては、隣り合うスパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違する。これにより、例えば、繊度の小さい方の繊維(以下、「第1繊維」ともいう)で構成されたスパンボンド不織布が、濾過対象液中の微粒子を捕捉する役割を果たし、繊度の大きい方の繊維(以下、「第2繊維」ともいう)で構成されたスパンボンド不織布が、濾過対象液を通液させる役割を果たすことにより、捕捉精度を維持した上、筒状フィルターの内部へ濾過対象液を容易に送り込むことができる。よって、筒状フィルターの表面から内部にかけて満遍なく使用することができるため、濾過ライフの向上が可能となる。なお、本発明の筒状フィルターは、第1繊維で構成されたスパンボンド不織布が、濾過対象液を通液させる役割を果たし、第2繊維で構成されたスパンボンド不織布が、濾過対象液中の微粒子を捕捉する役割を果たすものであってもよい。また、本発明の筒状フィルターは、第1及び第2繊維から選ばれる少なくとも一方が前記複合繊維であればよい。
【0019】
また、前記機能をより向上させるためには、第2繊維は、第1繊維に比べ、繊度が1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。この場合、第1繊維の繊度は、例えば0.5〜10dtexであればよく、第2繊維の繊度は、例えば3〜50dtexであればよい。なお、前記スパンボンド不織布が、繊度が相違する多数の単繊維からなる混繊スパンボンド不織布である場合、第1繊維又は第2繊維の繊度は、それぞれの単繊維の繊度を平均した平均繊度とする。
【0020】
通常、スパンボンド不織布は、熱延伸されておらず、配向結晶性が低いので、ステープル繊維に比べて腰がない。よって、これを巻回して筒状フィルターを形成すると、繊維密度が異常に高くなるため、濾過ライフの極めて短い筒状フィルターとなり、従来全く実用性がなかった。本発明は、上述した構成により、スパンボンド不織布を用いても、濾過ライフの長い筒状フィルターを提供することができる。
【0021】
熱収縮率が小さい方のスパンボンド不織布を構成する繊維は、第1繊維であってもよいし、第2繊維であってもよい。一方のスパンボンド不織布を熱収縮させて他方のスパンボンド不織布に皺を発生させ見かけ上嵩高化することによって、繊維密度の低い複層不織布とすることができる。その結果、筒状フィルターの厚み方向において深層濾過が可能となり、濾過ライフが向上する。更に、前記複層不織布を巻回するときに、巻芯への押し圧を制御して筒状フィルターの内側を密にし、外側を粗にすることにより、深層濾過がより容易となり、濾過ライフがより向上する。
【0022】
熱収縮率が大きい方のスパンボンド不織布と、熱収縮率が小さい方のスパンボンド不織布との目付比(後者の不織布の目付/前者の不織布の目付)は、0.1〜10であることが好ましい。より好ましい目付比は、0.6〜5であり、最も好ましくは2〜5である。目付比を上記範囲内とすることにより、濾過に有効な皺を形成することができる。各々の目付は、10〜50g/m2であることが好ましく、地合いの点から15〜30g/m2であることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いるスパンボンド不織布は、耐圧強度の観点から、前記複合繊維からなるスパンボンド不織布を筒状体の総質量の30質量%以上含むことが好ましく、総質量の80質量%以上含むことがより好ましい。
【0024】
また、本発明の筒状フィルターは、前記複層不織布が、第1スパンボンド不織布と、第1スパンボンド不織布を挟持する第2スパンボンド不織布とからなり、第2スパンボンド不織布が、前記複合繊維から構成されている筒状フィルターであってもよい。中間層となる第1スパンボンド不織布を第2スパンボンド不織布で保護した状態で、筒状体を形成することができるからである。また、前記構成においては、第1スパンボンド不織布を構成する繊維の繊度が、第2スパンボンド不織布を構成する繊維の繊度よりも小さいことが好ましい。より微細な微粒子を捕捉できる層(第1スパンボンド不織布)を保護した状態で、筒状体を形成することができるからである。
【0025】
また、本発明の筒状フィルターは、筒状体の外周に巻回された外装スパンボンド不織布を更に含み、前記外装スパンボンド不織布が、前記複合繊維からなり、かつ前記筒状体の外周に熱融着されている筒状フィルターであってもよい。これにより、外装スパンボンド不織布をプレフィルターとして使用できるため、濾過ライフをより向上させることができる。
