説明

筺体

【課題】電気回路基板に接続したケーブルを同電気回路基板を収容した筺体に遊動を規制して取り付けること
【解決手段】 内部に電気回路基板30を収納した筺体本体10と底カバー20からなる筺体であって、前記底カバー20に前記電気回路基板30に実装された回路のコネクタ端子34に接続された複数のケーブル40を挿通するケーブル挿通溝28を設け、該ケーブル挿通溝28に対して上記ケーブル40を前記底カバー20の外部から導入するためのガイド溝26を上記ケーブル挿通溝28と連通して一体に形成し、かつ前記ガイド溝26の外側の角部25を円弧状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電気回路基板を収納すると共に電気回路基板に接続された複数のケーブルを外部に導出するケーブル挿通溝を備えた筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器等において、筺体に収容した制御部などの電気回路基板と、被制御機器とをケーブルで接続したものは、例えば、ドアセンサーとそのドアエンジン制御部のように、身近にごく普通に存在しているが、筺体からケーブルを取り出した場合、ケーブルをフリーの状態にしておくと、ケーブルに思わぬ外力が作用し易くなり、ケーブルに引っ張り力が作用すると、それがケーブルと電気回路基板との接合部に直接作用してケーブルが電気回路基板から外れる虞がある。
【0003】
そのため、従来から、ケーブルがフリーの状態にならないように拘束し、かつ例えば、ケーブル等に引っ張り力が働いた場合でも、引っ張り力で電気回路基板とケーブル等との接続部が外れたり、変形したり或いは電気回路基板パターンが剥がれないように、ケーブル等を電気回路基板に取り付けられた結束バンドや針金等の手段により電気回路基板に掛け止めしておくことが行われている。
【0004】
例えば、電気回路基板のコネクタに接続されたケーブルを結束バンドで電気回路基板に掛止したものが知られている。この構成では、ケーブルが結束バンドで電気回路基板に掛止されるため、ケーブルに引っ張り力が働いても、引っ張り力は電気回路基板に取り付けた結束バンドで受け止めることができ、電気回路基板のコネクタ接続部には及ばない。
【0005】
しかし、この構成では結束バンドを電気回路基板に設けた孔に通し、結束バンドをまず電気回路基板に取り付けてから、その結束バンドでケーブルを結束するから、電気回路基板とケーブルとの組み立て作業に手間が掛かるだけではなく、電気回路基板の修理等でケーブルを電気回路基板から取り外す場合には、結束バンド等を解くか、切断しなければならず、修理等の手間も掛かる。またその度毎に、新たに結束バンド等を用意してケーブルを電気回路基板に掛止しなければならない。また、電気回路基板に孔を設けておく必要がありその分電気回路基板の実効面積が減少する。
【0006】
また、別の例として、電気回路基板に針金を半田付けしておき、その針金をケーブルに巻き付けて、ケーブルを結束しかつ掛止したものも知られている。この構成では、ケーブルに作用する引っ張り力は電気回路基板に取り付けた結束バンドで受け止めることができるから、電気回路基板のコネクタ接続部に及ぶことはない。
【0007】
しかし、この構成でも、針金を電気回路基板に半田付けしたり、針金をケーブルに巻き付けたりするため、電気回路基板とケーブルとの組み立て作業は煩雑である。
また、修理等において、ケーブルを電気回路基板から取り外すときは、ケーブルに巻き付けた針金を解いてからケーブルを取り外さねばならず、また、再度組み立てる際にも針金をケーブルに巻き付け直す必要があり、修理等の手間が掛かるという問題がある。
【0008】
そこで、図5に示すように、結束バンドや針金等を用いることなく、ケーブルを電気回路基板へ容易に挿入、掛止および取り外しができるように、ケーブル102を取り付けた電気回路基板101縁部に切り欠き部106を設け、この切り欠き部106と連続する透孔部105を一体に設け、ケーブル102を切り欠き部106から透孔部105内に導入し、透孔部105の角部107に引っ掛けて係止するようにした電気回路基板が知られている(特許文献1参照)。
【0009】
この電気回路基板では、ケーブル102を掛止することで、結束具を用いずにケーブル102を電気回路基板101に固定することができる。
