説明

管体把持装置

【課題】支持対象物を管体に取り付けるための管体把持装置であって、管体に対する固着、取り外し作業が容易で、構造の簡易なものを提供する。
【解決手段】把持装置1は、管体Pを締め付けることなく把持する把持金具2と、これに結合され管体Pに固定される固定金具3とからなる。把持金具2は、把持金具2は、ブラケット4、顎部材5、ストッパ6、付勢手段7を具備し、支持対象物Mに取り付けられる。顎部材5を管体Pに押し当て、保持位置へ回転させ、ストッパ6で開口を閉じて管体Pを把持する。固定金具3は、本体35、締め付け部材36、ナット部材37、締め付けボルト38を具備する。締め付けボルト38をナット部材37に螺合し、締め付けることにより管体Pを締め付けて、本体35を把持金具2と一体に管体Pに固定する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、工事現場の仮囲いを構成する鋼管に、太陽電池モジュールを取り付ける際等に用いて有効な管体把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池モジュールのような部材を単管パイプのような管体へ固定するための把持金具であって、管体に対する装着、ロック、取り外し作業が容易で、構造の簡易なものが提案されている。この金具においては、ブラケットが、ほぼ円弧状の凹部を前方へ開口させている。顎部材が、ブラケットに枢支され、保持位置と解放位置との間で回転自在である。ストッパが、ブラケットに枢支され、ロック位置と非ロック位置との間で回転自在で、ロック位置に回転付勢される。ストッパは、ロック位置において、顎部材が保持位置から解放位置へ回転するのを阻止するが、顎部材が解放位置から保持位置へ回転するのを許容し、かつ、非ロック位置において、顎部材が保持位置から解放位置へ回転するのを許容する。付勢手段が、顎部材の回転途上でデッドポイントを越えて顎部材を選択的に、ロック位置又は非ロック位置に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−6937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来の管体把持金具は、管体を締め付けることなく把持する構造であるため、管体の軸線方向には移動しやすい。このため、設置環境によっては、使用できないことがある。
したがって、この出願に係る発明は、管体に対して軸線方向にも移動しないように固定可能で、装着が容易な管体把持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の管体把持装置1は、管体Pへ支持対象物Mを取り付けるためのものであって、管体Pを締め付けることなく把持する把持金具2と、この把持金具2に結合され、管体Pに固定される固定金具3とからなる。把持金具2は、ブラケット4と顎部材5とを具備する。ブラケット4は、支持対象物Mに固定され、管体Pを受ける円弧状保持凹部8を支持対象物Mの反対側へ開口させる構造である。顎部材5は、ブラケット4に枢支されることで、保持位置と解放位置との間を回転自在で、保持位置においてブラケット4の保持凹部8の開口を閉じて保持凹部8との間に管体Pを締め付けることなく抱持する。固定金具3は、本体35と、締め付け部材36と、ナット部材37と、締め付けボルト38とを具備する。固定金具3の本体35は、把持金具2を管体Pに固定するために、把持金具2のブラケット4に結合される係合部42と、管体Pを受ける円弧状受け凹部43とを有する。締め付け部材36は、中間部において枢軸45により固定金具本体35に枢支され、基端側が本体35の内側に配置され、先端側と本体35との間で管体Pを締め付け、解放するように回転可能である。ナット部材37は、枢軸45と平行な回転軸46により、締め付け部材36の基端側に回転自在に設けられる。締め付けボルト38は、本体35を揺動可能に貫通して、ナット部材37に螺合され、締め付けることにより本体35と締め付け部材36との間で管体Pを締め付けて、本体35を把持金具2と一体に管体Pに固定する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の管体把持装置1によれば、管体Pに対して軸線方向にも移動しないように固定可能で、装着が容易な管体把持装置1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】管体把持装置の正面図である。
【図2】図1の管体把持装置の平面図である。
【図3】図1の管体把持装置の側面図である。