【0026】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の原料としては、溶融紡糸性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系重合体又はその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体又はその共重合体、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12等のポリアミド系重合体又はその共重合体等を使用することができる。
【0027】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の断面形状は、円型、楕円型、三角型等特に限定されない。また、前記スパンボンド不織布を構成する繊維が前記複合繊維の場合、その断面形状は、芯鞘型、偏心芯鞘型、分割型、並列型等特に限定されない。
【0028】
前記複合繊維は、第1熱可塑性樹脂(低融点熱可塑性樹脂)で繊維表面の過半が占められている偏芯した又は同心の鞘芯型複合繊維が好ましい。この場合、芯成分の繊維断面形状は、円形、猫目型、クローバー型等の円形とは異なる形状(異型)等特に限定されない。なお、鞘成分の融点が芯成分の融点に比べ20℃以上低い場合、熱融着加工上より都合がよい。
【0029】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の原料として、ポリオレフィンを使用する場合は、230℃におけるMelt Flow Rate(MFR)が5〜40g/10分のポリオレフィンを用いると、比較的熱収縮率が小さいスパンボンド不織布が得られる。一方、MFRが100g/10分を超えるポリオレフィンを用いると、比較的熱収縮率が大きいスパンボンド不織布が得られる。なお、10dtexを超える太い繊維のスパンボンド不織布には、通常、ステープル繊維に使用するポリオレフィンか、これに近い低MFRの樹脂が用いられ、3dtex以下の細い繊維のスパンボンド不織布には、通常、高MFRの樹脂が用いられる。
【0030】
また、エチレンープロピレン共重合体を鞘成分とする複合繊維からなるスパンボンド不織布を用いると、熱収縮率が大きくなる上、熱融着加工する時、捲縮して嵩高化するため好ましい。
【0031】
前記複合繊維の原料として、ポリエステルを使用する場合、比較的熱収縮率が大きいスパンボンド不織布が得られるため、これと組み合わせる他方のスパンボンド不織布としては、熱収縮率及び目付がより小さいスパンボンド不織布が好ましい。
【0032】
耐酸、耐アルカリ性等の耐薬品性や、耐腐食性を重視する分野の筒状フィルターに最適な前記複合繊維としては、鞘成分を高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレンープロピレン共重合体又はポリブテン−1とし、ポリプロピレンを芯成分とする芯鞘型複合繊維が好ましい。また、前記複合繊維からなるスパンボンド不織布と組み合わせるスパンボンド不織布として、単一成分繊維からなるスパンボンド不織布を使用する場合は、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布を使用すると経済的に好ましい。
【0033】
100℃を超える温度における耐熱性が要求される分野の筒状フィルターには、全てポリエステルからなるスパンボンド不織布で構成されている筒状フィルターが好ましい。このうち、芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布を使用する場合、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分は、脂肪族ポリエステル及びポリエステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、融点又は流動開始温度が210℃以下となる樹脂であることが好ましく、前記芯鞘型複合繊維の芯成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。複層不織布を熱接着させながら巻回して筒状フィルターとするとき、少なくとも鞘成分の融点又は流動開始温度以上に熱処理温度を高くする必要があるため、鞘成分の融点又は流動開始温度が210℃を超える場合は、前記熱処理温度が芯成分の融点又は軟化する温度を超えることとなり、筒状フィルターを作製することが困難となるおそれがある。前記脂肪族ポリエステルや、前記ポリエステル共重合体としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸単独又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との混合物と、1種又は2種のジオールとを重合したものが挙げられる。また、前記複合繊維からなるスパンボンド不織布と組み合わせる他方のスパンボンド不織布として、単一成分繊維からなるスパンボンド不織布を使用する場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いて構成されたスパンボンド不織布を使用すると経済的に好ましい。
