説明

箔転写方法および箔転写面形成用トナー

【課題】 媒体上にトナーで形成された箔転写面上に転写箔を確実に転写させ、箔転写面が強固な接着性と内部凝集力を発現して箔による美的外観の維持を可能にする箔転写方法および箔転写面形成用トナーを提供する。
【解決手段】 電子写真画像形成方法を応用して箔転写面を形成する工程を有する箔転写方法であって、前記箔転写面の形成に使用されるトナーが、少なくともビニル系樹脂とポリエステル樹脂とを含有し、ビニル系樹脂が全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下含有されることを特徴とする箔転写方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上の箔を転写する個所に箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面と呼ぶ層を形成し、当該層上に箔を転写する箔転写方法および当該箔転写方法に用いる箔転写面形成用トナー(以下、簡単にトナーともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品容器等のプラスチック成形品、製本、商業印刷の分野では、媒体の表面に箔押しと呼ばれる印刷加工処理を施して、金や銀、色箔の文字や絵柄を転写させ、一般印刷では表現が困難な金属感や光沢による高級感を媒体に付与している。この箔押しはホットスタンプ法とも呼ばれ、熱と圧力を利用して紙やプラスチック、皮革等の様々な素材上に箔を転写するもので、特にメタリックな光沢感を表現する上で最適な方法である。具体的には、プラスチック製の支持体上に形成された箔を有する転写材層を媒体に接触させ、この状態で金属製の押し型を用いて熱圧着を行い、転写材層上の箔を媒体上に転写して箔を形成するものである。
【0003】
箔押しに使用される転写箔は、たとえば、ポリエステルフィルム等の樹脂製の基材の片面に設けられた離型剤層の上に保護層や転写材層、接着剤層が設けられてなり、転写材層は金属蒸着やインク等により形成されている。そして、箔の市場の拡大とともに転写箔の技術も発展してきた。たとえば、箔画像の耐久性向上の観点から、有機ケイ素化合物と反応性有機化合物を含有した保護層を有する転写箔や、基材から剥離した後に電子線を照射してより強固な保護層を形成する電子線硬化性接着層を有する転写箔の研究等が進められている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、最近ではキャッシュカードやクレジットカード等の偽変造防止やセキュリティのためにホログラムを取り付けることが多いが、カードの偽変造防止等のホログラムは主に箔転写の技術を用いて形成されている。そして、偽変造防止やセキュリティ等の目的で使用される転写画像は、精密な模様の入ったものも多く、画像を正確に、また、バリや欠け等の不良を発生させない様に箔を転写させることが要求される。この様な要請に応えて高分子液晶材料を転写層に含有させて、精密な形状のラベルをバリや欠け等の不良を発生させることなく正確に転写させる転写箔の検討も進められている(たとえば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、媒体上への箔転写作業が手間をかけずに確実に行え、かつ、転写した箔が長期にわたり安定して保持される様に、媒体の表面に樹脂層を設け、そこに転写箔を重ね合わせて加熱処理等を施して箔転写を行う技術の検討もこれまで進められてきた。たとえば、ホットメルト接着剤を分散させたエマルジョンインクを用いて媒体上にインク層を形成し、このインク層に転写箔を重ね合わせて加熱圧着により箔転写を行う方法がある(たとえば、特許文献4参照)。
【0006】
また、トナーを用いて媒体上に樹脂層を形成し、これをバインダにしてホットスタンプ法により箔転写を行う技術も検討されている。たとえば、媒体上にトナーを用いて凸状の画像や意匠模様画像を形成し、このトナー画像面に転写箔の接着剤層を重ね合わせ、ローラ等を用いて熱圧着を行い、立体画像に箔を転写する技術がある(たとえば、特許文献5、6参照)。さらに、ドライトナーで作製したトナー画像層を支持体上に設けた転写箔の技術もあり、プリンタを用いて当該トナー画像層に絵柄を書き込み、これを支持体上に転写するものである(たとえば、特許文献7参照)。これら特許文献に記載の技術によれば、押し型と呼ばれる金属製の圧着部材を用いずに転写箔を媒体表面に熱圧着することも想定され、箔転写作業の所要時間を短縮することにより作業効率の向上を図ろうとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−1995号公報
【特許文献2】特開2007−15159号公報
【特許文献3】特開2009−90464号公報
【特許文献4】特開平5−279608号公報
【特許文献5】特開平1−200985号公報
【特許文献6】特開平8−164663号公報
【特許文献7】特開2004−74422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献に開示された技術は、いずれも、媒体上に形成したトナー層と転写箔との接着性についての検討が十分に行われてはいなかった。たとえば、転写箔を媒体に接触させると、トナー層以外の個所で箔が転写することもあり、所定個所以外の場所に箔が付着して媒体の美的外観を損ねるものであった。また、媒体上に転写された箔の接着力が十分に発現できないこともあり、少しの力が加わっただけで箔が剥離して美的外観を損ねるという耐久性への課題を有していた。さらに、押し型を使用せずに媒体上への箔転写を行うと、トナー層と転写箔の接着層が十分になじまず、箔の部分的な欠落や端部でのバリ発生を起こす等、所定形状の箔転写を安定して行えないという生産面での課題も有していた。また、トナー層の内部凝集力が小さいために、外部から加えられた力によってトナー層が凝集破壊を起こし、箔が欠落してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、媒体上にトナーで形成された箔転写面上に転写箔を確実に転写させ、箔転写面が強固な接着性と内部凝集力を発現して箔による美的外観の維持を可能にする箔転写方法および箔転写面形成用トナー(以下、簡単にトナーともいうことがある)を提供することを目的とする。また、本発明は、トナーを用いて形成した箔転写面上に箔を転写させる際、押し型を使用せずに両者間に強固な接着力を発現させ、箔の欠落やバリを発生させずに所定個所への箔の転写が可能な箔転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
1.
少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体に箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を媒体に転写する工程と、
前記媒体に転写された箔転写面を媒体上に定着する工程と、
前記箔転写面が定着された媒体に、少なくとも接着層と箔層を有する転写箔を供給する工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させる工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させた状態のまま加熱する工程と、
前記転写箔を前記媒体より剥離し、箔転写面上に箔層を接着させた媒体を得る工程を有する箔転写方法であって、
前記転写箔の接着層は、熱可塑性樹脂を含有し、
前記箔転写面形成用トナーが、少なくとも結着樹脂としてビニル系樹脂とポリエステル樹脂とを含有し、該ビニル系樹脂が全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下含有されることを特徴とする箔転写方法。
2.
前記ビニル系樹脂が全結着樹脂に対して、70質量%以上90質量%以下含有されることを特徴とする前記1に記載の箔転写方法。
3.
前記ビニル系樹脂がスチレン−アクリル樹脂であることを特徴とする前記1または前記2に記載の箔転写方法。
4.
前記ビニル系樹脂と前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂であることを特徴とする前記1から前記3のいずれか1項に記載の箔転写方法。
5.
前記ビニル系樹脂と前記ポリエステル樹脂が互いに結合した複合樹脂であることを特徴とする前記1から前記4のいずれか1項に記載の箔転写方法。
6.
前記トナーの結着樹脂が、ビニル系樹脂および前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂と、ビニル系樹脂との混合樹脂であることを特徴とする前記1から前記5のいずれか1項に記載の箔転写方法。
7.
前記ビニル系樹脂および前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂が、全結着樹脂に対して80質量%以上90質量%以下含有されることを特徴とする前記6に記載の箔転写方法。
8.