【図4】把持金具の側面図である。
【図5】把持金具の固定操作過程を示す断面図である。
【図6】把持金具の固定操作過程を示す断面図である。
【図7】把持金具の固定操作過程を示す断面図である。
【図8】把持金具の固定操作過程を示す断面図である。
【図9】固定金具の正面図である。
【図10】固定金具の平面図である。
【図11】固定金具の側面図である。
【図12】固定金具の斜視図である。
【図13】固定金具の断面図である。
【図14】締め付け部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
【0009】
図1〜3に示すように、管体把持装置1は、太陽電池モジュールのような支持対象物Mを支持用の単管パイプのような管体Pに結合するためのもので、管体Pを締め付けることなく把持する把持金具2と、この把持金具2を管体Pに固定するために、把持金具2に結合され、管体Pに固定される固定金具3とからなる。固定金具3は、把持金具2に隣接して装着される。
【0010】
図4〜8に示すように、把持金具2は、ブラケット4、顎部材5、ストッパ6、付勢手段7を具備する。
【0011】
ブラケット4は、支持対象物Mにボルト止めされ、管体Pを受ける円弧状保持凹部8を支持対象物Mの反対側へ開口させてなる。
【0012】
顎部材5は、ブラケット4に軸9で枢支されることで、保持位置と解放位置との間を回転自在で、保持位置においてブラケット4の保持凹部8の開口を閉じて保持凹部8との間に管体Pを抱持し、解放位置において保持凹部8の開口を開いて管体Pを解放し、又は開口へ進入する管体Pを受け入れて保持位置へ回転可能である。
【0013】
ストッパ6は、中間部において軸10でブラケット4に枢支されることで、ロック位置と非ロック位置との間を回転自在で、常時はばね11でロック位置に回転付勢され、一端側にロック部12を有すると共に、他端側に回転操作部13を有し、ロック位置において顎部材5が保持位置から解放位置へ回転する経路上にロック部12を配置して顎部材5の回転を阻止するが、解放位置から保持位置へ回転する顎部材5に押されて顎部材5の回転経路から退避することで顎部材5の保持位置への通過を許容し、また非ロック位置において顎部材5が保持位置から解放位置へ回転する経路の外にロック部12を配置して顎部材5の回転を許容する。
【0014】
付勢手段7は、ブラケット4と顎部材5との間に介設され、顎部材5の回転途上でデッドポイントを越えて顎部材5をロック位置又は非ロック位置に選択的に保持するよう付勢する。
【0015】
顎部材5は、図5に示す保持位置と図7に示す解放位置との間で軸9を中心にして回転自在である。顎部材5は、ブラケット4の一対の支持板14の内側に、これと平行に配置される平行一対の支持板15を具備する。支持板15は、凹状保持面16と、これを囲むように相互に反対方向へ延びる第1及び第2の脚17,18を有するほぼU字状に湾曲した平板材である。凹状保持面16は、保持位置において開口19を支持対象物Mの裏面と平行方向に向け、ブラケットの凹部8と対向して内側に管体Pを抱持する。第1の脚17は、保持位置において支持対象物Mの裏面と平行方向に延び、ブラケット4の凹部8の開口19に交差してこれを閉じ、解放位置において支持対象物Mと反対側へ転倒し、開口19を開くように配置される。第2の脚34の先端部には、ストッパ6と係合する係合部20が設けられる。顎部材5は、解放位置において、凹状保持面16の開口21を支持対象物Mと反対側へ斜めに向け、ここに管体Pを受け入れることができるように配置される。顎部材5の回転範囲は、ブラケット4の円弧状ガイド孔22を通して支持板15を貫通するガイド軸23により規制される。
【0016】
ブラケット4と顎部材5との間には、顎部材5をロック位置又は非ロック位置に保持するよう付勢する付勢手段7が介設される。付勢手段7は、ばねガイド24とこれに嵌め込まれたばね25とを具備する。ばねガイド24は、下端部に軸線方向の長孔26を有し、これを貫通してブラケットの支持板14に支承された軸27により、軸線方向移動自在に枢支される。上端の係合凹部28が軸23に回転自在に係合することによって、ばねガイド24は顎部材5に枢支される。ばね25は、ばねガイド24を常時軸線方向先端側へ付勢することによって、顎部材5を回転付勢するが、顎部材5の回転途上でデッドポイントを越えて、それまでと反対方向へ顎部材5を回転付勢する。
【0017】