【0034】
本発明の筒状フィルターに単一成分繊維のスパンボンド不織布を用いる場合は、前記単一成分繊維が、ポイントボント等の熱接着、又はニードルパンチや水流交絡法による繊維交絡一体化固定によって不織布化されており、更に層剥離しない様に厚み方向においても固定されている不織布が好ましい。また、本発明の筒状フィルターに使用される複合繊維のスパンボンド不織布においては、これらに加え、熱風で複合繊維間が接着された不織布も好ましい。
【0035】
また、本発明に使用されるスパンボンド不織布を構成する熱可塑性樹脂は、重合時に未反応のモノマーや低分子量のオリゴマーが残存する可能性があるため、スパンボンド不織布に、前記モノマーや前記オリゴマーが不純物として微少量残留する可能性がある。これら不純物を除去するため、スパンボンド手法や、噴流直紡型のメルトブロー手法で作られた長繊維ウェブを水流交絡処理して、繊維を水洗しながら不織布化するのが好ましい。無論、複層不織布とした後に、更に水流交絡処理して不純物の除去を行った後、筒状体に形成するのも好ましい。
【0036】
次に、本発明の筒状フィルターの製造方法について説明する。なお、本発明の筒状フィルターの製造方法は、前述した本発明の筒状フィルターを製造するための好適な製造方法である。よって、以下に述べる各構成要素の材料等は、前述した本発明の筒状フィルターと同様である。
【0037】
本発明の筒状フィルターの製造方法は、まず、2枚以上のスパンボンド不織布が積層された積層スパンボンド不織布を加熱し、各層間を熱融着させることによって複層不織布を形成する。前記積層スパンボンド不織布には、第1スパンボンド不織布と、第1スパンボンド不織布と重なり合う第2スパンボンド不織布とを含み、第1及び第2スパンボンド不織布のうち少なくとも一方が、第1熱可塑性樹脂と、第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、第1及び第2スパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、第1及び第2スパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違するものを用いる。なお、熱融着させる際は、例えば第1熱可塑性樹脂の融点−5℃から第2熱可塑性樹脂の融点−10℃までの範囲内の加熱温度で加熱すればよい。
【0038】
次に、得られた複層不織布を、第1熱可塑性樹脂の融点より5℃下回る温度以上に加熱しながら巻芯に巻き取る。巻芯としては、例えば鉄芯等が使用できる。なお、第1熱可塑性樹脂の融点より5℃下回る温度未満では、形成される筒状体において、隣り合うスパンボンド不織布同士を熱融着させることできなくなる場合がある。また、加熱温度が、第2熱可塑性樹脂の融点−10℃を超えると、筒状フィルターの成形が困難となるおそれがあるため、加熱温度は第2熱可塑性樹脂の融点−10℃以下とするのが好ましい。
【0039】
なお、複層不織布を巻芯に巻き取る際、熱融着させる箇所への押し圧の掛け方と程度は、得られる筒状フィルターの濾過ライフや、耐圧強度に大きく影響する。例えば、複層不織布を巻き上げる際、巻き上げシャフトの自重で押し付け、圧迫しながら巻き上げると、繊維密度が高くなって、濾過ライフの短いフィルターとなり易いので、巻き上げシャフトの押し圧を制御できる構造の巻き上げ設備を用いるのが好ましい。好適な巻き上げ設備の一例として、巻き上げシャフトが複層不織布を圧迫しないように、巻き上げシャフト全体を流体圧で持ち上げる機構が設けられた設備が挙げられる。また、好適な巻き上げ設備の別の一例として、巻き上げシャフトを複層不織布からなる筒状体の横方向から押し付けて、巻き上げシャフトの自重が前記筒状体に掛らないようにして巻き上げることができる設備が挙げられる。
【0040】
そして、巻き取られた複層不織布を冷却し、巻芯を抜き取って、複層不織布が巻回された筒状体を形成する。冷却する際は、例えば複層不織布の温度が前記複合繊維の鞘成分の軟化点以下となる温度まで、具体的には、例えば鞘成分がポリエチレン樹脂の場合は60℃程度以下になるまで、空冷等により冷却すればよい。