少なくとも結着樹脂を含有する箔転写面形成用トナーであって、
前記結着樹脂が、少なくともラジカル重合性単量体より形成されるビニル系樹脂と重縮合反応により形成されるポリエステル樹脂とを含有し、ラジカル重合性単量体より形成されるビニル系樹脂が、全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下含有されることを特徴とする箔転写面形成用トナー。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る箔転写方法によれば、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂とを規定量含有させた箔転写面形成用トナーを用いることにより、箔転写面と箔との強固な接着力を発現させることができ、箔の欠落やバリを発生させずに所定個所へ箔を転写することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る箔転写面形成用トナーでは、媒体に転写箔を接触させたとき、当該トナーにより形成された箔転写面上に転写箔が強固に接着するので、押し型等の治具を使用せずに媒体上の所定個所に所定形状の箔を高精度に転写することができる様になった。
【0013】
したがって、細線等がふんだんに用いられた複雑なデザインも簡易な方法で形成することができるので媒体の美的外観を大幅に向上させることができる様になった。さらに、身分証明証等のカードビジネスで個人情報を記録するホログラム画像の形成にも展開することが可能で、複雑な形状のホログラム画像を形成できるので多くの情報を有するIDカードの製造にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】媒体上に形成された箔転写面上に箔を転写する手順を示す模式図である。
【図2】静電潜像方式により箔転写面を形成する箔転写面形成装置の概略図である。
【図3】箔転写面の形成とフルカラー画像形成を同時に行える箔転写面形成装置の断面構成図である。
【図4】箔転写装置の転写箔供給部と箔転写部の配置例を示す概略図である。
【図5】実施例の評価で使用した箔画像サンプルの模式図である。(a)は箔の欠落評価用の箔画像サンプルであり、(b)は箔のバリ評価用の箔画像サンプルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明は、媒体上の箔を転写する個所に箔転写面と呼ぶ層を形成し、当該層上に箔を転写させて媒体の美的外観の向上に使用される箔転写方法および当該箔転写方法に用いる箔転写面形成用トナーに関する。
【0017】
本発明の箔転写方法は、箔転写面の形成に使用されるトナーが、少なくともビニル系樹脂とポリエステル樹脂とを含有し、前記ビニル系樹脂が50質量%以上95質量%以下含有することを特徴とするもので、このトナーを用いることで、押し型等の治具を使用せずに箔の転写が行え、所定個所に箔の欠落やバリを発生させずに精度よく箔を転写させることが可能になった。また、箔を転写するとき、押し型を使用せずにバリや欠落のない所定形状の箔を媒体上に確実に転写させることができるものである。この様に、媒体上の箔に対して強固な接着力を付与するとともに、作製時にバリや欠け等を発生させずに所定形状に精度よく転写することが可能になった理由は以下の作用によるものと推測される。
【0018】
本発明の箔転写面形成用トナーの構成成分として用いられるビニル系樹脂は、転写箔の接着層に含有される熱可塑性樹脂との親和性が高く、転写箔の接着層との間で高い接着性を維持出来ることが期待される。
【0019】
また、もう一つの構成成分であるポリエステル樹脂は、主鎖に極性を有するエステル結合を有するため、転写箔の接着層に含有される熱可塑性樹脂、例えばビニル系樹脂の極性の高い部分、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル等との親和力が高いため、同様に転写箔の接着層との接着性が高くなることが期待される。
【0020】
ビニル系樹脂は、不飽和結合を有する重合性単量体がラジカル重合することで樹脂化するため、主鎖は炭素原子と炭素原子の結合のみで形成されており、極性を有していない。そのため、主鎖間での静電的な結合が形成されないため内部凝集力は小さい。一方、ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合により樹脂化するため、主鎖中に極性を有するエステル結合を有しており、主鎖間での静電的な結合が形成出来るため内部凝集力が大きい。
【0021】
従って、内部凝集力の異なる2種の樹脂、即ち、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂を混在させ接着性と内部凝集力とを調整することで個々の樹脂から成るトナーに特有な箔の転写不良の発生を抑制し、抜けやバリの発生しない適切な内部凝集力を有する箔転写面形成用トナーを得ることができる。
【0022】
また、本発明で言う「箔転写面」とは、画像支持体やプラスチック成形品等の媒体上の箔を転写させる領域のことで、本発明に係る箔転写面形成用トナーを用いて形成されるものである。
【0023】
さらに、本発明でいう「箔」とは、一般の印刷によっては表現が困難な金属感や光沢感を有する文字や絵柄を画像支持体上に付与するために使用されるものである。箔としては、用途に応じて例えば金色や銀色の画像を得るための金銀箔、金属光沢をもったカラー画像を得るためのカラー顔料箔、ホログラム画像を得るためのホログラム箔などの様々な種類のものがあるが、本発明においては用いられる箔の種類は特に限定されるものではない。
【0024】
また、本発明でいう「媒体」とは、箔転写面、箔層が形成される媒体のことであり、紙、プラスチック成形品などのことを指すものである。
【0025】
(箔転写面形成用トナー)
本発明で言う「箔転写面形成用トナー」は、感光体上に供給されて箔転写面と呼ばれるトナー層を形成するものである。そして、箔転写面形成用トナーにより形成された感光体上の箔転写面は、画像支持体に代表されるシート形状の媒体上に転写、定着される。さらに、媒体上に定着された箔転写面は、転写箔が供給され、加熱されると転写箔と強固に接着して箔の転写が行われるものである。
【0026】
また、本発明の箔転写面形成用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有する箔転写面形成用トナーである。なお、本発明で使用する箔転写面形成用トナーは、クリアトナーであることが好ましい。
【0027】
本発明において、クリアトナーとは、光吸収や光散乱の作用により色が認識されないトナーのことである。クリアトナーは実質的に無色透明であればよく、例えば、顔料、染料などの着色剤を含まないトナーや、顔料、染料などの着色剤を色認識できない程度に含むトナー、結着樹脂やワックス、外添剤の種類や添加量により透明度が若干低くなっているトナーなどが挙げられる。
【0028】
箔転写面形成用トナーは、その平均粒径が体積基準のメディアン径で3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは6〜9μmである。
トナーの体積基準のメディアン径は、「コールターカウンターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ径を100μmにして測定・算出したものである。
【0029】
(結着樹脂)
本発明の箔転写方法に使用される箔転写面形成用トナーを構成する結着樹脂は、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂とから構成され、ビニル系樹脂を50質量%以上95質量%以下含有することを特徴としている。
【0030】
本発明の結着樹脂におけるビニル系樹脂の割合は、50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは、70質量%以上90質量%以下である。この範囲であれば、それぞれの樹脂の欠点が顕在化せず、箔転写面形成用トナーとして好ましい性能を発揮出来る。ビニル系樹脂が95質量%を超えると、即ちポリエステル樹脂が5質量%未満、では、結着樹脂の内部凝集力が小さすぎてトナーとして用いると箔を剥離した時にバリが発生して好ましい結果が得られない。
【0031】
本発明の箔転写面形成用トナーに用いられる結着樹脂は、それぞれ単独のビニル系樹脂とポリエステル樹脂を上記割合で混合して使用してもよいし、ビニル系樹脂ユニットとポリエステル樹脂ユニットとが互いに結合しているものであってもよい。両者を互いに結合させることによって、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂との相溶性を高めることができる。結合の方法としては、ビニル系樹脂にポリエステル樹脂ユニットを結合させた樹脂や、ポリエステル樹脂にビニル系樹脂ユニットを結合させた樹脂、ビニル系樹脂ユニットとポリエステル樹脂ユニットとが主鎖中において互いに結合された複合樹脂(ハイブリッド樹脂)などとすることで、親和性を高めることができる。親和性を高めることでビニル系樹脂とポリエステル樹脂とがそれぞれ局在化せずに相溶化しトナー中に均一に存在するようになり、それぞれの樹脂の特性がより効果的に発現させることができる。
【0032】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂の単量体としては、特に限定はないが、2価以上の多価アルコールから成るアルコール成分と、2価以上の多価カルボン酸化合物から成るカルボン酸成分を含む重合性単量体が挙げられる。
【0033】
2価以上の多価アルコールとしては、トナーの保存安定性の観点から、一般式(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0034】
【化1】

【0035】
式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を表し、それぞれ正の整数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4が更に好ましい。
【0036】
かかるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は耐久性の観点から、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましく、90モル%以上がより更に好ましい。
【0037】
一般式(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数2のエチレンオキサイド付加物、ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数3のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0038】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0039】
また、上記以外の多価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0040】
また、2価以上のカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、β−メチルアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸を挙げることができる。
【0041】
また、3価以上の多価カルボン酸としては、たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0042】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸が分子量調整やトナーの耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されてもよい。
【0043】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180℃〜250℃の温度で行うことができるが、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下で行うことが好ましい。エステル化触媒としては、ジブチルスズオキシド、チタン化合物、オクチル酸スズ等のSn−C結合を有していない錫(II)化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は両者を組み合わせて用いられる。
【0044】
また、ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂を用いても、非晶性ポリエステル樹脂を用いても良いが、結晶性ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂に比べて溶融性が優れるために溶融時の粘度の低下が著しく、定着前の画像に比べて定着後のトナー画像が太る傾向にあり、トナー画像が太るとバリの発生を助長する結果となるおそれがある。従って、本発明においては非晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