ストッパ6は、一端側にロック部12を有すると共に、他端側に回転操作部13を有し、中間部に軸受部29を有する。ストッパ6は、軸受部29においてブラケット4の突出部30の先端部間に軸10で枢支され、図5に示すロック位置と図6に示す非ロック位置との間で回転自在である。ロック部12付近には、デテントボール31が組み込まれ、これが、ブラケット4のデテント孔32に落ち込むことにより、ストッパ4を非ロック位置に保持する(図6)。軸受部29の先端側には当接面33が設けられ、この当接面33が、ブラケット4の突出部30の先端に設けられた当接片34に当接(図5)することにより、ストッパ6をロック位置に保持する。
【0018】
しかして、ストッパ6は、ロック位置において、顎部材5が保持位置から解放位置へ回転する経路上、すなわち係合部20の移動経路上にロック部12を配置して顎部材5の回転を阻止するが、非ロック位置においては、係合部20の移動経路の外にロック部12を配置して顎部材5の回転を許容する。またストッパ6は、ロック位置において、顎部材5が解放位置から保持位置へ回転するときに係合部20に押し上げられ(図8)、その移動経路からいったん退避し、保持位置への回転を許容する。
【0019】
支持対象物Mを、管体Pに支持する場合、図7に示す開放状態(ストッパ6はロック位置にあり、顎部材5は解放位置にある。)において、支持対象物Mを支え持って把持金具2を管体Pに当てがい、顎部材5の凹状保持面16を管体Pに嵌合させつつ、支持対象物Mを管体Pへ押しつける。顎部材5は、当初は、ばね25を圧縮しながら、管体Pと共に保持位置へ回転(図7において反時計方向)し、その途上でデッドポイントを越えたばね25に回転付勢され、図8に示すように、係合部20がストッパ6のロック部12を押し上げるように、ストッパ6をばね力に抗して回転(図において時計方向)させ、保持位置(図5)に至る。ストッパ6は、係合部20が通過した後、ロック位置に反時計方向へ回転して復元し、図5のロック状態に至る。
【0020】
図5の状態では、顎部材5がばね25により保持位置に付勢されているが、解放方向(時計方向)へ回転する強い外力が加わった場合でも、係合部20がストッパ6のロック部12に当接することにより、顎部材5の回転が阻止され、保持位置に拘束されるから、支持対象物Mを確実に管体Pに支持することができる。しかし、顎部材5は、管体Pを強固に締め付けることはないので、例えば管体Pの軸線方向の外力を受けると比較的容易に移動してしまう。
【0021】
支持対象物Mを管体Pから取り外す場合には、図5の状態から、図6のように、ストッパ6の回転操作部13を押し上げて、ストッパ6を非ロック位置(時計方向)へ回転させると、ロック部12が顎部材5の係合部20の回転経路から外れる。この状態で、支持対象物Mを管体Pから引き剥がすように操作すると、顎部材5が解放位置(時計方向)へ回転し、図7に示すように、管体Pを解放するので、支持対象物Mを管体Pから取り外すことができる。この間に、ばね25がデッドポイントを越え、顎部材5は解放位置に付勢される。
【0022】
図1〜3に示すように、固定金具3は、把持金具2に隣接して管体Pへ装着される。固定金具3は、本体35と、締め付け部材36と、ナット部材37と、締め付けボルト38とを具備する。
【0023】
図9〜13によく示すように、固定金具の本体35は、平行一対の側板部39と、両側板部39間を接続する連結板部40と、両側板部の上部間に架かる支持板部41と、一方の側板部39の上縁部から外側方へ延出する係合板部42とを具備する。側板部39は、管体Pを受ける円弧状受け凹部43を有する。係合板部42は、図1〜3に示す装着状態において、管体P上に隣接設置される把持金具2を越えて延出した後、把持金具2の外側面に沿うように直角に屈折する。
締め付け部材36は、互いに結合された平行一対の鈎形板材44からなり、中間部において枢軸45により本体35に枢支され、基端側が本体35の内側、支持板部41の下方位置に配置される。したがって、締め付け部材36は、それの先端側と本体35との間で管体Pを締め付け、解放するように回転可能である。
【0024】
締め付けボルト38を螺合するナット部材37は、枢軸45と平行な回転軸46を有し、これにより、締め付け部材36の側板部39間の基端側に回転自在に設けられる。
【0025】
締め付けボルト38は、本体35の支持板部41に形成されたボルト挿通孔47を揺動可能に貫通して、ナット部材37のねじ孔48に螺合される。締め付けボルト38を締め付けることにより、本体35と締め付け部材36との間で管体Pを締め付け、図1〜3に示すように、本体35を係合板部42で連結された把持金具2と一体に管体Pに固定する。
【0026】