【0041】
次に、本発明の筒状フィルターについて図面を用いて説明する。参照する図1は、本発明の筒状フィルターの一例を示す斜視図である。また、参照する図2は、図1の筒状フィルターに使用される複層不織布を示す模式断面図である。
【0042】
図1に示すように、筒状フィルター1は、複層不織布20が巻回された筒状体10を含む。
【0043】
図2に示すように、複層不織布20は、第1スパンボンド不織布21と、第1スパンボンド不織布21を挟持する第2スパンボンド不織布22とからなる。また、少なくとも第2スパンボンド不織布22は、第1熱可塑性樹脂と、第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、第1スパンボンド不織布21と第2スパンボンド不織布22とは、第1熱可塑性樹脂成分により熱融着されている。
【0044】
また、第1スパンボンド不織布21と第2スパンボンド不織布22とは、熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有る。これにより、第1スパンボンド不織布21と第2スパンボンド不織布22とを熱融着した際、熱収縮率が小さい方のスパンボンド不織布(図2の場合は第2スパンボンド不織布22)に皺22aが発生し、第1及び第2スパンボンド不織布21,22間に空隙SPが形成される。その結果、濾過対象液の通液性が向上し、目詰まりが抑制されるため、濾過ライフの向上が可能となる。
【0045】
また、第1スパンボンド不織布21を構成する繊維と、第2スパンボンド不織布22を構成する繊維とは、繊度が相違している。例えば、第1スパンボンド不織布21が、繊度の小さい方の繊維(第1繊維)で構成され、第2スパンボンド不織布22が、繊度の大きい方の繊維(第2繊維)で構成されている場合は、第1スパンボンド不織布21が、濾過対象液中の微粒子を捕捉する役割を果たし、第2スパンボンド不織布22が、濾過対象液を通液させる役割を果たす。これにより、捕捉精度を維持した上、筒状フィルター1の内部へ濾過対象液を容易に送り込むことができる。よって、筒状フィルター1の表面から内部にかけて満遍なく使用することができるため、濾過ライフの向上が可能となる。また、前記構成の場合は、微粒子の捕捉層となる第1スパンボンド不織布21を第2スパンボンド不織布22で保護した状態で、筒状体10を形成することができる。
【0046】
なお、空隙SPが形成された複層不織布20の厚みT(以下、「見かけ厚み」という)は、空隙SPが形成されない場合(それぞれの熱収縮率に差が無い場合)の厚みに比べ、例えば1.5〜8倍程度であり、より好ましくは2〜8倍程度である。
【0047】
以上、本発明の筒状フィルターについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複層不織布として、熱収縮率がより小さいスパンボンド不織布を、熱収縮率がより大きいスパンボンド不織布で挟持したものを使用してもよい。また、図3に示すように、筒状体10の外周に巻回された外装スパンボンド不織布30を更に含む筒状フィルターであって、外装スパンボンド不織布30が、前記複合繊維からなり、かつ筒状体10の外周に熱融着されている筒状フィルター2としてもよい。これにより、外装スパンボンド不織布30をプレフィルターとして使用できるため、濾過ライフをより向上させることができる。
【0048】
次に、本発明の筒状フィルターの製造方法について図面を用いて説明する。参照する図4A,Bは、本発明の筒状フィルターの製造方法の一例を示す模式工程図である。なお、図1及び図2と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
まず、図4Aに示すように、第1ロール50に巻回された第1スパンボンド不織布21と、第2ロール51に巻回された第2スパンボンド不織布22と、第3ロール52に巻回された第2スパンボンド不織布22とを、それぞれ送り出しながら積層して積層スパンボンド不織布23を形成し、この積層スパンボンド不織布23を熱処理機53により加熱することによって、各層間が熱融着された複層不織布20を形成する。そして、複層不織布20を巻き取りロール54にて巻き取る。なお、熱処理機53としては、例えば熱風加熱型の熱処理機が使用できる。
【0050】