ここで、ポリエステル樹脂における結晶性の有無については、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂を結晶性ポリエステル樹脂という。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0046】
(ビニル系樹脂)
ビニル系樹脂の重合性単量体としては、少なくともスチレンが用いられていることが好ましい。スチレンの含有量は、トナーの保存性の観点からラジカル重合性単量体中、30〜95質量%が好ましく、60〜92質量%がより好ましく、80〜92質量%が更に好ましい。
【0047】
スチレン以外のラジカル重合性単量体としては、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロライド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等のビニル系樹脂単量体が挙げられるが、これらの中では、重合反応の制御のしやすさ及びトナーの耐高温オフセット性の観点から、側鎖に長鎖のアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステルが好ましい。すなわち、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とはメタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味する。
【0048】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、12〜22が好ましく、14〜22がより好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステルの含有量は、ラジカル重合性単量体中、5〜70質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましく、8〜20質量%が更に好ましい。
【0050】
また、スチレンと(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステルの質量比(スチレン/(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステル)はトナーの耐高温オフセット性の観点から100/50〜100/5が好ましく、100/30〜100/5がより好ましい。
【0051】
さらにスチレンと(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数12〜22)エステルの総含有量は、ラジカル重合性樹脂の重合性単量体中70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0052】
また本発明のスチレン−アクリル樹脂を構成するラジカル重合性単量体としてカルボキシ基を含有する重合性単量体を含有させることができる。カルボキシ基を有する重合性単量体を共重合成分として含有させることで、箔転写面形成用トナーとした時に紙との接着性が向上するので好ましい。
【0053】
カルボキシ基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、2−ペンテン二酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸、アコニット酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。
【0054】
ラジカル重合反応は、例えば、連鎖移動剤、ラジカル重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒中、又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件は60℃〜98℃の範囲が好ましい。
【0055】
連鎖移動剤としては、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素及びα−メチルスチレンダイマー等が使用される。連鎖移動剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性単量体に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
【0056】
ラジカル重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤、油溶性の重合開始剤を重合方法に応じて選択することができる。乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性の重合開始剤を使用することができる。水溶性の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0057】
油溶性の重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等の過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いられる。
【0058】
ラジカル重合開始剤の反応系における存在量は、ラジカル重合性樹脂の分子量ピークトップ値を制御し、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点からラジカル重合性単量体の総量100質量部に対して、10〜25質量部が好ましく、12〜22質量部がより好ましい。
【0059】
(複合樹脂)
本発明の箔転写面形成用トナーに用いられる結着樹脂は、少なくともビニル系樹脂とポリエステル樹脂を構成成分とするが、この2種の樹脂は、それぞれ単独の樹脂を混合使用してもよく、スチレン−アクリル樹脂ユニットとポリエステル樹脂ユニットとが結合した複合樹脂として用いることが好ましく、ラジカル重合性単量体、重縮合系単量体の両方と反応する両反応性単量体を介して両者を結合させた複合樹脂(ハイブリッド樹脂)を箔転写面形成用トナーとして用いたときに好ましい結果が得られる。
【0060】
複合樹脂には、スチレン−アクリル樹脂ユニットを主鎖とし、これにポリエステル樹脂ユニットが両反応性単量体を介して結合した複合樹脂、およびポリエステル樹脂ユニットを主鎖とし、これにスチレン−アクリル樹脂ユニットが両反応性単量体を介して結合した複合樹脂が挙げられる。また、ポリエステル樹脂の末端にスチレン−アクリル樹脂ユニットを結合した複合樹脂やポリエステル樹脂にビニル系樹脂ユニットをグラフトさせた樹脂も用いることができる。
【0061】
本発明においては、複合樹脂の重合性単量体として、さらに重縮合系樹脂を形成する重合性単量体とラジカル重合性樹脂を形成する重合性単量体のいずれとも反応しうる化合物(両反応性単量体)を用いる。これによりポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分とが部分的に両反応性単量体(厳密には、両反応性単量体が重合した後の構成単位)を介して結合し、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分とがより微細に、かつ均一に分散した樹脂が得られる。なお本発明においてはビニル系樹脂成分とポリエステル樹脂成分とが部分的に両反応性単量体を介して結合した複合樹脂のことをハイブリッド樹脂とも言う。
【0062】
前者の複合樹脂においては、両反応性単量体は分子内にヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から成る群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくはヒドロキシ基、及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物、即ちビニル系カルボン酸であることが好ましい。両反応性単量体の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)エステルであってもよいが、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸、マレイン酸が好ましい。
【0063】
また、前者の複合樹脂における両反応性単量体としては、多価のビニル系カルボン酸よりも、1価のビニル系カルボン酸を用いることが、耐久性の観点から好ましい。これは1価のビニル系カルボン酸がラジカル重合性樹脂の重合性単量体との反応性が高いため、ハイブリッド化しやすいためと考えられる。
【0064】
また、後者の複合樹脂における両反応性単量体としては、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分として、エチレン性不飽和基を有する多価カルボン酸を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂を構成する単量体である多価カルボン酸成分として、分子中に不飽和結合を有する多価カルボン酸を用いることによって、ポリエステル樹脂中にエチレン性不飽和基を導入し、これにスチレン、アクリル酸エステルなどのラジカル重合性単量体をグラフトさせることによって、スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂とすることが出来る。エチレン性不飽和結合を導入可能な多価カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸が好適に使用できる。
【0065】
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、ラジカル重合性単量体の総量100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましく、重縮合系樹脂の重合性単量体の総量100質量部に対して、0.3〜8質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0066】
本発明においては複合樹脂を製造する際には、重縮合反応とラジカル重合反応は同一反応容器中で行うことが好ましい。また、それぞれ重合反応の進行及び完結が時間的に同時である必要はなく、それぞれの重合反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。
【0067】
即ち、複合樹脂の具体的な製造方法としては、(1)ラジカル重合反応を行った後に、重縮合反応を行い、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂の重合性単量体を反応系に添加し、重縮合反応を更に進行させる方法、(2)重縮合反応を行った後に、ラジカル重合反応を行い、ラジカル重合反応の後に、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂の重合性単量体を反応系に添加し、重縮合反応に適した温度条件下で重縮合反応を更に進行させる方法、(3)ラジカル重合反応に適した温度条件下で、ラジカル重合反応と重縮合反応を並行して行い、ラジカル重合反応が終了した後、必要に応じて架橋剤となる3価以上の重縮合系樹脂単量体を反応系に添加し、重縮合反応に適した温度条件下で重縮合反応をさらに進行させる方法、(4)不飽和結合を有するポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体を加えて、ラジカル重合を行い、ポリエステル樹脂の不飽和結合部位とラジカル重合性単量体を反応させる方法等が挙げられる。
【0068】
本発明の複合樹脂は、重縮合系樹脂とラジカル重合性樹脂とが両反応性単量体を介して結合していることから、具体的な製造方法としては、例えば両反応性単量体を重縮合系樹脂の重合性単量体及び/又はラジカル重合性樹脂の重合性単量体とともに用い、好ましくはラジカル重合系樹脂の重合性単量体とともに用いて、ラジカル重合性樹脂の重合性単量体をラジカル重合させる工程の前、中及び後の少なくとも何れかの時点で、重縮合系樹脂の重合性単量体をラジカル重合反応の系に存在させて重縮合させる。
【0069】
上記複合樹脂の軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐久性の観点から125℃から150℃が好ましく、120℃から140℃がより好ましい。複合樹脂の軟化点が、150℃以下では、トナーの低温定着性に優れ、125℃以上ではトナーの耐高温オフセット、及び耐久性に優れる。樹脂の軟化点は、重合性単量体組成、重合開始剤、触媒量等の調整、又は反応条件の選択等により、容易に調整することができるが、反応制御のしやすさから反応時間を長くすることで重合反応率を高める方法が好ましい。
【0070】
前記、ラジカル重合性樹脂の分子量ピークトップ値と上記複合樹脂の軟化点(℃)との比(分子量ピークトップ値/軟化点)はトナーの低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐久性の観点から、10〜40が好ましく、12〜33がより好ましい。複合樹脂の軟化点は複合樹脂全体の分子量と相関があるため、複合樹脂全体の分子量に対するラジカル重合系樹脂の分子量の比を、前記ラジカル重合系樹脂の分子量ピークトップ値と軟化点との比として表すことができる。この値が10以上では、トナーの耐久性に優れ、40以下では、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性にも優れる。