しかしながら、このケーブルの掛止構造では、電気回路基板101の一部に切り欠き部106や透孔部105を設けるため、電気回路基板101の実装面積がその分犠牲になる。そのため、同じ回路を取り付ける場合に、その分電気回路基板101を大きくする必要があり、その結果、電気回路基板101を収納する筺体も少なくともその分大きくしなければならない。
【特許文献1】特開平8−236875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ケーブルが筺体に取り付け易く、かつ一旦取り付けたときには外れ難く、しかも、従来のようにケーブル用の電気回路基板に対する結束具や、電気回路基板にケーブルを掛止する掛止部を設けることがなく、ケーブルに外力が作用してもその外力がケーブルの電気回路基板との接合部に作用するのを防止することである。
また、他の目的は、ケーブルに静電気が発生しても、その静電気が電気回路基板に影響を与えないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、内部に電気回路基板を収納した筺体本体とカバー体からなる筺体であって、前記カバー体に前記電気回路基板に接続された複数のケーブルを挿通するケーブル挿通溝を設け、該ケーブル挿通溝に対して上記ケーブルを前記カバー体の外部から導入するためのガイド溝を上記ケーブル挿通溝と連通するように一体に形成し、かつ前記ガイド溝の外側の角を円弧状に形成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された筺体において、前記ケーブル挿通溝の筺体外部側の開口部を筺体内部側の開口部より小さくして、収納された電気回路基板に接続された前記複数のケーブルに作用する外力を前記筺体外部側の開口端部で支持して、前記電気回路基板の接続部に伝達するのを防止することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された筺体において、前記ケーブル挿通溝の少なくとも前記ガイド溝側と反対側に前記ケーブルの電荷除去用壁部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本願発明は以上の構成から成るから、筺体に収納した電気回路基板に等ピッチで設けたコネクタに一端を接続した複数のケーブルを、上記筺体のカバー体である底カバーの側壁に設けたガイド溝に対して一列に挿入していき、全てのケーブルがそのガイド溝に挿入された状態で、底カバーとケーブルとを相対回転させながら、上記ガイド溝からそれに続くケーブル挿通溝に向かって方向転換させながら挿入していく。
このようにすることで、予め筺体本体に収納した電気回路基板に接続した複数のケーブルを筺体の底カバーのケーブル挿通溝に挿入し、その後、筺体本体と底カバーとを組み合わせることで、内部に収納した電気回路基板に接続した複数のケーブルを筺体から外に引き出した状態で筺体を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気回路基板に接続された複数のケーブルを筺体の底カバーのケーブル挿通溝に入れ易くかつ一旦挿通したケーブルは外れ難くすることができる。また、筺体の外側の引き出し口は筺体内部側よりも狭く形成されているから、ケーブルに外力が作用してもこの狭くなった開口部で外力を支持して、ケーブルに外力が作用してもその外力がケーブルの電気回路基板との接合部に作用するのを防止することができる。また、ケーブル挿通溝の開口部が筺体の内部側が外側面よりも広くなっているため、ケーブル束を筺体に取り付けたとき、電気回路基板側に接続されたケーブルの接続部に負荷(引っ張り力)が掛かるのを防止することができる。更に、ケーブル挿通溝に対向して筺体に壁面を形成したことにより、ケーブルに発生した静電気を壁面に逃がし、静電気が電気回路基板に落ちることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の筺体に収納した電気回路基板に接続した複数のケーブルを取り付けた筺体について、その一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電気回路を収納した筺体、例えば、赤外線センサ用電気回路を収容する筺体の裏面からみた斜視図である。図2は、図1の分解斜視図である。
筺体1は、図2に示すように、略矩形の容器状の筺体本体10と、筺体本体10と組み合わさって筺体1を構成する筺体本体10の底カバー20とからなり、筺体本体10中には電気回路基板30が収納される。
【0015】