続いて、図4Bに示すように、得られた複層不織布20を熱処理機55へと送り出して、熱処理機55にて、複層不織布20中の第1熱可塑性樹脂の融点より5℃下回る温度以上に加熱して、巻芯56に巻き取る。更に、図示はしないが、巻き取られた複層不織布20を冷却し、巻芯56を抜き取って、複層不織布20が巻回された筒状体10(図1参照)を形成する。なお、熱処理機55としては、例えば熱風加熱型の熱処理機、赤外線加熱型の熱処理機、熱風・赤外線加熱併用型の熱処理機等が使用できる。また、第2スパンボンド不織布22の皺22a(図2参照)は、熱処理機53による加熱工程及び熱処理機55による加熱工程のうち、少なくともいずれか一方で形成されればよい。
【0051】
以上、本発明の筒状フィルターの製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、複層不織布の作製と、筒状体の作製とを別工程で行ったが、同一工程(オンライン)で行ってもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例1〜8及び比較例1,2]
(複層不織布の作製)
まず、表1に示す不織布A〜I(いずれも幅が約90cmのドット熱接着スパンボンド不織布)を用意した。このうち、不織布A〜Dは、芯成分がポリプロピレン(PP、融点:166℃)、鞘成分が高密度ポリエチレン(PE、融点:132℃)の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布である。また、不織布Eは、芯成分がPP、鞘成分がポリブテン−1(PB、融点:128℃)の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布である。また、不織布Fは、芯成分がPP、鞘成分がエチレンープロピレン共重合体(EP、融点:132℃)の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布である。また、不織布G〜Iは、PPのみで構成された単一成分繊維からなるスパンボンド不織布である。そして、これらの不織布A〜Iを、表2に示す構成となるように組み合わせて積層スパンボンド不織布を形成し、この積層スパンボンド不織布を、拘束せずに熱収縮できる状態で熱風加熱型のコンベアー式熱処理機により加熱した(加熱温度:140℃)。この際の加工条件は、加工速度が15m/分、コンベアー式熱処理機内における滞留時間が20秒であった。この加熱により、スパンボンド不織布同士が熱融着された複層不織布が得られた。なお、表1に示す熱収縮率の値は、不織布A〜Iのそれぞれについて、加熱前の幅をAcmとし、140℃で20秒間加熱した後の幅をBcmとした場合の100×(A−B)/Aで算出される値とした。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
(筒状フィルターの作製)
得られた複層不織布を、約30cm幅にスリットして、熱風・赤外線加熱併用型のコンベアー式熱処理機により加熱し(加熱温度:140℃)、鉄芯(長さ:32cm、直径:25mm)に、巻径が55mmに達するまで巻き取った。そして、巻き取られた複層不織布を冷却し、鉄芯を抜き取った後、両端を切断し、この切断面を、加熱した平板(表面温度:138℃)に押し当てることにより切断面の樹脂同士を融着させて、長さ250mmの筒状フィルターを作製した。
【0057】
次に、得られた筒状フィルターの性能を評価した。結果を表2に示す。なお、2dtexのステープル製筒状フィルター(参考例1)、及び不織布Aのみを巻回して作製した筒状フィルター(参考例2)についても、同様に評価した(参考例2は濾過ライフのみ)。評価方法は以下のとおりである。
【0058】
[捕捉精度]
JIS Z8901に準ずる試験用ダスト(JIS7種[中位径:27〜31μm]とJIS8種[中位径:6.6〜8.6μm]を1:1の質量割合で混合したもの、関東ローム製)の試験用懸濁液(濃度:50ppm)を、均一に攪拌しながら筒状フィルターの外側から中空部に向かって40リットル/分の流量で流し、濾過開始から5分経過した後の濾過液について評価した。評価方法は、まず、濾過前の試験用懸濁液の所定量に含まれるダストの粒子径別の個数(M)と、これを濾過した後の濾過液の所定量に残るダストの粒子径別の個数(N)とを粒度分布測定機(商品名:コールターカウンターZM型、コールターエレクトロニクス社製)を用いて測定した。次に、各粒子径別に遮断率(100×(M−N)/M)を算出した。そして、遮断率が99%になる粒子径(μm)を捕捉精度とした。なお、捕捉精度(μm)が小さい値になるほど、筒状フィルターが微小な粒子を補足できるようになる。
【0059】
[通水圧損]