【0071】
かくして本発明の箔転写面形成用トナーの結着樹脂が得られる。本発明の箔転写面形成用トナーの結着樹脂は、ラジカル重合性樹脂の分子量ピークトップ値が5500以下であることから重縮合系樹脂の分子量を大きくすることが可能となり、本発明の箔転写面形成用トナーによれば、箔の欠落やバリを発生させずに所定箇所への箔転写を可能にする箔転写方法を提供することができる。
【0072】
(ワックス)
また、本発明に係る箔転写面形成用トナーには、公知のワックスを添加することも可能で、使用可能なワックスとしては、たとえば、以下のものがある。すなわち、
(1)炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、サゾールワックス等
(2)エステル系ワックス
トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(3)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
(4)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(5)その他
カルナウバワックス、モンタンワックス等。
【0073】
上記炭化水素系ワックスには、その分子構造から、直鎖状炭化水素化合物、分岐鎖状炭化水素化合物、分子構造上に環状構造を有する炭化水素化合物等がある。
【0074】
直鎖状炭化水素化合物には、たとえば、主成分がノルマルパラフィンと呼ばれるパラフィンワックスより構成される石油ワックスや、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックスがある。ここで、パラフィンワックスとは、減圧蒸留抽出油より公知の方法で分離して得られたものである。また、フィッシャートロプスワックスとは、一酸化炭素と水素とからなる合成ガスより合成される炭化水素の蒸留から、またはこれらに水素添加して得られる炭素数が16〜78の炭化水素化合物のことである。さらに、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスは、エチレンやプロピレンの重合、ポリエチレンやポリプロピレンの熱分解により得られるものである。
【0075】
また、分岐鎖状炭化水素化合物と分子構造上に環状構造を有する炭化水素化合物には、たとえば、以下に示すマイクロクリスタリンワックスや、イソパラフィンを主成分とするワックスがある。マイクロクリスタリンワックスの具体例には、たとえば、HNP−0190、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1090、Hi−Mic−2045、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−2095等(いずれも日本精蝋(株)製)がある。ここで、マイクロクリスタリンワックスとは、石油ワックスの中で主成分がイソパラフィンと呼ばれる分岐鎖状炭化水素化合物やシクロパラフィンと呼ばれる環状炭化水素化合物の割合が高いワックスである。マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンを多く含有するため、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、分子量が大きいものである。マイクロクリスタリンワックスは、一般に、炭素原子数が60〜150、数平均分子量Mnが900以上2000以下、融点が60〜90℃である。
【0076】
また、イソパラフィンが主成分であるワックスの具体例には、たとえば、EMW−0001、EMW−0003等がある。
【0077】
(トナーの製造方法)
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーの製造方法について説明する。
【0078】
本発明に係る箔転写面形成用トナーは、少なくとも、重縮合反応により形成される樹脂とラジカル重合性単量体より形成される樹脂とを含有するものである。本発明に係るトナーを構成する粒子の作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の電子写真方式の画像形成に使用されるトナーの製造方法を適用することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法を適用することが可能である。
【0079】
その中でも、重合法により作製されるトナーは、均一な粒度分布や形状分布、シャープな帯電分布等の特性を得られ易いものとされる。重合法によるトナー製造方法では、たとえば、懸濁重合、乳化重合等の重合反応により樹脂粒子を形成する工程を有するものであり、その中でも重合反応を経て作製した樹脂粒子を凝集、融着させて粒子を形成する会合工程を経て作製されるものが特に好ましい。
【0080】
以下に、本発明に係るトナーの作製方法の一例として、乳化会合法によるトナーの作製方法について説明する。乳化会合法によるトナーの作製方法は、たとえば、以下の工程を経て行われる。
(1)樹脂微粒子分散液の作製工程
(2)樹脂微粒子の凝集・融着工程(会合工程)
(3)熟成工程
(4)冷却工程
(5)洗浄工程
(6)乾燥工程
(7)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
【0081】
(1)樹脂微粒子分散液の作製工程
この工程は、トナーを構成する樹脂を形成する工程である。ラジカル重合性樹脂微粒子の分散液の作製は、具体的には、たとえば、水系媒体中に、少なくとも、前述のラジカル重合性単量体等の重合性単量体混合物を分散させておき、この状態の下で乳化重合反応を行って樹脂微粒子を形成するものである。
【0082】
この工程では、ラジカル重合性単量体をはじめとする重合性単量体を水系媒体中に添加した後、乳化分散処理を施して、重合性単量体混合物の油滴を形成する。そして、水系媒体中に分散させた油滴中でラジカル重合反応を行うことにより樹脂微粒子を形成するものである。
【0083】
ラジカル重合反応は、前述の油滴中に重合開始剤を含有させてラジカルを生成させることにより、油滴を形成している重合性単量体の重合反応を開始させ、重合反応により樹脂を形成するものである。あるいは、水系媒体中に添加した重合開始剤より生成したラジカルを公知の方法で油滴中に供給することにより重合反応を開始させることもできる。
【0084】
ラジカル重合を行うときの温度は、重合反応に使用するラジカル重合性単量体をはじめとする重合性単量体の種類やラジカルを生成する重合開始剤の種類にもよるが、通常50〜100℃が好ましく、55〜90℃がより好ましい。また、重合反応時間は、重合反応に使用する重合性単量体や生成されたラジカルの反応速度にもよるが2〜12時間が好ましい。
【0085】
この工程では、水系媒体中に、少なくとも、ラジカル重合性単量体とその他の重合性単量体の混合液を添加した後、公知の方法による機械的エネルギーの作用で分散処理を行って単量体の油滴を形成する。機械的エネルギーによる油滴分散を行う分散装置は、特に限定されるものではなく、たとえば高速回転するロータを備えた市販の撹拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)(エム・テクニック(株)製)」等が代表的な装置に挙げられる。前述した撹拌装置の他にも、超音波分散機や機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザ等の装置が挙げられる。これらの装置により水系媒体中に100nm前後の油滴の分散粒子を形成することが可能である。
【0086】
また、本発明でいう「水系媒体」とは、水と水に溶解可能な有機溶剤から構成される液体のことで、少なくとも水を50質量%以上含有したものである。ここで、水系媒体を構成する水以外の成分である水に溶解可能な有機溶剤には、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等がある。これらの中でも樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶剤が好ましい。
【0087】
また、重縮合系樹脂、または重縮合系樹脂とラジカル重合性樹脂とから構成されるハイブリッド樹脂の微粒子分散液の作製方法は、例えば、樹脂を予め有機溶媒に溶解し、これを水系媒体中に油滴として分散させて、次いで、有機溶媒を溜去し、重縮合系樹脂、またはハイブリッド樹脂の微粒子分散液とすることができる。
【0088】
重縮合系樹脂、またはハイブリッド樹脂を有機溶媒に溶解した溶液を水系媒体中に油滴として分散する装置としては、上記機械的エネルギーによる分散装置が同様に使用出来る。
【0089】
(2)樹脂粒子の凝集・融着工程(会合工程)
この工程は、前述の工程で形成した樹脂微粒子を水系媒体中で凝集させて粒子を形成し、凝集により形成した粒子を加熱して融着させて粒子(外添処理する前のトナーの母体粒子のこと)を作製する工程で、会合工程とも呼ばれるものである。すなわち、カルボキシ基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とを重合させて形成した樹脂微粒子を凝集、融着させて粒子を作製するものである。
【0090】
この工程では、前記樹脂微粒子を存在させた水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加することにより、前記樹脂粒子を凝集させる。次いで、水系媒体中を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して凝集を進行させると同時に凝集させた樹脂粒子同士の融着を行う。そして、凝集を進行させて粒子の大きさが目標になったときに、食塩等の塩を添加して凝集を停止させる。
【0091】
(3)熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより粒子の形状を所望の平均円形度になるまで熟成するいわゆる形状制御工程とも呼ばれる工程である。
【0092】
(4)冷却工程
この工程は、前記粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/分の冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0093】
(5)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却された前記粒子の分散液より粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのトナーケーキと呼ばれるケーキ状集合体となった粒子より界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去するための洗浄工程からなる。
【0094】
洗浄処理は、ろ液の電気伝導度がたとえば10μS/cm程度になるまで水洗浄する。固液分離方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用する減圧ろ過法、フィルタプレス等を使用するろ過法等があり、本発明では特に限定するものではない。
【0095】
(6)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された前記粒子を乾燥処理する工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤ、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0096】
また、乾燥された粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0097】
(7)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理した粒子に外添剤や滑剤を添加する工程である。前記乾燥工程を経た粒子はそのままクリアトナー粒子として使用できるが、外添剤を添加することによりクリアトナーの帯電性や流動性、クリーニング性を向上させることができる。これら外添剤には、公知の無機微粒子や有機微粒子、脂肪族金属塩を使用することができ、その添加量はトナー全体に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤は種々のものを組み合わせて添加することができる。なお、外添剤を添加する際に使用する混合装置としては、たとえば、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウタミキサ、V型混合機、コーヒーミル等の公知の機械式の混合装置がある。
【0098】
公知の無機微粒子としては、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等がある。なお、これら無機微粒子を疎水化処理したものを使用することも可能である。
【0099】