把持金具2は、管体Pを締め付けることなく把持する構造であるが、管体把持金具2を装着した上で、これに隣接して固定金具3を装着すれば、管体把持装置1として、両者を一体として管体Pに固定することができる。このため、管体把持装置1は、支持対象物Mを、管体Pの軸線方向にも移動させることなく確実に固定することができ、様々な設置環境に使用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 管体把持装置
2 把持金具
3 固定金具
4 ブラケット
5 顎部材
6 ストッパ
7 付勢手段
8 保持凹部
9 軸
10 軸
11 ばね
12 ロック部
13 回転操作部
14 支持板
15 支持板
16 凹状保持部
17 第1の脚
18 第1の脚
19 開口
20 係合部
21 開口
22 ガイド孔
23 ガイド軸
24 ばねガイド
25 ばね
26 長孔
27 軸
28 係合凹部
29 軸受け部
30 突出部
31 デテントボール
32 デテント孔
33 当接面
34 当接片
35 固定金具の本体
36 締め付け部材
37 ナット部材
38 締め付けボルト
39 側板部
40 連結板部
41 支持板部
42 係合板部
43 受け凹部
44 鈎形板材
45 枢軸
46 回転軸
47 ボルト挿通孔
48 ねじ孔
P 管体
M 支持対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体へ支持対象物を取り付けるための管体把持装置であって、管体を締め付けることなく把持する把持金具と、この把持金具に結合され管体に固定される固定金具とからなり、
前記把持金具は、
支持対象物に固定されると共に、前記管体を受ける円弧状保持凹部を支持対象物の反対側へ開口させたブラケットと、
このブラケットに枢支されることで、保持位置と解放位置との間を回転自在で、保持位置においてブラケットの保持凹部の開口を閉じて保持凹部との間に前記管体を締め付けることなく抱持する顎部材とを具備し、
前記固定金具は、
前記把持金具を前記管体に固定するために把持金具のブラケットに結合される係合部と、前記管体を受ける円弧状受け凹部とを有する本体と、
中間部において枢軸により前記本体に枢支され、基端側が本体の内側に配置され、先端側と本体との間で前記管体を締め付け、解放するように回転可能な締め付け部材と、
前記枢軸と平行な回転軸により、前記締め付け部材の基端側に回転自在に設けられるナット部材と、
前記本体を揺動可能に貫通して、前記ナット部材に螺合され、締め付けることにより本体と前記締め付け部材との間で前記管体を締め付けて、本体を前記把持金具と一体に管体に固定する締め付けボルトとを具備する、
ことを特徴とする管体把持装置。
【請求項2】
前記把持金具は、
前記支持対象物に固定されると共に、前記管体を受ける円弧状保持凹部を支持対象物の反対側へ開口させたブラケットと、
このブラケットに枢支されることで、保持位置と解放位置との間を回転自在で、保持位置においてブラケットの保持凹部の開口を閉じて保持凹部との間に前記管体を抱持し、解放位置において保持凹部の開口を開いて管体を解放し、又は開口へ進入する管体を受け入れて保持位置へ回転可能な顎部材と、
中間部において前記ブラケットに枢支されることで、ロック位置と非ロック位置との間を回転自在で、常時はロック位置に回転付勢され、一端側にロック部を有すると共に、他端側に回転操作部を有し、ロック位置において顎部材が保持位置から解放位置へ回転する経路上にロック部を配置して顎部材の回転を阻止するが、解放位置から保持位置へ回転する顎部材に押されて顎部材の回転経路から退避することで顎部材の保持位置への通過を許容し、また非ロック位置において顎部材が保持位置から解放位置へ回転する経路の外にロック部を配置して顎部材の回転を許容するストッパと、
前記ブラケットと前記顎部材との間に介設され、顎部材の回転途上でデッドポイントを越えて顎部材をロック位置又は非ロック位置に選択的に保持するよう付勢する付勢手段とを具備し、
前記固定金具本体の係合部は、当該本体から側方へ、前記管体上に隣接設置される前記把持金具を越えて延出した後、把持金具の外側面に沿うように直角に屈折する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管体把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−251324(P2012−251324A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123170(P2011−123170)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】