水を筒状フィルターの外側から中空部に向かって40L/分の流量で通水した時の、筒状フィルターの入口と筒状フィルターの出口との圧力差を測定した。
【0060】
[濾過ライフ]
JIS Z8901に準ずる試験用ダスト(JIS8種[中位径:6.6〜8.6μm]とJIS11種[中位径:1.6〜2.3μm]を1:1の質量割合で混合したもの、関東ローム製)の試験用懸濁液(濃度:200ppm)を、均一に攪拌しながら筒状フィルターの外側から中空部に向かって15リットル/分の流量で流し、この流量を維持するための通液圧力が0.2MPaになったときの総通液量(リットル)で評価した。
【0061】
表2に示すように、不織布間の熱収縮率の差が5%以上有る実施例1〜8は、前記差が1%である比較例1に比べ、濾過ライフが向上した。また、実施例8と比較例2とを比較した場合に、いずれも濾過ライフは1000リットル以上であるが、捕捉精度に関しては、実施例8が比較例2に比べ大幅に向上した。
【0062】
また、実施例1〜8の筒状フィルターの一部を削り取って、繊維処理剤(界面活性剤)の付着の有無を調べたが、当然のことながら検出できず、通水しても通過液の発泡は全くなかった。なお、実施例1〜8の筒状フィルターについて、メタノール抽出(JIS L 1015−7.22(6))を行った結果、いずれも0.02質量%の質量減少が生じた。これは、繊維表面に析出したオリゴマーが除去されたことによるものと考えられる。そこで、実施例1で使用した複層不織布に、高圧水流(2.94MPa)を噴射して水洗し、乾燥した後、上述の方法により筒状フィルターとし、同様にメタノール抽出を行ったところ、0.005質量%未満の質量減少となり、質量減少はほとんど観察されなかった。
【0063】
また、前述した濾過ライフの評価を行った後の実施例1〜8の筒状フィルターを観察したところ、中心の空洞近くまで、試験用懸濁液の色(茶色)に着色していた。この結果から、実施例1〜8の筒状フィルターは、表面から内部にかけて満遍なく使用することができることが明らかになった。一方、濾過ライフの評価を行った後の比較例1の筒状フィルターは、外周から5mm程度までしか着色していなかった。
【0064】
また、参考例2の筒状フィルターは、質量が250gであったが、実施例1の筒状フィルターは、参考例1の筒状フィルターと同程度の200g前後の質量となり、嵩高さが向上した。
【0065】
[実施例9]
次に、前述した筒状フィルター2(図3参照)の実施例である実施例9について説明する。実施例9の筒状フィルターは、実施例1の筒状フィルターの外周に不織布Aを熱融着させて形成した。具体的な形成方法は、まず、実施例1の筒状フィルターの外面に向かって不織布Aの先端部を押し当てて、金属ゴテ(表面温度:138℃)を用いてそれらを熱圧着した。次いで、実施例1の筒状フィルターを回転させて不織布Aを巻き付けながら(3周分)、最外周の不織布Aに、複数のフランジが設けられた金属棒(表面温度:138℃)を押し当てることにより、実施例1の筒状フィルターの外周に不織布Aを熱融着させて実施例9の筒状フィルターを形成した。
【0066】
次に、実施例9の筒状フィルターについて、その性能を実施例1と同様に評価したところ、実施例1と全く同様であった。ただし、試験用ダストとして、粒子径がより大きいものを用いれば、外装スパンボンド不織布(不織布A)が設けられた実施例9の筒状フィルターは、実施例1の筒状フィルターよりも濾過ライフ等の性能が向上するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の筒状フィルターは、製薬工業、電子工業等における精製水の濾過、飲料水製造工程内における飲料水の濾過、自動車工業における塗装剤の濾過等、様々な用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の筒状フィルターの一例を示す斜視図である。
【図2】図1の筒状フィルターに使用される複層不織布を示す模式断面図である。
【図3】本発明の筒状フィルターの別の一例を示す斜視図である。
【図4】A,Bは、本発明の筒状フィルターの製造方法の一例を示す模式工程図である。
【符号の説明】
【0069】
1,2 筒状フィルター
10 筒状体
20 複層不織布
21 第1スパンボンド不織布
22 第2スパンボンド不織布
23 積層スパンボンド不織布
30 外装スパンボンド不織布
56 巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスパンボンド不織布からなる複層不織布が巻回された筒状体を含み、隣り合う前記スパンボンド不織布同士が熱融着されている筒状フィルターであって、