シリカ微粒子の具体例としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等がある。
【0100】
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等がある。
【0101】
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等がある。
【0102】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0103】
以上の工程を経ることにより、乳化会合法により本発明に係る箔転写面形成用トナーを作製することができる。
【0104】
次に、本発明に係るトナーを上述した乳化会合法で作製する場合に使用することが可能な重合開始剤、連鎖移動剤、分散安定剤、界面活性剤等について説明する。
【0105】
(重合開始剤)
本発明に係るトナーを構成する結着樹脂は、前述したラジカル重合性単量体とその他の重合性単量体を用いて形成されるもので、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用することができる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0106】
(1)アゾ系またはジアゾ系重合開始剤
2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等
(2)過酸化物系重合開始剤
ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。
【0107】
(連鎖移動剤)
また、樹脂粒子の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。
【0108】
(分散安定剤)
また、本発明では、前述したラジカル重合性単量体をはじめとするビニル系単量体を水系媒体中に分散させた状態にして重合を行い、重合により得られた樹脂粒子を水系媒体中に分散させ、これを凝集、融着させてトナーを作製する。これらトナー材料を水系媒体中に安定して分散させておく分散安定剤を使用することが好ましい。分散安定剤としては、たとえば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。
【0109】
また、水系媒体中で重合性単量体を用いて重合を行う場合、界面活性剤を使用して前記重合性単量体の油滴を水系媒体中に均一に分散させる必要がある。このとき、使用可能な界面活性剤は、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
【0110】
また、硫酸エステル塩には、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等がある。
【0111】
また、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等がある。
【0112】
(箔転写方法)
次に、本発明に係る箔転写面形成用トナーを用いて行う箔転写方法(以下、本発明に係る箔転写方法ともいう)について説明する。本発明に係る箔転写方法は、少なくとも以下に示す(1)から(8)の工程を有するものである。すなわち、
(1)感光体を露光して静電潜像を形成する工程
(2)静電潜像が形成された感光体に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する工程
(3)感光体上に形成された箔転写面を媒体に転写する工程
(4)媒体上に転写された箔転写面を加熱して定着する工程
(5)定着処理した箔転写面を有する媒体に少なくとも接着層を有する転写箔を供給する工程
(6)供給した転写箔の接着層を媒体に接触させる工程
(7)転写箔の接着層と箔転写面を接触させた状態で加熱する工程
(8)接触させた状態の転写箔を媒体より除去する工程を有するものである。
上記(3)の工程においては、感光体上に形成された箔転写面を媒体に転写する際に、中間転写体を介してもよいものとする。
この様に、本発明に係る箔転写方法では、先ず、感光体を露光して媒体上に形成する箔転写面の形状の静電潜像を形成し、静電潜像が形成された感光体上に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する。そして、感光体上に形成された箔転写面を媒体に転写し、箔転写面を加熱して定着処理した媒体に転写箔を供給して接触させ、この状態で加熱を行って箔転写面上に箔を転写させる。
【0113】
前述した様に、本発明では、少なくとも重縮合系樹脂とラジカル重合性樹脂とを含有する結着樹脂を含有するトナーを用いることにより、欠落やバリのない高い精度の箔転写が押し型を使用せずに行える様になった。そして、結着樹脂中のカルボキシ基の含有量を前述の様に特定することで、従来技術で忠実な再現が困難とされた細線画像等の箔の接触面積の確保が困難な形状のデザインの箔転写も行える様になった。また、細線に代表される接触面積の確保が困難な形状のデザインを媒体上に形成しても強固な接着力で剥離することがなく、箔の剥離による媒体の美的外観の損失をおこしにくくしている。
【0114】
本発明に係る箔転写方法について図を用いて具体的に説明する。図1は上記(1)〜(8)の工程のうち、(4)〜(8)の工程を反映させた箔転写方法の手順を示す模式図である。すなわち、図1に示していない(1)〜(3)の工程を経て作製された媒体P上に箔転写面Hが形成された媒体に転写箔Fを供給し、供給された転写箔Fを箔転写面Hに接触させ、この状態で加熱を行い箔転写面Hに箔層f2を転写させるものである。以下、図1に示す(a)〜(e)を具体的に説明する。
【0115】
図1(a)は、シート状の媒体P上に本発明に係るトナーを用いて作製された箔転写面が形成された媒体の断面図である。なお、上記(1)〜(3)の工程を経て媒体P上に箔転写面Hを形成する方法については後述する。
【0116】
次に、図1(b)は媒体Pに少なくとも接着層f1を有する転写箔Fを供給した状態を示すもので、転写箔Fは接着層f1が箔転写面Hと接触状態を形成する様に供給される。このとき、供給された転写箔Fの接着層f1は媒体P上全面に接触することが想定されるもので、少なくとも媒体表面に凸状に形成されている箔転写面Hには接触状態を形成しているといえる。なお、本発明で使用される転写箔Fは、ベースとなるフィルム状の支持体f0上に少なくとも接着層f1と箔層f2を有するもので、ここでは接着層f1と箔層f2以外の層構成を省略してある。また、本発明に使用可能な転写箔Fの詳細な説明は後で行う。
【0117】
図1(c)は、転写箔Fを媒体Pに接触させた状態で加熱手段である加熱加圧ローラR1とR2の間を通過させる状態を示すもので、転写箔Fの接着層f1が媒体P上の箔転写面Hに接触している状態で加熱手段である加熱加圧ローラR1とR2の間を通過しているものである。加熱加圧ローラR1とR2の間を通過することにより箔転写面H及び転写箔Fの接着層f1は溶融し、通過後、箔転写面H及び接着層f1は冷却して硬化する。このとき、熱溶融により箔転写面Hと接触している転写箔Fの接着層f1とが交じり合うことにより強固な接着状態を形成する。この様に、本発明では転写箔Fは媒体P上に凸状に形成されている箔転写面Hに接触している接着層f1を介して箔転写面Hとの間に接着状態を形成し、転写箔Fより箔層f2を箔転写面Hの形状に忠実に対応させた形状に転写を行うことが可能である。
【0118】
次に、図1(d)は、転写箔Fを媒体Pより剥離する状態を示すもので、転写箔Fを剥離すると、媒体P上の箔転写面H上にのみ箔層f2が接着層f1とともに転写される。ここでは、本発明に係る箔転写面形成用トナーを使用することにより箔転写面Hの形状に対応する形状に箔層f2を転写させることが可能で、金属製の押し型を使用せずに欠けやバリを発生させずに所定形状の箔層f2を精度よく転写することが可能である。
【0119】
したがって、本発明によれば金属製の押し型を有さない簡易でコンパクトな構成の箔転写装置により、バリや欠けのない所定形状の箔転写が行え、簡易な箔転写装置により高品質の箔画像を有する媒体Pを作製することが可能である。以上の手順を経て、図1(e)に示す様に、媒体(画像支持体)P上に、箔転写面形成用トナーで作製された箔転写面Hを介して箔層f2が転写され、箔画像Sが形成される。
【0120】
次に、図2を用いて本発明に係る箔転写方法で行われる媒体上への箔転写面の形成が可能な箔転写面形成装置の一事例を説明する。図2の箔転写面形成装置1は、前述した(1)〜(8)の工程のうち(1)〜(3)の工程の実施が可能なもので、露光により静電潜像を形成する感光体を有し、当該感光体に本発明に係る箔転写面形成用トナーを供給して静電潜像に対応した箔転写面を形成する。そして、形成された箔転写面を感光体より媒体に転写させるものである。
【0121】
図2の箔転写面形成装置1では、図中の帯電ローラ12Hにより帯電された感光体11H上に露光光Lが照射されて静電潜像が形成される。感光体11H上に形成された静電潜像は、感光体11Hの近傍に配置されている箔転写面形成用トナー供給装置21Hより箔転写面形成用トナーの供給を受けることにより箔転写面を形成する。このとき、箔転写面形成用トナー供給装置21H内では内蔵されているトナー供給ローラ14が回転し、トナー供給ローラ14に付着させたトナーが感光体11Hに供給され、感光体11H上に箔転写面を形成する。
【0122】
次に、除電ランプ22により感光体11H上の電荷が除電されると、感光体11H上の箔転写面は感光体11Hと転写ローラ13Hとが近接する転写部で媒体P上に転写される。図2に示す媒体Pは、転写紙に代表されるシート形状のもので図示しない給紙カセットより搬送ローラ23により転写部へ搬送され、転写ローラ13Hにより箔転写面形成用トナーと逆極性の電荷が付与される。媒体Pは転写ローラ13Hにより付与された逆極性を有する電荷の静電作用により感光体11Hより箔転写面を転写することが可能である。
【0123】
箔転写面が転写された媒体Pは、感光体11Hより分離された後、搬送ベルト24により図示しない定着装置に搬送される。定着装置はたとえば加熱ローラと加圧ローラ等より構成される定着手段を有し、媒体P上に形成された箔転写面を溶融して定着させる。
【0124】
以上の手順により、図2の箔転写面形成装置1では、感光体11H上に箔の形状に対応した静電潜像が形成され、箔転写面形成用トナーの供給により感光体11H上に箔転写面が形成される。そして、感光体11H上に形成された箔転写面は転写ローラ13Hにより媒体Pに転写される。
【0125】
なお、図中の帯電ローラ12Hは、たとえば、以下の手順により感光体11Hを帯電することが可能である。すなわち、帯電ローラ12Hは電源27より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受けて感光体ドラム11Hを帯電する。図2に示す帯電ローラ12Hを用いる帯電はいわゆる接触方式と呼ばれるもので、本発明では図2に示す帯電方式の他に、後述する図3の装置で使用される非接触方式の帯電を感光体に行うことも可能である。帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧は、たとえば、直流成分である±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分である100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させてなるもの等がある。
【0126】
なお、図2中の転写ローラ13Hも帯電ローラ12Hと同様、電源28より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受け、転写部位で感光体11H上に形成された箔転写面を媒体P上に転写させる。転写ローラ13Hに印加されるバイアス電圧の具体例としては、帯電ローラ12Hに印加されるバイアス電圧の具体例と同様、直流成分の±500〜1000VのDCバイアスと交流成分の100Hz〜10kHz、200〜3500VのACバイアスとを重畳させたものがある。
【0127】
帯電ローラ12Hと転写ローラ13Hは、感光体11Hに圧接した状態で従動あるいは強制回転している。これらローラの感光体ドラム11Hへの押圧力は、たとえば、9.8×10−2〜9.8×10−1N/cmであり、ローラの回転速度は、たとえば、感光体11Hの周速の1〜8倍である。なお、前記ローラの感光体11Hへの押圧力は、たとえば、帯電ローラ12Hの両端に1N〜10N程度の押圧力を加えることで実現が可能である。
【0128】
なお、媒体Pへ箔転写面を転写した感光体11Hは、クリーニング装置25に設けられたクリーニングブレード25bにより除去され、次の箔転写面形成を行う状態にする。なお、本発明では箔転写面を形成する媒体上に箔の画像と可視画像を形成することも可能である。媒体上に可視画像を形成する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、電子写真方式、印刷方式、インクジェット方式、銀塩写真方式等の公知の画像形成方法を用いて作製することが可能である。たとえば、媒体上に箔転写面を形成し、当該箔転写面上に箔を転写した後に、転写した箔の周囲に電子写真方式の画像形成方法でトナー画像を作成することができる。また、箔の上にもカラートナーを載せて色味を変えた画像を作成することも可能で、これらの方法により、箔を転写した媒体にさらなる光輝表現を付与することが可能である。