筺体本体10は、略矩形の上面12の四周に沿って立設された側壁14で囲った例えば合成樹脂製の箱形容器であって、壁面14の下側(図2では上側)の端部は、筺体本体10の底カバー20の同様の周壁端部が嵌合する段部16が形成されており、筺体本体10と底カバー20を嵌合して一体化して、電気回路基板30を収容した筺体1が構成される。
本実施形態では、電気回路基板30には赤外線センサー用の赤外線の発信回路、受信回路などからなる電気回路32が実装されている。この電気回路基板30の図2の中央部左下側には、電気回路32と、図示しないケーブルとを接続するための複数のコネクタ端子34が所定ピッチで一列に並んで配置されている。
【0016】
筺体本体10の底カバー20は、例えば略矩形の底面22の四周に沿って底面22から直立した周壁24で覆った略矩形の筺体本体10よりも底浅の容器状をなし、例えば合成樹脂で一体成型されている。その周壁24の一部の側壁24aには、筺体本体10の内部に収容される電気回路基板30のコネクタ端子34に一端が接続された複数のケーブル40を、外側から一列縦隊で挿入するためのスリット状のガイド溝26が設けられている。
また、底カバー20の底面22には、このガイド溝26と連通するケーブル40を収容するケーブル挿通溝28が設けられている。
【0017】
図3Aは、筺体本体10側から見た筺体1の平面図であり、図3Bはその一部を拡大して示した図である。
図3Bの一部拡大平面図から明らかなように、ガイド溝26の外側端縁部の角部25は、組立時に筺体本体10中に上記ケーブル40を導入し易くするため滑らかな円弧状断面に形成されている。
ガイド溝26の幅は、ケーブル40が一列縦隊で容易に通過しかつ上記ケーブル挿通溝28へ導入できればよく、その幅が広すぎると、ケーブル40を上記ケーブル挿通溝28に収納した後に容易にガイド溝26から外に出やすくなるため、ケーブル挿通溝28に収納したケーブルが安定しなくなる。
【0018】
上記底カバー20の底面22には、ガイド溝26に対してその長手方向中央部で連通し、これと直交する方向に延びたケーブル挿通溝28が一体に形成されている。このケーブル挿通溝28の周囲は、上記底カバー20のガイド溝26を設けた側壁24aを除く三方を囲む壁体29が上記側壁24a及び底面22から一体に立設されて、全体として内部が上記ケーブル挿通溝28となる細長い断面略矩形の筒状体を形成している。つまり、上記側壁24aと上記壁体29から成る細長い筒状体がケーブル挿通溝28を構成している。
【0019】
ここで、ケーブル挿通溝28は、既に述べたように、細長い筒状体の内側の空間として形成されており、そのケーブル挿通溝28の筺体本体10側の開口部28aは、図3Bに示すように、底カバー20の底面側に開口する開口部28bよりも長く形成されている。
これは、ケーブル挿通溝28の筺体本体10側の開口部28aでは、電気回路基板30のコネクタ端子34に所定のピッチで取り付けられた複数のケーブル40が互いに一定間隔に無理なく広がることができるようにし、他方、筺体1の底面22側では、ケーブル40との間にあまり間隔ができないようにして、ケーブル40に外力が作用したときは、ケーブル40が上記ケーブル挿通溝28の開口部28bの縁に当接してその縁で外力を容易に受け止めることができるようにするためである。
【0020】
以上の構成により、ガイド溝26からケーブル挿通溝28内にケーブル40を取り付けるときに、筺体本体10側の広い開口部28aを利用してケーブル40と底カバー20とを捻るように回転させてケーブル挿通溝28に収納する。
【0021】
図4は、電気回路基板30のコネクタ端子34に接続されるケーブルの1例を示す図である。
ケーブル40は、図示のようにそれぞれ一端部にはコネクタ端子34との接合端子となるコネクタ42が取り付けられており、他端部は、外部機器、ここではドアエンジンの制御回路(図示せず)のコネクタ端子に接続するための接合端子44が取り付けられている。また、取り扱いに便利なようにその中間部、つまり、ガイド溝26やケーブル挿通溝28に挿入される部分はカバー46で一体に結束されている。
【0022】
以上の構成において、本筺体1を組み立てるときは、まず、筺体本体10中に電気回路基板30を配置する。その後この電気回路基板30に接続されたケーブル40を掴んで、上記底カバー20のガイド溝26から一列縦隊で挿入しつつ、底カバー20とケーブル40とを相対回転させて、ケーブル挿通溝28に達したケーブル40を図3中で上方に約90°捻るように屈曲させて、ガイド溝26から順次ケーブル挿通溝28に導入していく。