前記筒状体において、隣り合う前記スパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、
前記複層不織布において、隣り合う前記スパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、かつ隣り合う前記スパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違することを特徴とする筒状フィルター。
【請求項2】
前記複層不織布において、隣り合う前記スパンボンド不織布を構成する繊維のうち、より繊度が大きいほうの繊維は、より繊度が小さいほうの繊維に比べ、繊度が1.5倍以上である請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項3】
前記複層不織布は、第1スパンボンド不織布と、前記第1スパンボンド不織布を挟持する第2スパンボンド不織布とからなり、
前記第2スパンボンド不織布は、前記複合繊維から構成されている請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項4】
前記第1スパンボンド不織布を構成する繊維の繊度は、前記第2スパンボンド不織布を構成する繊維の繊度よりも小さい請求項3に記載の筒状フィルター。
【請求項5】
前記筒状体の外周に巻回された外装スパンボンド不織布を更に含み、
前記外装スパンボンド不織布は、前記複合繊維からなり、かつ前記筒状体の外周に熱融着されている請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項6】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維は、ポリオレフィンを含み、
前記複合繊維は、高密度ポリエチレンを鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする芯鞘型複合繊維である請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項7】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維は、ポリオレフィンを含み、
前記複合繊維は、ポリブテン−1を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする芯鞘型複合繊維である請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項8】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維は、ポリエステルを含み、
前記複合繊維は、芯鞘型複合繊維であり、
前記芯鞘型複合繊維の鞘成分は、脂肪族ポリエステル及びポリエステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、融点又は流動開始温度が210℃以下となる樹脂であり、
前記芯鞘型複合繊維の芯成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の筒状フィルター。
【請求項9】
第1スパンボンド不織布と、前記第1スパンボンド不織布と重なり合う第2スパンボンド不織布とを含み、前記第1及び第2スパンボンド不織布のうち少なくとも一方は、第1熱可塑性樹脂と、前記第1熱可塑性樹脂より融点が10℃以上高い第2熱可塑性樹脂とを含む複合繊維からなり、前記第1及び第2スパンボンド不織布の熱融着温度におけるそれぞれの熱収縮率の差が5%以上有り、前記第1及び第2スパンボンド不織布をそれぞれ構成する繊維の繊度が相違する積層スパンボンド不織布を加熱することによって、各層間が熱融着された複層不織布を形成し、
前記複層不織布を、前記第1熱可塑性樹脂の融点より5℃下回る温度以上に加熱しながら巻芯に巻き取り、
巻き取られた前記複層不織布を冷却し、前記巻芯を抜き取って、前記複層不織布が巻回された筒状体を形成する筒状フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150222(P2006−150222A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344203(P2004−344203)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】