【0129】
図3は、本発明の画像形成方法を行うための画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【0130】
この画像形成装置は、箔転写面トナー像形成部20Hと、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンまたは黒色のトナー像を形成する有色トナー像形成部20Y、20M、20C、20Bkと、これらの箔転写面トナー像形成部20Hまたは有色トナー像形成部20Y、20M、20C、20Bkにおいて形成されたトナー像を媒体P(画像支持体)上に転写する中間転写部10と、媒体P(画像支持体)に対して加熱しながら加圧してトナー像を定着させる定着装置50と、媒体P(画像支持体)に対して転写箔80(図4参照)を供給する箔転写装置70とを有する。
【0131】
有色トナー像形成部20Yにおいてはイエローのトナー像形成が行われ、有色トナー像形成部20Mにおいてはマゼンタ色のトナー像形成が行われ、有色トナー像形成部20Cにおいてはシアン色のトナー像形成が行われ、有色トナー像形成部20Bkにおいては黒色のトナー像形成が行われる。
【0132】
箔転写面トナー像形成部20Hは、静電潜像担持体である感光体11Hと、当該感光体11Hの表面に一様な電位を与える帯電手段23Hと、一様に帯電された感光体11H上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Hと、箔転写面形成用トナーを感光体11H上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Hと、一次転写後に感光体11H上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Hとを備えるものである。
【0133】
また、有色トナー像形成部20Y、20M、20C、20Bkは、静電潜像担持体である感光体11Y、11M、11C、11Bkと、当該感光体11Y、11M、11C、11Bkの表面に一様な電位を与える帯電手段23Y、23M、23C、23Bkと、一様に帯電された感光体11Y、11M、11C、11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Y、22M、22C、22Bkと、カラートナーを感光体11Y、11M、11C、11Bk上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Y、21M、21C、21Bkと、一次転写後に感光体11Y、11M、11C、11Bk上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Y、25M、25C、25Bkとを備えるものである。
【0134】
中間転写部10は、中間転写体16と、箔転写面トナー像形成部20Hによって形成された箔転写面形成用トナー像を中間転写体16に転写するための一次転写ローラ13Hと、有色トナー像形成部20Y、20M、20C、20Bkによって形成された有色トナー像を中間転写体16に転写するための一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkと、一次転写ローラ13Hによって中間転写体16上に転写された箔転写面形成用トナー像、または、一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkによって中間転写体16上に転写された可視トナー像を箔画像が形成された媒体P(画像支持体)上に転写する二次転写ローラ13Aと、中間転写体16上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段12とを有する。
【0135】
中間転写体16は、複数の支持ローラ16a〜16dにより張架され、回動可能に支持された無端ベルト状のものである。
【0136】
定着装置50は、一対の加熱加圧ローラ51、52が互いに圧接されてその圧接部にニップ部Nが形成された状態に設けられてなるものである。
【0137】
箔転写装置70は、図4に示されるように、適宜の駆動手段により駆動されて時計方向に回転される箔転写ローラ73aおよび当該箔転写ローラ73aに従動して回転される箔転写ローラ73bが、媒体P(画像支持体)に対して供給されるべき転写箔80を有する長尺なシート状の転写箔80を介して互いに圧接された状態に設けられていると共に、この転写箔80を走行させる搬送手段79が設けられてなるものである。
【0138】
この箔転写装置70においては、箔転写ローラ73a,73bが、互いに離間した状態に変更する離間機構(図示せず)が備えられており、当該離間機構は、箔画像形成後さらにトナー像を形成する際には、定着装置50から排出された箔画像および可視画像が形成された媒体P(画像支持体)が当該箔転写装置70を通過するときに、箔転写ローラ73a,73bを互いに離間した状態に変更させる。
【0139】
転写箔80を走行させる搬送手段79は、転写箔80が巻きつけられ、転写箔80が弛むことを防止するために逆テンションがかけられた元巻きローラ71Aを有する元巻き部71と、駆動源によって反時計方向(図4において矢印方向)に回転される巻き取りローラ72Aを有する巻き取り部72とよりなり、転写箔80の走行方向が箔転写ローラ73aの表面の移動方向と同方向となるよう配置されている。
【0140】
搬送手段79の巻き取りローラ72Aの回転速度は、箔転写ローラ73a,73bの圧接部における転写箔80の搬送速度が、当該圧接部における媒体P(画像支持体)の搬送速度と同じとなる速度とされる。
【0141】
箔転写ローラ73a,73bには、各々、図示しない加熱源が備えられている。
【0142】
次に、本発明で使用可能な転写箔について説明する。本発明に使用可能な転写箔Fは、図1に示したように、少なくとも、樹脂等からなるフィルム状の支持体f0と、着色剤や金属等を含有する箔層f2、接着性を発現する有機材料を含有する接着層f1を有し、箔層f2と接着層f1が媒体P上に転写する。
【0143】
先ず、支持体f0は、樹脂等からなるフィルムまたはシートである。支持体f0の材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の樹脂材料が挙げられる。また、これら樹脂材料の他に紙等の材料を使用することも可能である。
【0144】
また、支持体f0は、単層構造あるいは多層構造のいずれの構造を有するものを使用することができる。支持体f0に多層構造を採用する場合、支持体f0は箔層f2側の最表面層として剥離抵抗の調節に利用可能な離型層を含むものが好ましい。離型層の材料としては、たとえば、メラミンもしくはイソシアネートを硬化剤として用いた熱硬化性樹脂、アクリレートもしくはエポキシ樹脂を含有した紫外線または電子線硬化性樹脂に公知の離型剤を添加したものが挙げられる。離型層に添加可能な公知の離型剤としては、たとえば、フッ素系またはシリコン系の単量体またはポリマー等が挙げられる。
【0145】
箔層f2は、着色剤や金属材料等を含有し媒体P上に転写後は美的外観を発現するものであり、媒体P上に転写する時には支持体f0よりスムーズに剥離する性能が求められるとともに転写後は媒体Pの最表面を形成するものなので耐久性も求められている。箔層f2は、上記性能を満たす公知の樹脂を、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて支持体f0上に塗布することにより形成が可能である。この様な公知の樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、当該樹脂中に公知の染料や顔料等を添加して着色することも可能である。
【0146】
また、メタリックな光沢を有する仕上がりの箔を形成する場合は、金属等を用いて公知の方法で前述の樹脂に反射層を設けることにより形成することが可能である。反射層を形成する金属材料としては、たとえば、アルミニウム、スズ、銀、クロム、ニッケル、金等の担体の他に、ニッケル−クロム−鉄合金や青銅、アルミ青銅等の合金を使用することも可能である。上記金属材料を用いて反射層を形成する方法としては、たとえば、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられ、厚さ約10nmから約100nmの反射層を形成することが可能である。また、反射層には、たとえば、水洗シーラント加工、エッチング加工、レーザ加工等の公知の加工方法を利用して規則的な模様を付与するパターニング処理を施すことも可能である。
【0147】
接着層f1は、加熱により粘着性を発現するいわゆるホットメルトタイプと呼ばれる感熱性の接着剤を含有するものである。感熱性の接着剤としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂及びエチレン−ビニルアルコール共重合体等のホットメルトタイプの接着剤に使用可能な公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中でも、箔転写面形成用トナーの結着樹脂との親和性の観点から、アクリル樹脂などのビニル系樹脂を用いることが好ましい。
また、接着層f1は、たとえば、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータ等のコータを用いて上述した樹脂を箔層f2上に塗布することにより形成することが可能である。
【実施例】
【0148】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
《トナーの作製方法》
<複合樹脂SE−1の製造>
表1に示すスチレン−アクリル樹脂構成成分、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン(NOM)、両反応性モノマーとしてアクリル酸(AA)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)を滴下ロートに入れた。表1に示すポリエステル樹脂構成成分を撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に入れ、170℃まで昇温し、撹拌下で先の滴下ロートよりスチレン−アクリル構成成分を滴下した後、1時間熟成を行った。その後、縮重合触媒としてオクチル酸スズを加え、235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて8時間反応させた後、減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行い、「複合樹脂SE−1」を得た。
【0150】
材料を表1に記載した量に変更したほかは複合樹脂SE−1と同様にして、複合樹脂SE−2、SE−3を得た。
【0151】
<複合樹脂粒子分散液A1の調液>
得られた「複合樹脂SE−1」500質量部を2000質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液3200質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー(US−150T:日本精機製作所製)でV−LEVEL300μAで2時間超音波分散した後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ(V−700:BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、平均粒径(体積平均におけるメディアン径(D50))が210nmの「複合樹脂粒子分散液A1」を得た。
【0152】
複合樹脂SE−1に替えて複合樹脂SE−2、SE−3を用いたほかは複合樹脂粒子分散液A1と同様にして、複合樹脂粒子分散液A2、A3を得た。
【0153】
【表1】

【0154】
<スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1の調液>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム1.0質量部をイオン交換水1125質量部に溶解させた溶液を仕込み、82℃に加熱後、スチレン130質量部、n−ブチルアクリレート48質量部、メタクリル酸12質量部、n−オクチルメルカプタン0.5質量部、マイクロクリスタリンワックス(HNP−0190:日本精鑞社製)39質量部を80℃にて溶解させた重合性単量体溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機(CREARMIX:エム・テクニック社製)により15分間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0155】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム7質量部をイオン交換水125質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子分散液を調製した。
【0156】