【0023】
ケーブルをケーブル挿通溝28中に収納することにより、ケーブル自体が前記ガイド溝26との連通口27を塞ぎ、ケーブルが多少ずれてもガイド溝26を通って外れることはない。
このようにしてケーブル40が底カバー20のケーブル挿通溝28に収納されたら、最後に底カバー20を筺体本体10に嵌合して一体化する。
【0024】
ケーブル40は、ケーブル挿通溝28内等で動くときに静電気が発生することがあるが、本実施形態では、ケーブル40のケーブル挿通溝28の周りには壁体29が存在しおり、ケーブル40のケーブル挿通溝28内でケーブルが動くときは常に壁体29と接触することとなるため、ケーブル40に発生した静電気は、壁体29の電荷除去機能により除去され、電気回路基板30に落ちる(放電する)ことはない。
なお、以上の実施形態の説明は本発明のカバー体が底カバーであるとして説明したが、必ずしも底カバーに限定されず上カバーであってもよい。
【0025】
本実施形態では、ケーブル40を底カバー20のケーブル挿通溝28に挿入するだけの簡単な操作でケーブル40を筺体1に取り付けることができ、かつ筺体本体10内部の開口部28a側では、各ケーブル40間隔が所定ピッチで並んだコネクタ端子34位置に合わせて自由に拡張可能であるから、コネクタ端子34の接合部に引っ張り力が作用することがなく、他方、ケーブル40の引き出し側である底カバー20の開口部28b側では、開口部28bが小さいのでケーブルの遊動が抑制されると共に、外力が作用したときに開口部28bの縁でその外力が支持されるから、外力が直接ケーブルの電気回路基板30との接合部に作用することが防止される。
したがって、従来のように電気回路基板に固定するための拘束具を用いず、しかも、電気回路基板の面積を犠牲にすることなく、また、電気回路基板とケーブルとの接合部に引っ張り力を作用させることなくケーブルの抜けを防止することができる。
本実施形態によれば、従来のように電気回路基板の面積を犠牲にすることがないから、同じ有効面積を得るための電気回路基板を小型化できるため、筺体自体も小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る電気回路を収納した筺体の裏面からみた斜視図である。
【図2】図1に示す筺体の分解斜視図である。
【図3】図3Aは、筺体本体側から見た筺体の平面図であり、図3Bはその一部を拡大して示した図である。
【図4】ケーブルを示す平面図である。
【図5】従来のケーブルの結束手段を示す平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・筺体、10・・・筺体本体、20・・・底カバー、26・・・ガイド溝、28・・・ケーブル挿通溝、29・・・壁体、30・・・電気回路基板、34・・・コネクタ端子、40・・・ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電気回路基板を収納した筺体本体とカバー体からなる筺体であって、
前記カバー体に前記電気回路基板に接続された複数のケーブルを挿通するケーブル挿通溝を設け、該ケーブル挿通溝に対して上記ケーブルを前記カバー体の外部から導入するためのガイド溝を上記ケーブル挿通溝と連通するように一体に形成し、かつ前記ガイド溝の外側の角を円弧状に形成したことを特徴とする筺体。
【請求項2】
請求項1に記載された筺体において、
前記ケーブル挿通溝の筺体外部側の開口部を筺体内部側の開口部より小さくして、収納された電気回路基板に接続された前記複数のケーブルに作用する外力を前記筺体外部側の開口端部で支持して、前記電気回路基板の接続部に伝達するのを防止することを特徴とする筺体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された筺体において、
前記ケーブル挿通溝の少なくとも前記ガイド溝側と反対側に前記ケーブルの電荷除去用壁部が形成されていることを特徴とする筺体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−251994(P2008−251994A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94178(P2007−94178)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】