(第2段重合)
上記の樹脂粒子分散液に過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水212質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、スチレン406質量部、n−ブチルアクリレート148質量部、メタクリル酸48質量部およびn−オクチルメルカプタン14質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。
【0157】
滴下終了後、1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」を得た。
【0158】
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1の調液>
≪非晶性ポリエステル樹脂C1の作製≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物316質量部、テレフタル酸138質量部および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、重量平均分子量が15000になったところで反応を停止させ、非晶性ポリエステル樹脂C1を作製した。
【0159】
得られた非晶性ポリエステル樹脂(C1)200質量部を400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「UT−150T」(日本精機製作所製)でV−LEVEL300μAで30分間超音波分散をした後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプV−700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して平均粒径(体積基準によるメディアン径(D50))が180nmの「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」を得た。
【0160】
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C2の調液>
≪結晶性ポリエステル樹脂C2の作製≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、セバシン酸176質量部、1、6−ヘキサンジオール103質量部および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、重量平均分子量が15000になったところで反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂C2を作製した。
【0161】
得られた結晶性ポリエステル樹脂200質量部を400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「UT−150T」(日本精機製作所社製)でV−LEVEL300μAで30分間超音波分散をした後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプV−700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して平均粒径(体積基準によるメディアン径(D50))が190nmの「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C2」を得た。
【0162】
≪非晶性ポリエステル樹脂C3の作製≫
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物316質量部、テレフタル酸80質量部、無水マレイン酸34質量部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出し、非晶性ポリエステル樹脂C3を得た。非晶性ポリエステル樹脂C3の、Tgは65℃、数平均分子量は4500、重量平均分子量は13500であった。
【0163】
<スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂D1の製造>
温度計及び攪拌装置を取り付けたオートクレーブ反応槽中に、キシレン430質量部、「非晶性ポリエステル樹脂C3」430質量部を入れて溶解し、窒素置換後、スチレン86.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル21.5質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.16質量部、およびキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し、更にこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂D1を得た。
【0164】
<スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1の調液>
得られた「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂D1」100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、攪拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所社製)でV−LEVEL 300μAで30分間超音波分散した後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプV−700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間攪拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、平均粒径(体積基準におけるメディアン径(D50))が160nm、固形分が13.5質量%の「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1」を得た。
【0165】
<離型剤分散液F1の調液>
マイクロクリスタリンワックス(HNP−0190:日本精鑞社製)100質量部、アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK:第一工業製薬社製)23質量部およびイオン交換水860質量部を混合し110℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、離型剤微粒子分散液F1を得た。得られた分散液中の離型剤微粒子の分散径は250nmであった。
【0166】
<トナー粒子1の作製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、「複合樹脂粒子分散液A1」を450質量部(固形分換算)と「離型剤分散液F1」を3質量部(固形分換算)と、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水900質量部とを仕込み、液温を25℃に調整した後、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
【0167】
次いで、塩化マグネシウム70質量部をイオン交換水105質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて30分間かけて添加し、3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。
【0168】
この状態で、「コールターMultisizer3」にて凝集粒子の粒径を測定し、6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム75質量部をイオン交換水290質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させる。
【0169】
さらに、熟成工程として液温度88℃にて加熱撹拌することにより、「FPIA−2100」による測定で平均円形度0.960になるまで、粒子間の融着を進行させつつ、トナー粒子を形成させ、その後、液温30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、撹拌を停止した。
【0170】
上記の工程にて生成したトナー粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械(株)製)で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成し、このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が1.0質量%となるまで乾燥して「トナー粒子1」を得た。
【0171】
<トナー粒子2の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「複合樹脂粒子分散液A2」に替え、「離型剤分散液F1」を8質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子2」を得た。
【0172】
<トナー粒子3の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」423質量部(固形分換算)と「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」27質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を未添加に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子3」を得た。
【0173】
<トナー粒子4の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」400質量部(固形分換算)と「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」50質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を未添加に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子4」を得た。
【0174】
<トナー粒子5の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」360質量部(固形分換算)と「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」90質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を4質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子5」を得た。
【0175】
<トナー粒子6の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」230質量部(固形分換算)と「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」220質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を10質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子6」を得た。
【0176】
<トナー粒子7の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」360質量部(固形分換算)と「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C2」126質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を4質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子7」を得た。
【0177】
<トナー粒子8の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」416.2質量部(固形分換算)と「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1」33.8質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を未添加に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子8」を得た。
【0178】
<トナー粒子9の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」387.5質量部(固形分換算)と「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1」62.5質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を3質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子9」を得た。
【0179】
<トナー粒子10の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」337.5質量部(固形分換算)と「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1」112.5質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を5質量部(固形分換算)替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子10」を得た。
【0180】
<トナー粒子11の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」175質量部(固形分換算)と「スチレン−アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液D1」275質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を12質量部(固形分換算)に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子11」を得た。
【0181】
<トナー粒子12の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「複合樹脂粒子分散液A3」に替え「離型剤分散液F1」を14質量部(固形分換算)替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子12」を得た。
【0182】
<トナー粒子13の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」437質量部(固形分換算)と「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1」14質量部(固形分換算)に替え、「離型剤分散液F1」を未添加に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子13」を得た。
【0183】
<トナー粒子14の作製>
トナー粒子1の作製において、「複合樹脂粒子分散液A1」を「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液B1」に替え、「離型剤分散液F1」を未添加に替えた以外はトナー粒子1の作製と同様な方法で「トナー粒子14」を得た。
【0184】
<箔転写面形成用トナー1〜14の作製>
(外添処理)
上記のようにして作製した「トナー粒子1」100質量部に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行うことにより「箔転写面形成用トナー1」を作製した。
【0185】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0186】
以下、同様にトナー粒子1〜14を用いて「箔転写面形成用トナー2〜14」を作製した。トナー粒子径は、いずれも体積基準におけるメジアン径で6.4μmであった。ここで、トナー12〜14を比較用とした。
【0187】
《評価方法》
<現像剤〔1〕〜〔14〕の作製>
上記のようにして作製した「箔転写面形成用トナー1〜14」に対して、シリコン樹脂を被覆した体積平均粒径50μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%になるように混合し、二成分現像剤である「箔転写面形成用現像剤〔1〕〜〔14〕」を調製し、以下の評価を行った。
【0188】
(1)評価条件
「箔転写面形成用現像剤〔1〕〜〔14〕」を図3に示す構成の箔転写面形成装置の箔転写面形成用トナー供給装置21Hにそれぞれ搭載して箔転写面を形成した。箔転写面の形成は市販の画像支持体「OKトップコート+(坪量157g/m2 、紙厚131μm)(王子製紙(株)製)」上に形成した。なお、箔転写面形成装置では箔転写面形成用トナーの供給量を4g/m2 に設定して箔転写面を形成した。
【0189】
また、定着装置50における画像支持体の定着速度を230mm/sec、加熱ローラの表面材質をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、加熱ローラの表面温度を135℃に設定して行った。
【0190】
前記箔転写面形成装置を用いて前記画像支持体上に各トナーによる箔転写面を形成した後、当該画像支持体を図1に示す模式図の手順にしたがい、市販の転写箔を用いて画像支持体上に形成した箔転写面上に箔を転写させた。なお、転写箔は、(株)村田金箔製の「BL 2号金2.8」(PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる支持体、アルミ蒸着層から形成される箔層、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を含む接着層で構成されている)を使用した。
【0191】
図1に示す手順で箔転写を以下に示す条件の下で行った。すなわち、
・加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもので、表面温度を150℃に設定
・加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもので、表面温度を100℃に設定
・熱源:加熱ロール及び加圧ロールの内部にハロゲンランプを各々配置(サーミスタにより温度制御)
・加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:7mm
・画像支持体搬送速度:200mm/秒
・転写材搬送方向:A3サイズの上記転写材を縦方向に搬送させる
・評価環境:常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)
上記条件の下で、画像支持体上には図5に示す2種類の箔画像サンプル(a)、(b)を用いて箔画像を作成した。図の黒い部分は、箔転写面形成用トナーにより現像されて箔転写面が形成される部分であり、図5(a)の箔画像aは、箔の欠落評価用、図5(b)の箔画像bはバリ評価用である。
【0192】
上記のようにして得られた箔画像の箔の欠落を評価後、更に画像支持体搬送速度90mm/秒で定着装置に通紙させる。
【0193】
(2)評価項目
上記手順で作製された試料上に形成されている箔について、箔転写面上での箔の欠落と箔転写面上での箔のバリの発生を評価した。「箔転写面上での箔の欠落」は定着器を通過直後での転写箔剥離時において紙と箔画像とを接着しているトナー層の内部凝集力が弱すぎないか否かを評価するものである。「箔転写面上でのバリの発生」は定着器を通過直後での転写箔剥離時において紙と箔画像とを接着しているトナー層の内部凝集力が過剰すぎて必要以上に箔が転写されていないかを評価するものである。
【0194】
〈箔転写面上での箔の欠落〉
各試料上に形成された箔画像aを、肉眼及び倍率10倍のルーペにより目視観察して箔転写面上における箔の欠落の有無を以下の様に評価した。◎と○と△を合格とし、×を不合格とした。すなわち、
◎;ルーペ観察でも箔の欠落が認められなかった。
【0195】
○;肉眼観察では問題のないレベルだったがルーペ観察により箔の欠落が1〜2箇所認められた。
【0196】
△;肉眼観察では問題のないレベルだったがルーペ観察により箔の欠落が3箇所以上認められた。
【0197】
×;肉眼観察で箔の欠落の発生が認められる。
【0198】
〈箔転写面上におけるバリの発生〉
各試料上に形成された箔画像bを、肉眼及び倍率10倍のルーペにより目視観察して箔転写面上における箔のバリの有無を以下の様に評価した。◎と○と△を合格とし、×を不合格とした。すなわち、
◎;ルーペ観察でも箔のバリが認められなかった。
【0199】
○;肉眼観察では問題のないレベルだったがルーペ観察によりバリの発生が1〜2箇所認められた。
【0200】
△;肉眼観察では問題のないレベルだったがルーペ観察によりバリの発生が3箇所以上認められた。
【0201】
×;肉眼観察で箔のバリの発生が認められた。
【0202】
【表2】

【0203】
表2の結果から明らかなように本発明の箔転写面形成用トナーは比較用の箔転写面形成用トナーに比べて、箔の欠落、バリの発生において優れた効果を発揮していることが分かる。
【符号の説明】
【0204】
1 箔転写面形成装置
F 転写箔
f0 支持体
f1 接着層
f2 箔層
H 箔転写面
P 媒体(画像支持体)
R1、R2 加熱加圧ローラ
S 箔画像
10 中間転写部
11H、11Y、11M、11C、11Bk 感光体
12 クリーニング手段
12H 帯電ローラ
13H、13Y、13M、13C、13Bk 一次転写ローラ
13A 二次転写ローラ
14 トナー供給ローラ
16 中間転写体
16a〜16d 支持ローラ
20H 箔転写面トナー像形成部
20Y、0M、0C、0Bk 有色トナー像形成部
21H 箔転写面形成用トナー供給装置(現像手段)
21Y、1M、1C、1Bk 現像手段(有色トナー供給装置)
22 除電ランプ
22H、2Y、2M、2C、2Bk 露光手段
23H、3Y、3M、3C、3Bk 帯電手段
24 搬送ベルト
25 クリーニング装置
25b クリーニングブレード
25H、5Y、5M、5C、5Bk クリーニング手段
27 電源
41 給紙カセット
42 給紙搬送手段
44a、4b、4c、4d 給紙ローラ
46 レジストローラ
47 排紙ローラ
48a、8b、8c 搬送路
49 分岐板
50 定着装置
51、2 加熱加圧ローラ
60 排紙トレイ
70 箔転写装置
71 元巻き部
71A 元巻きローラ
72 巻き取り部
72A 巻き取りローラ
73a、3b 箔転写ローラ
79 搬送手段
80 転写箔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
感光体を露光して静電潜像を形成する工程と、
静電潜像が形成された前記感光体に箔転写面形成用トナーを供給して箔転写面を形成する工程と、
前記感光体に形成された箔転写面を媒体に転写する工程と、
前記媒体に転写された箔転写面を媒体上に定着する工程と、
前記箔転写面が定着された媒体に、少なくとも接着層と箔層を有する転写箔を供給する工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させる工程と、
前記転写箔の接着層を前記箔転写面に接触させた状態のまま加熱する工程と、
前記転写箔を前記媒体より剥離し、箔転写面上に箔層を接着させた媒体を得る工程を有する箔転写方法であって、
前記転写箔の接着層は、熱可塑性樹脂を含有し、
前記箔転写面形成用トナーが、少なくとも結着樹脂としてビニル系樹脂とポリエステル樹脂とを含有し、該ビニル系樹脂が全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下含有されることを特徴とする箔転写方法。
【請求項2】
前記ビニル系樹脂が全結着樹脂に対して、70質量%以上90質量%以下含有されることを特徴とする請求項1に記載の箔転写方法。
【請求項3】
前記ビニル系樹脂がスチレン−アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の箔転写方法。
【請求項4】
前記ビニル系樹脂と前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の箔転写方法。
【請求項5】
前記ビニル系樹脂と前記ポリエステル樹脂が互いに結合した複合樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の箔転写方法。
【請求項6】
前記トナーの結着樹脂が、ビニル系樹脂および前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂と、ビニル系樹脂との混合樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の箔転写方法。
【請求項7】
前記ビニル系樹脂および前記ポリエステル樹脂が互いに結合した樹脂が、全結着樹脂に対して80質量%以上90質量%以下含有されることを特徴とする請求項6に記載の箔転写方法。
【請求項8】
少なくとも結着樹脂を含有する箔転写面形成用トナーであって、
前記結着樹脂が、少なくともラジカル重合性単量体より形成されるビニル系樹脂と重縮合反応により形成されるポリエステル樹脂とを含有し、ラジカル重合性単量体より形成されるビニル系樹脂が、全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下含有されることを特徴とする箔転写面形成用トナー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228876(P2012−228876A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88377(P2012−88377)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】